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JP4452196B2 - 金属板抵抗器 - Google Patents

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Description

本発明は、電流検出用等の用途に好適な金属板抵抗器の構造に関する。
板体状の金属板抵抗体の両端に電極を配設した金属板抵抗器は、放熱性が良好で電流容量が大きくとれるため、従来から電流検出用抵抗器等に広く用いられている。このような金属板抵抗体としては、例えば、銅ニッケル系合金、ニクロム系合金、鉄クロム系合金、マンガニン系合金等が用いられ、数mΩ以下の低抵抗値を有する金属板抵抗器が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特開2002−184601号公報
自動車など、高温となる過酷な環境下で使用される金属板抵抗器に関する課題として、放熱性が良好で比較的低コストの実装基板としてアルミニウム基板が用いられる場合がある。この場合には実装基板と金属板抵抗器との熱膨張係数が大きく異なることにより、金属板抵抗器と実装基板の接合面であるはんだ接合面の熱疲労による劣化が問題となる場合がある。このため、実装基板としてアルミニウム基板を用いる場合に、金属板抵抗器と実装基板とのはんだ接合面の熱疲労に対する信頼性を高め、アルミニウム基板に実装しても十分な信頼性が得られる金属板抵抗器を提供することが要請されている。
本発明は上述した事情に鑑みて為されたもので、小型コンパクト化した構造で、且つアルミニウム基板等の実装基板と金属板抵抗器との熱膨張係数が大きく異なる場合においても、実装後の経年変化や環境変化(機械的ストレス、熱ストレス、電気ストレス)に対する安定性の高い金属板抵抗器を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明の金属板抵抗器は、金属板からなる抵抗体と、少なくとも一対の電極とを備え、実装基板へ面で実装する金属板抵抗器であって、前記抵抗体の両端部を抵抗体電極部として、該抵抗体電極部の下面に前記電極を接合し、前記抵抗体電極部の間に位置する抵抗体本体部の幅を、前記電極の幅よりも狭くしたことを特徴とするものである。
た、前記抵抗体両端部の抵抗体電極部の形状と、前記電極の形状とが略同一であることを特徴とするものである。
また、本発明の金属板抵抗器の前記抵抗体は、前記一対の電極の間に位置する抵抗体本体部と、該抵抗体本体部から連続的に拡幅する前記抵抗体本体部よりも広幅の抵抗体電極部とから構成され、前記抵抗体電極部の直下に前記抵抗体電極部と同一形状の前記電極を備えたことを特徴とする。ここで、前記抵抗体電極部は、前記抵抗体本体部から30度乃至90度の角度(好ましくは45度)で拡幅していて、前記電極は、150μm以上の厚みを有することを特徴とするものである。そして、電極の平面視形状は八角形状をなしていることを特徴とするものである。
また、本発明の金属板抵抗器は、金属板からなる抵抗体と、少なくとも一対の電極とを備え、実装基板へ面で実装する金属板抵抗器であって、前記抵抗体の両端部を抵抗体電極部として、該抵抗体電極部の下面に前記抵抗体電極部と平面視同一形状の八角形状の前記電極が接合し、前記抵抗体電極部の間に位置する抵抗体本体部の幅を、前記電極の幅よりも狭くし、該抵抗体電極部は、平面視八角形状をなし、前記抵抗体本体部と断面視上面が同一平面をなしていて、断面視下面が前記抵抗体本体部下面よりも下方に突出し、前記抵抗体本体部の上面と、前記抵抗体電極部の上面の一部と、前記抵抗体本体部の下面と、前記抵抗体本体部の側面とを一体的に被覆する保護コートが設けられ、前記電極の下面と、前記電極の側面と、前記抵抗体電極部の側面と、前記抵抗体電極部の上面の前記保護コートが被覆されていない部分とを一体的に被覆するメッキコートが設けられていることを特徴とするものである。
本発明によれば、実装基板との接続部である電極部分の平面視形状を従来のI字型抵抗器よりも抵抗器の幅方向に拡幅するものである。これにより、電極部分における電流密度を低減することができるとともに、実装基板としてアルミニウム基板を用いた場合に、はんだ接合面の熱応力の集中する箇所を電極部周囲の八面に分散させることができる。従って、金属板抵抗器と実装基板とのはんだ接合面の熱応力の集中する部分において、はんだの熱疲労を低減することができる。これにより、金属板抵抗器と熱膨張係数の大きく異なるアルミニウム基板に実装しても、経年変化や環境変化(機械的ストレス、熱ストレス、電気ストレス)に対する安定性の高い金属板抵抗器を提供することができる。
特に、抵抗体本体部から連続的に拡幅する八角形状の電極部を備えることで、主として内側の斜辺部でパワーサイクル試験におけるはんだ接合面の熱応力の集中する部分を分散でき、主として外側の斜辺部でヒートサイクル試験におけるはんだ接合面の熱応力の集中する部分を分散できる。この結果、本発明の金属板抵抗器をアルミニウム基板に実装した熱サイクル試験において、良好な信頼性試験結果を得ることができる。すなわち、アルミニウム基板に問題なく実装可能な金属板抵抗器を提供することができる。
以下、本発明の実施形態例を添付図面に基づいて説明する。なお、各図中、同一の機能を有する部材または要素には同一の符号を付して、その重複した説明を省略する。
図1は、本発明の第1の実施形態例の金属板抵抗器を示す。この金属板抵抗器10は、金属板からなる抵抗体11と、抵抗体11の両端部11b,11cに接合されたCuの薄板(高導電性金属導体)からなる一対の電極12,13を備えている。ここで、抵抗体11は、Cu−Ni系合金、Ni−Cr系合金、Fe−Cr系合金、Pd−Pt系合金、Au−Ag系合金、Au−Pt−Ag系合金等が用いられる。一対の電極12,13の表面には、溶融はんだ層またはメッキコート層を備え、実装時に実装基板のランドパターンへのはんだ付け性を良好なものとしている。抵抗体11の底面側には、電極12,13の間に抵抗体11の裏面側を被覆する絶縁層15が設けられている。
このような金属板抵抗器10は、例えば、1mΩ程度の低抵抗値を有するとともに、数W程度の電力容量を有する。そして、例えば、±1%以内等の高い抵抗値精度と、75ppm/℃以下等の低い抵抗温度係数(TCR)を有し、各種電子機器などの電源回路基板等に組み込まれ、電流検出等の用途に好適に用いられる。
ここで、抵抗体11は、平面視形状がH字型をなしていて、両端部11b,11c間に狭幅の中央部(本体部)11aを備えている。すなわち、一対の電極12,13の上部に位置する抵抗体電極部11b,11cの幅Wに対して、抵抗体中央部(本体部)11aを幅Wに狭くしたことを特徴としたものである。すなわち、抵抗体本体部11aの幅Wに対して、抵抗体電極部11b,11cを幅Wに拡幅したものである。ここで、電極12,13の形状は、抵抗体電極部11b,11cと略同一の矩形状となっている。
図1(d)は、この金属板抵抗器10を実装基板100に実装した状態を示す。金属板抵抗器10は、例えば、放熱性の良好なアルミニウム基板100に実装される。アルミニウム基板100は、ランドパターン101,102を備え、このランドパターンに金属板抵抗器10の電極12,13の底面および側面がはんだ103により接続固定される。したがって、抵抗体11に流れる電流は、ランドパターン101,102を介して供給され、抵抗体11で発生する熱は、電極12,13を介して、アルミニウム基板100に伝導される。
図2(a)は、以下に述べる試験に用いた従来の金属板抵抗器の寸法例を比較のために示し、(b)は試験に用いた上記本発明の金属板抵抗器の寸法例を示す。ここで、L=10mm,W=8.4mm,D=3.0mm,X=1.0mmである。即ち、従来の金属板抵抗器は、抵抗体が平面視ストレートなI形をなしているのに対して、本発明の金属板抵抗器の平面視は、抵抗体の中央部(抵抗体本体部)が狭幅で両端部が広幅なH字型をなしている。試験は、上記金属板抵抗器をアルミニウム基板に実装して行われた。負荷条件は、高電流(10W)を10秒オン/10秒オフのサイクルを50000サイクル印加して行われた。
以上のサンプルについて、それぞれ高電流を断続的に負荷した後の抵抗値変化を見てみると、従来例については、抵抗値の変化率が約3%であったが、本発明については約0.1%以下であった。金属板を用いた抵抗器においては、高電流印加試験における抵抗体自体の特性変化は極めて少ない。すなわち、長時間使用による特性変化は、主としてはんだ接合面における状態の変化に起因すると考えられる。従って、上記試験の結果、本発明の金属板抵抗器の構成により、はんだ接合面における熱疲労によるクラックの発生が抑制され、抵抗器としての安定性維持に寄与していることがわかる。
そのメカニズムを、図3(a)の平面図を参照して説明する。これは、図2(a)に示す従来例の金属板抵抗器を実装基板に、はんだ接合にて固定した場合である。図中の矢印は実装基板の膨張方向を示す。膨張方向は実装基板の位置や環境条件に応じて異なる。斜線部は金属板抵抗器の電極と実装基板とのはんだ接合面A及びはんだフィレットBである。図で示すとおり、実装基板の縦横の膨張による応力は○印で示す部分に集中し、この部分を起点としてクラックが進行すると考えられる。特に二重○で示した部分は、上記のとおり膨張による応力が集中する上、電流分布も集中し、発熱し易い部分であり、クラックの起点となりやすい部分であると考えられる。
図3(b)は、図2(b)に示す本発明の金属板抵抗器を、実装基板にはんだ接続にて固定した場合である。上記のように構成することによって、はんだ接合面の電極部分直下の4隅には実装基板の膨張による応力が加わるものの、電流の負荷による応力集中個所を点線○印部分Mに分散させることができる。したがって、特に内側の電極隅部分K直下でのはんだ接合面におけるクラックの進行を低減することができる。
図4は、本発明の第2の実施形態例の金属板抵抗器を示す。この金属板抵抗器の構成は基本的には図1に示したものと同一であるが、抵抗体電極部の電極12a,13aの隅部分の形状が異なっている。すなわち、この金属板抵抗器においては、電極の平面視形状は図1に示すような矩形状ではあるが、隅部分を斜辺とした形状となっている。これにより、従来の金属板抵抗器の矩形状電極パターンの隅部分直下のはんだ接合面における応力集中という問題がさらに緩和され、はんだのクラック発生がさらに抑制され、信頼性の高い金属板抵抗器が提供される。
図5は、本発明の第3の実施形態例の金属板抵抗器を示す。この金属板抵抗器の構成も基本的には図1に示したものと同一であるが、抵抗体両端部の電極12b,13bの隅部分の形状が異なっている。すなわち、この金属板抵抗器においては、矩形状電極パターンの隅部分が曲面形状(円形)となっている。これによっても、矩形状電極パターンの隅部分直下のはんだ接合面における応力集中という問題がさらに緩和され、はんだのクラック発生がさらに抑制され、信頼性の高い金属板抵抗器が提供される。
図6は、本発明の第4の実施形態例の金属板抵抗器の斜視図を示す。図6(a)はこの金属板抵抗器の抵抗体と電極との特徴的な構成を示し、図6(b)は抵抗体部を被覆する保護コート及び電極部分を被覆するメッキコートを施した完成品の状態を示す。この金属板抵抗器20は、図6(a)に示すように、銅ニッケル系合金またはニッケルクロム系合金等の金属板(抵抗合金板)からなる抵抗体21と、該抵抗体21の両端部下面に接合された銅(高導電性金属導体)からなる少なくとも一対の電極22,22とを備えている。
ここで、抵抗体21は、前記一対の電極22,22の間に位置する抵抗体本体部21aと、該抵抗体本体部から連続的に拡幅する前記抵抗体本体部よりも広幅の抵抗体電極部21bとから構成された平面視H字型形状を有している。そして、抵抗体電極部21bの直下に前記抵抗体電極部と同一形状の電極22を備えている。この抵抗体電極部21bと電極22とは、共に平面視八角形状をなしている。
すなわち、抵抗体21は、抵抗体本体部21aと、該抵抗体本体部から平面視連続的に拡幅する前記抵抗体本体部よりも広幅の抵抗体電極部21b,21bとから構成され、該抵抗体電極部21bは、内側(抵抗体本体部から拡幅する)斜辺部と、外側(抵抗器長手方向両端面に縮幅する)斜辺部とを備えた平面視八角形状をなしている。また、抵抗体電極部21bは、抵抗体本体部21aと断面視上面が同一平面をなしていて、断面視下面が抵抗体本体部下面よりも下方に突出している。そして、抵抗体電極部21bの下面に抵抗体電極部21bと平面視同一形状の八角形状の銅電極22が接合されている。
図6(b)に示すように、完成品の段階では抵抗体本体部21aは絶縁性樹脂層である保護コート23により被覆されている。この保護コート23は、一部が抵抗体電極部21b上に延伸して、これを被覆している。すなわち、抵抗体本体部21aの上面と、抵抗体電極部21bの上面の一部と、抵抗体本体部21aの下面と、抵抗体本体部21aの側面とを一体的に被覆する絶縁樹脂層である保護コート23が設けられている。そして、電極22および抵抗体電極部21bの上記保護コート23により被覆されていない電極部分には下地ニッケルメッキ層にスズまたはスズ系合金等のメッキ層を形成したメッキコート24が施されている。すなわち、電極22の下面と、電極22の側面と、抵抗体電極部21bの側面と、抵抗体電極部21bの上面の保護コート23が被覆されていない部分とを一体的に被覆するメッキコート24が設けられている。
従って、実装時には、電極部(電極22と抵抗体電極部21b)の側面にハンダフィレットが形成され、実装基板のランドに強固な接合状態が形成される。すなわち、実装時には八角形状の拡幅した電極部構造により電極部の側面の面積が拡大し、ハンダフィレットの形成面積が増すため、実装時の固着強度が向上する。電極部は実装基板のランドに八面からハンダフィレットに取り囲まれた状態で固定される。また、抵抗体21の上面には、その電極部まで延びた広い保護コートの領域が形成され、マーキング等の表示面積を拡張でき、実装性を良好なものとしている。
係る八角形状の拡幅した電極部構造により、従来の矩形状の電極部構造と比較して電極隅部を持たないので、従来の電極隅部直下の金属板抵抗器とアルミニウム基板との線膨張係数差によりはんだ接合面に生じていた応力の分散ができる。特に、内側(抵抗体本体部から拡幅する)斜辺部は、パワーサイクル試験における応力の分散に、外側(抵抗器長手方向両端面に縮幅する)斜辺部は、ヒートサイクル試験における応力の分散に有効である。
次に、この金属板抵抗器の構造の詳細について、図7を参照して説明する。この例は、抵抗値1mΩについてのものであり、抵抗器全体の長さ(L)は10mmであり、幅(W)は8.4mmであり、厚み(t)は0.65mmと極めて薄型の平板状チップ構造である。抵抗器の抵抗値は、両電極間に位置する抵抗体本体部21aの寸法と抵抗体材料の比抵抗によりその値が概略決定される。この例では、長さ(L)は4mmであり、幅(W)は6.4mmであり、厚み(t)は0.35mm程度に設定されている。抵抗体材料として、固有抵抗49μΩ・cmの銅ニッケル系合金を用いることで、上述したように抵抗値1mΩの抵抗器が得られる。
なお、抵抗体本体部の長さ(L)を3/4の3mmとして、その他の寸法を変更せず、また抵抗体材料の固有抵抗を変更しない場合には、抵抗値0.75mΩの抵抗器を製作することができる。また、抵抗体本体部の寸法を変更せず、抵抗体材料の固有抵抗が2倍の材料を用いることで、それぞれ抵抗値が1.5mΩ、2mΩの抵抗器を製作することができる。
電極22は、高導電性金属導体として銅が用いられている。その平面視形状は、抵抗体電極部と同一形状の細長い八角形状をなしている。その厚み(t)は、例えば200μmを採用している。この電極22の厚み(t)は精密級抵抗器の抵抗値精度を確保するうえで、後述するように重要である。なお、抵抗体電極部21bの厚みは約400μmであり、電極との合計厚みは約650μmである。これにより、薄型で、5W乃至8W程度の高い定格電力を有し、良好な抵抗温度係数(TCR)を有する精密級電流検出用抵抗器が得られる。また、この抵抗器ではトリミングカットを用いず、電流経路が直線状であるため、いわゆる無誘導(低インダクタンス)タイプであり、インダクタンスが極めて低い抵抗器である。
次に、この抵抗器の特徴的な構造について説明する。上述したように、抵抗体21は、前記一対の電極22,22の間に位置する抵抗体本体部21aと、この抵抗体本体部21aから連続的に拡幅する前記抵抗体本体部よりも広幅の八角形状の抵抗体電極部21bとから構成される。そして、前記抵抗体電極部21bの直下に前記抵抗体電極部と同一形状の八角形状の銅からなる電極22が接合されている。この実施例の場合、抵抗体本体部21aから連続的に45°の角度(θ)で拡幅し(辺A:内側の斜辺部)、前記抵抗体本体部21aの側面もしくは側辺と平行となり(辺B)、その先で45°の角度で縮幅し(辺C:外側の斜辺部)、端面(辺D)に接続され、抵抗体本体部21aよりも広幅の八角形状の抵抗体電極部21bが形成されている。ここで、辺A,B,Cは略等しい長さに形成されている。
ここで、抵抗体本体部から連続的に拡幅する角度θは、この実施例の場合45°であるが、30度乃至90度程度であることが好ましい。この角度θが大きく、直角に近くなると電極隅部の角部直下のはんだ接合面において応力が集中し易くなる。この角度θが小さいと、図3(a)に示すように従来のI字型抵抗器と同様にK部(図3(a)参照)のはんだ接合面が応力の集中しやすい部分となり、はんだの熱疲労が生じやすくなる。
実装基板にアルミニウム基板を採用すると、その線膨張係数は、27ppm/℃程度となる。これに対して、金属板抵抗器を構成する抵抗体の線膨張係数は、Cu−Ni系合金では14.9乃至16.5ppm/℃であり、Ni−Cr系合金では13乃至13.5ppm/℃であり、純銅の線膨張係数は16.5ppm/℃程度である。このため、同一の温度変化が印加された場合、アルミニウム基板は金属板抵抗器に対して約2倍の割合で伸縮する。そして、金属板抵抗器と実装基板との界面に、軟らかいはんだ接合面が存在するが、熱サイクル試験においてこのはんだ接合面に熱応力の印加/除去のサイクルが繰り返されることになる。
はんだ接合面に熱応力の印加/除去のサイクルが繰り返されると、はんだ接合面に熱疲労が生じ、微細なクラックが生じ、該クラックが生じた部分の抵抗値を局部的に増加させることになる。熱疲労がさらに進行すると、微細なクラックはさらに大きなクラックへと成長し、ついにははんだ接合面での剥離発生に到る。
熱サイクル試験の内、電流負荷の印加を断続的に繰り返すパワーサイクル試験では、電流負荷の印加時に最も発熱して高温となる部分が抵抗体本体部であり、この熱が電極部から実装基板に伝熱される。特に、抵抗体本体部に流れる電流の大部分は、抵抗体電極部のうち、抵抗体本体部の界面近くから下方の電極に流れ、さらにはんだ接合面を介して実装基板のランドに流れる。このため、抵抗体本体部は熱膨張し、電極部分を押し出す力が作用するが、熱伝導性の良好なアルミニウム基板に固定された電極部分は抵抗体本体部から離れるに従って低温となり、特に抵抗器長手方向両端面の部分では、温度上昇の程度が低く、大きな熱膨張・収縮は生じない。
このため、実装基板の発熱中心、すなわち、線膨張差による熱応力発生が主要な(もしくは支配的な)箇所は、電極部分の平面視抵抗体本体部との界面よりの部分と考えられ、この部分を中心として電極部分とアルミニウム基板とが伸縮すると考えられる。従って、抵抗器全体としては殆ど熱膨張や熱収縮が極めて小さいにもかかわらず、電極部分の抵抗体本体部近辺が周辺と比較して高度に熱膨張や熱収縮をすると考えられる。そこで、パワーサイクル試験においては、矩形状電極の場合にはその内側角部(図3(a)の符号Kで示す角部)のはんだ接合面において、アルミニウム基板と金属板抵抗器の線膨張係数差による熱応力が集中すると考えられる。上記実施形態例の抵抗器電極部においては、この応力の集中する部分に、抵抗体本体部から拡幅する内側の斜辺部Aを設けたので、この応力集中部を分散し、はんだ接合面の熱疲労を低減できる。
熱サイクル試験の内、高温と低温のサイクルを繰り返すヒートサイクル試験では、実装基板全体および金属板抵抗器全体に均一な温度が印加されるため、実装基板全体および金属板抵抗器全体が均一に熱膨張や熱収縮をする。すなわち、線膨張係数差による熱応力発生の主要箇所は、金属板抵抗器の平面視中心(抵抗体本体部の中心)と考えられ、この部分を中心としてアルミニウム基板と金属板抵抗器とが熱膨張や熱収縮をすると考えられる。従って、ヒートサイクル試験においては、電極部の角部のうち、特に平面視外側の角部(抵抗器長手方向両端面の角部)直下のはんだ接合面において熱応力が集中すると考えられる。上記実施形態例の抵抗器電極部においては、この応力の集中する部分に、抵抗器長手方向両端面に縮幅する外側側の斜辺部Cを設けたので、この応力集中部を分散し、はんだ接合面の熱疲労を低減できる。
すなわち、この実施形態例の金属板抵抗器においては、抵抗体本体部から連続的に拡幅する平面視八角形状の電極部分を備えることで、従来のI字型抵抗器の電極角部直下のはんだ接合面における応力集中を分散している。すなわち、従来のI字型抵抗器においては、アルミニウム基板による熱サイクル試験において、矩形状電極の内側角部(図3(a)の符号Kで示す角部)および外側角部(図3(a)の○で示す角部)直下のはんだ接合面に、アルミニウム基板と金属板抵抗器との線膨張差による熱応力が集中し、これによりはんだ接合面の熱疲労を招き、良好な試験結果が得られなかったが、上記平面視八角形状の電極部を備えることで、従来のI字型抵抗器の矩形状電極の角部を除去することで、応力を分散することができ、熱疲労を低減することができる。
また、抵抗体本体部から連続的に拡幅する平面視八角形状の電極部を備えることで、抵抗体本体部に流れる電流をスムーズに広幅の抵抗体電極部に均一に分散して流すことができる。これにより、電流分布が拡幅し、パワーサイクル試験における電流密度を低減するとともに伝熱密度を低減することができる。すなわち、抵抗体本体部を流れた電流は抵抗体電極部の抵抗体本体部に近い部分で大部分が銅電極に流れ、銅電極で均一な密度の電流となり、はんだ接合面を介してアルミニウム基板のランドに流れると考えられるので、上記抵抗体本体から拡幅する広幅の電極構造により電流の集中が緩和され、電流密度を低減できる。
また、抵抗体本体部から連続的に拡幅する平面視八角形状の電極部を備えることで、平面視八角形状の拡幅した電極部を八方からはんだフィレットで取り囲むことができる。特にパワーサイクル試験においては、平面視電極部内部を主要箇所として電極部が四方に伸縮するので、電極部を拡幅したうえで八方からはんだフィレットで取り囲むことで、電極部のはんだ接合面に生じる熱応力を効果的に分散できる。
特に、抵抗体本体部から拡幅する斜辺部A(図7(a)参照)は、熱応力の分散効果が大きく、後述するパワーサイクルテスト(電流の断続的印加による寿命試験)で、抵抗値変化率ΔRを小さく抑えるうえで重要な役割を果たしていると考えられる。
また、抵抗体電極部21bの端面(辺D)の両側に縮幅する斜辺部C(図7(a)参照)も熱応力の分散効果が大きく、特に後述するヒートサイクル試験において、抵抗値変化率ΔRを小さく抑えるうえで重要な役割を果たしていると考えられる。
図8は、上記H字型抵抗器と従来のI字型抵抗器とについて、アルミニウム基板に搭載してパワーサイクル試験を行った結果を示す。上記H字型抵抗器は、上述した構造の1mΩの抵抗値を有する抵抗器であり、従来のI字型抵抗器は、図3(a)に示す平板状抵抗体の両端に同幅の電極を備えた構造の1mΩの抵抗値を有する抵抗器であり、両者の抵抗体本体部の寸法は同一であり、抵抗体材料も同一である。従って、相違するのは抵抗体電極部と電極とからなる電極部の構造のみである。
パワーサイクル試験の条件は、12Wの電力を6秒オンし、6秒オフするサイクルを10万回繰り返すものである。試験結果は(a)に示すH字型抵抗器では、10万サイクルの結果、抵抗値変化率ΔRが1%以内に収まっているのに対し、(b)のI字型抵抗器では、抵抗値変化率ΔRが1%を超えるものが生じていることが分かる。このことから、電極部分を抵抗体本体部から連続的に拡幅する八角形状の電極形状とすることで、アルミニウム基板に実装しても抵抗値変化率ΔRを1%以内に抑えることが可能となる。但し、抵抗値変化率ΔRは、下記により算定される。
ΔR(%)=((R−R)/R)×100
:試験前の実測抵抗値 R:試験後の実測抵抗値
図9は、上記H字型抵抗器と従来のI字型抵抗器とについて、アルミニウム基板に搭載してヒートサイクル試験を行った結果を示す。試験条件は高温(125℃)中と低温(−40℃)中にそれぞれ30分間放置するサイクルを1000回繰り返すものである。この試験においても、電極部分を抵抗体本体部から連続的に拡幅する前記抵抗体本体部よりも広幅の平面視八角形状とすることで、(a)のH字型抵抗器においては、(b)のI字型抵抗器よりも抵抗値変化率ΔRが小さく抑えられるとともに、横軸のサイクル数の増加に伴って次第にそのΔR値の幅(すなわち、その絶対値)が次第に増加する。しかも、さらにそのΔR値の幅はI字型抵抗器よりもH字型抵抗器の方が明らかにより小さく収まっている。すなわち、図9(a)のH字型抵抗器と図9(b)のI字型抵抗器とでは、同じ250サイクルから1000サイクルまでの750サイクルの間において、ΔR値の幅はI字型抵抗器の方がH字型抵抗器よりも約5.3倍も増加していることを示している。
なお、これらの試験で、ΔRが上昇するということは、はんだ接合面に熱疲労による微細なクラックが発生し、これによりはんだ接合面に微少な抵抗値が形成されたことに起因するものと考えられる。上記試験結果から、抵抗体本体部から連続的に拡幅する八角形状の電極部分を備えることで、上記H字型抵抗器においては、熱膨張係数が金属板抵抗器とは大きく異なるアルミニウム基板に実装しても、はんだ接合面に熱疲労が殆ど生じないことを示している。すなわち、金属板抵抗器をアルミニウム基板等の線膨張係数の大きく異なる実装基板に実装するに際しても、パワーサイクル試験やヒートサイクル試験等の熱サイクル試験において、良好な信頼性試験結果を得ることができ、従って、アルミニウム基板に問題なく実装が可能であることを示している。
次に、電極の厚みについて、検討結果を説明する。金属板抵抗器の場合、大電流が実装基板の一方のランドから一方の電極に流れ、次いで抵抗体電極部を経て抵抗体本体部に流れ、他方の抵抗体電極部を経て他方の電極に流れ、さらに他方のランドに流れる。ここで、高導電性金属導体からなる電極は、その内部で均一な電位分布を有することが要請される。すなわち、ランドと電極の間ははんだ接合面により接続されるが、はんだ接合面の接続状態は必ずしも均一でなく、個々の実装状態でそれぞれ異なっている。しかしながら、仮に、ランドと電極の間のはんだ接合面の影響が測定結果の抵抗値のバラツキとなると、例えば抵抗値許容差±1%等の精密な抵抗値精度は得られない。そこで、ランドと電極の間のはんだ接合面の影響を受けることなく、電極内部では均一な電位分布となることが要請される。
従って、抵抗値の許容バラツキ範囲が例えば±1%の精密級抵抗器においては、電極内部の電位分布の高い均一性が要請されるが、銅電極の場合、その厚みが薄すぎると電位分布の均一性の確保が十分でなくなる。図10は、電極厚みと測定抵抗値の抵抗値変化率ΔRとの関係についてのシミュレーション結果を示す。上記抵抗値1mΩのH字型抵抗器においては、銅電極の厚みは、測定抵抗値の抵抗値変化率ΔRを0.5%以内に抑えるためには少なくとも150μmの厚みが必要であるとの結果が得られた。但し、抵抗値変化率ΔRは、下記により算定される。
ΔR(%)=((R−R)/R)×100
:目標抵抗値 R:実測抵抗値
また、この場合における抵抗値変化率ΔRのバラツキ幅は図10における銅電極の厚みを増加するに伴って次第に小さくなっていった。
係る観点からすると、銅電極の厚みは厚い程良いが、厚すぎると以下の問題がある。すなわち、抵抗器の薄型化の要求があるなかで、銅電極の厚み(t)を増加させることは、直接的に抵抗器全体の厚み(t)を厚くしてしまうことにつながる(図7(c)参照)。この観点から銅電極の厚み(t)はおのずから制限されることになる。これらの観点からすると、銅電極の厚み(t)は、少なくとも150μmの厚みを有することが好ましい。
上記H字型抵抗器においては電極の厚み(t)として、例えば200μmを採用している。図11は、上記H字型抵抗器の抵抗温度係数(TCR)の実測結果を示す。この実測結果では、バラツキを含めて抵抗温度係数(TCR)が±40ppm/℃以内に収まっていることが示されている。抵抗体素材の抵抗温度係数(TCR)が±20ppm/℃程度であるので、銅の高い抵抗温度係数(TCR)の影響を殆ど受けず、抵抗器全体として良好な抵抗温度係数(TCR)が得られていることが分かる。
すなわち、上記H字型抵抗器においては、抵抗体電極部を抵抗体本体部から連続的に拡幅する前記抵抗体本体部よりも広幅の平面視八角形状のものとして、その直下に厚み200μmの銅電極を配置することで、銅電極の高い抵抗温度係数(TCR)の寄与分を低減し、抵抗体素材の抵抗温度係数(TCR)に近い抵抗温度係数(TCR)を実現している。
なお、上記の実施形態例では、電極部分を平面視八角形状とする例について説明したが、その角部分を曲面としてもよく、曲面としても同一の作用効果が得られることは勿論である。
これまで本発明の一実施形態例について説明したが、本発明は上述の実施形態例に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことはいうまでもない。
本発明の第1の実施形態例の金属板抵抗器を示す、(a)は平面図であり、(b)は縦断面図であり、(c)は底面図であり、(d)は実装状態を示す縦断面図である。 (a)は比較例として従来の金属板抵抗器の構成例を示す平面図であり、(b)は本発明の実施形態例の金属板抵抗器の構成例を示す平面図である。 (a)は比較例として従来の金属板抵抗器における実装状態の金属板抵抗器の底面の状態を示す図であり、(b)は本発明の実施形態例の金属板抵抗器の底面の状態を示す図である。 本発明の第2の実施形態例の金属板抵抗器を示す、(a)は平面図であり、(b)は縦断面図であり、(c)は底面図である。 本発明の第3の実施形態例の金属板抵抗器を示す、(a)は平面図であり、(b)は縦断面図であり、(c)は底面図である。 本発明の第4の実施形態例の金属板抵抗器を示す、(a)は要部の斜視図であり、(b)は完成品の斜視図である。 上記図6(a)の金属板抵抗器を示す、(a)は平面図であり、(b)は底面図であり、(c)は(a)のX線に沿った縦断面図である。 (a)はH字型抵抗器についてのパワーサイクル試験の結果を示すグラフであり、(b)は比較例としてのI字型抵抗器についてのパワーサイクル試験の結果を示すグラフである。 (a)はH字型抵抗器についてのヒートサイクル試験の結果を示すグラフであり、(b)は比較例としてのI字型抵抗器についてのヒートサイクル試験の結果を示すグラフである。 電極厚みと測定抵抗値のバラツキΔRとの関係についてのシミュレーション結果を示すグラフである。 H字型抵抗器の抵抗温度係数(TCR)の実測結果を示すグラフである。
符号の説明
10 金属板抵抗器
11 抵抗体
11a 抵抗体中央(本体)部
11b,11c 抵抗体両端(電極)部
12,13 電極
15 絶縁層
20 金属板抵抗器
21 抵抗体
21a 抵抗体本体部
21b 抵抗体電極部
22 電極
23 保護コート
24 メッキコート(電極部分)
100 実装基板(アルミニウム基板)
101,102 ランドパターン
103 はんだ

Claims (11)

  1. 金属板からなる抵抗体と、少なくとも一対の電極とを備え、実装基板へ面で実装する金属板抵抗器であって、
    前記抵抗体の両端部を抵抗体電極部として、該抵抗体電極部の下面に前記電極を接合し、
    前記抵抗体電極部の間に位置する抵抗体本体部の幅を、前記電極の幅よりも狭くしたことを特徴とする金属板抵抗器。
  2. 前記抵抗体電極部の形状と、前記電極の形状とが略同一であることを特徴とする請求項1記載の金属板抵抗器
  3. 前記電極の平面視形状が矩形状であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の金属板抵抗器
  4. 前記電極の隅部分を斜辺としたものであることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の金属板抵抗器
  5. 前記電極の隅部分を曲面としたものであることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の金属板抵抗器
  6. 前記電極は、八角形状をなしていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の金属板抵抗器
  7. 前記抵抗体電極部は、前記抵抗体本体部よりも広幅であることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の金属板抵抗器。
  8. 前記抵抗体電極部は、前記抵抗体本体部から30度乃至90度の角度で拡幅していることを特徴とする請求項7記載の金属板抵抗器
  9. 前記抵抗体電極部は、前記抵抗体本体部から45度の角度で拡幅していることを特徴とする請求項8記載の金属板抵抗器
  10. 前記電極は、少なくとも150μmの厚みを有することを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の金属板抵抗器
  11. 金属板からなる抵抗体と、少なくとも一対の電極とを備え、実装基板へ面で実装する金属板抵抗器であって、
    前記抵抗体の両端部を抵抗体電極部として、該抵抗体電極部の下面に前記抵抗体電極部と平面視同一形状の八角形状の前記電極が接合し、
    前記抵抗体電極部の間に位置する抵抗体本体部の幅を、前記電極の幅よりも狭くし、
    該抵抗体電極部は、平面視八角形状をなし、前記抵抗体本体部と断面視上面が同一平面をなしていて、断面視下面が前記抵抗体本体部下面よりも下方に突出し、
    前記抵抗体本体部の上面と、前記抵抗体電極部の上面の一部と、前記抵抗体本体部の下面と、前記抵抗体本体部の側面とを一体的に被覆する保護コートが設けられ、
    前記電極の下面と、前記電極の側面と、前記抵抗体電極部の側面と、前記抵抗体電極部の上面の前記保護コートが被覆されていない部分とを一体的に被覆するメッキコートが設けられていることを特徴とする金属板抵抗器
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