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JP4450971B2 - 水性インク組成物 - Google Patents

水性インク組成物 Download PDF

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JP4450971B2
JP4450971B2 JP2000350631A JP2000350631A JP4450971B2 JP 4450971 B2 JP4450971 B2 JP 4450971B2 JP 2000350631 A JP2000350631 A JP 2000350631A JP 2000350631 A JP2000350631 A JP 2000350631A JP 4450971 B2 JP4450971 B2 JP 4450971B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水性インク組成物に関する。更に詳しくは、インクジェット記録用水性インク組成物として好適に使用しうる水性インク組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録方式は、非常に微細なノズルからインク液滴を記録部材に直接吐出、付着させて、文字や画像を得る記録方式である。この方式によれば、使用する装置が低騒音で操作性がよいという利点を有するのみならず、カラー化が容易であり、かつ記録部材として普通紙を使用することができるという利点があるため、近年広く用いられている。
【0003】
インクジェットプリンタに使用されるインクには、水性インク、油性インク及びソリッドインクがある。水性インクは、主成分に水が使用されており、その中に染料や顔料分散体等の着色剤、及び吐出性や画質の調整剤として保湿剤、界面活性剤等が配合されている。その界面活性剤としては、ポリエチレングリコールラウリルエーテルやポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等が着弾精度の向上剤として使用することが提案されている(特開昭60-32866号公報、特開平4-239067号公報)。
【0004】
しかしながら、水性インクに着弾精度を向上させるだけの量の界面活性剤を配合した場合、水性インクが紙の繊維に沿って広がってしまうという文字品位の低下や、印字濃度の低下といった欠点を招く。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、優れた吐出性を有しながら、印字濃度の低下を防ぎ、耐水性及び耐マーカー性に優れた水性インク組成物を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、(A)水性媒体、(B)着色剤、並びに(C)式(I):
1 −O−(R2 −O)m −R3 (I)
(式中、R1 及びR3 はそれぞれ独立して炭素数1〜8のヘテロ原子を含んでいてもよい1価の炭化水素基、R2 は炭素数2〜10の2価の炭化水素基、mは3〜60の数を示す)
で表される化合物及び式(II):
4 −〔O−(R2 −O)n −R5 w (II)
(式中、R2 は前記と同じ。R4 はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1〜20のw価の炭化水素基、R5 の少なくとも1つはヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1〜8の1価の炭化水素基を示し、残りのR5 は水素原子を示す。nは1〜40の数、wは3〜10の数を示す)
で表される化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種のポリアルキレンオキシド誘導体を含有してなり、前記ポリアルキレンオキシド誘導体の含有量が0.01〜50重量%である水性インク組成物に関する。
【0007】
【発明の実施の形態】
(A)水性媒体としては、水、水と前記ポリアルキレンオキシド誘導体以外の水溶性有機溶媒との混合物が挙げられる。水としては、一般にイオン交換水を用いることができる。前記ポリアルキレンオキシド誘導体以外の水溶性有機溶媒としては、例えば、米国特許第5,085,698 号明細書に開示されているものが挙げられる。その中では、炭素数2〜6のアルキレングリコールが好ましく、エチレングリコール及びプロピレングリコールがより好ましい。水と水溶性有機溶媒との混合物は、要求する表面張力、粘度及び印字画質に応じて適宜選択することが好ましい。好適な水と水溶性有機溶媒との混合物としては、炭素数2〜6のアルキレングリコールとイオン交換水との混合物が挙げられる。
【0008】
水性インク組成物における水性媒体の含有量は、インクを吐出させる方法及び要求する印字画質等により限定されるものではないが、吐出安定性に影響を及ぼすインク粘度及び印字濃度の観点から、10〜99.7重量%、好ましくは50〜96重量%、更に好ましくは75〜93重量%であることが望ましい。
【0009】
(B)着色剤としては、水に可溶な染料、自己分散性顔料、界面活性剤及び/又は水に可溶なポリマーで顔料を水性媒体に分散させた分散体に含有されている顔料(以下、「分散体に含有されている顔料」という)、水に不溶なポリマーに染料若しくは顔料を含有させたポリマー微粒子等が挙げられる。これらの中では、優れた耐水性及び耐マーカー性を印字物に付与する観点から、水に不溶なポリマーに染料又は顔料を含有させたポリマー微粒子が好ましい。
【0010】
なお、本明細書にいう「分散体に含有されている顔料」とは、具体的には、界面活性剤及び/又は水に可溶なポリマーで顔料を水性媒体に分散させた分散体が水性インク組成物に含有されており、その分散体に含有されている顔料のことをいう。
【0011】
水に可溶な染料としては、酸性染料、塩基性染料、直接染料及び反応性染料が挙げられる。
【0012】
酸性染料としては、特に限定されるものではないが、例えば、C.I.アシッド・ブラック2、C.I.アシッド・ブラック52;C.I.アシッド・イエロー23;C.I.アシッド・レッド51、C.I.アシッド・レッド87、C.I.アシッド・レッド92;C.I.アシッド・ブルー1、C.I.アシッド・ブルー9、C.I.アシッド・ブルー74等が挙げられる。
【0013】
塩基性染料としては、特に限定されるものではないが、例えば、C.I.ベーシック・イエロー2、C.I.ベーシック・イエロー11;C.I.ベーシック・レッド1、C.I.ベーシック・レッド13;C.I.ベーシック・バイオレット1、C.I.ベーシック・バイオレット3、C.I.ベーシック・バイオレット7、C.I.ベーシック・バイオレット10;C.I.ベーシック・ブルー5、C.I.ベーシック・ブルー7、C.I.ベーシック・ブルー9、C.I.ベーシック・ブルー26等が挙げられる。
【0014】
直接染料としては、特に限定されるものではないが、例えば、C.I.ダイレクト・ブラック19等が挙げられる。
【0015】
反応性染料としては、特に限定されるものではないが、例えば、C.I.リアクティブ・レッド180 等が挙げられる。
【0016】
自己分散性顔料としては、顔料を水性媒体中に安定に分散させ得る官能基を直接顔料に化学結合させ、分散剤なしでも水性媒体中に安定に分散可能な顔料であればよい。その中では、キャボット(Cabot) 社から市販されているCabo-Jet200(商品名)が印字濃度を高める観点から好ましい。
【0017】
分散体に用いられる界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤及び両イオン性界面活性剤が挙げられ、これら、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0018】
水に可溶なポリマーとしては、親水性モノマーと疎水性モノマーとを、得られるポリマーが水可溶となるように共重合させたものが挙げられる。親水性モノマーとしては、不飽和カルボン酸モノマー、不飽和スルホン酸モノマー、不飽和リン酸モノマー、不飽和アミンモノマー等の塩生成基含有モノマー及びその塩、水酸基、アシド基、オキシアルキレン基等を含むノニオン性モノマーが挙げられる。疎水性モノマーとしては、スチレン等の芳香族基を含有するモノマー、(メタ)アクリル酸の炭素数1〜30のアルキルエステルモノマー等が挙げられる。これらの中では、スチレン−(メタ)アクリル酸塩共重合体、炭素数1〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステル−(メタ)アクリル酸塩共重合体、スチレン−炭素数1〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステル−(メタ)アクリル酸塩共重合体、及びスチレン−炭素数1〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステル−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート塩共重合体が分散安定性及び吐出安定性の観点から好ましい。
【0019】
顔料としては、無機顔料及び有機顔料のいずれを使用することもできる。また、必要により、それらに体質顔料を併用することもできる。
【0020】
無機顔料としては、カーボンブラック、金属酸化物、金属硫化物、金属塩化物等が挙げられ、特に黒色水性インクではカーボンブラックが好ましい。カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等が挙げられる。
【0021】
有機顔料としては、アゾ顔料、ジアゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、チオインジゴ顔料、アンソラキノン顔料、キノフタロン顔料等が挙げられる。体質顔料としては、シリカ、炭酸カルシウム、タルク等が挙げられる。
【0022】
界面活性剤及び/又は水に可溶なポリマーで顔料を水性媒体に分散させた分散体において、顔料の量は、分散安定性、吐出安定性及び印字濃度の観点から、界面活性剤及び/又は水に可溶なポリマー100重量部に対して50〜1000000重量部であることが望ましい。
【0023】
水に不溶なポリマーに染料又は顔料を含有させたポリマー微粒子は、水に不溶なポリマーに染料又は顔料を含有させることによって得られる。
【0024】
水に不溶なポリマーとしては、ビニルポリマー、エステル系ポリマー、ウレタン系ポリマー等が挙げられる。これらポリマーの中では、ビニルポリマーが好ましい。ビニルポリマーのなかでは、
(a)塩生成基含有モノマーと、
(b)式(III):
CH2 =C(R6 )COO(R7 O)p 8 (III)
(式中、R6 は水素原子又は炭素数1〜5の低級アルキル基、R7 はヘテロ原子を有していてもよい炭素数1〜30の2価の炭化水素基、R8 は水素原子又はヘテロ原子を有していてもよい炭素数1〜30の1価の炭化水素基、pは1〜60の数を示す)
で表されるモノマーと、
(c)マクロマーと、
(d)前記(a)〜(c)成分と共重合可能なモノマー
とを共重合させてなるビニルポリマーが分散安定性、吐出安定性、耐水性及び耐マーカー性の観点から好ましい。
【0025】
(a)塩生成基含有モノマーとしては、カチオン性モノマー、アニオン性モノマー等が挙げられ、その例として、特開平9−286939号公報5頁7欄24行〜8欄29行に記載されているもの等が挙げられる。
【0026】
カチオン性モノマーの代表例としては、不飽和3級アミン含有モノマー、不飽和アンモニウム塩含有モノマー等が挙げられる。これらの中では、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−(N’,N’−ジメチルアミノプロピル)(メタ)アクリルアミド及びビニルピロリドンが好ましい。
【0027】
アニオン性モノマーの代表例としては、不飽和カルボン酸モノマー、不飽和スルホン酸モノマー、不飽和リン酸モノマー等が挙げられ、これらの中では、アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和カルボン酸モノマーが好ましい。
【0028】
(b)式(III) で表されるモノマーは、本発明の水性インク組成物の吐出安定性を高め、連続印字してもヨレの発生を抑制するという優れた効果を発現するものである。
【0029】
式(III) において、R6 は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基である。
7 は、ヘテロ原子を有していてもよい炭素数1〜30の2価の炭化水素基である。ヘテロ原子としては、例えば、窒素原子、酸素原子、ハロゲン原子及び硫黄原子が挙げられる。
【0030】
7 の代表例としては、置換基を有していてもよい炭素数6〜30の芳香族環、置換基を有していてもよい炭素数3〜30のヘテロ環及び置換基を有していてもよい炭素数1〜30のアルキレン基が挙げられ、これらの環又は基は2種以上を組合わせたものであってもよい。置換基としては、炭素数6〜29の芳香族環、炭素数3〜29のヘテロ環、炭素数1〜29のアルキル基、ハロゲン原子、アミノ基等が挙げられる。
【0031】
7 の好適な例としては、炭素数1〜24の置換基を有していてもよいフェニレン基、炭素数1〜30、好ましくは炭素数1〜20の脂肪族アルキレン基、芳香族環を有する炭素数7〜30のアルキレン基及びヘテロ環を有する炭素数4〜30のアルキレン基が挙げられる。
【0032】
また、R7 O基の好適な例としては、エチレンオキサイド基、(イソ)プロピレンオキサイド基、テトラメチレンオキサイド基、ヘプタメチレンオキサイド基、ヘキサメチレンオキサイド基及びこれらアルキレンオキサイドの1種以上の組合せからなる炭素数2〜7のアルキレンオキサイド基やフェニレンオキサイド基が挙げられる。
【0033】
8 は、水素原子又はヘテロ原子を有していてもよい炭素数1〜30の1価の炭化水素基である。ヘテロ原子としては、例えば、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子が挙げられる。
【0034】
8 の代表例としては、置換基を有していてもよい炭素数6〜30の芳香族環、置換基を有していてもよい炭素数3〜30のヘテロ環、又は置換基を有していてもよい炭素数1〜30のアルキル基が挙げられる。置換基としては、炭素数6〜29の芳香族環、炭素数4〜29のヘテロ環、ハロゲン原子、アミノ基等が挙げられる。
【0035】
8 の好適な例としては、フェニル基、炭素数1〜30、好ましくは炭素数1〜20の脂肪族アルキル基、芳香族環を有する炭素数7〜30のアルキル基及びヘテロ環を有する炭素数4〜30のアルキル基が挙げられる。
【0036】
8 のより好適な例としては、メチル基、エチル基、(イソ)プロピル基、(イソ)ブチル基、(イソ)ペンチル基、(イソ)ヘキシル基等の炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基等が挙げられる。
pは1〜60の数であるが、中でも1〜30の数が好ましい。
【0037】
式(III) で表されるモノマーの具体例としては、メトキシポリエチレングリコール(1〜30:式(III) 中のpの値を示す。以下同じ)(メタ)アクリレート、メトキシポリテトラメチレングリコール(1〜30)(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(1〜30)(メタ)アクリレート、(イソ)プロポキシポリエチレングリコール(1〜30)(メタ)アクリレート、ブトキシポリエチレングリコール(1〜30)(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(1〜30)(メタ)アクリレート、メトキシ(エチレングリコール・プロピレングリコール共重合)(1〜30、その中のエチレングリコール:1〜29)(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上を混合して使用することができる。これらの中では、メトキシポリエチレングリコール(1〜30)(メタ)アクリレートが好ましい。なお、本明細書における「(メタ)アクリレート」は、アクリレート又はメタクリレートを示す。また、「(イソ)プロポキシ」は、n−プロポキシ又はイソプロポキシを示す。
【0038】
(c)マクロマーとしては、数平均分子量500 〜100000、好ましくは1000〜10000 の重合可能な不飽和基を有するモノマーであるマクロマーが挙げられる。その中では、式(IV):
X(Y)q Si(R9 3-r (Z)r (IV)
(式中、Xは重合可能な不飽和基、Yは2価の結合基、Zは数平均分子量が500 以上の1価のシロキサンポリマーの残基、R9 は水素原子、低級アルキル基、アリール基又はアルコキシ基、qは0又は1、rは1〜3の整数を示す)
で表されるシリコーンマクロマー及び/又は片末端に重合性官能基を有するスチレン系マクロマーが好ましい。
【0039】
マクロマーの数平均分子量は、溶媒として1mmol/Lのドデシルジメチルアミン含有クロロホルムを用いたゲルクロマトグラフィーにより、標準物質としてポリスチレンを用いて測定される。
【0040】
シリコーンマクロマーは、インクジェットプリンターのヘッドの焦げ付きを防止する観点から、好適に使用しうるものである。
【0041】
式(IV)で表されるシリコーンマクロマーにおいて、Xとしては、CH2 =CH−基、CH2 =C(CH3 )−基等の炭素数2〜6の1価の不飽和炭化水素基が挙げられる。Yとしては、−COO−基、−COOCa 2a−基(aは1〜5の整数を示す)、フェニレン基等の2価の結合基が挙げられ、−COOC3 6 −が好ましい。R9 としては、水素原子;メチル基、エチル基等の炭素数1〜5の低級アルキル基;フェニル基等の炭素数6〜20のアリール基、メトキシ基等の炭素数1〜20のアルコキシ基等が挙げられ、これらの中ではメチル基が好ましい。Zは、好ましくは数平均分子量500 〜5000のジメチルシロキサンポリマーの1価の残基である。qは0又は1であるが、好ましくは1である。rは1〜3の整数であるが、好ましくは1である。
【0042】
シリコーンマクロマーの代表例としては、式(I-1):
CH2 =CR10-COOC3H6-[Si(R11)2-O] b-Si(R11)3 (I-1)
(式中、R10は水素原子又はメチル基、R11はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜5の低級アルキル基、bは5〜60の数を示す)で表されるシリコーンマクロマー、式(I-2):
CH2 =CR10-COO-[Si(R11)2-O] b-Si(R11)3 (I-2)
(式中、R10、R11及びbは前記と同じ)で表されるシリコーンマクロマー、式(I-3):
CH2 =CR10-Ph-[Si(R11)2-O] b -Si(R11)3 (I-3)
(式中、Phはフェニレン基、R10、R11及びbは前記と同じ)で表されるシリコーンマクロマー、式(I-4):
CH2 =CR10-COOC3H6-Si(OE)3 (I-4)
〔式中、R10は前記と同じ。Eは式: -[Si(R10)2O] c -Si(R10)3 基(R10は前記と同じ。cは5〜65の数を示す)を示す〕
で表されるシリコーンマクロマー等が挙げられる。
【0043】
これらの中では、式(I-1)で表されるシリコーンマクロマーが好ましく、特に、式(I-1a):
CH2=C(CH3)-COOC3H6-[Si(CH3)2-O] d -CH3 (I-1a)
(式中、dは8〜40の数を示す)
で表されるシリコーンマクロマーが好ましい。その例として、FM−0711(チッソ(株)製、商品名)等が挙げられる。
【0044】
スチレン系マクロマーは、ビニルポリマーに顔料を十分に含有させる観点から、好適に使用しうるものである。
【0045】
スチレン系マクロマーとしては、片末端に重合性官能基を有するスチレン単独重合体又はスチレンと他のモノマーとの共重合体が挙げられる。これらの中では、片末端に重合性官能基としてアクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基を有するものが好ましい。前記共重合体におけるスチレン含量は、顔料が十分にビニルポリマーに含有されるようにする観点から、60重量%以上、好ましくは70重量%以上であることが望ましい。前記他のモノマーとしては、アクリロニトリル等が挙げられる。
【0046】
(d)前記(a)〜(c)成分と共重合可能なモノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、(イソ)プロピル(メタ)アクリレート、(イソ又はターシャリー)ブチル(メタ)アクリレート、(イソ)アミル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、(イソ)オクチル(メタ)アクリレート、(イソ)デシル(メタ)アクリレート、(イソ)ドデシル(メタ)アクリレート、(イソ)ステアリル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類;スチレン、ビニルトルエン、2−メチルスチレン、クロロスチレン等のスチレン系モノマー等が挙げられ、これらは、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。なお、前記(イソ又はターシャリー)及び(イソ)は、これらの基が存在している場合とそうでない場合の双方を意味し、これらの基が存在していない場合には、ノルマルを示す。
【0047】
なお、前記(d)成分は、印字濃度及び耐マーカー性向上の観点から、スチレン系モノマーを含んでいることが好ましい。スチレン系モノマーとしては、スチレン及び2−メチルスチレンが好ましく、これら単独で用いてもよく、併用してもよい。この場合、(d)成分におけるスチレン系モノマーの含有量は、印字濃度及び耐マーカー性向上の観点から、10〜100 重量%、好ましくは40〜100 重量%であることが望ましい。
【0048】
ビニルポリマーにおける(a)塩生成基含有モノマーの含量は、得られる分散体の分散安定性の観点から、1〜40重量%、好ましくは2〜40重量%が望ましい。
【0049】
ビニルポリマーにおける(b)式(III) で表されるモノマーの含量は、吐出安定性及び分散安定性の観点から、5〜50重量%、好ましくは10〜40重量%であることが望ましい。
【0050】
ビニルポリマーにおける(c)マクロマーの含量は、インクジェットプリンターのヒーター面の焦げ付きを抑制する観点及び安定性の観点から、1〜25重量%、好ましくは5〜20重量%が望ましい。
【0051】
ビニルポリマーにおける(d)前記(a)〜(c)成分と共重合可能なモノマーの含量は、インクジェットプリンターのヒーター面の焦げ付きを抑制する観点及び安定性の観点から、5〜93重量%、好ましくは10〜80重量%が望ましい。なお、スチレン系モノマーを含む場合、ビニルポリマーにおける前記(d)成分の含量は、10〜60重量%が好ましい。
【0052】
また、ビニルポリマーにおける(a)塩生成基含有モノマーと(b)式(III) で表されるモノマーとの合計含量は、水中での分散安定性及び吐出安定性の観点から、6〜75重量%が好ましい。
【0053】
ビニルポリマーは、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の公知の重合法により、モノマー混合物を共重合させることによって製造される。これらの重合法の中では、溶液重合法が好ましい。
【0054】
溶液重合法で用いる溶媒としては極性有機溶媒が好ましく、水混和性有機溶媒を水と混合して用いることもできる。有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール等の炭素数1〜3の脂肪族アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸エチル等のエステル類等が挙げられる。これらの中では、メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン又はこれらと水との混合液が好ましい。
【0055】
なお、重合の際には、ラジカル重合開始剤を用いることができる。ラジカル重合開始剤としては、2, 2' −アゾビスイソブチロニトリル、2, 2' −アゾビス(2, 4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル−2, 2' −アゾビスブチレート、2, 2' −アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1, 1' −アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)等のアゾ化合物が好適である。また、t−ブチルペルオキシオクトエート、ジ−t−ブチルペルオキシド、ジベンゾイルオキシド等の有機過酸化物を使用することもできる。
【0056】
重合開始剤の量は、モノマー混合物に対して0.001 〜5モル%、特に0.01〜2モル%であることが好ましい。
【0057】
ビニルポリマーの重量平均分子量は、3000〜100000であることが、印刷後の耐水性、耐マーカー性及び分散安定性の点から好ましい。
【0058】
水に不溶なポリマーに染料又は顔料を含有させたポリマー微粒子に用いられる染料としては、疎水性染料を好適に使用することができる。
【0059】
疎水性染料は、水に不溶のポリマー微粒子中に含有させることができる染料であれば特に制限されない。その例としては、油性染料、分散染料、塩基性染料等が挙げられる。これらの中では、油性染料及び分散染料がポリマー微粒子中に良好に含有させることができることから好ましい。
【0060】
油性染料としては、特に限定されるものではないが、例えば、C.I.ソルベント・ブラック3、7、27、29、34;C.I.ソルベント・イエロー14、16、29、56、82;C.I.ソルベント・レッド1、3、8、18、24、27、43、51、72、73;C.I.ソルベント・バイオレット 3;C.I.ソルベント・ブルー2、11、70;C.I.ソルベント・グリーン3、7;C.I.ソルベント・オレンジ2等が挙げられる。
【0061】
分散染料としては、特に限定されるものではないが、好ましい例としては、C.I.ディスパーズ・イエロー5、42、54、64、79、82、83、93、99、100 、119 、122 、124 、126 、160 、184:1 、186 、198 、199 、204 、224 、237 ;C.I.ディスパーズ・オレンジ13、29、31:1、33、49、54、55、66、73、118 、119 、163 ;C.I.ディスパーズ・レッド54、60、72、73、86、88、91、93、111 、126 、127 、134 、135 、143 、145 、152 、153 、154 、159 、164 、167:1 、177 、181 、204 、206 、207 、221 、239 、240 、258 、277 、278 、283 、311 、323 、343 、348 、356 、362 ;C.I.ディスパーズ・バイオレット33;C.I.ディスパーズ・ブルー56、60、73、87、113 、128 、143 、148 、154 、158 、165 、165:1 、165:2 、176 、183 、185 、197 、198 、201 、214 、224 、225 、257 、266 、267 、287 、354 、358 、365 、368 ;C.I.ディスパーズ・グリーン6:1 、9等が挙げられる。
【0062】
疎水性染料は、後述する水に不溶なポリマー微粒子中に効率的に封入させる観点から、有機溶媒に2g/L以上、好ましくは20〜500 g/L溶解しうるものであることが望ましい。
【0063】
疎水性染料を含有するポリマー微粒子は、乳化法によって製造することができる。例えば、ポリマー及び疎水性染料を有機溶媒に溶解させ、必要に応じて中和剤を加えてポリマー中の塩生成基をイオン化し、これに水を添加した後、必要に応じて超音波乳化機を用いて乳化を行ない、その有機溶媒を留去して水性に転相することによって得ることができる。
【0064】
水に不溶なポリマーに染料又は顔料を含有させたポリマー微粒子に用いられる顔料としては、分散体に含有されている顔料と同様のものを使用することができる。
【0065】
染料又は顔料を含有させたポリマー微粒子を得る方法としては、ポリマーを有機溶媒に溶解させ、染料又は顔料、水、中和剤及び必要に応じ界面活性剤を加えて混練し、ペーストとした後、該ペーストを必要に応じて水で希釈し、有機溶媒を留去して水性にする方法が好ましい。ポリマー微粒子は、水分散体として得られ、該水分散体の形態でインクに配合することができる。
【0066】
ポリマー微粒子中の染料又は顔料の量は、印字濃度やポリマー微粒子への含有のさせやすさの観点から、ポリマーの固形分100 重量部に対して20〜400 重量部が好ましく、更に好ましくは40〜300 重量部である。また、水性インク中の疎水性染料又は顔料の含有量は、印字濃度や吐出安定性の観点から1〜30重量%が好ましく、3〜15重量%が更に好ましい。
【0067】
ポリマー微粒子の粒径は、分散安定性の観点から、0.01〜0.5 μmであることが好ましい。
【0068】
水性インク組成物における(B)着色剤の含有量は、十分な印字濃度が得られるのであればよく、特に限定がない。通常、該含有量は、十分な印字濃度と耐乾燥性を付与する観点から、0.2 〜30重量%、好ましくは2〜20重量%、更に好ましくは4〜10重量%であることが望ましい。
【0069】
本発明の水性インク組成物には、(C)式(I)で表される化合物及び式(II)で表される化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種のポリアルキレンオキシド誘導体が含有されている点に、1つの大きな特徴がある。前記(C)ポリアルキレンオキシド誘導体は、水性インク組成物の吐出性を向上させ、かつ高い印字濃度を発現させるという優れた性質を発現する化合物である。
【0070】
式(I)で表される化合物において、R1 及びR3 は、それぞれ独立してヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1〜8の1価の炭化水素基である。ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1〜8の1価の炭化水素基としては、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1〜8の1価の飽和又は不飽和の炭化水素基であればよく、好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基又はフェニル基である。これらの中では、メチル基又はエチル基が、水性インク組成物の吐出性を向上させ、良好な印字濃度を維持する観点から好ましい。
【0071】
2 は、炭素数2〜10の2価の炭化水素基である。炭素数2〜10の2価の炭化水素基としては、エチレン基、(イソ)プロピレン基、(イソ)ブチレン基、(イソ)ペンテン基、(イソ)ヘキセン基、(イソ)ヘプテン基、(イソ)オクテン基等が挙げられる。これらの基の中では、エチレン基、(イソ)プロピレン基、(イソ)ブチレン基、エチレン基と(イソ)プロピレン基との併存、エチレン基と(イソ)ブチレン基との併存が好ましい。
【0072】
mは3〜60の数である。その中では、mは4〜20の数であることが吐出安定性及び印字濃度の観点から好ましい。
【0073】
式(I)において、−(R2 −O)m −で表されるポリアルキレンオキサイド基としては、重合度が3〜60のポリエチレンオキサイド、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体、エチレンオキサイド−テトラメチレンオキサイド共重合体、炭素数3〜10のアルキレングリコールのエチレンオキサイド付加物(重合度=3〜60)、フェニレングリコールのエチレンオキサイド付加物(重合度=3〜60)、炭素数3〜10のアルキレングリコールのエチレンオキサイド- プロピレンオキサイド付加共重合体(重合度=3〜60)、フェニレングリコールのエチレンオキサイド−プロピレンオキサイド付加共重合体(重合度=3〜60)等が挙げられる。これらの中では、吐出性の観点から、重合度が10〜30のポリエチレンオキサイド、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体、炭素数3〜10のアルキレングリコールのエチレンオキサイド付加物(重合度=10〜30)及びフェニレングリコールのエチレンオキサイド付加物(重合度=10〜30)が好ましく、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体、炭素数3〜10のアルキレングリコールのエチレンオキサイド付加物(重合度=10〜30)及びフェニレングリコールのエチレンオキサイド付加物(重合度=10〜30)がより好ましい。
【0074】
式(II)で表される化合物は、3 〜10価の水酸基を有する多価アルコールにアルキレンオキサイドの所定量を付加し、その末端基のうち少なくとも1つの基をヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1〜8の1価の炭化水素基でエーテル化したポリアルキレンオキサイドが挙げられる。
【0075】
3 〜10価の水酸基を有する多価アルコールとしては、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン、ペンタグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,2,6-ヘキサントリオール、ペンタエリスルトール、エリスリトール、キシリトール、キシロース、ソルビトール、ソルビタン、リボース、マンニトール、マンニタン、マルチトール、ラクチノール、パラチニット、マルチトリイトール、マルチテトライトール、ラクチュロース、ラフィノース、ケストース、ニストース、フラクトシルニストース、α―メチルグルコシド、シクロデキストリン等が挙げられる。これらの中では、水性インク組成物の吐出性を向上させる観点から、グリセリン、ジグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、α- メチルグルコシド及びソルビトールが好ましい。
【0076】
5 の少なくとも1つはヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1〜8の1価の炭化水素基であり、残りのR5 は水素原子である。R5 は、好ましくはメチル基、エチル基、(イソ)プロピル基、(イソ)ブチル基、(イソ)ペンチル基、(イソ)ヘキシル基又はフェニル基である。これらの中では、メチル基又はエチル基が水性インク組成物の吐出性の向上及び印字濃度の維持・向上の観点から、より好ましい。
【0077】
式(II)で表される化合物において、R2 は、式(I)におけるR2 と同様である。
【0078】
式(II)で表される化合物における−(R2 −O)n −で表されるポリアルキレンオキサイド基としては、総付加モル数が3〜400 のポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体、エチレンオキサイド−テトラメチレンオキサイド共重合体等が挙げられる。これらの中では、総付加モル数が5〜100 、好ましくは10〜50であるポリエチレンオキサイド及びエチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体が、水性インク組成物の吐出性を向上させ、良好な印字濃度を維持する観点から望ましい。
【0079】
ポリアルキレンオキシド誘導体の表面張力は、吐出性及び印字品位の観点から50〜70mN/m以上であることが好ましく、55〜65mN/mであることが更に好ましい。
【0080】
なお、本明細書でいう表面張力は、ポリアルキレンオキシド誘導体をイオン交換水で濃度が10重量%となるように調製した水溶液を25℃で協和界面科学(株)製、商品名:CBVP-Zの表面張力計を用いて測定したときの値である。
【0081】
水性インク組成物におけるポリアルキレンオキシド誘導体の含有量は、吐出性及び印字濃度を高める観点から、0.01〜50重量%であることが好ましく、吐出性及び印字濃度を著しく向上させる観点から、2〜30重量%であることがより好ましく、3〜15重量%であることが更に好ましい。
【0082】
なお、本発明の水性インク組成物には、各種添加剤、例えば、多価アルコール類等の湿潤剤、分散剤、消泡剤、防黴剤、キレート剤、pH調整剤等を添加することができる。
【0083】
【実施例】
調製例1〔カーボンブラック含有ポリマー微粒子の調製〕
(1) 水に不溶なポリマーの調製
(1-1) アニオン性ポリマー溶液の調製
機械式攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、還流管及び滴下漏斗を備えた1L容のフラスコ内を十分に窒素ガス置換した後、スチレン11.2g 、アクリル酸2.8g、ラウリルメタクリレート12.0g 、メトキシポリエチレングリコール(n=9) メタクリレート4.0g、スチレンマクロマー〔東亜合成(株)製、商品名:AS-6〕4.0g及びメルカプトエタノール0.4gを仕込み、65℃に昇温した。
【0084】
次に、スチレン100.8g、アクリル酸25.2g 、ラウリルメタクリレート108.0g、メトキシポリエチレングリコール(n=9) メタクリレート36.0g 、ヒドロキシエチルメタクリレート60.0g 、スチレンマクロマー〔東亜合成(株)製、商品名:AS-6〕36.0g 、メルカプトエタノール3.6g、アゾビスジメチルバレロニトリル2.4g及びメチルエチルケトン18g の混合溶液を2.5 時間かけてフラスコ内に滴下した。
【0085】
滴下終了後、アゾビスジメチルバレロニトリル0.8g及びメチルエチルケトン18g の混合溶液を0.5 時間かけてフラスコ内に滴下した。65℃で1時間熟成した後、アゾビスジメチルバレロニトリル0.8gを添加し、更に1時間熟成した。
【0086】
反応終了後、フラスコ内に、メチルエチルケトン364gを添加し、濃度が50%のアニオン性ポリマー溶液800gを得た。
【0087】
得られた共重合体溶液の一部を、減圧下、105℃で2時間乾燥させ、溶媒を除去することによってアニオン性ポリマーを単離し、標準物質としてポリスチレン、溶媒としてテトラヒドロフランを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより重量平均分子量を測定したところ、28000 であった。
【0088】
(1-2) カチオン性ポリマー溶液の調製
機械式攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、還流管及び滴下漏斗を備えた1L容のフラスコ内を十分に窒素ガス置換した後、スチレン50.0g 、ラウリルメタクリレート12.0g 、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート40.0g 、メトキシポリエチレングリコール(n=4)メタクリレート60.0g 、スチレンマクロマー〔東亜合成(株)製、商品名:AS-6〕20.0g 及びメルカプトエタノール0.8gを仕込み、65℃に昇温した。
【0089】
次に、スチレン40.0g 、ラウリルメタクリレート20.0g 、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート 60.0g、メトキシポリエチレングリコール(n=4) メタクリレート70.0g 、スチレンマクロマー〔東亜合成(株)製、商品名:AS-6〕20.0g 、メルカプトエタノール7.2g、アゾビスジメチルバレロニトリル2.4g及びメチルエチルケトン18g の混合溶液を2.5 時間かけてフラスコ内に滴下した。
【0090】
滴下終了後、アゾビスジメチルバレロニトリル0.8g及びメチルエチルケトン18g の混合溶液を0.5 時間かけてフラスコ内に滴下した。65℃で1時間熟成した後、アゾビスジメチルバレロニトリル0.8gを添加し、更に1時間熟成した。
【0091】
反応終了後、フラスコ内に、メチルエチルケトン364gを添加し、濃度が50%のカチオン性ポリマー溶液800gを得た。
【0092】
得られた共重合体溶液の一部を、減圧下、105 ℃で2時間乾燥させ、溶媒を除去することによってカチオン性ポリマーを単離し、標準物質としてポリスチレン、溶媒としてテトラヒドロフランを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより重量平均分子量を測定したところ、15000 であった。
【0093】
(2) カーボンブラック含有ポリマー微粒子の調製
(2-1) アニオン性カーボンブラック含有ポリマー微粒子の調製
前記(1-1) で得られたポリマー溶液28g 、カーボンブラック〔キャボット(Cabot)社製、商品名:Monarch880〕20g 、1mol/Lの水酸化カリウム水溶液13.6g 、メチルエチルケトン20g 及びイオン交換水30g を十分に攪拌した後、3 本ロールミル〔(株)ノリタケカンパニー製、商品名:NR-84A〕を用いて20回混練した。
【0094】
得られたペーストをイオン交換水200gに投入し、十分に攪拌した後、エパポレーターを用いてメチルエチルケトン及び水を留去し、固形分量が20.0重量%のアニオン性カーボンブラック含有ポリマー微粒子の水分散体160gを得た。ポリマー微粒子の平均粒径は、コールターカウンターN4(コールター社製、商品名)を用いて測定した結果、110nm であった。
【0095】
(2-2) カチオン性カーボンブラック含有ポリマー微粒子の調製
前記(1-2) で得られたポリマー溶液28g 、カーボンブラック〔キャボット(Cabot)社製、商品名:Monarch880〕16g 、1mol/Lの酢酸水溶液11.1g 、メチルエチルケトン20g 及びイオン交換水30g を十分に攪拌した後、3 本ロールミル〔(株)ノリタケカンパニー製、商品名:NR-84A〕を用いて20回混練した。
【0096】
得られたペーストをイオン交換水200gに投入し、十分に攪拌した後、エパポレーターを用いてメチルエチルケトン及び水を留去し、固形分量が20.0重量%のカチオン性カーボンブラック含有ポリマー微粒子の水分散体160gを得た。ポリマー微粒子の平均粒径は、コールターカウンターN4(コールター社製、商品名)を用いて測定した結果、138nm であった。
【0097】
調製例2〔オイルブラック含有ポリマー微粒子の調製〕
調製例1の(1-1) で得られたアニオン性ポリマー溶液28gに、メチルエチルケトン20g 及びオイルブラック860 〔オリエント(株)製疎水性染料、商品名〕10g を加え、完全に溶解させ、その中に1mol/Lの水酸化カリウム水溶液13.6g 、を加えてポリマーの塩生成基を中和し、これにイオン交換水200gを加え、攪拌した後、マイクロフルイダイザー(マイクロフルイダイザー社製、商品名)を用いて、30分間乳化した。
【0098】
得られた乳化物から減圧下、60℃で有機溶媒を除去し、更に水を除去することにより濃縮し、固形分濃度が20重量%のオイルブラック含有ポリマー粒子の水分散体を得た。ポリマー微粒子の平均粒径は、コールターカウンターN4(コールター社製、商品名)を用いて測定した結果、82nmであった。
【0099】
実施例1〜4及び比較例1〜2〔インクジェット記録用水性インクの製造〕(但し、実施例1は参考例である)
2-ピロリドン10g 、グリセリン4g 、ポリアルキレンオキシド誘導体として表1に示す化合物8g、イソプロパノール1g及びイオン交換水47g を混合した後、得られた混合液に、調製例1の(2-1) で得られたアニオン性カーボンブラック含有ポリマー微粒子の水分散体30g を攪拌しながら添加した。得られた混合物を平均孔径が0.8 μm のメンブレンフィルター〔富士写真フィルム(株)製、商品名:ディスクカプセルCALC80〕で濾過し、水性インクを得た。
【0100】
【表1】
Figure 0004450971
【0101】
実施例5〜7
2-ピロリドン10g 、グリセリン4g 、ポリアルキレンオキシド誘導体として表2に示す化合物4g、イソプロパノール1g及びイオン交換水51g を混合した後、得られた混合液に、調製例2の(2-2) で得られたカチオン性カーボンブラック含有ポリマー微粒子の水分散体30g を攪拌しながら添加した。得られた混合物を平均孔径が0.8 μm のメンブレンフィルター〔富士写真フィルム(株)製、商品名:ディスクカプセルCALC80〕で濾過し、水性インクを得た。
【0102】
実施例8(参考例)
実施例1において、カーボンブラック含有ポリマー微粒子の水分散体30g の代わりに、調製例2で調製したオイルブラック含有ポリマー微粒子の水分散体30gを用いた他は、実施例1と同様にしてインクを得た。
【0103】
実施例9(参考例)
実施例1において、カチオン性カーボンブラック含有ポリマー微粒子の水分散体30g の代わりに、自己分散型カーボンブラックの水分散体〔キャボット社製、商品名:Cabo-Jet 200、20% 濃度〕10g 、調製例2で調製したオイルブラック含有ポリマー微粒子の水分散体20g を用いた他は、実施例1と同様にしてインクを得た。
【0104】
【表2】
Figure 0004450971
【0105】
次に、各実施例及び各比較例で得られた水性インクの性能として、印字濃度、印字性(吐出安定性)、耐水性及び耐マーカー性を以下の方法に基づいて調べた。その結果を表3に示す。
【0106】
〔印字濃度〕
インクジェットプリンター〔ヒューレット・パッカード(Hewlett-Packard )社製、商品名:Desk Jet720C〕にインクを充填した後、普通紙〔ゼロックス(Xerox)社、商品名: 4024 DP 20lb.Paper 〕に印字を行い、この印字物を25℃で3時間乾燥させた後、マクベス濃度計〔マクベス社製、商品名:RD918 〕を用いて印字濃度を測定した。
【0107】
〔印字性(吐出安定性)〕
前記〔印字濃度〕を調べる際に使用したプリンター及び普通紙を用い、連続印刷により、A4ベタ印字10枚を作製した後、文書、ベタパターン及び罫線を含むテスト文書を印字し、印字性(吐出安定性)を評価した。その評価基準は、以下のとおりである。
【0108】
(評価基準)
◎:シャープでハッキリとした文字、均一なベタ印刷、及びよれのない罫線印刷の3項目をいずれも満足する場合
○:シャープでハッキリとした文字、均一なベタ印刷、及びよれのない罫線印刷の3項目をいずれもほぼ満足する場合
△:シャープでハッキリとした文字、均一なベタ印刷、及びよれのない罫線印刷のうち、1項目を満足しない場合
×:シャープでハッキリとした文字、均一なベタ印刷、及びよれのない罫線印刷のうち、2項目以上を満足しない場合
【0109】
〔耐水性〕
前記〔印字濃度〕を調べる際に使用したプリンター及び普通紙を用い、ベタ印字を行ない、25℃で1時間乾燥させた試料の特定の印字個所の印字濃度を測定後、静水中に10秒間浸漬し、そのまま引き上げた。25℃で24時間自然乾燥させた後、浸漬前と同じ個所の印字濃度を測定し、浸漬前の印字濃度に対する浸漬後の印字濃度の残存率を式:
〔残存率〕=〔浸漬後の印字濃度〕/〔浸漬前の印字濃度〕×100
に従って求め、以下の評価基準に基づいて耐水性を評価した。
【0110】
(評価基準)
◎:残存率95%以上
○:残存率90%以上95%未満
△:残存率70%以上90%未満
×:残存率70%未満
【0111】
〔耐マーカー性〕
前記〔印字濃度〕を調べる際に使用したプリンター及び普通紙を用い、テキサス印字を行ない、25℃で6時間経過後、市販の水性蛍光ペン〔(株)製パイロット製、商品名:Spotliter 〕でなぞったときの印字サンプルの汚れ度合いを目視により観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
【0112】
(評価基準)
◎:蛍光ペンでなぞっても尾引き等汚れがない。
○:蛍光ペンでなぞると尾引きするが、実用上問題がないレベル。
×:蛍光ペンでなぞると尾引きが発生し、汚れがひどい。
【0113】
【表3】
Figure 0004450971
【0114】
表3に示された結果から、実施例1〜9で得られた水性インク組成物は、比較例1〜2で得られた水性インク組成物と対比して、印字濃度及び印字性に優れ、染料又は顔料を水に不溶なポリマーに含有させた着色剤を用いた場合には、耐水性及び耐マーカー性がより一層向上することがわかる。
【0115】
【発明の効果】
本発明の水性インク組成物は、優れた吐出性を有しながら、印字濃度の低下を防ぎ、耐水性及び耐マーカー性に優れたものである。

Claims (5)

  1. (A)水性媒体、(B)着色剤、並びに(C)式(II):
    4 −〔O−(R2 −O)n −R5 w (II)
    (式中、R2 炭素数2〜10の2価の炭化水素基、4 はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1〜20のw価の炭化水素基、R5 の少なくとも1つはヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1〜8の1価の炭化水素基を示し、残りのR5 は水素原子を示す。nは1〜40の数、wは3〜10の数を示す)で表される少なくとも1種のポリアルキレンオキシド誘導体を含有してなり、前記ポリアルキレンオキシド誘導体の含有量が0.01〜50重量%である水性インク組成物。
  2. 着色剤が、水に可溶な染料、自己分散性顔料、界面活性剤及び/又は水に可溶なポリマーで顔料を水性媒体に分散させた分散体に含有されている顔料、又は水に不溶なポリマーに染料若しくは顔料を含有させたポリマー微粒子である請求項1記載の水性インク組成物。
  3. ポリマー微粒子に使用されている水に不溶なポリマーが、
    (a)塩生成基含有モノマーと、
    (b)式(III):
    CH2 =C(R6 )COO(R7 O)p 8 (III)
    (式中、R6 は水素原子又は炭素数1〜5の低級アルキル基、R7 はヘテロ原子を有していてもよい炭素数1〜30の2価の炭化水素基、R8 は水素原子又はヘテロ原子を有していてもよい炭素数1〜30の1価の炭化水素基、pは1〜60の数を示す)
    で表されるモノマーと、
    (c)マクロマーと、
    (d)前記(a)〜(c)成分と共重合可能なモノマー
    とを共重合させてなるビニルポリマーである請求項2記載の水性インク組成物。
  4. (c)マクロマーが、式(IV):
    X(Y)q Si(R9 3-r (Z)r (IV)
    (式中、Xは重合可能な不飽和基、Yは2価の結合基、Zは数平均分子量が500 以上の1価のシロキサンポリマーの残基、R9 は水素原子、低級アルキル基、アリール基又はアルコキシ基、qは0又は1、rは1〜3の整数を示す)
    で表されるシリコーンマクロマー及び/又は片末端に重合性官能基を有するスチレン系マクロマーである請求項3記載の水性インク組成物。
  5. ポリアルキレンオキシド誘導体の表面張力が50〜70mN/mである請求項1〜4いずれか記載の水性インク組成物。
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