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JP4518375B2 - インクセット - Google Patents

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Description

本発明は、インクセットに関する。更に詳しくは、インクジェット記録用プリンター等に好適に使用しうるインクセットに関する。
インクジェット記録方式は、非常に微細なノズルからインク液滴を記録部材に直接吐出し、付着させて文字や画像を得る記録方式である。この方式によれば、使用する装置が低騒音で操作性がよいという利点を有するのみならず、カラー化が容易であり、かつ記録部材として普通紙を使用することができるという利点があるため、近年広く用いられている。
インクジェット記録方式には、ブラックインク、イエローインク、シアンインク及びマゼンタインクという複数色のインクを組合せたインクセットが用いられている。しかし、異なる色のインクが記録部材上で隣接した際に、その接触部分でインクのにじみ(ブリード)が発生することがある。
ブリードを抑制するために、インクの表面張力を下げ、インクを記録媒体である紙へ素早く浸透させた場合には、ある程度の効果が認められる。しかし、ブリードを抑制するためにインクの表面張力を下げた場合、色材の紙への浸透性が高くなるので、特に色材として水不溶性色材を用いたときには、印字濃度が著しく低下し、また、耐ブリード性(ブリードのし難さ、以下同じ)も十分に満足させることができない。
ブリードが抑制されたインクセットとして、酸性カーボンブラックを含有する酸性のブラックインクと、塩基性のカラーインクとからなるインクセット(例えば、特許文献1参照)、カーボンブラックの表面に親水性基が直接又は他の原子団を介して結合した自己分散型カーボンブラックを含有するブラックインクと、このブラックインク中の色材に対して逆極性の色材を有するカラーインクとを含むインクセット(例えば、特許文献2参照)等が知られている。
しかし、これらのインクセットを用いた場合には、その印字物の耐ブリード性が良好となる反面、インクの吐出時やヘッドのクリーニング時に、プリンターのフェイス面やインクの吐出口でこれらのインクが接触し、インクが凝集することによってノズル詰まりを引き起こすため、インクの吐出不良が生じたり、インクの直進性が阻害され、印字物にヨレが発生するという欠点がある。
そこで、これらの欠点を解消するために、イオン性が異なるインクを別々のヘッドで吐出させることが検討されているが、この手段を採用した場合には、装置が必然的に大型化したり、複雑化するため、その製造費が高くなるという欠点がある。
特開平9-183224号公報(段落番号[0009]〜[0011]) 特開平10-140064 号公報(段落番号[0006]〜[0008])
本発明は、耐ブリード性、印字濃度、耐水性及び耐擦過性に優れたインクセットを提供することを課題とする。本発明は、更に、インクの種類に応じてプリンターのヘッドを変更しなくても、優れた吐出性を呈し、インクジェット記録用プリンター等に好適に使用しうるインクセットを提供することを課題とする。
本発明は、
(1) 複数の異なる色のインクが用いられたインクセットであって、すべてのインクが同じイオン性の水不溶性色材を含有し、1つのインクの粘度と他のインクの粘度との差が0.7 〜4mPa・ sであるインクの組み合わせを1組以上有するインクセット、及び
(2) 前記インクセットを用いて、異なる色のインクを隣接して印字する際に、粘度の低いインクを吐出させた後に粘度の高いインクを吐出させる印字方法
に関する。
本発明のインクセットは、優れた耐ブリード性、印字濃度、耐水性及び耐擦過性を発現するという効果を奏する。また、本発明のインクセットは、インクの種類に応じてプリンターのヘッドを変更しなくても、優れた吐出性を呈するので、例えば、インクジェット記録用プリンター等に好適に使用することができるという効果を奏する。さらに、本発明のインクセットが用いられた印字方法によれば、ブリードが発生しがたく、使用したインク粘度の高いインクにより、高い印字濃度の画質を形成させやすいという効果を奏する。
本発明のインクセットは、複数の異なる色のインクが用いられたものである。ここで、本明細書において、「異なる色」とは、NIPPON DENSHOKU Spectro Color Meter SE2000〔日本電色(株)製、商品名〕を用い、波長がD65/2 の光線に対する印字物の反射光を測定し、CIELABで表示したとき、a* とb* が同一でないものを意味する。また、本発明書にいう「明度」とは、L * で表される値を意味する。
また、本明細書において、「水不溶性色材」とは、水に不溶の着色剤、例えば、顔料又は疎水性染料を含有する色材を意味する。
本発明においては、すべてのインクが同じイオン性の水不溶性色材(以下、「色材」という)を含有し、1つのインクの粘度と少なくとも他の1つインクの粘度との差が0.7 〜4mPa・ s である点に、1つの大きな特徴がある。
本発明のインクセットは、かかる特徴を有するので、耐ブリード性に優れ、かつ高い印字濃度を有する。
インクのブリードを左右するインクの紙への浸透速度は、インクの表面張力とインク粘度による影響を受ける。従って、インクの粘度を低くすることにより、ブリードの発生を抑制することができるが、印字濃度を高める観点から、インクの粘度は高いほうが好ましい。
そこで、実際に使用可能なインクの粘度範囲内で、2つのインクに濃度差を設けることにより、耐ブリードに優れ、高い印字濃度を達成することが見出された。
更に、耐ブリード性をより一層向上させるためには、異なる色のインクを隣接させて印字する場合、先にインク粘度の低いインクをインクセットから吐出させ、素早く紙の中にインクを浸透させた後に、粘度の高いインクを吐出させることが望ましい。また、インクの粘度が高いほうが印字濃度が高くなりやすいことから、特に高い印字濃度が要求される明度の低いインク、例えば、黒のインク粘度を高めることが望ましい。
なお、本発明のインクセットには、同じイオン性の水不溶性色材が用いられているので、ノズル詰まりによる吐出不良や、ヨレの発生を効果的に抑制することができる。したがって、本発明のインクセットは、インクジェット記録用インクセットとして好適に使用しうるものである。
本明細書における「1つのインクの粘度と他のインクの粘度との差」(以下、「インクの粘度の差」という)とは、インクセットに用いられているすべてのインクの粘度を下記方法にしたがって測定したインクの粘度の差の絶対値を意味する。
(インクの粘度の測定法)
インクの粘度は、東機産業(株)製、RE-80Lを用い、コーンロータ(1°34')を装着し、10〜100rpmの条件下で20℃のインクの粘度を測定したときの値である。なお、校正液には、35%グリセリン水溶液を用いる。
インクの粘度の差は、耐ブリード性を向上させ、印字濃度を高める観点から、0.7mPa・ s 以上、好ましくは0.8mPa ・ s以上、より好ましくは1mPa ・ s 以上、更に好ましくは1.2 mPa ・ s 以上であり、インクの吐出性を向上させる観点から、4mPa・ s 以下、好ましくは3.5mPa・ s 以下、より好ましくは3mPa・ s 以下、更に好ましくは2.5mPa・ s 以下である。これらの観点から、インクの粘度の差は、0.7 〜4mPa・ s 、好ましくは0.8 〜3.5mPa・ s 、より好ましくは1〜3mPa・ s 、更に好ましくは1.2 〜2.5mPa・ s である。
また、すべてのインクの粘度は、印字濃度を高める観点から、好ましくは2mPa ・ s 以上、より好ましくは2.5mPa ・ s以上、更に好ましくは3mPa・ s 以上であり、吐出性を向上させる観点から、好ましくは10mPa ・ s 以下、より好ましくは8mPa・ s 以下、更に好ましくは6mPa・ s 以下である。これらの観点から、すべてのインクの粘度は、好ましくは2〜10mPa ・ s 、より好ましくは2.5 〜8mPa・ s 、更に好ましくは3 〜6mPa・ s であることが望ましい。
また、すべてのインクの表面張力は、印字濃度を高める観点から、好ましくは22mN/m以上、より好ましくは25mN/m以上、更に好ましくは27mN/m以上、特に好ましくは28mN/m以上であり、また耐ブリード性を向上させる観点から、好ましくは40mN/m以下、より好ましくは38mN/m以下、更に好ましくは35mN/m以下、特に好ましくは28〜33mN/mである。これらの観点から、すべてのインクの表面張力は、好ましくは22〜40mN/m、より好ましくは25〜38mN/m、更に好ましくは27〜35mN/m、特に好ましくは28〜33mN/mであることが望ましい。
なお、インクの表面張力は、25℃の環境下で、協和界面科学(株)製の表面張力計CBVP-Zを用いて測定したときの値である。
インクセットにおけるインクの粘度の差が前記範囲内にあるインクの組合わせ数(以下、「粘度の組合わせ数」という)は、ブリードするインクの組合わせを減らす観点から多いこと好ましい。粘度の組合わせ数は、1以上、好ましくは2以上、更に好ましくは3以上である。なお、粘度の組み合わせ数の上限値は、インクセットの色の数によって決まり、そのインクセットの色の組み合わせの数が上限値となる。ブリードする色の組み合わせをなくする観点から、粘度の組み合わせ数は、通常、上限値であることが最も好ましい。例えば、インクセットの色の数が2、3又は4のとき、その上限値は、それぞれ1、3又は6となる。
色の組み合わせによっては、発生したブリードが目立ちにくく、気づかれにくい場合がある。例えば、明度の高いインク(例えば、イエローインク)に、明度の低いインク(例えば、シアンインク)が拡散した場合、イエローの部分が少しイエローがかったシアンに変化するため、にじみが目立つが、逆にシアンインクにイエローインクが拡散した場合には、シアンの部分の色はそのままであるか、あるいは色が混合してシアンの印字濃度が若干低下する程度である。
したがって、インクの吐出方法にもよるが、インクの拡散のし難さの観点から、明度の低いインクの粘度が明度の高いインクの粘度よりも高いことが好ましい。また、明度の低いインクの粘度は、インクの拡散のし難さの観点から、明度の高いインクの粘度よりも0.7 〜4mPa・ s 高いことが好ましく、0.8 〜3.5mPa・ s 高いことがより好ましく、1〜3mPa ・ s 高いことが更に好ましく、1.2 〜2.5mPa・ s 高いことがより一層好ましい。
また、インクのにじみに気づかれがたくする観点から、明度の低いインクの粘度が明度の高いインクの粘度よりも高いインクの組み合わせの数(以下、「明度の組み合わせの数」という)が1以上であることが好ましい。例えば、ブラックの色材を含むブラックインクの明度は最も低いため、ブラックインクの粘度がインクセットに含まれているすべてのインクの粘度の中で最も高いことが好ましい。
異なる色のインクを隣接して印字する場合、粘度の低いインクを先に吐出させ、その後に粘度の高いインクを吐出させることが耐ブリード性を高めるうえで好ましい。
また、印字濃度を高める観点からも、明度の低いインクの粘度を、それよりも明度が高いインクの粘度よりも高くすることが好ましい。
また、インクセットに用いられている色材が同じイオン性であるとは、インクセットに用いられているイオン性の色材がいずれも同じイオン性を有すること、より詳しくはすべてのインクがアニオン性を有するか又はカチオン性を有することを意味する。インクセットに用いられている色材のイオン性をいずれも同一にすることにより、印字装置が大型化したり、複雑化することを回避することができる。
なお、1つのイオン性の色材がアニオン性の塩生成基とカチオン性の塩生成基とを有する場合には、そのアニオン当量とカチオン当量を対比して、その当量が多いほうのイオン性がその色材のイオン性となる。
なお、本発明のインクセットは、マゼンタインク、シアンインク及びイエローインクのカラーインク、並びに黒を含むすべての色のインクを対象にしているが、画像及びメディアによっては、黒以外のカラーインクで画像を形成させる場合がある。このような場合には、すべてのインクが、カラーインクであってもよい。
色材としては、
(A)界面活性剤、顔料誘導体又は水溶性ポリマーで顔料を水中に分散させた顔料の水分散体(以下、「顔料分散体」という)、
(B)親水性基が直接又は他の原子団を介して顔料に結合している自己分散型顔料の水分散体(以下、「自己分散顔料」という)、
(C)顔料及び/又は疎水性染料を含有する水不溶性ポリマー粒子の水分散体(以下、「水不溶性ポリマー粒子の水分散体」という)
等が挙げられる。これらの中では、耐水性、耐擦過性及び耐マーカー性の観点から、水不溶性ポリマー粒子の水分散体が好ましい。
色材の中では、耐水性、耐擦過性及び耐マーカー性の観点から、水不溶性ポリマー粒子の水分散体が好ましい。
顔料分散体に用いられる顔料は、無機顔料及び有機顔料のいずれであってもよい。必要により、それらの顔料と体質顔料とを併用してもよい。
無機顔料としては、例えば、カーボンブラック、金属酸化物、金属硫化物等が挙げられる。
黒色用顔料としては、カーボンブラックが好ましい。カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、サーマルランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等が挙げられる。
また、カラーインク用顔料としては、有機顔料が好ましい。有機顔料としては、例えば、アゾ顔料、ジアゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、チオインジゴ顔料、アンソラキノン顔料、キノフタロン顔料等が挙げられる。
体質顔料としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、タルク等が挙げられる。
顔料分散体に用いられる界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤及び両性界面活性剤が挙げられる。これらの中では、分散安定性及び吐出性の観点から、β−ナフタレンスルホン酸−ホルムアルデヒド縮合物のナトリウム塩〔例えば、花王(株)製、商品名:デモールN、デモールRN、デモールMS等〕、カルボン酸型高分子活性剤〔例えば、花王(株)製、商品名:ポイズ520 、ポイズ521 、ポイズ530 等〕等が好ましい。
界面活性剤の量は、インクにおける色材の分散安定性及びインクの吐出性の観点から、顔料100 重量部に対して、好ましくは1〜120 重量部、より好ましくは3〜70重量部、更に好ましくは5〜30重量部である。
顔料分散体に用いられる顔料誘導体としては、例えば、イオン性官能基又はイオン性官能基の塩を有する、アゾ誘導体、ジアゾ誘導体、フタロシアニン誘導体、キナクリドン誘導体、イソインドリノン誘導体、ジオキサジン誘導体、ペリレン誘導体、ペリノン誘導体、チオインジゴ誘導体、アントラキノン誘導体、キノフタロン誘導体等が挙げられる。
顔料分散体に用いられる「水溶性ポリマー」は、中和後に25℃の水100 gに対する溶解度が1g以上であるポリマーを意味する。また、「水不溶性ポリマー」とは、前記水溶性ポリマー以外のポリマーを意味する。
水溶性ポリマーとしては、例えば、水溶性ビニルポリマー、水溶性エステルポリマー、水溶性ウレタンポリマー等が挙げられる。これらのポリマーの中では、水溶性ビニルポリマーが好ましい。
水溶性ビニルポリマーとしては、塩生成基含有モノマー(a)及び疎水性モノマー(b)を含有するモノマー組成物を重合させることによって得られる共重合体が挙げられる。なお、このモノマー組成には、必要に応じてノニオン性の親水性モノマー(c)が含有されていてもよい。
塩生成基含有モノマー(a)としては、アニオン性モノマー及びカチオン性モノマーが挙げられる。
アニオン性モノマーの例としては、不飽和カルボン酸モノマー、不飽和スルホン酸モノマー、不飽和リン酸モノマー等が挙げられる。これらの中では、不飽和カルボン酸モノマーが好ましく、アクリル酸及びメタクリル酸がより好ましい。
カチオン性モノマーの例としては、不飽和3級アミン含有モノマー、不飽和アンモニウム塩含有モノマー等が挙げられる。
カチオン性モノマーの具体例としては、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−(N’,N’−ジメチルアミノプロピル)(メタ)アクリルアミド、ビニルピロリドン、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムメチルサルフェート、メタクリロイルオキシエチルジメチルエチルアンモニウムエチルサルフェート等が挙げられる。これらの中では、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリ」とは、「アクリ」及び/又は「メタクリ」を意味する。
疎水性モノマー(b)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、(イソ)プロピル(メタ)アクリレート、(イソ又はターシャリー)ブチル(メタ)アクリレート、(イソ)アミル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、(イソ)オクチル(メタ)アクリレート、(イソ)デシル(メタ)アクリレート、(イソ)ドデシル(メタ)アクリレート、(イソ)ステアリル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類;スチレン、ビニルトルエン、2−メチルスチレン、クロロスチレン等のスチレン系モノマー等が挙げられ、これらは、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
なお、前記(イソ又はターシャリー)及び(イソ)は、これらの基が存在している場合とそうでない場合の双方を意味し、これらの基が存在していない場合には、ノルマルを示す。
ノニオン性の親水性モノマー(c)としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(n=2〜30)(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール(n=1〜15)・プロピレングリコール(n=1〜15))(メタ)アクリレート、アルコキシ基の炭素数が1〜12のモノアルコキシポリエチレングリコール(n=2〜30)(メタ)アクリレート等が挙げられる。それらの中では、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、アルコキシ基の炭素数が1〜12のモノアルコキシポリエチレングリコール(n=2〜30)(メタ)アクリレートが好ましい。なお、括弧内のnは、アルコキシ基(オキシアルキレン基)の数を示す。
塩生成基含有モノマー(a)、疎水性モノマー(b)及びノニオン性の親水性モノマー(c)の割合は、ポリマーがその中和後に水に可溶であり、インクにおける色材の分散安定性及びインクの吐出性に優れているのであれば、特に限定がない。
通常、モノマー組成物が塩生成基含有モノマー(a)5〜80重量%、疎水性モノマー(b)20〜85重量%及びノニオン性の親水性モノマー(c)0〜75重量%を含有し、かつモノマー組成物中における塩生成基含有モノマー(a)とノニオン性の親水性モノマー(c)との合計含有量が15〜80重量%であることが好ましく、またモノマー組成物が塩生成基含有モノマー(a)9〜70重量%、疎水性モノマー(b)30〜75重量%及びノニオン性の親水性モノマー(c)1〜60重量%を含有し、かつモノマー組成物中における塩生成基含有モノマー(a)とノニオン性の親水性モノマー(c)との合計含有量が25〜40重量%であることがより好ましい。
水溶性ポリマーの重量平均分子量は、インクにおける色材の分散安定性及びインク粘度を考慮して、500 〜30000 、好ましくは800 〜20000 、更に好ましくは1000〜10000 であることが望ましい。なお、水溶性ポリマーの重量平均分子量は、中和前において、以下に示す実施例に記載のゲルクロマトグラフィーによって測定したときの値である。
水溶性ポリマーの中和度は、顔料分散体の分散安定性の観点から、前述の15〜100 %がよい。
中和の際に用いられる中和剤としては、水溶性ポリマーの塩生成基の種類に応じて適宜選択すればよい。例えば、水溶性ポリマーにカチオン性モノマーを用いた場合は、中和剤として、酢酸、メトキシ酢酸、プロピオン酸、乳酸、コハク酸、グリコール酸、グルコン酸、グリセリン酸等を用いることができる。また、水溶性ポリマーにアニオン性モノマーが用いられている場合には、中和剤として、トリメチルアミン、トリエチルアミン等の3級アミン類、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、アンモニア等を用いることができる。
顔料分散体において、顔料誘導体又は水溶性ポリマーの量は、インクにおける色材の分散安定性及びインクの吐出性の観点から、顔料100 重量部に対して、好ましくは5〜100 重量部、より好ましくは7〜80重量部、更に好ましくは10〜60重量部である。
自己分散顔料としては、例えば、特開平10−140064号公報、特開平10−110127号公報等に記載されている自己分散型顔料が挙げられ、具体的には、キャボット社製のCAB-O-JET(登録商標)300が例示される。
水不溶性ポリマー粒子の水分散体に用いられる顔料は、前記顔料分散体に用いられる顔料と同様であればよい。
水不溶性ポリマー粒子の水分散体に用いられる疎水性染料の例として、油溶性染料、分散染料等が挙げられる。これらの中では、油溶性染料及び分散染料は、ポリマー粒子中に良好に含有させることができることから好ましい。
油溶性染料としては、特に限定されるものではないが、例えば、C.I.ソルベント・ブラック3、7、27、29、34;C.I.ソルベント・イエロー14、16、29、56、82;C.I.ソルベント・レッド1、3、8、18、24、27、43、51、72、73;C.I.ソルベント・バイオレット 3;C.I.ソルベント・ブルー2、11、70;C.I.ソルベント・グリーン3、7;C.I.ソルベント・オレンジ2等が挙げられる。
分散染料としては、特に限定されるものではないが、好ましい例としては、C.I.ディスパーズ・イエロー5、42、54、64、79、82、83、93、99、100 、119 、122 、124 、126 、160 、184:1 、186 、198 、199 、204 、224 、237 ;C.I.ディスパーズ・オレンジ13、29、31:1、33、49、54、55、66、73、118 、119 、163 ;C.I.ディスパーズ・レッド54、60、72、73、86、88、91、93、111 、126 、127 、134 、135 、143 、145 、152 、153 、154 、159 、164 、167:1 、177 、181 、204 、206 、207 、221 、239 、240 、258 、277 、278 、283 、311 、323 、343 、348 、356 、362 ;C.I.ディスパーズ・バイオレット33;C.I.ディスパーズ・ブルー56、60、73、87、113 、128 、143 、148 、154 、158 、165 、165:1 、165:2 、176 、183 、185 、197 、198 、201 、214 、224 、225 、257 、266 、267 、287 、354 、358 、365 、368 ;C.I.ディスパーズ・グリーン6:1 、9等が挙げられる。
疎水性染料は、水分散体を製造する際に水不溶性ポリマー粒子中に効率的に含有させる観点から、水不溶性ポリマーの溶解に使用される有機溶媒に25℃において2g/L以上、好ましくは20〜500 g/L溶解するものが望ましい。
水不溶性ポリマー粒子の水分散体には、顔料又は染料を水不溶性ポリマー粒子中に含有させるために、水不溶性ポリマーが用いられる。
水不溶性ポリマーとしては、水不溶性ビニルポリマー、水不溶性エステル系ポリマー、水不溶性ウレタン系ポリマー等が挙げられる。これらのポリマーの中では、水不溶性ビニルポリマーが好ましい。
水不溶性ビニルポリマーとしては、塩生成基含有モノマー(a)及び疎水性モノマー(b)を含有するモノマー組成物を重合させることによって得られる水不溶性ビニルポリマーが挙げられる。なお、モノマー組成物には、必要により、ノニオン性の親水性モノマー(c)及び/又はマクロマー(d)が含まれていてもよい。インクにおける色材の分散安定性及びインクの吐出安定性の観点から、マクロマー(d)をモノマー組成物に含有させることが好ましい。
塩生成基含有モノマー(a)、疎水性モノマー(b)及びノニオン性の親水性モノマー(c)は、前記水溶性ポリマーに用いられるものと同様のものが例示される。
マクロマー(d)としては、数平均分子量500 〜100000、好ましくは1000〜10000 の重合可能な不飽和基を有するモノマーであるマクロマーが挙げられる。マクロマー(d)の数平均分子量は、溶媒として1mmol/L のドデシルメチルアミン含有クロロホルムを用いたゲルクロマトグラフィーにより、標準物質としてポリスチレンを用いて測定される。
マクロマー(d)の代表例としては、シリコーンマクロマー及びスチレン系マクロマーが挙げられ、 これらは単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
シリコーンマクロマーの中では、式(I) :
1 ( Y1 ) q Si(R1 3-r (Z1 r (I)
(式中、X1 は重合可能な不飽和基、Y1 は2価の結合基、R1 はそれぞれ独立して水素原子、炭素数1〜5の低級アルキル基、炭素数6〜10のアリール基又は炭素数2〜12のアルコキシ基、Z1 は500 以上の数平均分子量を有する1価のシロキサンポリマーの残基、qは0又は1、rは1〜3の整数を示す)
で表されるシリコーンマクロマーは、インクジェットプリンターのヘッドの焦げ付きを防止する観点から好適に使用しうるものである。
式(I) で表されるシリコーンマクロマーにおいて、X1 としては、CH2 =CH−基、CH2 =C(CH3 )−基等の炭素数2〜6の1価の不飽和炭化水素基が挙げられる。Y1 としては、−COO−基、−COOCa12a1 −基(a1 は1〜5の整数を示す)、フェニレン基等の2価の結合基が挙げられるが、これらの中では−COOC3 6 −が好ましい。R1 としては、水素原子;メチル基、エチル基等の炭素数1〜5の低級アルキル基;フェニル基等の炭素数6〜20のアリール基、メトキシ基等の炭素数1〜20のアルコキシ基等が挙げられるが、これらの中ではメチル基が好ましい。Z1 は、好ましくは数平均分子量500 〜5000のジメチルシロキサンポリマーの1価の残基である。qは0又は1であるが、好ましくは1である。rは1〜3の整数であるが、好ましくは1である。
シリコーンマクロマーの代表例としては、式(I-1):
CH2=CR5-COOC3H6-[Si(R6)2-O]b -Si(R6)3 (I-1)
(式中、R5 は水素原子又はメチル基、R6 はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜5の低級アルキル基、bは5〜60の数を示す)
で表されるシリコーンマクロマー、式(I-2):
CH2=CR5-COO-[Si(R6)2-O]b -Si(R6)3 (I-2)
(式中、R5 、R6 及びbは前記と同じ)
で表されるシリコーンマクロマー、式(I-3):
CH2=CR5-Ph-[Si(R6)2-O] b -Si(R6)3 (I-3)
(式中、Phはフェニレン基、R5 、R6 及びbは前記と同じ)
で表されるシリコーンマクロマー、式(I-4):
CH2=CR5-COOC3H6-Si(OE)3 (I-4)
〔式中、R5 は前記と同じ。Eは式:-[Si(R5)2O]c -Si(R5)3基(R5 は前記と同じ。cは5〜65の数を示す)を示す〕
で表されるシリコーンマクロマー等が挙げられる。
シリコーンマクロマーの中では、式(I-1) で表されるシリコーンマクロマーが好ましく、特に、式(I-1a):
CH2=C(CH3)-COOC3H6-[Si(CH3)2-O] d -Si(CH3) 3 (I-1a)
(式中、dは8〜40の数を示す)
で表されるシリコーンマクロマーが好ましい。シリコーンマクロマーの例として、FM-0711 〔チッソ(株)製、商品名〕等が挙げられる。
スチレン系マクロマーは、ビニルポリマーに顔料を十分に含有させる観点から、好適に使用しうるものである。
スチレン系マクロマーの代表例としては、片末端に重合性官能基を有するスチレン単独重合体又はスチレンと他のモノマーとの共重合体が挙げられる。これらの中では、片末端に重合性官能基としてアクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基を有するものが好ましい。
スチレンと他のモノマーとの共重合体におけるスチレン含量は、顔料が十分にビニルポリマーに含有されるようにする観点から、好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上である。他のモノマーとしては、アクリロニトリル等が挙げられる。
水不溶性のビニルポリマーにおける塩生成基含有モノマー(a)の含量は、得られる分散体の分散安定性の観点から、好ましくは1〜50重量%、より好ましくは2〜40重量%である。
水不溶性ビニルポリマーにおける疎水性モノマー(b)の含量は、印字濃度及び分散安定性の観点から、好ましくは5〜93重量%、より好ましくは10〜80重量%である。
水不溶性ビニルポリマーにおけるノニオン性の親水性モノマー(c)の含量は、吐出安定性及び印字濃度の観点から、好ましくは0〜40重量%、より好ましくは5〜30重量%である。
水不溶性ビニルポリマーにおけるマクロマー(d)の含量は、サーマルタイプのインクジェットプリンターにおいて、ヒーター面の焦げ付きを抑制する観点及び分散安定性の観点から、好ましくは0〜30重量%、より好ましくは1〜25重量%、更に好ましくは5〜20重量%である。
水不溶性ポリマーの重量平均分子量は、色材の分散安定性及びインク粘度への影響から、1000〜100000、好ましくは1500〜100000、更に好ましくは2000〜70000 である。水不溶性ポリマーの重量平均分子量は、前記水溶性ポリマーにおけるのと同様の方法で測定したときの値である。
水不溶性ポリマーの中和度は、分散安定性の観点から、15〜100 %であることが好ましい。
中和の際に用いられる中和剤は、水不溶性ポリマーの塩生成基の種類に応じて適宜選択することができる。中和剤の例としては、水溶性ポリマーの場合と同じものが挙げられる。
水不溶性ポリマーの量は、インクにおける色材の分散安定性と、吐出性、耐擦過性及び耐マーカー性との兼ね合いから、顔料及び疎水性染料の合計量100 重量部に対して、好ましくは5〜250 重量部、より好ましくは10〜180 重量部、更に好ましくは15〜130 重量部である。
以下に、水不溶性色材の代表例として、水不溶性ポリマー粒子の水分散体の製造法について説明する。
水不溶性ポリマーは、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の重合法により、塩生成基含有モノマー(a)及び疎水性モノマー(b)、必要により、ノニオン性の親水性モノマー(c)及び/又はマクロマー(d)を含有するモノマー組成物を重合させることによって製造される。これらの重合法の中では、溶液重合法が好ましい。
溶液重合法に用いられる溶媒の中では、極性有機溶媒が好ましい。極性有機溶媒が水混和性有機溶媒である場合には、水と混合して用いることもできる。
有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、(イソ)プロパノール等の炭素数1〜3の脂肪族アルコール;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;酢酸エチル等のエステル類等が挙げられる。これらの中では、メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン又はこれらと水との混合液が好ましい。
なお、重合の際には、ラジカル重合開始剤を用いることができる。ラジカル重合開始剤としては、例えば、2, 2' −アゾビスイソブチロニトリル、2, 2' −アゾビス(2, 4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル−2, 2' −アゾビスブチレート、2, 2' −アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1, 1' −アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)等のアゾ化合物、t−ブチルペルオキシオクトエート、ジ−t−ブチルペルオキシド、ジベンゾイルオキシド等の有機過酸化物等が挙げられる。
重合開始剤の量は、モノマー組成物100 重量部あたり、好ましは0.001 〜5重量部、より好ましくは0.01〜2重量部である。
なお、重合の際には、更に重合連鎖移動剤を用いてもよい。重合連鎖移動剤の具体例としては、オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、メルカプトエタノール等のメルカプタン類;ジメチルキサントゲンジスルフィド、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィド等のキサントゲンジスルフィド類;テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド等のチウラムジスルフィド類;四塩化炭素、臭化エチレン等のハロゲン化炭化水素類;ペンタフェニルエタン等の炭化水素類;及びアクロレイン、メタクロレイン、アリルアルコール、2−エチルヘキシルチオグリコレート、α−テルピネン、γ−テルピネン、α−メチルスチレンダイマー、更に9, 10−ジヒドロアントラセン、1, 4−ジヒドロナフタレン、インデン、1, 4−シクロヘキサジエン等の不飽和環状炭化水素化合物;2, 5−ジヒドロフラン等の不飽和ヘテロ環状化合物等が挙げられ、これらは、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
モノマー組成物の重合条件は、使用するラジカル重合開始剤、モノマー及び溶媒の種類等によって異なるので一概には決定することができない。通常、重合温度は、好ましくは30〜100 ℃、より好ましくは50〜80℃であり、重合時間は、好ましくは1〜20時間である。重合雰囲気は、窒素ガス等の不活性ガスであることが好ましい。
重合反応の終了後、反応溶液から再沈澱、溶媒留去等の公知の方法によって水不溶性ポリマーを単離することができる。また、得られた共重合体は、再沈澱を繰り返したり、膜分離、クロマトグラフ法、抽出法等により、未反応のモノマー等を除去することにより、精製することができる。
疎水性染料を含有する水不溶性ポリマーの水分散体は、公知の乳化法によって製造することができる。該水分散体は、例えば、水不溶性ポリマー及び疎水性染料を有機溶媒に溶解させ、得られた溶液に必要に応じて中和剤を加えて水不溶性ポリマーの塩生成基をイオン化し、これに水を添加した後、必要に応じて分散機又は超音波乳化機を用いて分散を行ない、その有機溶媒を留去して水系に転相することによって得ることができる。
また、顔料を含有する水不溶性ポリマー粒子の水分散体は、例えば、水不溶性ポリマーを有機溶媒に溶解させ、得られた溶液に顔料、水、中和剤及び必要に応じ界面活性剤を加えて混練し、ペーストとした後、該ペーストを必要に応じて水で希釈し、有機溶媒を留去して水系にすることによって得ることができる。
インク中における色材の含有量は、十分な印字濃度を得る観点及び吐出性の観点から、好ましくは0.5 〜30重量%、より好ましくは1〜20重量%、更に好ましくは2〜15重量%である。なお、色材が分散体である場合には、色材の量は、分散体の固形分である。
なお、インク中には、各種添加剤、例えば、多価アルコール類等の湿潤剤、分散剤、消泡剤、防黴剤、キレート剤、pH調整剤等を適量で添加してもよい。
なお、本発明のインクセットに用いられるインクは、水を含有する水系インクである。水系インクにおける水の含量は、特に限定されないが、通常、40〜90重量%程度であることが好ましい。
製造例1〜4(ビニルポリマーの調製)
反応容器内に、メチルエチルケトン20重量部、表1の「初期仕込みモノマー」の欄に示す種類及び量のモノマー、並びに重合連鎖移動剤を仕込み、窒素ガス置換を十分に行った。
一方、滴下ロートに、表1の「滴下モノマー」の欄に示す種類及び量のモノマー及び重合連鎖移動剤、メチルエチルケトン55重量部、並びに2,2'- アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.1重量部をメチルエチルケトン5重量部に溶解した溶液を加え、70℃で5時間、75℃で10時間熟成させ、ポリマー溶液を得た。
得られたポリマー溶液の一部を、標準物質としてポリスチレン、溶媒として1mmol/Lのドデシルジメチルアミン含有クロロホルムを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより重量平均分子量を測定したところ、表1に示す重量平均分子量を有していた。
なお、表1に記載の各名称は、以下のことを意味する。
シリコーンマクロマー:チッソ(株)製、商品名:FM-0711(数平均分子量:1000)〔式(I−1a)で表される構造を有する〕
スチレンマクロマー:東亜合成(株)製、商品名:AS(スチレン単独重合マクロマー、片末端重合性官能基:メタクリロイルオキシ基、数平均分子量:6000)
Figure 0004518375
製造例5〜20(顔料を含有するインク用色材の調製)
製造例1〜4で得られたポリマー溶液28重量部(ポリマー固形分:50重量%)に、表2に記載の顔料、メチルエチルケトン、イオン交換水及び中和剤を加えて十分に攪拌した後、3本ロールミル〔(株)ノリタケカンパニー製、商品名:NR-84A〕を用いて20回混練した。
得られたペーストをイオン交換水300 重量部に投入し、十分に攪拌した後、エパポレーターを用いてメチルエチルケトン及び水を留去し、固形分量が15重量%のインク用色材を得た。得られたインク用色材の表面張力の測定結果を表3〜4に示す。
なお、製造例14〜16で得られた色材は、含有されているポリマーが水溶性を呈するため、水溶性ポリマーにより分散された顔料の水分散体である。
また、製造例13〜16を除く製造例5〜20で得られた色材は、含有されているポリマーが水不溶性を呈するため、顔料を含有する水不溶性ポリマー粒子の水分散体である。
製造例21〜24(疎水性染料を含有するインク用色材の調製)
製造例1で得られたポリマー溶液28重量部(ポリマー固形分量:50重量%)に、トルエン140gに溶解させた表2に示す疎水性染料を加え、疎水性染料を均一に溶解させた後、表2に示す中和剤を加えてポリマーの塩生成基を中和した。更にイオン交換水200 重量部を加え、攪拌した後、マイクロフルイダイザー(マイクロフルイダイザー社製)を用いて、30分間分散させた。
得られた分散体を、エパポレーターを用いてメチルエチルケトン及び水を留去し、固形分量が20重量%のインク用色材を得た。
製造例21〜24で得られた色材は、含有されているポリマーが水不溶性を呈するため、疎水性染料を含有する水不溶性ポリマー粒子の水分散体である。
なお、表2に記載の各名称は、以下のことを意味する。
CB―1 :カーボンブラック〔キャボット社製、商品名:MONARCH880〕
M−1:マゼンタ顔料〔大日本インキ工業(株)製、商品名:Fastogen Super
Magenta RG〕
Y−1:イエロー顔料〔山陽色素(株)製、品番:7410〕
C−1:シアン顔料〔大日本インキ工業(株)製、商品名:Fastogen Blue TGR-SD〕
CB−2:ブラック染料[ オリエント化学(株)製、商品名:オイルブラック860]
M−2:マゼンタ染料〔オリエント化学(株)製、商品名:オイルピンク312 〕
Y−2:イエロー染料〔オリエント化学(株)製、商品名:VALIFAST Y 1101 〕
C−2:シアン染料〔クラリアント社製、商品名:Savinyl Blue GLS〕
CB―3:自己分散型カーボンブラック〔キャボット社製、商品名:CAB-O-JET 〕
Figure 0004518375
実施例1
表3〜4において、製造例番号で示す色材を用いて下記組成を有するインクを調製し、それらを組合せてインクセットを調製した。各インクは、各成分を混合した後、マイクロフィルター(孔径:5μm)を用いて加圧濾過することにより調製した。
インクの組成は、以下示すとおりであるが、色材は、表3〜4に示す組成となるように調製した。以下の各実施例および各比較例でも、これに準じた。
(インク組成)
(重量部)
色材(色材固形分量:15重量%) X
グリセリン 10
トリエチレングリコールモノブチルエーテル 5
アセチレングリコール−エチレンオキシド付加物(界面活性剤)
〔川研ファインメミカル(株)製、アセチレノールEH〕 1
イオン交換水 84-X
得られたインクの粘度及び粘度差を表3〜4に示す。
実施例2〜5及び比較例1〜2
実施例1において、色材を表3〜4に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして、インクセットを作製した。また、耐ブリード性を評価する際には、実施例1と同様にしてインクを吐出させた。
実施例6(参考例)
実施例1において、色材を表3〜4に変更した以外は、実施例1と同様にしてインクセットを調製した。
次に、実施例1〜6及び比較例1〜2で得られたインクセットの性能を以下の方法に従って調べた。その結果を表3〜4に示す。なお、各性能における合格基準は、いずれも△以上である。Bkは黒、Yはイエロー、Mはマゼンタ、Cはシアンを意味する。
<評価方法>
(1)インクの吐出性
市販のHEWLETT PACKARD 社製のバブルジェットプリンター(Desk Jet-720C) を用いて、Xerox 社製の4024紙に、罫線を印刷したときのヨレの度合いを目視で観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:ヨレなし
○:殆どヨレなし
△:少しヨレあり
×:ヨレ大
(2)耐ブリード性
前記(1)に記載のバブルジェットプリンターを用い、PPC用再生紙に各々のインクが隣接するように印字し、得られたベタ印字の境界部分を目視にて観察し、耐ブリード性を以下の評価基準に基づいて評価した。
なお、実施例6を除く各実施例及び各比較例では、耐ブリード性の評価を行う際には、粘度の低いインクを吐出した後、粘度の高いインクを吐出した。一方、実施例6では、耐ブリード性を評価する際には、これとは逆に、粘度の高いインクを先に吐出した後、粘度の低いインクを吐出した。
(評価基準)
◎:境界部でブリーディングが認められない。
○:僅かにブリーディングが見られるが、気にならない。
△:少しブリーディングが見られるが、あまり気にならない(実使用可能レベル)。
×:境界部でのブリーディングがひどい。
(3)印字濃度
前記(1)に記載のバブルジェットプリンターを用い、PPC用再生紙にベタ印字し、25℃で1時間乾燥させた後、この印字物をMacbeth 社製のMacbeth RD918 で印字濃度を測定し、以下の基準に基づいて印字濃度を評価した。
(評価基準)
◎:印字濃度1.15以上
○:印字濃度1.05以上1.15未満
△:印字濃度1.00以上1.05未満
×:印字濃度1.00未満
(4)インクの耐水性
前記(1)に記載のバブルジェットプリンターを用い、PPC用再生紙にベタ印字し、25℃で1時間乾燥させた後、この印字物を静水中に垂直に10秒間浸漬し、そのまま垂直に引き上げた。25℃にて自然乾燥させた後、初期の印字濃度に対する浸漬後の印字濃度の残存率を式:
〔残存率〕=(〔浸漬後の印字濃度〕÷〔初期の印字濃度〕)×100
に従って求め、以下の評価基準に基づいて耐水性を評価した。
(評価基準)
◎:残存率95%以上
○:残存率90%以上95%未満
△:残存率70%以上90%未満
×:残存率70%未満
(5)インクの耐擦過性
前記(1)に記載のバブルジェットプリンターを用い、PPC用再生紙にベタ印字し、25℃で1日間乾燥させた後、指で強く印字面を擦った。その印字のとれ具合を調べ、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:ほとんど印字はとれず、周りに色がつかない。
○:少し印字が擦りとられ、周りに若干色がつく。
×:かなり印字が擦りとられ、周りがひどく黒くなり、指も相当汚れる。
Figure 0004518375
Figure 0004518375
表3〜4に示された結果から、各実施例で得られたインクセットは、いずれも吐出性及び耐ブリード性、印字濃度に優れ、かつ色材の種類によっては耐水性及び耐擦過性に優れていることがわかる。
参考例
実施例1で得られたインクセットにおいて、Bk(黒)とY(イエロー)のインクを隣接して印字する場合、Y(1.8mPa ・ s)を吐出させた後にBk(4.8mPa ・ s)を吐出させて印字するほうが、Bkを吐出させた後にYを吐出させて印字させるよりも耐ブリード性がよくなる。
本発明のインクセットは、インクジェット記録用プリンター等に好適に使用しうるものである。

Claims (7)

  1. 複数の異なる色のインクが用いられたインクセットであって、すべてのインクが同じイオン性の水不溶性色材を含有し、1つのインクの粘度と他のインクの粘度との差がすべての組み合わせにおいて0.7 〜4mPa・ s であり、該インクの組み合わせ数が3以上であり、かつ前記インクの組み合わせにおいて、明度の低いインクの粘度が明度の高いインクの粘度よりも高いインクセット。
  2. すべてのインクの粘度が、8mPa・ s 以下である、請求項1記載のインクセット。
  3. 水不溶性色材が、水溶性ポリマーで顔料を分散させた顔料分散体である請求項1又は2記載のインクセット。
  4. 水不溶性色材が、親水性基が直接又は他の原子団を介して顔料に結合している自己分散型顔料の水分散体である請求項1又は2記載のインクセット。
  5. 水不溶性色材が、水不溶性ポリマーに顔料又は疎水性染料を含有させた水不溶性ポリマー粒子の水分散体である請求項1又は2記載のインクセット。
  6. 水不溶性ポリマーが、塩生成基含有モノマー、疎水性モノマー及びマクロマーを含有するモノマー組成物を共重合させてなる水不溶性ビニルポリマーである請求項5記載のインクセット。
  7. 請求項1〜6いずれか記載のインクセットを用いて、異なる色のインクを隣接して印字する際に、粘度の低いインクを吐出させた後に粘度の高いインクを吐出させる印字方法。
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