JP4012374B2 - 水系インク - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、着色剤を含有するポリマー粒子の水分散体及びそれを含有する水系インクに関する。更に詳しくは、インクジェット記録用水系インクをはじめ、万年筆用インク、ボールペン用インク、サインペン用インク等の筆記具用水系インク等として使用しうる水系インク及びそれに用いられる着色剤を含有するポリマー粒子の水分散体に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録方式は、非常に微細なノズルからインク液滴を記録部材に直接吐出し、付着させて、文字や画像を得る記録方式である。この方式によれば、使用する装置が低騒音で操作性がよいという利点を有するのみならず、カラー化が容易であり、かつ記録部材として普通紙を使用することができるという利点があるため、近年広く用いられている。
【0003】
インクジェットプリンタに使用されるインクには溶剤が用いられているが、その溶剤の種類によっては、インクとしての性能(吐出性、保湿性、印字濃度等)を向上させる反面、着色剤の水分散体の安定性を低下させ、凝集や増粘を発生させるものがある。特に粘度を増大させるものは、吐出性等に対して大きな影響を与えることになる。したがって、着色剤の水分散体には、種々の溶剤に対する安定性が要求される。
【0004】
また、インクジェットプリンタに使用されるインクには、インクがノズルで目詰まりすることを防止するために、水溶性染料及び多価アルコールを用いることが考えられる。しかし、このインクには、耐水性に劣るという欠点がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、耐水性及び耐擦過性に優れ、更に耐溶剤性及び保存安定性にも優れた水分散体及びそれが用いられた水系インクを提供することを課題とする。
【0006】
本発明は、更に、インクジェットプリンタに使用したときに吐出性が良好なインクジェット記録用水系インクを提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、
(1)ポリマーの固形分100質量部に対して着色剤20〜200質量部を含有するポリマー粒子の水分散体であって、着色剤の含有量が4.4質量%、n−ペンタノールの含有量が10.0質量%となるように、該ポリマー粒子の水分散体、n−ペンタノール及びイオン交換水を混合してなる評価用組成物の20℃における粘度を、該評価用組成物を60℃の雰囲気中で1週間保存する前及び保存した後のそれぞれについて測定し、式:
〔粘度保持率〕
=〔保存後の20℃での粘度〕/〔保存前の20℃での粘度〕×100
に従って求めた粘度保持率が75%以上でかつ115%未満であることを満足する着色剤を含有し、ポリマーがメタクリル酸アルキルエステルマクロマーを構成成分とするものであり、着色剤が顔料であるポリマー粒子の水系インク用水分散体、
(2)ポリマーの固形分100質量部に対して着色剤20〜200質量部を含有するポリマー粒子の水分散体であって、着色剤の含有量が4.4質量%、n−ペンタノールの含有量が10.0質量%となるように、該ポリマー粒子の水分散体、n−ペンタノール及びイオン交換水を混合してなる評価用組成物の20℃における粘度を、該評価用組成物を60℃の雰囲気中で1週間保存する前及び保存した後のそれぞれについて測定し、式:
〔粘度保持率〕
=〔保存後の20℃での粘度〕/〔保存前の20℃での粘度〕×100
に従って求めた粘度保持率が75%以上でかつ115%未満であることを満足する着色剤を含有し、ポリマーがメタクリル酸アルキルエステルマクロマーを構成成分とするものであり、着色剤が疎水性染料であるポリマー粒子の水系インク用水分散体、並びに
(3)前記水系インク用水分散体を含有してなる水系インク
に関する。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明において、評価用組成物として、着色剤の含有量が4.4質量%、n−ペンタノールの含有量が10.0質量%となるように、着色剤を含有するポリマー粒子の水分散体、n−ペンタノール及びイオン交換水を混合して得られた組成物が用いられているのは、実際に使用されている水系インクと同様の量で着色剤を含有させるとともに、他の配合成分(例えば、界面活性剤等)の使用を除くことにより、評価の標準化及び簡便化を図るためである。
【0009】
また、20℃における評価用組成物の粘度を測定したのは、実際に水系インクが使用されているときの環境温度を考慮したためである。
【0010】
更に、評価用組成物を60℃の雰囲気中で1週間保存する前及び保存した後のそれぞれについて、評価用組成物の20℃における粘度を測定して粘度保持率を求めたのは、水系インクが実使用温度(20℃)の雰囲気中で最低限必要な期間(120日間)は使用することができるようにするために、その保存安定性を促進試験で評価したことに基づく。
【0011】
本発明においては、この評価用組成物が特定の粘度保持率を満足する着色剤を含有するポリマー粒子の水分散体が用いられている点に、1つの大きな特徴がある。
【0012】
かかる着色剤を含有するポリマー粒子が用いられていることにより、インクに種々の溶剤を使用することが可能となる。具体的には、エーテル系溶剤、アルコール系溶剤等のように、水分散体の安定性を低下させるが、印字品質等の性質を向上させる溶剤を使用することが可能となるので、印字品質等の諸性能を大幅に向上させることができるという格別顕著に優れた効果が発現される。
【0013】
なお、溶剤の種類によって粘度が増大すると吐出性及び印字特性が大きな影響を受けるが、粘度保持率が75%以上であり、かつ115%未満である場合には、吐出量が適切であるために印字濃度等の印字特性の振れがなくなる。粘度保持率は、好ましくは80%以上かつ110%未満、より好ましくは85%以上かつ105%未満である。
【0014】
溶剤は、25℃の水に対する溶解度が1重量%以上であればよい。その例としては、トリエチレングリコールドデシルエーテル、トリエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、2−(2−ブトキシエトキシ)エタノール、2−(2−エトキシエトキシ)エタノール、2−(2−メトキシエトキシ)エタノール、2−(イソペンチルオキシ)エタノール、2−ブトキシエタノール、2−イソプロポキシエタノール、2−(メトキシメトキシ)エタノール、2−エトキシエタノール、2−メトキシエタノール、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶剤、n−ペンタノール、n−ヘキサノール、n−ヘプタノール等の1価アルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5 - ペンタンジオール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン等の多価アルコール類、2-ピロリドン、γ- ブチロラクタム等の含窒素環状化合物、アセトアミド、N-モノメチルアセトアミド等の含窒素非環状化合物等が挙げられる。これらは、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。なお、本明細書における「n−」は、ノルマルを表す。
【0015】
なお、最終的に得られる水系インクにおける溶剤の含有量は、特に限定はないが、耐乾燥性及びインク粘度の観点から、5〜40質量%、好ましくは10〜30質量%であることが望ましい。
【0016】
着色剤の組成は、粘度保持率が前記条件を満足するように調整されていればよい。
【0017】
着色剤としては、染料及び顔料が挙げられる。着色剤の中では、耐水性、耐光性、耐オゾン性等の点から顔料を好適に使用することができる。
【0018】
着色剤を含有するポリマー粒子の代表例としては、水に不溶のポリマーに染料又は顔料を含有させたポリマー粒子が挙げられる。このポリマー粒子は、印字物に耐水性及び耐擦過性を付与するという優れた性質を有するものである。
【0019】
ポリマー粒子中に含有させることができる染料の種類には、特に限定がないが、疎水性染料が好ましい。
【0020】
疎水性染料の例としては、油性染料、分散染料等が挙げられる。それらの中では、油性染料及び分散染料がポリマー粒子中に良好に含有させることができることから好ましい。
【0021】
油性染料としては、特に限定されるものではないが、例えば、C.I.ソルベント・ブラック3、7、27、29、34;C.I.ソルベント・イエロー14、16、29、56、82;C.I.ソルベント・レッド1、3、8、18、24、27、43、51、72、73;C.I.ソルベント・バイオレット 3;C.I.ソルベント・ブルー2、11、70;C.I.ソルベント・グリーン3、7;C.I.ソルベント・オレンジ2等が挙げられる。
【0022】
分散染料としては、特に限定されるものではないが、好ましい例としては、C.I.ディスパーズ・イエロー5、42、54、64、79、82、83、93、99、100 、119 、122 、124 、126 、160 、184:1 、186 、198 、199 、204 、224 、237 ;C.I.ディスパーズ・オレンジ13、29、31:1、33、49、54、55、66、73、118 、119 、163 ;C.I.ディスパーズ・レッド54、60、72、73、86、88、91、93、111 、126 、127 、134 、135 、143 、145 、152 、153 、154 、159 、164 、167:1 、177 、181 、204 、206 、207 、221 、239 、240 、258 、277 、278 、283 、311 、323 、343 、348 、356 、362 ;C.I.ディスパーズ・バイオレット33;C.I.ディスパーズ・ブルー56、60、73、87、113 、128 、143 、148 、154 、158 、165 、165:1 、165:2 、176 、183 、185 、197 、198 、201 、214 、224 、225 、257 、266 、267 、287 、354 、358 、365 、368 ;C.I.ディスパーズ・グリーン6:1 、9等が挙げられる。
【0023】
疎水性染料は、ポリマー粒子中に効率よく含有させる観点から、20℃において、一般に乳化の際に使用される有機溶媒に対する溶解度が2g/L以上、好ましくは20〜500 g/Lであることが望ましい。
【0024】
また、ポリマー粒子中に含有させることができる顔料の種類にも特に制限がなく、公知の無機顔料及び有機顔料のいずれも使用することができる。
【0025】
無機顔料としては、カーボンブラック、金属酸化物、金属硫化物、金属塩化物等が挙げられる。黒色においては、カーボンブラックが好ましい。カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等が挙げられる。
【0026】
有機顔料としては、アゾ顔料、ジアゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、チオインジゴ顔料、アンソラキノン顔料、キノフタロン顔料等が挙げられ、特にピグメント・イエロー17, 74, 83, 93, 97, 110, 124, 128, 138, 139, 151, 154, 180等、ピグメント・レッド57:1, 122, 146, 184, 202, 224, 238, 245 等、ピグメント・バイオレット19等、ピグメント・ブルー15, 15:1, 15:2, 15:3, 15:4, 16, 60, 76等、ピグメント・グリーン7, 36 等、及びこれらを含む固溶体が好ましい。
【0027】
なお、必要により、無機顔料及び有機顔料は、体質顔料と併用することもできる。体質顔料としては、シリカ、炭酸カルシウム、タルク等が挙げられる。
【0028】
ポリマー粒子に用いられるポリマーとしては、水に不溶なポリマーを好適に使用することができる。水に不溶なポリマーの例としては、水に不溶な、ビニルポリマー、エステル系ポリマー、ウレタン系ポリマー等が挙げられる。これらポリマーの中では、水に不溶なビニルポリマーが好ましい。
【0029】
ビニルポリマー粒子の水分散体としては、(a)塩生成基含有モノマー〔以下、(a)成分という〕と、(b)マクロマー〔以下、(b)成分という〕と、(c)塩生成基含有モノマー及びマクロマーと共重合可能なモノマー〔以下、(c)成分という〕とを含むモノマー混合物を共重合させてなるビニルポリマーに、着色剤を含有させたビニルポリマー粒子の水分散体が好ましく、(a)成分と、(b)成分と、(c)成分とを含むモノマー混合物を共重合させてなるビニルポリマーに、着色剤として顔料を含有させたビニルポリマー粒子の水分散体がより好ましい。
【0030】
(a)成分としては、カチオン性モノマー、アニオン性モノマー等が挙げられる。その例として、特開平9−286939号公報5頁7欄24行〜8欄29行に記載されているもの等が挙げられる。
【0031】
カチオン性モノマーの代表例としては、不飽和3級アミン含有モノマー、不飽和アンモニウム塩含有モノマー等が挙げられる。それらの中では、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−(N’,N’−ジメチルアミノプロピル)(メタ)アクリルアミド及びビニルピロリドンが好ましい。
【0032】
アニオン性モノマーの代表例としては、不飽和カルボン酸モノマー、不飽和スルホン酸モノマー、不飽和リン酸モノマー等が挙げられる。それらの中では、アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和カルボン酸モノマーが好ましい。
【0033】
(b)成分としては、数平均分子量500 〜100000、好ましくは1000〜10000 の片末端に重合性官能基を有するモノマーであるマクロマーが挙げられる。マクロマーの代表例としては、シリコーンマクロマー、スチレンマクロマー及びメタクリル酸アルキルエステルマクロマーからなる群より選ばれた1種以上が挙げられる。その中では、式(I):
X1(Y1)q Si(R1 )3-r (Z1)r (I)
(式中、X1 は重合可能な不飽和基、Y1 は2価の結合基、R1 はそれぞれ独立して水素原子、低級アルキル基、アリール基又はアルコキシ基、Z1 は500以上の数平均分子量を有する1価のシロキサンポリマーの残基、qは0又は1、rは1〜3の整数を示す)
で表されるシリコーンマクロマー、片末端に重合性官能基を有するスチレン系マクロマー及びメタクリル酸アルキルエステルマクロマーが好ましい。
【0034】
(b)成分の数平均分子量は、溶媒として1mmol/Lのドデシルジメチルアミン含有クロロホルムを用いたゲルクロマトグラフィーにより、標準物質としてポリスチレンを用いて測定される。
【0035】
シリコーンマクロマーは、インクジェットプリンターのヘッドの焦げ付きを防止する観点から、好適に使用しうるものである。
【0036】
式(I)で表されるシリコーンマクロマーにおいて、X1 としては、CH2 =CH−基、CH2 =C(CH3 )−基等の炭素数2〜6の1価の不飽和炭化水素基が挙げられる。Y1 としては、−COO−基、−COOCa H2a−基(aは1〜5の整数を示す)、フェニレン基等の2価の結合基が挙げられ、−COOC3 H6 −が好ましい。R1 としては、水素原子;メチル基、エチル基等の炭素数1〜5の低級アルキル基;フェニル基等の炭素数6〜20のアリール基、メトキシ基等の炭素数1〜20のアルコキシ基等が挙げられる。それらの中では、メチル基が好ましい。Z1 は、好ましくは数平均分子量500 〜5000のジメチルシロキサンポリマーの1価の残基である。qは0又は1であるが、好ましくは1である。rは1〜3の整数であるが、好ましくは1である。
【0037】
シリコーンマクロマーの代表例としては、式(I−1):
CH2 =CR2-COOC3H6-[Si(R3)2-O]b -Si(R3)3 (I−1)
(式中、R2 は水素原子又はメチル基、R3 はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜5の低級アルキル基、bは5〜60の数を示す)で表されるシリコーンマクロマー、
【0038】
式(I−2):
CH2 =CR2-COO-[Si(R3)2-O] b -Si(R3)3 (I−2)
(式中、R2 、R3 及びbは前記と同じ)で表されるシリコーンマクロマー、
【0039】
式(I−3):
CH2 =CR2-Ph-[Si(R2)2-O] b-Si(R3)3 (I−3)
(式中、Phはフェニレン基、R4 、R5 及びbは前記と同じ)で表されるシリコーンマクロマー、
【0040】
式(I−4):
CH2 =CR2-COOC3H6-Si(OE)3 (I−4)
〔式中、R2 は前記と同じ。Eは式: -[Si(R2)2O] c-Si(R2)3基(R2 は前記と同じ。cは5〜65の数を示す)を示す〕
で表されるシリコーンマクロマー等が挙げられる。
【0041】
それらの中では、式(I−1)で表されるシリコーンマクロマーが好ましく、特に、式(I−1a):
CH2 =C(CH3)-COOC3H6-[Si(CH3)2-O]d -CH3 (I−1a)
(式中、dは8〜40の数を示す)
で表されるシリコーンマクロマーが好ましい。その例として、FM−0711(チッソ(株)製、商品名)等が挙げられる。
【0042】
スチレン系マクロマーは、ビニルポリマーに顔料を十分に含有させる観点から、好適に使用しうるものである。
【0043】
スチレン系マクロマーとしては、片末端に重合性官能基を有するスチレン単独重合体又はスチレンと他のモノマーとの共重合体が挙げられる。前記共重合体におけるスチレン含量は、顔料が十分にポリマー粒子に含有されるようにする観点から、60重量%以上、好ましくは70重量%以上であることが望ましい。前記他のモノマーとしては、アクリロニトリル等が挙げられる。アクリロニトリルとしては、片末端に重合性官能基としてアクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基を有するものが好ましい。
【0044】
メタクリル酸アルキルエステルマクロマーは、ビニルポリマーに顔料を十分に含有させるという観点及びポリマー粒子の水分散体の安定性を向上させるという観点から、好適に使用しうるものである。メタクリル酸アルキルエステルマクロマーとしては、メタクリル酸メチルマクロマー、メタクリル酸イソブチルマクロマー及びメタクリル酸ドデシルマクロマーからなる群より選ばれた1種以上が挙げられる。
【0045】
(c)成分としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、(イソ)プロピル(メタ)アクリレート、(イソ又はターシャリー)ブチル(メタ)アクリレート、(イソ)アミル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、(イソ)オクチル(メタ)アクリレート、(イソ)デシル(メタ)アクリレート、(イソ)ドデシル(メタ)アクリレート、(イソ)ステアリル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類;スチレン、ビニルトルエン、2−メチルスチレン、クロロスチレン等のスチレン系モノマー等が挙げられる。これらは、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0046】
なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート又はメタクリレートを示す。また、「(イソ)プロポキシ」は、n−プロポキシ又はイソプロポキシを示す。
【0047】
(c)成分には、印字濃度及び耐マーカー性向上の観点から、スチレン系モノマーが含まれていることが好ましい。スチレン系モノマーとしては、スチレン及び2−メチルスチレンが好ましい。これらは、単独で用いてもよく、併用してもよい。(c)成分におけるスチレン系モノマーの含有量は、印字濃度及び耐マーカー性向上の観点から、10〜100 重量%、好ましくは40〜100 重量%であることが望ましい。
【0048】
また、モノマー混合物には、(d)水酸基含有モノマー〔以下、(d)成分という〕及び(e)式(II):
CH2 =C(R4 )COO(R5 O)p R6 (II)
(式中、R4 は水素原子又は低級アルキル基、R5 はヘテロ原子を有していてもよい炭素数1〜30の2価の炭化水素基、R6 は水素原子、又はヘテロ原子を有していてもよい炭素数1〜30の1価の炭化水素基、pは1〜60の数を示す)
で表されるモノマー〔以下、(e)成分という〕からなる群より選ばれた1種以上が含まれていてもよい。
【0049】
(d)成分としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(n=2〜30)(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(n=2〜30)(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール(n=1〜15)・プロピレングリコール(n=1〜15))(メタ)アクリレート等が挙げられる。それらの中では、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0050】
(e)成分は、本発明の水性インク組成物の吐出安定性を高め、連続印字してもヨレの発生を抑制するという優れた効果を発現するものである。
【0051】
式(II)において、R4 は水素原子又は低級アルキル基である。低級アルキル基としては、炭素数1〜4のアルキル基が挙げられる。
【0052】
R5 は、ヘテロ原子を有していてもよい炭素数1〜30の2価の炭化水素基である。ヘテロ原子としては、例えば、窒素原子、酸素原子、ハロゲン原子及び硫黄原子が挙げられる。
【0053】
R5 の代表例としては、置換基を有していてもよい炭素数6〜30の芳香族環、置換基を有していてもよい炭素数3〜30のヘテロ環及び置換基を有していてもよい炭素数1〜30のアルキレン基が挙げられ、これらの環又は基は2種以上を組合せたものであってもよい。置換基としては、炭素数6〜29の芳香族環、炭素数3〜29のヘテロ環、炭素数1〜29のアルキル基、ハロゲン原子、アミノ基等が挙げられる。
【0054】
R5 の好適な例としては、炭素数1〜24の置換基を有していてもよいフェニレン基、炭素数1〜30、好ましくは炭素数1〜20の脂肪族アルキレン基、芳香族環を有する炭素数7〜30のアルキレン基及びヘテロ環を有する炭素数4〜30のアルキレン基が挙げられる。
【0055】
また、R5 O基の好適な例としては、エチレンオキサイド基、(イソ)プロピレンオキサイド基、テトラメチレンオキサイド基、ヘプタメチレンオキサイド基、ヘキサメチレンオキサイド基及びこれらアルキレンオキサイドの1種以上の組合せからなる炭素数2〜7のアルキレンオキサイド基やフェニレンオキサイド基が挙げられる。
【0056】
R6 は、ヘテロ原子を有していてもよい炭素数1〜30の1価の炭化水素基である。ヘテロ原子としては、例えば、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子が挙げられる。
【0057】
R6 の代表例としては、置換基を有していてもよい炭素数6〜30の芳香族環、置換基を有していてもよい炭素数3〜30のヘテロ環、又は置換基を有していてもよい炭素数1〜30のアルキル基が挙げられる。置換基としては、炭素数6〜29の芳香族環、炭素数4〜29のヘテロ環、ハロゲン原子、アミノ基等が挙げられる。
【0058】
R6 の好適な例としては、フェニル基、炭素数1〜30、好ましくは炭素数1〜20の脂肪族アルキル基、芳香族環を有する炭素数7〜30のアルキル基及びヘテロ環を有する炭素数4〜30のアルキル基が挙げられる。
【0059】
R6 のより好適な例としては、メチル基、エチル基、(イソ)プロピル基、(イソ)ブチル基、(イソ)ペンチル基、(イソ)ヘキシル基等の炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基等が挙げられる。
pは1〜60の数であるが、中でも1〜30の数が好ましい。
【0060】
(e)成分の具体例としては、メトキシポリエチレングリコール(1〜30:式(II)中のpの値を示す。以下同じ)(メタ)アクリレート、メトキシポリテトラメチレングリコール(1〜30)(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(1〜30)(メタ)アクリレート、(イソ)プロポキシポリエチレングリコール(1〜30)(メタ)アクリレート、ブトキシポリエチレングリコール(1〜30)(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(1〜30)(メタ)アクリレート、メトキシ(エチレングリコール・プロピレングリコール共重合)(1〜30、その中のエチレングリコール:1〜29)(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上を混合して使用することができる。それらの中では、メトキシポリエチレングリコール(1〜30)(メタ)アクリレートが好ましい。
【0061】
ビニルポリマーにおける(a)成分の含量は、得られる分散体の分散安定性の観点から、1〜40重量%、好ましくは2〜40重量%が望ましい。
【0062】
ビニルポリマーにおける(b)成分の含量は、インクジェットプリンターのヒーター面の焦げ付きを抑制する観点及び安定性の観点から、1〜25重量%、好ましくは5〜20重量%が望ましい。
【0063】
ビニルポリマーにおける(c)成分の含量は、インクジェットプリンターのヒーター面の焦げ付きを抑制する観点及び安定性の観点から、5〜93重量%、好ましくは10〜80重量%が望ましい。なお、スチレン系モノマーを含む(c)成分を用いる場合、ビニルポリマーにおける(c)成分の含量は、10〜70重量%が好ましい。
【0064】
ビニルポリマーにおける(d)成分の含量は、吐出安定性及び印字濃度の観点から、5〜40重量%、好ましくは7〜20重量%が望ましい。
【0065】
また、(a)成分と(d)成分との合計含量は、水中での安定性及び耐水性の観点から、6〜60重量%、好ましくは10〜50重量%が望ましい。
【0066】
ビニルポリマーにおける(e)成分の含量は、吐出安定性及び分散安定性の観点から、5〜50重量%、好ましくは10〜40重量%であることが望ましい。
【0067】
また、ビニルポリマーにおける(a)成分と(e)成分との合計含量は、水中での分散安定性及び吐出安定性の観点から、6〜75重量%が好ましい。
【0068】
また、ビニルポリマーにおける(a)成分と(d)成分と(e)成分との合計含量は、水中での分散安定性及び吐出安定性の観点から、6〜60重量%、好ましくは7〜50重量%が望ましい。
【0069】
ビニルポリマーは、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の公知の重合法により、モノマー混合物を共重合させることによって製造される。それらの重合法の中では、溶液重合法が好ましい。
【0070】
溶液重合法で用いる有機溶媒としては、極性有機溶媒が好ましく、水混和性有機溶媒を水と混合して用いることもできる。
【0071】
有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール等の炭素数1〜3の脂肪族アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸エチル等のエステル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等が挙げられる。それらの中では、メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、トルエン、これらの混合液又はこれらと水との混合液が好ましい。
【0072】
なお、重合の際には、ラジカル重合開始剤を用いることができる。ラジカル重合開始剤としては、2, 2' −アゾビスイソブチロニトリル、2, 2' −アゾビス(2, 4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル−2, 2' −アゾビスブチレート、2, 2' −アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1, 1' −アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)等のアゾ化合物が好適である。また、重合開始剤として、t−ブチルペルオキシオクトエート、ジ−t−ブチルペルオキシド、ジベンゾイルオキシド等の有機過酸化物を使用することもできる。
【0073】
重合開始剤の量は、モノマー混合物に対して0.001 〜5モル%、特に0.01〜2モル%であることが好ましい。
【0074】
なお、重合の際には、更に重合連鎖移動剤をモノマー混合物に添加してもよい。重合連鎖移動剤の具体例としては、オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、メルカプトエタノール等のメルカプタン類;ジメチルキサントゲンジスルフィド、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィド等のキサントゲンジスルフィド類;テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド等のチウラムジスルフィド類;四塩化炭素、臭化エチレン等のハロゲン化炭化水素類;ペンタフェニルエタン等の炭化水素類;及びアクロレイン、メタクロレイン、アリルアルコール、2−エチルヘキシルチオグリコレート、タービノーレン、α−テルピネン、γ−テルピネン、ジペンテン、α−メチルスチレンダイマー、更に9, 10−ジヒドロアントラセン、1, 4−ジヒドロナフタレン、インデン、1, 4−シクロヘキサジエン等の不飽和環状炭化水素化合物;2, 5−ジヒドロフラン等の不飽和ヘテロ環状化合物等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組合せて使用することができる。
【0075】
モノマー混合物の重合条件は、使用するラジカル重合開始剤、モノマー、有機溶媒の種類等によって異なるので一概には決定することができないが、通常、重合温度は30〜100 ℃、好ましくは50〜80℃であり、重合時間は1〜20時間である。また、重合雰囲気は、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気であることが好ましい。
【0076】
重合反応の終了後、反応溶液から再沈澱、有機溶媒の留去等の公知の方法によって共重合体を単離することができる。また、得られた共重合体は、再沈澱を繰り返したり、膜分離、クロマトグラフ法、抽出法等により、未反応のモノマー等を除去することにより、精製することができる。
【0077】
ポリマーの重量平均分子量は、3000〜200,000 、より好ましくは10,000〜150,000 であることが、印刷後の耐久性及び分散安定性の点から好ましい。
【0078】
染料を含有するポリマー粒子の水分散体は、公知の乳化法によって製造することができる。例えば、ポリマー及び疎水性染料を有機溶媒に溶解させ、必要に応じて中和剤を加えてポリマー中の塩生成基をイオン化し、これに水を添加した後、必要に応じて超音波乳化機を用いて乳化を行ない、その有機溶媒を留去して水系に転相することによって得ることができる。
【0079】
また顔料を含有させたポリマー粒子の水分散体を得る方法としては、ポリマーを有機溶媒に溶解させ、顔料、水、中和剤及び必要に応じ界面活性剤を加えて混練しペーストとした後、必要に応じて該ペーストを水で希釈し、有機溶媒を留去して水系にする方法が好ましい。ポリマーを溶解させる有機溶媒としては、先に述べた溶液重合法で用いる有機溶媒と同様のものが用いられる。
【0080】
ポリマー粒子中の着色剤の量は、ポリマー粒子への着色剤の含有のさせやすさの観点及び印字濃度の観点から、ポリマーの固形分100質量部に対して20〜2000質量部、好ましくは40〜900質量部、より好ましくは40〜600質量部である。
【0081】
それらの着色剤を含有したポリマー粒子の粒径は、分散安定性の観点から10〜500nmであることが好ましい。
【0082】
水分散体における着色剤の含有量は、十分な印字濃度が得られるのであればよく、特に限定がない。通常、該含有量は、十分な吐出性及び印字濃度を付与する観点から、1〜30重量%、好ましくは2〜20重量%、より好ましくは4〜15重量%である。
【0083】
本発明の水系インクは、前記水分散体に、公知の各種添加剤、例えば、多価アルコール類のような湿潤剤、分散剤、消泡剤、防黴剤及び/又はキレート剤、pH調整剤等を添加することによって得ることができる。
【0084】
かくして得られる水系インクは、インクジェット記録用水系インクとして好適に使用しうるものである。
【0085】
【実施例】
製造例1〜3
反応容器に、メチルエチルケトン20質量部、モノマー混合物及び重合連鎖移動剤を表1の初期仕込みモノマーの欄に示すように仕込み、窒素ガス置換を十分に行なった。
【0086】
一方、滴下ロートに、表1の滴下モノマーの欄に示すようにモノマー混合物、重合連鎖移動剤、メチルエチルケトン60質量部及び2, 2' −アゾビス(2, 4−ジメチルバレロニトリル)1.2質量部を入れ、十分に窒素置換を行なった。
【0087】
窒素雰囲気下、反応容器内の混合溶液を攪拌しながら70℃まで昇温し、滴下ロート中の混合溶液を3時間かけて徐々に滴下した。滴下終了から2時間経過後、2, 2' −アゾビス(2, 4−ジメチルバレロニトリル)0.3質量部をメチルエチルケトン5質量部に溶解した溶液を加え、更に70℃で2時間、75℃で2時間熟成させ、共重合体溶液を得た。
【0088】
得られた共重合体溶液の一部を、減圧下、105℃で2時間乾燥させ、溶剤を除去することによって単離し、標準物質としてポリスチレン、溶剤として50mmol/Lの酢酸含有テトラヒドロフランを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより重量平均分子量を測定した。その結果を表1に示す。
【0089】
得られた共重合体溶液を減圧乾燥させて得られた共重合体4.5質量部を、表1に示す有機溶媒25質量部に溶かし、その中に表1に示す中和剤の水溶液(5mol/L)を所定量加えて共重合体の塩生成基の一部を中和し、更に表1に示す顔料5.5質量部を加え、ビーズミルで混練した。
【0090】
得られた混練物に、イオン交換水30質量部を加え、十分に攪拌した後、エバポレーターを用いて該有機溶媒及び水を留去し、固形分濃度が20重量%の顔料含有ポリマー粒子の水分散体を得た。
【0091】
製造例4
表1に示すモノマー混合物及び重合連鎖移動剤を用い、製造例1と同様にして共重合体溶液を得た。製造例1と同様にして得られた共重合体の重量平均分子量を測定した。その結果を表1に示す。
【0092】
得られた共重合体溶液を減圧乾燥させて得られた共重合体4.5質量部に、表1に示す有機溶媒25質量部及び表1に示す疎水性染料5.5質量部を加え、完全に溶解させ、表1に示す中和剤の水溶液(5mol/L)を所定量加えて共重合体の塩生成基の一部を中和し、これにイオン交換水300質量部を加え、十分に攪拌した後、超音波乳化機を用いて、30分間分散した。
【0093】
得られた乳化物から、エバポレーターを用いて該有機溶媒及び水を留去し、固形分濃度が20重量%の染料含有ポリマー粒子の水分散体を得た。
【0094】
製造例5〜6
表1に示すモノマー混合物及び重合連鎖移動剤を用い、製造例1と同様にして共重合体溶液を得た。製造例1と同様にして、得られた共重合体の重量平均分子量を測定した。その結果を表1に示す。
【0095】
得られた共重合体溶液を減圧乾燥させて得られた共重合体4.5質量部を、表1に示す有機溶媒25質量部に溶かし、その中に表1に示す中和剤の水溶液(5mol/L)を所定量加えて共重合体の塩生成基の一部を中和し、更に表1に示す顔料5.5質量部を加え、ビーズミルで混練した。
【0096】
得られた混練物に、イオン交換水30質量部を加え、十分に攪拌した後、エバポレーターを用いて該有機溶媒及び水を留去し、固形分濃度が20重量%の顔料含有ポリマー粒子の水分散体を得た。
【0097】
なお、表1に記載の名称は、以下のことを意味する。
スチレンマクロマー:東亜合成(株)製、商品名:AS-6S (スチレン単独重合マクロマー、数平均分子量:6000、重合性官能基:メタクリロイルオキシ基)
メタクリル酸イソブチルマクロマー:東亜合成(株)製、商品名:AW-6S (メタクリル酸イソブチル単独重合マクロマー、数平均分子量:6000、重合性官能基:メタクリロイルオキシ基)
【0098】
シリコーンマクロマー:チッソ(株)製、商品名:FM-0711 (数平均分子量:1000、式 (I−1a)で表される化合物)
【0099】
ピグメント・ブラック7 :デグサ社製、商品名:Printex-L
ピグメント・ブルー 15:3 :大日本インキ化学工業(株)製、商品名:Fastogen Blue TGR
ピグメント・イエロー 74 :山陽色素(株)製、商品名:Pigment Yellow 7409 C:I:ソルベント・ブラック 3:オリエント化学工業(株)製、商品名:OIL BLACK 860
【0100】
製造例7
ピグメント・イエロー74を11質量部用い、β−ナフタレンスルホン酸・ホルマリン縮合物のナトリウム塩〔花王(株)製、商品名:デモールN〕9質量部及びイオン交換水80質量部を加え、ビーズミルで混練して分散させ、固形分濃度が20重量%の顔料の水分散体を得た。
【0101】
【表1】
【0102】
実施例1〜4
製造例1〜4で得られた顔料含有ポリマー粒子の水分散体又は染料含有ポリマー粒子の水分散体並びに水系インクの物性を下記の評価方法に基づいて評価した。その結果を表2に示す。
【0103】
なお、評価用組成物は、着色剤を含有するポリマー粒子の水分散体、n−ペンタノール10.0質量%及びイオン交換水を混合することにより、調製した。
【0104】
また、水系インクは、表2に示されるように、製造例1〜4で得られた顔料含有ポリマー粒子の水分散体又は染料含有ポリマー粒子の水分散体40質量部、グリセリン10質量部、アセチレングリコール・ポリエチレンオキサイド付加物〔川研ファインケミカル(株)製、商品名:アセチレノールEH〕1質量部及びイオン交換水49質量部を混合し、得られた混合液を5μmのフィルター〔アセチルセルロース膜、外径:2.5cm、富士写真フィルム(株)製〕を取り付けた容量25mLの針なしシリンジ〔テルモ(株)製〕で濾過により、粗大粒子を除去することによって得た。
【0105】
比較例1
実施例1において、着色剤を含有するポリマー粒子の水分散体の代わりにC.I.アシッドレッド52(水溶性染料)4.4質量%を用いた以外は、実施例1と同様にして評価用組成物を得た。
【0106】
また、水系インクは、C.I.アシッドレッド52 (水溶性染料) 4.4質量部、グリセリン10質量部、アセチレングリコール・ポリエチレンオキサイド付加物1質量部及びイオン交換水85.6質量部を混合し、得られた混合液を5μmのフィルター〔アセチルセルロース膜、外径:2.5cm、富士写真フィルム(株)製〕を取り付けた容量25mLの針なしシリンジ〔テルモ(株)製〕で濾過によって得た。
【0107】
得られた着色剤を含有する水分散体及び水系インクの物性を実施例1〜4と同様にして評価した。その結果を表2に示す。
【0108】
比較例2
実施例1において、製造例1で得られた顔料含有ポリマー粒子の水分散体の代わりに製造例7で得られた顔料の水分散体を用いた以外は、実施例1と同様にして評価用組成物を得た。
【0109】
また、比較例1において、C.I.アシッドレッド52を4.4質量部使用した代わりに、製造例7で得られた顔料の水分散体を固形分量で8質量部用いた以外は、比較例1と同様にして水系インクを得た。
【0110】
得られた着色剤を含有する水分散体及び水系インクの物性を実施例1〜4と同様にして評価した。その結果を表2に示す。
【0111】
比較例3〜4
実施例1において、製造例1で得られた顔料含有ポリマー粒子の水分散体の代わりに、製造例5〜6で得られた顔料含有ポリマー粒子の水分散体を用いた以外は、実施例1と同様にして物性を評価した。その結果を表2に示す。
【0112】
〔評価方法〕
(1)平均粒径
コールターカウンターN4(コールター社製、商品名)を用いて製造直後の平均粒径を測定した。
【0113】
(2)保存安定性
保存安定性を評価するためのサンプルとして、製造例1〜6で得られた固形分濃度が20重量%のポリマー粒子の水分散体及び製造例7で得られた固形分濃度が20重量%の顔料の水分散体に、イオン交換水を添加し、十分に攪拌して固形分濃度が8重量%となるように調整したポリマー粒子の水分散体を用いた。このサンプルを、60℃の温度で1カ月間保存後の平均粒径をコールターカウンターN4(コールター社製、商品名)を用いて測定し、保存前の平均粒径に対する保存後の平均粒径の平均粒径保持率を式:
〔平均粒径保持率〕=〔保存後の平均粒径〕/〔保存前の平均粒径〕×100
に従って求め、以下の評価基準に基づいて保存安定性を評価した。
【0114】
〔評価基準〕
○:平均粒径保持率が80%以上120 %未満
△:平均粒径保持率が60%以上80%未満であるか、又は120 %以上140 %未満
×:平均粒径保持率が60%未満であるか、又は140 %以上
【0115】
なお、比較例1については、水溶性染料が用いられており、染料が水に溶解しているため、保存安定性の評価を行なっていない。
【0116】
(3)耐溶剤性
評価用組成物の20℃における粘度を、60℃の雰囲気で1週間保存する前及び保存した後のそれぞれについて測定し、粘度保持率を式:
〔粘度保持率〕
=〔保存後の20℃での粘度〕/〔保存前の20℃での粘度〕×100
に従って求め、以下の評価基準に基づいて耐溶剤性を評価した。
【0117】
〔評価基準〕
○:粘度保持率が75%以上でかつ115 %未満
△:粘度保持率が70%以上75%未満であるか、又は115 %以上120 %未満
×:粘度保持率が70%未満であるか、又は120 %以上
【0118】
(4)吐出性
バブルジェットプリンター〔(株)キャノン製、型番:BJC-430J〕の純正インク、又は各実施例若しくは各比較例で得られた水系インクを1ヵ月間、60℃の雰囲気中で保持する試験を行った。
【0119】
次に、このプリンターを用い、該水系インクで普通紙〔ゼロックス(Xerox) 社製、商品名:4024 DP 20 lb.Paper 〕にベタ印字した時の吐出率を式:
〔吐出率〕
=〔試験後の実施例又は比較例における水系インクの吐出重量〕
÷〔純正インクの吐出重量〕
×100
に従って求め、以下の評価基準に基づいて吐出性を評価した。
【0120】
〔評価基準〕
○:吐出率が80%以上
△:吐出率が60%以上80%未満
×:吐出率が60%未満
【0121】
(5)耐水性
ヒューレット・パッカード(HEWLETT PACKARD) 社製のバブルジェットプリンター (型番:Desk Jet-720C)を用い、各実施例又は各比較例で得られたインクで普通紙〔ゼロックス(Xerox) 社製、商品名:4024 DP 20 lb.Paper 〕にベタ印字し、25℃で1時間乾燥させた試料の特定の印字箇所の印字濃度をマクベス濃度計 (マクベス社製、品番:RD914)で測定後、静水中に垂直に10秒間浸漬し、そのまま垂直に引き上げた。
【0122】
25℃で24時間自然乾燥させた後、浸漬前と同じ箇所の印字濃度を測定し、浸漬前の印字濃度に対する浸漬後の印字濃度の印字濃度保持率を式:
〔印字濃度保持率〕=〔浸漬後の印字濃度〕/〔浸漬前の印字濃度〕×100
に従って求め、以下の評価基準に基づいて耐水性を評価した。
【0123】
〔評価基準〕
○:印字濃度保持率が90%以上
△:印字濃度保持率が70%以上90%未満
×:印字濃度保持率が70%未満
【0124】
(6)耐擦過性
前記耐水性の評価の際に使用したのと同じプリンター、水系インク及び普通紙を用い、ベタ印字し、25℃で24時間乾燥させた後、指で強く印字面を擦った。その印字のとれ具合を以下の評価基準に基づいて評価した。
【0125】
〔評価基準〕
○:ほとんど印字はとれず、周りも指も汚れない。
△:少し印字が擦りとられ、周りが少し汚れ、指も少し汚れる。
×:かなり印字が擦りとられ、周りがかなりひどく汚れ、指も相当汚れる。
【0126】
【表2】
【0127】
表2に示された結果から、保存安定性が優れた、着色剤を含有するポリマー粒子の水分散体の内、各実施例の該水分散体は、いずれも、耐溶剤性に優れ、これらの該水分散体を用いた水系インクは吐出性、耐水性及び耐擦過性にも優れたものであることがわかる。
【0128】
【発明の効果】
本発明の水系インクは、保存安定性及び耐溶剤性に優れた、着色剤を含有するポリマー粒子の水分散体が用いられているので、耐水性及び耐擦過性にも優れたものである。
【0129】
また、本発明の水系インクは、吐出性にも優れているので、インクジェット記録用水系インク等として好適に使用しうるものである。
Claims (4)
- ポリマーの固形分100質量部に対して着色剤20〜200質量部を含有するポリマー粒子の水分散体であって、着色剤の含有量が4.4質量%、n−ペンタノールの含有量が10.0質量%となるように、該ポリマー粒子の水分散体、n−ペンタノール及びイオン交換水を混合してなる評価用組成物の20℃における粘度を、該評価用組成物を60℃の雰囲気中で1週間保存する前及び保存した後のそれぞれについて測定し、式:
〔粘度保持率〕
=〔保存後の20℃での粘度〕/〔保存前の20℃での粘度〕×100
に従って求めた粘度保持率が75%以上でかつ115%未満であることを満足する着色剤を含有し、ポリマーがメタクリル酸アルキルエステルマクロマーを構成成分とするものであり、着色剤が顔料であるポリマー粒子の水系インク用水分散体。 - ポリマーの固形分100質量部に対して着色剤20〜200質量部を含有するポリマー粒子の水分散体であって、着色剤の含有量が4.4質量%、n−ペンタノールの含有量が10.0質量%となるように、該ポリマー粒子の水分散体、n−ペンタノール及びイオン交換水を混合してなる評価用組成物の20℃における粘度を、該評価用組成物を60℃の雰囲気中で1週間保存する前及び保存した後のそれぞれについて測定し、式:
〔粘度保持率〕
=〔保存後の20℃での粘度〕/〔保存前の20℃での粘度〕×100
に従って求めた粘度保持率が75%以上でかつ115%未満であることを満足する着色剤を含有し、ポリマーがメタクリル酸アルキルエステルマクロマーを構成成分とするものであり、着色剤が疎水性染料であるポリマー粒子の水系インク用水分散体。 - 請求項1又は2記載の水系インク用水分散体を含有してなる水系インク。
- 水系インクがインクジェット記録用水系インクである請求項3記載の水系インク。
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