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JP4236314B2 - ポリオキシン顆粒水和剤 - Google Patents

ポリオキシン顆粒水和剤 Download PDF

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JP4236314B2 JP32390298A JP32390298A JP4236314B2 JP 4236314 B2 JP4236314 B2 JP 4236314B2 JP 32390298 A JP32390298 A JP 32390298A JP 32390298 A JP32390298 A JP 32390298A JP 4236314 B2 JP4236314 B2 JP 4236314B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリオキシン化合物を含有する植物病害防除用の顆粒水和剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
ストレプトミセス・カカオイ・バー・アソエンシス(Streptomyces cacaoi var. asoensis)が生産するポリオキシン化合物は、ヌクレオシド系の抗生物質であり、イネ紋枯病菌、ナシ黒斑病菌、イネゴマ葉枯病菌等の植物病菌の発育を阻害することが知られている。このため、従来からポリオキシン化合物を活性成分とする農薬が乳剤や水和剤として市販されており、果樹用、たばこ用、花卉用、芝用などの殺菌剤として30年以上に渡り使用されてきた。
【0003】
ところが、ポリオキシン化合物を含有する従来の乳剤は、製剤の安定性が悪くて有効期間が短いという問題を抱えていた。このため、使用状況は自ずと制限され、古くなった乳剤は廃棄せざるを得なかった。しかも、従来の乳剤は、使用する溶剤の種類や希釈濃度によって効果が安定しない場合があり、必ずしも使い勝手は良くなかった。
また、ポリオキシン化合物を含有する従来の水和剤は、有効成分量が低く、粉立ちが発生したり、崩壊性や分散性が一定しないという問題を抱えていた。また、担体として粘土鉱物を使用しているため、粘土鉱物が植物に付着して目立つ汚れになることもあった。
このように、ポリオキシン化合物を含有する従来の製剤は種々の問題を有しており、これらの問題を解消した新しい製剤を提供することが必要とされていた。
【0004】
一方、近年では農薬の過剰使用による環境汚染が社会的問題として重視されるようになっている。すなわち、植物や土壌に散布した農薬が、雨水等によって周辺河川に流出し、河川の魚類に影響を与えたり、水道水源水を汚染する事態を可能な限り防ぐことが必要とされている。このため、低薬量で優れた効果を有する農薬を提供することが要求されている。特に使用する農薬の総量規制がなされているゴルフ場ではこのような要求が高い。
【0005】
また、ゴルフ場等における芝の病害の中には、局部的に農薬施用量を多くしないと十分な効果が得られない病害もある。従来の水和剤は崩壊性、分散性および懸垂性が十分でなく、また有効成分量が低い製剤であるために、このような病害を防除しようとすると大量の処理水を用いなければならない。このため、従来の水和剤を施用するとグリーンが水浸しになってプレーに支障をきたすこともあった。したがって、処理水量が少なくて済む製剤を提供することも求められている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はこれらの従来技術の問題点を解消することを課題とした。すなわち本発明は、水と混合したときの崩壊性、分散性および懸垂性が良好なポリオキシン化合物含有顆粒水和剤を提供することを解決すべき課題とした。また本発明は、ポリオキシン化合物の農薬活性を効率良く発揮させることができ、有効成分量が高く、処理水量が少なくて済む顆粒水和剤を提供することも解決すべき課題とした。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記の課題を解決するために鋭意検討を進めた結果、特定のポリオキシン化合物に特定の界面活性剤と特定の水溶性無機物質を混合して顆粒水和剤の形態にすれば、ポリオキシン化合物の植物病害防除作用を効果的に発揮しうることを見出して本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明は、以下の構成である。
[1] ポリオキシンD亜鉛塩、ナフタレンスルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物またはポリオキシエチレンアルキルエーテルのうち少なくとも一方、および硫酸アンモニウムを含有する顆粒水和剤。
[2] ナフタレンスルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物およびポリオキシエチレンアルキルエーテルを含有する[1]に記載の顆粒水和剤。
[3] 粒径が90〜500μmの範囲内である[1]または[2]に記載の顆粒水和剤。
[4] 芝のラージパッチ、ブラウンパッチ、擬似葉腐病、ヘルミントスポリウム葉枯れ病、カーブラリア葉枯れ病、フェアリーリング病またはバラのうどんこ病を予防または治療するための[1]〜[3]のいずれかに記載の顆粒水和剤。
[5] ポリオキシンD亜鉛塩および硫酸アンモニウムを含有する流動層中にナフタレンスルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物またはポリオキシエチレンアルキルエーテルのうち少なくとも一方を噴霧し、乾燥しながら造粒し、90〜500μmの範囲内の粒径を有する粒子を選択することによって製造した[1]〜[4]のいずれかに記載の顆粒水和剤。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下において、本発明の顆粒水和剤について詳細に説明する。本発明の顆粒水和剤は、必須成分としてポリオキシンD亜鉛塩、ナフタレンスルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物またはポリオキシエチレンアルキルエーテルのうち少なくとも一方、および硫酸アンモニウムを含有する。ポリオキシンD亜鉛塩は、本発明の顆粒水和剤に農薬活性成分として添加する。特にポリオキシンDの亜鉛塩(特公昭46ー13364号公報)を使用するのが好ましい。なお、主たるポリオキシン化合物の化学構造は、「THE MERCK INDEX TWELFTH EDITION」1306頁に記載されている。
【0012】
本発明の顆粒水和剤に使用するポリオキシンD亜鉛塩は、生物学的手段により得られたものであっても、合成により得られたものであってもよい。生物学的手段により取得する場合には、例えばストレプトミセス・カカオイ・バー・アソエンシス(Streptomyces cacaoi var. asoensis)が生産するポリオキシンD亜鉛塩を使用することができる。培養の条件や操作法は、取得しようとするポリオキシンD亜鉛塩の量に応じて適宜決定することができる。また、ストレプトミセス・カカオイ・バー・アソエンシスの生産物は、精製してから使用してもよいし、未精製のまま使用してもよい。
【0013】
ポリオキシンD亜鉛塩を含有する本発明の顆粒水和剤には、顆粒水和剤の製造に一般に用いられている界面活性剤を広く使用することができる。中でも陰イオン系界面活性剤または非イオン系界面活性剤を含有するのが好ましく、両方とも含有するのがより好ましい。陰イオン系界面活性剤としては、例えば、ナフタレンスルホン酸塩のホルマリン縮合物、アルケニルスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、リグニンスルホン酸塩、アルキルアリルスルホン酸塩、ポリスチレンスルホン酸塩、カルボキシメチルセルロース塩などが挙げられる。塩としては、ナトリウム塩などのアルカリ金属塩や、カルシウム塩などのアルカリ土類金属塩を例示することができる。これらの陰イオン界面活性剤は、単独または2種以上を混合して用いることができる。中でも、ナフタレンスルホン酸塩のホルマリン縮合物を使用するのが好ましく、特にナフタレンスルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物を使用するのがより好ましい。
【0014】
非イオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンジアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンジアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンスチリルアリールエーテル、ポリオキシエチレンジスチリルアリールエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンジアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシプロピレンジアルキルアリールエーテル、ポリオキシプロピレンスチリルアリールエーテル、ポリオキシプロピレンジスチリルアリールエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシプロピレンアルキルエステル、ポリオキシプロピレンソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、高級脂肪酸アルカノールアマイドなどが挙げられる。これらの非イオン系界面活性剤は、単独または2種以上を混合して用いることができる。中でも、特にポリオキシエチレンアルキルエーテルを使用するのが好ましい。
本発明の顆粒水和剤は、ナフタレンスルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物またはポリオキシエチレンアルキルエーテルのうち少なくとも一方を含有する。
【0015】
また、本発明の顆粒水和剤は、必須成分として硫酸アンモニウムも含有する
【0016】
本発明の顆粒水和剤には、ポリオキシンD亜鉛塩、ナフタレンスルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物またはポリオキシエチレンアルキルエーテルのうち少なくとも一方、および硫酸アンモニウムの他に、本発明の所期の効果を過度に阻害しない範囲内でその他の成分を添加することもできる。例えば、通常の水和剤に使用されている固体担体を使用することができる。具体的には、ベントナイト、カオリナイト、モンモリロナイト、ジークライトなどの粘土鉱物を使用することができる。また、増量剤などとして、タルク、雲母、石灰、リン灰石、けいそう土、炭酸マグネシウム、無水ケイ酸、軽石、バーミキュライト、石こう、炭酸カルシウム、ドロマイト、ゼオライト、デキストリン、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、リグニンスルホン酸ナトリウム、でんぷん、結晶セルロース、尿素、ワックス等を使用することもできるが、これらの添加剤は本発明の顆粒水和剤の崩壊性、分散性および懸垂性を過度に阻害しない範囲内で使用する。
【0017】
また、本発明の顆粒水和剤には、ポリオキシンD亜鉛塩以外の農薬活性成分として、殺虫剤、殺ダニ剤、除草剤、殺菌剤、植物成長調節剤、共力剤などを使用することもできる。ただし、これらの薬剤は、ポリオキシンD亜鉛塩の活性を過度に阻害しないものでなければならない。
【0018】
本発明の顆粒水和剤の成分組成は、本発明の所期の目的を達成しうる限り特に制限されない。顆粒水和剤中のポリオキシンD亜鉛塩の含有量は、5〜30重量%であるのが好ましい。また、ポリオキシンD亜鉛塩1重量部に対して、陰イオン系界面活性剤1〜3重量部、非イオン系界面活性剤0.1〜0.3重量部、水溶性無機物質1〜5重量部であるのが好ましい。
【0019】
本発明の顆粒水和剤の製造方法は特に制限されず、顆粒水和剤の製造方法として一般に用いられている方法を利用することができる。例えば、スプレードライ法、転動造粒法、流動層造粒法、攪拌混合造粒法、押し出し造粒法、破砕造粒法などにより造粒、顆粒化し、乾燥することによって製造することができる。流動層造粒法を用いて造粒する場合は、ポリオキシンD亜鉛塩および硫酸アンモニウムを含有する流動層中にナフタレンスルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物またはポリオキシエチレンアルキルエーテルのうち少なくとも一方を噴霧し、乾燥しながら造粒するのが好ましい。また、別法として、ポリオキシンD亜鉛塩ナフタレンスルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物またはポリオキシエチレンアルキルエーテルのうち少なくとも一方および硫酸アンモニウムを含有する混合物をスクリーンで手押し造粒し、乾燥する方法も好ましい。篩にかけるときは、篩の孔眼寸法を適宜調節することによって、所望の粒径範囲内の顆粒を得ることができる。本発明の顆粒水和剤の粒径は、90〜500μmの範囲内であるのが好ましく、90〜355μmの範囲内であるのがより好ましい。なお、本発明の顆粒水和剤は、ドライフロアブルとも言う。
【0020】
本発明の顆粒水和剤は、水と混合したときの物理的性質が非常に優れているという特徴を有する。すなわち、本発明の顆粒水和剤を水中に添加すると、速やかに崩壊が始まり迅速に分散する。このように崩壊性と分散性が極めて高いために、本発明の顆粒水和剤を施用前に水と混合すれば成分が十分に分散し、速やかに調製することができる。したがって、本発明の顆粒水和剤を使用すれば、水と混合後に直ちに施用しても高い病害防除効果をあげることが可能であり、時間と費用の節約になる。
【0021】
また、本発明の顆粒水和剤は、水中に分散した成分が沈降せずに水中に比較的長くとどまる特徴がある。このように懸垂性が極めて高いため、施用前に攪拌する操作を短縮したり省略したりしても十分な病害防除効果をあげることが可能である。すなわち、本発明の顆粒水和剤は、水と混合してから施用するまでの時間が比較的長い場合にも対応することができるという有用性も有している。
【0022】
さらに、本発明の顆粒水和剤は、従来の水和剤より有効成分量が高いため、希釈水が少なくて済むという特徴を有する。希釈水が少なければ、活性成分濃度が高い農薬を調製することが可能であり、病害防除効果を効率よく発揮させることができる。したがって、本発明の顆粒水和剤を用いれば処理水量を減らすことが可能であり、処理水量を抑制することが必要な場合に有用である。特に、ゴルフ場のグリーンなどは水量が多いとプレーに支障をきたすため、本発明の利用が効果的である。また、本発明を利用すれば農薬活性成分を過剰に散布する必要もないことから、環境汚染に対する歯止めをかけることもできる。
【0023】
さらに本発明の顆粒水和剤を使用すれば植物の汚れを防ぐこともできる。従来の農薬に多用されている粘土鉱物は、散布時に植物表面に付着し、そのまま長時間留まるのが一般的である。このようにして表面に付着した粘土鉱物は汚れとして目立つことがあるため、特に観葉植物を栽培している場合にはその価値を大きく減ずることになる。また、作物を栽培している場合には収穫物の見た目を悪くし、商品価値を落とすことになる。本発明の顆粒水和剤は粘土鉱物を必須成分としていないため、施用対象に応じて粘土鉱物使用量を調節することによってこのような弊害を防ぐことができる。
【0024】
本発明の顆粒水和剤は、従来から乳剤や水和剤を施用して防除を図っていた各種の植物病害に対して、これらを効果的に防除するために使用することができる。防除しようとする植物病害の種類は特に制限されない。
本発明の顆粒水和剤は、特に芝類のラージパッチ、ブラウンパッチ、擬似葉腐病、ヘルミントスポリウム葉枯れ病、カーブラリア葉枯れ病、フェアリーリング病、およびバラのうどんこ病に対して、従来の水和剤よりも殺菌活性が高いことが確認されている。
【0025】
本発明の顆粒水和剤の植物や土壌への施用方法は特に制限されない。通常は、水と混合して植物に散布する。水との混合割合は、農薬活性成分であるポリオキシンD亜鉛塩の濃度が20〜400ppmになるようにするのが一般的である。なお、バラのうどんこ病を防除する場合には、本発明の顆粒水和剤を500〜6000倍に希釈して使用するのが一般的である。水と混合するときに、例えば殺虫剤、殺ダニ剤、除草剤、殺菌剤、植物成長調節剤、共力剤などの他の薬剤を混合することもできる。
【0026】
本発明の顆粒水和剤の施用量は施用場面、施用時期、施用方法、防除対象などを考慮して適宜決定する。例えばポリオキシンD亜鉛塩を含有する顆粒水和剤を用いて、芝のラージパッチ、ブラウンパッチおよび擬似葉腐病、ヘルミントスポリウム葉枯れ病、カーブラリア葉枯れ病を防除する場合は1回につき1m当たり0.25〜2.5g、フェアリーリング病を防除する場合は1回につき1m当たり30〜60gを施用するのが適当である。
【0027】
施用の方法としては、噴霧器を用いて噴霧する方法などを挙げることができる。施用対象は、防除する病害の種類に応じて、植物の茎葉、土壌などを適宜決定することができる。また、施用場所としては、水田、畑、果樹園、芝生等を有するゴルフ場や公園、牧草地、森林、高原、鉢植えなどを対象とすることができる。
【0028】
本発明の顆粒水和剤は、植物病害が発病する前に予防のために施用してもよいし、発病後に治療のために施用してもよい。特に、芝の病害の場合は発病後の治療にも効果がある。ラージパッチ、ブラウンパッチ、ヘルミントスポリウム葉枯れ病、カーブラリア葉枯れ病の場合は、感染前と感染初期の散布が効果的である。また、擬似葉腐病の場合は、休眠期前に散布するのが最も効果的である。
【0029】
【実施例】
以下に実施例および試験例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の具体例に示す材料、使用量、割合、操作等は、本発明の趣旨から逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例に制限されるものではない。
なお、以下に記載される「%」および「部」は特に断りがない限り重量%および重量部を示す。また、顆粒水和剤の製造に用いたポリオキシンD亜鉛塩原体は、純度22%のポリオキシンD亜鉛塩を含有する原体である。
【0030】
(実施例1)
流動層造粒機にポリオキシンD亜鉛塩原体50部と硫酸アンモニウム30部を入れ流動層を形成し、ポリオキシエチレンアルキルエーテル2部を噴霧しながら十分に混合した。さらに、ナフタレンスルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物18部を40%水溶液として流動層中に噴霧して、50℃〜60℃で乾燥しながら造粒した。その後、規格粒度を振動篩にて分級し、粒径250〜500μmのポリオキシンD亜鉛塩11%を含む顆粒水和剤を得た。
【0031】
(実施例2)
使用する篩を変えて実施例1と同じ操作を行うことによって、粒径90〜355μmのポリオキシンD亜鉛塩11%を含む顆粒水和剤を得た。
(実施例3)
ポリオキシンD亜鉛塩原体50部、硫酸アンモニウム30部、ナフタレンスルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物18部、ポリオキシエチレンアルキルエーテル2部を全体で500gになるようにビーカーに入れて、十分に混合した。その後、水200mlを徐々に加えて混練し、0.7mmのスクリーンで手押し造粒し、60℃で乾燥した。篩上で整粒して、粒径250〜500μmのポリオキシンD亜鉛塩11%を含む顆粒水和剤を得た。
【0032】
(実施例4)
ポリオキシンD亜鉛塩原体50部、硫酸アンモニウム30部、ナフタレンスルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物20部を全体で500gになるようにビーカーに入れ、十分に混合した。その後、水220mlを徐々に加えて混練し、0.7mmのスクリーンで手押し造粒して、60℃で乾燥した。篩上で整粒して、粒径250〜500μmのポリオキシンD亜鉛塩11%を含む顆粒水和剤を得た。
【0033】
(実施例5)
ポリオキシンD亜鉛塩原体50部、クレー15部、硫酸アンモニウム15部、ナフタレンスルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物18部、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルサルフェート2部を全体で500gになるようにビーカーに入れ、十分に混合した。その後、水220mlを徐々に加えて混練し、0.7mmのスクリーンで手押し造粒し、60℃で乾燥した。篩上で整粒して、粒径250〜500μmのポリオキシンD亜鉛塩11%を含む顆粒水和剤を得た。
【0034】
(試験例1)造粒性試験
実施例1および3〜5で製造したポリオキシン顆粒水和剤の造粒性を目視で観察して、造粒状態を「良好」、「可」、「不可」の3段階に分けて評価した。
【0035】
(試験例2)水中崩壊性試験(1)
実施例1および3〜5で製造したポリオキシン顆粒水和剤0.5gを、250mlシリンダーに入れた100mlの水中に投じた時の水中崩壊性を観察し、以下の3段階に分けて評価した。
A: シリンダー底部に到達するまでに殆どが崩壊分散する。
B: 水中を糸をひきながら分散、あるいは約5割程度がシリンダー底部に到達するまでに崩壊分散する。
C: 殆どが崩壊分散せずシリンダー底部まで到達する。
【0036】
(試験例3)水中崩壊性試験(2)
実施例1および3〜5で製造したポリオキシン顆粒水和剤0.5gを、250mlシリンダーに入れた100mlの水中に投じ、顆粒水和剤がシリンダー底部に到達してから1分後にシリンダーをゆっくり転倒して崩壊性を観察した。すべてが崩壊しない場合は、顆粒水和剤が再びシリンダー底部に到達してから2秒後に再度シリンダーをゆっくりと転倒する操作を繰り返し、すべてのポリオキシン顆粒水和剤が崩壊するまで転倒を繰り返した。それぞれのポリオキシン顆粒水和剤について、転倒回数を記録した。
【0037】
(試験例4)懸垂性試験
試験例3の水中崩壊性を観察した後、シリンダーをさらに20回転倒させた。その後ただちに分散液を沈澱管に移し、5分後、15分後、30分後の沈降量を測定した。上記試験例1〜4の結果を表1に示す。
【0038】
【表1】
Figure 0004236314
【0039】
表1の結果は、実施例の顆粒水和剤はいずれも造粒性、水中崩壊性、懸垂性に優れていることを示している。特に実施例1および実施例3の顆粒水和剤はこれらの物理的特性が極めて優れている。
【0040】
(試験例5)芝のブラウンパッチに対する効果試験
実施例2のポリオキシン顆粒水和剤、市販されているポリオキシン水和剤(商品名:ポリオキシンZ水和剤、有効成分:ポリオキシンD亜鉛塩2.25%、製造元:科研製薬株式会社、以下「比較例1」という)およびメプロニル水和剤(商品名:クリーングラス水和剤、有効成分メプロニル75%、製造元:理研グリーン株式会社、以下「比較例2」という)を用いて芝のブラウンパッチに対する効果比較試験を行った。
【0041】
表2に記載される所定倍率に各薬剤を希釈して、園芸用ジョロで発病初期のブラウンパッチが多数認められる芝生(ペンクロスベントグラス)に1m当たり1リットルを散布した。散布は12日おきに4回行った。試験は1区1mの2連制で行い、4回目の散布後に各区の病斑面積率を測定した。その結果を表2に示す。なお、肉眼で薬害判定を行ったところ各区とも薬害は認められなかった。
【0042】
【表2】
Figure 0004236314
【0043】
表2の結果は、実施例2のポリオキシン顆粒水和剤を施用した場合は、比較例1のポリオキシン水和剤や比較例2のメプロニル水和剤を施用した場合よりも芝のブラウンパッチの病斑面積率が低くなったことを示している。特に実施例2のポリオキシン顆粒水和剤は、比較例2のメプロニル水和剤に比べて明らかに効果が高く、発病初期のブラウンパッチの拡大を有効に抑えている。
【0044】
(試験例6)芝のラージパッチに対する効果試験
実施例2のポリオキシン顆粒水和剤、比較例1の市販ポリオキシン水和剤およびペンシクロン水和剤(商品名:モンセレン水和剤、有効成分:ペンシクロン25%、製造元:日本バイエルアグロケム株式会社、以下「比較例3」という)を用いて、芝のラージパッチに対する効果比較試験を行った。
表3に記載される所定倍率に各薬剤を希釈して、動力散布機でラージパッチが多発した芝生(ノシバ)に1m当たり1リットルを散布した。散布は12日おきに4回行った。試験は1区1mの2連制で行い、4回目の散布後に各区の病斑面積率を測定した。その結果を表3に示す。
【0045】
【表3】
Figure 0004236314
【0046】
表3の結果は、実施例2のポリオキシン顆粒水和剤を施用した場合は、比較例1のポリオキシン水和剤や比較例3のペンシクロン水和剤を施用した場合よりも芝のラージパッチの病斑面積率が低くなったことを示している。特に実施例2のポリオキシン顆粒水和剤は、比較例1のポリオキシン水和剤に比べて明らかに効果が高い。
【0047】
(試験例7)芝の擬似葉腐病(春はげ症)に対する効果試験
実施例2のポリオキシン顆粒水和剤およびトルクロホスメチル水和剤(商品名:グランサー水和剤、有効成分:トルクロホスメチル75%、製造元:住友化学株式会社、以下「比較例4」という)を用いて、芝の擬似葉腐病(春はげ症)に対する効果比較試験を行った。
【0048】
表4に記載される所定倍率に各薬剤を希釈して、タンク車で擬似葉腐病が多発しているコウライシバとノシバ混植のフェアウエイに所定量を散布した。散布は10月26日と11月9日の2回行った。試験は1区50mの2連制で行い、翌年の4月12日に各区の病斑面積率を測定した。その結果を表4に示す。なお、肉眼で薬害判定を行ったところ各区とも薬害は認められなかった。
【0049】
【表4】
Figure 0004236314
【0050】
表4の結果は、擬似葉腐病に対して実施例2のポリオキシン顆粒水和剤は、比較例4のトルクロホスメチル水和剤より少ない薬量で同等の高い効果を奏する。
【0051】
(試験例8)芝のカーブラリア葉枯れ病に対する効果試験
実施例2のポリオキシン顆粒水和剤およびチウラム・TPN水和剤(商品名:ダコグリーン水和剤、有効成分:TPN50%、チウラム30%、製造元:株式会社SDSバイオテック、以下「比較例5」という)を用いて、芝のカーブラリア葉枯れ病に対する効果比較試験を行った。
【0052】
表5に記載される所定倍率に各薬剤を希釈して、カーブラリア葉枯れ病が5月下旬より発生し始めるコウライシバに5月26日に所定量を散布した。試験は1区2mの3連制で行い、6月5日に各区の発病面積率を測定した。その結果を表5に示す。なお、肉眼で薬害判定を行ったところ各区とも薬害は認められなかった。
【0053】
【表5】
Figure 0004236314
【0054】
表5の結果は、実施例2のポリオキシン顆粒水和剤を施用した場合は、比較例5のチウラム・TPN水和剤を施用した場合よりも芝のカーブラリア葉枯れ病に対する防除価が高いことを示している。
【0055】
(試験例9)擬似葉腐病(象の足跡)に対する効果試験
実施例2のポリオキシン顆粒水和剤および比較例4の市販トルクロホスメチル水和剤を用いて、擬似葉腐病(象の足跡)に対する効果比較試験を行った。
表6に記載される所定倍率に各薬剤を希釈して、タンク車で9月初旬から擬似葉腐病が発病したラフのノシバに10月2日に所定量を散布した。試験は1区100mで行い、10月28日に各区の病斑面積率を測定した。その結果を表6に示す。なお、肉眼で薬害判定を行ったところ各区とも薬害は認められなかった。
【0056】
【表6】
Figure 0004236314
【0057】
表6の結果は、擬似葉腐病に対して実施例2のポリオキシン顆粒水和剤は、比較例4のトルクロホスメチル水和剤より少ない薬量で同等の高い効果を奏することを示している。
【0058】
(試験例10)バラのうどんこ病に対する効果試験
実施例2のポリオキシン顆粒水和剤および比較例1の市販ポリオキシン水和剤を用いてバラのうどんこ病に対する効果比較試験を行った。
表7に記載される所定倍率に各薬剤を希釈して、うどんこ病を感染させたバラ(品種:ポールスピンク、ワグネルポットで栽培)に500mlを散布した。散布は9月19日、9月26日、10月3日、10月9日の合計4回行った。試験は1処理1植物体で行い、10月16日に各区の調査を行った。1区当たり30葉の病斑面積から以下の式にしたがって発病度を求め、その値から防除価を算出した。その結果を表7に示す。
【0059】
【数1】
発病度=〔 Σ(指数×該当葉数)/ 4×調査葉数 〕X100
指数0: 病斑面積率 0%
1: 病斑面積率 〜10%
2: 病斑面積率 〜25%
3: 病斑面積率 〜50%
4: 病斑面積率 >50%
防除価=(1− 処理区発病度/ 無処理区発病度)×100
【0060】
【表7】
Figure 0004236314
【0061】
表7の結果は、実施例2のポリオキシン顆粒水和剤が、比較例1のポリオキシン水和剤よりもバラのうどんこ病に対する防除価が高いことを示している。また、比較例1の水和剤を施用した場合は葉の汚れが僅かに認められたが、実施例2の顆粒水和剤を施用した場合は薬剤による汚れが全く認められなかった。
【0062】
【発明の効果】
ポリオキシン化合物を含有する本発明の顆粒水和剤は、水と混合したときの崩壊性、分散性および懸垂性が極めて良好である。また、本発明によれば、有効成分量が高い顆粒水和剤を調製することができるため、ポリオキシン化合物の農薬活性を効率良く発揮させることができる。このため、従来の薬剤に比べてポリオキシン化合物の処理水量を大幅に減らすことができる。また、本発明の顆粒水和剤は粉立ちがなく保存安定性に優れているため、取り扱いが容易である。さらに、本発明の顆粒水和剤は粘土鉱物を必須成分としていないため、施用した植物を汚さずに済むように処方することもできる。
本発明の顆粒水和剤はこのような優れた性質を有しているため、ポリオキシン化合物による病害防除が必要とされる場合に幅広く利用することができる。特に農薬使用量を抑制したい場合、施用量を少なくしたい場合、環境汚染対策を重視したい場合などに有効に使用することができる。

Claims (5)

  1. ポリオキシンD亜鉛塩、
    ナフタレンスルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物またはポリオキシエチレンアルキルエーテルのうち少なくとも一方、および
    硫酸アンモニウム、
    を含有する顆粒水和剤。
  2. ナフタレンスルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物およびポリオキシエチレンアルキルエーテルを含有する請求項1に記載の顆粒水和剤。
  3. 粒径が90〜500μmの範囲内である請求項1または2に記載の顆粒水和剤。
  4. 芝のラージパッチ、ブラウンパッチ、擬似葉腐病、ヘルミントスポリウム葉枯れ病、カーブラリア葉枯れ病、フェアリーリング病またはバラのうどんこ病を予防または治療するための請求項1〜のいずれかに記載の顆粒水和剤。
  5. ポリオキシンD亜鉛塩および硫酸アンモニウムを含有する流動層中にナフタレンスルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物またはポリオキシエチレンアルキルエーテルのうち少なくとも一方を噴霧し、乾燥しながら造粒し、90〜500μmの範囲内の粒径を有する粒子を選択することによって製造した請求項1〜のいずれかに記載の顆粒水和剤。
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