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JP5689510B2 - 農薬粒状組成物および農薬混合製剤 - Google Patents

農薬粒状組成物および農薬混合製剤 Download PDF

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Description

本発明は、農薬粒状組成物に関し、農薬活性成分および水難溶性又は水不溶性の合成樹脂を含有する農薬粒状組成物であって、効率よく簡便に製造することができ、薬害の軽減が図られ、しかも薬効が長期間持続する農薬粒状組成物、および農薬混合製剤に関する。
従来、使いやすく防除効果を十分に発揮させる目的で、農薬活性成分に結合剤や増量剤を添加した混合物に、さらに少量の水を加えて混練し、造粒機にかけて細粒化してなる農薬粒状組成物(粒剤)が知られている。
このような組成物としては、例えば、内核を造粒後、再び造粒したもの(特許文献1)や、農薬活性成分と樹脂被覆物を別々に調製したもの(特許文献2)、ワックスと担体からなる組成物としたもの(特許文献3)等が知られている。
しかしながら、多くの場合、農薬活性成分の溶出を制御し、その効力の持続性を高める効果を付与するためには、複雑な工程を経て、農薬製剤を調製する必要があった。
したがって、より効率よく簡便に製造することができ、薬効が長期間持続する新しい農薬粒状組成物の開発が望まれていた。
一方、比較的高い水溶解度を有する農薬活性成分を含有する農薬粒状組成物を施用する場合には、雨水等により容易に農薬活性成分が流出してしまい、農薬活性成分の溶出コントロールが難しく、殺虫効力を有効に生かせないことが多い。また、このような場合においては、植物は高濃度で農薬活性成分を吸収するため薬害を引き起こしやすい。
したがって、比較的高い水溶解度を有する農薬活性成分を含む農薬粒状組成物においても、薬害を低減して、効力が安定した農薬製剤の開発が望まれていた。
本発明に関連して、特許文献4には、農薬活性成分、熱可塑性樹脂(A)およびポリビニルアルコール(B)、鉄粉または銅粉(C)が均一に混合されてなることを特徴とする徐放性農薬粒剤が記載されている。この文献に記載された農薬粒剤は、含まれる鉄粉または銅粉(C)が水分子の存在により酸化が促進され、体積が大きくなり、被膜形成物質(熱可塑性樹脂(A))を壊すことにより、被膜形成物質により被覆されていた農薬活性成分が徐々に溶出することで、徐放効果を奏するものである。
特公昭64−4484号公報 特開2000−86404号公報 特開2004−43370号公報 特開2002−363003号公報
本発明は、上述した従来技術の実情に鑑みてなされたものであり、効率よく簡便に製造することができ、薬害の軽減が図られ、しかも薬効が長期間持続する農薬粒状組成物、および農薬混合製剤を提供することを課題とする。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、25℃の水に対する飽和溶解度が500ppm以上である農薬活性成分を用いても、20℃の水100gに対する溶解度が1g以下の合成樹脂および鉱物系担体を用いることで、農薬粒状組成物を効率よく簡便に製造でき、得られた農薬粒状組成物は、薬害の軽減が図られ、しかも薬効が長期間持続することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、
[1]25℃の水に対する飽和溶解度が500ppm以上である農薬活性成分、
結合剤として20℃の水100gに対する溶解度が1g以下の合成樹脂、及び、鉱物系担体を含有することを特徴とする農薬粒状組成物に関し、さらに、
[2]さらに増粘剤を含有することを特徴とする[1]に記載の農薬粒状組成物、
[3]前記農薬活性成分が、ネオニコチノイド系化合物から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする[1]又は[2]に記載の農薬粒状組成物、
[4]前記農薬活性成分が、ニテンピラム、イミダクロプリド、アセタミプリド、チアメトキサム、クロチアニジン、チアクロプリド、及びジノテフランからなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載の農薬粒状組成物、
[5]前記農薬活性成分が、アセタミプリドであることを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載の農薬粒状組成物に関する。
また本発明は、
[6]前記合成樹脂が、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリロニトリル−塩化ポリエチレンスチレン共重合体、アクリロニトリル−エチレン−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン−アクリル酸共重合体、メチルメタクリル酸−ブチレン−スチレン共重合体、エチレン−塩化ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル−塩化ビニルグラフト重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ケトン樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリアセタール、ポリアミド、ポリ乳酸、ポリε−カプロラクタム、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレン、ポリパラビニルフェノール、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリブタジエン、ポリメチルメタクリレート、ノボラック樹脂、及びマレイン酸樹脂からなる群から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする[1]〜[5]のいずれかに記載の農薬粒状組成物に関し、さらに、本発明は、
[7][1]〜[6]のいずれかに記載の農薬粒状組成物、及び他の農薬粒状組成物を混合してなる農薬混合製剤に関する。
本発明によれば、効率よく簡便に製造することができ、薬害の軽減が図られ、しかも薬効が長期間持続する農薬粒状組成物、および農薬混合製剤が提供される。
溶出性試験を行う方法を示す概要図である。 溶出性試験の結果を示す図である。横軸が分画(5ml/回)、縦軸が溶出率(%)をそれぞれ示す。
以下、本発明の農薬粒状組成物及び農薬混合製剤を詳細に説明する。
(1)農薬活性成分
本発明に用いる農薬活性成分は、25℃の水に対する飽和溶解度が500ppm以上である農薬活性成分である。
本発明の農薬粒状組成物によれば、このような比較的高い水溶解度を有する農薬活性成分でも、農薬活性成分の溶出コントロールが可能であり、安定な効力の発現と薬害の軽減を図れる。
このような農薬活性成分としては、(E)−N−(6−クロロ−3−ピリジルメチル)−N−エチル−N’−メチル−2−ニトロビニリデンジアミン〔一般名:ニテンピラム、水溶解度:約2000ppm〕、(E)−N−〔(6−クロロ−3−ピリジル)メチル〕−N’−シアノ−N−メチルアセタミジン〔一般名:アセタミプリド、水溶解度:4200ppm〕、1−(6−クロロ−3−ピリジルメチル)−N−ニトロイミダゾリジン−2−イリデンアミン〔一般名:イミダクロプリド、水溶解度:510ppm(20℃)〕、3−(2−クロロ−1,3−チアゾール−5−メチル−1,3,5−オキサジアジナン−4−イリデン〔一般名:チアメトキサム、水溶解度:4100ppm〕、(E)−1−(2−クロロ−1,3−チアゾール−5−イルメチル−3−メチル−2−ニトログアニジン〔一般名:クロチアニジン、水溶解度:0.327g/L(20℃)〕、3−(6−クロロ−3−ピリジルメチル)−1,3−チアゾリジン−2−イリデンシアナミド(一般名:チアクロプリド)、(RS)−1−メチル−2−ニトロ−3−(テトラヒドロ−3−フリルメチル)グアニジン(一般名:ジノテフラン)等のネオニコチノイド系化合物;
O,S−ジメチル−N−アセチルフォスフォロアミドチオエート〔一般名:アセフェート,水溶解度:約650000ppm〕、N’−(4−クロロ−o−トルイル)−N,N−ジメチルフォルムアミド〔水溶解度:250ppm(20℃)〕、2,2−ジクロロビニルジメチルフォスフェート〔一般名:DDVP,水溶解度:約1000ppm(室温)〕等のリン系化合物;2,2−ジメチル−1,3−ベンゾジオキソール−4−イル−メチルカーバメート・塩酸塩〔一般名:ベンダイオカルブ,水溶解度:26000ppm〕、S,S’−2−ジメチルアミノトリメチレン−ビス(チオカーバメート)〔一般名:カルタップ,水溶解度:200000ppm〕、2−エチルチオメチルフェニルメチルカーバメート〔一般名:エチオフェンカルブ,水溶解度:1800ppm(20℃)〕等のカーバメート系化合物;S−メチル−N,N−ジメチル−N−メチルカルバモイルオキシ−1−チオオキサムイミデート〔一般名:オキサミル,水溶解度:280000ppm〕、S−メチル−N−(メチルカルバモイルオキシ)チオアセトイミデート〔一般名:メソミル,水溶解度:58000ppm〕、1,3−ジクロロプロペン〔一般名:D−D,水溶解度:2000ppm〕等のその他の殺虫性化合物;等が挙げられる。
これらの中でも、本発明においては、前記農薬活性成分が、ネオニコチノイド系化合物であることがより好ましく、ニテンピラム、イミダクロプリド、アセタミプリド、チアメトキサム、クロチアニジン、チアクロプリド及びジノテフランからなる群から選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
本発明の農薬組成物中の農薬活性成分の含有量は、特に制約はなく、農薬活性成分の種類によっても異なるが、農薬活性成分の好ましい徐放性が得られる観点から、組成物全体に対して、通常0.1〜90質量%、好ましくは0.3〜50質量%、より好ましくは0.3〜20質量%である。
(2)結合剤
本発明の農薬粒状組成物は、結合剤として、20℃の水100gに対する溶解度が1g以下である合成樹脂を用い、上記の溶解度の合成樹脂であれば、その分子量や、固体、エマルション等のその形態等に制限されない。例えば、用いる合成樹脂が固体であれば必要に応じて粗粉砕できればよい。なかでも、より優れた農薬活性成分の徐放性効果が得られる観点から、農薬活性成分に対して接着性を有する熱可塑性樹脂が好ましい。
このような熱可塑性樹脂としては、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリロニトリル−塩化ポリエチレン−スチレン共重合体、アクリロニトリル−エチレン−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン−アクリル酸共重合体、メチルメタクリル酸−ブチレン−スチレン共重合体、エチレン−塩化ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル−塩化ビニルグラフト重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ケトン樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリアセタール、ポリアミド、ポリ乳酸、ポリε−カプロラクタム、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレン、ポリパラビニルフェノール、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリブタジエン、ポリメチルメタクリレート、ノボラック樹脂、およびマレイン酸樹脂からなる群から選ばれる少なくとも一種が挙げられる。
これらの樹脂の分子量としては、特に制限されないが、好ましくは、GPCを用いて測定した平均分子量が5,000〜200,000、より好ましくは10,000〜100,000である。
結合剤の含有量は、薬害の軽減が図られ、しかも薬効が長期間持続する農薬粒状組成物が得られる観点から、組成物全体に対して、通常0.1〜30質量%、好ましくは0.3〜20質量%、より好ましくは0.5〜10質量%である。
(3)鉱物系担体
本発明で用いる鉱物系担体としては、珪石系クレー、カオリナイト系クレー、ベントナイト、セピオライト、酸性白土、滑石粉、ロウ石粉、珪藻土、雲母粉等が挙げられる。
鉱物系担体として好ましくは、珪石系クレーであり、その具体例としては、大平クレー、大平クレー(粗粒品)等を挙げることができる。
これらは一種単独で、あるいは二種以上を適当な割合で混合して用いることができる。
担体の含有量は、組成物全体に対して、通常1〜99質量%、好ましくは5〜95質量%である。
(4)他の成分
本発明の農薬組成物は、上記農薬活性成分、結合剤及び鉱物系担体に加えて、増粘剤や、界面活性剤等の他の成分を含有していてもよい。
用いる増粘剤としては、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリメタクリル酸ナトリウム等の水溶性アクリル系高分子;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等の水溶性ビニル系高分子;ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン等のポリオキシアルキレン;カルボキシメチルセルロースナトリウム、デキストリン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、メチルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース誘導体;変性澱粉、カルボキシメチルデンプン、可溶性澱粉等の加工澱粉;リグニンスルホン酸ナトリウム等のリグニン誘導体;アラビアガム、ザンサンガム、トラガントガム、グアーガム、カラギーナン、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム等の多糖類;カゼイン、カゼイン石灰、ゼラチン、コラーゲン等の蛋白質類;
等が挙げられる。
増粘剤の含有量は、組成物全体に対して、通常0.1〜20質量%、好ましくは0.2〜10質量%である。
用いる界面活性剤としては、石鹸類、ポリオキシエチレンヒマシ油エーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンエーテル、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合物、高級脂肪酸アルカノールアマイド、アルキルマレイン酸共重合物、多価アルコールエステル類等の非イオン系界面活性剤;
アルキルアミン塩、第4級アンモニウム塩等の陽イオン系界面活性剤;
ナフタレンスルホン酸重縮合物金属塩、ナフタレンスルホン酸塩のホルマリン縮合物、アルキルナフタレンスルホン酸塩、リグニンスルホン酸金属塩、アルキルアリルスルホン酸塩、アルキルアリルスルホネート硫酸塩等の高分子化合物、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム塩、ポリカルボン酸金属塩、ポリオキシエチレンヒスチジルフェニルエーテルサルフェートアンモニウム、高級アルコールスルホン酸塩、高級アルコールエーテルスルホン酸塩、ジアルキルスルホサクシネート、高級脂肪酸アルカリ金属塩等の陰イオン系界面活性剤;等が挙げられる。
これらの界面活性剤は一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
界面活性剤の含有量は、組成物全体に対して、通常0.1〜30質量%、好ましくは0.3〜20質量%、より好ましくは0.5〜10質量%である。
本発明の農薬組成物は、所望により、軟膏基剤、乳化剤、懸濁剤、展着剤、浸透剤、湿潤剤、分散剤、安定化剤、流動助剤、固結防止剤、凝集剤、酸化防止剤、浮遊剤、消泡剤、凍結防止剤、防腐剤、水分除去剤、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、着色剤または懸濁安定剤等をさらに含有していてもよい。
(5)農薬粒状組成物の製造
本発明の農薬組成物は、従来公知の、粒剤、粉粒剤(細粒剤F、微粒剤、微粒剤F)等の粒状製剤を製造する方法により製造することができる。例えば、農薬活性成分、結合剤、鉱物系担体及び他の成分を混合し、さらに少量の水を加えた後、全容を、ボールミル、ダイノミル、サンドグラインダー等の湿式粉砕機により混練し、造粒機等を用いて細粒にして乾燥することにより得ることができる。
造粒機としては、特に制限なく、従来公知のものを用いることができる。例えば、押出式造粒機、加圧式造粒機、流動層造粒機、高速混合式造粒機、転動造粒機、打錠式造粒機等が挙げられる。
得られる粒状組成物の粒度は、粒剤で通常300〜1700μm、細粒剤Fで通常180〜710μm、微粒剤では106〜300μm、微粒剤Fでは63〜212μmである。
本発明の農薬組成物は、効率よく簡便に製造することができ、薬害の軽減が図られ、しかも薬効が長期間持続する(すなわち、徐放性に優れる)ものである。
本発明の農薬組成物の施用例としては、茎葉散布、樹幹散布、ULV散布、粒剤葉面散布、土壌散布、土壌灌注、水面施用、土壌混和、床土混和、育苗箱処理、苗床処理、株元処理、植溝処理、作条処理、側条施用、樹幹灌注、樹幹塗布、種子粉衣、種子浸漬、毒餌、肥料混和、灌水用水混和等が挙げられる。
また、その施用時期は、種子や種芋に処理する場合は、それらを植え付ける前の任意の時期でよく、土壌に処理する場合は、播種時、育苗期間中、あるいは苗の植え付け時が効率的であるが、植え付け後の生育期間でも処理することができ、茎葉散布する場合は、育苗期間でも本圃での生育期間でもよい。
本発明の農薬組成物の施用量は、施用時期、施用場所、施用方法等に応じて広範囲に変えることができるが、一般的にはヘクタール当たり農薬活性成分が約0.3g〜3,000g、好ましくは約50g〜1,000gとなるように施用することが望ましい。
本発明の農薬組成物は、天敵微生物製剤との混用、天敵生物(寄生蜂や補食性甲虫等の天敵昆虫、補食性ダニ、寄生性センチュウ、昆虫病原性微生物等)との併用、昆虫フェロモンとの併用、遺伝子組み換え作物との併用、誘因剤や忌避剤との併用等、IPM(Integrated Pest Management)プログラムの推進に貢献することができる。
本発明の農薬組成物が、農薬活性成分として、上述したネオニコチノイド系化合物を含有するものである場合、本発明の農薬組成物を水田、畑、果樹園、非農耕地、家屋等に公知の方法により散布し、発生する上記害虫(有害昆虫等)に接触あるいは摂取させることにより駆除することができる。
また別の態様として、例えば本発明の農薬組成物を上記した脊椎動物の内部(体内)あるいは外部(体表面)に投与することにより該脊椎動物に寄生する節足動物や寄生虫を駆除することができる。
本発明の農薬組成物は、混合剤として用いることもできる。具体的に施用する方法としては、通常の農薬施用法と同様の方法で用いることができる。例えば、それぞれの単独成分の製剤を施用時に混合(いわゆるタンクミックス)する方法や、後述する農薬混合製剤として施用する方法等が挙げられる。
(6)農薬混合製剤
本発明の農薬混合製剤は、上述した本発明の農薬粒状組成物、および他の農薬粒状組成物を混合してなるものである。
前記他の農薬粒状組成物は、本発明の農薬粒状組成物と組成が異なるものであり、活性成分としては、本発明の農薬粒状組成物に含まれる農薬活性成分と同一でも異なっていてもよい。除草活性成分、殺菌活性成分、殺虫活性成分、殺ダニ活性成分、植物成長調節剤などいかなるものであってもよく、市販されている農薬粒状組成物であってもよい。
本発明の農薬混合製剤は、本発明の農薬粒状組成物と他の農薬粒状組成物とを、所定割合で混合すればよい。本発明の農薬粒状組成物と他の農薬粒状組成物との混合割合は、特に限定されるものではないが、(本発明の農薬粒状組成物):(他の農薬粒状組成物)の質量比で、通常、100:1〜1:100、好ましくは50:1〜1:50、より好ましくは10:1〜1:10の範囲である。
本発明の農薬粒状組成物(又は本発明の農薬混合製剤)が殺虫活性成分を含む場合、本発明の農薬粒状組成物(又は本発明の農薬混合製剤)を混和した育苗用の培土に播種する場合またはその培土を用いて仮植する場合、あるいは播種時を含む育苗期間中に土壌への溶液灌注または粒剤の散布によって処理する場合は、育苗期間中に発生する害虫も防除することができる。このような農薬粒剤同士を混合して、互いの効果を増強又は補完することで、同時に有害生物を防除することができる。また、目的とする防除用の薬剤を、粒剤同士を混合するだけで調製することができる。
次に、実施例及び比較例により、本発明を更に詳しく説明する。本発明は下記の実施例に何ら制限されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で各成分の種類及びその配合割合を自由に変更することが可能である。
以下の実施例では、農薬活性成分、結合剤、鉱物系担体、増粘剤及び活性剤として、次のものを使用した。また、比較例では、合成樹脂に代えて、他の結合剤を用いた。
(1)農薬活性成分
・農薬活性成分A:アセタミプリド
(2)結合剤
・結合剤A:エチレン−酢酸ビニル共重合体
・結合剤B:シクロデキストリン
・結合剤C:カルボキシメチルセルロース
・結合剤D:ヒドロキシプロピルセルロース
・結合剤E:ポリ酢酸ビニル
・結合剤F:ポリビニルアセタール樹脂
・結合剤G:ポリビニルクロライドビニルアセテート共重合体
・結合剤H:ポリアクリル酸
(3)増粘剤
・増粘剤A:ポリビニルアルコール
(4)鉱石系担体
・担体A:大平クレー(粗粒品)
・担体B:大平クレー(通常品)
・担体C:カオリナイト(クラウンクレー)
・担体D:珪藻土(DIAFIL610)
・担体E:タルク(Sタルク)
(5)活性剤
・活性剤A:ポリオキシエチレンヒマシ油
(6)着色剤
・着色剤A:青色1号
(実施例1〜14、比較例1〜4)
農薬活性成分A、結合剤、増粘剤及び増量剤を、下記の表に示す配合割合(合計100質量部)で混合して混合粉体を得た。次いで、この粉体に蒸留水を19部加え、BENCHKNEADERで混練した後、ミクロ型顆粒製造機にて平均粒径1mmのそうめん状の造粒湿品を作り、送風乾燥機を用いて50℃で12時間乾燥して、実施例1〜14、比較例1〜4の農薬粒状組成物をそれぞれ得た。
組成物の成分比を第1表、第2表、第3表及び第4表に示す。
Figure 0005689510
Figure 0005689510
Figure 0005689510
Figure 0005689510
(比較例5)
農薬活性成分A 2重量%、カルナウバワックス(融点:83℃、凝固点:73〜74℃)15重量%、パラフィンワックス(融点:70℃)5重量%、ホワイトカーボン5重量%、ポリビニルアルコール2重量%、タルク10重量%、及び炭酸カルシウム61重量%をヘンシェルミキサーに投入して混合し、80℃で粉粒体の状態で排出した。この粉粒体をスクリュー式押出し造粒機に投入して、80℃で混練を行った。同温度で自開き0.8mmのダイスを経て押出し造粒を行い、農薬成型物を得た。これを解砕機で粉砕して、比較例5の農薬粒状組成物を得た。
(溶出性試験)
実施例1〜5、及び比較例1〜5の農薬粒状組成物を用いて以下の溶出性試験を行った。
図1に示すように、農薬粒状組成物(3)のそれぞれ有効成分量200mgをNo.1ろ紙(1)にのせ、内部標準水溶液(p−ヒドロキシ安息香酸メチル1000ppm水溶液)5mlを注ぎ入れる。これを合計10回繰り返し、試験管(2)で回収する。回収した液に含まれるアセタミプリドの含有量を、下記に示す条件下のHPLCで、各採取液の成分量を測定した。農薬活性成分が完全に溶出した場合の濃度を溶出率100%として各採取液の溶出率を算出した。その測定結果を図2に示す。
また、実施例6〜14の農薬粒状組成物を用いて上記と同様の溶出性試験を行った。この場合、10回溶出させて回収した各液中のアセタミプリドの含有量を合計し、溶出率を算出した。その測定結果を第5表に示す。
装置:CLASS−vp(島津製作所社製)
カラム:YM312(φ6.0×150mm)
カラム温度:40℃
流速:1ml/分
測定波長:245nm
Figure 0005689510
図2から、実施例1の農薬粒状組成物は、有効成分の溶出が十分に制御されており、良好な徐放性を有していた。
一方、比較例1及び2の農薬粒状組成物は、農薬活性成分が一挙に溶出してしまい、有効成分の溶出を制御することが出来なかった。
比較例3、4の農薬粒状組成物は、有効成分の溶出がある程度制御されていたが、その制御が不十分であった。また、比較例5の農薬粒状組成物では、ほとんど有効成分の溶出がみられなかった。
第5表から、いずれの農薬粒状組成物も、10回溶出後においても溶出量が100%に達しておらず、溶出が制御されていた。
(薬害確認試験)
実施例1〜5、及び比較例1〜4の農薬粒状組成物のそれぞれを、有効成分濃度が10mg/株となるように、ハクサイ(品種:無双)の葉面に直接散布した。7日経過後に、薬害を目視で観察した。
薬害指数は0〜8の9段階とし、数字が少ないほど薬害が軽いことを示す。
観察結果を第6表に示す。
Figure 0005689510
第6表より、実施例1〜5の農薬粒状組成物の場合には、ハクサイに対して薬害がまったく発生しなかった。一方、比較例1〜4の農薬粒状組成物の場合には、ハクサイに対して薬害が見られた。
(モモアカアブラムシに対する防除効果確認試験)
実施例1、及び比較例1〜4の農薬粒状組成物のそれぞれを、有効成分濃度が10mg/株となるように、ハクサイ(品種:無双)の株元に施用後、定期的にアブラムシを摂取し、その後、寄生虫数を調査した。調査結果を第7表に示す。
防除効果を以下の4段階で評価した。
◎:寄生虫数の平均が0〜10匹の場合
○:寄生虫数の平均が11〜20匹の場合
△:寄生虫数の平均が21〜30匹の場合
×:寄生虫数の平均が31匹以上の場合
Figure 0005689510
第7表より、実施例1、比較例1、2の農薬粒状組成物は、モモアカアブラムシに対して優れた防除効果を有していた。特に実施例1の農薬粒状組成物は、21日経過後においても優れた防除効果を有していた。
一方、比較例3、4の農薬粒状組成物は、実施例1、比較例1、2の農薬粒状組成物に比して、モモアカアブラムシに対する防除効果が劣っていた。
(ニセダイコンアブラムシに対する防除効果確認試験)
実施例2の農薬粒状組成物を、有効成分濃度が10mg/株となるように、ハクサイ(品種:無双)の株元に施用後、定期的にアブラムシを摂取し、その後、寄生虫数を調査した。調査結果を第8表に示す。(防除効果の記号の意味は上記に同じ。)
Figure 0005689510
(アブラムシに対する防除効果確認試験)
実施例2〜4の農薬粒状組成物を、有効成分濃度が10mg/株となるように、キャベツ(品種:金春)の株元に施用後、定期的にアブラムシを摂取し、その後、寄生虫数を調査した。調査結果を第9表及び第10表に示す。(防除効果の記号の意味は上記に同じ。)
Figure 0005689510
Figure 0005689510
(農薬混合粒剤の製造)
本発明の農薬粒状組成物を第1の農薬粒状組成物とし、他の農薬粒状組成物を第2の農薬粒状組成物とし、農薬混合製剤を調製した。第2の農薬粒状組成物としては、市販されている顆粒剤を用いた。
第11表に示す、第1の農薬粒状組成物と、第2の農薬粒状組成物を、それぞれに示す混合割合(合成100重量部)でロッキングミキサーRM−10(愛知電機社製)で混合し、農薬混合製剤を調製した。目的とする混合製剤は、この方法により簡便に調製することができた。
Figure 0005689510
1:ろう斗(ろ紙)
2:試験管
3:農薬粒状組成物

Claims (3)

  1. 25℃の水に対する飽和溶解度が500ppm以上であるネオニコチノイド系農薬活性成分(A)、結合剤として、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリロニトリル−塩化ポリエチレン−スチレン共重合体、アクリロニトリル−エチレン−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン−アクリル酸共重合体、メチルメタクリル酸−ブチレン−スチレン共重合体、エチレン−塩化ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル−塩化ビニルグラフト重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ケトン樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリアセタール、ポリアミド、ポリ乳酸、ポリε−カプロラクタム、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレン、ポリパラビニルフェノール、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリブタジエン、ポリメチルメタクリレート、ノボラック樹脂、及びマレイン酸樹脂からなる群から選ばれる少なくとも一種である、20℃の水100gに対する溶解度が1g以下の固体の熱可塑性の合成樹脂(但し、熱可塑性の合成樹脂の壁膜を有する中空バルーンの形態を除く)(B)、鉱物系担体(C)及び増粘剤(D)を、水を添加して混練後、造粒及び乾燥して得た、組成物全体に対して(A)0.3〜50質量%、(B)0.3〜20質量%、(C)5〜95質量%及び(D)0.2〜10質量%である農薬粒状組成物。
  2. 前記農薬活性成分が、ニテンピラム、イミダクロプリド、アセタミプリド、チアメトキサム、クロチアニジン、チアクロプリド、及びジノテフランからなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の農薬粒状組成物。
  3. 請求項1又は2に記載の農薬粒状組成物、及び他の農薬粒状組成物を混合してなる農薬混合製剤。
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