JP4221173B2 - 昇華性成分含有製剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、昇華性成分含有製剤に関する。より詳細には、本発明は昇華の抑制されたイブプロフェン含有製剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、錠剤の外観および服用性を改善する目的でフィルムコーティングが行われている。このフィルムコーティングの基剤としては、有機溶媒を用いなくてもよいという利点を有する水溶性高分子基剤が汎用されている。しかし、薬剤成分が昇華性を有する場合、このようなコーティング法によっては、コーティング層がポーラスであるため、昇華の抑制は難しく、例えば瓶の中に保存すると翌日、瓶の内面が曇る現象が観察される。このため、水溶性高分子基剤以外の基剤を用いて対策がとられるが、この場合には有機溶媒を使用する必要があり、また昇華抑制のためにコーティング層を厚くしたり、多層コーティングにしたりする必要があり製造方法が極めて複雑になるという問題がある。
【0003】
昇華性を有する薬剤成分としては、例えばイブプロフェンすなわち2−(4−イソブチルフェニル)プロピオン酸が挙げられる。このイブプロフェンは、抗炎症、鎮痛、解熱等の作用があり、医薬品として広く使用されている。
しかし、イブプロフェンは刺激性の苦味を有するので、服用性の向上の観点からその苦味を抑制することが望まれる。かかる抑制について、特開昭63−101321号公報には、水酸化アルミニウムを添加する方法が開示されてあり、特開平3−83922号公報には胃溶性高分子化合物でイブプロフェンを練合し細粒剤や散剤を製造する方法が開示されている。またイブプロフェン含有粒状物を水不溶性高分子化合物でコーティングし、さらにその表面を糖アルコール又は糖類で被覆して苦味を抑制する方法も知られている。
しかし、イブプロフェンの融点は75〜77℃と低く、上記のように昇華性を有するため、上記のような製剤では苦味のマスキング効果が薄れるとともに、湿潤、固化および変色が起こり、瓶の中のように密閉された容器では曇りが生じ、商品価値が下がるという問題が生じる。
一方、フィルムコーティングの基剤として水溶性高分子基剤を用いる場合、フィルムコーティング液には、水溶性高分子基剤、隠蔽剤、滑沢剤の他に、フィルム層に柔軟性を与えて強度を増し、また展延性を向上させて、製剤の外観を向上させるため可塑剤が添加される。かかる可塑剤としては、マクロゴール6000が優れており汎用されている。
しかし、イブプロフェンのような低融点物質を含有する素錠とフィルム層中のマクロゴール6000とが界面で反応して含量が低下したり、錠剤表面が着色して経時的安定性に問題が生じ、また昇華の抑制も困難となるといった問題がある。
このようにイブプロフェンを含有する製剤の製剤化に際しては種々の問題点が残っている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明の目的は、昇華性成分の昇華が抑制されていて経時的安定性に優れ、しかも苦味等が軽減されていて服用し易く、かつ製造コストが低い昇華性成分含有固形製剤、特にイブプロフェン含有固形製剤を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決するため、フィルムコーティングの可塑剤について、マクロゴール6000の代用となる可塑剤について鋭意検討を行った結果、予想外にもプロピレングリコール、グリセリンまたはコポリビドンを配合すると、本来の可塑剤としての働きの他にフィルムコーティング錠からのイブプロフェンの昇華が抑制できることがわかり、さらに検討を重ねた結果本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)プロピレングリコール、グリセリンまたはコポリビドンと水溶性高分子基剤とを含むフィルムコーティング液でコーティングされてなる昇華性成分含有製剤;
(2)プロピレングリコール、グリセリンまたはコポリビドンの配合量が水溶性高分子基剤100重量部に対して1〜50重量部である上記(1)記載の製剤;
(3)昇華性成分がイブプロフェンである上記(1)記載の製剤;
(4)プロピレングリコール、グリセリンまたはコポリビドンと水溶性高分子基剤とを含有する、昇華性成分含有製剤用フィルムコーティング液等に関する。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明で用いられる昇華性成分としては、昇華性を有し、固形製剤に用いられる化合物であれば特に限定されず、有効成分でも、香料等の添加剤であってよい。該昇華性成分としては、例えばイブプロフェン、l−メントール、無水カフェイン、シクランデレート、グアイフェネシンなどが挙げられる。中でも、イブプロフェンが好適に用いられる。
本発明で用いられる水溶性高分子基剤としては、固形剤のフィルムコーティングに基剤として用いられる水溶性高分子であれば特に限定されない。該水溶性高分子基剤としては、例えばヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2208、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2906、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910、メチルセロースなどが挙げられる。
【0007】
本発明の医薬製剤の剤形としては、例えば錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、細粒剤、丸剤などが挙げられるが、特に限定されない。
本発明の製剤は、その剤形に応じて、上記昇華性成分、薬剤成分、および固形製剤の製造において一般に用いられる成分を配合した粉末、顆粒、細粒または素錠等に、可塑剤としてプロピレングリコール、グリセリンまたはコポリビドンと水溶性高分子基剤とを含むコーティング液を用いて常法に従い市販のフィルムコーティング装置によりフィルムコーティングを行うことによって製造できる。本発明の製剤の製造は、その剤形に応じて、造粒ハンドブック(日本粉体工業技術協会編、オーム社)、経口投与製剤の処方設計(京都大学大学院薬学研究科教授橋田充編、薬業時報社)、粉体の圧縮成形技術(粉体工学・製剤と粒子設計部会編、日刊工業新聞社)のような刊行物に記載されている一般的な方法を用いて行えばよい。例えば、上記顆粒および細粒は一般的な撹拌造粒法、流動層造粒法または乾式造粒法等により製造すればよい。また、上記素錠は、一般的な湿式顆粒圧縮法、乾式顆粒圧縮法、直接粉末圧縮法等により製造することができる。
【0008】
固形製剤の製造において一般に用いられる成分としては、賦形剤、結合剤、崩壊剤および滑沢剤等が挙げられる。
該賦形剤および結合剤としては、結晶セルロース、粉末セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、トウモロコシデンプン、デキストリン、アルファー化デンプン、部分アルファー化デンプン、ヒドロキシプロピルスターチ、カルボキシメチルスターチナトリウム、シクロデキストリン、ポリビニルピロリドン、アミノアルキルメタアクリレート コポリマーE、メタアクリル酸コポリマーL、アミノアルキルメタアクリレート コポリマーRS、メタアクリル酸コポリマーS、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタールジエチルアミンアセテート、ショ糖、トレハロース、乳糖、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、粉末還元麦芽糖水飴等が挙げられる。
【0009】
該崩壊剤としては、クロスカルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスポビドン等が挙げられる。
該滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、ショ糖脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0010】
フィルムコーティング液に用いられるプロピレングリコールおよびグリセリンは薬添規に収載されているように、無色澄明の粘ちょう性のある液で水と混和しやすく、従来から可塑剤として使用されている。コポリビドンは薬添規に収載されており、1−ビニル−2−ピロリドンと酢酸ビニルの共重合体であり、その重量比は3:2である。白色〜帯黄白色の粉末で、エタノールに極めて溶けやすく、水に溶けやすい性質を持つ。コポリビドンは市販品にて入手できる〔プラスドンS−630(商品名)ISP社、コリドンVA64(商品名)BASF社〕。コポリビドンは結合剤として汎用されているが、可塑剤としての作用も有する。プロピレングリコールの添加量は、水溶性高分子基材の100重量部に対して1〜50重量部、好ましくは5〜30重量部、より好ましくは15〜25重量部である。また、グリセリンまたはコポリビドンの添加量もプロピレングリコールと同等である。なお、プロピレングリコール、グリセリンおよびコポリビドンから選択される2種以上を併用してもよい。
フィルムコーティング液には、必要に応じて通常フィルムコーティング液に用いられる添加剤(例、タルク、色素、沈降炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、酸化チタン等)を配合することができる。
また、本発明における製剤に、服用性向上のために、着香剤または香料、矯味剤を配合することにより、香りおよび味を付与してもよい。
本発明で使用することができる着香剤または香料としては、例えば、ハッカ油、ユーカリ油、ケイヒ油、ウイキョウ油、チョウジ油、オレンジ油、レモン油、ローズ油、フルーツフレーバー、バナナフレーバー、ストロベリーフレーバー、ミントフレーバー、ペパーミントフレーバー、dl−メントール、l−メントール等が挙げられる。
矯味剤としては、例えば糖(例、ショ糖、トレハロース、乳糖等)、糖アルコール(例、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、エリスリトール等)、高甘味度甘味剤(例、アスパルテーム、ステビア、サッカリン、グリチルリチン二カリウム、ソーマチン、スクラロース、アセスルファムK等)、酸味剤(例、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、アスコルビン酸等)が挙げられる。
【0011】
かくして得られる本発明の製剤は、通常の経口投与用の製剤と同様に投与できる。
【0012】
【実施例】
以下、本発明を実施例、対照例、試験例により詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0013】
実施例1
イブプロフェン含有造粒末およびメキタジン含有造粒末をそれぞれ製造した。イブプロフェン含有造粒末は、イブプロフェン1125g、リン酸ジヒドロコデイン60g、ヘスペリジン127.5gに乳糖1142.5g、トウモロコシデンプン375g、結晶セルロース325g、クロスカルメロースナトリウム150gを混合後、流動層造粒機(FD−5S型流動層造粒機、パウレック製)に入れ、結合剤としてヒドロキシプロピルセルロース6%水溶液2000gを50g/分の速度で噴霧して製造した。
一方、メキタジン含有造粒末は、メキタジン16g、塩酸トリメトキノール19.2g、無水カフェイン300g、ヘスペリジン156gに乳糖2068.8g、トウモロコシデンプン700g、結晶セルロース400g、クロスカルメロースナトリウム(HPC−L)200gを混合後、流動層造粒機(FD‐5S型流動層造粒機、パウレック製)に入れ、結合剤としてヒドロキシプロピルセルロース6%水溶液2333gを50g/分の速度で噴霧して製造した。
表1に各造粒末の処方を9錠当たりの理論仕込み量で示す。
両造粒末をそれぞれパワーミル(昭和化学機械製、スクリーンサイズ2mmφ)で粉砕して整粒末を得た。
【0014】
次にイブプロフェン含有整粒末2740g、メキタジン含有整粒末2000gにクロスカルメロースナトリウム110g、ステアリン酸マグネシム10gを加えて粗混合後、タンブラー混合機(昭和化学機械製、TM−60S型)に入れ、10rpmで3分間混合した。
打錠は、コレクト12HUK(菊水製作所製、30pm)で8.5mmφR面無地杵で1錠当たり270mgの重量、圧縮圧1200kg/杵の条件で打錠し素錠を得た。
表2に素錠の処方を9錠当たりの理論仕込み量で示す。
【0015】
得られた素錠4050gをフィルムコーティング装置(パウレック社製、ドリアコー夕ーDRC−500型)に入れ、表3に示す処方のフィルムコーティング液を用いて、回転数8rpm、給気温度70℃、給気量4m3/min、スプレー空気量4000Nl/hr、フィルムコーティング液供給速度12g/minの条件で操作してフィルムコーティング錠を得た。
表3にフィルムコーティング液の処方を9錠当たりの理論仕込み量で示す。
【0016】
【表1】
【0017】
【表2】
【0018】
【表3】
【0019】
実施例2
実施例1と同じ方法で得られた錠剤4860gをフィルムコーティング装置(パウレック社製、DRC‐500型)に入れ、表4に示す処方のコーティング液を用いて、実施例1と同じ条件でコーティングしてフィルムコーティング錠を得た。
【0020】
【表4】
【0021】
実施例3
実施例1と同じ方法で得られた錠剤972gをフィルムコーティング装置(フロイント社製、HCT−30型)に入れ、表5に示す処方のコーティング液を用いて、実施例1と同じ条件でコーティングしてフィルムコーティング錠を得た。
【0022】
【表5】
【0023】
対照例1
実施例1と同じ方法で得られた錠剤4860gをフィルムコーティング装置(パウレック社製、ドリアコー夕ーDRC−500型)に入れ、表6に示す処方のコーティング液を用いて、実施例1と同じ条件でコーティングしてフィルムコーティング錠を得た。
【0024】
【表6】
【0025】
対照例2
実施例1と同じ方法で得られた錠剤4860gをフィルムコーティング装置(パウレック社製、ドリアコーターDRC−500型)に入れ、表7に示す処方のコーティング液を用いて、同じ条件でコーティングしてフィルムコーティング錠を得た。
【0026】
【表7】
【0027】
試験例1(安定性試験)
実施例1、実施例2、実施例3、対照例1および対照例2で製造したフィルムコーティング錠をそれぞれ80錠ずつ瓶に小分けして密栓し、室温、40℃、50℃でそれぞれ保存し、経時的に取り出して錠剤の外観変化を色差△E(スガ試験機製)として測定した。また瓶の表面を観察してイブプロフェンの昇華の状態を下記のように5段階で評価した。
【0028】
その結果、表8および表9に示すように、実施例1、実施例2および実施例3で製造した製剤は、対照例1、対照例2で製造した製剤と比べて、いずれの保存条件下においても外観変化が小さく、イブプロフェンの昇華も抑制されていた。
【0029】
【表8】
【0030】
【表9】
【0031】
【発明の効果】
以上から明らかなように、本発明によれば、昇華性成分の昇華が抑制されていて経時的安定性に優れ、しかも苦味等が軽減されていて服用し易く、かつ製造コストが低い昇華性成分含有固形製剤、特にイブプロフェン含有固形製剤が提供される。
Claims (1)
- コポリビドンと水溶性高分子基剤とを含むフィルムコーティング液でコーティングされてなるイブプロフェン含有固形製剤であって、コポリビドンの配合量が水溶性高分子基剤100重量部に対して1〜50重量部である製剤。
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