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JP4219923B2 - 耐震拡開アンカー - Google Patents

耐震拡開アンカー Download PDF

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JP4219923B2 JP2005346759A JP2005346759A JP4219923B2 JP 4219923 B2 JP4219923 B2 JP 4219923B2 JP 2005346759 A JP2005346759 A JP 2005346759A JP 2005346759 A JP2005346759 A JP 2005346759A JP 4219923 B2 JP4219923 B2 JP 4219923B2
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本発明は、耐震拡開アンカーに係り、特に、耐震安全性を高めた耐震拡開アンカーに関する。
建造物の柱材等の構造部材は、基礎として打設されたコンクリートに、アンカーボルトに代表される定着具を介して定着されるのが一般的である。この定着具には、建造物に地震動の横揺れや強風などの水平力が加わった場合、構造部材からせん断力とともに引抜力が伝達される。また、地震動には、横揺れとともに縦揺れがある。この縦揺れにより、定着具には、直接に引抜力が作用するが、横揺れによる引抜力と合算され強大な衝撃力となる場合がある。さらに、台風などの強風時には、屋根面に対する吹き上げが発生し、定着具に引抜力が発生する。ここで、建造物とは、建築物、土木構造物、工作物、機械設備の架台等、人工的に空間を覆う構造体を総称する。また、定着具には、アンカーボルト、アンカーフレーム、あるいは、後述する拡開アンカー等が含まれる。
この定着具は、一般的にコンクリート打設前に、鉄筋と組み立てられて設置され、コンクリートの打設により、鉄筋とともに埋め込まれる。この定着具が引抜力を受けた場合、例えば、アンカーボルトは、その先端の折れ曲がり部を介したコンクリートの支圧力、及びアンカーボルトとコンクリートの間の付着力や摩擦力によって引抜力に抵抗する。また、このアンカーボルトのサイズや本数は、地震や強風時に発生するせん断力や引抜力に耐えられるように算出される。
一方、コンクリート打設後に柱材等の構造部材を基礎に定着させる場合がある。これは、設計変更により柱材等の構造部材の位置が変更された場合、施工ミスにより柱材等の構造部材の位置が間違っていた場合、あるいは間柱等の簡易な構造部材を取り付ける場合等である。この場合には、既設のコンクリートに円柱状の孔を設け、そこに、一般的に、拡開アンカーを定着具として打設する方法が採用される。ここで、拡開アンカーとは、拡開式アンカーボルト、スタッドアンカーなど、コンクリート打設後に後打ちされる定着具を総称する。また、拡開アンカーが定着されるコンクリートとは、普通コンクリート、それ以外の特殊コンクリート、及びコンクリートと同様に構造材として用いられる、石材等の建設材料も含まれる。
図6に、一般的な拡開アンカー20の概要の一部断面図を示す。拡開アンカー20は、打設によりコンクリート10に埋め込まれる部分と、図示しない構造部材と連結するためにコンクリート10から露出する部分とから成る。拡開アンカー20は、軸体3、スリーブ体7、及び締付具2とから構成される。軸体3は、コンクリート10への埋め込み方向の先端に設けられ、先端側に向かって円錐状に拡大する拡張部6と、コンクリート10から露出し締付具2により係止される係止部4と、拡張部6と係止部4との間の円柱部5とから構成される。スリーブ体7は、締付具2の締め付けにより、拡張部6と協働して先端側に向かって拡開可能な拡開部9と、締付具2に当接する円筒部8とから構成される。また、スリーブ体7は、軸体3の周囲の一部を包み、締付具2と拡張部6との間で移動自在に保持される。
拡開アンカー20の施工手順を説明する。まず、拡開アンカー20が取り付けられるコンクリートの所定の位置に所定の穿孔を行う。次に、締付具2、スリーブ体7、及び軸体3を組み合わせた拡開アンカー20をその孔に打設する。さらに、締付具2を締め込むことで、軸体3の拡張部6が先端側に移動し、スリーブ体7の拡張部6を押し上げる。この押し上げにより、スリーブ体7の拡開部9が先端側に向かって拡開され、コンクリート壁面に定着される。この拡開部9は、拡開が容易に行われるように、その先端が複数の舌状板材に分割されるのが一般的である。
この拡張部6と協働した拡開部9の拡開による定着が、地震動等により拡開アンカー20に発生する引抜力に対する抵抗機構となる。すなわち、拡開アンカー20に引抜力が発生すると、締付具2を介して軸体3に引抜力が発生するが、スリーブ体7は、締付具2の締め付けにより、一方を締付具2に、他方を拡開部9により固定され軸体3と一体となっている。したがって、地震動による引抜力は、スリーブ体7の拡開部9まで伝達され、拡開アンカー20の外周を囲むコンクリート壁面からの反力により抵抗される。
一方、例えば特許文献1には、拡開アンカが開示され、特許文献2には、拡張自在緊結具が開示されている。
特許文献1に開示されている拡開アンカは、上述の従来技術とほぼ同様な抵抗機構をその主要部とする。図7に特許文献2に開示されている拡張自在緊結具31を示す。拡張体34の全円周又は全外周まわりに配置する薄板35を拡張素子32に設け、拡張自在緊結具31の縦方向軸線に対して鋭角をなして拡張し衝合部材33の方向を向き半径方向に弾性を有する遊端37を夫々の薄板35に設けている。ここで、拡張素子32は、折り目36にそって薄板35の遊端37を折り曲げる。
特開平5−157106号公報 特開昭56−143812号公報
一般的な拡開アンカーは、上述のように、スリーブ体の拡開部が先端部に向かって拡開され、地震動による引抜力に抵抗する。すなわち、地震動による発生する引抜力の方向に対して「突っ張らない」方向に拡開する。このことは、後述するように、地震動による衝撃力、例えば、地震動の縦揺れと横揺れとが合算された強大な衝撃力に対してコンクリートとの間にすべりが発生する危険性がある。したがって、一般的な拡開アンカーは、耐震性能を有する耐震拡開アンカーとはいえない。
特許文献1に開示されている拡開式アンカは、一般的な拡開アンカーと同様に拡開スリーブが先端側に向かって拡開され、この拡開により地震動による引抜力に抵抗する。したがって、上述の一般的な拡開アンカーと同様に、耐震性能を有する耐震拡開アンカーとはいえない。
特許文献2に開示されている拡張自在緊結具は、薄板の遊端が衝合部材の方向を向いて拡張する拡張素子を有する。すなわち、地震動による発生する引抜力に対して「突っ張る」方向に抵抗機構が拡開する。この場合は、後述するように、地震動の衝撃力に対して、抵抗機構自体に、全体座屈、局部座屈、あるいは圧壊が生じる可能性がある。特許文献2に開示された拡張素子は、スリットが切られた薄板が折り曲げられた状態でコンクリートからの反力を受ける構成となっている。つまり、地震動の衝撃力に対する抵抗機構であるこの薄板に全体座屈等を起こさないようにする補剛材や補剛機構は開示されていない。したがって、この拡張自在緊結具は、耐震性能を有する耐震拡開アンカーとはいえない。
本願の目的は、かかる課題を解決し、地震動による衝撃力に対して、コンクリートとのすべりを発生させず、抵抗機構自体の構造信頼性が高い耐震拡開アンカーを提供することである。
上記目的を達成するため、本発明に係る耐震拡開アンカーは、コンクリートへの埋め込み方向の先端に設けられ、先端側に向かって円錐状に拡大する拡張部と、コンクリートから露出し締付具により係止される係止部と、拡張部と係止部との間の円柱部と、を有する軸体、及びスリーブ体の先端側に設けられた舌状板材からなる拡開部と、締付具に当接する円筒部とを有し、軸体周囲の一部を包み込み締付具と拡張部との間で移動自在に保持されるスリーブ体を備える拡開アンカーであって、スリーブ体の拡開部と軸体の拡張部とから構成される第1の抵抗機構と、スリーブ体の円筒部に設けられ、円筒側壁に切り込みが入れられて円筒部の内面から軸芯側に起立した湾曲部を有する係止手段と、軸体の円柱部に設けられ、係止手段の起立する湾曲部に対向し、係止手段の湾曲部を収納する湾曲部を有する拡開手段と、から構成される第2の抵抗機構を備え、締付具の締め付けによりスリーブと軸体とに相対移動が発生すると、第1の抵抗機構の拡開部が軸体の拡張部により先端側に向かって拡開し、かつ、第2の抵抗機構の係止手段が、拡開手段に補剛されながら後端側に向かって拡開することを特徴とする。
上記構成により、耐震拡開アンカーは、拡開部による抵抗機構と、それとは機構の異なる係止手段による抵抗機構とを有する。つまり、拡開部による抵抗機構は、地震動により発生する引抜力に対して「突っ張らない」方向に拡開するのに対して、係止手段による抵抗機構は、「突っ張る」方向に拡開する。この係止手段による抵抗機構は、締付具を締め付け、軸体の拡開手段を後端側へ移動させることで、スリーブ体の係止手段を後端側に向かって拡開させる機構である。これにより、耐震拡開アンカーをコンクリート壁面に定着させることが可能となる。その結果、地震動による引抜力に対しては、より信頼性の高い拡開部の抵抗機構を確保しつつ、地震動による衝撃力に対し、係止手段による抵抗機構によりコンクリートとのすべりを係止させることが可能となる。
また、耐震拡開アンカーは、係止手段が拡開手段と協働して拡開する抵抗機構である。すなわち、係止手段の起立した面のうち先端側に向かう傾斜面と、それに対向する拡開手段の後端側に向かう傾斜面が協働して拡開手段を拡開さる。このことで、後述するように、係止手段を後端側に向かって確実に拡開させることが可能となり、抵抗機構自体の構造信頼性を高めることが可能となる。
また、耐震拡開アンカーは、係止手段と拡開手段とが協働して拡開することで係止手段自体の全体座屈、局部座屈、あるいは圧壊が生じにくい構造となる。例えば、係止手段及び拡開手段が相互に対向する湾曲部を有し、係止手段の湾曲部は拡開手段の湾曲部に収納される。このことで、後述するように、コンクリートからの反力を受けた場合、拡開手段が係止手段の全体座屈等を補剛する役目を果たすからである。したがって、抵抗機構自体の構造信頼性を高めることが可能となる。
また、耐震拡開アンカーは、軸体とスリーブ体が組み立てられて施工されるが、スリーブ体の係止手段と軸体の拡開手段とが協働して動作する構成により、耐震拡開アンカーの組立後は、軸体とスリーブ体とが外れないように持ち運ぶことが可能となる。
さらに、耐震拡開アンカーの係止手段による抵抗機構は、「締付具の締め付け」という、拡開部による抵抗機構と同一の動作により達成される。すなわち、施工に際し従来と同じ動作により、拡開アンカーに新たな抵抗機構を付加し、耐震拡開アンカーとすることが可能となる。
以上のように、本発明に係る耐震拡開アンカーによれば、地震動による衝撃力に対して、コンクリートとのすべりを防止し、抵抗機構自体の構造信頼性を高めることが可能となる。
以下に、図面を用いて本発明に係る実施の形態につき、詳細に説明する。
(耐震拡開アンカーの構成)
図1に耐震拡開アンカー1の一つの実施形態の構成を示す。図1(a)は、耐震拡開アンカー1の概略側面図であり、図1(b)は、図1(a)をA−A方向から見た概略側面図であり、図1(c)は、図1(a)の概略の一部断面図である。耐震拡開アンカー1は、打設されたコンクリート10に埋め込まれる埋め込み部16と、図示しない構造部材と連結するための露出部17とから成る。耐震拡開アンカー1の露出部17側を耐震拡開アンカー1の後端側と、埋め込み部16側を耐震拡開アンカー1の先端側と称する。耐震拡開アンカー1は、締付具2、軸体3、及びスリーブ体7から構成される。軸体3は、スリーブ体7に挿入され、締付具2により保持される。
締付具2は、本実施形態ではナット13及びワッシャ14である。ナットは6角ナットであり、ワッシャは円形ワッシャである。ナット13には、軸体3の係止部4と係合するネジが切られている。ワッシャ14には、スリーブ体7が当接される。締付具2は、軸体3の締め付け及びスリーブ体7の受けが可能であれば、ナット13及びワッシャ14を一体化したものであっても良い。
軸体3は、本実施形態ではネジ部15である係止部4と、埋め込み側の先端部に設けられ、先端に向かって円錐状に拡大する拡張部6と、ネジ部15と拡張部6との間の円柱部5と、拡開手段12とから構成される。軸体3は、本実施の形態では、丸鋼からなるボルトであり、機械切削により拡張部6及び円柱部5が削り出され、転造によりネジ部15のネジが切られる。軸体3の径は、スリーブ体7に挿入可能なように、スリーブ体7の径よりも僅かに小さい。拡開手段12は、本実施形態では円柱部5のほぼ中間位置に2箇所設けられるが、その箇数及び取り付け位置はこれに限られない。また、拡張部6は、雄ネジが切られた軸体3に、先端に向かって円錐状に拡大する雌ネジが切られたナット状の円環であっても良い。
スリーブ体7は、円筒部8、拡開部9、及び係止手段11とから構成される。上述したように、スリーブ体7の円筒部8の径は、ワッシャ14に当接可能な径であり、軸体3が挿入可能なように、軸体3の外径よりも僅かに大きい径である。したがって、スリーブ体7は、締付具2のワッシャ14と軸体3の拡張部6との間で移動自在に保持され、拡開部9の拡開が可能となる。本実施形態では、スリーブ体7は、軸方向に1箇所の図示しないスリットを有する。これは、スリーブ体7の製作が、平板に所定の加工をした後、円形に曲げて所望の形状とする方法を採用することによる。但し、スリーブ体7が平板からではなく、例えば鋼管を加工する場合には上記スリットは無い。また、本実施形態では、拡開部9は、拡開しやすいように切り込みが入れられ3枚の舌状板材に分割される。この舌状板材は、拡開が容易になる形状であれば、その枚数や形状はこれに限られない。
(係止手段の拡開メカニズム)
図2(a)に、協働して動作する係止手段11及び拡開手段12の第1の実施形態の概略の一部断面図を示す。本実施形態では、係止手段11は、図2(a)に示すように拡開可能な形状、すなわち、円筒部8の内面から軸芯側に起立する面のうち、先端側に向かう傾斜面(図2(a)の記号“a”)を有している。一方、拡開手段12は、円柱部5の一部の断面形状を軸方向に沿って変化させている。すなわち、係止手段11の起立した面のうち、先端側に向かう傾斜面に対向し、後端側に向かう傾斜面(図2(a)の記号“b”)を有している。また、本実施形態では、係止手段11及び拡開手段12は、ともに相互に対向する湾曲部を有し、係止手段11の湾曲部は拡開手段12の湾曲部に収納されている。
図3(a)に、協働して動作する係止手段11及び拡開手段12の第2の実施形態の概略の一部断面図を示す。本実施形態では、係止手段11は、図3(a)に示すように拡開可能な形状、すなわち、円筒の内面から軸芯側に起立する面のうち、先端側に向かう傾斜面(図3(a)の記号“a”)を有している。一方、拡開手段12は、円柱部5の一部の断面形状を軸方向に沿って変化させている。すなわち、係止手段11の起立した面のうち、先端側に向かう傾斜面に対向し、後端側に向かう傾斜面(図3(a)の記号“b”)を有している。
図4に、係止手段11と拡開手段12との協働による拡開メカニズムの概要を示す一部断面図を示す。図4(a)は、締付具2を締め付ける前の状態を示し、図4(b)は、締付具2の締め付けが完了し、係止手段11が拡開し、コンクリート10に係止した状態を示す。締付具2の締め付けにより、軸体3が移動し、拡開手段12も移動する。一方、スリーブ体7及び係止手段11は移動しない。したがって、図4(b)に示すように、軸体3は、図4(b)の矢印に示す方向に“d”だけスリーブ体7に対して相対移動する。
軸体3の相対移動により、係止手段11は拡開手段12になじみつつ押し上げられ、係止手段11の先端部21は図4(b)の矢印に示す方向を保ちながらコンクリート10に向かって拡開する。このように係止手段11が拡開するには、係止手段11の舌状板材19が、円筒部8の内面、すなわち、図4(a)の一点鎖線(m―n)よりも軸芯側に起立していなければならない。ここで、「起立」とは、一般的に、立ち上がることをいう。ここでは、「起立する面」とは、舌状板材19の内面がいったん立ち上がり、再度元に戻る面を有することを意味する。つまり、舌状板材19は、いったん軸芯側に立ち上がり、再度スリーブ体7側に戻る面を有する。この係止手段11のいったん立ち上がった部分が、拡開手段12により「押し上げられ」、係止手段11のスリーブ体7側に再度戻る部分が、コンクリート10側に「広げられ」拡開の動作が行われる。
拡開された係止手段11の先端部21は、締付具2を締め付けにより、図4(b)に示すように、スリーブ体7の外周を超えて、コンクリート10の壁面に突き当たる。締付具2をさらに締め付けることで、先端部21はコンクリート10に食い込み、先端部21はコンクリート10からの、図4(b)に示す反力Fを受ける。この場合、コンクリート10の反力Fの方向の剛性に対して、舌状板材19の反力Fの方向の剛性が著しく低いため、舌状板材19は、拡開手段12になじむように変形する。すなわち、舌状板材19がコンクリート10からの反力を受けるにつれて拡開手段12になじみ、拡開手段12との接触面が増加する。この動作は、耐震拡開アンカー1が地震動による衝撃力を受けた場合にも同様に生じる。これにより、舌状板材19の先端部の座屈長さが低減される。すなわち、拡開手段12が、拡開された係止手段11の座屈を補剛する役目を果たし、抵抗機構の座屈耐力を高める働きをする。
図2(b)及び(c)に、第1の実施形態における、協働して動作する係止手段11及び拡開手段12の他の変形例の一部概略図を示す。図2(b)の係止手段11は、舌状板材19の板厚の変化により軸芯側に起立する。この実施形態では、舌状板材19の板厚が厚くなり座屈耐力が上がるため、抵抗機構自体の構造信頼性が高まる。図2(c)の係止手段11及び拡開手段12は、傾斜面が曲面ではなく折れた二つの面からなる。この場合であっても、上述の拡開の動作が行われる。
図3(b)〜(d)に、協働して動作する係止手段11及び拡開手段12の他の変形例の一部概略図を示す。図3(b)の係止手段11は、舌状板材19の板厚の変化により軸芯側に起立する。この実施形態では、舌状板材19の板厚が厚くなり、座屈耐力が上がるため、抵抗機構自体の構造信頼性が高まる。図3(c)の係止手段11及び拡開手段12は、傾斜面が曲面ではなく折れた二つの面からなる。この場合であっても、上述の拡開のメカニズムは成立する。図3(d)は、円柱部5の断面形状を軸方向に沿って変化させた場合である。
(耐震拡開アンカーの施工手順)
図5に、耐震拡開アンカー1の施工手順の概略説明図を示す。まず、図5(a)に示すように、既設のコンクリート10上の所定の位置にドリル22等により穿孔を行う。この穿孔により、円柱状のコンクリート塊がコンクリート10の表面から略鉛直方向に削り取られ円柱状の孔が得られる。この孔の径は、スリーブ体7及び軸体3の拡張部6の最大径よりも僅かに大きな値である。この穿孔の際に孔内に残ったコンクリート片は、除かれて清掃される。
次に、図5(b)に示すように、締付具2、スリーブ体7及び軸体3が組み合わされた耐震拡開アンカー1をその孔内に図示しないハンマー等により打設する。所定の深さまで打設した後、図5(c)に示すように、露出しているナット13を図示しないトルクレンチ等により締め込む。
このナット13の締め込みで、軸体3の先端の拡張部6が、後端側に向かって移動する。一方、スリーブ体7の後端側は、ワッシャ14に当接しナット13により押さえ込まれているため、スリーブ体7全体が移動できない。その結果、先端に向かって円錐状に拡大する拡張部6が、スリーブ体7の拡開部9を押し広げ、スリーブ体7の拡開部9が先端側に向かって拡開される。拡開された拡開部9の先端は、コンクリート10に係止し、耐震拡開アンカー1が、コンクリート10に定着される。
また、軸体3の先端の拡張部6が、後端側に向かって移動することで、軸体3に設けられた拡開手段12も移動する。スリーブ体7に設けられた係止手段11は、上述のように、移動できない。この係止手段11に対する拡開手段12の相対的な移動の結果、拡開手段12により係止手段11が押し広げられ、後端側に向かって拡開される。拡開された係止手段11の先端は、コンクリート10に係止し、耐震拡開アンカー1が、コンクリート10に定着される。
本発明に係る耐震拡開アンカーの一つの実施形態の構成を示す側面図及び一部断面図である。 協働して動作する係止手段及び拡開手段の第1の実施形態及びその変形例を示す一部断面図である。 協働して動作する係止手段及び拡開手段の第2の実施形態及びその変形例を示す一部断面図である。 係止手段と拡開手段との協働による拡開メカニズムの概要を示す一部断面図である。 耐震拡開アンカーの施工手順を示す概略説明図である。 従来の拡開アンカーである示す一部断面図である。 従来の拡開アンカーである拡張自在緊結具を示す一部断面図である。
符号の説明
1 耐震拡開アンカー、2 締付具、3 軸体、4 係止部、5 円柱部、6 拡張部、7 スリーブ体、8 円筒部、9 拡開部、10 コンクリート、11 係止手段、12 拡開手段、13 ナット、14 ワッシャ、15 ネジ部、16 埋め込み部、17 露出部、18 コンクリート壁、19 舌状板材、20 拡開アンカー、21 係止手段の先端部、22 ドリル、31 拡張自在緊結具、32 拡張素子、33 衝合部材、34 拡張体、35 薄板、36 折り目、37 遊端。

Claims (1)

  1. コンクリートへの埋め込み方向の先端に設けられ、先端側に向かって円錐状に拡大する拡張部と、コンクリートから露出し締付具により係止される係止部と、拡張部と係止部との間の円柱部と、を有する軸体、及びスリーブ体の先端側に設けられた舌状板材からなる拡開部と、締付具に当接する円筒部と、を有し、軸体周囲の一部を包み込み締付具と拡張部との間で移動自在に保持されるスリーブ体、を備える耐震拡開アンカーであって、
    スリーブ体の拡開部と軸体の拡張部とから構成される第1の抵抗機構と、
    スリーブ体の円筒部に設けられ、円筒側壁に切り込みが入れられて円筒部の内面から軸芯側に起立した湾曲部を有する係止手段と、軸体の円柱部に設けられ、係止手段の起立する湾曲部に対向し、係止手段の湾曲部を収納する湾曲部を有する拡開手段と、から構成される第2の抵抗機構と、を備え、
    締付具の締め付けによりスリーブと軸体とに相対移動が発生すると、第1の抵抗機構の拡開部が軸体の拡張部により先端側に向かって拡開し、かつ、第2の抵抗機構の係止手段が、拡開手段に補剛されながら後端側に向かって拡開することを特徴とする耐震拡開アンカー。
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