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JP4299331B2 - 車両のシートベルト装置 - Google Patents

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Description

本発明は車両のシートベルト装置に関し、特に、VSA(Vehicle Stability Assist)の挙動安定化動作や舵角センサからの急転舵信号をトリガーとして作動しベルト引き込み量を最適化する車両のシートベルト装置に関する。
車両の座席において乗員を保護するために装備されたシートベルト装置について、近年、緊急時や走行状態の不安定時に、シートベルトによる乗員の拘束を行うことにより、姿勢変化を抑止する技術が実用に供されている。このシートベルト装置では、適時に電気式プリテンショナでモータを駆動し、ベルトリールを回転させ、シートベルトの引き込みを行うことにより、乗員の保護拘束および姿勢変化の抑制を行う。
さらに近年、車両ではVSA(Vehicle Stability Assist:車両挙動安定化制御システム)が提案されている。VSAは、ABS(四輪アンチロックブレーキシステム)とTCS(トラクションコントロールシステム)に、さらに車両の横すべり抑制を加えた車両挙動安定化制御システムである。ここで「車両の横すべり」とは、旋回中の車両が車輪の旋回性能を超えた走行状態であり、例えば車両の旋回走行中に起きるオーバーステアやアンダーステアの現象である。
VSAは、車両の旋回走行においてオーバーステアが起きる場合には、横加速度、舵角、車速から運転者が意図する目標ヨーレートを算出し、ヨーレートセンサで検知された実際のヨーレートが目標ヨーレートよりも大きいので、実際のヨーレートを減少させるように外側前輪にブレーキをかけるオーバーステア制御を行う。またVSAは、車両の旋回走行において加速によりアンダーステアが起きる場合には、舵角、車速から運転者が意図する目標ヨーレートを算出し、実際のヨーレートが目標ヨーレートよりも小さいので、実際のヨーレートを増大させるようにエンジン出力を低減すると共に、必要に応じて内側前輪にブレーキをかけるアンダーステア制御を行う。
車両のシートベルト装置と車両の旋回走行中での横すべり等とを関係づけた従来技術として、特許文献1に記載された乗員拘束保護システムが存在する。特許文献1に開示される乗員拘束保護システムでは、車両の旋回走行時において車体の横すべり等が生じた場合に、舵角センサで得られる舵角情報、ヨーレートセンサで得られるヨーレート情報等を用いてシートベルトを巻き取る電気式プリテンショナを動作させ、シートベルトを引き、乗員の有効な保護拘束を実現している。
特開2001−122081号公報
特許文献1に記載された乗員拘束保護システムでは、車体の横すべりが発生したときには、これを検知し、車両のシートベルト装置の電気式プリテンショナの動作でシートベルトを単に引くだけであった。このため、状況によっては、車両のシートベルト装置の動作に関してベルトに拘束される乗員は違和感を感じることがあった。
車両の旋回走行等の際、車両の挙動に異常(オーバーステア、アンダーステア等)が生じる場合、VSAを装備した車両ではVSAによる制御に基づいて車両の挙動を安定化させる。そこで、車両のシートベルト装置での電気式プリテンショナによるベルトの巻取り動作は、VSAをトリガー手段として、VSAの挙動安定化制御動作に関連させて、ベルト拘束力の違和感を与えることなく、かつ乗員の操舵行為に支障をあたえることがないような最適な乗員拘束を行うことが望まれる。
さらに運転者がハンドルの操舵で急ハンドルを切る場合には、ステアリング装置に付設された舵角センサからの信号に基づき、急転舵が判定される。このような場合にも、VSAによって車両の挙動の異常に対応する場合と同様に、車両のシートベルト装置での電気式プリテンショナによるベルトの巻取り動作は、急転舵に係る信号をトリガーとして最適な乗員拘束を行うことが望まれる。
本発明の目的は、上記の課題に鑑み、VSAの挙動安定化制御動作や舵角センサからの急転舵情報をトリガーとして利用し、ベルトによる乗員の拘束力が最適になるようにベルト保持力あるいはベルト巻取り量を制御し、乗員に違和感や不快感を生じさせることがない車両のシートベルト装置を提供することにある。
本発明に係る車両のシートベルト装置は、上記目的を達成するために、次のように構成される。
本発明に係る車両のシートベルト装置は、ベルトを巻回したベルトリールを駆動するモータと、車両の走行状態の変化を検知してモータの作動を指示する作動信号を出力するトリガー手段と、車両に作用する横加速度を検知する横加速度検知手段と、車両のスリップ状態量を検知するスリップ状態検知手段と、トリガー手段が出力した上記作動信号を受けたとき、横加速度検知手段が出力する横加速度に係る信号、およびスリップ状態検知手段が出力するスリップ状態量に係る信号に基づいてモータを作動させる通電量を制御する制御手段と、から構成される。
上記構成を有するシートベルト装置では、急転舵に対応する制御動作またはVSAによる車両挙動安定化制御に対応してシートベルトの緊急巻取りを行うことを可能にし、さらに横加速度および/またはスリップ状態量(ヨーレート偏差、ヨーレート、スリップ角、スリップ角速度等を含む概念)の情報を利用してベルト保持力を決定することで乗員に違和感や不快感を生じさせない最適な拘束を行うことが可能となる。
さらに、上記制御手段は、横加速度検知手段の出力信号で得られる横加速度に基づいて決定される第1の電流量と、スリップ状態検知手段の出力信号で得られるスリップ状態量に基づいて決定される第2の電流量とを求め、第1と第2の電流量を比較することによりモータを作動させる通電量を決定する。
さらに、上記制御手段は、モータへの通電量の変化幅に上限値を設定する。
さらに、上記制御手段は、第1および第2の電流量のうち小さい値の電流量を選択する。
例えば、横加速度が大きいものの、ヨーレート偏差等が小さい場合には、操舵によって運転者の意思に沿った制御が行われていることを意味し、保持力を高めなくてもよい。逆に、横加速度が小さく、ヨーレート偏差等が大きい場合には、スリップ状態にあり、乗員に作用する慣性が小さいため、保持力を高めなくてもよい。従って、この構成によれば、過剰に拘束力を高めることがないので、拘束による不快感を低減できる。
上記の構成を有する車両のシートベルト装置において、好ましくは、上記ベルトリールは、車両の左右の側部に設けられた複数の座席に対して個別に設けられた複数であり、上記モータは、複数のベルトリールを個別に駆動するように複数であり、上記制御手段は、上記複数のモータへの通電量をそれぞれ独立に制御する。
例えば同じ加速度およびヨーレート偏差等が車体に作用している場合においても、座席の車内上の配置によって個々の座席に着座した乗員に作用する慣性力が異なる。従って、この構成によれば、その違いを考慮することでより最適な保持力を作用させることができる。一例として、車体の重心から遠いほど、モータ通電量を多くなるように構成する。
上記の構成を有する車両のシートベルト装置において、好ましくは、上記制御手段は、車両の舵角に応じてモータへの通電量を補正する。
例えば、ショルダーベルトが右肩から左腰脇に掛け渡され、肩側を巻き取るような場合においては、乗員が右側に振られる左旋回時に対して、右旋回時の姿勢保持効果が弱くなるため、右旋回時の通電量を左旋回時のそれと比べて高くするように制御する。これにより、乗員保護のためのベルト保持力が最適になり、保持効果が向上する。
本発明によれば、車両のシートベルト装置において電気式プリテンショナでモータを駆動しベルトリールに巻取り動作させてシートベルトを巻き取る場合に、VSAの挙動安定化制御動作あるいは急転舵に係る信号をトリガーとして、横加速度およびスリップ状態量に基づきモータへの通電量を制御するようにしたため、車両の旋回走行中においてベルト保持力あるいはベルト巻取り量を最適にし、ベルト作動の違和感を軽減し、ベルトによる保護者拘束を最適にし、乗員の姿勢を適切に保持することができる。さらに車両の旋回走行において運転者の保持姿勢を最適にすることにより、運転操作に支障を生じることなく運転を継続することができる。
以下に、本発明の好適な実施形態(実施例)を添付図面に基づいて説明する。
図1は一例として運転席におけるシートベルト装置の装備状態を示し、図2はシートベルト用のリトラクタの構成を示し、図3は車両のシートベルト装置の制御システムの全体的な構成を示す。
図1において、シートベルト装置10は、乗員11の身体を座席12に拘束するベルト(ウェビング)13を備える。ベルト13は、乗員11の上体を拘束するベルト部分13aと、乗員11の腰部を拘束するベルト部分13bとから成る。ベルト部分13bの一端はアンカープレート14により車室下部の車体部分に固定されている。ベルト部分13aは、乗員11の肩近傍の箇所に設けられたスルーアンカー15で折り返され、その端部はリトラクタ16のベルトリールに連結されている。ベルト13の他方の共通端部にはタングプレート17が取り付けられている。このタングプレート17は、座席12の下側縁部に固定されたバックル18に着脱自在である。バックル18には、タングプレート17の連結を検出するバックルスイッチ19が設けられている。
図2に、シートベルト用のリトラクタ16の要部構成を示す。リトラクタ16は、ハウジング21内に回転自在に設けられたベルトリール(スピンドル)22と、ベルトリール22を回転駆動するモータ23とを備えている。ベルトリール22にはベルト13の上記ベルト部分13aの端部が結合され、ベルト部分13aはベルトリール22で巻き取られる。ベルトリール22の軸22aは動力伝達機構(ギヤ機構)24を介してモータ23の駆動軸23aに接続される。ベルトリール22は、動力伝達機構24を経由してモータ23で回転駆動される。またリトラクタ16は、ベルトリール22の軸22aに接続された巻取り位置検知部25を備える。
巻取り位置検知部25は、好ましくは、回転角センサを利用して構成される。回転角センサには、例えば、磁気ディスクと2個のホールICとを組み合わせて成る磁気センサが利用される。この回転角センサの最小分解角度は例えば4°であり、ベルトの長さに換算すると1.3〜1.6mm程度である。従って巻取り位置検知部25は、ベルトリール22の回転状態(回転方向、回転角、回転量)を検知する手段である。なお巻取り位置検知部25としては、回転角センサの代わりに、ベルト長センサを用いることもできる。
巻取り位置検知部25によれば、内蔵された回転角センサによってベルトリール22の回転角を検出することにより、ベルトリール22によるベルト巻取り位置を検知することが可能となる。巻取り位置検知部25から出力される検知信号は制御装置26に入力される。リトラクタ16の動作は、制御装置26によって制御される。制御装置26は、電源27からモータ23へ供給される駆動電流I1の通電量を通電量調整部28で制御することにより、リトラクタ16によるベルト巻取り動作を制御する。制御装置26により制御されるリトラクタ16は、乗員11の位置および姿勢を保持するための電気式プリテンショナとして構成されている。
上記のシートベルト装置10およびこれに含まれるリトラクタ16等は、運転席側の装置であったが、助手席側にも同様なシートベルト装置およびリトラクタ等が装備されている。以下において「R側」は運転席側、「L側」は助手席側とする。
図3のブロック図を参照して、シートベルト装置10等の制御システムをハードウェアの観点から説明する。図3の制御システムは、車両に搭載されたコンピュータユニットで実現されるものである。この制御システムは、上記の制御装置26を含んでいる。図3において、制御装置26はCPUにより構成され、車載コンピュータユニットのメインコンピュータとして位置づけられる。制御装置26は、車両のシートベルト装置10の制御機能以外の他の装置の制御機能も有している。
図3において、制御装置26を含むブロック30は、車両のシートベルト装置10の制御手段という観点から、シートベルトによって乗員11の位置・姿勢を保持するための電気式プリテンショナユニットを示している。ただし、制御装置26はシートベル装置10以外の制御機能も併せ持っている。
ブロック30では、制御装置(CPU)26の入力側に電源部31、車内ネットワーク(CAN)通信部32、回転角インターフェース(回転角I/F)部33、通信部34を備え、その出力側にR側モータ駆動制御部35、L側モータ駆動制御部36、記録部37を備えている。記録部37はメモリである。
さらにブロック30の入力側には、シートベルト用リトラクタの一例として上記のリトラクタ16を示すブロックが設けられている。リトラクタ16は、前述した巻取り位置検知部25から出力される検知信号を制御装置26に送信するための回転角インターフェース(回転角I/F)部41を含む。回転角インターフェース部41は、ブロック30内の上記回転角インターフェース部33に接続され、回転角インターフェース部33に対して検知信号を送る。上記のリトラクタ16は、運転席側および助手席側等のそれぞれについて設けられている。
ブロック30の入力側には、さらに、ACC(Adaptive Cruise Control)ユニット(障害物検知装置等の制御ユニット)42、VSA(Vehicle Stability Assist)ユニット(車両挙動安定化制御ユニット)43、FI/AT(Fuel Injection / Automatic Transmission)ユニット44、SRS(Supplement Restraint System)ユニット(補助拘束装置ユニット)45等が設けられている。
ブロック30の入力側要素の中にはさらに車両走行状態検知ユニット60も含まれている。車両走行状態検知ユニット60は、図4に示すように、車速センサ61、左右の前輪および左右の後輪の各々についての4つの車輪速センサ62、横加速度センサ(横Gセンサ)63、ヨーレートセンサ64、ステアリング装置に付加された舵角センサ(絶対舵角センサ)65、ブレーキセンサ66、スロットル開度センサ67等を含んでいる。さらに車両走行状態検知ユニット60は、必要に応じて、車体前後方向加速度センサ、ロール角センサ、旋回方向センサ等を含む。車両走行状態検知ユニット60に含まれる各種のセンサ(検知手段)は、上記VSAユニットの作動による挙動安定化制御機能、急転舵判定機能、横すべり判定機能等で利用されると共に、本実施形態に係る車両のシートベルト装置10によるシートベルト緊急巻取り機能での緊急ベルト巻取り量の制御で利用される。
ACCユニット42、VSAユニット43、FI/ATユニット44、車両走行状態検知ユニット60等は、車内ネットワーク46を介して、それらの出力信号を車内ネットワーク通信部32に供給する。車両走行状態検知ユニット60に含まれる上記複数の各種センサの各々から出力される検知信号は車内ネットワーク46および車内ネットワーク通信部32を経由して制御装置26に供給される。
SRSユニット45は、R側バックル47RおよびL側バックル47Lからの各信号を受けるSRS制御部45aと、通信部45bとを有している。ここでR側バックル47Rは運転席側の上記バックル17に相当し、L側バックル47Lは助手席側に装備されたシートベルト装置のバックルである。R側バックル47RおよびL側バックル47Lから出力される各信号は、内蔵されるバックルスイッチの検知信号である。SRS制御部45aは、R側バックル47RまたはL側バックル47Lからの信号を受けると、通信部45bを介してその信号をブロック30の通信部32に送信する。またSRSユニット45は、車両走行時にシートベルトが正規に使用されていない場合には、警告灯48に対して警告信号を供給する。
ブロック30の出力側には、R側モータ51とL側モータ52が設けられる。R側モータ51は、運転席側のシートベルト装置10の駆動用モータであり、R側モータ駆動制御部35に対応して配置されている。R側モータ駆動制御部35は、制御装置26からの制御指令信号に基づいて上記の電源(+V)27からの通電量を制御してR側モータ51に対して駆動電流を供給する。なおブロック53は接地部である。またL側モータ52は、助手席のシートベルト装置10の駆動用モータであり、L側モータ駆動制御部36に対応して配置されている。L側モータ駆動制御部36は、制御装置26からの制御指令信号に基づいて電源(+V)54からの通電量を制御してL側モータ52に対して駆動電流を供給する。またブロック55は接地部である。上記の接地部53,55は、車体の一部をなす接地端子である。
図5は、本実施形態に係るシートベルト装置10の制御システムの基本的な構成を概念的に示した機能ブロック図である。この制御システムは、主要素として、前述した巻取り位置検知部25と、VSAユニット43と、車両走行状態検知ユニット60と、急転舵判定部71と、横すべり判定部72と、シートベルト装置制御部73と、ベルト駆動部74とから構成されている。これらの要素は、信号ライン(バス等)75で接続されており、信号ライン75を経由してデータの送受が行われる。
上記の車両走行状態検知ユニット60は、前述の通り、車速センサ61、横加速度センサ63、ヨーレートセンサ64、舵角センサ65を含んでいる。
また横すべり判定部72は、通常的にはVSAユニット43の一部を構成しているものであるが、制御装置(CPU)26の演算処理機能により実現されるものであるので、別ブロックで示される。
急転舵判定部71の急転舵判定機能と横すべり判定部72の横すべり判定機能は、制御装置(CPU)26の演算処理機能(演算アルゴリズム)により実現される。またシートベルト装置制御部73は、前述した制御装置(CPU)26の演算処理機能と、R側モータ駆動制御部35およびL側モータ駆動制御部36とから構成される。なお、シートベルト装置制御部73は、巻取り位置検知部25から与えられる信号に基づいてベルトリール22の回転角速度を得る検出手段73a、およびベルトリール22の回転量(巻取り量)を得る検出手段73bを備えている。またベルト駆動部74は、前述のリトラクタ16であり、より詳しくは前述のR側モータ51とL側モータ52である。
図6に、上記の急転舵判定部71の構成を示す。急転舵判定部71では、車速センサ61から与えられる車速信号を車速LPF(Low Pass Filter)81に通すことにより車速情報を取り出す。また舵角センサ65から与えられる舵角信号を舵角LPF(Low Pass Filter)82に通すことにより舵角情報を取り出す。次に、舵角LPF82で取り出された舵角情報に基づいて第1の差分演算部83で差分演算を行うことによって舵角速度情報を算出する。さらに、舵角速度情報に基づいて次の第2の差分演算部84で差分演算を行うことによって舵角加速度情報を算出する。得られた上記の車速情報、舵角速度情報、舵角加速度情報に基づいて、判定部85は、車両の走行状態が急転舵状態であるか否かを判定する。判定部85は、算出された舵角速度および舵角加速度の各情報と、車速に応じた規定の閾値とを比較することにより、急転舵状態であるか否かを判定する。判定部85が急転舵状態であると判定した場合には、急転舵信号を出力する。急転舵判定部71による急転舵判定機能のアルゴリズムは例えば10ミリ秒のループタイムで実行される。なお、舵角加速度を用いずに、舵角および舵角速度のみを用いて急転舵を判定するように構成することもできる。
急転舵判定部71から急転舵信号が出力されると、この急転舵信号をベルト巻取りモータの作動信号を発生するためのトリガーとして用いて、後述のごとく、シートベルト装置制御部73の制御機能に基づいて、シートベルト装置10ではベルト13の緊急巻取り動作が実行される。
次に図7に、上記の横すべり判定部72の構成の一例を示す。横すべり判定部72では、車速センサ61から与えられる車速信号を車速LPF(Low Pass Filter)81に通すことにより車速情報を取り出す。また舵角センサ65から与えられる舵角信号を舵角LPF(Low Pass Filter)82に通すことにより舵角情報を取り出す。さらにヨーレートセンサ64から与えられる実際のヨーレート信号(実ヨーレート信号)をヨーレートLPF(Low Pass Filter)91を通すことによりヨーレート情報を取り出す。車速LPF81で取り出された車速情報と舵角LPF82で取り出された舵角情報とに基づいて規範ヨーレート演算部92は規範ヨーレートを計算する。規範ヨーレート演算部92で算出された規範ヨーレートの値と、ヨーレートLPF91で取り出された実ヨーレートの値は偏差演算部93に入力され、両者の値の偏差が計算される。偏差演算部93で計算された値が「0」である場合には横すべりが生じていない状態であると判定される。偏差演算部93で計算された値が「0」ではなく、所定レベル以上の「ヨーレート偏差信号」として出力される場合には、横すべりが生じている場合と判定される。横すべり判定部72による横すべり判定機能のアルゴリズムは例えば10ミリ秒のループタイムで実行される。なお、上記の説明によれば、横すべり判定部72は、ヨーレートセンサ64からの実ヨーレート信号を用いてヨーレート偏差信号を求めることにより横すべり状態の有無を判定するようにした。しかし、一般的には、ヨーレートそのもの、スリップ角(速度ベクトルと車体の姿勢方向とのずれ)、またはスリップ角速度を求めることによって、横すべり状態の有無を判定することもできる。
偏差演算部93からヨーレート偏差信号が出力される場合には、このヨーレート偏差信号をベルト巻取りモータの作動信号を発生するためのトリガーとして用いて、後述のごとく、シートベルト装置制御部73の制御機能に基づいて、シートベルト装置10ではベルト13の緊急巻取り動作が実行される。この場合において、前述した電気式プリテンショナユニット30を動作させてモータ(23)を駆動し、ベルトリール22でベルト13を巻き取るが、その巻取り量を決めるモータ制御量は、実ヨーレート値またはヨーレート偏差値と、横加速度センサ63で検知される横加速度値の最小値とを適宜に組み合せることに基づいて計算される。また、周知のごとくVSAの挙動安定化動作が上記のような所定横すべり状態が発生した際に行われることから、前述のVSAユニット43の動作情報そのものをトリガーとして用いてもよい。さらに、同様に、ABS等の他の周知のデバイスの作動信号と、上記横加速度等の信号とを適宜に組み合せることにより、トリガーとして用いてもよい。
また車両の走行状態(挙動状態)に変化が生じて、シートベルト装置制御部73の制御機能に基づきシートベルト装置10でベルト13の緊急巻取り動作が実行される際、そのトリガー信号としては、上記の急転舵信号とヨーレート偏差信号等のうちのいずれを優先させてもよいし、両信号を適宜に論理的に組み合せて使用することもできる。
次に図8に示したフローチャートを参照して、図5に示された制御システムの構成に基づき、シートベルト装置制御部73によって実施されるシートベルト装置10の動作制御の第1の例を説明する。この動作制御は、急転舵判定または横すべり判定に基づくベルト13の巻取り動作である。
図8に示したフローチャートは、乗員11が座席12に座り、ベルト13を自身の体に装着してタングプレート17をバックル18に接続し、バックルスイッチ19がオンした以後、車両を走行させ、ステアリング装置のハンドル操作で生じる急転舵、または横すべり状態、すなわちVSAユニット43によって実施される車両挙動安定化制御動作を、引き金条件(トリガー)として実行される制御動作の流れを示している。
なお、図8に示されたフローチャートの説明では、R側モータ51(または前述したモータ21)の例に基づいて説明する。
判定ステップS11では、前述した通りのトリガー信号としての急転舵信号またはヨーレート偏差信号が発生しているか否かが判定される。判定ステップS11でNOである場合には、一定の時間間隔で判定ステップS11による判定動作が繰返される。判定ステップS11でYESである場合には、次の判定ステップS12に移行する。
次の判定ステップS12では、VSAの作動状態を知らせるためのVSA作動タイマがON状態であるか否かが判定される。判定ステップS12がNOである場合には、前述と同様にステップS11,S12が反復され、判定ステップS12がYESになると、次の処理ステップS13が実行される。なお、上記のVSA作動タイマはVSAの作動状態がON状態となってから所定時間有効になるように構成してもよい。それにより、制御の中断を抑制することができる。
処理ステップS13では、3つの変数「a」,「b」,「I」が設定される。変数aには横加速度センサ63での検知で取得された横加速度値が代入される。変数bには車速センサ61、ヨーレートセンサ64、および舵角センサ65により検知された信号に基づき周知の方法により求められたヨーレート、ヨーレート偏差、スリップ角、またはスリップ角速度等の車両のスリップ状態量が代入される。変数I はモータ通電制御量の変数として定義される。その後、次の処理ステップS14に移行する。
処理ステップS14では、好ましくは、3つの計算式に基づいて通電制御量算出の計算が実行される。第1の式は「Ima=Ka」である。ここで、K は所定の比例係数である。第1の式によって横加速度値(変数a)に比例した通電制御量「Ima」が求められる。また第2の式は「Imb=Kb」である。ここで、K は所定の比例係数である。第2の式によってスリップ状態量(変数b)に比例した通電制御量「Imb」が求められる。さらに第3の式は「Imc=Min(Ima,Imb)」である。「Min」は、2つの通電制御量Imaと通電制御量Imbのうちいずれか小さい値の方を選択する関数を意味している。この第3の式によって、横加速度値(変数a)に比例した通電制御量とスリップ状態量(変数b)に比例した通電制御量のうち、いずれか小さい値を有する通電制御量が通電制御量「Imc」として求められる。
上記により、横加速度またはスリップ状態量が増加するに従って、通電制御量を増加させることが可能になり、走行状態に応じたベルト巻取り量を設定することができる。
上記の3つの計算式はいずれか1つを実行してもよいし、すべてを行ってもよい。処理ステップS14では、こうして求められた通電制御量「Ima」,「Imb」,「Imc」のいずれかの値が最終的に上記の通電制御量に係る変数Iに代入される。その後、次の判定ステップS15に移行する。判定ステップS15では、以上の計算が終了したか否かを判定する。判定ステップS15でNOである場合には、上記のステップS13,S14を繰り返す。これは、車両の走行状態の変化に応じて継続して通電制御量の計算が行われることを意味する。判定ステップS15でYESである場合には、計算を終了し、次の判定ステップS16に移行する。
判定ステップS16では、最終的に求められた通電制御量Iが上限値(I)と下限値(I)で決まる範囲に含まれているか否かを判定する。判定ステップS16でYESの場合には、処理ステップS17において、通電制御量Iでモータ通電量I1を決定する処理を行う。すなわちモータ通電量Iを用いてモータ(23,51)を駆動制御する。判定ステップS16でNOである場合には、ステップS18で通電制御量I を調整し、当該通電制御量が判定ステップS16で設定された範囲に含まれるようにする。判定ステップS16での条件を満たすように調整された後には、上記のごとく、処理ステップS17が実行され、モータの駆動制御が行われ、最適なベルト保持力でモータ駆動が実行される。
上記の判定ステップS16において、上限値と下限値については、いずれか一方が設定される場合であってもよい。
次に、図9に示したフローチャートを参照して、シートベルト装置10の動作制御の第2の例を説明する。この動作制御も、急転舵判定または横すべり判定に基づくベルト13の巻取り動作である。図8で説明した同一の内容については同一の符号を付し、その説明を省略すると共に、動作制御の特徴的内容のみを説明する。従ってステップS11,S12,S15の内容は前述した通りであり、ステップS21〜S25が特徴的な内容になる。ただし図9に示したフローチャートの手順の流れは、図8に示したフローチャートと同じである。第2の例による制御動作では、制御対象が、モータ通電量ではなく、ベルト巻取り位置である点に特徴がある。
第2の例による制御動作においてステップS11,S12は前述した通りである。次のステップS21では、3つの変数「a」,「b」,「X」が設定される。変数aには横加速度値が代入され、変数bには車速センサ61、ヨーレートセンサ64、および舵角センサ65により検知された信号に基づき周知の方法により求められたヨーレート、ヨーレート偏差、スリップ角、またはスリップ角速度等の車両のスリップ状態量が代入される。変数X はベルト巻取り位置の変数として定義される。
処理ステップS22では3つの計算式に基づいて巻取り位置制御量算出の計算が実行される。第1の式は「Xma=Ka」であり、これにより横加速度値(変数a)に比例した巻取り位置制御量「Xma」が求められる。また第2の式は「Xmb=Kb」であり、これによりスリップ状態量(変数b)に比例した巻取り位置制御量「Xmb」が求められる。さらに第3の式は「Xmc=Min(Xma,Xmb)」である。「Min」は、2つの巻取り位置制御量Xma,Xmbのうちいずれか小さい値の方を選択する関数を意味している。この第3の式によって、横加速度値(変数a)に比例したベルト位置制御量とスリップ状態量(変数b)に比例したベルト位置制御量のうち、いずれか小さい値を有する巻取り位置制御量が制御量「Xmc」として求められる。
上記により、横加速度またはスリップ状態量が増加するに従って、ベルト巻取り位置制御量を増加させることが可能になり、走行状態に応じた適切なベルト巻取り位置を設定することができる。
上記の3つの計算式はいずれか1つを実行してもよいし、すべてを行ってもよい。処理ステップS22では、こうして求められた制御量「Xma」,「Xmb」,「Xmc」のいずれかの値が最終的に上記のベルト巻取り位置制御量に係る変数Xに代入される。その後、次の判定ステップS15が前述の通り実行される。
後段の判定ステップS23では、最終的に求められたベルト巻取り位置制御量Xが上限値(X)と下限値(X)で決まる範囲に含まれているか否かを判定する。判定ステップS23でYESの場合には、処理ステップS24において、巻取り位置制御量Xでベルト巻取り位置を決定する処理を行う。すなわち巻取り位置制御量Xを用いてモータ(23,51)を駆動制御する。判定ステップS23でNOである場合には、ステップS25で制御量X を調整し、当該ベルト巻取り位置制御量が判定ステップS23で設定された範囲に含まれるようにする。判定ステップS23での条件を満たすように調整された後には、上記のごとく処理ステップS24が実行され、モータの駆動制御が行われ、ベルト巻取り位置が適切になるようモータ駆動が実行される。なお上記の判定ステップS23において、上限値と下限値については、いずれか一方が設定される場合であってもよい。
次に、図10に示したフローチャートを参照して、シートベルト装置10の動作制御の第3の例を説明する。この動作制御も、急転舵判定または横すべり判定に基づくベルト13の巻取り動作である。図10において、図8で説明した同一の内容については同一の符号を付し、その説明を省略すると共に、動作制御の特徴的内容のみを説明する。従ってステップS11,S12,S15の内容は前述した通りであり、ステップS31〜S35が特徴的な内容になる。
処理ステップS31では、4つの変数「a」,「b」,「Ima」,「Imb」が設定される。前述の通り、変数aには横加速度センサ63での検知で取得された横加速度値が代入され、変数bには車速センサ61、ヨーレートセンサ64、および舵角センサ65により検知された信号に基づき周知の方法により求められたヨーレート、ヨーレート偏差、スリップ角、またはスリップ角速度等の車両のスリップ状態量が代入される。さらに2つの変数Ima,Imb はモータ通電制御量の変数として定義される。その後、次の処理ステップS32に移行する。
処理ステップS32では、2つの計算式に基づいて、それぞれ通電制御量算出の計算が実行される。第1の式は「Ima=Ka」である。ここで、K は所定の比例係数である。第1の式によって横加速度値(変数a)に比例した通電制御量「Ima」が求められる。また第2の式は「Imb=Kb」である。ここで、K は所定の比例係数である。第2の式によってスリップ状態量(変数b)に比例した通電制御量「Imb」が求められる。その後、次の判定ステップS15を経由した後に、さらに判定ステップS33に移る.
判定ステップS33では、上記の2つの通電量制御量「Ima」と「Imb」とが比較され、これらのうちのいずれかが適宜な基準に基づいて選択され、それぞれ選択された側でステップS34またはステップS35が実行される。すなわち、「Ima」または「Imb」によってモータ通電量I1が決定され、モータ駆動制御が実行される。
次に図11を参照してシートベルト装置10における動作制御での補正制御の例を説明する。この補正制御は、舵角センサ65で検知される舵角(A)の情報に基づいて、モータ駆動用通電量を決める目標電流(ベルト巻取り位置)を補正するための制御である。これは、上記の電気式プリテンショナユニット30によりベルト13を引き込んだりまたは保持したりする制御に関して、例えば運転席の場合、ハンドルの操舵角で可変制御するものである。
最初のステップS41では、目標となるモータ通電量Itarget(またはベルト巻取り位置Xtarget)が決定される。
上記の舵角Aが下限設定値A1よりも大きく(判定ステップS42でYES)かつ上限設定値A2よりも小さい(判定ステップS43でYES)の場合には、予め用意された変数であるB(補正係数)について計算が行われる(ステップS44)。ステップS44では、計算式「B=C1*AーC2」(C1,C2:演算定数、「*」:積演算)に基づいて補正係数Bが算出される。また、判定ステップS42で舵角Aが下限設定値A1以下である場合には、変数BにおいてB0の値が代入されて補正係数として使用される(ステップS45)。さらに、判定ステップS43で舵角Aが上限設定値A2以上である場合には、変数BにおいてB1の値が代入されて補正係数として使用される(ステップS46)。
上記のステップS44,S45,S46のいずれかで求められた補正係数Bを用いることにより次のステップS47が実行される。ステップS47では、得られた補正係数Bを用いて「B*Itarget」を補正計算を行い、これによって得られた計算値を、目標となるモータ通電量Itargetに設定する。上記において、右ハンドル車両では、図12に示すごとく、補正係数Bは、B0は例えば1.2であり、B1は例えば1である。
上記では、運転席のシートベルト装置10の例で説明したが、運転席以外の席のシートベルト装置であっても、肩ベルトの構成上、横方向の拘束においてベルト張力が同等であると、内側方向の拘束が外側方向の拘束に対して劣る。そのため、左右同等の拘束性能を得るために、座席の位置方向と反対方向(外側方向)の旋回時に比べて、同方向の旋回時にはベルト張力を上げるように制御することが望ましい。
次に、図13〜図15を参照して、上記のごとく決定した目標となるモータ通電量、すなわち目標電流(Itarget)に基づいて、その後におけるシートベルトの引き量の決め方を説明する。
最初にトリガー(急転舵状態またはスリップ状態)が有効であるか否かが判定される(ステップS51)。判定ステップS51でNOである場合には直ぐに終了し、YESである場合にはステップ(定義済み処理ステップ)S52が実行される。このステップS52は、図8〜図10のいずれかで説明されたフローチャートの内容を実行するものであり、ベルト駆動用モータの目標電流(Itarget)を決定する制御ステップである。
なおステップS52において、目標電流(Itarget)を決定する代わりに、目標となるベルト巻取り位置(Xtarget)を決定することもできる。
ステップS52が終了すると、次の判定ステップS53が実行される。判定ステップS53では、ステップS52で今回決定された目標電流(Itarget)が、前回に決定された旧目標電流(Itarget_old)よりも大きいときには次のステップS55に移行し、前回に決定された旧目標電流(Itarget_old)よりも小さいときにはステップS54を経由してステップS55に移行する。ステップS54によれば、目標電流(Itarget)の値が旧目標電流の値に置き替えられる。ステップS53,S54によれば、目標電流の値は下方修正されないように設定されている。この制御構成によれば、ベルトの保持力が低下するのを防ぐことができる。また、不要な張力変化を抑制することができるので、拘束時の違和感が軽減できる。
ステップS55は、通電量変化量の上限値ΔIを設定するための処理ステップであり、定義済み処理ステップである。ステップS55の具体的内容は、図14または図15のフローチャートに示されている。ステップS55の具体的な内容は後述する。ここでは、通電量変化量の上限値ΔIが設定されたものとして、以下に説明を続ける。
次の処理ステップS56では保持電流制御が開始される。保持電流制御は、R側モータ51(またはモータ23)に供給されるモータ通電量を目標電流(Itarget)に保持するための制御である。次の判定ステップS57で、通電量センサで検出されるモータ通電量(I)が目標電流(Itarget)に等しいときには、電流調整の制御プロセスは終了し、判定ステップS61に移行する。モータ通電量(I)が目標電流(Itarget)に等しくないときには、次の判定ステップS58で、モータ通電量(I)と目標電流(Itarget)との大小関係を比較する。この比較においてモータ通電量(I)が目標電流(Itarget)よりも小さいときには、次の判定ステップS59で、(I+ΔI)がモータ通電量上限値(Iupr limit)よりも小さいときにはモータ通電量(I)にΔIが加算された(ステップS60)後に判定ステップS61に移行し、大きいときにはステップS60を通過せず、判定ステップS61に移行する。また上記の比較においてモータ通電量(I)が目標電流(Itarget)よりも大きいときには、次の判定ステップS62で、(I−ΔI)がモータ通電量下限値(Ilower limit)よりも大きいときにはモータ通電量(I)からΔIが減算された(ステップS63)後に判定ステップS61に移行し、小さいときにはステップS63を通過せず、判定ステップS61に移行する。
判定ステップS61においては、車両の走行状態が安定しているか否かが判定される。判定ステップS61で走行状態が安定していると判断された場合には制御は終了する。判定ステップS61で制御が不安定であると判定された場合には上記の処理ステップ52まで戻り、その後の上記の各ステップを、走行状態が安定であると判断されるまで繰り返す。
以上のごとくしてステップS52で決定された目標電流(Itarget)に基づいてモータ通電量の保持電流制御が開始され(ステップS56)、モータ通電量(I)が調整され、ベルトの引出し量が適切に調整される。
上記のステップS58〜S60,S62,S63の制御フローについては、目標電流(Itarget)を用いる代わりに目標ベルト巻取り位置(Xtarget)を用いた場合にも同様に実行される。
次に、図14と図15を参照して上記の処理ステップS55について説明する。図14に示した処理方式は、走行状態量に基づいて通電量変化量の上限値ΔIを設定する方法である。走行状態量は、例えば車速、横加速度、ヨーレート、ヨーレート偏差、またはスリップ角等である。走行状態量は任意に選択され、ここでは走行状態量を「Y」とする。
図14に示す上限値設定法では、走行状態量Yを一例として4段階に設定する。すなわち、走行状態量として、まず3つの値Y1,Y2,Y3(Y1<Y2<Y3)が定められる。走行状態量YがY1よりも小さいときには(ステップS71)、上限値ΔIはΔI0として設定される(ステップS72)。走行状態量YがY1以上でかつY2よりも小さいときには(ステップS71,S73)、上限値ΔIはΔI1として設定される(ステップS74)。さらに走行状態量YがY2以上でかつY3よりも小さいときには(ステップS73,S75)、上限値ΔIはΔI2として設定される(ステップS76)。走行状態量YがY3以上であるときには(ステップS75)、上限値ΔIはΔImaxとして設定される(ステップS77)。
以上のごとく、モータ通電量の変化量の上限値ΔIは、例えば4段階の区分けで、条件に応じてΔI0,ΔI1,ΔI2,ΔImaxのうちのいずれかに設定される。上記の例では4段階で分けたが、これに限定されない。またモータ通電量の変化量の上限値ΔIは連続的な量として変化させることもできる。
図15に示した処理方式は、モータ通電量が目標電流まで一定時間で到達するように上限値ΔIを設定する方法である。この処理方式は、通常、目標電流が或る一定値を超えない緩やかな変化の場合に適用される。
図15のフローチャートにおいて、判定ステップS81では目標電流Itarget が閾値Ith以下であるか否かが判断される。目標電流Itarget が閾値Ith以下である場合には上限値ΔIは(Itarget/dt)として設定され(ステップS82)、目標電流Itarget が閾値Ithよりも大きい場合には上限値ΔIはΔImaxとして設定される(ステップS83)。
図15に示した処理方式によれば、目標電流Itarget が予め設定された目標電流量、すなわち閾値Ithを超えないことを条件に、上限値ΔIを所定の時間割合(Itarget/dt)で設定し、モータ通電量を目標電流まで一定時間で到達させることができる。
以上の実施形態で説明された構成、形状、大きさおよび配置関係については本発明が理解・実施できる程度に概略的に示したものにすぎない。従って本発明は、説明された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示される技術的思想の範囲を逸脱しない限り様々な形態に変更することができる。
本発明は、横加速度やVSA作動時に乗員に対して過度のベルト張力が生じることがないようにベルト巻取り量を最適化し、車両走行中に乗員を座席に最適な保持力で拘束するのに利用される。
車両におけるシートベルト装置の装着状態を示す側面図である。 本発明の実施形態に係るシートベルト装置のリトラクタの要部構成を示す図である。 本実施形態に係るシートベルト装置の制御システムの全体構成を示すブロック図である。 車両走行状態検知ユニットの内部構成を示すブロック図である。 本実施形態に係るシートベルト装置の制御システムの要部構成を示すブロック図である。 急転舵判定部の内部構成を示すブロック図である。 横すべり判定部の内部構成を示すブロック図である。 本実施形態に係るシートベルト装置の動作制御の第1の例を示すフローチャートである。 本実施形態に係るシートベルト装置の動作制御の第2の例を示すフローチャートである。 本実施形態に係るシートベルト装置の動作制御の第3の例を示すフローチャートである。 本実施形態におけるシートベルト装置10の動作制御での補正制御の実施例を説明する。 目標ベルト引き込み量の補正係数の値の変化を示すグラフである。 決定された目標電流(Itarget)に基づきその後のシートベルトの引き量の決め方を説明するためのフローチャートである。 モータ通電量における変化量の上限値を決める第1の例を示すフローチャートである。 モータ通電量における変化量の上限値を決める第2の例を示すフローチャートである。
符号の説明
10 シートベルト装置
11 乗員
12 座席
13 ベルト
16 リトラクタ
22 ベルトリール
23 モータ
25 巻取り位置検知部
26 制御装置(CPU)
60 車両走行状態検知ユニット
71 急転舵判定部
72 横すべり判定部
73 シートベルト装置制御部
73a 回転角速度検出手段
73b 回転量検出手段

Claims (4)

  1. ベルトを巻回したベルトリールを駆動するモータと、
    車両の走行状態の変化を検知して前記モータの作動を指示する作動信号を出力するトリガー手段と、
    前記車両に作用する横加速度を検知する横加速度検知手段と、
    前記車両のスリップ状態量を検知するスリップ状態検知手段と、
    前記トリガー手段が出力した前記作動信号を受けたとき、前記横加速度検知手段が出力する前記横加速度に係る信号、および前記スリップ状態検知手段が出力する前記スリップ状態量に係る信号に基づいて前記モータを作動させる通電量を制御する制御手段と、
    を備え
    前記制御手段は、前記横加速度検知手段の出力信号で得られる前記横加速度に基づいて決定される第1の電流量と、前記スリップ状態検知手段の出力信号で得られる前記スリップ状態量に基づいて決定される第2の電流量とを求め、前記の第1と第2の電流量を比較して前記の第1と第2の電流量のうち小さい値の電流量を選択することにより前記モータを作動させる前記通電量を決定することを特徴とする車両のシートベルト装置。
  2. 前記制御手段は、前記モータへの前記通電量の変化幅に上限値を設定することを特徴とする請求項1に記載の車両のシートベルト装置。
  3. 前記ベルトリールは、前記車両の左右の側部に設けられた複数の座席に対して個別に設けられた複数であり、
    前記モータは、前記複数のベルトリールを個別に駆動するように複数であり、
    前記制御手段は、前記複数のモータへの通電量をそれぞれ独立に制御することを特徴とする請求項1または2に記載の車両のシートベルト装置。
  4. 前記制御手段は、前記車両の舵角に応じて前記モータへの通電量を補正することを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の車両のシートベルト装置。
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