JP4291487B2 - ソリッドゴルフボール - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、優れた反発性能および飛行性能を有し、かつ良好な打球感を有するソリッドゴルフボールに関する。
【0002】
【従来の技術】
ゴルフボールには大きく分けて、耐久性および飛距離に優れるソリッドゴルフボールとコントロール性能および打球感に優れる糸巻きゴルフボールがある。前者のソリッドゴルフボールには、コアをカバー材で被覆したツーピースゴルフボールをはじめとし、コアとカバーの間に1層以上の中間層を介在させた多層構造を有するゴルフボールがある。
【0003】
上記ソリッドゴルフボールのコアには通常、基材ゴムとしてのポリブタジエンに、α,β‐不飽和カルボン酸の金属塩および有機過酸化物を配合したゴム組成物の加硫成形物が用いられている。上記ゴム組成物において、α,β‐不飽和カルボン酸の金属塩は、遊離基開始剤としての有機過酸化物によってポリブタジエン主鎖にグラフトされ、共架橋剤として働く。このようなゴム組成物の加硫成形物は三次元架橋構造を形成するため、コアが適度な硬さと耐久性を有し、このコアを用いたソリッドゴルフボールは優れた耐久性と良好な反発性能、飛行性能を示すことも知られている。
【0004】
しかしながら、このようなソリッドゴルフボールは、従来の糸巻きゴルフボ-ルと比較すると、打球感が著しく硬く、アプローチショットでのコントロール性に劣っていた。そこで打球感を改良する試みとして、コアの硬度を低く軟らかくすることが行われてきた。しかしながら、打球感は改良されるが、反発性能が低下するため十分な飛距離が得られていない。また、コントロール性を改良する試みとして、カバーを軟質化することが提案された(特開平7‐514O6号公報)。しかしながら、スピン性能は向上するがカバー自体の反発性能が低下して、ゴルフボールとして満足される飛行性能が得られていないという問題があった。
【0005】
そこで、従来のコア用ゴム組成物に種々の有機硫黄化合物を配合することによって、ソリッドゴルフボールの反発性能および打球感を両立させる試みがなされている(特開平10‐244O19号公報、特許第2778229号公報、特許第2669051号公報)。しかしながら、未だ反発性能と打球感の両立という観点で満足のいくものは得られておらず、更に打球感の向上と共に、飛行性能に優れたゴルフボールヘの要求がますます高まりつつある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のような従来のゴルフボールの有する問題点を解決し、優れた反発性能および飛行性能を有し、かつ良好な打球感を有するソリッドゴルフボールを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記目的を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、ポリブタジエン等の基材ゴムに共架橋剤としてのα,β‐不飽和カルボン酸またはその金属塩、有機過酸化物、充填材等を含有するコア用のゴム組成物に、ベンゼン環に1つ以上のシアノ基を有する特定の有機硫黄化合物を用いることによって、優れた反発性能および飛行性能を有し、かつ良好な打球感を有するソリッドゴルフボールが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、1層以上のコアと該コア上に被覆形成された1層以上のカバーから成るソリッドゴルフボールにおいて、
該コアの少なくとも1層が、
(a)基材ゴム、(b)共架橋剤、(c)有機過酸化物、(d)充填材、および
(e)(i)以下の式(1):
【化4】
(式中、R1〜R5は、それぞれ独立して、Hまたはシアノ基を表し、少なくとも1つはシアノ基である)、
(ii)式(2):
【化5】
(式中、R6〜R15は、それぞれ独立して、Hまたはシアノ基を表し、R6〜R10の少なくとも1つおよびR11〜R15の少なくとも1つはシアノ基であり、nは1以上の整数である)、および
(iii)式(3):
【化6】
(式中、R16〜R25は、それぞれ独立して、Hまたはシアノ基を表し、R16〜R20の少なくとも1つおよびR21〜R25の少なくとも1つはシアノ基であり、Mは2価の金属原子を表す)
で表される化合物から成る群から選択される1種または2種以上の有機硫黄化合物
を含有するゴム組成物を加硫成形して成るソリッドゴルフボールに関する。
【0009】
前述のように、通常のソリッドゴルフボールのコアに用いられるゴム組成物に有機硫黄化合物を用いると、S‐S間の結合またはC‐S間の結合が加硫条件下で解離してラジカルが生成しやすく、生じたラジカルがブタジエン主鎖などに影響を及ぼす。つまり、ゴムと共架橋剤との間の架橋系に影響を及ぼして、コアを硬くすることなく、即ち良好な打球感を確保しつつ、反発性能を向上させるものと考えられる。
【0010】
本発明では、そのような有機硫黄化合物の中でも、前述の式(1)〜(3)で表されるような置換基としてのシアノ基をベンゼン環に1つ以上有する特定の有機硫黄化合物を用いるが、シアノ基は三重結合を有するため、アクリル酸亜鉛等の共架橋系の金属と相互作用を及ぼし、上記のような有機硫黄化合物による良好な打球感を確保しつつ、反発性能を向上させる効果が更に増大するものと考えられる。
【0011】
本発明のソリッドゴルフボールでは1層以上のコアの上に1層以上のカバーを被覆する。コアは基本的に、基材ゴム、共架橋剤、有機過酸化物、充填材、ベンゼン環に1つ以上のシアノ基を有する前述のような有機硫黄化合物等を含有するゴム組成物を、通常のソリッドコアに用いられる方法、条件を用いて加熱圧縮加硫することにより得られる。
【0012】
本発明に用いられる基材ゴムとしては、従来からソリッドゴルフボールに用いられている天然ゴムおよび/または合成ゴムが用いられ、特にシス‐1,4‐結合少なくとも40%以上、好ましくは80%以上を有するいわゆるハイシスポリブタジエンゴムが好ましく、所望により上記ポリブタジエンゴムには、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、スチレンポリブタジエンゴム、エチレン‐プロピレン‐ジエンゴム(EPDM)等を配合してもよい。
【0013】
共架橋剤としては、アクリル酸またはメタクリル酸等のような炭素数3〜8個のα,β‐不飽和カルボン酸、またはその亜鉛、マグネシウム塩等の一価または二価の金属塩が挙げられるが、高い反発性を付与するアクリル酸亜鉛が好適である。配合量は基材ゴム100重量部に対して、15〜45重量部、好ましくは20〜35重量部である。45重量部より多いと硬くなり過ぎて打球感が悪くなり、15重量部未満では、適当な硬さを得るために有機過酸化物の配合量を増加する必要があり、高い反発性が得られない。
【0014】
有機過酸化物は架橋剤または硬化剤として作用し、例えばジクミルパーオキサイド、1,1‐ビス(t‐ブチルパーオキシ)‐3,3,5‐トリメチルシクロヘキサン、2,5‐ジメチル‐2,5‐ジ(t‐ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ‐t‐ブチルパーオキサイドが挙げられ、ジクミルパーオキサイドが好適である。配合量は、基材ゴム100重量部に対して、0.2〜5.0重量部、好ましくは1.0〜2.5重量部である。0.2重量部未満では軟らかくなり過ぎて高い反発性が得られず、5.0重量部を越えると適当な硬さを得るために共架橋剤の配合量を減少する必要があり、高い反発性が得られない。かかる有機過酸化物は、熱により分解してラジカルを生じ、上記共架橋剤と基材ゴムとの間の架橋度を高めて反発性を向上させるものである。
【0015】
充填材は、主として最終製品として得られるゴルフボールの比重を1.0〜1.5の範囲に調整するための比重調整剤として配合されるが、ゴルフボールのコアに通常配合されるものであればよく、例えば無機充填材(具体的には、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム)、高比重金属粉末(例えば、タングステン粉末、モリブデン粉末等)およびそれらの混合物が挙げられる。特に好ましいのは、加硫助剤としての機能も発揮する酸化亜鉛である。酸化亜鉛を用いる場合、配合量は、基材ゴム100重量部に対して、3〜30重量部、好ましくは10〜25重量部であり、30重量部を超えると適切な硬さにするために上記ポリアクリル酸亜鉛等の共架橋剤の配合量を減少する必要があり、高い反発性が得られなくなる。3重量部未満では上記のような比重調整が困難となり、ボール重量も小さくなり過ぎる。
【0016】
本発明に用いられる有機硫黄化合物としては、
(i)以下の式(1):
【化7】
(式中、R1〜R5は、それぞれ独立して、Hまたはシアノ基を表し、少なくとも1つはシアノ基である)、
(ii)式(2):
【化8】
(式中、R6〜R10およびR11〜R15は、それぞれ独立して、Hまたはシアノ基を表し、R6〜R10の少なくとも1つおよびR11〜R15の少なくとも1つはシアノ基であり、nは1以上の整数である)、および
(iii)式(3):
【化9】
(式中、R16〜R20およびR21〜R25は、それぞれ独立して、Hまたはシアノ基を表し、R16〜R20の少なくとも1つおよびR21〜R25の少なくとも1つはシアノ基であり、Mは2価の金属原子を表す)
で表される化合物から成る群から選択される1種または2種以上の有機硫黄化合物が挙げられる。
【0017】
上記式(1)で表される有機硫黄化合物の例示としては、シアノベンゼンチオール、ジシアノベンゼンチオール、トリシアノベンゼンチオール、テトラシアノベンゼンチオール、ペンタシアノベンゼンチオールが挙げられる。上記式(2)で表される有機硫黄化合物の例示としては、ビス(シアノフェニル)ジスルフィド、ビス(ジシアノフェニル)ジスルフィド、ビス(トリシアノフェニル)ジスルフィド、ビス(テトラシアノフェニル)ジスルフィド、ビス(ペンタシアノフェニル)ジスルフィド等が挙げられる。上記式(3)で表される有機硫黄化合物の例示としては、シアノベンゼンチオール亜鉛塩、ジシアノベンゼンチオール亜鉛塩、トリシアノベンゼンチオール亜鉛塩、テトラシアノベンゼンチオール亜鉛塩、ペンタシアノベンゼンチオール亜鉛塩が挙げられる。
【0018】
上記有機硫黄化合物の配合量は、基材ゴム100重量部に対して、0.05〜3.0重量部、好ましくは0.1〜2.0重量部である。0.05重量部未満では反発性を向上する効果が十分に発揮できない。3.0重量部を越えると圧縮変形量が大きくなって反発性が低下する。
【0019】
更に本発明のゴルフボールのコアには、老化防止剤またはしゃく解剤、その他ソリッドゴルフボールのコアの製造に通常使用し得る成分を適宜配合してもよい。尚、老化防止剤は、基材ゴム100重量部に対して、0.2〜0.5重量部が好ましい。
【0020】
コアは前述のゴム組成物を、混練ロール等の適宜の混練機を用いて均一に混練し、金型内で加硫成形することにより得ることができる。この際の条件は特に限定されないが、通常は130〜240℃、圧力2.9〜11.8MPa、15〜60分間で行われる。
【0021】
本発明のゴルフボールのコアは初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1275Nを負荷したときまでの変形量2.0〜6.0mm、好ましくは2.4〜5.1mm、より好ましくは3.1〜4.6mmを有することが望ましい。2.0mmより小さいとコアが硬くなり過ぎて、得られたゴルフボールの打球感が悪くなり、6.0mmより大きいとコアが軟らかくなり過ぎて、得られたゴルフボールの耐久性が低下し、また反発が悪くなり飛距離が低下する。
【0022】
本発明では、コアの直径は32.8〜40.8mm、好ましくは33.6〜40.0mmであることが望ましい。32.8mmより小さいと反発性が低下して飛距離が低下し、40.8mmより大きいとカバーが薄くなり過ぎて、耐久性が低下する。
【0023】
本発明のゴルフボールに用いられるコアは、単層構造であっても2層以上の多層構造であってもよいが、上記のような配合を有するコア部分の体積がコア全体の30%以上、好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上、更に好ましくは100%であるように設定することが好ましい。上記のようにして得られたコア上には、次いでカバーを被覆する。
【0024】
本発明のゴルフボールに用いられるカバーは、単層構造であっても2層以上の多層構造であってもよい。本発明のカバーは熱可塑性樹脂、特に通常ゴルフボールのカバーに用いられるアイオノマー樹脂を基材樹脂として含有する。上記アイオノマー樹脂としては、エチレンとα,β‐不飽和カルボン酸との共重合体中のカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和したもの、またはエチレンとα,β‐不飽和カルボン酸とα,β‐不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体中のカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和したものである。上記のα,β‐不飽和カルボン酸としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、クロトン酸等が挙げられ、特にアクリル酸とメタクリル酸が好ましい。また、α,β‐不飽和カルボン酸エステル金属塩としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸等のメチル、エチル、プロピル、n‐ブチル、イソブチルエステル等が用いられ、特にアクリル酸エステルとメタクリル酸エステルが好ましい。上記エチレンとα,β‐不飽和カルボン酸との共重合体中や、エチレンとα,β‐不飽和カルボン酸とα,β‐不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体中のカルボキシル基の少なくとも一部を中和する金属イオンとしては、ナトリウム、カリウム、リチウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、バリウム、アルミニウム、錫、ジルコニウム、カドミウムイオン等が挙げられるが、特にナトリウム、亜鉛、マグネシウムイオンが反発性、耐久性等からよく用いられ好ましい。
【0025】
上記アイオノマー樹脂の具体例としては、それだけに限定されないが、ハイミラン1555、1557、1605、1652、1702、1705、1706、1707、1855、1856(三井デュポンポリケミカル社製)、サーリン8945、サーリン9945、サーリンAD8511、サーリンAD8512、サーリンAD8542(デュポン社製)、IOTEK 7010、8000(エクソン(Exxon)社製)等を例示することができる。これらのアイオノマーは、上記例示のものをそれぞれ単独または2種以上の混合物として用いてもよい。
【0026】
更に、本発明のカバーの好ましい材料の例としては、上記のようなアイオノマー樹脂のみであってもよいが、アイオノマー樹脂と熱可塑性エラストマーやジエン系ブロック共重合体等の1種以上とを組合せて用いてもよい。上記熱可塑性エラストマーの具体例として、例えば東レ(株)から商品名「ペバックス」で市販されている(例えば、「ペバックス2533」)ポリアミド系熱可塑性エラストマー、東レ・デュポン(株)から商品名「ハイトレル」で市販されている(例えば、「ハイトレル3548」、「ハイトレル4047」)ポリエステル系熱可塑性エラストマー、武田バーディシュ(株)から商品名「エラストラン」で市販されている(例えば、「エラストランET880」)ポリウレタン系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
【0027】
上記ジエン系ブロック共重合体は、ブロック共重合体または部分水添ブロック共重合体の共役ジエン化合物に由来する二重結合を有するものである。その基体となるブロック共重合体とは、少なくとも1種のビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックAと少なくとも1種の共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBとから成るブロック共重合体である。また、部分水添ブロック共重合体とは、上記ブロック共重合体を水素添加して得られるものである。ブロック共重合体を構成するビニル芳香族化合物としては、例えばスチレン、α‐メチルスチレン、ビニルトルエン、p‐t‐ブチルスチレン、1,1‐ジフェニルスチレン等の中から1種または2種以上を選択することができ、スチレンが好ましい。また、共役ジエン化合物としては、例えばブタジエン、イソプレン、1,3‐ペンタジエン、2,3‐ジメチル‐1,3‐ブタジエン等の中から1種または2種以上を選択することができ、ブタジエン、イソプレンおよびこれらの組合せが好ましい。上記ジエン系ブロック共重合体の具体例としては、例えばダイセル化学工業(株)から商品名「エポフレンド」市販されているもの(例えば、「エポフレンドA1010」)が挙げられる。
【0028】
上記の熱可塑性エラストマーやジエン系ブロック共重合体等の配合量は、カバー用の基材樹脂100重量部に対して、0〜60重量部、好ましくは10〜40重量部である。60重量部より多いとカバーが軟らかくなり過ぎて反発性が低下したり、またアイオノマー樹脂との相溶性が悪くなって耐久性が低下しやすくなる。
【0029】
本発明に用いられるカバーには、上記樹脂以外に必要に応じて、コアに用いたものと同様の充填材や、種々の添加剤、例えば二酸化チタン等の顔料、分散剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤等を添加してもよい。
【0030】
上記カバーを被覆する方法についても、特に限定されるものではなく、通常のカバーを被覆する方法で行うことができる。カバー用組成物を予め半球殻状のハーフシェルに成形し、それを2枚用いてコアを包み、130〜170℃で1〜5分間加圧成形するか、または上記カバー用組成物を直接コア上に射出成形してコアを包み込む方法が用いられる。
【0031】
上記カバーの厚さは、1.0〜5.0mm、好ましくは1.4〜4.6mmであり、より好ましくは1.4〜2.5mmである。1.0mmより小さいと薄くなり過ぎて耐久性が低下し、反発性能も低下し、5.0mmより大きいと打球感が悪くなる。
【0032】
カバー成形時に、必要に応じて、ボール表面にディンプルを形成し、また、カバー成形後、ペイント仕上げ、スタンプ等も必要に応じて施し得る。
【0033】
【実施例】
次に、本発明を実施例により更に詳細に説明する。但し、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0034】
コアの作製
(実施例1〜9および比較例1〜6)
以下の表1〜2(実施例)および表3(比較例)に示した配合のコア用ゴム組成物を混練ロールにより混練し、160℃で30分間金型内で加熱プレスすることにより直径38.4mmのコアを得た。得られたコアの圧縮変形量および反発係数を測定し、その結果を表5〜6(実施例)および表7(比較例)に示した。
【0035】
(実施例10)
(i)内層コア用球状加硫成形物の作製
以下の表2に示した配合の内層コア用ゴム組成物を混練ロールにより混練し、160℃で25分間金型内で加熱プレスすることにより直径28.0mmの内層コア用球状加硫成形物を得た。
(ii)中間層コア用半球殻状加硫成形物の作製
以下の表2に示した配合の内層コア用ゴム組成物を混練ロールにより混練し、中子部分の外径が(i)で作製した内層コア用球状加硫成形物の直径に等しい中子金型内で、160℃で2分間加熱プレスすることによって、外層コア用の半加硫半球殻状成形物を得た。
【0036】
(iii)2層コアの作製
上記(i)で作製した内層コア用球状加硫成形物を、(ii)で作製した2つの外層コア用の半加硫半球殻状成形物で挟んで、金型内で160℃で25分間加熱プレスすることによって、直径38.2mmを有する2層コアを作製した。得られた2層コアの圧縮変形量および反発係数を測定し、その結果を表6(実施例)に示した。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】
【表3】
【0040】
(注1)商品名、JSR(株)製のハイシスポリブタジエンゴム
【0041】
カバー用組成物の調製
以下の表3に示すカバー用配合材料を二軸混練押出機によりミキシングし、ペレット状のカバー用組成物を得た。押出条件は、
スクリュー径 45mm
スクリュー回転数 200rpm
スクリューL/D 35
であり、配合物は押出機のダイの位置で200〜260℃に加熱された。
【0042】
【表4】
【0043】
(注2)商品名、三井デュポンポリケミカル(株)製の亜鉛イオン中和エチレン‐メタクリル酸共重合体系アイオノマー樹脂
(注3)商品名、三井デュポンポリケミカル(株)製のナトリウムイオン中和エチレン‐メタクリル酸共重合体系アイオノマー樹脂
(注4)商品名、三井デュポンポリケミカル(株)製のナトリウムイオン中和エチレン‐メタクリル酸共重合体系アイオノマー樹脂
【0044】
実施例1〜10および比較例1〜6
得られたカバー用組成物を予め半球殻状のハーフシェルに成形し、それを2枚用いてコアを包み、加圧成形することによりカバー厚さ2.3mmのカバー層を形成し、表面にペイントを塗装して、直径42.8mmを有するゴルフボールを得た。得られたゴルフボールの飛距離を測定し、打球感を評価し、その結果を以下の表5〜6(実施例)および表7(比較例)に示した。試験方法は以下の通り行った。
【0045】
(試験方法)
▲1▼コア圧縮変形量
コアに初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1275Nを負荷したときまでの変形量を測定した。
【0046】
▲2▼コア反発係数
各ゴルフボールに198.4gの金属製円筒物を40m/秒の速度で衝突させ、衝突前後の上記円筒物およびゴルフボールの速度を測定し、それぞれの速度および重量から各ゴルフボールの反発係数を算出した。測定は各ゴルフボールについて12個ずつ行って、その平均値を各ゴルフボールの反発係数とした。
【0047】
▲3▼飛距離
ツルーテンパー社製スイングロボットにメタルヘッド製ウッドl番クラブ(W#1、ドライバー)を取付け、ヘッドスピード45m/秒に設定して各ゴルフボールを打撃し、落下点までの飛距離(キャリー)を測定した。測定は各ゴルフボールについて12個ずつ行って、その平均値を各ゴルフボールの結果とした。
【0048】
▲4▼打球感
ゴルファー10人により、ウッド1番クラブ(ドライバー、W#1、住友ゴム工業(株)製のニューブリード・ツアーフォージド、ロフト角8.5°)を用いた実打テストを行い、打撃時の衝撃の大きさにより評価し、最も多い評価を各ゴルフボールの打球感とした。判定基準は以下の通りとした。
判定基準
◎ … 打撃時の衝撃が非常に小さくて打球感が非常にソフトで良好である
○ … 打撃時の衝撃が小さくて打球感がソフトで良好である
△ … 打撃時の衝撃が普通である
× … 打撃時の衝撃が大きくて打球感が悪い
【0049】
【表5】
【0050】
【表6】
【0051】
【表7】
【0052】
以上の結果から、実施例1〜10および比較例1〜6について、コアの圧縮変形量(X軸)と反発係数(Y軸)との関係をグラフ化したものが図1である。図1において、X軸方向、即ちグラフ中で右へいくほど、圧縮変形量が大きくなり、打撃時の衝撃が小さくなって打球感に優れたゴルフボールであることを示す。また、Y軸方向、即ちグラフ中で上へいくほど、反発係数が大きくなり、飛距離の向上したゴルフボールであることを示す。従って、グラフ中で右上へいくほど、打球感と反発性(飛距離)に優れたゴルフボールである。図から明らかなように、コア用ゴム組成物に本発明のベンゼン環に1つ以上のシアノ基を有する特定の有機硫黄化合物を含有する実施例1〜10はすべて、上記有機硫黄化合物を含有しない比較例1〜6のゴルフボールに比べて、プロットがグラフ中で右上の領域にある。
【0053】
一般にゴルフボールは、要求される性能に応じて、圧縮変形量の値が様々に設定される。しかしながら、図1では、どのような圧縮変形量値を有する場合でも、実施例は比較例に比べて反発係数が大きくなっている。つまり、同等の圧縮変形量(打球感)を有するゴルフボールでは、実施例のゴルフボールの方が反発性が優れている。言い換えると、同等の反発性(飛距離)を有するゴルフボールでは、実施例のゴルフボールの方が圧縮変形量が大きく、打球感が良好である。これを実証するため、同等の反発係数を有する実施例1、7および比較例6、並びに同等の圧縮変形量を有する実施例1、7および比較例5について打球感を評価し、その結果を以下の表8にコアの圧縮変形量と反発係数およびボールの飛距離と共に示す。試験方法は前述の通りとした。
【0054】
【表8】
【0055】
表8から明らかなように、実施例1、7および比較例6のゴルフボールは反発係数は同等であるが、圧縮変形量が非常に大きな実施例1および7のゴルフボールの方が比較例6のゴルフボールより、打球感が非常に良好である。また、実施例1、7および比較例5のゴルフボールは圧縮変形量は同等であり、打球感も同等であるが、実施例1および7のゴルフボールの方が比較例5のゴルフボールより、反発係数および飛距離が非常に大きな値を示している。
【0056】
【発明の効果】
本発明のソリッドゴルフボールは、コア用のゴム組成物に、ベンゼン環に1つ以上のシアノ基を有する特定の有機硫黄化合物を用いることによって、優れた反発性能および飛行性能を有し、かつ打球感を向上させ得たものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のゴルフボールのコアの圧縮変形量(X軸)と反発係数(Y軸)との関係を表すグラフ図である。
Claims (5)
- 1層以上のコアと該コア上に被覆形成された1層以上のカバーから成るソリッドゴルフボールにおいて、
該コアの少なくとも1層が、
(a)基材ゴム、(b)共架橋剤、(c)有機過酸化物、(d)充填材、および
(e)(i)以下の式(1):
(ii)式(2):
(iii)式(3):
で表される化合物から成る群から選択される1種または2種以上の有機硫黄化合物
を含有するゴム組成物を加硫成形して成るソリッドゴルフボール。 - 前記コア用のゴム組成物が、基材ゴム100重量部に対して、前記有機硫黄化合物0.05〜3重量部、共架橋剤15〜45重量部、有機過酸化物0.2〜5重量部および充填材2〜30重量部を含有する請求項1記載のゴルフボール。
- 前記基材ゴムがシス‐1,4‐結合40%以上を有するポリブタジエンゴムである請求項1または2のいずれか1項記載のゴルフボール。
- 前記有機硫黄化合物が、ペンタシアノチオフェノール亜鉛塩および2,4,6‐トリシアノチオフェノールから成る群から選択される1種または2種である請求項1記載のゴルフボール。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2000042757A JP4291487B2 (ja) | 2000-02-21 | 2000-02-21 | ソリッドゴルフボール |
Applications Claiming Priority (1)
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