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JP4266623B2 - ハードコートフィルム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はハードコートフィルムに関する。さらに詳しくは、本発明は高硬度を有し、耐擦傷性に優れ、かつ低収縮性(硬化収縮率、熱湿収縮率が低い)・低カール性を有する上、基材フィルムとハードコート層との屈折率差が小さく、干渉縞の発生が抑制され、例えば偏光板用やタッチパネル用として、あるいは各種ディスプレイの保護フィルムなどとして好適なハードコートフィルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、液晶表示装置を備えた様々な機器、例えばラップトップ型コンピュータ、ビデオカメラ、携帯電話などの民生用機器を始め、自動車や航空機のインパネ用ディスプレイ、液晶プロジェクターなどが普及してきており、これに伴い、カラー表示化、高輝度化、耐久性の向上などが要求されている。
この液晶表示装置は、入射した直線偏光を液晶層のもつ電気光学特性で変調し、出射側の偏光板で透過率の強弱や着色の信号として可視化する装置である。すなわち、偏光をその表示の原理に用いているため、偏光板は必須の部材である。該偏光板は自然光を直線偏光に変える素子であり、現在、特に液晶表示装置用に量産実用化されている偏光板の多くは、ポリビニルアルコールフィルムからなる基材フィルムに、ヨウ素や二色性染料などの二色性材料を、染色・吸着させ、延伸配向させてなる偏光フィルムの両面あるいは片面に、光学的に透明で、かつ機械的強度を有する保護膜を貼り合わせたものが用いられている。そして、上記保護膜としては、通常トリアセチルセロルースフィルムが使用される。
液晶表示装置においては、前記偏光板は、液晶層の出射側以外に、通常入射側にも設けられている。該偏光板が、液晶表示装置を始め、各種表示装置の表面側に設けられる場合、特に十分な硬度が要求され、また耐汚染性を有することが望ましい。
一方、近年、市場が増大している携帯用の情報端末への入力装置として、タッチパネルが利用されている。このタッチパネルは、ディスプレイ画面を直接指、ペンなどで触れることによってデータを入力する装置である。
上記タッチパネルは、現在約9割が抵抗膜方式を採用している。該抵抗膜方式のタッチパネルは、一般に透明プラスチック基材の片面に錫ドープ酸化インジウム(ITO)膜などの透明導電性薄膜を積層したタッチ側プラスチック基板と、ガラスなどの透明基材の片面にITO膜などの透明導電性薄膜を積層したディスプレイ側透明基板とを、絶縁スペーサを介して、各透明導電性薄膜が向き合うように対向配置させた構造を有している。
そして、入力は、ペンや指でタッチ側プラスチック基板のタッチ入力面(透明導電性薄膜側とは反対側の面をいう。以下、同様)を押圧し、タッチ側プラスチック基板の透明導電性薄膜と、ディスプレイ側透明基板の透明導電性薄膜とを接触させて行う。
しかしながら、このような抵抗膜方式タッチパネルにおいては、入力操作を繰り返すことにより、すなわちタッチ側プラスチック基板の透明導電性薄膜とディスプレイ側透明基板の透明導電性薄膜との接触を繰り返すことにより、タッチ側プラスチック基板の透明導電性薄膜が摩耗したり、クラックが発生したり、さらには基材から剥離してしまうなどの問題が生じる。そこで、このような問題を解決するために、一般に透明プラスチック基板と透明導電性薄膜との間に、合成樹脂からなるハードコート層を設けることが行われている。また、該透明プラスチック基板の透明導電性薄膜とは反対側の表面にもハードコート層を設けることが、よく行われている。
他方、PDP(プラズマディスプレイパネル)、CRT(ブラウン管)、LCD(液晶表示装置)、ELD(エレクトロルミネッセンス素子)などの各種ディスプレイにおいては、画面に外部から光が入射し、この光が反射して表示画像を見ずらくすることがあり、特に近年、フラットパネルディスプレイの大型化に伴い、上記問題を解決することが、ますます重要な課題となってきている。
このような問題を解決するために、これまで種々のディスプレイに対して、様々な反射防止処置や防眩処置がとられている。その一つとして反射防止フィルムを各種のディスプレイに使用することが行われている。この反射防止フィルムには、反射防止性能と共に、ハードコート性能、すなわち表面の耐擦傷性が要求されている。
該反射防止フィルムは、従来、蒸着やスパッタリングなどのドライプロセス法により、基材フィルム上に、低屈折率の物質(MgF2)を薄膜化する方法や、屈折率の高い物質[ITO、TiO2など]と屈折率の低い物質(MgF2、SiO2など)を交互に積層する方法などで作製されている。しかしながら、このようなドライプロセス法で作製された反射防止フィルムは、製造コストが高くつくのを免れないという問題があった。
そこで、近年、ウェットプロセス法、すなわちコーティングにより反射防止性能を有するハードコートフィルムを作製することが試みられている。例えば、耐候性に優れるアクリル系樹脂フィルムを基材として用い、これに電離放射線感応型樹脂組成物の硬化層を設けたのち、反射防止処理を施し、携帯電話やPDA(携帯情報端末)、ビデオカメラ等の液晶表示装置などの保護フィルムとして用いられている。
このように、偏光板用やタッチパネル用として、あるいはハードコート層に反射防止処理などを施して、各種ディスプレイの表面保護フィルム等として用いられるハードコートフィルムにおいては、表面硬度が高くて耐擦傷性に優れると共に、干渉縞の発生が少なく、かつ低カール性が要求される。
しかしながら、ハードコートフィルムは、従来、一般に基材フィルム上に、主として多官能性アクリレート系モノマーや、アクリレート系プレポリマーを構成成分する電離放射線感応型樹脂組成物の硬化層を設けることにより、作製されており、この場合、硬化収縮や熱湿収縮が大きく、得られるハードコートフィルムにカールが発生しやすいという問題があった。また、通常基材フィルムの屈折率は考慮されず、したがって、基材フィルムとハードコート層との屈折率差により、干渉縞が生じることがあるといった問題もあった。
ハードコート層の屈折率をある範囲に選定した技術として、例えばハードコート層上に反射防止膜が設けられた反射防止材料が開示されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、この技術においては、良好な反射防止機能を付与するために、ハードコート層上に設けられる反射防止膜の屈折率を考慮して、ハードコート層の高屈折率化(屈折率1.55〜1.70)を図ったものであり、基材フィルムの屈折率を考慮してハードコート層の屈折率を選定したものではない。
【特許文献1】
特開2000−171603号公報
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような事情のもとで、高硬度を有し、耐擦傷性に優れ、かつ低収縮性(硬化収縮率、熱湿収縮率が低い)・低カール性を有する上、基材フィルムとハードコート層との屈折率差が小さく(干渉縞が発生しにくい)、偏光板用やタッチパネル用として、あるいは各種ディスプレイの保護フィルムなどとして好適なハードコートフィルムを提供することを目的としてなされたものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、基材フィルム上に、ハードコート層として電離放射線感応型樹脂組成物の硬化層を設けてなるハードコートフィルムにおいて、基材フィルムとして、屈折率がある値以下の透明プラスチックフィルムを用い、かつ電離放射線感応型樹脂組成物として、シリカゾルやラジカル重合性不飽和基含有有機化合物が結合したシリカ微粒子と、多官能性アクリレート系モノマーやアクリレート系プレポリマーを含む組成物を用いることにより、その目的を達成し得ることを見出した。
また、電離放射線感応型樹脂組成物にラジカル重合性不飽和基を有するシリコーン化合物を含有させることにより、前記性能に加え、さらに耐汚染性(汚れ除去性能)や低摩擦性が付与され、表面保護フィルムに用いる場合に、より一層好適なハードコートフィルムが得られることを見出した。
本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、
(1)屈折率1.52以下のトリアセチルセルロースフィルム、アクリル樹脂フィルム又は脂環式構造含有熱可塑性樹脂フィルムからなる透明プラスチックフィルムの少なくとも片面に、(A)シリカゾル及び/又はラジカル重合性不飽和基含有有機化合物が結合したシリカ微粒子と、(B)多官能性アクリレート系モノマー及びアクリレート系プレポリマーの中から選ばれる少なくとも1種、並びに(C)分子内にラジカル重合性不飽和基を有するシリコーン化合物とを含む電離放射線感応型樹脂組成物の硬化物からなる屈折率1.52以下のハードコート層を設け、ハードコート層と透明プラスチックフィルムの屈折率の差が0 . 026以下であることを特徴とするハードコートフィルム、
(2)ハードコート層中のシリカ含有量が20〜60重量%である第1項記載のハードコートフィルム、
)ハードコート層中の(C)成分含有量が0.05〜5重量%である第項又は第項記載のハードコートフィルム、及び
)ハードコート層の厚さが0.5〜30μmである第1項ないし第項のいずれかに記載のハードコートフィルム。
を提供するものである。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明のハードコートフィルムは、屈折率が1.52以下、好ましくは1.51以下の透明プラスチックフィルムの少なくとも片面に、電離放射線感応型樹脂組成物の硬化層を設けた積層フィルムである。
本発明のハードコートフィルムにおいて、基材フィルムとして用いられる透明プラスチックフィルムとしては、透明性を有し、かつ屈折率が1.52以下のものであればよく、特に制限されず、従来、光学用ハードコートフィルムの基材として使用されているものの中から、適宜選択して用いることができる。屈折率が1.52以下の透明プラスチックフィルムとしては、例えばトリアセチルセルロースフィルム(屈折率約1.48)、アクリル樹脂フィルム(屈折率約1.49)、さらには耐熱性の脂環式構造含有熱可塑性樹脂フィルム[例えば、JSR社製「アートン」(屈折率約1.51)など]等を用いることができる。
これらの透明プラスチックフィルムは、透明性、機械物性、光学特性などのバランスに優れ、偏光板やタッチパネル用として、あるいは各種ディスプレイの表面保護フィルムなどの光学用フィルムの基材として好ましく、特に耐熱性が要求される用途には、脂環式構造含有熱可塑性樹脂フィルムなどが好適である。
これらの透明プラスチックフィルムは、着色されていてもよいし、無着色のものでもよく、用途に応じて適宜選択すればよい。例えば液晶表示装置の保護用として用いる場合には、無色透明のフィルムが好適である。
これらの基材フィルムの厚さは特に制限はなく、状況に応じて適宜選定されるが、通常15〜300μm、好ましくは30〜250μmの範囲である。また、この透明プラスチックフィルムは、その表面に設けられる層との密着性を向上させる目的で、所望により片面又は両面に、酸化法や凹凸化法などにより表面処理を施すことができる。また、プライマー処理を施すこともできる。上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、クロム酸処理(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理などが用いられ、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法などが用いられる。これらの表面処理法は基材フィルムの種類に応じて適宜選ばれるが、一般にはコロナ放電処理法が効果及び操作性などの面から、好ましく用いられる。
【0006】
本発明のハードコートフィルムは、上記基材の透明プラスチックフィルムの少なくとも一方の面にハードコート層を有するものであって、該ハードコート層は、(A)シリカゾル及び/又はラジカル重合性不飽和基含有有機化合物が結合したシリカ微粒子と、(B)多官能性アクリレート系モノマー及びアクリレート系プレポリマーの中から選ばれる少なくとも1種と、所望により(C)分子内にラジカル重合性不飽和基を有するシリコーン化合物とを含む電離放射線感応型樹脂組成物からなる層に、電離放射線を照射することにより、該樹脂組成物を硬化させ、形成することができる。
なお、電離放射線感応型樹脂組成物とは、電磁波又は荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するもの、すなわち、紫外線又は電子線などを照射することにより、架橋、硬化する樹脂組成物を指す。
本発明における電離放射線感応型樹脂組成物においては、(A)成分として、シリカゾル及び/又はラジカル重合性不飽和基含有有機化合物が結合したシリカ微粒子が用いられる。ここで、シリカゾルとしては、平均粒径が0.005〜1μm程度のシリカ微粒子が、アルコール系やセロソルブ系の有機溶剤中にコロイド状態で懸濁してなるコロイダルシリカを好適に用いることができる。
一方、ラジカル重合性不飽和基含有有機化合物が結合したシリカ微粒子は、平均粒径0.005〜1μm程度のシリカ微粒子表面のシラノール基に、該シラノール基と反応し得る官能基を有するラジカル重合性不飽和基含有有機化合物を反応させることにより、得ることができる。
前記シラノール基と反応し得る官能基を有するラジカル重合性不飽和基含有有機化合物としては、例えば一般式[1]
【化1】
Figure 0004266623
[式中、R1は水素原子又はメチル基、R2はハロゲン原子又は
【化2】
Figure 0004266623
で示される基である。]
で表される化合物などが好ましく用いられる。
【0007】
このような化合物としては、例えばアクリル酸、アクリル酸クロリド、アクリル酸2−イソシアナ−トエチル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸2,3−イミノプロピル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランなど及びこれらのアクリル酸誘導体に対応するメタクリル酸誘導体を用いることができる。これらのアクリル酸誘導体やメタクリル酸誘導体は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
このようにして得られたラジカル重合性不飽和基含有有機化合物が結合したシリカ微粒子は、光硬化成分として、電離放射線の照射により架橋、硬化する。
この(A)成分は、ハードコート層の屈折率を低下させると共に、得られるハードコートフィルムの硬化収縮性及び熱湿収縮性を低下させ、これら収縮によるハードコートフィルムのカールの発生を抑制する効果を有している。該(A)成分の配合量は、使用する基材フィルムの屈折率に応じて選定されるが、通常シリカとして、形成されるハードコート層中に20〜60重量%の割合で含有するように選定することが好ましい。この含有量が20重量%未満ではハードコート層の屈折率を低下させる効果及びハードコートフィルムのカール発生抑制効果が十分に発揮されないおそれがあるし、60重量%を超えるとハードコート層の形成が困難になると共に、ハードコート層の硬度が低下する原因となる。ハードコート層の硬度、屈折率、形成性及びハードコートフィルムのカール抑制などを考慮すると、ハードコート層中のシリカのより好ましい含有量は20〜45重量%の範囲である。
本発明における電離放射線感応型樹脂組成物においては、(B)成分として多官能性アクリレート系モノマー及びアクリレート系プレポリマーの中から選ばれる少なくとも1種が用いられる。この(B)成分は、ハードコート層を形成する主要な光硬化成分である。
【0008】
多官能性アクリレート系モノマーとしては、例えば1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどを用いることができる。これらの多官能性アクリレート系モノマーは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
一方、アクリレート系プレポリマーとしては、例えばポリエステルアクリレート系、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリオールアクリレート系などを用いることができる。ここで、ポリエステルアクリレート系プレポリマーとしては、例えば多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、あるいは、多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。エポキシアクリレート系プレポリマーは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得ることができる。ウレタンアクリレート系プレポリマーは、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールとポリイソシアネートの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。さらに、ポリオールアクリレート系プレポリマーは、ポリエーテルポリオールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。これらのアクリレート系プレポリマーは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0009】
本発明においては、この(B)成分として、前記多官能性アクリレート系モノマーのみを用いてもよいし、前記アクリレート系プレポリマーのみを用いてもよく、また多官能性アクリレート系モノマーとアクリレート系プレポリマーを組み合わせて用いてもよい。
本発明における電離放射線感応型樹脂組成物においては、所望により(C)成分として、分子内にラジカル重合性不飽和基を有するシリコーン化合物を含有させることができる。この(C)成分は、光硬化成分であり、電離放射線の照射により架橋、硬化し、ハードコート層に耐汚染性や低摩擦性などを付与する作用を有している。
分子内にラジカル重合性不飽和基を有するシリコーン化合物としては、例えばポリオルガノシロキサン骨格に、エチレン基やプロピレン基等のアルキレン基などからなるスペーサを介して、(メタ)アクリロイルオキシ基が導入された化合物などを用いることができる。ここで、ポリオルガノシロキサンの好ましいものとしては、例えばポリジメチルシロキサン、ポリジフェニルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサンなどがある。
この分子内にラジカル重合性不飽和基を有するシリコーン化合物の具体例としては、一般式[2]
【化3】
Figure 0004266623
[式中、m及びnは1以上の整数を示し、Rは、式
【化4】
Figure 0004266623
(R1は水素原子又はメチル基である。)
で表される基を示す。]
で表される(メタ)アクリレート変性ポリジメチルシロキサン、あるいは、一般式[3]
【化5】
Figure 0004266623
[式中、Aはメチル基又は式
【化6】
Figure 0004266623
(R'は水素原子又はメチル基である)
で示される基、R1は水素原子又はメチル基、kは1以上の整数を示す。]
で表される片末端又は両末端に(メタ)アクリロイルオキシ基を有するポリジメチルシロキサンなどを例示することができる。
【0010】
本発明においては、この(C)成分として、前記化合物を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよく、その配合量は、ハードコート層中に0.05〜5重量%の範囲で含まれるように選定するのが好ましい。ハードコート層中の含有量が0.05重量%未満では耐汚染性や低摩擦性の付与効果が十分に発揮されないおそれがあるし、5重量%を超えると量の割には効果の向上がみられず、むしろハードコート層の硬度が低下する場合がある。ハードコート層中の該(C)成分のより好ましい含有量は、0.2〜2重量%の範囲である。
本発明における電離放射線感応型樹脂組成物には、本発明の目的が損なわれない範囲で、所望により単官能性アクリレート系モノマー、光重合開始剤、光増感剤、重合禁止剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、レベリング剤、消泡剤などの各種添加成分を含有させることができる。
ここで、単官能性アクリレート系モノマーとしては、例えばシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートなどの中から選ばれる少なくとも1種を用いることができる。これらの単官能性アクリレート系モノマーは、光硬化成分である。
光重合開始剤としては、ラジカル重合型に対して、従来用いられている公知のもの、例えばアセトフェノン類、ベンゾフェノン類、アルキルアミノベンゾフェノン類、ベンジル類、ベンゾイン類、ベンゾインエーテル類、ベンジルジメチルアセタール類、ベンゾイルベンゾエート類、α−アシロキシムエステル類などのアリールケトン系光重合開始剤、スルフィド類、チオキサントン類などの含硫黄系光重合開始剤、アシルジアリールホスフィンオキシドなどのアシルホスフィンオキシド類、アントラキノン類、その他光重合開始剤の中から、任意のものを、1種又は2種以上適宜選択して使用することができる。
なお、電子線硬化型の場合には、この光重合開始剤は用いなくてもよい。
【0011】
前記光重合開始剤の配合量は、全光硬化成分100重量部に対して、通常0.2〜10重量部、好ましくは0.5〜7重量部の範囲で選ばれる。
光増感剤としては、例えば第三級アミン類、p−ジメチルアミノ安息香酸エステル、チオール系増感剤などを用いることができる。なお、電子線硬化型の場合は、この光増感剤は、用いなくてもよい。
光増感剤の配合量は、全光硬化成分100重量部に対して、通常1〜20重量部、好ましくは2〜10重量部の範囲で選ばれる。
また、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤としては、従来公知のものの中から適宜選択して用いることができるが、特に分子内に(メタ)アクリロイル基などを有する反応型の酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤を用いるのが有利である。この場合、電離放射線の照射により形成されたポリマー鎖に、それぞれ酸化防止剤成分、紫外線吸収剤成分、光安定剤成分が結合する。したがって、経時による硬化層からの各成分の逸散が抑制されるので、長期間にわたって、それぞれの機能が発揮される。
本発明における電離放射線感応型樹脂組成物は、必要に応じ、適当な溶剤中に、前述の(A)成分、(B)成分及び必要に応じて用いられる(C)成分や各種添加成分を、それぞれ所定の割合で加え、溶解又は分散させることにより、調製することができる。
この際用いる溶剤としては、例えばヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、塩化メチレン、塩化エチレンなどのハロゲン化炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、1−メトキシ−2−プロパノールなどのアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、イソホロン、シクロヘキサノンなどのケトン、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル、エチルセロソルブなどのセロソルブ系溶剤などが用いられる。
このようにして調製された樹脂組成物の濃度、粘度としては、コーティング可能なものであればよく、特に制限されず、状況に応じて適宜選定することができる。
【0012】
次に、前記基材の透明プラスチックフィルムの少なくとも一方の面に、上記樹脂組成物を、従来公知の方法、例えばバーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法などを用いて、コーティングして塗膜を形成させ、乾燥後、これに電離放射線を照射して該塗膜を硬化させることにより、ハードコート層が形成される。
電離放射線としては、例えば紫外線や電子線などが用いられる。上記紫外線は、高圧水銀ランプ、ヒュージョンHランプ、キセノンランプなどで得られ、照射量は、通常100〜500mJ/cm2であり、一方電子線は、電子線加速器などによって得られ、照射量は、通常150〜350kVである。この電離放射線の中では、特に紫外線が好適である。なお、電子線を使用する場合は、重合開始剤を添加することなく、硬化膜を得ることができる。
このようにして形成されたハードコート層の厚さは0.5〜30μmの範囲が好ましい。この厚さが0.5μm未満ではハードコートフィルムの表面硬度が不十分となり、耐擦傷性が十分に発揮されないおそれがあるし、30μmを超えると硬化収縮率や熱湿収縮率が大きくなり、ハードコートフィルムにカールが発生しやすくなる。表面硬度及びカール発生の抑制などを考慮すると、該ハードコート層のより好ましい厚さは1〜20μmであり、特に2〜15μmの範囲が好ましい。
本発明のハードコートフィルムにおいては、該ハードコート層の屈折率は、1.52以下、好ましくは1.51以下である。この屈折率が1.52を超えると基材フィルムとハードコート層との屈折率差が大きくなって、光による干渉縞が発生しやすくなり、本発明の目的が達せられない。
【0013】
前記ハードコート層の硬度は、鉛筆硬度でH以上であるのが好ましく、鉛筆硬度でH以上であれば、ハードコートフィルムに必要な耐擦傷性を備えることができるが、耐擦傷性をより十分なものにするには、鉛筆硬度で2H以上のものが特に好適である。なお、鉛筆硬度の測定方法については、後で説明する。
本発明においては、必要により、前記ハードコート層の表面に、反射防止性を付与させるなどの目的で反射防止層、例えばシロキサン系被膜、フッ素系被膜などを設けることができる。この場合、該反射防止層の厚さは、0.05〜1μm程度が適当である。この反射防止層を設けることにより、太陽光、蛍光灯などによる反射から生じる画面の映り込みが解消される。なお、反射防止層の種類によっては、帯電防止性の向上を図ることができる。
本発明のハードコートフィルムにおいては、基材の透明プラスチックフィルムのハードコート層とは反対側の面に、被着体に貼着させるための粘着剤層を形成させることができる。この粘着剤層を構成する粘着剤としては、光学用途用のもの、例えばアクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤が好ましく用いられる。この粘着剤層の厚さは、通常5〜100μm、好ましくは10〜60μmの範囲である。
さらに、この粘着剤層の上に、必要に応じて剥離フィルムを設けることができる。この剥離フィルムとしては、例えばグラシン紙、コート紙、ラミネート紙などの紙及び各種プラスチックフィルムに、シリコーン樹脂などの剥離剤を塗付したものなどが挙げられる。この剥離フィルムの厚さについては特に制限はないが、通常20〜150μm程度である。
【0014】
【実施例】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、ハードコートフィルムの性能は、下記の方法に従って評価した。
(1)鉛筆硬度
JIS K 5400に準拠して、手かき法により測定した。
(2)耐擦傷性
スチールウール#0000でハードコートフィルムのコート層表面を擦りつけた際の変化を目視観察し、下記の3段階で評価した。
○:傷付かない。
△:少し傷付く。
×:傷付く。
(3)干渉縞評価
黒色板上に、ハードコート層面が上になるようにハードコートフィルムを置いて、3波長蛍光灯下で目視により、下記の5段階で干渉縞発生の程度を評価した。
5:干渉縞の発生なし。
4:僅かに干渉縞の発生が認められる。
3:少し干渉縞の発生が認められるが、実用的には問題ない。
2:干渉縞の発生がかなり認められる。
1:干渉縞の発生が著しく認められる。
なお、3以上で低干渉効果がある。
(4)カール値
試験用のハードコートフィルムを、100mm×100mmの正方形状に切断したサンプルを平坦なガラス板上に、ハードコート層が上になるように置いて、ハードコートフィルムの4つの角のガラス板からの距離(mm)を測定してその合計値(mm)をカール値(mm)とした。測定は、[1]ハードコートフィルムを切断した直後、[2]ハードコートフィルムを切断し80℃の乾燥環境下に24時間放置後、[3]ハードコートフィルムを切断し、60℃、相対湿度90%の環境下に24時間放置後に、各々行った。なお、カール値の測定は23℃、相対湿度50%の環境下で行った。
カール値の評価は、○は50mm未満、×は50mm以上であり、実用不可レベルであることを示す。
【0015】
(5)水の接触角
23℃、相対湿度50%の環境下において、ハードコート層表面に10μlの純水を滴下し、1分後の水の接触角を、接触角計[協和界面科学(株)製「CA−X型」]を用いて測定した。
なお、接触角90度以上で汚れ除去性能が確認される。
(6)ハードコート層の屈折率
JIS K 7142に準じてアッベ屈折率計を用いて測定した。
実施例1
(A)成分としてエチルセロソルブ溶剤に分散されたシリカゾル[触媒化成工業(株)製「OSCAL1632、粒径10〜20μm」、固形分30重量%]200重量部に、(B)成分としてウレタンアクリレートと多官能性アクリレートモノマーからなるハードコート剤[荒川化学工業(株)製「ビームセット575CB」、固形分100%、光重合開始剤含有]100重量部と、(C)成分としてラジカル重合性不飽和基を有するシリコーン化合物[共栄社化学(株)製「ライトプロコートAFC2000」、固形分100%]2重量部を加え、さらにトルエンと1−メトキシ−2−プロパノールとの重量比1:1の混合溶剤を加えて、固形分濃度30重量%の電離放射線感応型樹脂組成物を調製した。
次いで、透明プラスチックフィルム(基材フィルム)として厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルム[富士写真フィルム(株)製「T80UZ」、屈折率1.480]の片面に、硬化後の厚さが5μmになるように、上記樹脂組成物をマイヤーバーにて塗布し、80℃で1分間乾燥したのち、光量約230mJ/cm2の紫外線を照射してハードコート層を形成し、ハードコートフィルムを作製した。
ハードコート層中のシリカ含有量は37重量%であり、またハードコート層の屈折率は1.492であった。
このハードコートフィルムの性能を第1表に示す。
【0016】
実施例2
(A)成分としてラジカル重合性不飽和基含有有機化合物が結合したシリカ微粒子と、光重合開始剤を含むハードコート剤[JSR(株)製「デソライトZ7360」、固形分76重量%、シリカと有機化合物との重量比約60:40]100重量部に、(B)成分としてジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとの混合物[日本化薬(株)製「KAYANOVA DPHA」、固形分100%]30重量部、光重合開始剤[チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製「イルガキュア907」]1.5重量部及び(C)成分としてラジカル重合性不飽和基を有するシリコーン化合物「ライトプロコートAFC2000」(前出)2重量部を加え、さらにトルエンと1−メトキシ−2−プロパノールとの重量比1:1の混合溶剤を加えて、固形分濃度30重量%の電離放射線感応型樹脂組成物を調製した。
次いで、厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルム「T80UZ」(前出)の片面に、硬化後の厚さが5μmになるように、上記樹脂組成物をマイヤーバーにて塗布し、80℃で1分間乾燥したのち、光量約230mJ/cm2の紫外線を照射してハードコート層を形成し、ハードコートフィルムを作製した。
ハードコート層中のシリカ含有量42重量%であり、またハードコート層の屈折率は1.506であった。
このハードコートフィルムの性能を第1表に示す。
実施例3
実施例1において、基材フィルムを厚さ230μmのアクリルフィルム[住友化学工業(株)製「テクノロイTHG」、屈折率1.490]に変えた以外は、実施例1と同様な操作を行い、ハードコートフィルムを作製した。
ハードコート層中のシリカ含有量は37重量%であり、またハードコート層の屈折率は1.492であった。
このハードコートフィルムの性能を第1表に示す。
実施例4
基材フィルムとして、厚さ188μmの環状ポリオレフィンフィルム[JSR(株)製「アートン188」、屈折率1.510]を用いた以外は、実施例1と同様な操作を行い、ハードコートフィルムを作製した。
ハードコート層中のシリカ含有量は37重量%であり、またハードコート層の屈折率は1.492であった。
このハードコートフィルムの性能を第1表に示す。
【0017】
比較例1
実施例1における電離放射線感応型樹脂組成物の調製において、シリカゾル及び「ライトプロコートAFC2000」を用いなかったこと以外は、実施例1と同様な操作を行い、ハードコートフィルムを作製した。
ハードコート層にはシリカが含まれておらず、ハードコート層の屈折率は1.528であった。
このハードコートフィルムの性能を第1表に示す。
比較例2
実施例3における電離放射線感応型樹脂組成物の調製において、シリカゾル及び「ライトプロコートAFC2000」を用いなかったこと以外は、実施例3と同様な操作を行い、ハードコートフィルムを作製した。
ハードコート層にはシリカが含まれておらず、ハードコート層の屈折率は1.528であった。
このハードコートフィルムの性能を第1表に示す。
【0018】
【表1】
Figure 0004266623
【0019】
【表2】
Figure 0004266623
【0020】
【発明の効果】
本発明によれば、高硬度を有し、耐擦傷性に優れ、かつ低収縮性(硬化収縮率、熱湿収縮率が低い)・低カール性を有する上、基材フィルムとハードコート層との屈折率差が小さく、干渉縞の発生が抑制され、例えば偏光板用やタッチパネル用として、あるいは各種ディスプレイの保護フィルムなどとして好適なハードコートフィルムを提供することができる。

Claims (4)

  1. 屈折率1.52以下のトリアセチルセルロースフィルム、アクリル樹脂フィルム又は脂環式構造含有熱可塑性樹脂フィルムからなる透明プラスチックフィルムの少なくとも片面に、(A)シリカゾル及び/又はラジカル重合性不飽和基含有有機化合物が結合したシリカ微粒子と、(B)多官能性アクリレート系モノマー及びアクリレート系プレポリマーの中から選ばれる少なくとも1種、並びに(C)分子内にラジカル重合性不飽和基を有するシリコーン化合物とを含む電離放射線感応型樹脂組成物の硬化物からなる屈折率1.52以下のハードコート層を設け、ハードコート層と透明プラスチックフィルムの屈折率の差が0 . 026以下であることを特徴とするハードコートフィルム。
  2. ハードコート層中のシリカ含有量が20〜60重量%である請求項1記載のハードコートフィルム。
  3. ハードコート層中の(C)成分含有量が0.05〜5重量%である請求項又は記載のハードコートフィルム。
  4. ハードコート層の厚さが0.5〜30μmである請求項1ないしのいずれかに記載のハードコートフィルム。
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