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JP4130599B2 - レーザ光照射装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光源としてレーザ装置を用い、そのレーザ装置のレーザ光を照射ヘッドにより照射対象に対して照射したときの戻り光の強度変化を計測することで焦点ずれを検知すると共に、照射対象と照射ヘッドとの距離または角度を計測する機能を備えたレーザ光照射装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、光源からの光を集光した際の焦点と照射対象との位置関係を検出する方法として、非点収差法やナイフエッジ法などが知られている。この非点収差法およびナイフエッジ法では、照射対象からの戻り光の像を受光素子に映し、その戻り光の像の形状に基づいて現在の焦点位置からどちらに集光レンズを動かすと合焦点位置になるかを検知することができる。
【0003】
また、このような方法を用いた距離計側システムでは、可動型の集光レンズを動かすことにより合焦点位置を探査し、合焦点状態にしたときの可動レンズ位置から照射対象までの距離を算出している。
【0004】
いずれの方法においても戻り光の像の形状を利用するため、光ファイバなどのような伝送送路を用いることができず、受光素子を照射ヘッド内に搭載する必要がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上述した従来のシステムでは、レーザ光を照射対象に照射したときの戻り光とは別の光が照射ヘッド内の受光素子に入射した場合にそれを区別することができない。このため、焦点近傍に例えばレーザ溶接によるプラズマなどの高強度の発光や他のレーザによる散乱等の外乱光が存在すると、これらの外乱光によって合焦点位置を誤認してしまい、その結果、距離計測などの精度も著しく低下するなどの問題があった。
【0006】
また、受光素子を照射ヘッド内に搭載しなければならないため、その分だけ照射ヘッドの寸法が大きくなり、寸法制約のある部位で使用することが困難となる。さらに、受光素子は半導体でできているため、例えば原子炉などの放射線環境では、その受光素子を搭載した照射ヘッドを用いることができないなどの問題があった。
【0007】
本発明は上記のような点に鑑みなされたもので、光の外乱の影響を受けずに、照射対象からの戻り光を利用して焦点位置を正しく検知でき、また、照射対象まで距離や角度の計測を高精度に行うことのできるレーザ光照射装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1に係るレーザ光照射装置は、レーザ光を発生するレーザ光源と、このレーザ光源から発生したレーザ光を入射側から照射対象に導くとともに、この照射対象に照射したレーザ光の戻り光を上記入射側に伝送する光ファイバと、この光ファイバから受けたレーザ光を集光して上記照射対象に照射するための集光レンズを有する照射ヘッドと、この照射ヘッド内に設けられて上記集光レンズを光軸方向に微細振幅で振動させる振動機構と、上記照射ヘッドから上記照射対象に照射したレーザ光の戻り光を検知する受光素子と、この受光素子と上記光ファイバとの間に設けられ、上記戻り光のうち上記レーザ光源から発生したレーザ光の波長に対応する信号のみを選択的に上記受光素子に与えるバンドパスフィルタと、この受光素子で検知された戻り光の強度を検出する光強度検出手段と、上記照射ヘッドを光軸方向に動作させる駆動機構と、この光強度検出手段によって検出された戻り光強度と上記振動機構の振動とを対応させて焦点位置を検出する制御手段とを備え、上記受光素子、バンドパスフィルタ及び光強度検出手段は、上記照射ヘッドとは別体でかつ離れた位置に配置されており、かつ、上記制御手段は、上記振動機構による結像位置の振動中心を合焦点位置に調整するべく上記駆動機構を駆動制御することを特徴とする。
【0009】
このような構成のレーザ光照射装置によれば、光源から発振されたレーザ光は、例えば光ファイバなどの伝送路を介して照射ヘッドに与えられ、照射ヘッド内の集光レンズによって集光された後、照射対象に照射される。また、照射対象からの戻り光は、バンドパスフィルタを通して、例えばフォトダイオードからなる受光素子に与えられた後、その戻り光の強度が光強度検出手段にて検知される。そして、例えばパーソナルコンピュータからなる制御手段によって、上記光強度検出手段によって検出された戻り光強度が同期検波され、上記振動機構によって上記集光レンズの振動させたときの応答特性から焦点位置が検出される。
【0010】
このように、戻り光の強度波形と振動機構の応答特性との関係から焦点位置を検知することで、他の光源などからの不連続な外乱に対して強い焦点検知が可能となる。
また、上記駆動機構によって上記照射ヘッドを光軸方向に動作させて、結像位置振動中心を合焦点位置に調整することができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0021】
(第1の実施形態)
まず、図1乃至図7を参照しながら、本発明の第1の実施形態について説明する。
【0022】
図1は本発明の第1の実施形態に係るレーザ光照射装置の概略構成を示す図である。このレーザ光照射装置は、例えば放射線環境など、検査員が直接検査できない場所にて、レーザ光を利用して構造物内の表面検査等を行う場合に用いられるものである。
【0023】
図1に示すように、本実施形態におけるレーザ光照射装置は、HeNeレーザ装置1を光源として有する。このHeNeレーザ装置1から発振される波長594nmのレーザ光2は、入射光学装置である入射レンズ11により集光されて光ファイバ10に入射され、この光ファイバ10を通って照射ヘッド4に伝送される。照射ヘッド4内には、振動レンズ5およびコリメートレンズ6が備えられている。また、集光レンズである振動レンズ5には、振動機構としてのピエゾアクチュエータ7が取り付けられている。このピエゾアクチュエータ7は、振動レンズ5を微細振幅で振動させるためのものであり、ピエゾアクチュエータドライバ20によって駆動される。
【0024】
HeNeレーザ装置1から光ファイバ10を介して照射ヘッド4まで伝送されたレーザ光2は、その照射ヘッド4内に設けられたコリメートレンズ6を介してコリメートされた後に振動レンズ5を介して集光されて照射対象3に照射される。この照射対象3は、例えば放射線環境などに設置された構造物であり、その構造物表面にレーザ光2が照射ヘッド4内の光学系レンズを介して照射されることになる。その際、照射ヘッド4内に設けられた振動レンズ5は、ピエゾアクチュエータ7およびピエゾアクチュエータドライバ20からなる振動機構によって一定周期で振動している。
【0025】
ここで、第1の実施形態では、ピエゾアクチュエータ7を含む照射ヘッド4全体を光軸方向に動作させるための駆動機構として、DCモータ8とそのDCモータ8を駆動するモータドライバ19が設けられており、この駆動機構によりレーザ照射装置本体9に対する光ファイバ10の端面像が結像される位置を調整する可能としている。
【0026】
また、照射対象3からの戻り光13は照射時と同じ伝送経路を通って入射側に伝送される。その伝送経路上には、HeNeレーザ装置1からの入射光と照射対象3から散乱される戻り光13を分離可能なハーフミラー12が設置されている。このハーフミラー12の反射方向には、戻り光を集光するための戻り光集光レンズ14、外乱を排除するための分光装置であるバンドパスフィルタ15、受光素子として用いられるフォトダイオード16、フォトダイオード16にて検知される戻り光13の強度を検出する戻り光強度検出装置17、そして、この戻り光強度検出装置17から出力される信号を演算処理して焦点調整制御などを行う演算装置18が設置されている。
【0027】
なお、演算装置18としては、例えばパーソナルコンピュータ(PC)が用いられる。
【0028】
このような構成において、光源であるHeNeレーザ装置1から発振される波長594nmのレーザ光2は、入射レンズ11を介して集光されて光ファイバ10に入射され、この光ファイバ10を通って照射ヘッド4に伝送される。そして、このレーザ光2は、照射ヘッド4内に設けられたコリメートレンズ6を介してコリメートされた後に振動レンズ5を介して集光されて照射対象3に照射される。
【0029】
レーザ光2が照射対象3に対して照射されると、そのレーザ光2が照射対象3の表面で乱反射して光ファイバ10を通って入射側に戻り光13として戻ってくる。このときの戻り光13は、入射側に設けられたハーフミラー12によって戻り光集光レンズ14に導かれる。この光集光レンズ14にて集光された戻り光13は、バンドパスフィルタ15にて波長594±5nmの信号のみ選択的に受光素子であるフォトダイオード16に与えられ、戻り光強度検出装置17により±10.0Vの電圧信号に変換されて演算装置18に送られる。
【0030】
演算装置18では、戻り光強度検出装置17からの光強度信号を同期検波演算処理すると共に、その結果を用いてDCモータ8を駆動するためのPID(proportional integration and differential)制御のための演算を行うことにより駆動指令をモータドライバ19に送信する。モータドライバ19は、この駆動指令に従ってDCモータ8を駆動する。このDCモータ8の駆動に伴い照射ヘッド4が動作することで、振動レンズ5の振動動作に伴う結像位置が合焦点位置に調整される。
【0031】
このように構成された本実施形態の作用について、図2乃至図7を用いて説明する。
【0032】
図2は本装置における焦点位置に対するHeNeレーザ光の戻り光強度の関係を示す曲線図であり、図中の21aは本装置にて得られる戻り光強度曲線を表している。図3乃至図5は本装置における振動レンズ応答と戻り光強度変化との関係を示す曲線図であり、図中の21b〜21dは戻り光強度曲線、22は振動レンズ応答曲線を表している。
【0033】
また、図6は本装置におけるHeNeレーザ光の焦点の中心位置に対して振動レンズ応答の基本波と戻り光強度変化を同期検波演算した結果を示す曲線図であり、図中の23は戻り光基本波成分を表している。図7は本装置におけるHeNeレーザ光の焦点の中心位置に対して振動レンズ応答の2倍波と戻り光強度変化を同期検波演算した結果を示す曲線図であり、図中の24aは戻り光2倍波成分、24bは戻り光2倍波成分(レンズ振幅小の場合)、24cは戻り光2倍波成分(レンズ振幅大の場合)をそれぞれ表している。
【0034】
フォトダイオード16と戻り光強度検出装置17によって検出される戻り光13の光強度は、図2の戻り光強度曲線21aに示すように、戻り光集光レンズ14によって光ファイバ10の端面像が結像される位置と照射対象3とが一致した状態、つまり、合焦点状態であるときに最大値をとる。これに対し、焦点位置が照射ヘッド4の側に近くても、逆に遠くても強度レベルは減少する。このことから、振動機構であるピエゾアクチュエータ7によって照射ヘッド4内の振動レンズ5を振動させて結像位置も振動させることにより、戻り光強度にピエゾアクチュエータ7による加振に応じた変化を与えることができる。
【0035】
この様子を図3乃至図5に示す。
【0036】
すなわち、例えば結像位置の振動中心が照射対象3より照射ヘッド4の側に振動の幅以上に近い場合(つまり焦点が近い場合)には、図2の最大値より左側の単調増加の範囲で振動することになる。よって、戻り光強度変化は、図3の戻り光強度曲線21bのように振動レンズ応答曲線22と同じ振動数で位相も一致した曲線として得られる。
【0037】
一方、結像位置の振動中心が照射対象3より振動の幅以上に遠い場合(つまり焦点が遠い場合)には、図2の最大値より右側の単調減少の範囲で振動することになる。よって、戻り光強度変化は、図4の戻り光強度曲線21cのように振動レンズ応答曲線22に対して振動数は同じで、位相が180度ずれた曲線として得られる。また、結像位置振動中心と合焦点位置が一致している場合には、振動レンズ5の振動1周期の間に図2の最大値を2度通過することになる。よって、戻り光強度変化は、図5の戻り光強度曲線21dのように振動レンズ応答曲線22の2倍の振動数を持つ曲線として得られる。
【0038】
このように、戻り光強度の応答から振動レンズ5の応答成分を同期検波し、その結果をもって結像位置振動中心と合焦点位置とのずれ量を検知することができる。
【0039】
ここで、ピエゾアクチュエータ7によって振動レンズ5を振動数fで振動させたときの応答を調和振動として1次近似した波形を基本波と呼び、以下のように定義する。
【0040】
基本波:F(t)=sin(2×π×f×(t-δ))
f:振動レンズ振動数
t:時間
δ:位相遅れ
また、基本波の2倍の周期を持ち、基本波が0クロスする時間に最大値をとる関数を2倍波と呼び、以下のように定義する。
【0041】
2倍波:F(t)=cos(2×(2×π×f×(t-δ))
まず、戻り光強度検出装置17からの信号を演算装置18でハイパスフィルタをかけて変動成分(AC成分)のみを抽出し、次にfより十分高い周波数成分を取り除くためにローパスフィルタをかけ、さらに抽出された戻り光強度信号の振幅を揃える。
【0042】
ここで、第1の実施形態では、PC等からなる演算装置18により戻り光強度同期検波を行うことで、戻り光強度から基本波成分と2倍波成分の応答を求める。この場合、焦点の振動中心位置に対する基本波成分と2倍波成分の応答は、図6の23および図7の24aのように得られる。これによると、戻り光基本波成分が0で、かつ、2倍波成分が最大となる条件から結像位置振動中心が合焦点となるには、照射ヘッド4をどちらの方向にどの程度動かせば良いかを検知することができる。そこで、この検知結果に基づいて演算装置18からモータドライバ19に対して上記駆動指令を出してDCモータ8を駆動制御することにより、結像位置振動中心が合焦点となるように調整する。
【0043】
モータドライバ19はDCモータ8を駆動するためのものであり、DCモータ8を駆動するためのPID制御の演算は同期検波演算と共に演算装置18によって行われる。バンドパスフィルタ15はフォトダイオード16にて検知された光の波長を制限することにより光の外乱を抑え、戻り光強度計測のS/Nを向上させるのに役立つ。
【0044】
以上のように第1の実施形態によれば、振動レンズ応答波と戻り光強度波形との比較結果に基づいて焦点が照射対象の表面上に一致する合焦点位置を検知するようにしたことで、照射ヘッド外に設けた受光素子へ入射する他の光源からの不連続な外乱に対して強い焦点検知が可能となる。
【0045】
また、本装置では、受光素子(フォトダイオード)が照射ヘッドに搭載されていないので、照射ヘッドのサイズを小型化できると共に、原子炉などの放射線環境においても適用することができる。
【0046】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
【0047】
図8は本発明の第2の実施形態に係るレーザ光照射装置の概略構成を示す図である。なお、図8において、図1(第1の実施形態)と同一部分には同一符号が付してある。
【0048】
第2の実施形態におけるレーザ光照射装置は、上記第1の実施形態の構成に加え、駆動機構による照射ヘッド4の変位量を検出するための照射ヘッド変位計測用リニアセンサ25と、そのリニアセンサ25を駆動するための変位計測用リニアセンサドライバ26とを備えている。
【0049】
このような構成において、光源であるHeNeレーザ装置1から発振される波長594nmのレーザ光2は、入射光学装置である入射レンズ11を介して集光されて光ファイバ10に入射され、この光ファイバ10を通って照射ヘッド4に伝送される。そして、このレーザ光2は、照射ヘッド4内に設けられたコリメートレンズ6を介してコリメートされた後に振動レンズ5を介して集光されて照射対象3に照射される。
【0050】
一方、照射対象3からの戻り光13は照射時と同じ伝送経路を通り入射側に伝送され、その伝送経路上に設置されたハーフミラー12によって戻り光集光レンズ14に送られる。そして、バンドパスフィルタ15を介して所定の帯域の信号のみ通過して受光素子であるフォトダイオード16にて検知される。戻り光強度検出装置17では、このようにしてフォトダイオード16にて検知された戻り光13の強度を検出することにより、その信号を演算装置18に出力する。演算装置18では、この戻り光強度に基づいて所定の演算処理を行って上記第1の実施形態で説明したような焦点調整制御を行う。
【0051】
ここで、照射ヘッド4内に設けられた振動レンズ5が停止している場合、光ファイバ10の端面像が結像される位置は、照射ヘッド4からの結像距離(これをワークディスタンスまたはWDと呼ぶ)として、集光レンズを含む照射ヘッド4の設計により決まっている。
【0052】
したがって、上記第1の実施形態で説明した方法により、DCモータ8を駆動制御して結像位置振動中心が合焦点位置となるように調整したときに、レーザ照射装置本体9に対する照射ヘッド4の相対位置を照射ヘッド変位計測用リニアセンサ25によって検知すれば、そのときの照射ヘッド4の変位量と結像距離(WD)の情報に基づいて、照射ヘッド4から照射対象3のレーザ照射点までの距離を計測することができる。演算装置18には、このような距離計測のための演算処理を行う機能が備えられている。
【0053】
このように、第2の実施形態によれば、焦点調整時における照射ヘッドの位置を検知する機構を備えることで、外乱光などの影響を受けずに、照射ヘッドから照射対象のレーザ照射点までの距離を正確に計測することができる。
【0054】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
【0055】
図9は本発明の第3の実施形態に係るレーザ光照射装置の概略構成を示す図である。なお、図9において、図8(第2の実施形態)と同一部分には同一符号が付してある。
【0056】
第3の実施形態におけるレーザ光照射装置は、上記第2の実施形態の構成に加え、集光レンズである振動レンズ5の振幅を検出するための振幅検出用リニアセンサ27と、そのリニアセンサのための振幅検出用リニアセンサドライバ28とを備えている。
【0057】
このような構成において、光源であるHeNeレーザ装置1から発振される波長594nmのレーザ光2は、入射光学装置である入射レンズ11を介して集光されて光ファイバ10に入射され、この光ファイバ10を通って照射ヘッド4に伝送される。そして、このレーザ光2は、照射ヘッド4内に設けられたコリメートレンズ6を介してコリメートされた後に振動レンズ5を介して集光されて照射対象3に照射される。
【0058】
一方、照射対象3からの戻り光13は照射時と同じ伝送経路を通り入射側に伝送され、その伝送路上に設置されたハーフミラー12によって戻り光集光レンズ14側に送られる。そして、バンドパスフィルタ15を介して所定の帯域の信号のみ通過して受光素子であるフォトダイオード16にて検知される。戻り光強度検出装置17では、このようにしてフォトダイオード16にて検知された戻り光13の強度を検出することにより、その信号を演算装置18に出力する。演算装置18では、この戻り光信号強度に基づいて所定の演算処理を行って上記第1の実施形態で説明したような焦点調整制御を行う。
【0059】
ここで、図7の24a、24b、24cの曲線が示すように戻り光13の2倍波成分が0から正の値を持つようになる結像位置振動中心の位置は、照射ヘッド4内に設けられた振動レンズ5の振幅によって異なる。
【0060】
第3の実施形態では、このような点に着目し、振幅検出用リニアセンサ27と振幅検出用リニアセンサドライバ28とピエゾアクチュエータドライバ20を用いて、焦点調整時における振動レンズ5の振幅をフィードバック制御し、戻り光強度の同期検波により2倍波成分が0から正の値に変わるときの振動レンズ5の振幅と照射ヘッド変位計測用リニアセンサ25にて検知される照射ヘッド4の変位情報、そして、結像距離(WD)の情報を演算装置18によって換算することで、照射ヘッド4から照射対象3のレーザ照射点までの距離を計測する。演算装置18には、このような距離計測のための演算処理を行う機能が備えられている。
【0061】
このように、第3の実施形態によれば、焦点調整時における照射ヘッド内の集光レンズの振幅を検知する機構を備えることで、外乱光などの影響を受けずに、照射ヘッドから照射対象のレーザ照射点までの距離を正確に計測することができる。
【0062】
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。
【0063】
第4の実施形態では、レーザ光の波長が異なる複数のレーザ装置を用いて、照射ヘッドに対する照射対象の角度を3次元計測することを特徴としたものである。
【0064】
図10は本発明の第4の実施形態に係るレーザ光照射装置の概略構成を示す図である。なお、図10において、図8(第2の実施形態)と同一部分には同一符号が付してある。
【0065】
第4の実施形態におけるレーザ光照射装置は、上記第2の実施形態の構成に加え、波長と異なる3種類の半導体レーザ装置1a、1b、1cを備えている。レーザ装置1aは上記第1乃至第3の実施形態で示したHeNeレーザ装置1であり、594nmの波長を有するレーザ光2aを発振する。このレーザ装置1aの他に、レーザ装置1bとレーザ装置1cが追加されている。ここでは、レーザ装置1bは488nmの波長を有するレーザ光2bを発振し、レーザ装置1bは532nmの波長を有するレーザ光2cを発振する。
【0066】
また、これらのレーザ装置1a、1b、1cに対応して3本の光ファイバ10a、10b、10cが伝送経路として照射ヘッド4まで延出され、さらに、これらの光ファイバ10a、10b、10cを通って入射側にフィードバックする戻り光13a、13b、13cを波長分離するための光学系として488nm分離用のダイクロイックミラー29aと532nm分離用のダイクロイックミラー29bが設けられている。
【0067】
また、このダイクロイックミラー29a、29bを介して波長分離される戻り光13a、13b、13cに対応させて、3組の戻り光集光レンズ14a、14b、14c、バンドパスフィルタ15a、15b、15c、フォトダイオード16a、16b、16c、戻り光強度検出装置17a、17b、17cがそれぞれ設けられた構成になっている。
【0068】
バンドパスフィルタ15aは594±5nm、バンドパスフィルタ15bは488±5nm、バンドパスフィルタ15cは532±5nmの信号を通す。フォトダイオード16a、16b、16cは受光素子であって、これらバンドパスフィルタ15a、15b、15cを通過した戻り光13a、13b、13cを検知する。戻り光強度検出装置17a、17b、17cは、フォトダイオード16a、16b、16cによって検知された戻り光13a、13b、13cの強度を検出して、その信号を演算装置18に出力する。
【0069】
このような構成において、レーザ装置1a、1b、1cから照射されたレーザ光2a、2b、2cは、それぞれに対応した光ファイバ10a、10b、10cを介して照射ヘッド4に伝送され、この照射ヘッド4内のコリメートレンズ6を介してコリメートされた後に振動レンズ5を介して集光されて照射対象3に照射される。レーザ光2a、2b、2cが照射対象3に対して照射すると、これらのが照射対象3の表面上で乱反射して光ファイバ10a、10b、10cを通って入射側に戻り光13a、13b、13cとして戻ってくる。
【0070】
ここで、これらの戻り光13a、13b、13cの波長を488nm、532nm、594nmに分けて戻り光強度を計測し、それぞれについて同期検波することにより、上記第2の実施形態で説明したような方法を用いて3本の光ファイバ10a、10b、10cの端面像の合焦点距離をそれぞれ計測することができる。これらの光ファイバ10a、10b、10cの端面像の中心は1本の直線上になく、それぞれに異なる点に結像し、その3点は照射対象3上で必ず平面を形成することになる。したがって、この3点の合焦点距離の計測結果を用いれば、照射ヘッド4に対する照射対象3の角度を3次元計測することができる。演算装置18には、このような角度計測のための演算処理を行う機能が備えられている。
【0071】
このように、第3の実施形態によれば、波長の異なる複数のレーザ装置を備えることで、外乱などの影響を受けずに、それぞれの戻り光による合焦点距離の計測結果を用いて照射ヘッドに対する照射対象の角度を3次元計測することができる。
【0072】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、戻り光の強度波形と振動機構の応答特性との関係から焦点位置を検知する構成としたため、他の光源などからの不連続な外乱に対して強い焦点検知が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1の実施形態に係るレーザ光照射装置の概略構成を示す図。
【図2】 上記レーザ光照射装置における焦点位置に対するHeNeレーザ光の戻り光強度の関係を示す曲線図。
【図3】 上記レーザ光照射装置における振動レンズ応答と戻り光強度変化との関係を示す曲線図であり、焦点が近い場合の曲線図。
【図4】 上記レーザ光照射装置における振動レンズ応答と戻り光強度変化との関係を示す曲線図であり、焦点が遠い場合の曲線図。
【図5】 上記レーザ光照射装置における振動レンズ応答と戻り光強度変化との関係を示す曲線図であり、結像位置振動中心と合焦点位置が一致した場合の曲線図。
【図6】 上記レーザ光照射装置におけるHeNeレーザ光の焦点の中心位置に対して振動レンズ応答の基本波と戻り光強度変化を同期検波演算した結果を示す曲線図。
【図7】 上記レーザ光照射装置におけるHeNeレーザ光の焦点の中心位置に対して振動レンズ応答の2倍波と戻り光強度変化を同期検波演算した結果を示す曲線図。
【図8】 本発明の第2の実施形態に係るレーザ光照射装置の概略構成を示す図。
【図9】 本発明の第3の実施形態に係るレーザ光照射装置の概略構成を示す図。
【図10】 本発明の第4の実施形態に係るレーザ光照射装置の概略構成を示す図。
【符号の説明】
1…レーザ装置、2…レーザ光、3…照射対象、4…照射ヘッド、5…振動レンズ、6…コリメートレンズ、7…ピエゾアクチュエータ、8…DCモータ、9…レーザ照射装置本体、10…光ファイバ、11…入射レンズ、12…ハーフミラー、13…戻り光、14…戻り光集光レンズ、15…バンドパスフィルタ、16…フォトダイオード、17…戻り光強度検出装置、18…演算装置、19…モータドライバ、20…ピエゾアクチュエータドライバ、21a〜21d…戻り光強度曲線、22…振動レンズ応答曲線、23…戻り光基本波成分、24a〜24c…戻り光2倍波成分、25…照射ヘッド変位計測用リニアセンサ、26…変位計測用リニアセンサドライバ、27…振幅検出用リニアセンサ、28…振幅検出用リニアセンサドライバ、29a,29b…ダイクロイックミラー。

Claims (1)

  1. レーザ光を発生するレーザ光源と、
    このレーザ光源から発生したレーザ光を入射側から照射対象に導くとともに、この照射対象に照射したレーザ光の戻り光を上記入射側に伝送する光ファイバと、
    この光ファイバから受けたレーザ光を集光して上記照射対象に照射するための集光レンズを有する照射ヘッドと、
    この照射ヘッド内に設けられて上記集光レンズを光軸方向に微細振幅で振動させる振動機構と、
    上記照射ヘッドから上記照射対象に照射したレーザ光の戻り光を検知する受光素子と、
    この受光素子と上記光ファイバとの間に設けられ、上記戻り光のうち上記レーザ光源から発生したレーザ光の波長に対応する信号のみを選択的に上記受光素子に与えるバンドパスフィルタと、
    この受光素子で検知された戻り光の強度を検出する光強度検出手段と、
    上記照射ヘッドを光軸方向に動作させる駆動機構と、
    この光強度検出手段によって検出された戻り光強度と上記振動機構の振動とを対応させて焦点位置を検出する制御手段とを備え、
    上記受光素子、バンドパスフィルタ及び光強度検出手段は、上記照射ヘッドとは別体でかつ離れた位置に配置されており、かつ、上記制御手段は、上記振動機構による結像位置の振動中心を合焦点位置に調整するべく上記駆動機構を駆動制御することを特徴とするレーザ光照射装置。
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