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JP4099985B2 - インクジェット記録シート - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェット記録シート及びその製造方法に関するものであり、特に、写真印画紙調の光沢を有し、高いインク吸収速度とインク吸収量を兼ね備え、ひび割れを発生することなく製造することが可能なインクジェット記録シートに関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録方式は、簡易な装置で安価にカラー印刷ができるためパーソナルユースに適した記録方式であり、オフィスや家庭での印刷用途に急速に普及している。近年フルカラー化及び高解像度化が達成されたことにより、画質が急速に向上してきており、カラー画像の手軽な出力形式として注目され、銀塩写真の代替として最も有力な方式の一つと考えられている。そのため、銀塩写真に匹敵する高画質並びに高光沢を有するインクジェット記録シートに対する要望が高まっている。
【0003】
インクジェット方式で使用されるインクは多量の溶媒を含んでいるため、高い印字濃度を得るためには大量のインクを吐出する必要がある。そのため、インクジェット記録シート上に設けるインク受容層としては、吐出されるインクを十分に吸収できるような材料が要求される。また、インク液滴は連続的に吐出されるため、最初の液滴が吸収されないうちに次の液滴が吐出されるとにじみや濃度むらの原因となり、鮮明な画像が得られない。よって、インク受容層としては吸収量とともに、速い吸収速度を持つことが要求される。さらに、上記の画質面への要求だけでなく、インクの乾燥性、印字物の耐水性、長期保存する場合の画像の保存安定性などさまざまな性能が要求される。
【0004】
以上のような要求を満たすため、樹脂系または顔料系のインク受容層を設けたインクジェット記録シートが数多く提案され、市販されている。樹脂系受容層は一般に、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、水溶性セルロース誘導体、ゼラチンなどの水溶性樹脂の水溶液を基材シートに塗工し、乾燥して形成されるものである。樹脂系受容層においては、透明性が高いため印字濃度が高く、光沢も高いという長所がある反面、インクの吸収速度が遅いので画質が悪く、また、インクの乾燥速度が遅くて耐水性も悪いという欠点がある。そのため、近年要求されている銀塩写真と同等の印字品質を得るのは困難であり、最近では以下に述べる顔料系受容層が主流になってきた。
【0005】
顔料系受容層は、シリカ、アルミナ、擬ベーマイト、炭酸カルシウム、カオリンなどの顔料にポリビニルアルコール、セルロース誘導体などの水溶性樹脂をバインダー樹脂として添加することにより形成されるものである。上記顔料の形態としては、1次粒子が凝集して2次粒子を形成しているものが好ましく用いられる。このような顔料系受容層においては、顔料の1次粒子間及び2次粒子間の空隙に毛細管現象ですばやくインクが吸収されて画像を形成するため画質が良好であり、インク乾燥性も良い。
【0006】
特公昭63−22977号公報では、最上層のインク受容層の細孔分布曲線のピークが200nm〜10μmにあり、かつインク受容層全体の細孔分布曲線のピークが200nm〜10μm及び50nm以下の2ヶ所にあるインク受容層を提案している。ここでは、最上層の大きな空隙に瞬時に吸収されたインクを、細孔径50nm以下からなる空隙に取り込むことによって、速い吸収速度と高い画質を得ている。しかし、こうした細孔分布を持つ受容層を得るには、2次粒子径が1μmを越える大きな顔料を用いる必要があったため、受容層表面の平滑性が低下して光沢が低くなり、近年求められている銀塩写真並みの光沢を得ることはできなかった。また、2次粒子径の大きな顔料を用いると受容層の透明度が低くなるために、印字濃度が低いという欠点があった。
【0007】
また、特開昭61−47290号公報では、アルカリ金属の弱酸塩及び/又はその複塩を含有するインク受容層を提案している。ここでは、アルカリ金属の弱酸塩と平均2次粒子径が0.5〜30μmである顔料を併用することにより画像の耐水性及び耐光性を向上させている。しかし、ここでも2次粒子径が大きな顔料を用いる必要があったため、光沢や印字濃度は低かった。
【0008】
以上のような欠点を克服するため、粒子径が1μm以下の微細顔料を用いた顔料系インクジェット受容層を設けたインクジェット記録シートが数多く提案されている。特開平9−183267号公報では、最上層がコロイダルシリカを含有し、細孔分布曲線が細孔直径2nm〜100nmの範囲にピークを持つインク受容層を提案している。この範囲に細孔ピークが存在するとインク吸収速度は速くなり、また、粒子径の小さい単分散コロイダルシリカを用いているので光沢にすぐれ、透明性も良好であった。しかし、2次粒子を形成していないため受容層の細孔容積が低く、吐出される多量のインクを吸収させるために多くの塗工量が必要で、受容層を2層設けなければならないという欠点があった。
【0009】
特開2001−96897号公報では、気相法シリカ及び水溶性の金属化合物を含有し、膜面pHが3〜5であるインク受容層を有するインクジェット記録材料を提案している。気相法シリカは平均粒径3nm〜10nmの1次粒子が凝集して100nm〜500nmの2次粒子を形成している超微粒子であり、小粒径なため高い光沢を持たせることができる。2次粒子間の空隙があるためインク吸収性も高い。しかしこうした2次粒径が1μm以下の超微粒子を用いる場合、粒径が小さいために細孔径が小さくなり、強い毛細管収縮力のため乾燥工程においてひび割れやすくなるといった製造上の問題がある。毛細管収縮力を緩和させてひび割れを防止するためにバインダー樹脂の添加量を増加させることは、インク吸収性の極端な低下を招くので好ましくない。よって、バインダー樹脂の添加量を増加させること無くひび割れを防止する方法として、上記公報では水溶性金属化合物の添加を提案しているが、膜面pHを3〜5にする必要があった。また、気相法シリカは湿式法シリカに比べ乾燥過程において生じる毛細管収縮力が格段に強いため、十分にひび割れの無い受容層を製造するには上記方法に加え、ホウ酸によりバインダー樹脂を架橋させるという方法を用いなければならず、そのようにして形成された受容層は高温高湿下で強度的にもろくなり、剥がれてしまうという欠点を有していた。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、前記従来の技術が抱えている諸問題を解決し、写真印画紙調の光沢を有し、インク吸収速度及びインク吸収量に優れ、なおかつ製造工程において乾燥時のひび割れによる成膜不良を生じることのないインクジェットプリンター用記録シートを提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
水銀ポロシメーターによる測定で得られる細孔分布曲線において細孔径6nm〜150nmの範囲にピークを持つ多孔質インク受容層では一般に、その強い毛細管力によりインクを素早く吸収して鮮明な画像を得ることができる。しかし、細孔径が上記の範囲の多孔質受容層で、図2のように幅の狭いシャープなピークが1つだけしかないものは、塗工液を塗工後の乾燥工程において強い毛細管収縮力が働いてひび割れによる成膜不良が生じている場合が多い。また、吐出される多量のインクを瞬時に吸収するにはインク吸収量が不十分な場合が多く、インクがあふれたり、ビーディングと呼ばれる印字濃度むらが生じる傾向がある。本発明者らが鋭意検討したところ、図1のように細孔径6nm〜150nmの範囲に2つのピーク、または肩を有する1つの幅広いピークを有する多孔質インク受容層が、乾燥工程におけるひび割れが発生せず、かつインク吸収速度が速く、インク吸収量も増加することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
[1]本発明のインクジェット記録シートは、基材上に、微細顔料とバインダー樹脂を含む少なくとも1層のインク受容層を設けたインクジェット記録シートにおいて、該インク受容層が、水銀ポロシメーターで測定した細孔分布曲線において細孔径6〜150nmの範囲に2つのピーク、または肩を有する1つの幅広いピークを有する多孔質インク受容層を少なくとも1層有し、該微細顔料が、湿式法シリカ、アルミナ、ベーマイト、擬ベーマイトからなる群より選ばれる少なくとも一種であり、かつその平均粒径が、1.0μm以下、窒素吸着法による細孔径100nm以下の範囲の細孔容積が0.4〜2.0ml/gであり、該多孔質インク受容層が、該微細顔料、該バインダー樹脂、及び水溶性塩類を含有し、かつ固形分濃度16%で測定した導電率が0.5〜10.0mS/cmである水性塗料を基材に塗工後、乾燥することによって形成されていることを特徴とする
本発明のインクジェット記録シートは、下記の態様を含む。
[2] 該細孔分布曲線におけるモード細孔径とメジアン細孔径との差の絶対値が10nm以上である[1]に記載のインクジェット記録シート。
[3] 該多孔質インク受容層の細孔径6nm〜1μmの範囲における細孔容積が0.5〜2.0ml/gである[1]または[2]に記載のインクジェット記録シート。
【0014】
[4] 窒素吸着法により測定した該微細顔料の細孔径d1(nm)と水銀ポロシメーターにより測定した該多孔性インクジェット受容層のモード細孔径d2(nm)との間に20<d2−d1<100の関係式が成り立つことを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載のインクジェット記録シート。
] 該微細顔料が湿式法シリカであり、該水性塗料がアンモニアを含有し、pHが7以上である[1]〜[4]のいずれかに記載のインクジェット記録シート。
] 該微細顔料が平均粒径3nm〜40nmの1次粒子が凝集してなる平均粒径8nm〜800nmの2次粒子である[1]〜[5]のいずれかに記載のインクジェット記録シート。
【0015】
] 該バインダー樹脂がポリビニルアルコールである[1]〜[]のいずれかに記載のインクジェット記録シート。
] 該水溶性塩類がアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩から選ばれる少なくとも一種である[1]〜[7]のいずれかに記載のインクジェット記録シート。
] 該水溶性塩類がアルカリ金属の強酸塩である[]に記載のインクジェット記録シート。
10] 微細顔料100質量部に対し水溶性塩類を0.001〜10重量部の割合で含有する[1]〜[9]のいずれかに記載のインクジェット記録シート。
【0016】
【発明の実施の形態】
まず、水銀ポロシメータによる細孔分布測定について説明する。細孔分布はマイクロメトリックス ポアサイザ9320((株)島津製作所製)を用い、水銀圧入法により求めた空隙量分布曲線から細孔分布を計算して求めた。水銀圧入法による細孔径の測定は細孔の断面を円形として仮定して導かれた下記の式を用いて計算した。
【0017】
D=−4γCOSθ/P
ただし、D:細孔直径、γ:水銀の表面張力、θ:接触角、P:圧力とする。
【0018】
水銀の表面張力は482.536dyn/cmとし、使用接触角は130°とし、高圧部測定(0〜30000psia、測定細孔径6μm〜6nm)を行った。インク受容層の平均細孔容積は予め測定したインク受容層の重量と空隙量分布曲線から計算される。本発明におけるインク受容層の細孔分布曲線においては、6nm〜150nmの範囲にピークを持ち、ピークの裾野が1μmまで及ぶため、6nm〜1μmの範囲での細孔容積を積算して求めた。
【0019】
次に、本発明のインク受容層について説明する。本発明における多孔質インク受容層は、上記の水銀ポロシメータによる測定で得られた細孔分布曲線が、図1のように細孔径6nm〜150nmの範囲に2つのピーク、または肩を有する1つの幅広いピークを持つものである。2つのピークのうちどちらかのピークが8nm〜25nmの範囲にあるか、または肩を有する1つの幅広いピークが8nm〜25nmの範囲にまでわたっていることが好ましい。この範囲の細孔は毛細管力が強いため、吐出されるインクを瞬時に吸収することができるという利点を持つが、インク受容層の乾燥工程においてひび割れによる成膜不良を生じやすいという欠点もある。しかし本発明のインク受容層においては、さらに細孔径6nm〜150nmの範囲にもう一つの細孔ピークを有するか、またはピークは1つであるが幅広いという特徴を有し、径の大きな細孔が多数存在することによって毛細管収縮力が緩和され、乾燥工程のひび割れを防止することができる。また、径の大きな細孔が多数存在することによってインク吸収に寄与する細孔容積が増え、8nm〜25nmの範囲にある細孔で一旦吸収した多量のインクを即座に取り込むことができ、次々とインクが吐出されてもあふれることなくインクを吸収することができる。
【0020】
特開平9−183267号公報の実施例の中にもこの範囲に2つのピークをもつ例が記載されているが、これはインク受容層を2層設けた場合にそれぞれの受容層中に1つずつ存在するピークが現れたものである。一方、本発明における多孔質インク受容層では、少なくとも1つの受容層中について細孔径6nm〜150nmの範囲に2つのピーク、または肩を有する1つの幅広いピークを持つものであり、受容層1層に2つのピークが存在する点が特開平9−183267号発明とは異なる。
【0021】
細孔径のピークが6nm未満の範囲のみに存在する場合は、十分なインク吸収速度が得られず、インクあふれやビーディングと呼ばれる印字濃度むらが生じる。また、細孔径のピークが150nmを越える範囲のみに存在する受容層は、インクが広がりやすく、鮮明な画像が得られない。また、透明性が低下して印字濃度が低下し、光沢感も失われるため不適である。
【0022】
前記の方法にて測定された、該多孔質インク受容層の細孔分布曲線において、モード細孔径とメジアン細孔径との差の絶対値が10nm以上であることが好ましい。10nmより小さい場合には細孔分布曲線におけるピークは1つのシャープなピークとなり、細孔のサイズにばらつきがなく毛細管収縮力が緩和されにくいためインク受容層を塗布乾燥する際にひび割れが生じる恐れがある。差の値に上限はないが、100nm以下程度が好ましい。
【0023】
前記の方法で測定された該多孔質インク受容層の、細孔径6nm〜1μmの範囲での細孔容積は0.5〜2.0ml/gであることが好ましい。細孔径6nm〜1μmの細孔容積が0.5ml/gより大きいと、インク受容層は、吐出される多量のインクを十分に吸収することができ、インクあふれにより画像が乱れることがない。一方、細孔径6nm〜1μmの細孔容積が2.0ml/g以下であると、染料の定着性に優れ、インク受容層の強度にも優れる。
【0024】
以下に本発明のインク受容層の形成方法について説明する。本発明のインク受容層は顔料を樹脂バインダーで固めて製造されるものである。インク受容層の形成方法は、特に限定されるものではないが、本発明の特徴である、細孔径6nm〜150nmの範囲に2つのピーク、または肩を有する1つの幅広いピークを有する多孔質インク受容層を得るためには以下の方法が好適に用いられる。顔料100質量部に対して、樹脂バインダーを1〜100質量部、好ましくは3〜28質量部、より好ましくは5〜20質量部の割合で含有し、かつ水溶性塩類を好ましくは0.01〜10質量部、より好ましくは0.05〜5重量部の割合で含有する水性塗料を基材に塗布し、乾燥してインク受容層を形成する。
【0025】
本発明において好ましい顔料は粒子径が小さい微細顔料であり、上記水性塗料中では安定にコロイド状に分散している。乾燥過程において、水性塗料の濃度が上昇して乾燥されていくまでの間に、含有している水溶性塩類が顔料表面に吸着されて表面の電荷量が減少し、分散安定性が失われて大きな凝集構造を生成する。この凝集構造中に存在する空隙が6nm〜150nmの範囲に分布し、その結果本発明の特徴である細孔径6nm〜150nmの範囲に2つのピーク、または肩を有する1つの幅広いピークを有する多孔質インク受容層が形成される。このように水溶性塩類の影響で生成する凝集構造中に存在する空隙として生じる、径の大きな細孔が多数存在することによって毛細管収縮力が緩和され、インク受容層を塗布した後、乾燥工程でのひび割れを防止することができる。
【0026】
本発明で使用される顔料は湿式法シリカ、アルミナ、ベーマイト、擬ベーマイトからなる群より選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。これらの顔料を単独で用いても良いし、2種以上を混合して用いることもできる。ここで湿式法シリカは、湿式法により製造される無定型合成シリカを指し、沈降法によるシリカとゲル法によるシリカとに分類される。沈降法シリカはケイ酸アルカリ水溶液に鉱酸を段階的に加え、沈降したシリカをろ過して製造されるものであり、ゲル法シリカはケイ酸アルカリ溶液に鉱酸を混合し、ゲル化させたのち、洗浄及び粉砕して得られるものである。これらの顔料は細孔容積が大きく、インク吸収性に優れているので好適に用いられる。特に湿式法シリカは粒子径分布が比較的広く、凝集による大きな空隙を生じやすいので本発明において特に好適に用いられる。
【0027】
これらの微細顔料の製造方法は特に限定されないが、その手段の一つとして市販の顔料(粒径が数μmのもの)に機械的手段で強い力を与えることにより粉砕、分散して得る方法が挙げられる。つまり、breaking down法(塊状原料を細分化する方法)によって得られるものである。機械的手段としては、超音波ホモジナイザー、圧力式ホモジナイザー、ナノマイザー、高速回転ミル、ローラーミル、容器駆動媒体ミル、媒体攪拌ミル、ジェットミル、サンドグラインダー等の機械的手法が挙げられる。得られる微細顔料はコロイド状であっても、スラリー状であっても良い。その他の好ましい微細顔料の製造方法として、特開平5−32413号公報や特開平7−76161号公報などに開示されている金属アルコキシドの加水分解による方法が挙げられる。
【0028】
顔料の形態としては、高光沢、高透明性のインク受容層を得るために、平均粒子径が1μm以下の微細顔料が好ましい。さらに微細顔料が平均1次粒子径3nm〜100nm、好ましくは3nm〜40nmの1次粒子からなる2次粒子であると細孔容積が高いので好ましい。これら1次粒子が凝集した2次粒子の平均粒径は1μm以下、好ましくは8nm〜800nm、より好ましくは8nm〜600nm、最も好ましくは8nm〜450nmである。顔料の1次粒子径や2次粒子径が小さすぎるとインク吸収に寄与する空隙を形成し難くなり、受容層の細孔容積が低下してインク吸収性が低下する恐れがある。また、1次粒子径や2次粒子径が大きすぎると受容層の透明性が低下し、印字濃度や光沢が低下する恐れがある。なお、本発明でいう顔料の1次粒子径はすべて電子顕微鏡(SEM及びTEM)で観察した粒径(マーチン径)である。また、2次粒子径は動的光散乱法によって測定され、キュムラント法を用いた解析から算出される値である。
【0029】
インク吸収能の高いインク受容層を得るためには、微細顔料の細孔容積は高い方が好ましいが、本発明に好適に用いられる微細顔料の細孔容積は、0.4〜2.0ml/gが好ましく、より好ましくは0.5〜1.8ml/gであり、特に好ましくは0.6〜1.6ml/gである。なお、この細孔容積は窒素吸着法で測定した細孔径100nm以下の範囲の値である。
【0030】
本発明では、上記微細顔料を含有する水性塗料を基材に塗工し、乾燥させることによって比較的大きな空隙を生じさせ、毛細管収縮力を緩和させてインク受容層塗液を乾燥する際のひび割れを防止している。従って、該インク受容層の細孔径が該微細顔料自体の細孔径よりも大きな範囲に存在していることが特徴であり、窒素吸着法により測定した該微細顔料の細孔径d1(nm)と水銀ポロシメーターで測定した該多孔性インクジェット受容層のモード細孔径d2(nm)との間に20<d2−d1<100の関係式が成り立つことが好ましい。d2−d1≦20である場合は該受容層中に大きな空隙が形成されておらず、毛細管収縮力を十分に緩和できずインク受容層にひび割れを生じる恐れがある。また、d2−d1≧100であると該受容層中の空隙が大きすぎて受容層の透明性が低下し、印字濃度や光沢が低下する恐れがある。
【0031】
本発明における水性塗料の固形分濃度16質量%で測定した導電率は0.5〜10.0mS/cmが好ましく、より好ましくは1.0〜5.0mS/cmである。0.5mS/cmより低いと上述の乾燥過程における大きな凝集構造の生成が不十分となる恐れがあり、本発明の多孔質インク受容層を形成できず、ひび割れによる成膜不良を生じる恐れがある。10.0mS/cmより高いと乾燥過程での凝集が進みすぎて、受容層表面の平滑度が下がり、光沢が低下する恐れがある。
【0032】
本発明における水性塗料のpHは特に限定されるものではないが、湿式法シリカを用いた場合、アンモニアを加えてpHを7以上、好ましくは8以上に調節することは、乾燥過程における大きな凝集構造の生成を促進するため、本発明のインクジェット受容層を得るのに好適に用いられる。pHに上限は特にないが例えば10程度である。
【0033】
使用されるバインダー樹脂の例としては、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、ポリアルキレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、水溶性ポリビニルアセタール、ポリ−N−ビニルアセトアミド、ポリアクリルアミド、ポリアクリロイルモルホリン、ポリヒドロキシアルキルアクリレート、ポリアクリル酸、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ゼラチン、カゼイン等の水溶性樹脂及びこれらの水溶性誘導体が挙げられる。また、前記各樹脂または水溶性誘導体を含む共重合体でもよい。更にSBRラテックス、NBRラテックス等の水分散性樹脂も使用できるが、水溶性樹脂が好ましい。また、これら樹脂を単独で使用するだけでなく、二種類以上混合して用いることもできる。これらの中でも、ポリビニルアルコールはバインダー樹脂としての性能に優れ、もっとも好適に用いられる。
【0034】
使用される水溶性塩類の例としては、硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、硫酸水素ナトリウム、硝酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、ギ酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、塩化カリウム、硫酸水素カリウム、硝酸カリウム、酢酸カリウム、ギ酸カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三カリウム、チオ硫酸カリウムなどのアルカリ金属塩、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、酢酸カルシウム、ギ酸カルシウム、リン酸二水素カルシウム、塩化バリウム、硝酸バリウム、酢酸バリウム、ギ酸バリウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、硝酸マグネシウム、酢酸マグネシウムなどのアルカリ土類金属塩、塩化マンガン、酢酸マンガン、ギ酸マンガン、塩化第二銅、硫酸銅、塩化コバルト、硫酸ニッケル、塩化ニッケル、硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、塩化アルミニウム、臭化第一鉄、塩化第一鉄、塩化第二鉄、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、臭化亜鉛、塩化亜鉛、硝酸亜鉛、硫酸亜鉛などが挙げられる。これら水溶性塩類を単独で使用するだけでなく、二種類以上混合して用いることもできる。
【0035】
特にこの中でも、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩は容易に水性塗料に混合でき、かつ水性塗料を塗工後の乾燥過程において凝集を引き起こしやすく、本発明の多孔質インク受容層を容易に得ることができるため好適に用いられる。さらに、アルカリ金属の強酸塩、即ち塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩などは水性塗料中で最も安定に存在でき、アルカリ性においても沈降することがないため最も好適に用いられる。
【0036】
特開昭61−47290号発明にも、アルカリ金属の弱酸塩が用いられているが、弱酸塩に限られている点、及び使用されている顔料の2次粒子径が0.5〜30μmと大きい点が本発明と異なる。本発明においては乾燥工程において粒子の凝集を引き起こし、ひび割れを防止する目的で水溶性塩類が用いられ、特にアルカリ金属の弱酸塩に限られるものではない。使用される顔料の細孔容積も0.4〜2.0ml/gであり、特開昭61−47290号に例示されているコロイダルシリカのように低細孔容積のものとは異なる。
【0037】
特開2001−96897号発明では、気相法シリカ及び水溶性の金属化合物が使用されているが、用いる顔料が気相法シリカである点、及び膜面pHが3〜5の酸性領域である点が本発明と異なる。本発明では湿式法シリカ、アルミナ、ベーマイト、擬ベーマイトのいずれかの微細顔料と水溶性塩類が併用され、pHも酸性領域に限られない。また、水溶性塩類としてアルカリ金属塩も好ましく用いられる点において、多価金属塩が用いられる特開2001−96897号発明とは異なる。
【0038】
上記顔料、樹脂バインダー、水溶性塩類といった成分以外にも、目的に応じ各種添加物が用いられる。たとえば、インク定着剤としてのカチオン性樹脂が挙げられる。カチオン性樹脂の例としては、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート四級化物、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート四級化物、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド四級化物、ビニルイミダゾリウムメトクロライド、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド、モノアリルアミン塩酸塩、ジアリルアミン塩酸塩等のカチオン性を有する構造単位を含む樹脂が挙げられる。これらカチオン性樹脂をシリカなどのアニオン性顔料の分散液に混合して添加する際、両者の静電特性のため塗料は一時的にゲル化するが、ホモジナイザー等の機械的手段を用いて再分散させることによって使用可能となる。また、カチオン性物質として、無機塩やアルミナゾル等を配合することも可能である。
その他添加物として、一般的塗工紙製造に使用される分散剤、増粘剤、消泡剤、着色剤、帯電防止剤、濡れ剤などの助剤、また、印字画像の保存性向上のための紫外線吸収剤や光安定化剤を適宜添加することができる。
【0039】
本発明における基材シートとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリイミド、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの合成樹脂フィルムまたはポリエチレンラミネート紙などの合成樹脂ラミネート紙を用いると高光沢のインクジェット記録シートを得やすいので好ましい。ただし上質紙、塗工紙等の紙も使用でき、目的に応じて適宜用いられる。
【0040】
これらの基材はその表面に形成するインク受容層との接着力が不十分な場合には下塗り層を施したり、コロナ放電処理などの各種の易接着処理を施すことができる。基材の厚さは、プリンターの通紙性を考慮すると50〜500μmが好ましい。
【0041】
塗工方法としては公知の塗布手段、例えばバーコーティング法、ロールコーティング法、ブレードコーティング法、エアーナイフコーティング法、グラビアコーティング法、ダイコーティング法、カーテンコーティング法などを用いることができるが、これらに限らない。
【0042】
塗布量は乾燥後の重量として1〜50g/m程度が好ましく、さらに好ましくは3〜25g/m2である。ここで1g/m2より少ないとインクの吸収が不十分となりやすく、50g/m2より多くなるとカールが発生しやすくなる恐れがあり、コストもかさむ。
【0043】
また、インクジェット記録シートのカール抑制や、搬送性の向上のため、基材シートのインク受容層とは反対側に裏面層を設けることもできる。裏面層の構成及びそれに伴う基材シート裏面はその用途に応じて選択することができ、特に限定されるものではないが、塗工性及びコストを鑑みると親水性樹脂を主成分とする裏面層を設けることが好適である。また裏面に粘着剤層と剥離シートを設けてもよい。
【0044】
本発明では多孔質インク受容層が一層のみでも充分なインク吸収性が得られるが、2層以上とすることもでき、例えば前記顔料と樹脂バインダーを含有する下塗り層を設けることもできる。
【0045】
【実施例】
以下実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、もとより本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、本実施例で表示する%、部はそれぞれ質量%、質量部を意味する。
【0046】
[顔料の細孔容積及び細孔径の測定方法]
顔料の水分散液を105℃で乾燥し、得られた粉体試料の細孔容積及び細孔径分布を、ガス吸着法比表面積・細孔分布測定装置(Coulter社製SA3100plus型)を用い、前処理として200℃で2時間真空脱気した後に測定した。吸着ガスとしては窒素を用いた。細孔容積は細孔径100nm以下の細孔の全細孔容積の値を使用した。細孔径は、脱着等温線のBJH法による解析から求められた細孔分布曲線における最大体積分率の細孔径とした。
【0047】
[顔料の平均粒径測定法]
動的光散乱法によるレーザー粒度計(大塚電子(株)製、LPA3000/3100)を用いて、顔料の水分散液を充分に蒸留水で希釈した状態で測定した。平均粒径はキュムラント法を用いた解析から算出される値を用いた。
【0048】
[塗料の導電率測定方法]
イオン交換水で塗料濃度を16.0%に調整し、温度を25℃に合わせた後、塗料の導電率を、導電率計(Eutech Instruments社製、CyberScan CON100)を用いて測定した。
【0049】
[シリカゾルA(分散液)の製造方法]
ゲル法によって製造された平均粒径13.1μmの合成無定型シリカ(グレースデビソン社製、商品名:サイロジェットP612、比表面積290m/g、一次粒径7nm)を濃度20%で水分散させ、アンモニア水を添加してpHを9.0に調整したスラリーを、横型ビーズミル(シンマルエンタープライゼス(株)製、ダイノーミルKDL−Pilot)により繰り返し粉砕分散し、平均二次粒径300nmのシリカの20%水分散液を製造した。このシリカ微細顔料の細孔容積は0.7ml/gであった。
【0050】
[シリカゾルB(分散液)の製造方法]
沈降法によって製造された平均粒径5.0μmの合成無定型シリカ((株)トクヤマ製、商品名:ファインシールE−50、比表面積170m/g、一次粒径15nm)を濃度20%で水分散させ、アンモニア水を添加してpHを9.0に調整したスラリーを、シリカゾルAの製造方法で用いた横型ビーズミルにより繰り返し粉砕分散し、平均二次粒径200nmのシリカの15%水分散液を製造した。このシリカ微細顔料の細孔容積は1.0ml/gであった。
【0051】
[シリカゾルC(分散液)の製造方法]
気相法によって製造された平均一次粒径7nmのシリカ(日本アエロジル(株)製、商品名:AEROSIL130)を濃度20%で水分散させ、塩酸でpHを2.5に調整したのち、油圧式超高圧ホモジナイザー(みづほ工業(株)製、マイクロフルイタイザーM110−E/H)にて3回分散して、平均二次粒径250nmのシリカの20%水分散液を製造した。このシリカ微細顔料の細孔容積は1.2ml/gであった。
【0052】
<実施例1>
シリカゾルA100部に、硫酸ナトリウムの10%水溶液を0.5部、及びけん化度が98.5%であるポリビニルアルコール((株)クラレ製、商品名:PVA−140)の10%水溶液を40部混合し、シリカ100部に対して硫酸ナトリウムが0.25部、ポリビニルアルコールが20部含まれる固形分濃度17.1%の塗料を調製し、イオン交換水を加えて濃度を16.0%とした。この塗料の主成分及び上記方法にて測定した導電率値を表1に示した。この塗料を基材である厚さ100μmの透明ポリエチレンテレフタラートフィルム((株)東レ製、商品名:ルミラー100−Q80D)上に乾燥重量で塗工量が20g/mになるようにバー塗工した。被膜を120℃で乾燥し、本発明のインクジェット記録シートを得た。このインクジェット記録シートにおけるインク受容層の細孔分布及び品質を以下の方法で評価し、表2に示した。
【0053】
[インク受容層の細孔分布の測定]
本発明の実施例及び比較例のインクジェット記録シートにおけるインク受容層の細孔分布の測定は以下のように行った。マイクロメトリックス ポアサイザ9320((株)島津製作所製)を用い、水銀圧入法により求めた空隙量分布曲線から細孔分布を計算して求め、ピーク位置及びモード細孔径を求めた。また、得られた細孔分布曲線より、6nm〜1μmの範囲での細孔容積を積算して求めた。各実施例及び比較例の受容層における、細孔径6〜150nmの範囲のピークの数、ピーク位置、モード細孔径及び細孔径6nm〜1μmの範囲の細孔容積を表2に示した。
【0054】
インクジェット記録シートの画質評価方法
[受容層のひび割れ]
本発明におけるインク受容層のひび割れについて目視にて評価を行い、10cm×10cmのシート内のひび割れ状況を次の3段階で評価した。
○:ひび割れ無し
△:1mm以上にわたるひび割れが数箇所以上あり
×:全面にひび割れあり
【0055】
[インク吸収速度]
インク受容層のインク吸収速度を以下の方法で評価した。インクジェット記録シートにインクジェットプリンター(EPSON製、PM−800C)のスーパーファイン専用紙推奨設定印刷モードで、シアン、マゼンタ、イエロー及びブラックの各色ベタを印字した。印字部にPPC用紙を手で押し当て、インクが転写するかどうかを目視にて調べた。転写がなくなるまでの時間を測定し、次の3段階で評価した。
○:1秒未満
△:1秒以上30秒未満
×:30秒以上
【0056】
[インク吸収量]
本発明におけるインク受容層のインク吸収量を以下の方法で評価した。インクジェット記録シートに上記方法で赤、緑、青の混色べたを印字し、インクあふれの有無、印字濃度の均一性を以下の3段階で評価した。
○:インクあふれはなく、均一性もよい。
△:インクあふれはないが、濃度の均一性が悪い。
×:インクあふれが見られる。
【0057】
<実施例2>
硫酸ナトリウムの10%水溶液の添加量を1部に変え、シリカ100部に対する硫酸ナトリウムの量を0.5部とした以外は実施例1と同様の方法で本発明のインクジェット記録シートを得た。塗料の主成分及び導電率を表1、インクジェット記録シートの細孔分布及び品質を表2に示した。
【0058】
<実施例3>
シリカゾルA100部に、塩化ナトリウムの10%水溶液を0.5部、及び実施例1にて使用のポリビニルアルコールの10%水溶液を40部混合し、シリカ100部に対して塩化ナトリウムが0.25部、ポリビニルアルコールが20部含まれる固形分濃度17.1%の塗料を調製し、イオン交換水を加えて希釈した濃度16.0%の塗料を用いたこと以外は実施例1と同様の方法で本発明のインクジェット記録シートを得た。塗料の主成分及び導電率を表1、インクジェット記録シートの細孔分布及び品質を表2に示した。
【0059】
<実施例4>
シリカゾルA100部に、塩化カルシウムの10%水溶液を0.5部、及び実施例1にて使用のポリビニルアルコールの10%水溶液を40部混合し、シリカ100部に対して塩化カルシウムが0.25部、ポリビニルアルコールが20部含まれる固形分濃度17.1%の塗料を調製し、イオン交換水を加えて希釈した濃度16.0%の塗料を用いたこと以外は実施例1と同様の方法で本発明のインクジェット記録シートを得た。塗料の主成分及び導電率を表1、インクジェット記録シートの細孔分布及び品質を表2に示した。
【0060】
<実施例5>
シリカゾルA100部に、硫酸カルシウムの10%水溶液を0.5部、及び実施例1にて使用のポリビニルアルコールの10%水溶液を40部混合し、シリカ100部に対して硫酸カルシウムが0.25部、ポリビニルアルコールが20部含まれる固形分濃度17.1%の塗料を調製し、イオン交換水を加えて希釈した濃度16.0%の塗料を用いたこと以外は実施例1と同様の方法で本発明のインクジェット記録シートを得た。塗料の主成分及び導電率を表1、インクジェット記録シートの細孔分布及び品質を表2に示した。
【0061】
<実施例6>
シリカゾルA100部に、塩化ナトリウムの10%水溶液を1部、及びけん化度が88.0%であるポリビニルアルコール((株)クラレ製、商品名:PVA−235)の10%水溶液を40部混合し、シリカ100部に対して塩化ナトリウムが0.5部、ポリビニルアルコールが20部含まれる固形分濃度17.1%の塗料を調製し、イオン交換水を加えて希釈した濃度16.0%の塗料を用いたこと以外は実施例1と同様の方法で本発明のインクジェット記録シートを得た。塗料の主成分及び導電率を表1、インクジェット記録シートの細孔分布及び品質を表2に示した。
【0062】
<実施例7>
シリカゾルA100部に、塩化ナトリウムの10%水溶液を0.2部、及びけん化度が99.5%であるポリビニルアルコール((株)クラレ製、商品名:PVA−140H)の10%水溶液を40部混合し、シリカ100部に対して塩化ナトリウムが0.1部、ポリビニルアルコールが20部含まれる固形分濃度17.1%の塗料を調製し、イオン交換水を加えて希釈した濃度16.0%の塗料を用いたこと以外は実施例1と同様の方法で本発明のインクジェット記録シートを得た。塗料の主成分及び導電率を表1、インクジェット記録シートの細孔分布及び品質を表2に示した。
【0063】
<実施例8>
シリカゾルB100部に、硫酸ナトリウムの10%水溶液を5部、及び実施例1にて使用のポリビニルアルコールの10%水溶液を40部混合し、シリカ100部に対して硫酸ナトリウムが2.5部、ポリビニルアルコールが20部含まれる固形分濃度17.1%の塗料を調製し、イオン交換水を加えて希釈した濃度16.0%の塗料を用いたこと以外は実施例1と同様の方法で本発明のインクジェット記録シートを得た。塗料の主成分及び導電率を表1、インクジェット記録シートの細孔分布及び品質を表2に示した。
【0064】
<実施例9>
シリカゾルB100部に、塩化ナトリウムの10%水溶液を2.5部、及び実施例1にて使用のポリビニルアルコールの10%水溶液を40部混合し、シリカ100部に対して塩化ナトリウムが1.25部、ポリビニルアルコールが20部含まれる固形分濃度17.1%の塗料を調製し、イオン交換水を加えて希釈した濃度16.0%の塗料を用いたこと以外は実施例1と同様の方法で本発明のインクジェット記録シートを得た。塗料の主成分及び導電率を表1、インクジェット記録シートの細孔分布及び品質を表2に示した。
【0065】
<比較例1>
硫酸ナトリウムを添加しなかったこと以外は実施例1と同様の方法で本発明のインクジェット記録シートを得た。塗料の主成分及び導電率を表1、インクジェット記録シートの細孔分布及び品質を表2に示した。
【0066】
<比較例2>
硫酸ナトリウムの10%水溶液の添加量を0.01部に変え、シリカ100部に対する硫酸ナトリウムの量を0.005部とした以外は実施例1と同様の方法で本発明のインクジェット記録シートを得た。塗料の主成分及び導電率を表1、インクジェット記録シートの細孔分布及び品質を表2に示した。
【0067】
<比較例3>
塩化ナトリウムを添加しなかったこと以外は実施例6と同様の方法で本発明のインクジェット記録シートを得た。塗料の主成分及び導電率を表1、インクジェット記録シートの細孔分布及び品質を表2に示した。
【0068】
<比較例4>
硫酸ナトリウムを添加しなかったこと以外は実施例8と同様の方法で本発明のインクジェット記録シートを得た。塗料の主成分及び導電率を表1、インクジェット記録シートの細孔分布及び品質を表2に示した。
【0069】
<比較例5>
硫酸ナトリウムの10%水溶液の添加量を0.01部に変え、シリカ100部に対する硫酸ナトリウムの量を0.005部とした以外は実施例8と同様の方法で本発明のインクジェット記録シートを得た。塗料の主成分及び導電率を表1、インクジェット記録シートの細孔分布及び品質を表2に示した。
【0070】
<比較例6>
シリカゾルC100部に、硫酸ナトリウムの10%水溶液を22部、及び実施例1にて使用のポリビニルアルコールの10%水溶液を40部混合し、シリカ100部に対して硫酸ナトリウムが11.0部、ポリビニルアルコールが20部含まれる固形分濃度17.1%の塗料を調製し、イオン交換水を加えて希釈した濃度16.0%の塗料を用いたこと以外は実施例1と同様の方法で本発明のインクジェット記録シートを得た。塗料の主成分及び導電率を表1、インクジェット記録シートの細孔分布及び品質を表2に示した。
【0071】
【表1】
Figure 0004099985
【0072】
【表2】
Figure 0004099985
【0073】
表2の各実施例から明らかなように、細孔径6〜150nmの範囲に2つのピーク、または肩を有する1つの幅広いピークを有する多孔質インク受容層を有するインクジェット記録シートは、乾燥時のひび割れによる成膜不良を生じること無く製造でき、かつインク吸収速度が十分に速く、インク吸収量も大きい。これは、顔料の細孔径d1(nm)に比べて受容層のモード細孔径d2(nm)が大きく、d2−d1が表2の各実施例に示されるような値になっていることからも分かるように、水溶性塩類の効果により受容層中に大きな凝集構造が形成され、大きな空隙ができたためにインク吸収速度及び吸収量が高くなっているものである。特に、実施例2〜5では、2つのピークのうち大きな方のピークが60nm付近と、顔料が持つ細孔径13nmに比べて十分に大きなところに存在するためひび割れは全く生じること無く、インク吸収速度も速かった。また、受容層の細孔容積も0.80ml/g付近の大きな値になっているためインク吸収量も十分に大きかった。なお、各実施例においてモード細孔径とメジアン細孔径の差の絶対値の値は10nmを超えており、細孔分布曲線におけるピークが幅広く、大きな範囲の細孔も持つことを示している。
【0074】
一方、各比較例のように上記の細孔径範囲のピークが1つのみであるインクジェット記録シートでは、大きな凝集構造を生じていないために乾燥過程での強い毛細管収縮力を緩和することができず、受容層はひび割れを多数生じた。凝集構造を生じないために受容層の細孔径は大きくなっておらず、そのためにインク吸収速度は遅く、細孔容積も大きくなりにくいためにインク吸収量も不足していた。なお、比較例6では大きなひび割れが多数生じたためにインクジェットプリンターで印字することができず、インク吸収速度及びインク吸収量の評価ができなかった。
【0075】
【発明の効果】
インク受容層に細孔径6〜150nmの範囲に2つのピーク、または肩を有する1つの幅広いピークを持たせることで、乾燥工程においてひび割れを生じること無く製造でき、かつ高いインク吸収速度、インク吸収量をもつインクジェット記録シートを得ることができた。本発明のインクジェット記録シートは、インク吸収性と光沢性、インク乾燥性を兼ね備えたものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のインクジェット記録シートにおけるインク受容層の細孔分布曲線の図。Vはインク受容層の細孔容積を、Dはインク受容層の細孔径を示す。
【図2】細孔径6〜150nmの範囲にピークを1つしか持たないインク受容層の細孔分布曲線の図(本発明外)。

Claims (10)

  1. 基材上に、微細顔料とバインダー樹脂を含む少なくとも1層のインク受容層を設けたインクジェット記録シートにおいて、
    該インク受容層が、水銀ポロシメーターで測定した細孔分布曲線において細孔径6〜150nmの範囲に2つのピーク、または肩を有する1つの幅広いピークを有する多孔質インク受容層を少なくとも1層有し、
    該微細顔料が、湿式法シリカ、アルミナ、ベーマイト、擬ベーマイトからなる群より選ばれる少なくとも一種であり、かつその平均粒径が、1.0μm以下、窒素吸着法による細孔径100nm以下の範囲の細孔容積が0.4〜2.0ml/gであり、
    該多孔質インク受容層が、該微細顔料、該バインダー樹脂、及び水溶性塩類を含有し、かつ固形分濃度16%で測定した導電率が0.5〜10.0mS/cmである水性塗料を基材に塗工後、乾燥することによって形成されている、
    ことを特徴とするインクジェット記録シート。
  2. 該細孔分布曲線におけるモード細孔径とメジアン細孔径との差の絶対値が10nm以上である請求項1に記載のインクジェット記録シート。
  3. 該多孔質インク受容層の細孔径6nm〜1μmの範囲における細孔容積が0.5〜2.0ml/gである請求項1または2に記載のインクジェット記録シート。
  4. 窒素吸着法により測定した該微細顔料の細孔径d1(nm)と水銀ポロシメーターにより測定した該多孔性インクジェット受容層のモード細孔径d2(nm)との間に20<d2−d1<100の関係式が成り立つことを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のインクジェット記録シート。
  5. 該微細顔料が湿式法シリカであり、該水性塗料がアンモニアを含有し、pHが7以上である請求項1〜のいずれかに記載のインクジェット記録シート。
  6. 該微細顔料が平均粒径3〜40nmの1次粒子が凝集してなる平均粒径8nm〜800nmの2次粒子である請求項1〜のいずれかに記載のインクジェット記録シート。
  7. 該バインダー樹脂がポリビニルアルコールである請求項1〜のいずれかに記載のインクジェット記録シート。
  8. 該水溶性塩類がアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩から選ばれる少なくとも一種である請求項1〜7のいずれかに記載のインクジェット記録シート。
  9. 該水溶性塩類がアルカリ金属の強酸塩である請求項に記載のインクジェット記録シート。
  10. 微細顔料100質量部に対し水溶性塩類を0.01〜10重量部の割合で含有する請求項1〜9のいずれかに記載のインクジェット記録シート。
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