JP4085883B2 - インクジェット記録シート - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェット記録シートに関するものであり、特に写真印画紙調の光沢を有し、高いインク吸収速度とインク吸収量、耐水性、耐湿性を兼ね備え、なおかつインク受容層にひび割れが発生することがないインクジェット記録シートに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、インクジェット記録方式は高画質化及び高速印字化が急速に進み、広く普及している。インクジェット記録方式で使用されるインクジェット記録シートには銀塩写真に匹敵する高画質、印字光沢が要求される。このインクジェット記録方式では多量のインクを吐出して高印字濃度を得ているため、インクジェット記録シートには吐出されるインクを十分吸収し、なおかつインクの吸収が早く、インクが連続的に吐出されて印字ドットが重なる場合においてもインクが流れ出したり滲んだりしないことが重要である。
【0003】
これらの問題を解決するためにインクジェット記録用シートの製造に際しては、例えば特開2001-270232:特許文献1には、高いインク吸収性と高精細な画像を得る目的で、主に空隙を多く有する微細顔料をバインダーと共にインク受容層として塗工することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、一次粒子が小さく、吸油量の大きい顔料を塗工する場合、顔料分散粘度が極めて高いがゆえに、分散濃度を高くすることが出来ない上、バインダー水溶液や、助剤等を添加した最終的な塗工液では一段と固形分濃度が低くなり、著しく水分の多い塗工液とならざるを得ない。従って乾燥速度の制約から塗工速度が上げられず、生産性が悪いため製造コストが高くなるという欠点があった。またこのような1次粒子の小さい顔料を含む塗工液を乾燥させる際には塗膜の強い毛細管収縮がおこり、塗膜がひび割れて光沢が低下するという問題があった。
【0005】
また特開2001-87701:特許文献2では、ひび割れの問題を解決するためにインクジェット記録シートを製造する際の微粒子、親水性樹脂を含有する塗布液を乾燥開始時に200cp以上となるように塗工することを提案している。このような粘度に調節するために上記の提案では親水性樹脂の種類に応じて、ほう酸及びその塩、エポキシ系硬膜剤、アルデヒド系硬膜剤などの各種硬膜剤を添加しているが、硬膜剤を添加した塗料では経時的に著しく粘度が上昇し、塗工不能となる場合がある。また200cp以上の粘度に調節するまで冷却時間を設けることが必要となり、粘度を制御することが困難であるという問題が発生する。
【0006】
近年ではインクジェット記録シートには吸収性や光沢だけでなく、高い保存性も要求されてきている。インクジェット記録シートの耐水性、耐湿性を改善するための手段として例えば特開平11−20306:特許文献3には膜面pHを3以上5以下とすることを提案している。更に特開2002−331746:特許文献4では、色素系インクで印刷した時に色相が良好となり、かつ、光沢が高くなるインクジェット記録シートを提供するために、支持体と多孔質画像受容層の間にポリマーと塩基性物質よりなる下塗り層を設けることで該多孔質受容層のpHをpH単位で2以上上昇させることを提案している。
【0007】
上記先行技術は耐湿性や色相の改善が課題であって、効果は認められるがインク受容層のひび割れ改善効果については十分ではない。
【0008】
【特許文献1】
特開2001−270232
【特許文献2】
特開2001−87701
【特許文献3】
特開平11−20306
【特許文献4】
特開2002−331746
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、前記従来の技術が抱えている諸問題を解決し、写真印画紙調の光沢を有し、インク吸収速度及びインク吸収量に優れ、なおかつインク受容層製造工程において乾燥時のひび割れによる成膜不良を生じることのないインクジェットプリンター用記録シートを提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、以下のように構成されるインクジェット記録シートが上記課題を満足できることを見出した。すなわち、本発明は、支持体上にインクの溶剤部分の吸収を主目的とする下層のインク受容層と、インクの染料の定着を主目的とする上層のインク受容層を有し、上層と下層に適切な材料とpHが選択されたものであり、インク吸収性がよく、なおかつ光沢のあるインクジェット記録シートを得るものである。
【0011】
本発明は下記の態様を有する。
(1)支持体上に少なくとも2層のインク受容層を有するインクジェット記録シートであって、下層のインク受容層が、膜面pHが6.5〜8.5であり、シリカ、バインダー樹脂、及び塩基性物質を含み、下層に接するすぐ上のインク受容層の膜面pHを0.5以上、かつ2.0未満上昇させる効果があるインク受容層であり、該下層に接するすぐ上のインク受容層が、動的光散乱法による平均粒径が1μm以下のシリカ、カチオン性樹脂、及びバインダー樹脂を含有し、かつ膜面pHが2〜5.5であることを特徴とするインクジェット記録シート。
【0012】
(2)下層に接するすぐ上のインク受容層の長さ50μm以上のひび割れが5個/cm 2 以下であることを特徴とする(1)記載のインクジェット記録シート。
【0013】
(3)下層のインク受容層が、シリカとバインダー樹脂からなり、カチオン性樹脂がシリカに対して質量比で0.5未満であるインク受容層であることを特徴とする(1)〜(2)記載のインクジェット記録シート。
【0014】
(4)下層のインク受容層がアルカリ金属または、アルカリ土類金属から選ばれる1種以上の塩基を含有することを特徴とする(1)〜(3)記載のインクジェット記録シート。
【0015】
(5)下層のシリカの動的光散乱法による平均粒径が1μm以下であることを特徴とする(1)〜(4)記載のインクジェット記録シート。
【0016】
(6)下層のシリカの窒素吸着法による比表面積が100〜300m2/g、細孔径100nm以下の細孔の細孔容積が0.4〜1.0ml/gであることを特徴とする(1)〜(5)記載のインクジェット記録シート。
【0017】
(7)下層に接するすぐ上のインク受容層のシリカの窒素吸着法による比表面積が200〜400m2/g、細孔径100nm以下の細孔の細孔容積が0.6〜2.0ml/gであることを特徴とする(1)〜(6)記載のインクジェット記録シート。
【0018】
(8)下層及び/又は下層に接するすぐ上のインク受容層のシリカが活性珪酸を縮合させて製造されたものであることを特徴とする(1)〜(7)記載のインクジェット記録シート。
【0020】
(9)支持体上に下層として膜面pHが6.5〜8.5のインク受容層を設け、下層に接するすぐ上に、動的光散乱法による平均粒径が1μm以下のシリカ、カチオン性樹脂、及びバインダー樹脂を含有し、かつpHが1.5〜5の水性塗工液を塗工して乾燥し、膜面pHが2〜5.5のインク受容層を設けることを特徴とする(1)〜(8)記載のインクジェット記録シートの製造方法。
【0021】
受容層の表面pHを制御する提案として先に先行技術として示した特開2002−331746号公報が挙げられる。該公報では、支持体と多孔質画像受容層との間に下塗り層を有し、そして、該下塗り層は、塩基性材料とポリマーの混合物を含んでなり、該画像受容層の表面pHをpH単位で2以上上昇させることができるインクジェット記録要素が提案されている。しかしながらpH単位で、2以上上昇させることにより、ひび割れを改善する効果については明記されていない。また、本発明者の検討結果では、pHを2以上上昇させると印字濃度の低下を招くことが明らかであり、下層のpHは6.5〜8.5であり、上層のpHが下層の影響を受けて上昇する場合には、0.5以上、かつ2.0未満が好ましいことを見出した。
【0022】
特開平11−20306号公報には記録されたインク画像の耐湿性を改善するために、インク吸収層の記録面側の膜面pHを3以上、5以下としたインクジェット記録シートが提案されているが、膜面pHを規定することで受容層のひび割れが改善されることについては記載されていない。また、少なくとも2層のインク受容層を設け、そのpHを適切に設定することについて示唆もない。
【0023】
従って本発明は上記先行技術とは課題を異にし、しかも構成も異なるものである。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明におけるインクジェット記録シート及び製造方法について詳細に説明する。本発明におけるインクジェット記録シートは主としてインク中の染料、顔料を定着する上層のインク吸収層と、インクの溶剤を主として吸収する支持体側の下層のインク吸収層を有し、かつ上層と下層が接しており、かつ上層の膜面pHと下層の膜面pHが異なるものである。
【0025】
もちろん下層のさらに支持体側に支持体との接着層やインク吸収層を設けても良く、上層部分のさらに上に光沢を強化するための最表層などを設けてもよい。該最表層には、例えばコロイダルシリカ等のシリカゾル、アルミナゾル等のアルミナ水和物、チタニアゾル、ジルコニアゾル等の金属酸化物や、金属水酸化物、及びその他の平均粒子径が、10〜200nmの超微粒子顔料を単独あるいは2種以上混合して使用することが例示される。
【0026】
本発明における上層のインク受容層は主として、動的光散乱法による平均粒径が1μm以下のシリカ、バインダー樹脂、カチオン樹脂よりなるものである。
シリカは石英などの天然のシリカを粉砕して得られる天然シリカと、合成により製造される合成シリカに大別され、合成シリカは湿式法シリカと乾式法シリカに大別される。ここで湿式法シリカは、湿式法により製造される無定型合成シリカを指し、沈降法によるシリカとゲル法によるシリカが知られているており、後述するがその他に活性珪酸を縮合させて製造されるシリカも含まれる。沈降法シリカは、例えば、特開昭55―116613号公報に開示されているようにケイ酸アルカリ水溶液に鉱酸を段階的に加え、沈降したシリカをろ過して製造されるものであり、ゲル法シリカはケイ酸アルカリ溶液に鉱酸を混合し、ゲル化させたのち、洗浄及び粉砕して得られるものである。この沈降法シリカとゲル法シリカはシリカの一次粒子が結合して二次粒子を形成しており、一次粒子間と二次粒子間に多くの空隙を有しており、そのためにインク吸収量が大きい上、光を散乱する性質が小さいので高い印字濃度が得られるので本発明に好ましく用いられる。
【0027】
また乾式法シリカとは、気相法シリカとも称され、例えば特公昭59−169922号公報に開示されているように、揮発性珪素化合物を火焔中で高温分解する方法により製造されるシリカであり、非常に嵩密度が低い粉体として市販されている。上記の沈降法シリカやゲル法シリカに比較して、水に分散することが容易であり、透明度の高い塗膜を形成する。また細孔容積が大きいのでインクを吸収する能力が高く、本発明では上層に好適に用いることができる。
【0028】
湿式法シリカのやや特殊な製造方法として活性珪酸を縮合して製造する方法が知られている。例えば米国特許第2574902号明細書には、ケイ酸ナトリウムの希釈水溶液をカチオン交換樹脂で処理してナトリウムイオンを除去することにより活性ケイ酸水溶液を調製し、この活性ケイ酸水溶液の一部にアルカリを添加して安定化させて重合することにより、シリカのシード粒子が分散した液(シード液)を作り、アルカリ条件を保持しながら活性ケイ酸水溶液の残部(フィード液)をこれに徐々に添加してケイ酸を重合させ、コロイダルシリカの粒子を成長させる方法が開示されている。この方法で製造されるシリカは直径が3nm〜数百nmであり、二次凝集をしておらず、しかも粒度分布がきわめて狭いという特長を有している。通常、コロイダルシリカと呼ばれ、7nm〜100nmの製品が水分散液として市販されており、インク受容層に用いると、極めて高光沢で透明性が高い受容層が得られる。しかし二次粒子でないことから、細孔容積は通常0.3ml/g以下であり、インク吸収量は前記、沈降法シリカやゲル法シリカに劣る。
【0029】
細孔容積が大きく、かつコロイダルシリカのように高光沢で透明性が高いインク受容層を形成するシリカを活性珪酸を縮合させて製造することも可能であり、具体的には特開平2001−354408号公報、特開平2002−145609号公報に開示されているシリカが例示される。このシリカはシリカの一次粒子が結合した二次粒子であり、しかも二次粒子径を光の波長以下に調節することが容易であるので、インク吸収量と光沢度に優れるインク受容層を容易に製造できることから本発明に最も好ましく用いられる。
【0030】
シリカを平均粒径1μm以下の微細シリカとする方法は特に限定されないが、その手段の一つとしてシリカに機械的手段で強い力を与えることにより粉砕、分散して得る方法が挙げられる。つまり、breaking down法(塊状原料を細分化する方法)によって得られるものである。機械的手段としては、超音波ホモジナイザー、圧力式ホモジナイザー、ナノマイザー、高速回転ミル、ローラーミル、容器駆動媒体ミル、媒体攪拌ミル、ジェットミル、サンドグラインダー等の機械的手法が挙げられ、組み合わせて用いても良い。
【0031】
動的光散乱法による平均粒径が1μm以下のものをインクジェット記録シートに用いると、光沢に優れたものが得られる。好ましくは8nm〜800nm、より好ましくは10nm〜600nm、最も好ましくは15nm〜500nmである。この平均粒子径は動的光散乱法によって測定され、キュムラント法を用いた解析から算出される値である。
【0032】
上層のインク受容層に用いるシリカは、窒素吸着法による比表面積が200〜400m2/g、細孔径100nm以下の細孔の細孔容積が0.6〜2.0ml/gであることが好ましい。上層はカチオン樹脂を含み、インク中の染料を定着する役割があるので、印字濃度が高いインクジェット記録シートを得るためには上層の透明度が高い方が好ましく、そのためには比表面積が200〜400m2/g、細孔容積が0.6〜2.0ml/gのシリカを用いることが良い。比表面積は、より好ましくは250〜350m2/gであり、細孔容積は、より好ましくは、0.8〜1.8ml/gである。
【0033】
比表面積が小さいことは一次粒子径が大きいことを意味し、比表面積が大きいことは一次粒子径が小さいことを意味する。球状シリカ粒子が単分散コロイド状シリカである場合、粒子の直径は、D(nm)=2.720×103/比表面積(m2/g)で計算できるが、一次粒子が化学結合して二次粒子を形成しているシリカは、一次粒子の直径を正確に求めることは困難である。このため本発明では一次粒子の平均粒子径の尺度として比表面積を採用している。
【0034】
配合するカチオン樹脂の例としては、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート塩酸塩、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート四級化物、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート塩酸塩、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート四級化物、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド塩酸塩、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド四級化物、ビニルイミダゾリウムメトクロライド、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド、メチルジアリルアミン塩酸塩、ジアリルアミン塩酸塩、モノアリルアミン塩酸塩、等の重合物又は共重合物が挙げられる。その他、ポリエチレンイミン塩酸塩、ポリビニルアミン塩酸塩、ジシアンジアミド・ポリアルキレンポリアミン縮合物、2級アミン・エピクロロヒドリン付加重合物、ポリエポキシアミン、ポリアミジンなどのカチオン性を有する構造を含む重合物も例示されるが、これらに限定されるものではない。
【0035】
カチオン樹脂をシリカ分散液に混合する際には増粘やゲル化を起こしやすいが、その場合にはホモジナイザーにて再分散して使用すれば良い。カチオン樹脂の配合量は特に制約はないが、シリカ100質量部に対し1〜50質量部程度であり、好ましくは2〜40質量部、より好ましくは5〜30質量部の割合で含有する。カチオン樹脂の添加量が少ない場合にはインク中の染料を定着する能力が低くなり、インクジェット記録シートの耐水性が低下する。またカチオン樹脂の添加量が多い場合にはインク吸収量やインク吸収速度が低下する弊害がある。
【0036】
上層のバインダー樹脂としては水溶性樹脂を用いる事ができ、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ポリアクリロイルモルホリン、水溶性ポリビニルアセタール、ポリ−N−ビニルアセトアミド、ポリ−N−ビニルホルムアミド、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、カゼイン、でんぷんなどを例示することができ、単独で、或いは混合して配合することができる。特にポリビニルアルコールが好ましい。
【0037】
ポリビニルアルコールのけん化度は90%以上が特に好ましく、さらに95%以上が最も好ましい。けん化度が高い方がインク受容層のひび割れが少なく、かつインク吸収性も良好である。その理由は水酸基を多く含む高けん化度のPVAの方がシリカとより強く相互作用するためと考えられる。また重合度は1700以上が好ましく、より好ましくは2500以上であり、最も好ましくは3500以上である。上限は特にないが10000程度である。重合度が高い方がインク受容層のひび割れが少なく、好ましい。
【0038】
また水性樹脂エマルジョンをバインダーとして用いても良い。例えばスチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体などの共役ジエン系重合体ラテックス、アクリル系重合体、スチレン−酢酸ビニル共重合体などのビニル系共重合体ラテックス、ポリウレタン系ラテックス、ポリエステル系ラテックスなど、一般に用いられている水性エマルジョンを使用する事ができる。
【0039】
バインダー樹脂の配合量は、シリカ100質量部に対して、1〜100質量部、好ましくは5〜50質量部、より好ましくは10〜30質量部の割合である。バインダー樹脂の配合量が少ない場合には、インク受容層のひび割れが激しく、多すぎる場合にはインク吸収量やインク吸収速度が低下するので、バランスを勘案しながら適切に調節すれば良い。
【0040】
シリカ、カチオン性樹脂、及びバインダー樹脂を含む上層のインク受容層の塗料のpHは1.5〜5の範囲内になる。必要であれば塩酸、硫酸等でpHを調整してもよい。該水性塗料を下層のインク受容層上に塗布し、乾燥してインク受容層を形成する。膜面pHは2〜5.5であり、好ましくは3〜5.5、より好ましくは4〜5.5である。
【0041】
本発明における下層のインク受容層は膜面pHが6.5〜8.5であれば良いが、好ましくは主としてシリカ、バインダー樹脂から成り、塩基性物質を含む。シリカは上層と同様に、合成シリカがインク吸収性が良いので好ましく、湿式法シリカ、乾式法シリカを用いることができるが、動的光散乱法による平均粒径が1μm以下のものを用いると、下層インク受容層表面が平滑になるため、重ねて塗布される上層が高光沢を得ることが出来る.好ましくは8nm〜800nm、より好ましくは10nm〜600nm、最も好ましくは15nm〜500nmである。この平均粒子径は動的光散乱法によって測定され、キュムラント法を用いた解析から算出される値である。また活性珪酸を縮合させて製造されたシリカであると、粒度分布が狭く、粗大なシリカを含まないので光沢がもっと良い。
【0042】
また窒素吸着法による比表面積が100〜300m2/g、細孔径100nm以下の細孔の細孔容積が0.4〜1.0ml/gであることが好ましい。本発明では下層にインク中の溶媒を吸収する役割を持たせており、比較的塗工量を多くする必要があるので、下層塗工中にひび割れが発生しにくいことが重要である。そのためには比表面積が100〜300m2/g、細孔容積が0.4〜1.0ml/gであることが良い。
【0043】
下層インク受容層におけるシリカの比表面積が100m2/gよりも小さいとインクの吸収速度は速くなるものの透明性が低下するため好ましくない。また該受容層の比表面積が300m2/gよりも大きいと、インクの吸収速度が遅くなるし、乾燥中のひび割れが悪化するので好ましくない。好ましくは比表面積が150〜280m2/gである。
【0044】
インク吸収能の高い多孔質インク受容層を得るためには、シリカの細孔容積は、0.4〜1.0ml/gが好ましい。細孔容積が小さいと、インク吸収量が不足し、逆に大きい場合には、下層の塗工中にひび割れが発生しやすくなる。より好ましくは0.5〜0.8ml/gである。なお、この細孔容積は窒素吸着法で測定した細孔径100nm以下の範囲の値である。
【0045】
バインダー樹脂は、上層のバインダー樹脂と同じものを使用できる。特にポリビニルアルコールが好ましい。ポリビニルアルコールのけん化度は90%以上が特に好ましく、さらに95%以上が最も好ましい。けん化度が高い方がインク受容層のひび割れが少なく、かつインク吸収性も良好である。その理由は水酸基を多く含む高けん化度のPVAの方がシリカとより強く相互作用し、塗膜乾燥工程でのシリカの凝集を促進し、空隙率の大きな塗膜を形成するためと考えられる。また重合度は1700以上が好ましく、より好ましくは2500以上であり、最も好ましくは3500以上である。上限は特にないが10000程度である。重合度が高い方がインク受容層のひび割れが発生しにくい。
【0046】
バインダー樹脂の配合量は、シリカ100質量部に対して、1〜100質量部、好ましくは5〜50質量部、より好ましくは10〜30質量部の割合である。バインダー樹脂の配合量が少ない場合には、インク受容層のひび割れが激しくなる恐れがあり、多すぎる場合にはインク吸収量やインク吸収速度が低下するので、バランスを勘案しながら適切に調節すれば良い。
【0047】
本発明では光沢層(上層)のひび割れを抑制する手段として、下層のインク受容層の膜面pHを6.5〜8.5に調整する事を提案している。なお本発明における膜面pHはJIS P 8133により規定される測定方法に従った。
【0048】
上層のインク受容層はインクの染料を定着することを主目的とし、カチオン性樹脂を含有しているため、該インク受容層の塗布液はカチオン電荷を維持するためと、塗布液の安定性を保つために酸性に維持されている。塗布液のpHが高くなるとシリカ表面のシラノール基が電離してアニオン性となるために、カチオン樹脂と静電気力により強く結合し、塗布液は増粘、若しくはゲル化する。そのため該インク受容層の塗布液を下層のインク受容層に塗布した際、下層のインク受容層がアルカリ性であるがゆえに上層の塗布液がゲル化をおこすため、乾燥時に発生する毛細管力によるひび割れの発生が抑制される。その結果、上層のインク受容層に存在する長さ50μm以上のひび割れは5個/1cm2以下である。
【0049】
下層の膜面pHを6.5〜8.5に調節するためには、下層に塩基性物質を含有させることが適当である。塩基性物質としては水中でアルカリ性を示し、下層のpHを6.5〜8.5に高めることができるものであれば良い。またその塩基性物質は下層の塗料を塗工する際の乾燥でも揮発しない物質を用いる必要がある。具体例としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸ナトリウムなどのアルカリ金属の水酸化物及び塩、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化バリウム、炭酸バリウムなどのアルカリ土類金属の水酸化物及び塩があげられる。本発明では水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウムなども添加してもよく、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機アミンを用いてもよい。これらの塩基性物質の中ではアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物が、少量の添加でpHを調節できるので好ましく、特にアルカリ金属の水酸化物は塗料の安定性を損ないにくいので最も好ましい。
【0050】
下層のインク受容層の膜面pHが6.5〜8.5となる範囲内で上記の塩基性物質を単独でも2種以上配合して添加してもよい。好ましくはpH7〜8である。塩基性物質の添加率はシリカや塩基性物質の種類によって異なるものであるが、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物の場合には、通常シリカ100質量部に対し、0.01〜5質量部であり、好ましくは0.05〜2質量部である。pHが6.5よりも低い場合、上層のpHを0.5以上上げることができず、上層のひび割れ抑制の効果が得られない。逆にpHが8.5よりも高いと、上層のpHが上昇しすぎ、印字濃度の低下や光沢の低下、さらに染料定着性に悪影響を及ぼすことがあるので望ましくない。
【0051】
また下層のインク受容層には必要に応じて塩化ナトリウム、硫酸ナトリウムなどの塩類を下層に含まれるシリカに対して0.05質量%〜5質量%添加してシリカ粒子を凝集させ、インク吸収性を向上させ、なおかつ下層のひび割れを少なくさせる事もできる。また下層のインク受容層はpHを6.5〜8.5に規定しているがこのpH範囲ではシリカ粒子のアニオン電荷が酸性領域よりも強くなり、下層の塗料にカチオン樹脂を配合するとゲル化し、塗工することが難しくなる。そのため本発明においては下層のインク受容層にはカチオン樹脂を多く入れてはならない。シリカに対して質量比で0.5未満が好ましく、0.25未満がより好ましい、最も好ましくは0.1未満であり、0が更に好ましい。
【0052】
下層を形成するには、シリカ、バインダー樹脂、好ましくは塩基性物質を含有する水性塗料を支持体に塗布し、乾燥すれば良い。下層を塗布し乾燥した後で、塩基性物質を含む水溶液を塗布又は含浸して、pHを所定の値とすることも可能である。
【0053】
本発明において支持体は液体吸収性支持体、及び液体非吸収性支持体のいずれでもよい。吸収性支持体としては、例えば、上質紙、アート紙、コート紙、キャスト塗工紙、クラフト紙、含浸紙などが例示できる。高平滑性、銀塩写真ライクな風合いなどの観点から、印画紙原紙を用いることがより好ましい。非吸収性支持体としては、例えば、透明、不透明いずれかのセロハン、ポリエチレン、ポリプロピレン、軟質ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスチレンなどのプラスチックフィルム類、合成紙、パルプを主成分とする基材(例えば、上質紙、中性紙、印画紙原紙、アート紙、コート紙、キャスト塗工紙、クラフト紙、含浸紙等)を、非吸収性樹脂により被覆した樹脂被覆体などが適宜に使用される。
【0054】
上記支持体の上に前述した下層のインク受容層、上層のインク受容層を塗工する。塗工コーターとしては、ブレードコーター、エアナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、グラビアコーター、ロッドブレードコーター、リップコーター、ダイコーター、カーテンコーター、スライドビードコーターなど、公知の各種塗工装置が挙げられる。
【0055】
これらの支持体はその表面に形成するインク受容層との接着力が不十分な場合には下塗り層を施したり、コロナ放電処理などの各種の易接着処理を施すことができる。支持体の厚さは、プリンターの通紙性を考慮すると50〜500μmが好ましい。
【0056】
インク受容層の塗工量は乾燥後の質量として上層が1〜30g/m2程度が好ましく、さらに好ましくは3〜20g/m2である。下層は1〜50g/m2程度が好ましく、さらに好ましくは3〜40g/m2である。ここで塗工量が少ないとインクの吸収が不十分となりやすく、多い場合にはカールが発生しやすくなる恐れがあり、またコストもかさむ。
【0057】
【実施例】
以下に実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、勿論これらに限定されるものではない。また、例中の部および%は特に断らない限り、それぞれ質量部および質量%を表す。
【0058】
(シリカの平均2次粒子径測定方法)
動的光散乱法によるレーザー粒度分布計[大塚電子株式会社製、商標LPA3000/3100]を用いてシリカを十分に蒸留水で希釈した状態で測定した。平均2次粒子径はキュムラント法を用いた解析から算出される値を用いた。
【0059】
(シリカの比表面積、細孔容積測定法)
シリカを分散させた液を105℃にて乾燥し、得られた粉体試料の比表面積、細孔容積を、ガス吸着法比表面積・細孔分布測定装置〔Coulter社製SA3100型〕を用い、前処理として200℃で2時間真空脱気した後に測定した。吸着ガスとしては窒素を用いた。比表面積はBET法により求めた値を使用し、細孔容積は細孔径100nm以下の細孔の全細孔容積の値を使用した。
【0060】
(インクジェット記録シート表面のひび割れの数量測定法)
製作したインクジェット記録シートを10cm四方に切り取り全表面に観察されるひび割れをデジタルマイクロスコープ[Hirox社製 KH2700型]にて観察し、長さ50μm以上のひび割れの数を数えた。
【0061】
(インクジェット記録シートのインク吸収性測定法)
インクジェット記録シートにインクジェットプリンター[セイコーエプソン(株)社製、PM−950C]を用い、PM写真用紙推奨設定印刷モードで、100%ブラックのベタ印字を(30mm×30mm)行い、インクを吸収したものを○、インクがあふれたものを×とした。
【0062】
(インクジェット記録シートの印字濃度測定法)
インクジェット記録シートにインクジェットプリンター〔セイコーエプソン(株)製、PM−900C〕を用い、PM写真用紙推奨設定印刷モードで、100%ブラックのベタ印字(30mm×30mm)を行った。
【0063】
印字濃度は、上記ブラックベタ印字部分の印字濃度をマクベス反射濃度計(Macbeth、RD−920)を用いて測定した。
【0064】
(光沢度)
村上色彩技術研究所の光沢度計(GM−26 PRO/AUTO)を用い、20度光沢はJIS Z8741に基づいて測定し、75度光沢はISO 8254−1に基づいて測定した。光沢感は肉眼で評価した。○:光沢感に優れる。△:光沢感が不十分。×:光沢感に劣る。
【0065】
[シリカゾルA(活性珪酸を縮合させて製造されたシリカとカチオン性樹脂の混合物)]
特開平2001−354408号公報において開示されている方法に従いシリカゾルを合成した。 SiO2濃度30%、SiO2/Na2Oモル比3.1のケイ酸ソーダ溶液〔(株)トクヤマ製、三号珪酸ソーダ〕に蒸留水を混合し、SiO2濃度4.0%の希ケイ酸ソーダ水溶液を調製した。この水溶液を、強酸性水素型陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製、ダイヤイオンSK−1BH)が充填されたカラムに通じて活性ケイ酸水溶液を調製した。還流器、攪拌機、温度計を備えた5リットルのガラス製反応容器中で、400gの蒸留水を95℃に加温した。この熱水を95℃に保ちながら、上記の活性ケイ酸水溶液を8.0g/分の速度で合計1000g添加したのち、水酸化カリウムを0.012モル添加し安定化させ、100℃に加温した。その後、上記の活性ケイ酸水溶液を8.0g/分の速度で合計584g添加した。活性ケイ酸の添加終了後、そのまま溶液を95℃に保って1時間加熱放置し、pH8.6のシリカ微粒子分散液を得た。得られたシリカ微粒子分散液を活性ケイ酸水溶液の調製に使用した水素型陽イオン交換樹脂充填カラムに通じて、水酸化カリウムを除去し、pH3.2とした。かかる後エバポレーターにて濃縮し、濃度10%の酸性シリカ微粒子分散液(pH2.7)を得た。
次に上記のシリカ微粒子分散液100部に対して、強攪拌条件下で、カチオン性ポリマーとしてジアリルジメチルアンモニウムクロライド・アクリルアミド共重合体〔日東紡績(株)製、商品名:PAS−J−81〕の10%水溶液を10部加えた。 次に、該混合物を、超高圧ホモジナイザー〔みづほ工業(株)製、マイクロフルイダイザーM110−E/H型〕を用いて処理圧力500kg/cm2で2回処理し、濃度10%のコロイド状カチオン性シリカ微粒子分散液(pH2.7)を得た。
【0066】
[シリカゾルB(活性珪酸を縮合させて製造されたシリカの製造方法)]
上記シリカゾルAの製造法においてアルカリとしてアンモニアを0.02モル使用した。アンモニア添加前に滴下される活性珪酸の液量を792g、アンモニア添加後に滴下される活性珪酸の液量を792gとした。活性珪酸の滴下終了後、75℃にて2時間加熱放置し、pH7.5のシリカ希分散液を得た。かかる後エバポレーターにて濃縮し、濃度25重量%のアルカリ性シリカ微粒子分散液(pH8.6)を得た。
【0067】
[シリカゾルC(乾式シリカ分散物とカチオン性樹脂の混合物)]
気相法によって製造された平均一次粒子径9nmのシリカ(日本アエロジル(株)製、商品名:AEROSIL300)の11%水分散液を、シリカゾルCの製造方法で用いた油圧式超高圧ホモジナイザーにて3回分散した。この微細シリカの比表面積は308m2/g、細孔容積は1.6ml/gであった。該分散液100部にインク定着剤としてのカチオン樹脂であるジアリルジメチルアンモニウムクロライド・アクリルアミド共重合体(日東紡績(株)製、商品名:PASJ−81)の11%水溶液10部を添加し、ゲル化した混合物を同ホモジナイザーにて更に分散を繰り返し、平均二次粒子径520nmのシリカ水分散液を製造した。この分散液は固形分濃度11%であり、シリカ濃度は10%、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド・アクリルアミド共重合体濃度は1%であった。
【0068】
[シリカゾルD(ゲル法シリカ分散物)]
ゲル法によって製造された合成無定型シリカ(グレースデビソン社製、商品名:サイロジェットP612、比表面積290m2/g、一次粒子径9nm)を濃度20%で水分散させ、アンモニア水を添加してpHを9.0に調整したスラリーを、横型ビーズミル(シンマルエンタープライゼス(株)製、ダイノーミルKDL−Pilot)により繰り返し粉砕分散し、平均二次粒径300nmのシリカの20%水分散液を製造した。このシリカの細孔容積は0.7ml/gであった。
【0069】
[シリカゾルE(ゲル法シリカ分散物)]
シリカゾルDの製造に用いたサイロジェットP612を濃度20%にて水分散させた後、アンモニア水を添加してpHを9.0に調整して平均二次粒子径12μmの水分散液を製造した。
【0070】
[塗布液A−1]
シリカゾルA100部、ポリビニルアルコール(クラレ社製、商品名PVA145H、重合度:4500、ケンカ度:99%以上)20部を配合して8%水性塗布液を作製した(pH3.6)。得られた塗布液をPETフィルム上に3g/m2となるように塗工し、乾燥した。得られた塗膜の膜面pHを測定したところ3.4であった。
【0071】
[塗布液A−2]
シリカゾルC100部、ポリビニルアルコール(クラレ社製、商品名PVA145H、重合度:4500、ケンカ度:99%以上)20部を配合して8%水性塗布液を作製した(pH3.8)。得られた塗布液をPETフィルム上に3g/m2となるように塗工し、乾燥した。得られた塗膜の膜面pHを測定したところ3.5であった。
【0072】
[塗布液B−1]
シリカゾルB100部、ポリビニルアルコール(クラレ社製、商品名PVA145H、重合度:4500、ケンカ度:99%以上)20部を配合したのち、水酸化カリウムを0.5部、塩化ナトリウム(塩)を0.25部を更に添加して16%水性塗布液を作製した。
【0073】
[塗布液B−2〜B−5]
塗布液B−1の作製において水酸化カリウムの添加量を表1に記載したとおりに変えて添加した以外は塗布液B−1と同様にして塗布液B−2〜B−5を作製した。
【0074】
[塗布液B−6]
シリカゾルD100部、ポリビニルアルコール(クラレ社製、商品名PVA145H、重合度:4500、ケンカ度:99%以上)20部を配合したのち、水酸化ナトリウムを0.25部、塩化ナトリウム(塩)を0.25部を更に添加して16%水性塗布液を作製した。
【0075】
[塗布液B−7]
塗布液B−6の作製において、水酸化ナトリウムを添加せずに作製した以外は塗布液B−6と同様にして塗布液B−7を作製した。
【0076】
[塗布液B−8]
塗布液B−6の作製において、シリカゾルDの替わりにシリカゾルEを用いた以外は塗布液B−6と同様にして塗布液B−8を作製した。
【0077】
実施例1
160g/m2の写真用原紙の両面をポリエチレンで被覆した紙支持体上に下層用塗布液B−1を25g/m2となるように塗工し、乾燥した。得られた受容層の膜面pHを測定した後、つづいて上層用塗布液A−1を3g/m2塗工、乾燥して上層のインク受容層を得た。得られたインクジェット記録シートの膜面pHを測定し、記録シート表面のひび割れ個数を数えた。
インクジェット記録シート表面の光沢度を測定し、インクジェット記録プリンターにて印字評価を行った。表1に下層、上層塗工後のインクジェット記録シート表面の膜面pHを示した。表2にひび割れ個数、20度光沢、75度光沢、インクジェット記録シートの光沢感、インク吸収、ブラックの印字濃度を示した。
【0078】
実施例2
実施例1のインクジェット記録シートの作製において下層用塗布液B−1の替わりにB−2を用いた以外は同様にしてインクジェット記録シートを作製し、評価した。表1に下層、上層塗工後のインクジェット記録シート表面の膜面pHを示し、表2にひび割れ個数、20度光沢、75度光沢、インクジェット記録シートの光沢感、インク吸収、ブラックの印字濃度を示した。
【0079】
実施例3
実施例1のインクジェット記録シートの作製において下層用塗布液B−1の替わりにB−3を用いた以外は実施例1と同様にしてインクジェット記録シートを作製し、評価した。表1に下層、上層塗工後のインクジェット記録シート表面の膜面pHを示し、表2にひび割れ個数、20度光沢、75度光沢、インクジェット記録シートの光沢感、インク吸収、ブラックの印字濃度を示した。
【0080】
比較例1
実施例1のインクジェット記録シートの作製において下層用塗布液B−1の替わりにB−4を用いた以外は実施例1と同様にしてインクジェット記録シートを作製し、評価した。表1に下層、上層塗工後のインクジェット記録シート表面の膜面pHを示し、表2にひび割れ個数、20度光沢、75度光沢、インクジェット記録シートの光沢感、インク吸収、ブラックの印字濃度を示した。
【0081】
比較例2
実施例1のインクジェット記録シートの作製において下層用塗布液B−1の替わりにB−5を用いた以外は実施例1と同様にしてインクジェット記録シートを作製し、評価した。このときの下層の膜面pHは9.4であった。下層の膜面pHが高すぎたため、上層の塗布液を塗工、乾燥したとき上層のゲル化が激しくおこり、光沢が失われた。表1に下層、上層塗工後のインクジェット記録シート表面の膜面pHを示し、表2にひび割れ個数、20度光沢、75度光沢、インクジェット記録シートの光沢感、インク吸収、ブラックの印字濃度を示した。
【0082】
実施例4
実施例1のインクジェット記録シートの作製において下層用塗布液B−1の替わりにB−6を用い、上層用塗布液としてA−2を用いた以外は実施例1と同様にしてインクジェット記録シートを作製し、評価した。表1に下層、上層塗工後のインクジェット記録シート表面の膜面pHを示し、表2にひび割れ個数、20度光沢、75度光沢、インクジェット記録シートの光沢感、インク吸収、ブラックの印字濃度を示した。
【0083】
比較例3
実施例4のインクジェット記録シートの作製において下層用塗布液B−6の替わりにB−7を用いた以外は実施例4と同様にしてインクジェット記録シートを作製し、評価した。表1に下層、上層塗工後のインクジェット記録シート表面の膜面pHを示し、表2にひび割れ個数、20度光沢、75度光沢、インクジェット記録シートの光沢感、インク吸収、ブラックの印字濃度を示した。
【0084】
実施例5
実施例4のインクジェット記録シートの作製において下層用塗布液B−6の替わりにB−8を用いた以外は実施例4と同様にしてインクジェット記録シートを作製し、評価した。表1に下層、上層塗工後のインクジェット記録シート表面の膜面pHを示し、表2にひび割れ個数、20度光沢、75度光沢、インクジェット記録シートの光沢感、インク吸収、ブラックの印字濃度を示した。
【0085】
【表1】
【0086】
【表2】
【0087】
表1の各実施例のように支持体上に膜面pHが6.5〜8.5の下層のインク受容層を設け、さらにその上に、動的光散乱法による平均粒径が1μm以下のシリカ、カチオン性樹脂、及びバインダー樹脂を含有する塗布液を塗工、乾燥してインク受容層を形成し、該受容層の膜面pHが2〜5.5であることが本発明の特徴である。下層に含まれる塩基の効果により上層の膜面pHが下層がないときよりも上昇している。その結果、表2の各実施例から明らかなように上層のインク受容層のひび割れが抑制され、光沢のあるインク受容層が得られた。また上層の膜面pHが2〜5.5に制御されていることで上層の過度のゲル化が抑えられ、高い印字濃度を維持している。
【0088】
一方、比較例1、3のように下層に塩基を含まない場合は下層の膜面pHが6.5に達しないために上層がゲル化せず、ひび割れを多数生じた。そのためインクジェット記録シートの光沢は低かった。また比較例2のように下層の膜面pHが8.5を超える場合、上層が過度にゲル化し、塗膜が不透明になって高い印字濃度が得られず、また光沢も低かった。
【0089】
【発明の効果】
本発明によれば、インクの溶剤成分を吸収することを主目的とする下層部分のインク受容層と、下層部分の上に接してインクの染料部分を定着することを主目的とする上層部分のインク受容層を設け、上層部分の塗工時におこるひび割れを解消でき、したがって光沢のあるインクジェット記録シートが容易に得られる。
Claims (9)
- 支持体上に少なくとも2層のインク受容層を有するインクジェット記録シートであって、下層のインク受容層が、膜面pHが6.5〜8.5であり、シリカ、バインダー樹脂、及び塩基性物質を含み、下層に接するすぐ上のインク受容層の膜面pHを0.5以上、かつ2.0未満上昇させる効果があるインク受容層であり、該下層に接するすぐ上のインク受容層が、動的光散乱法による平均粒径が1μm以下のシリカ、カチオン性樹脂、及びバインダー樹脂を含有し、かつ膜面pHが2〜5.5であることを特徴とするインクジェット記録シート。
- 下層に接するすぐ上のインク受容層の長さ50μm以上のひび割れが5個/cm 2 以下であることを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録シート。
- 下層のインク受容層が、シリカとバインダー樹脂を含有し、カチオン性樹脂が、シリカに対して質量比で0.5未満のインク受容層であることを特徴とする請求項1〜2記載のインクジェット記録シート。
- 下層のインク受容層がアルカリ金属または、アルカリ土類金属から選ばれる1種以上の塩基を含有することを特徴とする請求項1〜3記載のインクジェット記録シート。
- 下層のシリカの動的光散乱法による平均粒径が1μm以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のインクジェット記録シート。
- 下層のシリカの窒素吸着法による比表面積が100〜300m2/g、細孔径100nm以下の細孔の細孔容積が0.4〜1.0ml/gであることを特徴とする請求項1〜5記載のインクジェット記録シート。
- 下層に接するすぐ上のインク受容層のシリカの窒素吸着法による比表面積が200〜400m2/g、細孔径100nm以下の細孔の細孔容積が0.6〜2.0ml/gであることを特徴とする請求項1〜6記載のインクジェット記録シート。
- 下層及び/又は下層に接するすぐ上のインク受容層のシリカが活性珪酸を縮合させて製造されたものであることを特徴とする請求項1〜7記載のインクジェット記録シート。
- 支持体上に下層として膜面pHが6.5〜8.5のインク受容層を設け、下層に接するすぐ上に、動的光散乱法による平均粒径が1μm以下のシリカ、カチオン性樹脂、及びバインダー樹脂を含有し、かつpHが1.5〜5の水性塗工液を塗工して乾燥し、膜面pHが2〜5.5のインク受容層を設けることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のインクジェット記録シートの製造方法。
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