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JP2005138403A - インクジェット記録媒体及び製造方法 - Google Patents

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JP2005138403A
JP2005138403A JP2003376619A JP2003376619A JP2005138403A JP 2005138403 A JP2005138403 A JP 2005138403A JP 2003376619 A JP2003376619 A JP 2003376619A JP 2003376619 A JP2003376619 A JP 2003376619A JP 2005138403 A JP2005138403 A JP 2005138403A
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喜芳 遠藤
Tomohiko Sakai
智彦 坂井
Takayuki Suzuki
隆行 鈴木
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Abstract

【課題】 高いインク吸収性と高光沢性に優れた、インクジェット記録媒体を提供する。
【解決手段】 支持体上に少なくとも2層以上のシリカ微粒子を含有した多孔質インク受容層を設けたインクジェット記録媒体であり、各層の細孔分布曲線が細孔径8〜70nmの範囲に少なくとも1つのピークを持ち、上層の細孔径ピークが下層の細孔径ピークより大きいことを特徴とするインクジェット記録媒体及びその製造方法。
【選択図】 なし

Description

本発明は、インクジェット記録媒体及び製造方法に関する。
インクジェット記録は、インクの微小液滴を種々の作動原理により飛翔させて紙などの記録用媒体に付着させ、画像・文字などの記録を行うものであるが、比較的高速、低騒音、多色化が容易である等の利点を有しており、近年急速に普及してきている。一方、写真等の高画質印刷、いわゆるフォトライクの記録用媒体にも用いられており、多量のインクを用いて高い印字濃度をだすようになってきている。このためインクを、速く多量に吸収できるインク受容層が要求されている。更に高い光沢度も必要となる。
インクジェットプリンターには普通紙も用いることができるが、写真を高品位に記録するためにはやはり専用のインクジェット記録シートを用いる必要がある。このインクジェット記録シートに要求される品質としては、水、染料、有機溶媒、添加剤等を含有するインクを素早く多量に吸収し短時間で乾くこと、精細な画像又は文字を再現できること、画像の色濃度が高くかつ色調に偏りがないことが基本的性能として必要とされる。さらに銀塩の印画紙と同等の高い光沢も、記録物の品位を高めるのに重要である。これらの要求を満たすため、高性能インクジェット記録シートには基材上に専用のインク受容層が設けられている。
以前は基材上にポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、水溶性セルロース誘導体、ゼラチンなどの水溶性樹脂の水溶液を基材シートに塗布し、乾燥して製造されたものが数多く市販されていた。これらの記録シートは、低コストでかつ容易に高光沢のインクジェット記録シートを製造できる。しかし、支持体に水溶性樹脂を主成分とするインク受容層を設けた記録シートはインク乾燥速度が遅く、プリンターの高速化に対応できないこと、また耐水性に劣ることから、最近では微細な顔料を少量のバインダー樹脂で固めた多孔質のインク受容層を有するインクジェット記録シートが主流になってきた。顔料を用いて銀塩の印画紙と同等の高い光沢を持たせるためには、顔料の粒子径を光の波長以下、即ちサブミクロンのオーダーにすることが必要であり、顔料の選択は重要である。
一方、インク吸収性の点で、多孔質受容層の細孔径と空隙率の設計も非常に重要である。
粒子径がサブミクロンの顔料としてコロイダルシリカと呼ばれるシリカが市販されている。一般には粒子径が7〜100nmの製品として販売されており、非常に微粒子なので、乾燥すると非常に透明で高光沢の塗膜が得られる。この点に着目し、コロイダルシリカをインク受容層に用いる特許は多数出願されている。例えば、コロイダルシリカを最上層に用いて、細孔径を規定する(例えば、特許文献1参照。)ものがあるが、光沢を高くなるが、コロイダルシリカはそのほとんどが真球状粒子であり、各一次粒子が凝集することなく単分散しているため、塗工層乾燥状態では粒子が密に充填され、粒子間の空隙が非常に少ない構造をとる。インク吸収層に用いた場合にはインク吸収量が非常に小さく、インク吸収速度が遅く、インクあふれや、濃度むらの原因となる欠点がある。
この点を改善するため、1つインク受容層に2つの細孔ピークを持たせる方法が提案されて(例えば、特許文献2参照。)いる。小さい方の細孔で光沢と印字濃度を確保し、大きい方の細孔でインク吸収性を確保するねらいであるが、本発明者らの検討結果では、インク吸収量やインク吸収速度は依然として不十分であった。
特開平9−183267号公報 (特許請求の範囲) 特開2002−103792号公報 (特許請求の範囲)
本発明は上記の実態に鑑みてなされたものであって、その目的は、高いインク吸収性と高光沢性に優れた、インクジェット記録媒体を提供することにある。
本発明の上記目的は、以下の構成により達成することができる。
(請求項1)
支持体上に少なくとも2層以上のシリカ微粒子を含有した多孔質インク受容層を設けたインクジェット記録媒体であり、各層の細孔分布曲線が細孔径8〜70nmの範囲に少なくとも1つのピークを持ち、上層の細孔径ピークが下層の細孔径ピークより大きいことを特徴とするインクジェット記録媒体。
(請求項2)
上層の厚みが下層の厚みに対し、1/3〜10倍であり、かつ、上層の厚み+下層の厚みが、20μm〜60μmであることを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録媒体。
(請求項3)
少なくとも前記シリカ微粒子が湿式法で製造されたシリカを粉砕分散して得られるシリカ微粒子を含有していることを特徴とする請求項1又は2記載のインクジェット記録媒体。
(請求項4)
請求項1〜3記載のいずれか1項記載のインクジェット記録媒体を、支持体上に、上、下層同時塗布して製造することを特徴とするインクジェット記録媒体の製造方法。
本発明により、高いインク吸収性と高光沢性に優れた、インクジェット記録媒体を提供することができた。
本発明を更に詳しく説明する。本発明のインク受容層は、インク吸収を速くする点で多孔質が好ましい。多孔質を形成するには、無機微粒子とバインダーを混合して、支持体上に塗布、乾燥することで空隙を形成し多孔質を得られる。無機微粒子としては、空隙の形成しやすさ、コストからシリカが好ましい。中でも気相法シリカや湿式法シリカ(沈降法、ゲル法)が好ましく用いられる。
気相法シリカは、特公昭59−169922号公報に開示されているように、揮発性珪素化合物を火焔中で高温分解する方法により製造されるもので、分透明性に優れたシリカ微粒子である。このシリカ微粒子を塗布すると光沢が高く、かつインク吸収性も良好な塗膜を形成できる。しかしながら、凝集した一次粒子間の結合が比較的弱いために、塗膜を作製する際に水の乾燥によりもたらされる、空隙間に働く強力な毛管力により、凝集状態の破壊が起こり易く、塗膜に肉眼でも見える数mmのひび割れが形成され易いという大きな欠点がある。
今後、インク吸収量が多く要求されるようになると、シリカ微粒子を多量に塗布する必要があり、ひび割れの点から不利になる。
また、後述する湿式法シリカに比べてコストが高いという欠点も持っている。
更に、分散液とする場合、高濃度に分散できず、ダマを形成しやすい欠点も持っており、粉砕分散することが好ましい。
湿式法による無定型合成シリカは沈降法によるシリカとゲル法によるシリカに分類されるが、沈降法はケイ酸アルカリ水溶液に鉱酸を段階的に加え、沈降したシリカをろ過して製造されるものであり、ゲル法はケイ酸アルカリ溶液に鉱酸を混合し、ゲル化させたのち、洗浄及び粉砕して得られるものである。例えば、特開昭55−116613号公報には、ケイ酸アルカリ水溶液に対して2段に分けて酸添加を行い、反応後の溶液をろ過して水和ケイ酸の湿潤ケークを得、該湿潤ケークにせん断力又は振動を与えてスラリーとした後、噴霧乾燥することによって細孔容積が比較的に大きい無定形合成シリカを得る方法が開示されている。このような湿式法で得られるシリカは、一次粒子が凝集して二次粒子を形成しており、一次粒子間あるいは二次粒子間の空隙により一般に比較的に大きな細孔容積を有している。このようなシリカは1〜20μmの大きさであり、光沢を発現させるためには、粉砕分散することが好ましい。分散液にする場合、湿式法シリカは、気相法シリカに比べて高濃度に分散できるメリットがある。
いずれのシリカも水性媒体中で粉砕分散して用いるのが好ましい。この場合、生産性を考え、高濃度で粉砕分散するのが好ましく、この点から、気相法より湿式法シリカが特に好ましい。シリカの粉砕分散方法としては、特には限定されないが、予備分散工程と本分散工程を有し、予備分散工程で粉砕分散粒径として1000nm以下にすることが好ましい、これより大きいと本分散工程で多くの時間とエネルギーを要す。予備分散に用いる分散機としては、連続式が生産効率上好ましく、ローラミルタイプ、ニーダータイプ、ピンミキサータイプ、連続式攪拌型分散機が好ましい。必要に応じて複数の分散機を用いてもよい。本分散工程では、最終的な平均粒径を決定する工程であり、好ましく用いることのできる分散機として、高圧ホモジナイザー、湿式メディア型粉砕機(サンドミル、ボールミル)、連続式高速撹拌型分散機、超音波分散機等があげられる。中でもサンドミルが好ましく、高濃度の予備分散液を短時間で効率よく粉砕分散でき、粗大粒子数の制御に有効である。サンドミルに用いるメディアとしてはジルコニア製が好ましく、大きさは0.1〜1.0mmが好ましい。周速としては、5〜15m/secが好ましい。
粉砕分散する際のシリカ濃度として、生産効率とハンドリング性を考え20%以上50%以下が好ましく、更に好ましくは25%以上40%以下である。
粉砕分散されたシリカ微粒子は、粗大粒子数を制御する工程を有することが好ましい。方法としては、遠心分離による方法、フィルターによる方法等を用いることができる。遠心分離の方法としてクレテック社製、マイクロカット等が利用できる。フィルターとしては、日本ポール(株)製のプロファイル、アドバンテック東洋(株)製のTCPD等が挙げられる。
前記処理工程を経た後、バインダーと混合し支持体上に塗布・乾燥されインク受容層が形成される。
前記シリカ微粒子をバインダーと混合した後、フィルターで再度処理するのが好ましい。
フォトライクの光沢として、75°光沢値として40%以上が必要でわれわれは、検討の結果、最上層のインク受容層の細孔径に着眼し細孔径として、70nm以下、好ましくは50nm以下の範囲を見出し、更に、インク吸収速度の点で、最上層の細孔径は、8nm以上必要でかつ、下層のインク受容層の細孔径より大きいことが必要であることを見出した。上層の細孔径は、下層の細孔径より2nm以上小さいことが好ましい。
これは、下層の方が細孔径が小さいことにより、インクが上層から浸透してきたときに下層のほうの毛管圧が大きくなり、下側にインクが浸透しやすくなり、吸収速度が上層すると推定している。
更に、上層、下層の厚みの関係が、上層の厚みが下層の厚みに対し、1/3〜10倍であり、かつ、上層の厚み+下層の厚みが、20μm〜60μmであることが好ましい。これは、細孔径が上層より小さい下層の受容層は、空隙率も低いと予想され、下層の厚みが大きいとインク吸収容量が不足してくる。また上層を厚くしすぎると、毛管圧の影響が無くなり、吸収速度の向上が認められなくなる。
インク受容層全体の厚みとしては、インク吸収容量とひび割れを考慮すると20μm〜60μmの範囲が好ましい。20μmより小さいとインク吸収容量が足りなくなり、インクが溢れる。また60μmより大きいと、インク受容層を形成する際、クラックが発生しやすくなり好ましくない。
シリカ微粒子の付き量としては、15〜50g/m2の範囲が好ましい。
細孔径はN2吸着法により求めた。測定器はBELSORP−mini(日本ベル製)をもちいて吸着側の測定結果を採用している。
細孔径は、シリカ微粒子の粉砕分散粒径、表面活性度や、バインダー量、種類、シリカ微粒子とバインダーの架橋度、受容層を支持体に塗布した後の乾燥速度等で制御することができる。本発明の細孔径を得るには、シリカ微粒子の粉砕分散平均粒径は20〜500nmが好ましい。ここで、平均粒径は、malvern社製、光子相関法ゼータサイザー1000HSで測定した値である。
前記シリカ微粒子のゼータ電位はpH2〜8の範囲で+5〜+60mVであることが好ましい。特に染料インクの場合、効果が大きい。これは染料インクが負の電荷持つのが一般的で、受容層に浸透してきたときに粒子表面が正に帯電していることで定着しやすくなるため、定着位置が上のほうになり、濃度が向上すると考えられる。+5mVよりも小さいと定着力が劣り、+60mVより大きいと、定着が強くなりすぎ、逆に濃度低下を招く。
ゼータ電位の制御は後述するカチオン性ポリマー等の添加量で容易に制御できる。上、下層に含有させるシリカ微粒子の種類は同じでも、異なってもよい。
前記水性媒体としては、少なくとも、カチオン性ポリマーもしくは水溶性多価金属化合物が含有されていることが好ましい。更に好ましくは、硬膜剤も含有していることである。
前記カチオン性ポリマーとして好ましくは第4級アンモニウム塩基を有するポリマーであり、特に好ましくは第4級アンモニウム塩基を有するモノマーの単独重合体または他の共重合し得る1または2以上のモノマーとの共重合体である。
第4級アンモニウム塩基を有するモノマーの例としては例えば以下の例を挙げることが出来る。
Figure 2005138403
Figure 2005138403
上記第4級アンモニウム塩基と共重合し得るモノマーはエチレン性不飽和基を有する化合物であり、例えば以下の具体例を挙げることが出来る。
Figure 2005138403
特に第4級アンモニウム塩基を有するカチオン性ポリマーが共重合体である場合、カチオン性モノマーの比率は10モル%以上が好ましく、より好ましくは20モル%以上、特に好ましくは30モル%以上である。
第4級アンモニウム塩基を有するモノマーは単一でも2種類以上であっても良い。
以下に本発明に用いることができるカチオン性ポリマーの具体例を挙げるが、これらに限定されるものではない。
Figure 2005138403
Figure 2005138403
Figure 2005138403
Figure 2005138403
上記第4級アンモニウム塩基を有するカチオン性ポリマーは第4級アンモニウム塩基のために水溶性が一般に高い。共重合する第4級アンモニウム塩基を含まないモノマーの組成や比率によっては、水に充分に溶解しないことはあるが、水混和性有機溶媒と水との混合溶媒に溶解させることにより、溶解し得るもので有れば本発明に使用できる。
ここで水混和性有機溶媒とは、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノールなどのアルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリンなどのグリコール類、酢酸エチル、酢酸プロピル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類など、水に対して通常10%以上溶解し得る有機溶媒を言う。この場合、有機溶媒の使用量は水の使用量以下であることが好ましい。
本発明に用いるカチオン性ポリマーは数平均分子量が10万以下であることが好ましい。ここで数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーから求められたポリエチレングリコール値に換算した値である。
数平均分子量が10万を越える場合には、カチオン性ポリマーの溶液を表面がアニオン性であるシリカ微粒子を含有する分散液に添加した際に凝集物の発生が激しく、またその後分散処理を施しても均一な分散液に成りにくく、粗大粒子が多数存在して均一な分散液に成りにくい。このようなカチオン性ポリマーとシリカ微粒子を含有する複合微粒子分散液を使用してインクジェット記録用媒体を作製した場合、高い光沢性が得られにくい。特に好ましい数平均分子量は5万以下である。また数平均分子量の下限はインクの耐水性の点から通常2000以上である。
上記シリカ微粒子とカチオン性ポリマーの比率は、シリカ微粒子の種類や粒径、あるいはカチオン性ポリマーの種類や数平均分子量で変わり得る。
本発明において、上記比率はシリカ微粒子の表面がカチオン性に置き換わって安定化させる必要があることから、1:0.01〜1:1であることが好ましい。
本発明に用いることのできる水溶性多価金属化合物としては、カルシウム、バリウム、マンガン、銅、コバルト、ニッケル、アルミニウム、鉄、亜鉛、ジルコニウム、クロム、マグネシウム、タングステン、モリブデンから選ばれる金属の水溶性塩が挙げられる。具体的には例えば、酢酸カルシウム、塩化カルシウム、ギ酸カルシウム、硫酸カルシウム、酪酸カルシウム、酢酸バリウム、硫酸バリウム、リン酸バリウム、シュウ酸バリウム、ナフトレゾルシンカルボン酸バリウム、酪酸バリウム、塩化マンガン、酢酸マンガン、ギ酸マンガンニ水和物、硫酸マンガンアンモニウム六水和物、塩化第二銅、塩化アンモニウム銅(II)ニ水和物、硫酸銅、酪酸銅(II)、シュウ酸銅、フタル酸銅、クエン酸銅、グルコン酸銅、ナフテン銅、塩化コバルト、チオシアン酸コバルト、硫酸コバルト、酢酸コバルト(II)、ナフテン酸コバルト、硫酸ニッケル六水和物、塩化ニッケル六水和物、酢酸ニッケル四水和物、硫酸ニッケルアンモニウム六水和物、アミド硫酸ニッケル四水和物、スルファミン酸ニッケル、2−エチルヘキサン酸ニッケル、硫酸アルミニウム、亜硫酸アルミニウム、チオ硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム九水和物、塩化アルミニウム六水和物、酢酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、塩基性チオグリコール酸アルミニウム、臭化第一鉄、塩化第一鉄、塩化第二鉄、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、クエン酸鉄(III)、乳酸鉄(III)三水和物、三シュウ酸三アンモニウム鉄(III)三水和物、臭化亜鉛、塩化亜鉛、硝酸亜鉛六水和物、硫酸亜鉛、酢酸亜鉛、乳酸亜鉛、酢酸ジルコニウム、塩化ジルコニウム、塩化酸化ジルコニウム八水和物、ヒドロキシ塩化ジルコニウム、酢酸クロム、硫酸クロム、酢酸マグネシウム、シュウ酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム六水和物、クエン酸マグネシウム九水和物、りんタングステン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムタングステン、12タングストりん酸n水和物、12タングストけい酸26水和物、塩化モリブデン、12モリブドりん酸n水和物等が挙げられる。これらの水溶性多価金属化合物は2種以上を併用してもよい。本発明において、水溶性多価金属化合物における水溶性とは、20℃の水に1質量%以上溶解することを意味する。
上記の水溶性多価金属化合物の中でも、アルミニウムもしくは周期律表4A族金属(例えばジルコニウム、チタン)からなる化合物が好ましい。特に好ましくは、水溶性アルミニウム化合物である。水溶性アルミニウム化合物としては、例えば、無機塩としては塩化アルミニウムまたはその水和物、硫酸アルミニウムまたはその水和物、アンモニウムミョウバン等が知られている。さらに、無機系の含アルミニウムカチオンポリマーである塩基性ポリ水酸化アルミニウム化合物が知られており、好ましく用いられる。
上記塩基性ポリ水酸化アルミニウム化合物とは、主成分が下記の一般式(1)、(2)又は(3)で示され、例えば[Al6(OH)153+、[Al8(OH)204+、[Al13(OH)345+、[Al21(OH)603+、等のような塩基性で高分子の多核縮合イオンを安定に含んでいる水溶性のポリ水酸化アルミニウムである。
一般式(1) [Al2(OH)nCl6-nm
一般式(2) [Al(OH)3nAlCl3
一般式(3) Aln(OH)mCl(3n-m)
0<m<3nであり、且つm及びnは正の整数を表す。
これらのものは多木化学(株)よりポリ塩化アルミニウム(PAC)の名で水処理剤として、浅田化学(株)よりポリ水酸化アルミニウム(Paho)の名で、また、(株)理研グリーンよりピュラケムWTの名で、また他のメーカーからも同様の目的を持って上市されており、各種グレードの物が容易に入手できる。
上記した水溶性多価金属化合物は、無機微粒子に対して0.03〜10質量%の割合で添加するのが好ましく、0.05〜8質量%がより好ましい。
上記の分散液を調製する際には、各種の添加剤を添加することが出来る。
例えば、ノニオン性またはカチオン性の各種の界面活性剤(但し、アニオン性界面活性剤は凝集物を形成するために好ましくない)、消泡剤、ノニオン性の親水性ポリマー(ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリルアミド、各種の糖類、ゼラチン、プルラン等)、ノニオン性またはカチオン性のラテックス分散液、水混和性有機溶媒(酢酸エチル、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、アセトンなど)、無機塩類、pH調整剤など、必要に応じて適宜使用することが出来る。
特に水混和性有機溶媒は、湿式法シリカ微粒子とカチオン性ポリマー、水溶性多価金属化合物を混合した際の微小なダマの形成が抑制されるために好ましい。そのような水混和性有機溶媒は、分散液中に好ましくは0.1〜20質量%、特に好ましくは0.5〜10質量%使用される。
カチオン性分散液を調製する際のpHはシリカ微粒子の種類やカチオン性ポリマーの種類、各種の添加剤等により広範に変化し得るが、一般的にはpHが1〜8であり、特に2〜7が好ましい。
本発明に係る水溶性樹脂としては、水溶性ポリマーが好ましく、例えばゼラチン(酸処理ゼラチンが好ましい)、ポリビニルピロリドン(平均分子量が約20万以上が好ましい)、プルラン、ポリビニルアルコールまたはその誘導体、カチオン変性ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール(平均分子量が10万以上が好ましい)、ヒドロキシエチルセルロース、デキストラン、デキストリン、水溶性ポリビニルブチラールを挙げることができ、これらの水溶性ポリマーはインク受容層の親水性バインダーとして機能し、単独で使用しても良く、2種以上を併用しても良い。
特に好ましい親水性バインダーは、ポリビニルアルコールまたはカチオン変性ポリビニルアルコールである。
本発明に用いられるポリビニルアルコールは平均重合度が300〜4000のものが好ましく、特に平均重合度が1000以上のものから得られる皮膜は、脆弱性が良好であることからより好ましい。
また、ポリビニルアルコールのケン化度は70〜100%のものが好ましく、80〜100%のものが特に好ましい。
また、カチオン変性ポリビニルアルコールは、カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体と酢酸ビニルとの共重合体をケン化することにより得られる。
カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えばトリメチル−(2−アクリルアミド−2,2−ジメチルエチル)アンモニウムクロライド、トリメチル−(3−アクリルアミド−3,3−ジメチルプロピル)アンモニウムクロライド、N−ビニルイミダゾール、N−ビニル−2−メチルイミダゾール、N−(3−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、ヒドロキシルエチルジメチル(3−メタクリルアミド)アンモニウムクロライド、トリメチル−(3−メタクリルアミドプロピル)アンモニウムクロライド、N−(1,1−ジメチル−3−ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド等が挙げられる。
カチオン変性ポリビニルアルコールのカチオン変性基含有単量体の比率は、酢酸ビニルに対して0.1〜10モル%が好ましく、より好ましくは0.2〜5モル%である。またカチオン変性ポリビニルアルコールの重合度は通常500〜4000、好ましくは1000〜4000である。更に、カチオン変性ポリビニルアルコールのケン化度は通常60〜100モル%、好ましくは70〜99モル%である。
本発明に係るインクジェット記録用媒体において、高光沢性で高い空隙率を皮膜の脆弱性を劣化させずに得るために、前記水溶性ポリマーが硬膜剤により硬膜されていることが好ましい。
硬膜剤は、一般的には前記水溶性ポリマーと反応し得る基を有する化合物あるいは水溶性ポリマーが有する異なる基同士の反応を促進するような化合物であり、水溶性ポリマーの種類に応じて適宜選択して用いられる。
硬膜剤の具体例としては、例えば、エポキシ系硬膜剤(ジグリシジルエチルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ジグリシジルシクロヘキサン、N,N−ジグリシジル−4−グリシジルオキシアニリン、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル等)、アルデヒド系硬膜剤(ホルムアルデヒド、グリオキザール等)、活性ハロゲン系硬膜剤(2,4−ジクロロ−4−ヒドロキシ−1,3,5−s−トリアジン等)、活性ビニル系化合物(1,3,5−トリスアクリロイル−ヘキサヒドロ−s−トリアジン、ビスビニルスルホニルメチルエーテル等)、ほう酸、その塩、ほう砂、アルミ明礬等が挙げられる。
水溶性ポリマーとしてポリビニルアルコールまたはカチオン変成ポリビニルアルコールを使用する場合には、ほう酸、その塩またはエポキシ系硬膜剤から選ばれる硬膜剤を使用するのが好ましい。
最も好ましいのはほう酸またはその塩から選ばれる硬膜剤である。ほう酸またはその塩としては、硼素原子を中心原子とする酸素酸およびその塩のことを示し、具体的にはオルトほう酸、二ほう酸、メタほう酸、四ほう酸、五ほう酸、八ほう酸またはそれらの塩が挙げられる。
上記硬膜剤の使用量は水溶性ポリマーの種類、硬膜剤の種類、シリカ粒子の種類、水溶性ポリマーに対する比率等により変化するが、通常水溶性ポリマー1g当たり5〜500mg、好ましくは10〜300mgである。
上記硬膜剤は、空隙層を形成する塗布液を塗布する際に、空隙層を形成する塗布液中及び/または空隙層に隣接するその他の層を形成する塗布液中に添加してもよく、あるいは予め硬膜剤を含有する塗布液を塗布してある支持体上に、該空隙層を形成する塗布液を塗布する。さらには空隙層を形成する硬膜剤非含有の塗布液を塗布乾燥後に硬膜剤溶液をオーバーコートするなどして空隙層に硬膜剤を供給することもできる。好ましくは製造上の効率の観点から、空隙層を形成する塗布液またはこれに隣接する層を形成する塗布液中に硬膜剤を添加して、空隙層を形成するのと同時に硬膜剤を供給するのが好ましい。
上記水溶性ポリマーとシリカ粒子の比率は、通常1:10〜1:3であり、特に好ましくは1:8〜1:5である。
これらの比率によって細孔径は変化するため、適宜調整することが必要である。
水溶性ポリマーを前記分散液に添加混合する方法は、水溶性ポリマーの水溶液を分散液に攪拌しながらバッチ内で添加する方法や、前記分散液と水溶性ポリマーを連続的にスタチックミキサー等の混合機で混合する方法があげられる。
本発明に好ましく用いられる水溶性ポリマー、特にポリビニールアルコールは、重合度が高い為、溶解性が悪く、ダマが出来やすい、更に溶解時間がかかるため、生産効率上、品質上問題がある。
溶解温度を100℃以上にすることで、溶解時間が短縮できてダマがなくなる。溶解温度は、100℃以上150℃以下が好ましく、更に好ましくは110℃以上130℃以下である。あまり温度を上げると、構造が破壊され、強いては、空隙率をダウンさせる。100℃以上での溶解は、熱源として、電気、オイル、加圧蒸気等を用いることが出来る。生産効率上、連続的に溶解するのが好ましく、例えばノリタケ製溶解システムを用いることが出来る。溶解温度が低いと、ダマが完全に溶解しきれず、ひび割れの原因になる。
本発明のインクジェット記録用媒体の支持体としては、従来公知の紙支持体、プラスチック支持体(透明支持体)、複合支持体など適宜使用できるが、より高い濃度で鮮明な画像を得るためには支持体中にインク液が浸透しない疎水性支持体を用いるのが好ましい。
透明支持体としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ジアセテート系樹脂、トリアセテート系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリイミド系樹脂、セロハン、セルロイド等の材料からなるフィルム等が挙げられ、中でもOHPとして使用されたときの輻射熱に耐える性質のものが好ましく、ポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。このような透明な支持体の厚さとしては、10〜200μmが好ましい。透明支持体のインク受容層側およびバッキング層側には公知の下引き層を設けることが、インク受容層やバック層と支持体の接着性の観点から好ましい。
また、透明である必要のない場合に用いる支持体としては、例えば、基紙の少なくとも一方に白色顔料等を添加したポリオレフィン樹脂被覆層を有する樹脂被覆紙(いわゆるRCペーパー)、ポリエチレンテレフタレートに白色顔料を添加してなるいわゆるホワイトペットが好ましい。
支持体上に塗布する方法は公知の方法から適宜選択して行うことが出来る。好ましい方法は、塗布液を支持体上に塗設して乾燥して得られる。この場合、2層以上を同時に塗布することもでき、特に全て層を1回の塗布で済ます同時塗布が好ましい。多孔質受容層を複数層形成する場合、一度、多孔質受容層を形成した後に、その上に、塗布液を形成、乾燥させる方法をとると、形成済みの多孔質受容層から気泡が発生し塗布性を劣化させるため、同時塗布が好ましい。
塗布方式としては、ロールコーティング法、ロッドバーコーティング法、エアナイフコーティング法、スプレーコーティング法、カーテン塗布法あるいは米国特許第2,681,294号公報記載のホッパーを使用するエクストルージョンコート法が好ましく用いられる。
塗布速度としては、生産効率上150m/min以上が好ましく、更に好ましくは200m/min以上である。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の実施態様はこれらに限定されるものではない。なお、実施例中で「%」は特に断りのない限り絶乾(水分無しの状態)質量%を示す。
実施例1
(塗布液1〜8の作製と単層膜での細孔径評価)
シリカ粉体(X−37:トクヤマ社製)を水性媒体と一緒に連続式ピンミキサー(粉研パウテック社製、フロージェットミキサー300型、以下FJMと称す)と高速回転式連続分散機(太平洋機工社製、フローファインミルFM25、以下FMと称す)を用いて連続的に分散して予備分散液を連続的に得た。上記水性媒体とは、水にホウ酸とP−9を含有させたものをいう。尚、予備分散液中のシリカ濃度は30%にした。ホウ酸はシリカに対して2.7質量%、P−9はシリカに対して10質量%添加した。
次に予備分散液をサンドミル分散機(アシザワ社製、RL−125、以下SMと称す)で分散し、その後、フィルター処理を行い分散液1を得た。このシリカ微粒子のゼータ電位は、pH4.5で測定したところ+40mVであった。なお、ゼータ電位は、大塚電子社製ゼータ電位測定器(ELS−8000)により測定した。平均粒径は220nmであった。この分散液1にポリビニールアルコール溶液(10%、クラレ社製:PVA235)を混合し、塗布液1を作製した。シリカとポリビニールアルコールの質量比は6.5:1で行った。尚、塗布液中のシリカ濃度は、16質量%にした。塗布液1を両面をポリエチレンで被覆した紙支持体(厚みが220μmでインク受容層面のポリエチレン中にはポリエチレンに対して13質量%のアナターゼ型酸化チタンを含有)に、乾燥膜厚が20μmになるように単層塗布した。塗布方法はカーテンコーターを用いて塗布した。塗布直後に0℃に保たれた冷却ゾーンで20秒間冷却した後、25℃の風(相対湿度が15%)で60秒間、45℃の風(相対湿度が25%)で60秒間、50℃の風(相対湿度が25%)で60秒間順次乾燥し、20〜25℃、相対湿度が40〜60%の雰囲気下で、2分間調湿した。乾燥後の塗膜の細孔径を、N2吸着法により求めたところ、20nmであった。測定器はBELSORP−mini(日本ベル製)をもちいて吸着側の測定結果を採用した。結果を表1に示す。
SMの分散条件及びシリカ種類を変え同様にシリカを分散した塗布液2〜8を得た、これらを用いて同様に単層塗布し、各々の細孔径を求めた(表1)。尚、シリカ微粒子の平均粒径は、20〜500nmの範囲で、ゼータ電位は、全て+40mVにあわせた。
Figure 2005138403
表1において、X−37は湿式シリカ、A300は気相法シリカ、スノーテックスZLはコロイダルシリカである。分散液7は、粘度が高くなるためシリカ濃度として20%とした。そのほかは30%で作製した。分散液8は、液状品のためカチオン樹脂P−9を添加後、ディゾルバーで分散後、SMで分散処理した。
(記録媒体1〜17の作製)
塗布液1〜8を用いて、上層、下層を構成し、上層の膜厚(h1)、下層の膜厚(h2)の比率(h1:h2)及び上下層のtotal膜厚(h1+h2)を変化させ、上下層同時に塗布し表2に示す記録媒体1〜17を作製した。塗布乾燥条件は前記単層膜作製と同じで行った。
得られた記録用媒体1〜17について、以下の項目を評価した。
<光沢度>
日本電色工業株式会社製変角光度計(VGS−1001DP)を用いて、75°光沢度を測定した。
<インク吸収速度>
記録媒体にインクジェットプリンター(Epson製、PM950C)のPM写真モードでシアン、マゼンタ、イエロー、及びブラックの各色ベタを印字した。印字部にPPC用紙を手で押し当て、インクが転写するかどうかを目視にて調べた。転写が無くなるまでの時間を測定し4段階で評価した。
◎:5秒未満
○:5以上〜10秒未満
△:10以上〜30秒未満
×:30秒以上
10秒未満のものであれば、実用に耐えうる。
<インク吸収容量>
記録媒体に、上記方法で赤、緑、青の混色ベタを印字し、インク溢れの有無、印字濃度の均一性を以下の4段階で評価した。
◎:インク溢れはなく、均一性もよい
○:インク溢れはないが、濃度の均一性が若干劣る。
△:インク溢れ、濃度不均一性が若干ある
×:インク溢れが顕著
△レベル以上であれば、実用上耐えうるレベル
<ひび割れ>
記録媒体1m2のひび割れを、目視で観察し4段階で評価した。
◎:ひび割れ無し
○:ひび割れ5個以下
△:ひび割れ10個以下
×:ひび割れ11個以上
△レベルであれば実用上耐えうるレベル
Figure 2005138403
表2から、本発明の試料は、高インク吸収性、高光沢性に優れた、インクジェット記録媒体であることが分かる。

Claims (4)

  1. 支持体上に少なくとも2層以上のシリカ微粒子を含有した多孔質インク受容層を設けたインクジェット記録媒体であり、各層の細孔分布曲線が細孔径8〜70nmの範囲に少なくとも1つのピークを持ち、上層の細孔径ピークが下層の細孔径ピークより大きいことを特徴とするインクジェット記録媒体。
  2. 上層の厚みが下層の厚みに対し、1/3〜10倍であり、かつ、上層の厚み+下層の厚みが、20μm〜60μmであることを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録媒体。
  3. 少なくとも前記シリカ微粒子が湿式法で製造されたシリカを粉砕分散して得られるシリカ微粒子を含有していることを特徴とする請求項1又は2記載のインクジェット記録媒体。
  4. 請求項1〜3記載のいずれか1項記載のインクジェット記録媒体を、支持体上に、上、下層同時塗布して製造することを特徴とするインクジェット記録媒体の製造方法。
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