JP4078406B2 - 注射器のシリンダの製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明はシリコンオイル由来の潤滑薄層がシリンダの円筒内周面に一体的に形成されている注射器のシリンダとその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
最近、衛生・安全面や人手の問題から医療現場では使い捨て医療用具が非常な勢いで普及しており、特にエイズ問題や感染症問題が社会問題化してからはディスポーザブル注射器はその最たるものになっている。従来、注射器のシリンダはガラス製のものを使用していたものが、薬剤注射用のディスポーザブル注射器の採用が急務になるや樹脂製、特にポリプロピレン製やポリカーボネート製シリンダの使用が検討されるようになってきた。ガラス製シリンダの場合でもゴム摺動体を使用する時は勿論であるが、樹脂製の場合には、シリンダの円筒内周面にシリコンオイルを塗布してピストンの先端に装着したゴム摺動体が円滑に摺動するようにしなければならない。
【0003】
処が、シリコンオイルは、人体に入ると障害を起こす可能性が米国で指摘され始めたため、その塗布量は厚生省告示第442号によれば、ディスポーザブルタイプの5mリットル容量以下の小型注射器では8mg/本以下、大型注射器でも15mg/本以下と厳格に定められており、これ以上の塗布量を示したものは不良品として処分される。処が、シリコンオイルの塗布は、作業者が綿棒やスポンジにシリコンオイル(2)を含浸させて1本づつ手作業で行うため、塗りむらが生じやすいだけでなく、図13のようにシリンダ(1)の底面(1b)に塗布したシリコンオイル(2)が溜まり、この溜まったシリコンオイル(2)や前記塗りむらによって生じた厚塗りで流動性を持っている部分が注射液に混じって注射されるという問題もあった。
【0004】
更に、医療用具の製造で最も重要なことは、最終製品に細菌は勿論のこと、感染症の原因となる細胞毒性、例えばグラム陰性菌の死骸から生じるエンドトキシンもほとんど付着していないことが要求されている。
そこで、成形されたシリンダ(1)は各工程毎に滅菌と超純水による洗浄とが頻繁に行われ、細菌の付着を極力少なくするために大変な手間を必要とする。
処が従来方法では、たとえ滅菌シリコンオイルとほぼ完全に消毒されたシリンダ(1)とを使用し、細菌のほとんど存在しないクリーンルームで作業者の着衣その他に気を配り、そしてその塗布作業にいかに注意を払ったとしても、その塗布作業が人手による限り細菌の付着は免れない。いったん付着した細菌はその付着場所で増殖する。この増殖によって細菌数は増加する(特に、シリコンオイル塗布面において)ので、たとえ塗布作業後に滅菌したとしてもこの滅菌作業によって死ぬ細菌の数も増え、その大量の死骸から発生するエンドトキシン付着の確率も当然多くなる事になる。
また、増殖によって増えた細菌はたとえ滅菌作業を後に施したとしてもこれを免れる細菌も増える可能性がある。
その他、人手による作業であるから製品にムラがあるばかりか作業能率も格段に悪いという問題があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、第1にシリンダの内周面に一体的に形成された極めて薄肉のシリコンオイル由来の潤滑薄層を有し、シリコンオイルの薬液中への混入が従来例に比べて極端に少なくなるというこれまでにない画期的な注射器のシリンダの開発にあり、第2に前記前記潤滑薄層を有するシリンダ又は前記潤滑薄層を能率よく且つ細菌の増殖を抑制しつつ或いは無菌状態を保って製造する事ができる注射器のシリンダ又は潤滑薄層の製造方法の開発にある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
『請求項1』は「シリンダ形成用の雄金型(3)の凸部(3a)表面にポリジメチルシロキサン(2)を塗布し、次に型締め後、ポリプロピレン樹脂(13)、ポリカーボネート樹脂(13)あるいは芳香族ポリオレフィン樹脂(13)を金型キャビティ(4)に注入し、樹脂(13)にて形成されたシリンダ(1)の内周面に、射出成形時の加熱・加圧によって生じた上記ポリジメチルシロキサン由来の潤滑薄層(2a)を一体的に形成する」事を特徴とする注射器のシリンダの製造方法である。
【0007】
本発明の製造方法で製造されたシリンダによれば、従来のようにシリコンオイル(2)が塗布されただけでシリンダ(1)の円筒内周面(1a)と一体化しておらず、ピストン(1c)の先端に装着されているゴム摺動体(1d)を移動させるとその一部がそれに付着すると共に厚く塗られていて流動性を保っている部分がこすり取られて注射液に混入するようなものと違い、潤滑層を形成するポリジメチルシロキサン由来の潤滑薄層(2a)がシリンダ(1)の円筒内周面(1a)は勿論、その底面(1b)及び注射針装着用突起(1e)の内周面(1f)まで含む内周面全体に一体的に形成されている。したがって、たとえシリンダ(1)内でピストンの先端に装着されているゴム摺動体(1d)を移動させても円筒内周面(1a)の潤滑薄層(2a)は勿論、前記底面(1b)及び注射針装着用突起(1e)の内周面(1f)の潤滑薄層(2a)がほとんど剥離せず、注射液に混入するような事が殆どなくて極めて衛生的である。
【0008】
なお、この場合シリンダ(1)の材質はポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂あるいは芳香族ポリオレフィン樹脂である。また、シリコンオイル(2)は、現在の薬事法では後述する1種類、ポリジメチルシロキサンのみが認可されている。
潤滑薄層(2a)は、加熱・加圧を併用して形成される。加熱、加圧方法は後述するような射出成形によっておこなわれる。
【0011】
また、シリンダ形成用の雄金型 (3) の凸部 (3a) の表面『この場合、円周外面のみに限られず、その先端面 (3c) やピン部 (3b) の外周面も含む。』にポリジメチルシロキサン (2) を塗布する工程を付加するだけでポリジメチルシロキサン由来の潤滑薄層 (2a) がその内周面全体に強固に一体的に形成されたシリンダ (1) を形成する事ができる。また、この潤滑薄層 (2a) は加圧・加熱(例えば、充填時の溶融樹脂温度は200〜350℃、充填圧力は300〜2000kgf / cm 2 )して形成されるため、従来の塗布方式より著しく薄くすることが出来、ポリジメチルシロキサン (2) の塗布量を必要最小限にする事が出来る。このような作用効果を生むメカニズムについては後述する。
【0012】
さらに、ポリジメチルシロキサン (2) を塗布した後に射出成形するのであるから、たとえポリジメチルシロキサン (2) の塗布時に細菌が付着していたとしてもポリジメチルシロキサン (2) の塗布直後に高温高圧で射出成形するため、付着細菌は増殖する間もなく悉く死滅してしまい従来例に比べて安全性を高める事ができるし、ポリジメチルシロキサン (2) が付着した状態で射出成形するためにシリンダ (1) の内径は潤滑薄層 (2a) を含んだ寸法となり、成形後にポリジメチルシロキサン (2) を塗布する場合と異なり、シリンダ (1) 内径の寸法精度が非常に高くなる。
【0015】
『請求項2』は前記注射器のシリンダ (1) の製造方法の他の例で「シリンダ形成用の雄金型 (3) の凸部 (3a) の表面にポリジメチルシロキサン (2) を塗布し、次に型締め後、ポリプロピレン樹脂 (13) 、ポリカーボネート樹脂 (13) あるいは芳香族ポリオレフィン樹脂 (13) を金型キャビティ (4) に注入し、樹脂 (13) にて形成されたシリンダ (1) の内周面に、射出成形時の加熱・加圧によって生じたポリジメチルシロキサン由来の潤滑薄層 (2a) を一体的に形成し、型開後、雄金型 (3) に付着しているシリンダ (1) の表面に印刷する」事を特徴とする。
【0016】
これによれば、前述の場合に加えて雄金型 (3) に付着している温度の高いシリンダ (1) の表面に印刷するので、(i)印刷インクの乾きが早く印刷工程の短縮を達成できるのと、(ii)たとえ印刷時にシリンダ (1) の外面に細菌の付着が有ったとしても熱によって瞬時に死滅してしまうのでこの工程でも細菌の増殖の抑制或いは無菌状態を保つことができて非常に衛生的である。
【0020】
【実施例】
以下、本発明を図示実施例に従って説明する。図1は本発明のシリンダ(1)を製造するための一般的な射出成形機(A)で、雌金型(5)に射出筒部(6)のノズル(7)が接続されている。射出筒部(6)内にはスクリュ(8)が回転・前後スライド自在に配設されている。前記スクリュ(8)には射出シリンダ(9)と駆動部(10)とが接続していて、射出シリンダ(9)にてスクリュ(8)を前後にスライドさせ、ギア機構(11)を介して駆動部(10)にてスクリュ(8)を回転させるようになっている。射出筒部(6)の後端にはホッパ(12)が設置されており、原料樹脂(13)を連続的に供給するようになっている。射出筒部(6)の周囲にはヒータ(14)が巻設されており、通過中の原料樹脂(13)を加熱溶融するようになっている。
【0021】
図の実施例の金型(K)の主要構成部材は雄金型(3)と雌金型(5)、突き出し筒(15)で、雄金型(3)からシリンダ(1)の内面形状を形成するための凸部(3a)が突設されており、これに対応して雌金型(5)にはシリンダ(1)の外面を形成するための凹部(5a)が形成されている。
【0022】
(R)はロボット装置で、射出成形機(A)に併設されており、例えば、オイル塗布装置(16)、印刷装置(17)と取出装置(20)とを所定位置に移動できるようにしてる。ロボット装置(R)の代わりに人手を利用してもよいが、最低でも取出装置(20)はロボット装置(R)を使用する事が好ましい。
装置全体は一般的には細菌数の数が厳密に管理されているクリーンルームに設置される。
【0023】
シリンダ(1)に使用される樹脂原料(13)は、その用途によって透水率、透明性、耐熱性など薬事法で規定されている諸条件をクリアする必要があるため、例えばポリプロピレン、ポリカーボネート、芳香族ポリオレフィンなどが使用される。
【0024】
次に、本発明の作用について説明する。まず、ロボット装置(R)を作動させ、オイル塗布装置(16)にて型開されている金型(K)の雄金型(3)の凸部(3a)の外周面にシリコンオイル(2)を適量塗布する。塗布領域は円柱外周面(3d)、先端面(3c)及びピン部(3b)を含む凸部(3a)の外面全面であってもよいし、ピン部(3b)或いは先端面(3c)を除く部分であってもよいが、少なくとも円柱外周面(3d)は塗布される事になる。
【0025】
シリコンオイル(2)の塗布方法は特に限定されるものではなく、本実施例ではオイル塗布装置(16)のようなロボット装置(R)を使用してシリコンオイル(2)を含浸させた筒状の布又は紙、スポンジ(16a)その他で凸部(3a)を囲繞して押圧し、凸部(3a)の少なくとも円柱外周面(3d)を含む外周面にシリコンオイル(2)を塗布する。シリコンオイル(2)の塗布が終わると型閉し、金型(K)内に金型キャビティ(4)を形成する。
【0026】
一方、原料樹脂(13)をホッパ(12)に投入し、駆動部(10)を作動させてスクリュ(8)を回転させる。スクリュ(8)の回転と共に原料樹脂(13)がヒータ(14)にて例えば200〜350℃に加熱され、溶融・混練されて射出筒部(6)の先端部分に貯溜されていく。これと共にスクリュ(8)は次第に後退し、射出筒部(6)の先端に貯溜された溶融混練樹脂の計量が完了した処で射出シリンダ(9)を作動させてスクリュ(8)を前方に突出させ、射出筒部(6)の先端の計量樹脂を金型(K)に300〜2000kgf/cm2で射出する。
【0027】
射出された溶融混練樹脂(13)は、金型(K)のランナ(18)、ゲート(19)を通過して金型キャビティ(4)内に高速高圧で圧入される。金型キャビティ(4)内に圧入された溶融混練樹脂(13)は、雄金型(3)の凸部(3a)の外面に塗布されたシリコンオイル(2)を強く押圧しながら瞬間的に金型キャビティ(4)を充填する。シリコンオイル(2)はこの時瞬時に溶融混練樹脂(13)の温度に昇温すると同時に凸部(3a)の表面に均一に延ばされ且つ溶融混練樹脂(13)の内周面に張り付く。然る後、この溶融混練樹脂(13)が固化してシリンダ(1)となり、この少なくとも円筒内周面(1a)にシリコンオイル由来の潤滑薄層(2a)が一体的に形成される。
潤滑薄層(2a)の成形範囲はシリコンオイル(2)の塗布領域に対応する。
【0028】
この工程では金型(K)も溶融混練樹脂(13)も一般的には滅菌温度以上に保たれているため、この射出成形の間に細菌が凸部(3a)やシリンダ(1)に付着して増殖するするような事は全くないし、万が一塗布時に付着したとしても瞬時に高温のため死滅してしまうためシリンダ(1)の製造工程全体を通じて細菌の付着や増殖は勿論、感染症の原因となるエンドトキシンなどの発生を最小限に抑制或いはそのものを分解する事ができ従来の製造方法に比べて飛躍的に安全性を高められる。
【0029】
此処で、シリコンオイル由来の潤滑薄層(2a)の形成過程の、推定されるメカニズムを説明する。金型キャビティ(4)を形成するキャビティ面にはいかに精密に研磨その他の加工を施したとしても現在の技術ではサブミクロン台(例えば0.5〜0.02μm)の極く微細な凹凸が残る。いま、凸部(3a)にシリコンオイル(2)を塗布すると、粘度の高いシリコンオイル(2)はその表面張力によって凸部(3a)の表面に残っているサブミクロン台の前記凹所に入って行かない。(図2(b)参照)
そこで、前述のように高温・高圧で射出成形すると高温の射出樹脂の圧力によって凸部(3a)の表面にシリコンオイル(2)が圧し広げられると同時にその一部が凹所内に押し込まれ、凹凸を有する潤滑薄層(2a)が凸部(3a)の少なくとも円柱外周面(3d)を含む外周面全面に均一に形成され、これがシリンダ(1)の少なくとも円筒内周面(1a)を含む内周面に一体的に付着する。(図5(b)参照)
その結果、図12に示すように潤滑薄層(2a)の内周面には、サブミクロン台(例えば0.5〜0.02μm)の厚い部分(2b)が島状に全体的に均一に広がっており、このサブミクロン厚の島状部分(2b)がゴム摺動体(1d)のスムーズな摺動の大部分をを助ける。その結果、シリコンオイル(2)の塗布量は従来例に比べて極めて少なくて足る事になる。
【0030】
このシリコンオイル由来の潤滑薄層(2a)は、その一部或いは全部を布などで簡単にぬぐい取る事ができるような単なる塗布状態のものでなく、加熱又は加圧或いは加熱・加圧によって極く薄層にてシリンダ(1)の円筒内周面(1a)に強固且つ一体的に形成された状態のものである。
【0031】
このように潤滑薄層(2a)付きのシリンダ(1)の成形が完了すると、型開して雄金型(3)に付着しているシリンダ(1)を外部に露出させ、続いてロボット装置(R)を作動させて印刷装置(17)をシリンダ(1)の直上に移動させ、印刷装置(17)の印刷パッド(17a)を降下させて、印刷パッド(17a)の上に塗着している印刷パターンをシリンダ(1)の表面に転写印刷する。
この時点でもシリンダ(1)の表面は十分に滅菌温度を保っているため、細菌の増殖は防がれるし、印刷されたインクも急速に乾き、短時間での取り出しが可能となる。印刷が終了すると印刷パッド(17a)が引き上げられてシリンダ(1)から離間し、続いて突出装置(15a)が作動して突き出し筒(15)を突き出し、凸部(3a)に嵌着しているシリンダ(1)を離脱させる。然る後、ロボット装置(R)を作動させて取出装置(20)を射出成形品のランナ部分(21)の直上に移動させ、続いて取出装置(20)を降下させて前記ランナ部分(21)を掴み、金型(K)から離脱させる。
以上のような操作を繰り返して注射器のシリンダ(1)の無菌状態下における大量生産を実施する。
【0032】
図9、10は成形されたシリンダ(1)を利用して潤滑薄層(2a)を形成する場合である。まず、少なくとも注射器用のシリンダ(1)の内周形状と略同形の潤滑薄層(2a)形成用の型(30)を用意する。潤滑薄層(2a)を必要とするのはシリンダ(1)の円筒内周面(1a)であるから、形成用型(30)はシリンダ(1)の円筒内周面(1a)だけに合致する形状を有していれば足る。図の実施例ではピン部(30b)迄有する例が記載されている。
【0033】
まず、前記凸部(30a)の表面『少なくとも円柱外周面(30d)』にシリコンオイル(2)を塗布し、続いて該凸部(30a)を注射器用のシリンダ(1)に挿入して加熱又は加圧或いは加熱・加熱し、これにより生じたシリコンオイル由来の潤滑薄層(2a)をシリンダ(1)の内周面に一体的に形成する。
加圧方法としては図示しない雌型をシリンダ(1)の外側に嵌め込んで加圧するようにしてもよいし、その方法は限定されない。
加熱方法は、凸部(30a)の内部に図示しないヒータを装着したり、例えば型(30)から伝熱で凸部(30a)を加熱するようにしてもよい。
【0034】
この場合も既形シリンダ(1)の少なくとも円筒内周面(1a)、場合よってはその底面(1b)及び注射針装着用突起(1e)の内周面(1f)まで含む内周面全体にシリコンオイル由来の潤滑薄層(2a)一体的に形成する事ができる。
【0035】
(実施例1)
次に、シリコンオイル(ポリジメチルシロキサン)の塗布量と、摺動性及び外観についての実験結果を示す。凸部にシリンダオイルを塗布し、原料樹脂をポリカーボネートとして前述のように射出成形した。シリンダの円筒内周面に潤滑薄層を形成するとシリンジのピストンの先端に装着されているブチルゴム摺動体の滑り性は著しく改善されるが、凸部への塗布量が多すぎるとシリンダに曇りが生じて外観不良となり、逆に塗布量が少なすぎると外観は良好であるものの滑り性が損なわれる。そこで、シリコンオイルの塗布量と摺動性及び外観との関係を調べてみると、以下の通りであった。
(実施例2)
次に、シリコンオイル(ポリジメチルシロキサン)の粘度と、摺動性及び外観についての実験結果を示す。
以上から、摺動性と外観とを共にクリアする領域として、シリコンオイルがポリジメチルシロキサンの場合、その粘度が500〜30,000センチストークスであり、塗布量が0.001〜0.05g/100cm2であることが分かる。
【0036】
【発明の効果】
本発明によれば、ピストンの先端に装着されているゴム摺動体が摺接するシリンダの少なくとも円筒内周面にシリコンオイル由来の潤滑薄層が一体的に形成されているので、ゴム摺動体を移動させたとしても潤滑薄層の剥離がほとんどなく、注射液への混入がない。
また、シリコンオイルの塗布領域を凸部の円柱外周面に限定すれば、シリコンオイルの塗布面積を最小限にする事が出来るだけでなく、従来のようなシリコンオイルの溜まりが発生せず、安全性を高める事ができる。
また、本発明方法によれば、凸部の表面へのシリコンオイルの塗布だけで潤滑薄層の形成が可能になり、細菌付着やエンドトキシンなどの非常に少ない安全なシリンダを自動化によって大量生産する事が可能になる。
また、型開後、雄金型に付着しているシリンダの表面に印刷するようにすれば、(i)印刷インクの速乾による印刷工程の短縮と、(ii)細菌の付着・増殖を抑制する事が同時に行えるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる射出成形機の概略断面図
【図2】丸で囲んだ部分を更に拡大した図を有する図面で、本発明において、型開状態で凸部にシリコンオイルを塗布した状態の要部拡大正断面図
【図3】型締状態の要部拡大断面図
【図4】型締状態で混練溶融樹脂が金型キャビティに射出されている途中段階の要部拡大断面図
【図5】丸で囲んだ部分を更に拡大した図を有する図面で、型締状態で混練溶融樹脂が金型キャビティに充填された状態の要部拡大断面図
【図6】片開き状態の要部拡大断面図
【図7】片開き後、シリンダの外面に印刷を施している状態の要部拡大断面図
【図8】印刷完了シリンダを離型している状態の要部拡大断面図
【図9】他の本発明方法で、凸部に既製シリンダを装着しようとしている場合の要部断面図
【図10】凸部に既製シリンダを装着した場合の要部断面図
【図11】本発明にかかるシリンダの円筒内周面の部分拡大断面斜視図
【図12】(a)…本発明方法で形成された潤滑薄層が内周面全面に形成されているシリンダの断面図
(b)…本発明方法で形成された潤滑薄層が円筒内周面だけに形成されているシリンダの断面図
【図13】丸で囲んだ部分を更に拡大した図を有する図面で、従来例の注射器のシリンダの断面図
【符号の説明】
(A)…射出成形機
(1)…シリンダ
(1a)…円筒内周面 (1b)…底面 (1c)…ピストン (1d)…ゴム摺動体
(2)…シリコンオイル
(2a)…シリコンオイル由来の潤滑薄層
(2b)…サブミクロン厚の島状部分
Claims (2)
- シリンダ形成用の雄金型の凸部表面にポリジメチルシロキサンを塗布し、次に型締め後、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂あるいは芳香族ポリオレフィン樹脂を金型キャビティに注入し、前記樹脂にて形成されたシリンダの内周面に、射出成形時の加熱・加圧によって生じた前記ポリジメチルシロキサン由来の潤滑薄層を一体的に形成する事を特徴とする注射器のシリンダの製造方法。
- シリンダ形成用の雄金型の凸部表面にポリジメチルシロキサンを塗布し、次に型締め後、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂あるいは芳香族ポリオレフィン樹脂を金型キャビティに注入し、前記樹脂にて形成されたシリンダの内周面に、射出成形時の加熱・加圧によって生じた前記ポリジメチルシロキサン由来の潤滑薄層を一体的に形成し、型開後、雄金型に付着しているシリンダの表面に印刷することを特徴とする注射器のシリンダの製造方法。
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