JP4041534B2 - エチレン−酢酸ビニル系共重合体エマルジョン、その製造方法および接着剤用組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本願発明は、エチレン−酢酸ビニル系共重合体エマルジョン、及びその製造に関するものであり、更に詳しくは平均粒子径が3μm以上と大きく、不揮発分が70質量%以上であることを特徴とする初期接着性や耐熱クリープ性、耐寒性のバランスに優れた塩ビオーバーレイ用接着剤やオレフィンフィルム用接着剤などに好適に使用できるエチレン−酢酸ビニル系共重合体エマルジョン、およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
エチレン−酢酸ビニル系共重合体エマルジョン(以後EVA系エマルジョンと称す)は接着剤として、また土木建材分野、塗料分野、製紙分野、繊維分野においても広く利用されている。また、他の水系エマルジョンと異なり、EVA系エマルジョンは比較的容易に60質量%程度の高不揮発分にすることが可能であり、初期接着性能に優れた高不揮発分EVA系エマルジョンが各社から製品化されている。
従来は、界面活性剤にポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体を用いて70重量%までの不揮発分を含有する酢酸ビニル−エチレン共重合体エマルジョンを製造する方法や(例えば、特許文献1参照)、低重合度のポリビニルアルコール(以後PVAと称す)と特定のHLBを持った界面活性剤を併用して平均粒子径が0.9μm以下で不揮発分が65〜70重量%の酢酸ビニル−エチレン共重合体エマルジョンを製造する方法(例えば、特許文献2参照)、また、低重合度のポリビニルアルコールと界面活性剤を併用することによって不揮発分65%以上の安定な酢酸ビニル−エチレン共重合体エマルジョンを製造する方法(例えば、特許文献3参照)がある。ところがこれまでの技術では、高不揮発分のEVA系エマルジョンを重合するにあたって、乳化剤として界面活性剤を多量に使用して高不揮発分化していたものが殆どであり、使用した界面活性剤は被着体との間で接着阻害を生じ、十分な接着性能を発現していなかった。その為、市場からは接着性能に優れ、且つこれまで以上の高不揮発分なEVA系エマルジョンの要求が非常に強くなってきている。
【0003】
【特許文献1】
特公昭42−22692号公報(第1頁)
【特許文献2】
特公平6−55874号公報(第1〜2頁、請求項1〜6)
【特許文献3】
特許番号第2624741号公報(第1頁、請求項1)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本願発明の目的は、不揮発分が70%以上でも粘度が低く十分な作業性を持っており、且つ初期接着性に優れ、耐熱特性と低温特性のバランスに優れたEVA系エマルジョン、及びその製造方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本願発明は、かかる目的を達成すべく鋭意検討した結果、EVA系エマルジョンを重合する際に特殊な乳化剤を組み合わせる事によって、平均粒子径が3μm以上あり、不揮発分が70質量%以上で、初期接着性に優れ、且つ耐熱特性と低温特性のバランスに優れたEVA系エマルジョンを製造できることを見出したものである。また、本願発明のEVA系エマルジョンは機械安定性や化学的安定性にも優れていることから、各種溶剤やイソシアネート等を混和し特徴のある接着剤組成物を得られることを見出したものである。
【0006】
【発明の実施の形態】
本願発明で重合されるEVA系エマルジョンのエチレンと酢酸ビニルとその他共重合可能な単量体の割合は質量比で5〜40:95〜40:0〜20、好ましくは10〜35:90〜50:0〜15である。その他共重合可能な単量体としては、例えば塩化ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、アクリル酸、メタアクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、エチルメタアクリレート、プロピルメタアクリレート、ブチルメタアクリレート、2−エチルヘキシルメタアクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N−ビニルピロリドン、スチレン、アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミドがあるが、これらの成分のうち一種類以上を共重合させることが可能である。また、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートを併用することもでき、接着剤として使用した場合は耐熱性の向上が、モルタル用途に使用した場合は耐アルカリ性を向上させる効果がある。その添加量は1質量%以下、好ましくは0.5質量%以下である。
【0007】
本願発明におけるEVA系エマルジョンを接着剤に使用する場合、エチレンの割合が5〜40質量%の範囲から外れると、低温接着性、初期接着性、耐熱性の少なくとも1つの特性が損なわれる。また酢酸ビニルの割合が95質量%を超えると低温接着性が低下し、逆に酢酸ビニルの割合が40質量%未満になると乳化重合時のエマルジョンの安定性もしくは常態接着強度が低下する傾向にある。その他共重合可能な単量体の割合が20質量%を超えると、低温接着性もしくは常態接着強度が低下する傾向にある。特に、低温接着性を重視する用途には、エチレンの割合が21〜40質量%のEVA系エマルジョン、耐熱性が重視される用途にはエチレンの割合が5〜21質量%のEVA系エマルジョンが好ましい。
【0008】
本願発明で使用する乳化剤は、次の2つの成分から成り立っており、これらのうち1つでも無い場合は十分な性能を発現するEVA系エマルジョンが得られない。1つは鹸化度が低く重合度も小さいPVA(以後「低鹸化低重合度PVA」と称す)で、1つは分子内にアリル基を有する反応性の界面活性剤である。
【0009】
本願発明で使用する低鹸化低重合度PVAの鹸化度範囲は、60〜86mole%で、好ましくは65〜84mole%、更に好ましくは70〜82mole%の範囲である。鹸化度が60mole%未満の場合、極端に水への溶解性が低下し、特殊な溶解方法を用いなければ溶解できず、工業的には使用し難い。また、出来上がったEVA系エマルジョンの構造粘性が極端に上昇してしまい、高速で貼り合わせを行うと、糊飛び(ロールから糊が剥がれ飛ぶ現象)等の問題も生じてくる。鹸化度が86mole%を超えると、出来上がったEVAエマルジョンの構造粘性が上がらず、ロール適性やハケでの作業性が極端に落ちてしまう。
【0010】
本願発明で使用する低鹸化低重合度PVAの重合度は、100〜500、好ましくは150〜450、更に好ましくは200〜400である。重合度が100より小さいと出来上がったEVA系エマルジョンの不揮発分は高くできるが、エマルジョン中に多量の糊アカ(JIS K 6828でいう粗粒子)が生じてしまう。重合度が500を超えると、出来上がったEVA系エマルジョンに生じる糊アカの量は少ないものの、重合中に粘度が上昇し、不揮発分を70質量%まで上げることが不可能となる。
【0011】
本願発明で使用する低鹸化低重合度PVAの使用量は、重合する酢酸ビニルモノマー単位100質量部に対して0.5〜4.0質量部、好ましくは1.0〜3.5質量部、更に好ましくは1.2〜3.0質量部である。低鹸化低重合度PVAの量が0.5質量部よりも少ない場合は、出来上がったEVA系エマルジョンに
多量の糊アカが含まれることになり、4.0質量部よりも多い場合は重合中にエマルジョンの粘度が上昇し、不揮発分を70質量%まで上げることが不可能となる。
【0012】
本願発明で使用する反応性の界面活性剤とは、下記の(式1)、(式2)に示した様に分子内にアリル基を有しており、酢酸ビニルモノマーもしくはエチレンモノマーと反応するものであれば、特に限定されるものではない。
【化2】
【0013】
本願発明で使用する反応性の界面活性剤の量は、酢酸ビニルモノマー100質量部当たり0.2〜3.0質量部、好ましくは0.4〜2.0質量部、更に好ましくは0.6〜1.5質量部である。反応性の界面活性剤の量が0.2質量部よりも少ないと、出来上がったエマルジョンの粒子径が十分に大きくならず、粘度が高くなりすぎてしまう。反応性の界面活性剤の量が3.0質量部よりも多いと、粒子径は十分に大きくなるが、粒子間の架橋が進みすぎてしまい、その結果、粘度が高くなり過ぎてしまう。
【0014】
本願発明で使用する重合用の乳化剤には低鹸化低重合度PVAと反応性の界面活性剤が必須成分ではあるが、得られるエマルジョンの物性に大きな影響を与えない範囲で、その他の水溶性高分子などの保護コロイドや界面活性剤などを使用しても良い。具体的には、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロースといった水溶性高分子、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー等のノニオン界面活性剤、ラウリル硫酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩やメチルタウリン酸塩、スルホコハク酸塩、エーテルスルホン酸塩、リン酸エステル塩などのアニオン界面活性剤、ノニルフェニル系、ポリアルキレングリコール系、脂肪酸エステル系等のノニオン界面活性剤、第4級アンモニウム塩やアミン塩類などのカチオン界面活性剤、その他の両性界面活性剤を使用しても良い。但し、これらの各種界面活性剤は添加量を増やすことによって得られるEVA系エマルジョンのトルエン不溶分が低下し、接着剤として使用する場合、耐熱性が低下することが懸念されるので、可能な限り少量であることにこしたことはない。そのため、トルエン不溶解分が40質量%以上のEVA系エマルジョンが得られるように、PVA成分は全乳化剤成分の30%質量以上であることが好ましい。
【0015】
なお、EVA系エマルジョンにおけるトルエン不溶解分の測定は、合成樹脂エマルジョンの乾燥皮膜を細かく裁断したもので行い、例えば、0.5gの皮膜を50mlのトルエンに浸漬し、50℃で5時間振盪した後、200メッシュの金網で濾過回収される不溶解分の重量を測定することにより求められる。
【0016】
本願発明におけるEVA系エマルジョンの重合方法はとしては、通常用いられている乳化重合方法を使用することができ、例えば、還元剤と酸化剤からラジカルを生成させるレドックス重合法や、熱分解でラジカルを生成させる熱重合法などが適用できる。レドックス重合法において使用する還元剤も公知なものを使用でき、例えばロンガリット、ソジウムホルムアルデヒド、L−アスコルビン酸、酒石酸などである。その際には硫酸第一鉄などの水溶性金属化合物も併用できる。また、開始剤として使用する酸化剤としては過酸化水素、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の水溶性無機過酸化物または過硫酸塩や、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物が使用できる。また、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム等のキレート剤もラジカル開始効率を上げるために併用できる。重合に使用する酢酸ビニルモノマーに関しては、初期に全量を重合缶内に投入してもかまわないし、一部を重合途中に継続的に重合缶内に添加してもかまわない。重合温度に関してはラジカルが十分な速度で生成する条件であれば特に規定はないが、通常は40〜80℃の範囲が好ましい。
【0017】
本願発明によって製造されるEVA
系エマルジョンは、平均粒子径が3μm以上と大きく、更には不揮発分が70質量%以上であるのにもかかわらず、粘度が100〜5000mPa・sと低く、十分な作業性を有している。また、乳化剤に特殊なPVAと反応性の界面活性剤を使用することによって、トルエン不溶解分も40質量%以上と高く、且つ従来接着阻害を引き起こしていた界面活性剤成分が少ないため、接着剤として使用した際には各種被着体との接着性に優れ、水分が蒸発した後にはその高いトルエン不溶解分のために高い耐熱性を発現する。また、粒子径が3μm以上で且つ粒子径分布がブロードであるため、水が蒸発して粒子が融着する際に粒子間に存在する空隙部の体積が小さくなり、結果として水が早く蒸発することとなり、初期接着性が大幅に向上する。特に被着体に木材や紙などの吸水性基材を使用した場合はその傾向が顕著に現れ、これまでには発現できなかったほどの初期接着力を発現しうる。
【0018】
「実施例」
以下に更に詳細に実施例をもって説明する。なお、本願発明記載の部及び%は特に記載がなければいずれも質量基準で示したものである。
【0019】
<実施例1>
PID自動温度制御の冷却ジャケット及び攪拌機付の高圧重合缶に鹸化度80mole%、重合度400のPVAであるユニチカレジンUMR−10H(ユニチカ株式会社製)を3部、アルキルスルホコハク酸ナトリウムの構造を有する反応性界面活性剤エレミノールJS−2(三洋化成株式会社製)を1部、ノニオン系界面活性剤であるエマルゲン913を0.2部、エマルゲン950を0.2部(いずれも花王株式会社製)を予め90℃以上に調整した蒸留水45部に溶解し、これに酢酸ソーダ0.2部、ロンガリット(住友精化製)0.2部、硫酸第一鉄・七水和物0.005部、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム0.01部を5部の蒸留水に溶解してから仕込み、更に攪拌下酢酸ビニルモノマー70部を仕込み、窒素で重合缶内部を置換した後、エチレン25部を充填した。温度を55℃とした後、1%の過硫酸アンモニウム水溶液を7時間、連続添加し重合を行った。酢酸ビニルの残りの30部は過硫酸アンモニウム水溶液を添加してから1時間後から計3時間に渡って連続添加した。未反応の酢酸ビニルモノマー量が1%未満になるまで重合を継続し、残存するエチレンをパージしEVAエマルジョンを得た。
【0020】
<実施例2>
実施例1においてユニチカレジンUMR−10Hの使用量を4部、エレミノールJS−2の使用量を0.3部とした以外は実施例1と同様にして重合を行った。
【0021】
<実施例3>
実施例1においてユニチカレジンUMR−10Hの使用量を1部、エレミノールJS−2の使用量を3部とした以外は実施例1と同様にして重合を行った。
【0022】
<実施例4>
実施例1においてエレミノールJS−2に替わって、(式2)の構造を持つアデカリアソープSE−10N(旭電化株式会社製)を1部使用する以外は実施例1と同様にして重合を行った。
【0023】
本発明において実施した各物性値の測定・評価方法を以下に説明する。
(不揮発分、粗粒子、pH、粘度、機械安定性、残存モノマー)
JIS K 6828に準じて評価した。なお、残存モノマーは臭素/臭化カリウム水溶液による直接滴定法によって測定した。
(構造粘性指数)
単一円筒回転粘度計にて測定した6rpmの値と60rpmの値を以下の式に代入し構造粘性指数として算出した。
構造粘性指数=Log10{(6rpmの測定値)/(60rpmの測定値)}
(平均粒子径)
透過型電子顕微鏡(SEM)にて撮影した写真からエマルジョン粒子個々の粒子径を実測し、その平均値を算出した。
(トルエン不溶解分)
エマルジョンをテフロン(登録商標)板上に薄く引き延ばし、室温にて3日間以上乾燥してフィルム化した後、ハサミで細かく1mm四方以下に裁断する。これを蓋付き50ml試験管に0.5g程度計り取り、トルエンを45ml程度加え、50℃で5時間振とうする。冷却した後、重量を測定した200メッシュ金網で内容物をろ過し、ろ過残分を室温で24時間、105℃で1時間乾燥させて、その重量を測定し、以下の式からトルエン不溶解分を算出した。
(式)トルエン不溶解分(%)=(ろ過残分)/(フィルム重量)×100
【0024】
(塩ビ合板接着試験/試験体作製方法)
半硬質塩ビシートに接着剤をウェットで90g/m2となる様にバーコーターを用いて塗布し、これを5.5mm厚の耐水I類合板に載せ、0.1kg/cm2の圧締を3時間実施し、解圧後室温で6日間養生する。グラインダーで幅25mm、長さ150mmに切り分け試験体とする。
(塩ビ合板接着試験/常態剥離強度)
試験体の塩ビシートと合板を180°方向に引張り速度200mm/分で引張り、その時の剥離強度を測定する。
(耐寒性)
上記の試験体を−20℃雰囲気下、3時間放置後、その雰囲気下で手により半硬質塩ビシート側を引張って強制剥離し、剥離面を以下の規準で判定した。
○:塩ビシート側に木の大部分(70%以上)が剥がれて、付着している状態
△:塩ビシート側に木の一部部分が付着している状態
×:塩ビシートと木とが界面剥離している状態
(耐熱クリープ性)
上記試験体を半硬質塩化ビニルシートを下側にして両端を固定した状態で水平に置き、60℃のギヤーオーブン中に1時間放置した。雰囲気温度60℃、90°剥離の状態で500gの静荷重でをかけ、30分後の剥離長さを測定した。
(低温接着性)
2℃雰囲気下に試験に供する接着剤、合板、半硬質塩ビシートを24時間養生し、この雰囲気下、半硬質塩ビシートに接着剤をウェットで90g/m2となる様にバーコーターを用いて塗布し、これを5.5mm厚の耐水I類合板に載せてマングルロールにて0.1kg/cm2の圧力で圧着する。2℃の雰囲気下で24時間養生した後、同雰囲気下、半硬質塩ビシート面にカッターで切り目を入れ、手で強制剥離して破壊状態を判定した。評価結果は合板表面が破壊した(木破)割合を示すが、この数値が大きいほど低温接着性が良好である。
【0025】
(初期接着性)
温度23℃、湿度65RH%の雰囲気下に試験に供する接着剤、コピー用上質紙を24時間養生し、この雰囲気下、塗膜厚0.2mm(ウェット)のアプリケーターを用いてコピー用上質紙側に接着剤を塗布する。直ちにこの塗布面にコピー上質紙を重ねてロールテスターにて圧着した後、テーブル上にて約5cm/分の速度で130°方向に圧着したコピー用上質紙を引き剥がしてゆき、何秒後に紙破壊を生じるかを測定する。圧着してから紙破壊状態が生じるまでの時間が短いほど初期接着性が良好と見なす。
【0026】
上記試験結果を、表1に示す。
【表1】
【0027】
表1から、本願発明の製造方法で得られるEVA系エマルジョンは不揮発分が70質量%以上と高いわりに、粘度が30℃、30rpm値で5000mPa・s以下と低く、平均粒子径も3μm以上と大きく、トルエン不溶解分も40質量%以上であった。このEVA系エマルジョン92質量部にトルエンを2質量部、キシレンを5質量部添加したものを接着剤として評価した。表2に接着剤としての性能の評価結果を示したが、本願発明の製造方法で得られたEVA系エマルジョンを使用した接着剤では、初期接着性能に優れ、且つ耐熱クリープ性、耐寒性、低温接着性の何れの評価項目でも優れた性能を発現した。
【0028】
「比較例」
<比較例1>
実施例1で使用したユニチカレジンUMR−10H(鹸化度80mole%,重合度440、ユニチカ株式会社製PVA)に替わってユニチカレジンUMR−30H(鹸化度80mole%,重合度660,ユニチカ株式会社製PVA)を同量使用したが、得られたエマルジョンの粘度が著しく増大し、且つ構造粘性指数も0.62と著しく増大した。構造粘性指数が0.6を超えてしまうと、ライン塗工の設備にて貼り合わせスピードを上げた際に見かけのエマルジョン粘度の低下が大きくなり、糊飛びなどの不具合を生じてしまう。また、このエマルジョンに溶剤を加えて接着剤としたものは、更に粘度が増大してしまい、試験に供するものにはならなかった。
【0029】
<比較例2>
実施例1で使用したユニチカレジンUMR−10H(鹸化度80mole%,重合度440、ユニチカ株式会社製PVA)に替わってデンカポバールB−04(鹸化度88mole%,重合度400,電気化学工業株式会社製PVA)を同量使用したが、重合途中で重合缶内のエマルジョンの粘度が著しく上昇してしまい、滴下した触媒の酸化剤の混合不良が生じてしまい、重合が制御不可能となってしまい、エマルジョンが得られなかった。
【0030】
<比較例3>
実施例1で使用したユニチカレジンUMR−10H(鹸化度80mole%,重合度440、ユニチカ株式会社製PVA)の量を3質量部から0.3質量部まで減らし、それ以外は実施例1に準じて重合を行った。その結果、エマルジョンの粗粒子の量が230000mg/100gと著しく増加した。また、このエマルジョンに溶剤を加えて接着剤としたものは、耐熱クリープ性の剥離長が150mmと十分ではなかった。
【0031】
<比較例4>
実施例1で使用したユニチカレジンUMR−10H(鹸化度80mole%,重合度440、ユニチカ株式会社製PVA)の量を3質量部から5質量部に増やし、それ以外は実施例1に準じて重合を行った。その結果、エマルジョンの粘度が18000mPa・sと著しく増大した。また、このエマルジョンに溶剤を加えて接着剤としたものは、更に粘度が増大してしまい、試験に供するものにはならなかった。
【0032】
<比較例5>
実施例1で使用した反応性の界面活性剤エレミノールJS−2(三洋化成株式会社製)の量を1質量部から0.1質量部まで減じ、それ以外は実施例1に準じて重合を行った。その結果、得られたエマルジョンの不揮発分が70質量%で粘度が6000mPa・sと高く、平均粒子径が1.9μmと小さかった。このエマルジョンに溶剤を加えて接着剤としたものは、表3より塩ビ合板接着試験は良好な値を示したが、初期接着性が22秒と改善されず目的とした物性が発現できなかった。
【0033】
<比較例6>
実施例1で使用した反応性界面活性剤エレミノールJS−2(アルキルアリルルスルホコハク酸ナトリウム、三洋化成株式会社製)の量を1質量部から5質量部まで増やし、それ以外は実施例1に準じて重合を行った。その結果、得られたエマルジョンの平均粒子径は6.5μmと大きくなったが、不揮発分が70質量%で粘度が30000mPa・sと著しく増大した。このことから、過剰量の反応性界面活性剤による粘度低下は不可能である。
【0034】
<比較例7>
実施例1で使用したノニオン系界面活性剤エマルゲン913,950(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、花王株式会社製)の量をそれぞれ0.2質量部から1質量部まで増やし、それ以外は実施例1に準じて重合を行った。結果、得られたエマルジョンの平均粒子径は5.8μmと大きくなり、不揮発分が70質量%で粘度が500mPa・sまで低下した。また、粗粒子の量も800mg/100gと低く、エマルジョンの状態は良好であったが、トルエン不溶解分は15%と著しく低下し、これに溶剤を添加した接着剤の塩ビ合板物性では耐熱クリープ性の剥離長が200mmと著しく低下した。
【0035】
比較例1〜7の試験結果を表2と表3に示す。
【表2】
【表3】
【発明の効果】
【0036】
本願発明の製造方法で得られるEVA系エマルジョンは、平均粒子径が3μm以上と大きく、不揮発分が70質量%以上と高く、且つ粘度が100〜5000mPa・sと低く、更にはトルエン不溶解分が40質量%以上と高いことから、紙や木といった多孔性被着体に対しては良好な初期接着性を持ち、塩ビオーバーレイ用接着剤としては十分な耐熱クリープ性能と耐寒性、及び低温接着性を同時に発現するため、各種接着剤に幅広く使用可能なエマルジョンである。
Claims (7)
- 乳化剤に下記(式1)もしくは(式2)に示した構造を持つ反応性の界面活性剤を酢酸ビニルモノマー100質量部当たり0.2〜3.0質量部、鹸化度が60〜85mole%で、平均重合度が100〜500のポリビニルアルコールを酢酸ビニルモノマー100質量部当たり0.5〜4.0質量部、かつノニオン系界面活性剤を酢酸ビニルモノマー100質量部当たり0〜2質量部未満使用して重合することにより得られる、下記により測定した平均粒子径が3μm以上であり、JIS K 6828に準じて測定した不揮発分が70質量%以上であることを特徴とするエチレン−酢酸ビニル系共重合体エマルジョンの製造方法。
平均粒子径の測定:透過型電子顕微鏡(SEM)にて撮影した写真からエマルジョン粒子個々の粒子径を実測し、その平均値を測定した。
- 単一円筒回転粘度計で測定した30℃、30rpmの粘度が100〜5000mPa・sであることを特徴とする請求項1記載のエチレン−酢酸ビニル系共重合体エマルジョンの製造方法。
- 単一円筒回転粘度計で測定した30℃、6rpmの粘度の値と30℃、60rpmの粘度の値の比の対数の値が0.2〜0.6であることを特徴とする請求項1記載のエチレン−酢酸ビニル系共重合体エマルジョンの製造方法。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載した製造方法によって得られたエチレン−酢酸ビニル系共重合体エマルジョン。
- 下記により測定したトルエン不溶解分が40質量%以上であることを特徴とする請求項4に記載のエチレン−酢酸ビニル系共重合体エマルジョン。
トルエン不溶解分の測定:エマルジョンを乾燥してフィルム化し、その重量を測定してトルエンに浸漬し、振盪した後、不溶解分をろ過回収し、乾燥後のろ過残分の重量を測定することにより、以下の式から算出した。
トルエン不溶解分(%)=(ろ過残分)/(フィルム重量)×100 - トルエン不溶解分が40質量%以上であり、かつ下記により測定した塩ビ合板の耐熱クリープ性が20mm以下であることを特徴とする耐熱性に優れた請求項5に記載のエチレン−酢酸ビニル系共重合体エマルジョン。
耐熱クリープ性の測定:半硬質塩化ビニルシートに該エチレン−酢酸ビニル系共重合体エマルジョンを塗布し、耐水合板を貼り合わせた試験体を用い、半硬質塩化ビニルシートを下側にして両端を固定した状態で水平に置き、60℃で1時間放置後、雰囲気温度60℃、90°剥離の状態で500gの静荷重をかけ、30分後の剥離長さを測定した。 - 請求項4〜6のいずれか1項に記載のエチレン−酢酸ビニル系共重体エマルジョンを含有してなる接着剤用組成物。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003172880A JP4041534B2 (ja) | 2003-06-18 | 2003-06-18 | エチレン−酢酸ビニル系共重合体エマルジョン、その製造方法および接着剤用組成物 |
Applications Claiming Priority (1)
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