JP3996876B2 - ポリエステル樹脂の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリブチレンテレフタレートの製造方法および該製造方法で得られたポリブチレンテレフタレートを用いたフィルム、モノフィラメントに関する。さらに詳しくは、本発明は、エステル化反応時の異物生成を抑え、さらに製品中の異物が大幅に低減されたポリブチレンテレフタレートの製造方法および該ポリブチレンテレフタレートからなるフィルム、モノフィラメントに関する。
【0002】
【従来の技術】
熱可塑性ポリエステル樹脂の中で代表的なエンジニアリンブプラスチックであるポリブチレンテレフタレートは、成形加工の容易さ、機械的物性、耐熱性、耐薬品性、保香性、その他の物理的、化学的特性に優れていることから、自動車部品、電気・電子部品、精密機器部品、等の射出成型品に広く用いられているが、近年その優れた性質を生かしてフィルム、シート、モノフィラメント、繊維などの分野でも広く使用されるようになってきた。
ポリブチレンテレフタレートは、テレフタル酸を原料として用いる場合はエステル化反応、テレフタル酸ジアルキルを原料として用いる場合にはエステル交換反応を経て製造されるが、特に最近は製品ポリマーの品質の安定化、生産の効率化等の観点から、連続的に原料を供給し、連続的にポリブチレンテレフタレートを生産するいわゆる連続法が主流になりつつある。中でも、原料原単位が高く、有害なメタノールを発生しないテレフタル酸を原料とするいわゆる直接連続重合法が注目されるようになってきた。ところが、このような方法で製造されるポリブチレンテレフタレート中には触媒物質から生成した固体物質やプロセスで混入する異物が含まれており、製品の透明度の悪化や、異物欠陥(フィッシュアイ)の原因となるだけでなく、強度低下や伸度低下を招くという問題があった。
【0003】
この問題を解決するために、例えば特許文献1や、特許文献2には、ポリブチレンテレフタレートの反応槽をつなぐラインにフィルターを設置することが提案されている。ところが、これらの異物には粒径分布があり、フィルターによる濾過ではフィルターの目開き以下の異物は除去できないため、より完全に異物を減らすにはフィルターの目開きを小さくするか、抜本的に異物量を低減するしか方法はないが、フィルターの目開きを小さくするとラインの圧力損失が大きくなるため、流量を維持するためには、フィルターの濾過面積を大きくする必要があり、計算上は圧力損失値からある濾過面積が提示されても、実際の使用においては濾過面積が非現実的な大きさになる場合も多い。またフィルター寿命も必然的に短くなるためフィルター切替、交換等の煩雑さが増し、生産性や安全性に多大な悪影響を及ぼす。さらに、ポリブチレンテレフタレートの分子量が大きくなるほど、またフィルター目開きが小さくなるほど通過時に高剪断を受けるため、剪断発熱による劣化が不可避となる。
【0004】
一方、ポリブチレンテレフタレート中の触媒由来の異物量は触媒量を減らせば低減できることが判っているが、触媒量を減らすとエステル化や重縮合等の正反応速度が低下するため、結果的に重合時間が長くなり高温にさらされる時間が増大し、着色等の劣化を招くことになる。また触媒量の低下は、特に初期のエステル化反応時にテトラヒドロフランの生成等の副反応を招き、1,4−ブタンジオールの歩留まりが低下する等の問題が生じる。
このように異物低減と生産性は相反する関係にあるため、透明性やフィッシュアイの原因となる異物を根本的に低減すると同時に、生産性を維持、向上させる技術が強く望まれていた。
【0005】
【特許文献1】
特開2000−336162号公報
【特許文献2】
特開2001−270937号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ポリブチレンテレフタレートの生産性を維持または向上させると同時に、製品中の異物を抜本的に低減したポリブチレンテレフタレートの製造方法および該ポリブチレンテレフタレートからなるフィルム、モノフィラメントを提供することを目的としてなされたものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の条件でエステル化反応を行い、特定箇所に特定のフィルターを設置することにより、生産性を維持または向上させると同時に、製品中の異物を抜本的に低減したポリブチレンテレフタレートが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明の要旨は、 反応触媒の存在下、テレフタル酸と、1,4−ブタンジオールとを連続的にエステル化反応させてオリゴマーを得、該オリゴマーを重縮合反応させてポリブチレンテレフタレートを製造する方法において、
反応触媒が、有機チタン化合物あるいは有機チタン化合物と有機スズ化合物との混合物であって、チタン原子とスズ原子の合計の金属濃度が原料テレフタル酸に対する重量比で1〜300ppmであり、
エステル化率が90%以上であり、固有粘度が0.5以下のプレポリマーの流路にフィルターを設けて、粒径20μm以上の固形物の少なくとも一部を濾別し、
且つ、エステル化反応を下記式(I)を満たすように実施することを特徴とするポリブチレンテレフタレートの製造方法に存する。
P/q ≧ 1500 kJ/m3 (I)
(式(I)中、q(m3/sec)は原料の単位時間当たりの総供給量、P(kw)はエステル化反応で与える攪拌動力を表す。)
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明につき詳細に説明する。
本発明におけるポリブチレンテレフタレートとは、テレフタル酸単位及び1,4−ブタンジオール単位がエステル結合した構造を有する高分子であり、ジカルボン酸単位の50モル%以上がテレフタル酸単位からなり、ジオール成分の50モル%以上が1,4−ブタンジオール単位から成るものを言う。中でも全ジカルボン酸単位の内、70モル%以上、さらには80モル%以上、特には95モル%以上をテレフタル酸単位が占めることが好ましく、ジオール単位の内、70モル%以上、さらには80モル%以上、特には95モル%以上を1,4−ブタンジオール単位が占めることが好ましい。テレフタル酸単位または1,4−ブタンジオール単位が50モル%より少ないとポリブチレンテレフタレートの結晶化速度が低下し、成形性の悪化を招く。
【0010】
本発明において、テレフタル酸以外のジカルボン酸成分に特に制限はなく、例えば、フタル酸、イソフタル酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ベンゾフェノンジカルボン酸、4,4’−ジフェノキシエタンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸などを挙げることができる。
【0011】
本発明において、1,4−ブタンジオール以外のジオール成分に特に制限はなく、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ジブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオールなどの脂肪族ジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,1−シクロヘキサンジメチロール、1,4−シクロヘキサンジメチロールなどの脂環式ジオール、キシリレングリコール、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホンなどの芳香族ジオールなどを挙げることができる。
【0012】
本発明においては、さらに、乳酸、グリコール酸、m−ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフタレンカルボン酸、p−β−ヒドロキシエトキシ安息香酸などのヒドロキシカルボン酸、アルコキシカルボン酸、ステアリルアルコール、ベンジルアルコール、ステアリン酸、安息香酸、t−ブチル安息香酸、ベンゾイル安息香酸などの単官能成分、トリカルバリル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、没食子酸、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトールなどの三官能以上の多官能成分などを共重合成分として用いることができる。
【0013】
本発明のポリブチレンテレフタレートは、フェノール/テトラクロルエタン(重量比1/1)の混合溶媒を用いて30℃で測定した固有粘度が0.6〜2.0dL/gであることが好ましく、0.7〜1.8dL/gであることがより好ましく、中でもフィルム、モノフィラメントに加工するためには0.9〜1.6dL/gであることが好ましい。
【0014】
固有粘度が0.6dL/g未満であると、成形品の機械的強度が不十分となるおそれがあり、固有粘度が2.0dL/gを超えると、溶融粘度が高くなり、流動性が悪化して、成形性が不良となるおそれがある。
【0015】
本発明のポリブチレンテレフタレートの製造方法は、慣用の製造方法に基づくが、一例としては、テレフタル酸を主成分とする前記ジカルボン酸成分と1,4−ブタンジオールを主成分とする前記ジオール成分とを、単数若しくは複数のエステル化反応槽内で、エステル化反応触媒の存在下に、通常180〜260℃、好ましくは200〜245℃、特に好ましくは210〜235℃の温度、また、通常10〜133kPa、好ましくは13〜101kPa、特に好ましくは60〜90kPaの圧力下で、0.5〜5時間、好ましくは1〜3時間で、連続的にエステル化反応させ、得られたエステル化反応生成物としてのオリゴマーを重縮合反応槽に移送し、単数若しくは複数の重縮合反応槽内で、重縮合反応触媒の存在下に、好ましくは連続的に、通常210〜280℃、好ましくは220〜265℃、特に好ましくは230〜245℃の温度、通常27kPa以下、好ましくは20kPa以下、特に好ましくは13kPa以下の減圧下で、攪拌下に1〜12時間好ましくは3〜10時間で重縮合反応させる方法が挙げられる。
【0016】
重縮合反応により得られた樹脂は、通常、重縮合反応槽の底部からポリマー抜き出しダイに移送されてストランド状に抜き出され、水冷されながら若しくは水冷後、カッターで切断されてペレット状、チップ状等の粒状体とされる。
【0017】
本発明におけるエステル化反応触媒としては、例えば、三酸化二アンチモン等のアンチモン化合物、二酸化ゲルマニウム、四酸化ゲルマニウム等のゲルマニウム化合物、テトラメチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート等のチタンアルコラート、テトラフェニルチタネート等のチタンフェノラート等、のチタン化合物、ジブチルスズオキサイド、メチルフェニルスズオキサイド、テトラエチルスズ、ヘキサエチルジスズオキサイド、シクロヘキサヘキシルジスズオキサイド、ジドデシルスズオキサイド、トリエチルスズハイドロオキサイド、トリフェニルスズハイドロオキサイド、トリイソブチルスズアセテート、ジブチルスズジアセテート、ジフェニルスズジラウレート、モノブチルスズトリクロライド、トリブチルスズクロライド、ジブチルスズサルファイド、ブチルヒドロキシスズオキサイド、メチルスタンノン酸、エチルスタンノン酸、ブチルスタンノン酸、等のスズ化合物の他、マンガン化合物、亜鉛化合物等を挙げることができるが、中でもチタン化合物、スズ化合物、あるいはチタン化合物とスズ化合物との混合物が好ましく、特にはチタン化合物、最適にはテトラブチルチタネートが好ましい。
【0018】
エステル化反応の際の触媒の使用量は、多すぎると異物の原因となりフィルター寿命を短くするばかりでなく、ポリマーの熱滞留時の劣化反応や、ガス発生の原因となり、少なすぎると主反応速度が低下し副反応が起こりやすくなるため、原料テレフタル酸に対する重量として1〜300ppmであることが好ましく、さらには1〜150ppm、中でも10〜100ppm、特には20〜60ppmが好ましい。
【0019】
また、重縮合反応触媒としては、エステル化またはエステル交換反応時に添加した触媒を引き続いて重縮合反応触媒として用いることとして新たな触媒の添加を行わなくてもよいし、前記触媒を更に添加してもよく、そのときの使用量に特に制限はないが、多すぎると前記のような問題が起こるため、通常最終的に得られるポリブチレンテレフタレート樹脂に対して金属原子として150ppm以下、好ましくは100ppm以下、特に好ましくは50ppm以下の範囲で新たに添加してもよい。但し、異物量の抜本的低減の観点からは、重縮合反応段階で新たに触媒を追添加しない方が好ましい。
【0020】
これらの金属量は、湿式灰化等の方法でポリマー中の金属を回収した後、原子発光、Induced Coupled Plasma(ICP)等を用いて測定することができる。
【0021】
又、前記エステル化反応、重縮合反応において、前記触媒の他に、正燐酸、亜燐酸、次亜燐酸、ポリ燐酸、及びそれらのエステルや金属塩等の燐化合物、水酸化ナトリウム、安息香酸ナトリウム、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属化合物等の反応助剤、2,6−ジ−t−ブチル−4−オクチルフェノール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3’,5’−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕等のフェノール化合物、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ペンタエリスリチル−テトラキス(3−ラウリルチオジプロピオネート)等のチオエーテル化合物、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト等の燐化合物等の抗酸化剤、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、モンタン酸やモンタン酸エステルに代表される長鎖脂肪酸及びそのエステル、シリコーンオイル等の離型剤等の他の添加剤を存在させてもよい。
【0022】
又、エステル化反応槽としては、攪拌装置を有する反応槽であれば特に制限はなく、縦型攪拌完全混合槽、縦型熱対流式混合槽、塔型連続反応槽等の型式のいずれであってもよく、又、単数槽としても、同種又は異種の槽を直列させた複数槽としてもよい。
攪拌装置は公知のものが使用でき、動力部および軸受、軸、攪拌翼からなる通常のタイプの他、タービンステーター型高速回転式攪拌機、ディスクミル型攪拌機、ローターミル型攪拌機等の高速回転するタイプも用いることができる。
攪拌の形態にも制限はなく、反応槽中の反応液を反応槽の上部、下部、横部等から直接攪拌する通常の攪拌方法の他、反応液の一部を反応器の外部に配管等で持ち出してラインミキサ−等で攪拌し、反応液を循環させる方法もとることができる。
【0023】
攪拌翼の種類も公知のものが選択でき、具体的にはプロペラ翼、スクリュー翼、タービン翼、ファンタービン翼、デイスクタービン翼、ファウドラー翼、フルゾーン翼、マックスブレンド翼等が挙げられる。
本発明のポリブチレンテレフタレートを製造するにあたっては、連続的にエステル化反応をさせる際に、原料の単位時間当たりの総供給量をq(m3/sec)とし、与える攪拌動力をP(kw)とした時、下式(I)の関係を満たすことが必要で、
P/q ≧ 1500 kJ/m3 (I)
より好ましくは
P/q ≧ 2000 kJ/m3
さらに好ましくは
P/q ≧ 3000 kJ/m3
特に好ましくは
P/q ≧ 4000 kJ/m3
最適には
P/q ≧ 5000 kJ/m3 である。
【0024】
本発明で言うところの原料とは、テレフタル酸と1,4−ブタンジオールとの混合物を示し、通常スラリーとしてエステル化反応槽に供給される。一方、該混合物とは独立に供給される1,4−ブタンジオール、留出系で捕集され反応槽に戻される1,4−ブタンジオール、還流冷却器で還流される1,4−ブタンジオール等、反応槽外部から反応槽内に戻る1,4−ブタンジオールは、本発明で言うところの原料からは除く。
【0025】
P/qは、供給原料単位体積当たりに与えられた攪拌エネルギーを示し、攪拌動力Pは、攪拌軸にトルクメーターを設置したり、動力検知器を設置する方法等で検知できる。P/qが1500kJ/m3未満では、触媒由来の異物が増加するだけではなく、見かけの主反応速度が遅くなり副反応が台頭するため、エステル化率の低下を招く。
【0026】
エステル化反応をさせる槽は単数若しくは複数設置することができるが、本発明におけるエステル化反応槽と重縮合反応槽との区別は、下式(III)で表されるエステル化率が反応器の入口で90%以下の場合をエステル化反応槽とし、90%を越える場合を重縮合反応槽とする。
エステル化率=(ケン化価−酸価)×100/ケン化価 (III)
(ここで酸価はオリゴマーをジメチルホルムアミドに溶解しアルカリ滴定した値であり、ケン化価はオリゴマーをアルカリ加水分解し、酸で逆滴定して得た値である。)
【0027】
本発明のポリブチレンテレフタレートを製造するにあたっては、連続的にエステル化反応をさせる際に、単位時間当たりに外部からエステル化反応槽に供給されるテレフタル酸と、1,4−ブタンジオールとのモル比が下式(II)を満たすことが好ましい。
B/T=2.0〜4.5(mol/mol) (II)
(但し、Bは単位時間当たりにエステル化反応槽に外部から供給される1,4−ブタンジオールのモル数、Tは単位時間当たりにエステル化反応槽に外部から供給されるテレフタル酸のモル数を示す)
【0028】
中でも2.5〜4.0、特には2.7〜3.5が好ましい。B/Tが2.0より小さいと触媒由来の異物が増加する傾向となり、4.5より大きいと熱効率が低下するだけでなく、テトラヒドロフラン等の副生物が増大する。
本発明における外部からエステル化反応槽に供給されるテレフタル酸は、原料として供給されるテレフタル酸を示し、通常は1,4−ブタンジオール等と混合されたスラリーの形態で供給される。
【0029】
また、外部からエステル化反応槽に供給される1,4−ブタンジオールとは、原料スラリーとしてテレフタル酸とともに供給される1,4−ブタンジオールの他、独立に供給される1,4−ブタンジオール、留出系で捕集され反応槽に戻される1,4−ブタンジオール、還流冷却器で還流される1,4−ブタンジオール等、反応槽外部から反応槽内に供給される1,4−ブタンジオールの総和である。
【0030】
本発明においては、上記で定義するところのエステル化率が90%以上、好ましくは95%以上、特に好ましくは97%以上、固有粘度が0.5以下、好ましくは0.1以上0.3以下のプレポリマー流路にフィルターを設置することが必要である。ここで本発明のプレポリマーとは固有粘度0.5以下のポリブチレンテレフタレート前駆体でありオリゴマーも含まれる。
触媒由来の異物の大部分は、エステル化反応工程で生成するため、エステル化率が低い状態でフィルターを設置しても、その後新たに触媒由来の異物が生成し、フィルターを設置した効果が低下する。
【0031】
また、粘度(分子量)が上昇した段階でフィルターを設置すると、ラインの圧力損失が大きくなり、流量を維持するためには、フィルターの目開きを大きくしたり、フィルターの濾過面積や配管等の設備を過大にする必要があったり、流体通過時に高剪断を受けるため、剪断発熱によるポリブチレンテレフタレートの劣化が不可避となるため好ましくない。
【0032】
該フィルターを構成する濾材としては、金属ワインド、積層金属メッシュ、金属不織布、多孔質金属板等のいずれでも良いが、濾過精度の観点から積層金属メッシュまたは金属不織布が好ましく、フィルターの形状としては、バスケットタイプ、ディスクタイプ、リーフディスクタイプ、チューブタイプ、フラット型円筒タイプ、プリーツ型円筒タイプ等のいずれの型式であっても良い。また、プラントの運転に影響を与えないようにするには、複数のフィルターを設置し、切り替えて使用できる構造にしたり、オートスクリーンチェンジャーを使用することが好ましい。
【0033】
本発明のフィルターの絶対濾過精度に特に制限はないが、大きすぎると製品中の異物低減効果がなくなり、小さすぎると生産性の低下やフィルター交換頻度の増大を招くため、好ましくは0.5〜50μm、中でも0.5〜30μm、特には1〜20μm、最適には1〜10μmである。
なお、本明細書において絶対濾過精度とは、ガラスビーズ等の略真球形の物体徐々に大きくした時、フィルターを丁度通らなくなる際の、当該略真球形物体の直径(μm)として表される。
【0034】
本発明に用いる重縮合反応槽の型式に特に制限はなく、例えば、縦型攪拌重合槽、横型攪拌重合槽、薄膜蒸発式重合槽などを挙げることができる。重縮合反応槽は、1基とすることができ、あるいは、同種又は異種の複数基の槽を直列させた複数槽とすることもできるが、反応液の粘度が上昇する重縮合の後期は界面更新性とプラグフロー性、セルフクリーニング性に優れた薄膜蒸発機能を有した横型攪拌重合機を選定することが好ましい。
【0035】
また得られた樹脂粒状体を、不活性ガス雰囲気下、及び/又は13〜1333Pa程度の減圧下で、通常、樹脂の融点より5〜50℃低い温度、好ましくは融点より10〜40℃低い温度で、粒状体同士が膠着しないように流動などを行いながら、通常5〜20時間程度の時間で加熱処理して固相重縮合反応させることも可能である。
【0036】
図1〜図4に実施態様の例を示した。
図1において、2は完全混合型のエステル化反応槽、P1は原料供給配管、2aは反応槽2の上部に設けられたベント用口、2bは反応槽2の上部に設けられた触媒供給口、2cはサンプリング口、2dは1,4−ブタンジオールの供給口である。3は完全混合型の第一重縮合反応槽、3aは第一重縮合反応槽2の上部に設けられたベント用口、4は完全混合型の第二重縮合反応槽、4aは第二重縮合反応槽4の上部に設けられたベント用口、5は水平方向に2本の攪拌軸およびセルフクリーニング性を有する翼を持つ横型の第三重縮合反応槽、5aは第三重縮合反応槽5の上部に設けられたベント用口、6はフィルターユニット、P2、P3、P4はそれぞれの反応槽を繋ぐ配管、P5はポリマーの抜出配管である。この場合の第三重縮合反応槽5は2本の回転軸を有するため同方向、異方向の回転方向を選ぶことができるが、表面更新性を向上させるためには、どちらかというと異方向回転が好ましい。
【0037】
図2は図1における完全混合型の第二重縮合反応槽を、水平方向に回転軸を有し薄膜蒸留能を有する横型の反応槽に換えた態様であり、滞留の生じやすい回転軸中心部には軸を持たない構造となっている。
図3は図2におけるフィルターユニットを第一重縮合反応槽の後に取り付けた態様であり、図4はエステル化反応槽の後と第一重縮合反応槽の後の両方にフィルターユニットを取り付けた態様である。
【0038】
本発明のポリブチレンテレフタレートは、公知の方法によって電気・電子部品、自動車部品等の射出成形品やチューブ、フィルム、シート、モノフィラメント等の押出成型品、繊維等に加工することができ、必要に応じて延伸処理することもできる。
特に本発明によると、異物によるフィルムの商品価値低下やモノフィラメントの延伸時等の破断を抑止できるため、フィルムやモノフィラメントの用途において効果が顕著である。
【0039】
フィルム化の方法としては、例えば溶融した樹脂を平板状に押し出し、ロールで連続的に引き取り平板状のフィルムを作るTダイキャスティング法、溶融樹脂を環状ダイスから連続的に押し出して内部の空気圧を調整しながら風船状に膨らませ、冷風で冷却する空冷インフレーション法、同じく環状ダイスから連続的に押し出し、金属製などの規制リングで外径を制御しながら水をかけて冷却する水冷インフレーション法、ロールを使うカレンダー法などが挙げられるが、外気と触れないで溶融押出しができるTダイキャスト法やインフレーション法が好ましく、フィルム成形の際には、樹脂温度が230〜290℃程度になるようにシリンダー温度、ダイス温度を調整することが好ましい。
【0040】
また、公知の多層化装置(マルチマニーホールドTダイ、スタックプレートダイス、フィードブロック、多層インフレーションダイス)などを用いて多層フィルムにすることもできる。フィルムの厚みは使用する目的によって様々であるが、通常10〜200μm、中でも本発明の効果という観点からは15〜150μmが好ましい。
【0041】
ポリブチレンテレフタレートの酸素バリアー性はかなり高く、そのままでも高度に内容物の酸化劣化を防止することができるが、更に高度な酸素バリアー性が要求されるペースト類などの半生製品や生食用生鮮食料品などの包装用としては、相対湿度0%環境下での酸素透過性がポリブチレンテレフタレートよりも低い樹脂、例えば6ナイロンや66ナイロンなどの脂肪族ナイロンフィルム、脂肪族ジカルボン酸と芳香族ジアミンの縮合物、若しくは芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジアミンの縮合物を代表とする半芳香族ナイロン、エチレン−酢酸ビニル共重合体の部分ケン化物(通称EVOH)との多層構造や塩化ビニリデン樹脂のエマルジョンをコートした通称K−コートなどの加工を施すことも可能である。
【0042】
例えばロースハムの包装用の層構成としては、ポリブチレンテレフタレート(12.5%)/接着樹脂(6.3%)/6ナイロン(31.2%)/接着樹脂(6.3%)/直線状低密度ポリエチレン(43.7%)程度で全体厚みが40〜80μmのものがよい。なお( )内の%は厚みの比率を示す。
【0043】
その他の多層構造の例としては
PBT/接着樹脂
PBT/接着樹脂/ポリエチレン系樹脂
PBT/接着樹脂/ポリプロピレン樹脂
PBT/接着樹脂/ポリアミド樹脂/接着樹脂/ポリエチレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂
PBT/接着樹脂/EVOH樹脂/接着樹脂/ポリエチレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂
ポリエチレン系又はポリプロピレン系樹脂/接着樹脂/PBT/接着樹脂
などが挙げられる。なお、上記PBTはポリブチレンテレフタレートを示し、その他各樹脂の具体例は以下の通りである。
【0044】
ポリエチレン系樹脂:超低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体等。
ポリプロピレン系樹脂:ホモPP、C4共重合PP、C6共重合PP、C8共重合PP、ターポリマー等。
接着樹脂:無水マレイン酸変性ポリエチレン系樹脂、グリシジルメタクリレート共重合ポリエチレン系樹脂、グリシジルメタクリレート−アクリル酸−共重合ポリエチレン系樹脂等。
ポリアミド樹脂:前述の各種ナイロン等。
【0045】
フィルムの延伸処理を行う場合には、ポリブチレンテレフタレートのガラス転移温度付近から融点以下で行うことが好ましく、延伸倍率は縦、横方向それぞれ1.5倍から5倍の範囲が好ましい。延伸温度が低すぎると延伸破断が発生したり、配向結晶化が起こらないため、フィルムの機械的物性が高くならず好ましくない。延伸温度が高すぎるとフィルムが白化したり、強度が発現せず好ましくない。延伸倍率が低すぎると延伸ムラが発生し、均一な厚みのフィルムが得られなかったり、高すぎると延伸破断してフィルムが得られない。延伸温度と延伸率をそれぞれ適当な範囲にすることが肝要である。
【0046】
例えばポリブチレンテレフタレート単層1軸延伸の場合、延伸温度50〜75℃、延伸倍率3〜6倍、単層又は多層同時2軸延伸の場合延伸温度50〜70℃、延伸倍率2.5×2.5倍〜3.5×3.5倍程度が望ましい。
通常、延伸フィルムは延伸処理後寸法安定性を発現させるために延伸温度以上、融点以下でヒートセットを行うが、ポリブチレンテレフタレートの延伸の場合、ヒートセット温度は単層フィルムの場合は約200℃で、多層フィルムの場合は多層化してある樹脂によってかなり条件は異なるが、80〜200℃の範囲で行うのが有利である。
また、フィルムは、ポリブチレンテレフタレートとそれ以外の樹脂とを含んだ組成物を用いて作成してもよく、ポリブチレンテレフタレート以外の樹脂としては、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0047】
一方、モノフィラメントの成形方法としては、例えば単軸押出機に原料樹脂を連続的に供給し、溶融しながら連続的に先端部のノズルから糸状に押し出し、3〜50℃程度の水や空気で一旦冷却固化させる方法が挙げられる。この際温度が高すぎると溶融樹脂が結晶化して上手く延伸がかからなかったり、白化するなどして好ましくないため、好ましくは5〜20℃の冷水での冷却することが推奨される。続いて該樹脂のガラス転移温度付近の温度に設定した温水、蒸気又は空気槽内でモノフィラメントを再加熱し、その際槽の前後に設置された駆動ロールの速度差を使って、好ましくは1.5倍以上、より好ましくは1.8〜6倍に延伸処理するが、この時にポリブチレンテレフタレート中に異物が多いと破断を招くことになる。延伸の温度は40〜280℃程度であり、糸径の細い場合には低い温度で、糸径の太い場合には高い温度で延伸処理することが肝要である。また温度の安定化の点から低い温度では温水加熱が好ましく、100℃付近では水蒸気加熱が、それ以上の温度では熱風による加熱が好ましい。この延伸処理は通常2〜3段に分けて行い、その際1段目より2段目、2段目より3段目延伸温度を同等か若しくは高くすることが望ましい。その後に後収縮を防止するため、ガラス転移温度、具体的には60℃〜280℃の槽内で熱風で延伸処理したモノフィラメントを熱処理することによって安定したモノフィラメントを得ることができる。このような延伸処理は、いずれもポリブチレンテレフタレートの融点以下の温度で行われる。
【0048】
また、本発明のポリブチレンテレフタレート単層フィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルムとそれ以外の樹脂からなるフィルムを積層したフィルム、ポリブチレンテレフタレートとそれ以外の樹脂をブレンドした組成物からなるフィルムまたはモノフィラメントにおいては、表面外観や強度を向上させ、延伸切れ等のトラブルを防止するために厚さ50μmのフィルムを成形した場合の20μm以上の異物の個数が20個/100cm2以下であるポリブチレンテレフタレートを用いることが必要で、好ましくは10個/cm2以下、中でも5個/100cm2以下、特には3個/100cm2以下である。20μm以上の異物の個数が20個/100cm2より多いとでは、本発明の目的を達し得ない。
【0049】
また、成形されたモノフィラメントの表面にシリコーン系やフッ素系の潤滑剤の塗布、帯電防止や柔軟性付与を目的とした界面活性剤の塗布、ポリエステル系染顔料による染色処理や印刷処理をしても構わない。これらフィルムまたはモノフィラメント成形の際、公知の添加剤を加えても良く、例えばフィルムを成形する際は、フェノール系、リン系、硫黄系、アミン系などの酸化防止剤、アンチブロッキグ性能を発揮するためのシリカ、ゼオライト、タルク、ガラスビーズ、シリコーン粒子などの無機粒子や架橋PMMAや架橋ポリスチレンなどの架橋有機粒子、滑剤としてステアリン酸カルシウムを始めとする脂肪酸のカルシウム塩やナトリウム塩類、ポリエチレン系ワックス、多価アルコールのエステル類など、さらには各種着色剤や離型剤等が挙げられ、モノフィラメントを成型する際には、フェノール系、リン系、硫黄系、アミン系などの酸化防止剤、着色のための染顔料や色目を綺麗に出すための蛍光増白剤、柔軟性を付与するための可塑剤やオイル類、モノフィラメントとして使用する際の紫外線による劣化を防止するための紫外線吸収剤、押出機での食い込み性を維持するためのステアリン酸カルシウムやステアリン酸ナトリウムなどの金属石鹸類等が挙げられる。
これらの添加剤は、成形の際に原料にブレンドしてもよいし、予め高濃度に調整したマスターバッチを成形時に適当に希釈して使用してもよい。
【0050】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
なお、実施例及び比較例において、ポリブチレンテレフタレートオリゴマー及びポリブチレンテレフタレートの評価は下記の方法により行った。
【0051】
(1)反応時間(平均滞留時間)
実質内容積を原料供給量qで除した値を採用した。
(2)オリゴマーのエステル化率
以下のようにして求めた酸価とケン化価を用いて算出した。
[酸価]
オリゴマーをジメチルホルムアミドに溶解させ、0.1NのKOH/メタノール溶液を用いて滴定し求めた。
[ケン化価]
0.5NのKOH/エタノール溶液でオリゴマーを加水分解し、0.5Nの塩酸で滴定し求めた。
エステル化率=(ケン化価−酸価)×100/ケン化価
【0052】
(3)固有粘度
ウベローデ型粘度計とフェノール/テトラクロロエタン(重量比1/1)の混合溶媒を用い、30℃において、濃度1.0gg/dLのプレポリマー又はポリマー溶液、および溶媒のみの落下秒数を測定し、下式より求めた。
[η]=((1+4KHηsp)0.5−1)/(2KHC)
【0053】
但し、 ηsp=η/η0−1 であり、
ηはプレポリマー又はポリマー溶液落下秒数、η0は溶媒の落下秒数、Cはプレポリマー又はポリマー溶液濃度(g/dL)、KHはハギンズの定数である。KHは0.33を採用した。
【0054】
(4)フィルター差圧上昇までの時間
フィルター前後の圧力を測定し、その差が初期値から0.1MPa上昇した時間を測定した。時間が長いほどプレポリマーまたはポリマー中の異物が本質的に少ないことを示す。
【0055】
(5)フィルム中異物
得られたポリブチレンテレフタレートペレットを、Tダイを備え、シリンダー温度を270℃に設定した一軸押出機に供給し、フィルム状に溶融押出した後、58〜62℃の温度に保持した金属製冷却ロールで急冷することにより、厚さ50μmのフィルムに成形したものを得、該フィルムの10cm四方(100cm2)の面積の5箇所を倍率50倍の実体顕微鏡で観察し、各箇所における20μm以上の大きさの核を有する異物の個数を数え、その平均値を算出した。
【0056】
(6)モノフィラメント成型中の糸切れ回数
得られたポリブチレンテレフタレートペレットを、30mmの単軸押出し機に仕込み、約260℃で溶融押出し後、1.5mmφの円形ノズル20本を有するダイスから連続的に押し出し引取速度20m/分で引き取りながら5℃の水中で冷却した。その後1段目延伸処理として60℃の温水中で2.5倍に、2段目延伸処理として165℃の熱風中で1.44倍に、熱処理として155℃の熱風中で0.975倍延伸(2.5%弛緩)して直径約0.2mm(490dTex)のモノフィラメントを3時間成形し、成形中の破断回数を記録した。破断回数が多いとモノフィラメント中の異物が多いことを意味する。
【0057】
(7)モノフィラメントの直線破断強度
引っ張り試験機を用い、同一条件で得られたモノフィラメント10本について測定し、その平均値を記録した。該強度が大きいほど異物が少なく良好な品質のポリブチレンテレフタレートが得られていることを示す。表中のdTexとはモノフィラメント10,000m分の重量(g)であり、モノフィラメントの径が小さい場合には小さい値となり、大きい場合には大きい値となる。モノフィラメントの強度はその径に依存するため、通常規格化した値cN/dTexが用いて表される。
【0058】
[実施例1]
図5に本実施例のフローチャートを示す。図において、1はスラリー調製槽、1a及び1bはそれぞれ、スラリー調製槽1の上部に設けられたテレフタル酸及び1,4−ブタンジオールの各原料供給口、2はエステル化反応槽、2aはエステル化反応槽2の上部に設けられたベント用口、2bはエステル化反応槽2の上部に設けられた触媒供給口、2cはエステル化反応槽のサンプリング口、2dは1,4−ブタンジオールの供給口、3は第一重縮合反応槽、3aは第一重縮合反応槽3の上部に設けられたベント用口、3bは第一重縮合反応槽のサンプリング口、4は水平方向に攪拌軸を有する横型の第二重縮合反応槽、4aは第二重縮合反応槽4の上部に設けられたベント用口、7は絶対濾過精度5.0μm、濾過面積0.31m2のキャンドル型フィルター3本を装着したフィルターユニット、9はポリマー抜き出しダイ、10は回転式カッター、M1、M2、M3、M4は攪拌装置、G1、G2、G3、G4はギヤポンプ、P1、P2、P3、P4は配管である。
【0059】
テレフタル酸1.00モルに対して、1,4−ブタンジオール1.80モルの割合で調製したスラリーをスラリー調製槽1から、ギヤポンプG1により配管P1内を通過せられてあらかじめエステル化率93%のポリブチレンテレフタレートオリゴマーを充填したスクリュー型攪拌機を有するエステル化反応槽2に、67L/hとなるように連続的に供給すると同時に触媒供給口2bからテトラブチルチタネートをチタン量としてテレフタル酸に対し133ppmとなるように連続的に供給した。触媒溶媒としては、1,4−ブタンジオールを用い、その量は原料テレフタル酸供給量1.00モルに対して0.03モルとした。
【0060】
エステル化反応槽2は、垂直回転軸を有するスクリュー型攪拌翼を取り付けた攪拌装置M2を備えた完全混合型の縦型反応槽であり、攪拌装置M2には攪拌動力を検知する装置が具備されている。
エステル化反応槽2の内温は230℃、圧力は78kPaとし、生成する水とテトラヒドロフラン、及び余剰の1,4−ブタンジオールを、減圧機(図示せず)に接続されたベント用口2aから抜き出し、全量を系外に排出した。また同時に精製された1,4−ブタンジオールを原料テレフタル酸供給量1.00モルに対して1.20モルの割合で2dを通じてエステル化反応槽2に供給しながらエステル化反応を行った(2dを通じてエステル化反応槽2に供給する1,4−ブタンジオールを結果の表1,2中では別供給1,4−ブタンジオールとして表す)。この時エステル化槽2の実液が100Lとなるように液面制御をかけながら反応液を抜き出した。系が安定した後、サンプリング口2cから採取したオリゴマーのエステル化率は98%であった。
【0061】
第一重縮合反応槽3も、垂直回転軸を有する攪拌装置M3(攪拌翼は直径が510mmのパドル型)を備えた縦型反応槽であり、内温245℃、圧力2.7kPaとし、実液が60Lになるように液面制御をかけ、生成する水とテトラヒドロフラン、1,4−ブタンジオールを減圧機(図示せず)に接続されたベント用口3aから抜き出しながら、初期重縮合反応を行い、抜き出した反応液はフィルターユニット7を通して第二重縮合反応槽4に連続的に供給した。系が安定した後、ギヤポンプG3出口のサンプリング口3bからプレポリマーを抜き出し、固有粘度を測定したところ0.27であった。
【0062】
第二重縮合反応槽4は、複数個の攪拌翼ブロックで構成され、攪拌ロータの中心部に回転シャフトを持たない攪拌翼を具備した横型反応槽であり、該反応槽4の内温は240℃、圧力133Paとし、平均滞留時間が0.9hrになるよう液面制御をかけ、生成する水とテトラヒドロフラン、及び1,4−ブタンジオールを、減圧機(図示せず)に接続されたベント用口4aから抜き出しながら、重縮合反応を進めた。得られたポリマーはギヤポンプG4により配管P4内を経由しポリマー抜き出しダイ9からストランド状に連続的に抜き出し、回転式カッター10でカッティングした。得られたポリマーの固有粘度は0.95、チタン含有量は100ppm、フィルターの差圧上昇までの時間は40時間であった。
【0063】
得られたポリブチレンテレフタレートを用いてフィルムを成型し異物数を数えたところ1.4個と非常に少なかった。また、この樹脂を用いてモノフィラメントを成形したところ、成形中の破断はなく得られたモノフィラメントの破断強度も大きかった。実施例及び比較例の結果をまとめて表1、表2に示した。
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】
【0066】
[実施例2]
2bを通して供給する触媒の量を表に示す通りに変更した以外は、実施例1と同様に行った。フィルター差圧上昇までの時間が長く、異物の少ないポリブチレンテレフタレートが得られた。
[実施例3]
2dを通して供給する1,4−ブタンジオールの量を表に示す通りに変更した以外は、実施例1と同様に行った。フィルター差圧上昇までの時間が長く、異物の少ないポリブチレンテレフタレートが得られた。
【0067】
[実施例4]
攪拌回転数を変え、P/qを表に示す通りに変更した以外は、実施例3と同様に行った。フィルター差圧上昇までの時間が長く、異物の少ないポリブチレンテレフタレートが得られた。
[実施例5]
原料の流量を変えエステル化反応槽での平均滞留時間を1.1hrとし、攪拌回転数を表に示す通りに変更した以外は、実施例1と同様に行った。フィルター差圧上昇までの時間が長く、異物の少ないポリブチレンテレフタレートが得られた。
【0068】
[実施例6]
反応温度を240℃にした以外は実施例1と同様に行った。フィルター差圧上昇までの時間が長く、異物の少ないポリブチレンテレフタレートが得られた。
[実施例7]
フィルターの絶対濾過精度を20.0μmにした以外は実施例1と同様に行った。
【0069】
[実施例8]
フィルターユニットを図6に示した位置、即ちエステル化反応槽の後に設置した以外は実施例1と同様に行った。
[実施例9]
2bを通して供給する触媒の量を表に示す通りに変更した以外は、実施例1と同様に行った。フィルター差圧上昇までの時間が長く、異物の少ないポリブチレンテレフタレートが得られた。
【0070】
[実施例10]
2bを通して供給する触媒の量を表に示す通りに変更した以外は、実施例1と同様に行った。フィルター差圧上昇までの時間が長く、異物の少ないポリブチレンテレフタレートが得られた。
[比較例1]
フィルターを使用しなかった以外は、実施例1と同様に行った。フィルム中の異物量が多く、モノフィラメント成型中の糸切れが頻発し、モノフィラメントの直線強度も低かった。
【0071】
[比較例2]
2bを通して供給する触媒量を表に示す通りにした以外は実施例1と同様に行った。フィルターの差圧上昇までの時間が極端に短かった。
[比較例3]
攪拌回転数を変えP/qを表に示す通りにした以外は実施例1と同様に行った。フィルターの差圧上昇までの時間が極端に短かった。
【0072】
[比較例4]
フィルターユニットを図7に示した位置、即ち第2縮重合反応槽の後に設置した以外は実施例1と同様に行った。フィルターに入る流体(ポリマー)の粘度が高く、フィルターの設計耐差圧以上になったため実験を中止した。
【0073】
【発明の効果】
本発明によると、生産性を維持したままポリブチレンテレフタレート中の異物を抜本的に低減することができ、異物の極めて少ないフィルム、モノフィラメント等のポリブチレンテレフタレート樹脂成型物を提供することができるため産業上の効果が大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の好ましい一実施態様であるポリブチレンテレフタレートの製造装置の概略図である。
【図2】本発明の別の好ましい一実施態様であるポリブチレンテレフタレートの製造装置の概略図である。
【図3】本発明の別の好ましい一実施態様であるポリブチレンテレフタレートの製造装置の概略図である。
【図4】本発明の別の好ましい一実施態様であるポリブチレンテレフタレートの製造装置の概略図である。
【図5】実施例1で使用したポリブチレンテレフタレートの製造装置の概略図である。
【図6】実施例8で使用したポリブチレンテレフタレートの製造装置の概略図である。
【図7】比較例4で使用したポリブチレンテレフタレートの製造装置の概略図である。
【符号の説明】
1 スラリー調整槽
1a、1b 原料供給口
2 エステル化反応槽
2a ベント用口
2b 触媒供給口
2c サンプリング口
2d 1,4−ブタンジオールの供給口
3 第一重縮合反応槽
3a ベント用口
3b サンプリング口
4 第二重縮合反応槽
4a ベント用口
4b サンプリング口
5 第三重縮合反応槽
5a ベント用口
6、7、8 フィルターユニット
9 ポリマー抜き出しダイ
10 回転式カッター
M1、M2、M3、M4 攪拌装置
G1、G2、G3、G4 ギアポンプ
P1 原料供給配管
P2、P3、P4 反応槽を繋ぐ配管
P5 ポリマー抜出配管
Claims (3)
- 反応触媒の存在下、テレフタル酸と、1,4−ブタンジオールとを連続的にエステル化反応させてオリゴマーを得、該オリゴマーを重縮合反応させてポリブチレンテレフタレートを製造する方法において、反応触媒が、有機チタン化合物あるいは有機チタン化合物と有機スズ化合物との混合物であって、チタン原子とスズ原子の合計の金属濃度が原料テレフタル酸に対する重量比で1〜300ppmであり、エステル化率が90%以上であり、固有粘度が0.5以下のプレポリマーの流路にフィルターを設けて、粒径20μm以上の固形物の少なくとも一部を濾別し、且つ、エステル化反応を下記式(I)を満たすように実施することを特徴とするポリブチレンテレフタレートの製造方法。
P/q ≧ 1500 kJ/m3 (I)
(式(I)中、q(m3/sec)は原料の単位時間当たりの総供給量、P(kw)はエステル化反応で与える攪拌動力を表す。) - フィルターの絶対濾過精度が30μm以下であることを特徴とする請求項1に記載のポリブチレンテレフタレートの製造方法。
- 単位時間当たりに外部から反応槽に供給されるテレフタル酸と、1,4−ブタンジオールとのモル比が下記式(II)を満たすことを特徴とする請求項1または2に記載のポリブチレンテレフタレートの製造方法。
B/T=2.0〜4.5(mol/mol) (II)
(但し、Bは単位時間当たりにエステル化反応槽に外部から供給される1,4−ブタンジオールのモル数、Tは単位時間当たりにエステル化反応槽に外部から供給されるテレフタル酸のモル数を示す)
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