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JP3994397B2 - 流体封入式防振装置 - Google Patents

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Description

本発明は、例えば自動車用のエンジンマウントやボデーマウント等に好適に採用される防振装置に係り、特に、内部に封入された非圧縮性流体の流動作用に基づいて発揮される防振特性を状況に応じて切換制御することの出来る流体封入式防振装置に関するものである。
従来から、振動伝達系を構成する部材間に装着される防振装置の一種として、内部に封入された流体の流動作用を利用して防振効果を得るようにした流体封入式の防振装置が知られている。かかる防振装置は、一般に、振動伝達系を構成する一方の部材に取り付けられる第一の取付部材と他方の部材に取り付けられる第二の取付部材を本体ゴム弾性体で連結すると共に、第二の取付部材で支持せしめた仕切部材を挟んだ両側に受圧室と平衡室を形成して、それら受圧室と平衡室をオリフィス通路によって相互に連通せしめた構造とされている。そして、振動入力時に、受圧室と平衡室の間に惹起される相対的な圧力変動に基づいてオリフィス通路を流動せしめられる流体の共振作用等に基づいて防振効果を得るようになっている。(特許文献1等参照)
ところで、このような流体封入式防振装置において流体の流動作用に基づく防振効果が有効に発揮される振動周波数域は、オリフィス通路がチューニングされた限られた周波数域となる。一方、防振装置に防振効果が要求される周波数域は、一般に、複数の乃至は広い周波数域に亘る。例えば、自動車用のエンジンマウントでは、走行時にエンジンシェイク等の低周波数域の振動に対する防振効果と、走行こもり音等の高周波数域の振動に対する防振効果が要求される一方、停車時にアイドリング振動等の中周波数域の振動に対する防振効果が要求されることとなる。
そこで、複数の乃至は広い周波数域の振動に対して、流体の流動作用に基づく防振効果が有効に発揮されるようにするために、本出願人は、先に、特許文献1(特開2000−257665号公報)において、低周波数域にチューニングされた第一のオリフィス通路と、中周波数域にチューニングされた第二のオリフィス通路を形成し、空気圧式のアクチュエータで第二のオリフィス通路を開閉することにより第一のオリフィス通路と第二のオリフィス通路を選択的に機能せしめると共に、受圧室と平衡室を仕切る隔壁部分に可動板を配設して、第一及び第二のオリフィス通路が実質的に閉塞する高周波数域の振動入力時における受圧室の圧力変動を吸収することにより高周波振動に対する防振性能を維持するようにした構造の流体封入式防振装置を提案した。
しかしながら、かかる特許文献1に記載された従来構造の流体封入式防振装置においては、平衡室を画成する可撓性膜の外側に空気圧式のアクチュエータを配設して、該アクチュエータの出力部材により可撓性膜を第二のオリフィス通路の開口部に押し付けることにより、第二のオリフィス通路における平衡室への開口部を可撓性膜で流体密に閉塞せしめて第二のオリフィス通路を遮断するようになっていた。そのために、もともと変形し易いように薄肉のゴム膜で形成された可撓性膜が、アクチュエータの出力部材による繰り返しの押圧によって損傷し易く、その耐久性を十分に確保し難いという問題があった。
また、可撓性膜の中央部分をアクチュエータの出力部材で押し付けて第二のオリフィス通路を閉塞するようになっていることから、特に第二のオリフィス通路を閉塞して遮断せしめた状態下では、可撓性膜の中央部分がアクチュエータで拘束されて可撓性膜の有効自由長が小さくなってしまう。そのために、平衡室の容積変化許容量が制限されてしまって所期の防振効果が発揮され難くなるおそれもあった。
更にまた、平衡室を画成する可撓性膜の外方に空気圧式のアクチュエータの配設領域を確保する必要があり、特に可撓性膜の膨出変形に際してのアクチュエータへの干渉を回避して、可撓性膜の損傷を回避するために、可撓性膜とアクチュエータの間に比較的大きなスペースを確保する必要がある。そのために、防振装置全体のサイズが大型化し易く、これが、特に配設スペースが著しく制限される近年の自動車用防振装置において大きな問題となる場合もあったのである。
加えて、従来構造の流体封入式防振装置では、第二のオリフィス通路の平衡室への開口部を、平衡室側から可撓性膜で覆蓋するようになっていることから、第二のオリフィス通路を通じて受圧室から及ぼされる流体圧力が、可撓性膜を介してアクチュエータを押し戻して第二のオリフィス通路を開く方向に作用せしめられることとなる。そのために、第二のオリフィス通路を遮断状態に保持するのが難しい場合があり、目的とする防振性能を安定して発揮することが難しいという問題もあった。なお、第二のオリフィス通路を遮断状態に維持するために、アクチュエータによる可撓性膜の押付力を大きくすることも考えられるが、そうすると、可撓性膜の耐久性が一層低下してしまうことに加えて、アクチュエータによる可撓性膜への押付力を解除して第二のオリフィス通路を開く作動が困難となってしまうという問題が発生することから、有効な解決策ではないのである。
また、可動板の配設のために特別なスペースが必要となり、空気圧式アクチュエータやオリフィス通路のためのスペースが制限されてしまうという不具合があると共に、可動板の配設スペースも十分に確保し難いことから、可動板による高周波数域の振動に対する防振効果も十分に得ることが難しいという問題があった。
加えて、可動板は、その変位に基づいて中周波数域の振動入力時にも受圧室の圧力変動を吸収してしまうことから、中周波数域の振動入力時に第二のオリフィス通路を通じての流体流動量が十分に確保され難くなって、第二のオリフィス通路による中周波数域の振動に対する防振効果が低下してしまうおそれもあった。
なお、このような問題に対して、例えば、本出願人の先の出願である特許文献2(特開平10−38017号公報)に記載されているように、受圧室の壁部の一部に可動板を配設すると共に、その背後に独立空気室を形成し、中周波数域の振動入力時には、かかる独立空気室に負圧力を及ぼし、可動板を負圧吸引して拘束するようにすることも考えられる。しかしながら、可動板の背後への独立空気室の形成は、上述の如き空気圧式アクチュエータと独立した空気室や空気吸排通路の形成が必要となり、構造が複雑となって部品点数の増加に伴う製造の困難、サイズの一層の大型化が避けられ難く、必ずしも有効な方策ではなかった。
特開2000−257665号公報 特開平10−38017号公報
ここにおいて、本発明は、上述の如き事情を背景として為されたものであって、その解決課題とするところは、オリフィス通路を開閉して防振特性を切り換えるための空気圧式アクチュエータを備えた流体封入式防振装置を、優れた耐久性をもって且つコンパクトに実現することにある。
また、本発明は、第一のオリフィス通路および第二のオリフィス通路による低周波数域および中周波数域の各振動に対する防振効果を十分に確保しつつ、高周波数域の振動に対する防振性能も有利に得ることの出来る、新規な構造の流体封入式防振装置を提供することも、目的とする。
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。また、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに限定されることなく、明細書全体および図面に記載されたもの、或いはそれらの記載から当業者が把握することの出来る発明思想に基づいて認識されるものであることが理解されるべきである。
すなわち、本発明の特徴とするところは、第一の取付部材と第二の取付部材を本体ゴム弾性体で連結すると共に該第二の取付部材で仕切部材を支持せしめて、該仕切部材を挟んだ一方の側において該本体ゴム弾性体で壁部の一部が構成されて振動が入力される受圧室を形成し、該仕切部材を挟んだ他方の側において可撓性膜で壁部の一部が構成された容積可変の平衡室を形成して、それら受圧室と平衡室に非圧縮性流体を封入する一方、該受圧室と該平衡室を相互に連通するオリフィス通路を形成して、該オリフィス通路を流動せしめられる流体の流動作用に基づいて防振効果を得るようにした流体封入式防振装置において、前記オリフィス通路として、低周波数域にチューニングされた第一のオリフィス通路と中周波数域にチューニングされた第二のオリフィス通路を設ける一方、前記仕切部材の内部に作用空気室を形成すると共に、該作用空気室に対して外部から空気圧を及ぼす空気通路を形成し、該作用空気室における前記平衡室側の壁部を仕切ゴム膜で構成して該仕切ゴム膜の中央部分に出力部を設けることにより空気圧式アクチュエータを構成して、該空気圧式アクチュエータの該出力部を該仕切部材の内部において該第二のオリフィス通路における該平衡室側への開口部に対して接近/離隔変位可能に対向位置せしめると共に、該出力部を該平衡室側への開口部に向けて付勢する付勢手段を設けて、該作用空気室に大気圧が及ぼされた状態下で該出力部が該付勢手段により該平衡室側への開口部に押し付けられて該第二のオリフィス通路が遮断状態に維持され、且つ該作用空気室に負圧が及ぼされることにより該出力部が該付勢手段の付勢力に抗して該平衡室側への開口部から離隔せしめられて該第二のオリフィス通路が連通状態とされるようにし、更に、該作用空気室における前記受圧室側の壁部を可動ゴム板で構成して、該作用空気室に大気圧が及ぼされた状態下で前記受圧室における高周波小振幅の圧力変動が該可動ゴム板の弾性的な変位によって吸収され、且つ該作用空気室に負圧が及ぼされることにより該可動ゴム板の変位が拘束されるようにした流体封入式防振装置にある。
このような本発明に従う構造とされた流体封入式防振装置においては、仕切り部材の内部に配設せしめられた空気圧式アクチュエータによって、第二のオリフィス通路が可撓性膜を介することなく開閉されることとなる。それ故、薄肉のゴム膜で形成された可撓性膜に空気圧式アクチュエータの出力部材を押圧することによって生じる、可撓性膜の損傷を防ぐことが可能となって、可撓性膜の耐久性の向上を図ることができる。
更に、前記第二のオリフィス通路が、空気圧式アクチュエータの出力部材によって、前記可撓性膜を介することなく、連通/遮断せしめられていることから、第二のオリフィス通路を遮断せしめた状態下においても、可撓性膜の有効自由長が空気圧式アクチュエータによって制限されることが回避されて、可撓性膜の有効自由長、ひいては平衡室の容積変化許容量が有利に確保され得るのである。
また、空気圧式アクチュエータを仕切部材の内部に配設することにより、可撓性膜の外方に空気圧式アクチュエータを配設するためのスペースを設ける必要がなく、同時に、可撓性膜の膨出変形に際しての空気圧式アクチュエータへの干渉を回避するための空間を確保する必要もない。それ故、防振装置全体のサイズを小型化することが可能となっている。
更にまた、本発明において、空気圧式アクチュエータの出力部材によって、第二のオリフィス通路の平衡室側への開口部が仕切部材の内側から閉塞せしめられることから、振動入力時に受圧室から第二のオリフィス通路を通じて伝達される圧力が、第二のオリフィス通路を閉塞せしめている空気圧式アクチュエータの出力部材に対して、開口部を開く方向に及ぼされることはない。それ故、第二のオリフィス通路は遮断状態に安定して保たれることとなり、第二のオリフィス通路の連通状態での防振特性と、その遮断状態下での防振特性が、択一的且つ安定して発揮され得るのである。
また、本発明においては、第一のオリフィス通路及び第二のオリフィス通路の両方が実質的に閉塞した高周波数域の振動入力時において、作用空気室の壁部の一部を構成する可動ゴム板の変位に基づいて受圧室の圧力変動が吸収され、かかる第一のオリフィス通路及び第二のオリフィス通路が実質的に閉塞せしめられる高周波振動に対しても、有効な防振性能が発揮され得る。
しかも、かかる可動ゴム板は、中周波数域の振動入力時に第二のオリフィス通路を連通状態に維持するために作用空気室に負圧を及ぼした状態下においては、作用空気室の負圧によって可動ゴム板が吸引されて、拘束力が作用せしめられる。それ故、中周波数領域の振動入力時には可動ゴム板の変位に起因する受圧室の圧力変動の吸収が防止されて、第二のオリフィス通路を通じての流体流動量が有利に確保されることにより、第二のオリフィス通路により中周波振動に対して有効な防振効果が十分に発揮され得るのである。
ところで、本発明において、好適には、前記可動ゴム板に対して、その弾性的な変形量を制限する拘束部材を固着せしめた構成が、採用される。
このような構成を採用した本発明に従う構造の流体封入式防振装置においては、可動ゴム板の微小変位を許容しつつ、作用空気室に負圧力を及ぼすことによってより確実に可動ゴム板の変位乃至は変形を抑えることができることから、高周波小振幅の振動入力時における低動ばね作用に基づく防振性能の向上と、中周波中振幅の振動入力時における第二のオリフィス通路による防振性能の向上が、一層高度に両立して実現可能とされる。
なお、より好ましくは、拘束部材として金属プレートや樹脂プレートを採用し、その外周部分をゴム弾性体によって仕切部材に対して流体密に弾性連結せしめた構成が採用される。
更に好ましくは、拘束部材を構成する金属プレートや樹脂プレートの表面上に弾性当接突部を突出形成した構成が採用される。
このような構成を採用した本発明に従う構造の流体封入式防振装置においては、前記弾性当接突部を仕切部材に対して当接せしめることによって、拘束部材の変位量を緩衝的に且つ確実に制限することが可能となる。
また、本発明において、好適には、前記仕切ゴム膜の中央部分に硬質の補強部材を固着することにより前記出力部を形成した構成が採用される。
このような構成を採用した本発明に従う構造の流体封入式防振装置においては、出力部をより確実に開口部に対して押し付けることができて、第二のオリフィス通路の連通/遮断の切り換えをより確実に行うことが可能となることから、目的とする防振性能を一層効果的に発現させることができるのである。
また、本発明において、好適には、前記作用空気室において、前記仕切ゴム膜と前記可動ゴム板との対向面間で広がる中間支持部を前記仕切部材に固定的に設けて、中間支持部と仕切ゴム膜の前記出力部との間にコイルスプリングを配設することにより前記付勢手段を構成するようにされる。
このような構成を採用した本発明に従う構造の流体封入式防振装置においては、付勢手段が有利に実現され得ることとなり、特にばね特性の調節が容易で且つへたりの少ない金属製のコイルスプリングを採用することが可能となることから、作動の安定性と耐久性の更なる向上が図られ得る。
なお、より好適な態様としては、中間支持部を仕切ゴム膜と可動ゴム板の対向方向に略直交する方向に広がる板形状とすると共に、仕切ゴム膜側と可動ゴム板側とを相互に連通せしめて空気圧を伝達するための連通孔を形成した構成が採用される。
かかる態様に従う構造とされた流体封入式防振装置においては、中間支持部で仕切られたゴム膜側とゴム板側に、別々に空気通路を設けて空気圧を作用せしめる場合に比して、それらの一方に空気圧を及ぼす空気通路を設けるだけで良いことから、構造の簡略化が図られる。
また、より好ましい態様としては、仕切部材本体に対して受圧室側に向けて開口する中央凹部を形成して、そこに仕切ゴム膜をその外周縁部に加硫接着せしめた嵌着リングを圧入することで流体密に嵌着して組み付けると共に、下側の領域は、第二のオリフィス通路に連通せしめて、第二のオリフィス通路の平衡室側への開口部に臨ませる一方、その上面に上方に向かって開口する浅底の中央凹所が形成されており、可動ゴム板の外周面に加硫接着された金属リングを圧入することによって可動ゴム板がはめ込まれた中間支持部と、蓋部材を順次に密着状態で仕切部材本体に対して上側から重ね合わせる。ここにおいて、可動ゴム板は、中央部分に拘束プレートとしての金属プレートを埋設状態で加硫接着すると共に、この拘束プレートの外周縁部において両面に向かって突設された略円環形状の弾性支持部を中間支持部と蓋部材の間で挟まれて支持されており、これら弾性支持部の弾性変形に基づいて、拘束プレートが埋設固着された中央部分が全体として弾性的に変位許容されるようにした構成が採用され得る。
このような構成を採用した本発明に従う構造の流体封入式防振装置においては、簡単な構造で容易に組み付けて製造することができる。
また、本発明において、好適には、前記仕切部材の中央部分に前記空気圧式アクチュエータを設ける一方、仕切部材の外周部分を周方向に延びるようにして前記第一のオリフィス通路を形成した構成が採用される。
このような構成を採用した本発明に従う構造の流体封入式防振装置においては、仕切部材の中央において空気圧式アクチュエータの形成スペースを確保しつつ、仕切部材の外周部分において第一のオリフィス通路の通路長さを大きく設定することが出来るのであり、第一のオリフィス通路のチューニング自由度が有利に確保され得る。
なお、第二のオリフィス通路の受圧室側への開口部を、仕切り部材の外周部分に開口形成する一方、平衡室側への開口部を、第二のオリフィス通路を外周部分から空気圧式アクチュエータが形成された中央部分に延び出させて、中央部分に開口形成した構成もまた、好適に採用される。
このような構成を採用した本発明に従う構造の流体封入式防振装置においては、第二のオリフィス通路の通路長を十分に確保しつつ、中央部分に形成された空気圧式アクチュエータの出力部材による、第二のオリフィス通路の平衡室側の開口部の開閉を有利に実現できるのである。
また、本発明において、好適には、前記第二の取付部材を略円筒形状として、その一方の開口部側に前記第一の取付部材を離隔配置せしめて前記本体ゴム弾性体により一方の開口部を流体密に閉塞せしめると共に、第二の取付部材の他方の開口部を前記可撓性膜で流体密に閉塞する一方、第二の取付部材に対して前記仕切部材を内挿して嵌着固定することにより、該仕切部材を挟んだ軸方向の両側に前記受圧室と前記平衡室を形成した構成が採用される。
このような構成を採用した本発明に従う構造の流体封入式防振装置においては、第二の取り付け部材の中心軸となるマウント中心軸上で、仕切り部材を挟んだ両側に受圧室と平衡室を良好なスペース効率を持って形成することができる。それ故、コンパクトな流体封入式防振装置を簡単な構造をもって一層有利に実現可能とされているのである。
上述の説明から明らかなように、本発明に従う構造とされた流体封入式防振装置においては、第一のオリフィス通路および第二のオリフィス通路による低周波数域および中周波数域の各振動に対する防振効果を十分に確保しつつ、高周波数域の振動に対する防振性能も有利に得ることが出来る。また、空気圧式アクチュエータを仕切部材の内部に配設したことにより、可撓性膜を介することなく第二のオリフィス通路を開閉することができることから、コンパクト且つ簡単な構造の流体封入式防振装置を、可撓性膜の優れた耐久性をもって実現できる。
以下、本発明を、更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
先ず、図1には、本発明の一実施形態としての自動車用防振マウント10が示されている。この防振マウント10は、第一の取付部材としての第一の取付金具12と第二の取付部材としての第二の取付金具14が、本体ゴム弾性体16によって弾性的に連結された構造とされており、第一の取付金具12がパワーユニット側に取り付けられる一方、第二の取付金具14がブラケット18および脚部20を介して自動車のボデー側に取り付けられることにより、パワーユニットをボデーに対して防振支持せしめるようになっている。なお、以下の説明において、上下方向は、原則として、図1における上下方向をいう。
より詳細には、第一の取付金具12は、略逆円錐台形のブロック形状を有している。また、その大径側端面には、軸方向上方に突出するようにして取付ボルト22が一体形成されている。
一方、第二の取付金具14は、全体として大径の略円筒形状を有している。また、第二の取付金具14は、その軸方向上側端部において、環状凹溝としてのくびれ部24を備えている。このくびれ部24は、径方向内方に凹んで周方向に延びており、本実施形態では、第二の取付金具14の全周に亘って略一定の断面形状とされている。特に、かかるくびれ部24の幅方向一方の壁部を構成する第二の取付金具14の軸方向上側開口部分は、開口部側に向かって次第に拡開するテーパ部26とされている。
このような構造とされた第二の取付金具14には、その軸方向上側の開口部側に離隔して、第一の取付金具12が略同一中心軸上に配されている。そして、これら第一の取付金具12と第二の取付金具14の間に本体ゴム弾性体16が配設されており、この本体ゴム弾性体16によって第一の取付金具12と第二の取付金具14が弾性的に連結されている。
本体ゴム弾性体16は、全体として円錐台形状を有しており、第一の取付金具12が小径側端面から差し込まれるようにして本体ゴム弾性体16に加硫接着されている。また、本体ゴム弾性体16の大径側端部外周面には、第二の取付金具14の軸方向上側の開口部分が重ね合わされて加硫接着されている。なお、本実施形態では、本体ゴム弾性体16が、第一の取付金具12と第二の取付金具14を備えた一体加硫成形品とされている。
また、このように第二の取付金具14の開口部が本体ゴム弾性体16の外周面に加硫接着されることにより、第二の取付金具14の軸方向上側の開口部が本体ゴム弾性体16によって流体密に閉塞されている。なお、本体ゴム弾性体16の大径側端面には、すり鉢状の大径凹所28が形成されて、第二の取付金具14内に開口せしめられている。また、大径凹所28の開口周縁部には、軸直角方向に広がる環状面30が形成されている。
更にまた、第二の取付金具14の内周面には、シールゴム層32が被着形成されている。このシールゴム層32は、本体ゴム弾性体16と一体形成されており、かかるシールゴム層32によって第二の取付金具14の内周面が略全面に亘って覆われている。
また、第二の取付金具14の外周面には、嵌合ゴム34が被着されており、くびれ部24に充填されている。なお、本実施形態において、かかる嵌合ゴム34は、本体ゴム弾性体16と一体的に形成されており、例えば第二の取付金具14のくびれ部24等に設けられた貫通孔(図示せず)において、嵌合ゴム34と本体ゴム弾性体16が一体的に接続されている。
さらに、第二の取付金具14には、その軸方向下方の開口部から仕切部材36と可撓性膜56が順次に嵌め込まれて、第二の取付金具14に対して嵌着固定されている。
仕切部材36は、それぞれ厚肉の略円板形状を有する上下の仕切ブロック42、38と薄肉の略円板形状を有する蓋部材54が順次に重ね合わされることによって形成されており、全体として略円形ブロック形状とされている。また、可撓性膜56は、薄肉ゴム膜によって形成されており、弛みをもった略薄肉ドーム形状を有していると共に、その外周面には、円筒形状の嵌着金具58が加硫接着されている。
そして、これら仕切部材36と可撓性膜56が、第二の取付金具14に対して下部開口から順次軸方向に挿入されて、その後、第二の取付金具14に八方絞り等の縮径加工が施されることにより、仕切部材36と嵌着金具58の各外周面が第二の取付金具14に対して嵌着固定されている。なお、第二の取付金具14の下端開口縁部は、かしめ加工されており、嵌着金具58の下端部に係止されて抜け出しを防止する係止部59とされている。また、かかる組付状態下、仕切部材36と嵌着金具58は、相互に軸方向で重ね合わされて、本体ゴム弾性体16の環状面30と第二の取付金具14の係止部59との間で、軸方向に固定的に位置決めされている。更にまた、仕切部材36および嵌着金具58と第二の取付金具14との間には、シールゴム層32が挟圧状態で配されている。
これにより、仕切部材36の軸方向上側には、壁部の一部が本体ゴム弾性体16で構成された受圧室60が形成されている一方、仕切部材36の軸方向下側には、壁部の一部が可撓性膜56で構成された平衡室64が形成されている。また、これら受圧室60および平衡室64は、外部空間に対して流体密に仕切られており、それぞれ、水やアルキレングリコール,ポリアルキレングリコール,シリコーン油等の非圧縮性流体が封入されている。
そして、受圧室60は、第一の取付金具12と第二の取付金具14の間への振動入力時に、本体ゴム弾性体16の弾性変形に基づいて圧力変化が生ぜしめられるようになっている一方、平衡室64は、可撓性膜56の変形が容易に生ぜしめられることにより、容積変化が容易に許容されるようになっている。なお、受圧室60や平衡室64への流体の封入は、例えば、仕切部材36や可撓性膜56を、非圧縮性流体中において第二の取付金具14に嵌め入れて、第二の取付金具14に絞り加工を施すこと等によって有利に為され得る。
下仕切ブロック38には、上面中央に開口する中央凹所40が形成されていると共に、中央凹所40の底壁部中央には、中央開口窓62が貫通して形成されている。そして、この中央凹所40内に出力部材66が収容状態で組み込まれていると共に、かかる中央凹所40の開口部が上仕切ブロック42によって流体密に覆蓋されている。
出力部材66は、下方に向かって次第に小径となるテーパ付きの円筒形状を有する仕切ゴム膜としての仕切ゴム弾性体68を備えている。また、仕切ゴム弾性体68の小径側端部には、中央金具69が加硫接着されていると共に、大径側の開口周縁部には、嵌着筒金具70が加硫接着されている。
中央金具69は略カップ形状を有しており、内外表面の略全体が、仕切ゴム弾性体68と一体形成された被着ゴム層によって覆われて、出力部71を形成している。そして、この被着ゴム層によって、中央金具69の底壁外面には封止ゴム88が形成されている一方、中央金具69の開口周縁部にはストッパゴム90が上方に向かって突出形成されている。また、嵌着筒金具70は、略円筒形状を有しており、その軸方向の上端部分が径方向内方に向かって屈曲せしめられている。
そして、かかる出力部材66は、その全体で下仕切ブロック38の中央凹所40に収容されて、嵌着筒金具70が中央凹所40の開口部分に対して圧入固定されることによって組み付けられている。これにより、上仕切ブロック42で覆蓋された下仕切ブロック38の中央凹所40が、出力部材66で流体密に二分されており、以て、出力部71と中央凹所40の間にオリフィス連通領域72が画成されていると共に、出力部材66と上仕切ブロック42の間に第一の空気室73が画成されている。
また、仕切部材36に組み込まれた出力部材66は、封止ゴム88の被着された出力部71の底壁部分が、中央凹所40の底壁部に形成された中央開口窓62に対して軸方向で対向位置せしめられている。更に、第一の空気室73には付勢手段としての圧縮コイルスプリング76が収容されており、出力部材66と上仕切ブロック42の対向面間に離隔方向の付勢力が及ぼされている。そして、出力部71の底壁部分が、仕切ゴム弾性体68の弾性と圧縮コイルスプリング76の付勢力に基づいて、中央凹所40の底壁部に対して当接された状態で保持されて、中央開口窓62を流体密に封止するようになっている。
また、上仕切ブロック42には、中央上面に浅底の中央凹所43が形成されていて、略円板形状の可動ゴム板46が外周に嵌着された金属リング48によって上仕切ブロック42に対して流体密に圧入固定されている。また、可動ゴム板46の底面下方は、中央凹所43の底壁上面と離隔して位置せしめられて、可動ゴム板46と中央凹所43の対抗面間に第二の空気室74が形成されている。そして、中央凹所43の中央部において上仕切ブロック42を軸方向に貫通して形成された小径の連通孔44によって第二の空気室74は第一の空気室73と連通せしめられて、全体として流体密な作用空気室75を形成している。
また、可動ゴム板46には、中央部に拘束部材としての金属プレート50が埋設状態で固着せしめられていると共に、金属プレート50の外周縁部において弾性支持部としての弾性当接突部52が可動ゴム板46の両面に突設されている。
かかる弾性当接突部52は、中央凹所43の底面と蓋部材54の下面のそれぞれに当接して、可動ゴム板46を仕切部材36内部に収容状態で弾性的に支持している。
ここにおいて、蓋部材54の中央部には円形状の中央孔55が蓋部材54を軸方向に貫通開口している。かかる中央孔55によって、可動ゴム板46が受圧室60の底壁部の一部を構成している。
これによって、高周波数振動の入力によって受圧室60内に惹起される圧力変動が、弾性当接突部52の弾性変形による可動ゴム板46の変位によって吸収されて、高周波数の振動に対する防振性能の向上を実現している。
なお、低周波数振動の振幅が高周波数振動の振幅に比べて大きいことから、高周波小振幅振動の防振を目的とする可動ゴム板46では低周波大振幅振動を吸収しきれない。従って、低周波数振動の入力時には受圧室60内の圧力変動が有効に生ぜしめられる。
ところで、下仕切ブロック38における中央凹所40の外周部分には、内外に貫通して延びる空気通路78が形成されている。そして、この空気通路78の内側開口部が、作用空気室75に接続されている。一方、空気通路78の外側開口部は、下仕切ブロック38に突設されたポート部80において開口しており、第二の取付金具14に形成された窓部84を通じて外部から差し入れられた外部空気管路82が、このポート部80に接続されるようになっている。
これにより、図面上に明示はされていないが、作用空気室75の圧力を外部からコントロールすることが出来るようになっている。具体的に例示すると、例えば、ポート部80に接続された外部空間管路82を、電磁切換弁を介して、大気中と適当な負圧源に接続して、自動車の走行状態等に応じて電磁切換弁を切り換えることにより、作用空気室75に大気圧と負圧を選択的に作用せしめることが可能とされている。
そして、作用空気室75を大気中に連通せしめた状態下では、前述の如く、出力部材66における出力部71の底壁部によって中央開口窓62が閉塞状態に保持される一方、作用空気室75に負圧を作用せしめることにより、出力部材66に対して作用空気室75側に吸引変位させる駆動力が及ぼされる一方、可動ゴム板46に対して負圧が作用して、作用空気室75側への吸引拘束力が及ぼされる。その結果、図2に示されているように、出力部材66が中央開口窓62から上方に離隔変位せしめられて、中央開口窓62が開口状態とされ、オリフィス連通領域72と平衡室64が中央開口窓62を通じての連通状態に保持されると共に、可動ゴム板46が吸引拘束され、その変位が抑えられることとなる。
また、上述の内容から明らかなように、出力部材66と、上仕切ブロック42と、可動ゴム板46と、嵌着筒金具70によって、全体として、空気圧式アクチュエータ86が形成されており、仕切部材36の内部に収容状態で配設されている。
さらに、仕切部材36には、略一定の断面形状で周方向に延びる周溝92が、外周面に開口して周方向に所定の長さで形成されている。この周溝92の周方向一方の端部が、蓋部材54に形成された連通窓94を通じて受圧室60に開口している。また、周溝92の周方向他方の端部は、下仕切ブロック38に形成された連通孔96を通じて平衡室64に開口している。そして、周溝92が第二の取付金具14で覆蓋されることにより、受圧室60と平衡室64を、常時開口状態で相互に連通せしめる第一のオリフィス通路98が形成されている。
また、仕切部材36には、周溝92の一方の端部の軸方向上方に形成された連通窓94から軸方向で下方に所定の長さで延びる軸方向溝100が形成されていると共に、この軸方向溝100の下端部から径方向内方に向かってトンネル状に延びて、中央凹所40の周壁部を貫通してオリフィス連通領域72に開口する径方向孔102が形成されている。そして、軸方向溝100が第二の取付金具14で覆蓋されることにより、受圧室60から延びて、オリフィス連通領域72と中央開口窓62を通じて平衡室64に開口し、それら受圧室60と平衡室64を相互に連通せしめる第二のオリフィス通路104が形成されている。
ここにおいて、第二のオリフィス通路104は、第一のオリフィス通路98に比して、その通路断面積:Aと通路長さ:Lの比:〔A/L〕の値が大きく設定されて、内部を流動せしめられる流体の共振周波数が、第一のオリフィス通路98よりも第二のオリフィス通路104の方が高周波数域となるようにチューニングされている。具体的には、本実施形態では、第一のオリフィス通路98において、その内部を流動せしめられる流体の共振作用に基づく低動ばね作用により、エンジンシェイク等に相当する10Hz前後の低周波数域の振動に対して有効な防振効果が発揮されるようにチューニングされている。また一方、第二のオリフィス通路104は、その内部を流動せしめられる流体の共振作用に基づく低動ばね作用が、アイドリング振動等に相当する20〜40Hz程度の高周波数域の振動に対して有効に発揮されるようにチューニングされている。
また、第二のオリフィス通路104は、中央開口窓62を通じて平衡室64に開口せしめられていることから、この第二のオリフィス通路104の平衡室64側への開口部である中央開口窓62を出力部材66で開閉されることによって、かかる第二のオリフィス通路104が、連通状態と遮断状態とに択一的に切り換えられるようになっている。
具体的には、防振マウント10の自動車への装着状態下で、自動車の走行状態と停止状態を速度センサ等で検出し、車両状態の相違に基づいて切換弁を切換作動させて、自動車の走行状態下で作用空気室75を大気中に接続せしめて第二のオリフィス通路104を遮断状態に維持する一方、自動車の停止状態下で作用空気室75を負圧源に接続せしめて第二のオリフィス通路104を連通状態に保持せしめる。
これにより、自動車の走行状態下では、第二のオリフィス通路104が遮断されていることで第一のオリフィス通路98を通じての流体流動量が有利に確保されることとなり、かかる流動流体の共振作用に基づいてエンジンシェイク等の低周波大振幅振動に対して有効な防振効果が発揮されることとなる。また、自動車の停止状態下では、第二のオリフィス通路104が連通せしめられることで第二のオリフィス通路104を通じての流体流動が生ぜしめられることとなり、かかる流動流体の共振作用に基づいてアイドリング振動等の中周波振動に対して有効な防振効果が発揮されることとなる。
従って、上述の如き構造とされた本発明に従う構造を採用された防振マウントにおいては、第一及び第二のオリフィス通路98,104を流動せしめられる流体の共振作用並びに可動ゴム板46による内圧変動の吸収によって、互いに異なる複数の乃至は広い周波数域の振動に対して何れも有効な防振効果を発揮し得るのである。
より詳細には、高周波数および低周波数の振動入力時には、作用空気室75を略大気圧に保って、第二のオリフィス通路104を閉塞状態に維持すると共に、可動ゴム板46を弾性変位可能な状態に保つことによって、低周波数振動に対しては第一のオリフィス通路98の流体流動に基づく防振効果、高周波数振動に対しては可動ゴム46が弾性変位することによって生じる圧力吸収による防振効果がそれぞれ有効に発揮されるようになっている。
また、中周波数の振動入力時には、作用空気室75に負圧を及ぼして第二のオリフィス通路104を連通せしめると同時に、連通孔44を通じて及ぼされた負圧によって可動ゴム板46を吸引拘束することで、その変位が抑えられるように配置されていることから、中周波数振動の入力時には可動ゴム板46によって受圧室60の内圧変動が吸収されないようになっており、第二のオリフィス通路104を通じての流体流動量を十分に確保することができて、第二のオリフィス通路104による中周波数振動に対する防振効果を有利に発揮することが可能である。
なお、低周波振動入力時には可動ゴム板46は拘束されていないが、シェイク等の低周波振動は、こもり音等の高周波振動に比べて振幅が極めて大きいことから、可動ゴム板46の液圧吸収作用による第一のオリフィス通路98の防振効果の低下は殆ど問題となることがない。
そこにおいて、可動ゴム板46を仕切部材36内に収容状態で組み込んだことから、配設のための特別なスペースが不要となって防振装置全体の小型化が図られると共に、可動ゴム板46を配設するための十分なスペースが確保されることとなって、高周波数振動に対する防振効果を有利に実現することが可能となっている。
さらに、上仕切ブロック42の中央に連通孔44を設けることによって、空気圧式アクチュエータ86を駆動させるために外部から作用空気室75に及ぼされる負圧力を利用して可動ゴム板46の吸引拘束を可能としていることから、可動ゴム板46の拘束のための新たな作用空気室や空気管路を設ける必要がなく、省スペース化を図ることができると共に、部品点数を減らすことが可能となって、コンパクトな防振マウントを簡単な構造をもって実現できる。
また、可動ゴム板46に拘束部材としての金属プレート50を埋設状態で固着せしめると共に、金属プレート50の表面上に弾性当接突部52を突出形成したことから、弾性当接突部52を仕切部材36に対して当接せしめることによって、可動ゴム板46の変位量を緩衝的に且つ確実に制限することが可能となっている。
また、空気圧式アクチュエータ86が仕切部材36の内部に収容状態で組み付けられて、可撓性膜56を介することなく第二のオリフィス通路104を閉塞することが可能とされていることから、可撓性膜56の優れた耐久性を得ることができると共に、かかる可撓性膜56の有効自由長を有利に得ることができて、目的とする防振特性の安定化が実現できる。
しかも、空気圧式アクチュエータ86を仕切部材36の内部に収容配置したことから、特別なスペースを設けることなく、空気圧式アクチュエータ86の出力部材66と可撓性膜56が離隔して位置せしめられており、流体封入式防振装置全体のコンパクト化が可能とされているのである。
また、かかる出力部材66が第二のオリフィス通路104の平衡室64への開口部である中央開口窓62を、その内側から、即ち出力部材66の内部から覆蓋して閉塞せしめるようになっていることから、受圧室60の圧力変動に伴う大きな正圧が第二のオリフィス通路104を通じて平衡室64に向けて及ぼされた場合において、中央開口窓62を覆蓋状態の出力部材66に対して、中央開口窓62を開口せしめる方向への駆動力として直接の作用が回避されるようになっており、第二のオリフィス通路104が遮断状態に安定して保たれることとなって、目的とする防振性能が一層安定して発揮され得るのである。
さらに、仕切部材36を空気圧式アクチュエータ86のハウジングとして利用していることから、空気圧式アクチュエータ86を部品点数の少ない簡単な構造で、且つコンパクトに実現することが可能となる。
また、本実施形態の防振マウントでは、出力部材66を第二のオリフィス通路104の平衡室64への開口部に向けて付勢することにより、作用空気室75が略大気圧とされた状態下で出力部材66を中央開口窓62に向けて押し付けて中央開口窓62を遮断状態に保持せしめられていることから、空気圧式アクチュエータ86の作動に自動車において容易に得ることのできる負圧を巧く利用することができるのである。
さらに、本実施形態では、仕切部材36の略中央に空気圧式アクチュエータ86を組み込むと共に、仕切部材36の外周部分に第一のオリフィス通路98および第二のオリフィス通路104が形成されていることから、仕切部材36の中央において空気圧式アクチュエータ86の形成スペースを確保しつつ、仕切部材36の外周部分において第一及び第二のオリフィス通路98,104の通路長さを大きく設定することができるのであり、第一及び第二のオリフィス通路98,104のチューニング自由度が有利に確保され得るのである。
また、本実施形態では、仕切部材36を挟んで軸方向両側に受圧室60と平衡室64が形成されていることから、受圧室60と平衡室64を良好な空間効率をもって形成することが可能であり、コンパクトな防振マウントを簡単な構造をもって一層有利に実現可能としているのである。
以上、本発明の一実施形態について詳述してきたが、これはあくまでも例示であって、本発明は、かかる実施形態における具体的な記載によって、何等、限定的に解釈されるものではない。
例えば、第一のオリフィス通路98や第二のオリフィス通路104および可動ゴム板46のチューニング周波数は、防振すべき振動周波数に応じて適宜に設定変更されるものであり、前記実施形態の如きものに限定されるものでない。具体的には、例えば、第一のオリフィス通路98をアイドリング振動等の中周波振動数域にチューニングすると共に、第二のオリフィス通路104を低速走行こもり音等の高周波振動数域にチューニングして、可動ゴム板46による防振をより高周波の振動に用いることも可能である。また、それに応じて、第一及び第二のオリフィス通路や可動ゴム板の具体的形状や構造が適宜に変更され得る。
また、前記実施形態では、可動板として金属プレート50を埋設状態で固着せしめたゴム板を用いることによって、その変位によって受圧室60内の圧力変動を吸収したが、可動板の形態は前記実施形態のものに限定されない。具体的には、例えば、金属プレート50などによって拘束されていない板状のゴム部材を可動板として使用して、その変形によって受圧室60の内圧変動を吸収せしめるようにすることも可能である。
さらに、前記実施形態では、空気圧式アクチュエータ86を作用空気室75が略大気圧とされている場合に、第二のオリフィス通路104の平衡室64側開口部に押圧するための付勢手段として圧縮コイルスプリング76を用いていたが、付勢手段は、前記実施形態のものに限定されるものではない。具体的には、例えば、仕切ゴム弾性体68の弾性だけを利用して、当接状態に保持せしめることも可能であり、或いは、圧縮コイルスプリング76に代えて板バネ等を用いることも可能である。
加えて、前記実施形態では、本発明を自動車用のエンジンマウントに適用したものの具体例を示したが、その他、本発明は、例えば自動車のボデーマウントやキャブマウント,サブフレームマウント、デフマウント、サスペンションブッシュ,FF型エンジンに多用される円筒型流体封入式エンジンマウントなど、或いは自動車以外の各種マウント装置に対しても、有利に適用され得るものであることは勿論である。
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更,修正,改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもない。
本発明の一実施形態としての流体封入式防振マウントを示す縦断面図である。 図1に示された流体封入式防振マウントにおいて、作用空気室75に負圧を及ぼした場合を示す断面図である。
符号の説明
10 防振マウント
12 第一の取付金具
14 第二の取付金具
16 本体ゴム弾性体
36 仕切部材
46 可動ゴム板
56 可撓性膜
60 受圧室
64 平衡室
68 仕切ゴム弾性体
71 出力部
75 作用空気室
76 圧縮コイルスプリング
78 空気通路
86 空気圧式アクチュエータ
98 第一のオリフィス通路
104 第二のオリフィス通路

Claims (6)

  1. 第一の取付部材と第二の取付部材を本体ゴム弾性体で連結すると共に該第二の取付部材で仕切部材を支持せしめて、該仕切部材を挟んだ一方の側において該本体ゴム弾性体で壁部の一部が構成されて振動が入力される受圧室を形成し、該仕切部材を挟んだ他方の側において可撓性膜で壁部の一部が構成された容積可変の平衡室を形成して、それら受圧室と平衡室に非圧縮性流体を封入する一方、該受圧室と該平衡室を相互に連通するオリフィス通路を形成して、該オリフィス通路を流動せしめられる流体の流動作用に基づいて防振効果を得るようにした流体封入式防振装置において、
    前記オリフィス通路として、低周波数域にチューニングされた第一のオリフィス通路と中周波数域にチューニングされた第二のオリフィス通路を設ける一方、前記仕切部材の内部に作用空気室を形成すると共に、該作用空気室に対して外部から空気圧を及ぼす空気通路を形成し、該作用空気室における前記平衡室側の壁部を仕切ゴム膜で構成して該仕切ゴム膜の中央部分に出力部を設けることにより空気圧式アクチュエータを構成して、該空気圧式アクチュエータの該出力部を該仕切部材の内部において該第二のオリフィス通路における該平衡室側への開口部に対して接近/離隔変位可能に対向位置せしめると共に、該出力部を該平衡室側への開口部に向けて付勢する付勢手段を設けて、該空気通路を通じて該作用空気室に大気圧が及ぼされた状態下で該出力部が該付勢手段により該平衡室側への開口部に押し付けられて該第二のオリフィス通路が遮断状態に維持され、且つ該作用空気室に負圧が及ぼされることにより該出力部が該付勢手段の付勢力に抗して該平衡室側への開口部から離隔せしめられて該第二のオリフィス通路が連通状態とされるようにし、更に、該作用空気室における前記受圧室側の壁部を可動ゴム板で構成して、該作用空気室に大気圧が及ぼされた状態下で前記受圧室における高周波小振幅の圧力変動が該可動ゴム板の弾性的な変位によって吸収され、且つ該作用空気室に負圧が及ぼされることにより該可動ゴム板の変位が拘束されるようにしたことを特徴とする流体封入式防振装置。
  2. 前記可動ゴム板に対して、その弾性的な変形量を制限する拘束部材を固着せしめた請求項1に記載の流体封入式防振装置。
  3. 前記仕切ゴム膜の中央部分に硬質の補強部材を固着することにより前記出力部を形成した請求項1又は2に記載の流体封入式防振装置。
  4. 前記作用空気室において、前記仕切ゴム膜と前記可動ゴム板との対向面間で広がる中間支持部を前記仕切部材に固定的に設けて、該中間支持部と該仕切ゴム膜の前記出力部との間に圧縮コイルスプリングを配設することにより前記付勢手段を構成した請求項1乃至3の何れかに記載の流体封入式防振装置。
  5. 前記仕切部材の中央部分に前記空気圧式アクチュエータを設ける一方、該仕切部材の外周部分を周方向に延びるようにして前記第一のオリフィス通路を形成した請求項1乃至4の何れかに記載の流体封入式防振装置。
  6. 前記第二の取付部材を略円筒形状として、その一方の開口部側に前記第一の取付部材を離隔配置せしめて前記本体ゴム弾性体により該一方の開口部を流体密に閉塞せしめると共に、該第二の取付部材の他方の開口部を前記可撓性膜で流体密に閉塞する一方、該第二の取付部材に対して前記仕切部材を内挿して嵌着固定することにより、該仕切部材を挟んだ軸方向の両側に前記受圧室と前記平衡室を形成した請求項1乃至5の何れかに記載の流体封入式防振装置。
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