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JP3971035B2 - 偏光変換素子および該偏光変換素子を使用した表示装置 - Google Patents

偏光変換素子および該偏光変換素子を使用した表示装置 Download PDF

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JP3971035B2 JP22543698A JP22543698A JP3971035B2 JP 3971035 B2 JP3971035 B2 JP 3971035B2 JP 22543698 A JP22543698 A JP 22543698A JP 22543698 A JP22543698 A JP 22543698A JP 3971035 B2 JP3971035 B2 JP 3971035B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、入射無偏光をP偏光に変換して出射させる機能を有する薄型偏光変換素子、および該偏光変換素子と旋光性を利用して画像形成する表示素子とを合わせたコントラストの高い表示装置に関する。
【0002】
【従来技術】
▲1▼ 従来液晶プロジェクターには、明るい画像を得るために、光利用効率の高い偏光変換素子が用いられる。このような光の旋光性を利用した液晶ディスプレイは、P偏光またはS偏光の一方のみの直線偏光を用い、どちらかの直線偏光の通過または遮断によって、画像のコントラストを得る。しかしこの場合簡便に直線偏光を得るには、吸収型偏光板を用いるために50%以上の透過率を得ることは不可能であり、暗い画像を得ることしかできなかった。これに対して近年S偏光もP偏光に変換して用いるような提案が多くなされている。これらの方式は多くの種類が提案され、また特許も多く提案されているし(特開平7−218720、特開平9−145926、特開平9−214996ほか)、
また液晶プロジェエクターでは既に実用化されている。
▲2▼ 旋光性を利用して画像形成する代表的ディスプレイには、液晶ディスプレイ(LCD)、およびLCD以外には本発明者らが発明した磁気旋光を用いる各
種のディスプレイがある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来LCDや光学素子として用いる偏光子は吸収タイプのものであリ、P偏光またはS偏光を吸収するために、光透過率は最大でも50%、実用上は40%程度であった。そこでビームスプリッターが用いられることに成った。ビームスプリッターはP偏光またはS偏光に対する屈折率が異なる為に、P偏光またはS偏光を分離しP偏光を透過させ、S偏光を反射させた後、1/2波長板を用いて、P偏光に変換して利用すると言うものである。従ってほぼ100%に近い光が利用出来ることと成り、明るいディスプレイが可能となる。しかしビームスプリッターは複屈折性単結晶を用いることの為に高価で、プリズムの形で用いるため、寸法が小さくならないという欠点がある。たとえば厚みにして4mm以下にすることは非常に困難であり不可能であった。このため従来技術で述べたように液晶プロジェクターのように、一度光をレンズで絞り小面積のビームスプリッターを透過させる利用法が可能な場合、すなわち厚くても良く、小面積でもかまわない利用法に有効であった。
【0004】
本発明の第1の目的は、100×100mm以上というような大面積ディスプレイに用いることが可能で、かつ1mm以下の厚みで用いることが出来るディスプレイ用高透過率偏光変換素子を提供することにある。
本発明の第2の目的は、前記高透過率偏光変換素子と、旋光性を利用したディスプレイをあわせて構成される明るいディスプレイを提供することにある。
【0005】
次に本発明の基本的な構成を図1を用いて説明する。
本発明の偏光変換素子は、▲1▼入射光を絞る為のストライプ状マイクロレンズアレイ1、▲2▼入射光の反射を防止して、透過光量を増大させる反射防止膜2、▲3▼複屈折性を有する薄膜3、▲4▼ストライプ状に旋光性と非旋光性機能を付与された液晶波長板4、および▲5▼前記機能膜を支える可視光に透明な基板5で構成される。
【0006】
次に本発明の偏光変換素子の前記各構成要素、および偏光変換素子の動作を図1を用いて説明する。
いわゆる自然光は無偏光と言われ、光の偏光方向は一定ではない。この無偏光の自然光6は凸レンズ機能を有するマイクロレンズアレイ1のマイクロレンズによって絞られる。また、必要に応じて、前記マイクロレンズアレイ1のマイクロレンズ表面にも反射防止膜が設けられても良い。▲3▼の複屈折性を有する複屈折性を有する薄膜3の表面に反射防止膜2が設けられる。
【0007】
無偏光な入射光は前記複屈折性薄膜3の表面でPとS偏光に分離される。マイクロレンズアレイ1のストライプ方向に平行な偏光面を有する直線偏光をP偏光と呼び、直角な直線偏光をS偏光と呼ぶ。このPとS偏光の分離角度(図1のα)は例えば五酸化タンタル(Ta25)の斜め配向した柱状構造をもつ膜の場合、8度程度である。この分離角度αは従来一般的に用いられたルチルや方解石の数倍であり、本発明のように全体を薄く作製することが可能となった。分離した光の一方の直線偏光をP偏光とすると、P偏光は高複屈折性透明膜3を直進する。しかしS偏光は図1に示したように、分離してさらに高複屈折性透明膜3の裏面で、P偏光と平行となる方向に直進する。高複屈折性透明膜3の裏面には液晶層があり、ストライプ状に旋光性と非旋光性機能が付与されている。本図のものでは前記旋光性と非旋光性機能は等間隔に配置されているが、必ずしも等間隔でなくても良い。高複屈折性透明膜を通過したS偏光は、液晶を配向した1/2波長板を通過するよう高複屈折性透明膜3の厚さ(b)、液晶波長板の厚さ(c)、液晶波長板の非旋光性機能部の幅(e)、液晶波長板の旋光性機能部の幅(e′)が決められる。前記1/2波長板4を通過したS偏光は90度偏光面が回転するので透明基板5を通過する光はほとんとがP偏光となる。なお、素子表面から入射する光のほとんどが、マイクロレンズによって絞られて、非旋光性の液晶層の方向に進むように作製される。
【0008】
従来の吸収タイプや反射タイプの偏光子では、P又はS偏光を吸収または反射するので50%以上の透過率は得られなかったが、本発明の偏光変換タイプの偏光子では、100%に近い透過率が得られ、従ってディスプレイ等に用いれば、従来より大幅に明るい画像を得ることができる。たとえば本偏光変換素子をLCDのような旋光利用の液晶層と反射層上に配置すれば、従来より明るい反射型ディスプレイとすることができる。
【0009】
以下、本発明の偏光変換素子の各構成要素に関して詳しくのべる。
本発明で用いられる透明基板5には、石英ガラス、サファイア、結晶化透明ガラス、パイレツクスガラス、Al23、MgO、BeO、ZrO2、Y23、TnO2・CaO、GGG(ガドリニウム・ガリウム・ガーネット)などの無機透明材料やMMA、PMMA、ポリカーボネート、ポリプロピレン、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ABS樹脂、ポリアリレート、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、エポキシ樹脂、ポリ−4−メチルペンテン−1、フッ素化ポリイミド、フッ素樹脂、フエノキシ樹脂、ポリオレフイン系樹脂、ナイロン樹脂等の透明プラスチックフィルムが用いられる。透明プラスチックフィルムを用いると、軽い、曲げやすい等の利点が有るので利用しやすい。
【0010】
マイクロレンズアレイ
木発明のマイクロレンズアレイとしては、数10から数mm、好ましくは数10から100μmの幅のライン状マイクロレンズを複数列並べたものを集光用に用いる。該マイクロレンズアレイ1の作製法としては、たとえば多成分ガラス基板に選択的イオン交換法で作製するもの、結晶化ガラス基板にフォトサーマル法で作製するもの、Si基板にイオンビームエッチング法で作製するもの、光学ガラスをプレス成形して作製するもの等の方法があり、レンズ材質やプロセスも多岐にわたっている。本発明では上記に示したような透明樹脂を用いて、原版からレプリカをとって作製したものが、多少の変形に耐えられるものとして好ましい。 マイクロレンズに要求される機能としては、図1で、直進するP偏光を液晶波長板の非旋光性部位に集光して通過させ、方向変換するS偏光を旋光性部位に集めることである。焦点距離は斜めに入射する光に対しても前記機能が働くようにするために、短くすることが好ましい。なおマイクロレンズアレイは透明基板の裏側、すなわち波長板の反対面にも設けることも斜めに通過した光を平行光にもどす効果があるので有効である。
本発明においては、光の透過率を向上させるうえから、高複屈折率層の上、すなわちマイクロレンズアレイと高複屈折率層の間の面に、反射防止膜を形成しておくのが望ましい。反射防止膜の材料には下記表1および2にあげたものなどを用い、真空蒸着法などによって形成される。
【0011】
【表1】
Figure 0003971035
【0012】
【表2】
Figure 0003971035
【0013】
高複屈折性層
本発明に用いられる高複屈折性薄膜の一例が、第58回応用物理学会学術講演会講演予稿集p944及びAPPLIED OPTICS Vol.28,No.13,P2466,1 July.1989に述べられており、また原理的な面に関しては、OPTICS LETTERS Vol.15,No.9,P516.May 1,1990に詳細に述べられている。
高複屈折率層は上記表1および2の透明材料のうち、屈折率が大きい材料を用いる方が複屈折率が大きくなり好ましい。層作製には各種のPVD、CVD法が適用されるが、層を斜め配向した柱状構造とするために、基板を粒子方向と斜めに配置するなどの方法が必要となる。特に可視光に対して透明性が高く、屈折率が2.3と比較的大きな五酸化タンタル(Ta25)の斜め配向した柱状構造をもつ層が好ましい。層の構造を斜め配向した柱状構造とすると、比較的容易に高複屈折層が得られる為である。従って、より明確にこの柱状構造とすると層の中に屈折率の斜めの分布が大きく生じてより複屈折性が高まる。複屈折性が大きいほど膜厚を薄くできるので好ましい。従って、更に好ましくは前記従来技術の文献で報告されているような高屈折率層と低屈折率層を積層した後、斜めに切り出したような構造のものが好ましい。また、ポリイミド樹脂のような高分子膜に光を斜めに照射して、上記屈折率の斜めの分布をつくり、複屈折性を付与する方法も用いることができる。
【0014】
本発明に用いる液晶層では、入射した偏光の偏光面が回転する部分と、回転しない部分が併存している。偏光面を回転する部分にのみ液晶材料を配置し、その他の部分には光学的に等方な一般の透明材料を配置することによって、このような構造を構成することが可能である。または光学的に等方で良い部分には何も配置しないという構成も可能であるが、この場合凹凸を生じることになる。
【0015】
全面に液晶層を配置した場合には、液晶の配向状態を部分的に制御することが必要である。これには一般的にはラビング法が用いられるが、幅10μmのストライプ状にラビングするのは困難である。ストライプ状の窓部をもつマスクを用いてラビングすることが可能であるが、窓部との境界のラビング強度が窓部中央部の強度と異なってしまうなどの不具合がある。
このような微細なラビングパターンを形成する方法としては、上記のようなマスクラビングのほかに、塗布した配向膜材料面に偏光紫外線を照射し、その部分に偏光方向に応じた配向規制力を持たせるという方法がある。この方法については「第22回 液晶討論会講演予稿集」p167や、「第21回液晶討論会講演予稿集」のp344に記述がある。また同予稿集のp342には感光性高分子膜に偏光紫外線を照射して配向状態を制御するという報告がある。
【0016】
上述のような偏光紫外照射した配向膜では、液晶分子は照射した偏光方向に対してある方向に配向する。このように配向した液晶層を偏光変調素子として用いる方法としては、液晶配向にねじれ構造を持たせない方法と、液晶にカイラル剤を添加して90度ねじれ構造を持たせる方法とがある。前者の液晶層では、液晶層を一般的な位相板として用いるので、液晶の配向方向に対して偏光を45度程度傾けて入射させ、液晶層のリターデーションを1/2波長に設定する。
【0017】
一方ねじれ構造を用いる液晶層では、入射させる偏光方向と液晶の配向方向は、平行、または垂直にする。この素子での偏光変調作用は主に旋光性であり、比較的広い波長範囲で偏光面を回転させることが可能となり、一般的な位相板よりも好ましい。
アゾベンゼンなどのような光異性化する化合物を配向膜に含ませたり付着させ、これに偏光を照射することによって液晶の配向を制御できることが知られている(特開平4−7520)。よってこれを用いても配向方向のパターニングを行なうことができる。
以上のようにして所望の液晶配向を得ることができるが、液晶が室温で液体である場合には液晶を二枚の透明基板間にはさみこむ必要があって好ましくない。液晶として高分子液晶を用い、これが液晶層をとる温度で所望の配向を得たのち、急冷することによってこの配向を固定することが可能である。この場合、二枚の基板は必要ではなくなり、より好ましい。
【0018】
本発明の偏光変換素子の利用
本発明の偏光変換素子は、そのまま一般的な光学素子として利用できることは言うまでもないが、光の旋光性を利用したディスプレイ、たとえば液晶ディスプレイや磁気旋光を用いたディスプレイ等にも適用できる。とくに磁気旋光を用いたディスプレイでは、必ずしも十分な旋光性が得られない場合があるので、本発明の偏光変換素子のようなより明るい偏光変換素子を用いることはディスプレイのコントラストを高めることが出来て好ましい。更には反射タイプのバックライトを用いないディスプレイでは光の利用効率が低いので、より明るい本発明偏光変換素子を用いることは高コントラストを得る上で好ましい。
【0019】
磁気旋光を利用する本発明のデバイスは低屈折率及び高屈折率の誘電体を交互に積層して、基板上に作製される誘電体多層膜と、この誘電体多層膜の上に設ける透明磁性層、さらに基板上の誘電体多層膜とまったく同一構成の誘電体多層膜を設ける。以上の透明磁性膜を挟んた誘電体多層膜の一方の側に反射膜を設けて反射型ディスプレイが用いられる基本的な構成は図2に示す。
透明磁性体の厚みは可視光波長λの1/2n(n=磁性体の屈折率)に設定されるのでファラデー回転角が絶対的な大きさにおいて不十分な場合が生する。この場合は以上で述べた誘電体多層膜/透明磁性層/誘電体多層膜の構成をまったく同じにして複数回繰り返すことによって十分な(2回繰り返せば、約2倍)回転角を得ることができる。
【0020】
偏光子を用いるのは上記誘電体多層膜/透明磁性層/誘電体多層膜/透明基板の構成において、透明磁性体の磁化された部位で得られた大きなファラデー回転角を画像として可視化するためである。すなわち透明磁性体の磁化された部位に対応して大きなファラデー回転角が得られ、磁化していない部位に対しては光の偏光面は回転しない。偏光面非回転部位では直線偏光はそのまま反射されて、もう一度上記誘電体多層膜/透明磁性層/誘電体多層膜を通過した後、偏光子も通過する。しかし偏光面回転部位を最初に通過した直線偏光は偏光面が透明磁性層で回転され反射膜で反射されて、もう一度上記透明磁性層を通過する際に回転して2倍の回転角を得るため、偏光子を通過できない。この原理によってコントラストを得ることができる。
【0021】
前記誘電体多層膜に用いられる材料としては前表1および2のものが挙げられる。これらの材料の中から適宜選択しても良いし、またこれ以外の例えば有機材料であってもかまわない。 前記多層膜の各膜厚は50〜200nm程度が好ましい。本発明のように特定汲長(λ)の磁気光学効果増大を目的とする場合は、誘電体の膜厚は、λ/4n(nはλにおける誘電体の屈折率)とする。
また低屈折率及び高屈折率の誘電体を積層したものを1ペアとするとペア数には特に制限はないが、3〜20層が性能上またコスト上好ましい。透明磁性体と接する2つの誘電体多層膜はまったく同一の構成を有することが好ましい。ただし透明磁性体に直接に接する膜の種類は同じ誘電体を用いるので、積層順序は逆になる。
反射層としてはPVD法で設けられたAl、Cu、Ag、Au、Pt、Rh、Al23、SiO2、TeC、SeAs、TeAs、TiN、TaN、CrN等が用いられる。
【0022】
透明磁性層
透明磁性層としては従来一般に用いられている磁気光学効果を示す透明磁性材料で良いが、ファラデー効果が大きくて透明性の大きい所謂性能指数の大きい磁性材料が好ましい。例えば50nm以下の粒子径を有する、鉄、コバルト、Ni等の強磁性金属の超微粒子膜が用いられる。この場合の金属超微粒子以外の膜組成としては酸素、炭素などである。鉄、コバルト、Ni等の強磁性金属は大きな磁気光学効果を示すが、光の吸収も大きいためにそのままの薄膜では用いられなかったが、超微粒子膜とすると大きな性能指数を有するようになる。また粒子径の制御によって、適当な保磁力を得ることができる。ほかに希土類鉄ガーネットやコバルトフエライト、Baフエライト等の酸化物、FeBO3、FeF3、YFeO3、NdFeO3などの複屈折が大きな材料、MnBi、MnCuBi、PtCoなどがある。磁気光学効果は光の進行方向とスピンの方向とが平行の場合に最も大きな効果が得られるので、これらの材料は膜面に垂直に磁気異方性を有する膜が好ましい。これらの透明磁性材料は一般的なスパッタ真空蒸着、MBEなどのPVD法やCVD法、メッキ法等が用いられる。
【0023】
【実施例】
以下に実施例によって詳しく説明する。
【0024】
実施例1
偏光変換素子の構造および該素子の製造法
図1を用いて説明する。200μm厚(d)のポリカーボネート基板5の片面に、電子ビーム蒸着法を用いて、40μm厚(b)の五酸化タンタルで構成される複屈折率膜3を以下のようにして作製した。Ta25に金属Taを4重量%加えた粉末を蒸発源とした。前記ポリカーボネート基板5を150℃に加熱した。チヤンバー内にはArと酸素の混合ガスを導入し、10-4Torrのガス圧力とした後、プラズマを発生させて製膜時には基板表面にイオンアシストできるようにした。また前記基板は蒸発源から真上に蒸発する粒子に対して、70度の傾斜を設けた。製膜速度は6nm/秒で数回にわけて製膜した。以上のようにして前記高複屈折膜3を作製した。該高複屈折膜3の断面をSEM観察すると、柱が基板面に対して70度程度傾斜した斜め配向柱状構造を有していた。膜の透過率は波長550nmの場合で75%であった。また、S偏光とP偏光のつくる角度(α)は約8.5度であった。
【0025】
前記高複屈折膜3の上に真空蒸着法を用いて100nm厚(a)のMgOの反射防止膜を設けた。高複屈折膜3の反射率は約3%低下した。
反射防止膜3の上には、レプリカ法で作製したポリカーボネート製マイクロレンズアレイ1を設けた。該マイクロレンズアレイ1の形状は、ストライプで、断面形状はかまぼこ型であり、そのピッチは12μm、焦点距離は1.1mmとした。
前記透明基板の高複屈折膜の反対面に、日産化学製のポリイミドSE7792をスピンコート法によって、60nmの厚み(c)に塗布した後、180℃で1時間ベークし乾燥させた。直線偏光された40mW/cm、2257nmの深紫外線をピッチP=12μm(照射部e=6μm、非照射部e′=6μm、P=2e)でストライプ状に押射した。深紫外線照射部では液晶配向が観察されて、配向容易軸方向は偏光方向に対して平行であった。その結果400〜800nmに対する偏光回転角は90度で、偏光変調子の機能を有する偏光変換素子が得られた。
【0026】
磁気旋光を利用するディスプレイ
前記のようにして作製した偏光変換素子の液晶波長板の側に、次のようにして作製した磁気旋光を利用するディスプレイを設けた。
200μm厚のカーボン基板(日清紡製)21上に、真空蒸着法を用いて、アルミニウム(Al)の反射膜22を100nmの厚さに設けた。該反射膜22膜上にイオンプレーティング法を用いてSiO2(低屈折率層、n=1.47)を884nm、Ta25(高屈折率層、n=2.15)を605nmとして交互に4層づつ、合計8層積層し誘電体多層膜23を作製した。基板温度は300℃、酸素ガス圧力はSiO2の場合10×10-4Torr、Ta25の場合は11×10-4Torrであった。製膜速度は、SiO2の場合2nm/秒、Ta25の場合0.5nm/秒であった。各誘電体多層膜の膜厚分布は、最も厚いところと薄いところの差異が全膜厚の3%であった。
【0027】
ついで、前記誘電体多層膜23の上にスパッタ法を用いてBi置換希土類鉄ガーネット膜(屈折率n=2.1)27を平均膜厚が520/2×2.1=124nmとなるように作製した。520nmは前記ガーネット膜の磁気旋光角度がピークを示す角度である。基板温度は400℃とした。ついでこの基板上の膜を空気中650℃で3時間加熱した。膜の組成はBi2.2Dy0.8Fe3.8Al1.212であった。磁気光学効果測定装置(日本分光株製K250、ビーム径2mm角)で測定したファラデー回転角の成長依存性からピークの半値幅を求めると18nmであった。波長520nmでは回転角のピーク値は2.0度であった。VSMで磁界を膜面に垂直に印加して測定した保磁力は600 Oeであった。
【0028】
ついでこのBi置換希土類鉄ガーネット膜上にイオンプレーティング法を用いて、前記とまったく同様に、SiO2とTa25の多層膜24を作製した。Bi置換希土類鉄ガーネット膜に接している膜はTa25であり、最表面側はSiO2である。ファラデー回転角の波長依存性から、波長520nmでは前記2.0の約6倍の12.0度の回転角であった。
前記誘電体多層膜24の上にもう2サイクル、前記と同様にしてBi置換希土類鉄ガーネット膜を2回と誘電体多層膜4ペアを2回設けた。ガーネット膜は合計3層、4ペアの誘電体多層膜は合計4×4ペア、すなわち16ペア、32層設けたことになる。波長520nmでは前記ガーネット1層の場合の2.0の約12倍の24.0度の回転角であった。
前記の磁気旋光利用ディスプレイを前記偏光変換素子の液晶波長板の側に基板を下にして配設した。この場合ディスプレイの非磁化部位に入射して反射膜で反射した戻り光の比率は、入射光強度に対して約36%(波長550nm)であった。
【0029】
前記の磁気旋光利用ディスプレイの最表面の誘電体多層膜上から永久磁石(表面磁束密度3Kガウス)のついた磁気ペンで文字を書いた。磁気ペンで磁化した部位では前記偏光変換素子を通過して入射した直線偏光の偏光面が回転して、もとの偏光変換素子へ戻ることなく、従って磁気ペンで書いた文字が黒く表示された。画像部分のコントラストは6.5であった。
【0030】
実施例2
実施例1の前記偏光変換素子の透過率は波長550nmの場合で70%であったのに対し、実施例1において、市販のヨウ素を用いた吸収タイプのフィルム偏光子を用いた場合には、得られた偏光変換素子透過率は波長550nmの場合で43%であった。
【0031】
実施例3
実施例1の偏光変換素子の作製において用いた、透明基板およびマイクロレンズアレイとしてのポリカーボネートをいずれもガラスとした以外は実施例1とまったく同様にして偏光変換素子を作製した。実施例1の偏光変換素子は落したり、また多少の曲げに対しても破損することはなかったが、ガラスを用いた本実施例のものは、実施例1のものに比較して破損し易かった。
【0032】
実施例4
実施例1のかまぼこ型マイクロレンズアレイの代わりに、上から見た場合の形状が4角形であるマイクロレンズアレイとした以外は実施例1とまったく同様にして偏光変換素子を作製した。2mm角の光照射面積で測定した光強度(波長550nm)は実施例1に対して66%と滅少した。
【0033】
実施例5
市販のフィルム波長板を細線状にカットして、実施例1で作製した偏光変換素子のように、基板の出射側に貼付しようとしたが、1mm以下の幅では直線状に並べることはできなかった。
【0034】
実施例6
実施例1で作製した磁気旋光利用ディスプレイを、市販のフィルム偏光子の下に配置した。この場合ディスプレイの非磁化部位に入射して、反射膜で反射した戻り光の比率は、入射光強度に対して約11%(波長550nm)と実施例1に比較して、1/3と低かった。フィルム偏光子の上から永久磁石のついた磁気ペンで一部を磁化した。磁気ペンで磁化した部位では、上記偏光子を通過して入射した直線偏光の偏光面が回転して、もとの偏光子へ戻ることなく、従って磁気ペンで書いた文字が黒く表示された。画像部分のコントラストは2.3であった。
【0035】
実施例7
実施例1で作製した磁気旋光利用ディスプレイの磁性材料としてBaフェライト薄膜を用いた以外は、実施例1と同様にして偏光変換素子と併せたディスプレイを作製した。波長520nmでは、偏光面回転角のピーク値は8.6度であった。VSMで磁界を膜面に垂直に印加して測定した保磁力は、9600 Oeであった。最表面の誘電体多層膜上から永久磁石のついた磁気ペンで文字を書いた。磁気ペンで磁化した部位では書いた文字が黒く表示された。画像部分のコントラストは2.5であった。
【0036】
【効果】
(イ)入射無偏光を非常に少ないロスでP偏光に変換して出射させ得ることが可能となった。
(ロ)変形が可能な偏光変換素子が得られた。
(ハ)直線状に狭く入射光をしぼることができ、全入射光の内のp波を非常に少ないロスで出射させ得ることが可能となった。
(ニ)出射光面に設けられた1/2波長板は液晶層で狭いストライプ状に、波長板機能と波長板機能を持たない部位が交互に一定のピッチで配列しているので、全入射光の内のS偏光を非常に少ないロスでP偏光に変換して、出射させ得ることが可能となった。
(ホ)素子への入射光の反射を防止でき、有効に光を利用できるので高いコントラストを得ることが可能になった。
(ヘ)光の利用効率が向上して、高いコントラストの反射型ディスプレイが得られた。
(ト)偏光変換素子と旋光性を利用して画像形成する反射型ディスプレイとを重ねて用いる場合に、旋光性材料を磁性ガーネット薄膜としたので、全体として格段に薄いディスプレイを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の偏光変換素子の模式的断面図である。
【図2】本発明で使用される磁気旋光性変換素子を用いたディスプレイの模式的断面図である。
【符号の説明】
1 マイクロレンズアレイ
2 反射防止膜
3 複屈折性を有する薄膜
4 液晶波長板
5 可視光に透明な基板
6 自然光
21 基板
22 反射層
23 誘電体多層膜(4ペア)
24 誘電体多層膜(4ペア)
25 誘電体多層膜(4ペア)
26 誘電体多層膜(4ペア)
27 磁性層
28 磁性層
29 磁性層
a 反射防止膜の厚さ
b 複屈折性を有する薄膜の厚さ
c 液晶波長板の厚さ
d 透明な基板の厚さ
e 波長板機能を持たない部位の幅
e′ 波長板機能を持つ部位の幅

Claims (5)

  1. (1)入射光側に設けられた入射光を集光する集光手段と、
    (2)前記集光手段から出射された前記入射光をP偏光とS偏光とに分割する分割手段と、
    (3)前記分割手段からの出射光を入射光とするように設けられ、前記P偏光とS偏光の少なくとも一方の偏光方向を変化させて両者の偏光方向を一致させる変調手段と、
    から構成され、
    (4)前記分割手段は複屈折性薄膜による複屈折を利用して入射光をP偏光とS偏光とに分離し、前記P偏光とS偏光を同じ方向に向け、
    (5)前記集光手段は入射光が前記変調手段で集光するように前記分割手段へ出射する
    ことを特徴とする偏光変換素子。
  2. 集光手段がマイクロレンズアレイであることを特徴とする請求項1記載の偏光変換素子。
  3. 前記変調手段はP偏光またはS偏光のいずれか一方の偏光方向に変化させる変調部と、偏光方向の変化をさせない無変調部とが交互にストライプ状に設けられ、前記集光手段は前記変調部と前記無変調部とに対応させて前記入射光を集光することを特徴とする請求項1または2いずれか記載の偏光変換素子。
  4. 前記分割手段は五酸化タンタルを含む材料により構成されていることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の偏光変換素子。
  5. 請求項1〜4いずれか記載の偏光変換素子と、旋光性を利用した表示素子とにより構成されたことを特徴とする表示装置。
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