JP3965740B2 - コーティング組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体製造などにおけるフォトレジストを用いたフォトリソグラフィの際に使用する反射防止コーティング組成物などとして有用なコーティング組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
フォトリソグラフィによってフォトレジストのパターンを形成する際、露光時にフォトレジスト層と基材との境界面およびフォトレジスト層表面において光が反射することによる光の多重干渉はパターン寸法精度を低下させる。これを防止する目的で、従来よりフォトレジスト層表面に反射防止膜を形成する方法が検討されている。反射防止膜としては、一般に以下の性能を有するものが望ましいとされている。
【0003】
(1)公知の反射防止理論により、反射防止効果は反射防止膜の屈折率がフォトレジストの屈折率の平方根に等しい場合に最大となるので、その値にできるだけ近いことが望ましい。具体的には、屈折率値が1.4より小さい反射防止膜が切望されている。一般的なフォトレジストの屈折率1.6〜1.8に対して、反射防止膜の屈折率は1.27〜1.34が理想的であり、この値からのずれが大きくなるほど反射防止性能は低下する。
【0004】
(2)反射防止膜の除去が、フォトレジストの現像液によって行われることが望ましい。露光後のフォトレジストの現像は、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液などのアルカリ水溶液により行われるが、この際に反射防止膜も同時に除去されることが、工程短縮、歩留まり向上の観点より望ましい。
【0005】
これまでに種々の反射防止膜が開示されている(特開昭62−62521、特開平5−188598、特開平6−148896、特開平8−305032、特開平9−50129、特開平9−90615)が、これら反射防止膜の屈折率は実用上1.4〜1.5程度であり、理想的な屈折率値からのかい離が大きいため、充分な反射防止性能を発現できなかった。
【0006】
1.3〜1.34という理想的な屈折率値を有する反射防止膜も開示されている(特開昭62−62520、特開平5−74700)が、これらはアルカリ水溶液に溶解しないため、フォトレジスト現像前に特殊な溶剤にて膜を除去する必要があり、工程数の増加、歩留まりの低下を招いていた。
【0007】
屈折率が1.4より小さく、アルカリ水溶液にもある程度溶解する反射防止膜も開示されている(特開平6−180168)が、アルカリ水溶液に対する飽和溶解量、溶解速度が充分ではないため、フォトレジスト現像時に発生する微量の溶解残渣が歩留まり低下の原因となり、実用化には至っていない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、アルカリ水溶液に対する充分な溶解性と1.4より小さい屈折率値とが両立する、フォトレジスト用反射防止コーティング組成物などとして有用なコーティング組成物を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、下記式1で表される重合単位を含むフッ素系重合体または下記式1で表される重合単位と下記式2で表される重合単位とを含むフッ素系重合体を含有することを特徴とするコーティング組成物である。
ただし、式中、Rfはエーテル性酸素原子を含んでもよい直鎖状または分岐状のペルフルオロアルキレン基、−COOMは−COOH、−COOY(Yは置換されていてもよいアンモニウムイオン)、または−COOH・Z(Zはアミン)、Xはフッ素原子または塩素原子である。
【0010】
【化2】
−CF2 CF(ORfCOOM)− 式1
−CF2 CFX− 式2
【0011】
本発明におけるフッ素系重合体は式1で表される重合単位を含むフッ素系重合体または式1で表される重合単位と式2で表される重合単位とを含むフッ素系重合体である。
【0012】
式1におけるRfはエーテル性酸素原子を含んでもよい直鎖状または分岐状のペルフルオロアルキレン基である。ペルフルオロアルキレン基の炭素数は入手の容易性などから1〜10が好ましく、2〜7がより好ましい。エーテル性酸素原子は通常ペルフルオロアルキレン基の炭素間に存在するが、式1における−COOMの炭素とペルフルオロアルキレン基の炭素間に存在してもよい。
【0013】
−COOMは−COOH、−COOY(Yは置換されていてもよいアンモニウムイオン)、または−COOH・Z(Zはアミン)である。式2におけるXはフッ素原子または塩素原子である。
【0014】
前記Yの置換されていてもよいアンモニウムイオンとしては、NH4 +およびNH4 +の水素原子の1以上をアルキル基、酸基、水酸基などの有機基で置換したものが挙げられる。
【0015】
前記Zのアミンとしては、本発明の目的を妨げないものであれば、公知周知の化合物の1種以上が使用できる。例えば、エチルアミン、プロピルアミンなどのモノアルキルアミン類、ジエチルアミンなどのジアルキルアミン類、トリエチルアミンなどのトリアルキルアミン類、エタノールアミン、ジエタノールアミンなどのアルカノールアミン類などが挙げられる。
【0016】
フッ素系重合体は、式1で表される重合単位のみからなる重合体、または、式1で表される重合単位と式2で表される重合単位のみからなる重合体、が好ましいが、式1で表される重合単位および式2で表される重合単位以外の重合単位を10モル%以下で含む重合体でもよい。
【0017】
式1で表される重合単位および式2で表される重合単位以外の重合単位としては、ペルフルオロビニルエーテル類、炭素数3以上のペルフルオロオレフィン類などの重合性ペルフルオロ化合物類に基づく重合単位が挙げられる。
【0018】
式1で表される重合単位と式2で表される重合単位とを含むフッ素系重合体において、式1で表される重合単位および式2で表される重合単位の合計に対する、式1で表される重合単位の割合は、40モル%以上で100モル%未満が好ましく、50モル%以上で100モル%未満がより好ましい。式1で表される重合単位および式2で表される重合単位の合計に対する、式2で表される重合単位の割合は、0モル%超60モル%以下が好ましく、0モル%超50モル%以下がより好ましい。
式1で表される重合単位の割合を40モル%以上とすることによりフッ素系重合体のアルカリ水溶液に対する溶解性が向上する。
【0019】
フッ素系重合体の数平均分子量は、1×103 〜3×104 であることが好ましく、2×103 〜2×104 であることがより好ましい。数平均分子量が1×103 未満では、造膜性が著しく悪化して均一なコーティング膜を得られないことがあり、また3×104 超では、アルカリ水溶液に対する溶解性が充分でない場合がある。
【0020】
本発明のコーティング組成物は、通常は、上記フッ素系重合体を溶媒中に溶解したものである。溶媒としては、水、有機溶媒または水と有機溶媒の混合溶媒が使用できる。本発明のコーティング組成物は、特にフォトレジスト層などに塗布する反射防止コーティング組成物として有用である。反射防止コーティング組成物の溶媒としては、反射防止コーティング組成物をフォトレジスト層に塗布する際、フォトレジスト膜にダメージを与えないものから選択することが好ましい。
【0021】
好ましい溶媒例として、水単独、または水とメタノール、エタノール、イソプロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロパノールなどのアルコール類との混合溶媒が挙げられる。混合溶媒中のアルコール類の割合が多いと、例えばフォトレジスト層にダメージを与える場合があるため、40重量%以下が好ましく、20重量%以下がさらに好ましい。
【0022】
コーティング組成物中のフッ素系重合体の濃度は、フッ素系重合体が溶解する範囲内であれば特に限定されず、所望のコーティング膜厚を得られるように設定すればよいが、通常1〜10重量%の範囲である。
【0023】
本発明の組成物に、塗布時の濡れ性、塗膜の均一性を改善するなどの目的で、フッ素系有機酸のアミン塩などの界面活性剤を添加できる。添加量は多すぎると塗膜の白化を招いたり、反射防止膜下層のフォトレジスト膜中に拡散して露光不良を引き起こすおそれがあるため、フッ素系重合体に対して10重量%以下が好ましく、5重量%以下がさらに好ましい。
【0024】
フォトレジストを用いたフォトリソグラフィによってパターンを形成するにあたり、フォトレジスト層表面に本発明のコーティング組成物から形成された反射防止膜を有するフォトレジスト層を使用できる。
【0025】
フォトレジスト層表面に、本発明の組成物により反射防止膜を形成する方法としては、塗膜の均一性、簡便性の観点よりスピンコート法が好適に採用される。また、通常はコート後に溶剤を除去する目的でホットプレートまたはオーブンにより乾燥を行うのが一般的である。乾燥条件としては、例えばホットプレートの場合、80〜100℃の温度で30〜200秒間の条件が例示される。
【0026】
反射防止膜の膜厚は、公知の反射防止理論に従って設定すればよく、膜厚を「(露光波長)/(4×(反射防止膜の屈折率))」の奇数倍とすることが、反射防止性能が大きくなるため好ましい。
【0027】
本発明のコーティング組成物をフォトレジスト層の反射防止コーティング組成物として用いる場合、適用可能なフォトレジストには特に制限はなく、g線用、i線用、またはArF、KrFなどのエキシマーレーザ用のフォトレジストに対して効果を発揮する。特に、反射防止膜下層のフォトレジストが露光により生成したプロトンの触媒作用を利用する、いわゆる化学増幅型レジストである場合、露光後の大気中での放置時間が長くなるとレジスト表面が変質する場合があるが、本発明の組成物により形成された塗膜はその変質を防止する保護膜としても作用する。
【0028】
【実施例】
以下、合成例(例1〜2)、実施例(例3〜6)を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0029】
[例1]
CF2 =CFOCF2 CF2 COOCH3 の306gを撹拌機付きの500ccオートクレーブに仕込み、系内を窒素にて置換し内圧1kg/cm2 Gにした。ペルフルオロブタノイルペルパーオキシドの5%HCFC−225(1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフロロプロパン)溶液86gを添加し、内温を40℃に昇温、重合反応させた。5.5時間後、内圧が1.8kg/cm2 Gまで上昇し、その後、内圧の上昇はみられなくなり、重合終了とした。
【0030】
重合終了後、減圧にてHCFC−225を留去、さらに加熱、減圧にてCF2 =CFOCF2 CF2 COOCH3 を留去した。得られたCF2 =CFOCF2 CF2 COOCH3 単独重合体の数平均分子量をGPC法により求めたところ、約4.5×103 であった。
【0031】
この単独重合体を加水分解することにより、重合単位−CF2 CF(OCF2 CF2 COOH)−からなるフッ素系重合体(以下、重合体Aという)を得た。さらに、29%アンモニア水溶液にて重合体Aのアンモニウム塩化を行い、過剰のアンモニアおよび水を留去して、重合単位−CF2 CF(OCF2 CF2 COONH4 )−からなるフッ素系重合体(以下、重合体Bという)を得た。
【0032】
[例2]
CF2 =CFOCF2 CF2 COOCH3 の220g、ペルフルオロブタノイルペルオキシドの5%HCFC−225溶液3gを撹拌機付きの200ccオートクレーブに仕込み系内を窒素にて置換した。この系を液体窒素にて冷却、脱気した後、TFE(テトラフルオロエチレン)9gを導入し、内圧2.5kg/cm2 Gにした。さらに内温を40℃に昇温、重合反応させた。
【0033】
3.0時間後、内圧が1.2kg/cm2 Gまで下降し、その後、内圧の下降はみられなくなり、重合終了とした。重合終了後、TFEをパージし、減圧にてHCFC−225を留去、さらに加熱、減圧にてCF2 =CFOCF2 CF2 COOCH3 を留去した。
【0034】
得られたCF2 =CFOCF2 CF2 COOCH3 とTFEの共重合体は、F−NMR法によりCF2 =CFOCF2 CF2 COOCH3 /TFEを1/1のモル比で含むものであった。また、この共重合体の数平均分子量をGPC法により求めたところ、約8.7×103 であった。
【0035】
この共重合体を加水分解することにより、重合単位−(CF2 CF2 )−と重合単位−CF2 CF(OCF2 CF2 COOH)−からなるフッ素系重合体(以下、重合体Cという)を得た。さらに、29%アンモニア水溶液にて重合体Cのアンモニウム塩化を行い、過剰のアンモニアおよび水を留去して、重合単位−(CF2 CF2 )−と重合単位−CF2 CF(OCF2 CF2 COONH4 )−がモル比1/1からなるフッ素系重合体(以下、重合体Dという)を得た。
【0036】
[例3]
重合体Aを水/メタノール混合溶媒(メタノール含有量20重量%)に溶解させ、重合体濃度5重量%の反射防止コーティング用組成物を調製し、次の評価1および評価2を行った。その結果、屈折率は1.36、膜厚は67nmであった。また、フォトレジストのパターン上には、残渣、異物などは観察されず、反射防止膜はレジスト現像時に完全に除去できることを確認した。
【0037】
(評価1:塗膜の屈折率および膜厚の測定)
反射防止コーティング用組成物をスピンコート法によりシリコンウェハ上に塗布し、塗膜の屈折率および膜厚をエリプソメータにより測定した。
【0038】
(評価2:フォトレジスト現像時の反射防止膜除去特性の評価)
ヘキサメチルシラザン雰囲気中に5分間放置することにより表面処理したシリコンウェハ上に、フォトレジストTHMR−iP1700(東京応化工業社製)をスピンコート法により塗布、ホットプレート上で90℃、90秒間乾燥させることにより膜厚1μmのレジスト層を形成した。
【0039】
次いで反射防止コーティング用組成物をスピンコートし、ホットプレート上で90℃、60秒間乾燥することにより、反射防止層を形成した。このときのスピンコート条件は、評価1と同一条件とした。次にテストパターンを介してi線(365nm)により露光を行い、その後露光後ベーク(PED)を行った。次いで現像液(2.38重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液)を用いて65秒間パドル現像を行った後に、超純水にてリンスし、フォトレジストのパターンを得た。
【0040】
このサンプルについて金属顕微鏡観察を行い、現像時に反射防止膜が充分に除去できているかを評価した。
【0041】
[例4]
重合体Aを重合体Bに変更した以外は、例3と同様にして評価1および評価2を行った。結果を以下に示す。
(評価1)屈折率1.37、膜厚66nm。
(評価2)フォトレジストのパターン上には、残渣、異物などは観察されず、反射防止膜はレジスト現像時に完全に除去できることを確認した。
【0042】
[例5]
重合体Aを重合体Cに変更した以外は、例3と同様にして評価1および評価2を行った。結果を以下に示す。
(評価1)屈折率1.35、膜厚68nm。
(評価2)フォトレジストのパターン上には、残渣、異物などは観察されず、反射防止膜はレジスト現像時に完全に除去できることを確認した。
【0043】
[例6]
重合体Aを重合体Dに変更し、溶媒を水単独とした以外は、例3と同様にして評価1および評価2を行った。結果を以下に示す。
(評価1)屈折率1.37、膜厚66nm。
(評価2)フォトレジストのパターン上には、残渣、異物などは観察されず、反射防止膜はレジスト現像時に完全に除去できることを確認した。
【0044】
【発明の効果】
本発明は、特にフォトレジスト層表面の反射防止膜として適切な低屈折率を有し、かつフォトレジスト現像時に、現像液によって完全に除去できる反射防止膜を形成できるコーティング組成物として有用である。この組成物を用いることにより、パターン形成プロセスの高歩留まり化に寄与する。
Claims (4)
- フッ素系重合体の数平均分子量が1×103〜3×104である請求項1に記載のコーティング組成物。
- 前記コーティング組成物がフォトレジスト用反射防止コーティング組成物である請求項1または2に記載のコーティング組成物。
- フォトレジストを用いたフォトリソグラフィによってパターンを形成するにあたり、フォトレジスト層表面に請求項1、2または3に記載のコーティング組成物から形成された反射防止膜を有するフォトレジスト層を使用することを特徴とするパターン形成方法。
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