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JP3941458B2 - 壁装材およびその製造方法 - Google Patents

壁装材およびその製造方法 Download PDF

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JP3941458B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ビニル壁紙のように塩化ビニル樹脂を使用せず、無公害性のコットン繊維を主材とした壁装材に関するものであり、さらに詳しくは、ソフトな風合いを持ち、ボリューム感があり、優れた加工性と施工性を備え、しかも型崩れが生じにくい凹凸模様を有する新規かつ改良された壁装材、およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
住宅の壁面や天井に使用される壁紙等の壁装材としては、従来から塩化ビニル樹脂製のビニル壁紙が多く使用されている。ビニル壁紙は、価格が安く加工特性、耐水性、防汚性、施工性等に優れ、デザイン性の豊富さから優位性を保ってきたが、近年の環境問題からビニル壁紙の燃焼時に発生する塩化水素ガスやビニル化粧層中に含まれている可塑剤の居住空間への揮発が問題視されている。
【0003】
このため、塩化ビニル樹脂に代わる素材としてオレフィン系樹脂、紙、不織布など種々の非ハロゲン素材が検討されている。中でも紙や不織布を用いた壁紙は、ビニル壁紙と比較して風合いが自然で暖かみがあるため、それぞれの素材を生かした提案が数多く行われている。しかしながら、紙パルプを主材とする壁装材は凹凸模様の形成方法として互いに篏合する凸部を形成した雄ロールと凹部を形成した雌ロールとを組み合わせたエンボス装置が使用されるため、製品の表裏に凹凸模様が形成され施工しにくいという欠点がある。さらに、このエンボス装置で形成された凹凸模様は、施工時におけるローラー掛け等の僅かな圧力や水分の影響により型崩れが発生するという問題もあった。
【0004】
そこで前記の問題点を解決する方法として、表裏に形成された凹凸模様の裏側に壁紙用裏打紙を貼り合わせて平らにする工夫が行われたり、表面に保護フィルムを貼り合わせて型崩れや水分の影響を抑える方法が取られているが、壁紙用裏打紙の接着が甘く剥れやすいという欠点や、保護フィルムを貼り合わせるためコストが高く、しかも、型崩れが完全に抑えられないという問題を有している。
【0005】
紙パルプを主材とする壁装材であっても、ビニル壁紙の凹凸模様形成に使われる通常のエンボス装置を使用しうる技術が特開平9−31900号公報で提案されている。すなわちビニル壁紙に通常使われるエンボス装置は、表面に凹凸模様を刻設したエンボスロールと表面がフラットなバックロールとから構成されていて、予め加熱したビニル壁紙をこれらロールの間に通すことによって凹凸模様を形成させるものである。上記の特開平9−31900号公報の技術は、紙パルプ繊維とオレフィン繊維を含有したシートを予め加熱し、これを上記したビニル壁紙に使われる通常のエンボス装置により凹凸模様を形成させるものである。
【0006】
しかしながら、紙パルプ繊維とオレフィン繊維を含有したシートを用いる上記の壁装材においては、エンボス装置で形成された凹凸模様が型崩れしにくいという利点は有るものの、ボリューム感のある十分な深さの凹凸模様を形成させた場合には凹凸模様が裏面にまで及んだり、これを防止するためシートを厚くすると、硬くて柔軟性に欠けるものとなる。
【0007】
また不織布を使用した壁装材として、例えば特開平10−96197号公報には、壁紙用原紙の片面に塩素を含まない有機繊維からなるパンチング不織布を接着剤で接着した後、この不織布面に熱成形可能な温度に加熱されたエンボスロールを圧接して凹凸模様を形成する壁紙の製造方法が提案されている。この製造方法によって得られる壁紙は、風合いがソフトで暖かみがあり、ボリューム感に優れたものではあるが、乾式製法により長繊維が嵩高な状態で絡合されている不織布を使用しているため印刷加工性が劣り、安定した品質を確保する事が困難である。さらにこの公開公報には、不織布を多層構造とし、表面層を裏面層よりも緻密に形成することも提案されているが、この場合も乾式製法としての限界があり、しかも不織布を緻密にすればするほどコストがアップし実用性が乏しいものとなる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような従来技術における問題に着目してなされたもので、その課題とするところは、ビニル壁紙にみられるような燃焼時の有害ガス発生がなく、ソフトでボリューム感がありしかも型崩れが生じにくい凹凸模様を有し、エンボス加工性や印刷加工性、更には施工性の優れた壁装材およびその製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、繊維の芯部分が中空で繊維自体にねじれの構造を持つコットン繊維が、他のセルロース系繊維に比べて嵩高でソフトな紙になり、かようなコットン繊維を合成繊維と組み合わせて混抄紙とすることで、上記課題を解決し得る壁装材が得られることを見出し、ここに本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち本発明による壁装材は、コットン繊維と合成繊維との混合割合が質量%比で50:50〜95:5であるコットン繊維と合成繊維とからなる混抄紙と、前記混抄紙の裏面に積層された壁紙用裏打紙とからなり、前記混抄紙の表面側にエンボス加工による凹凸模様が形成されていることを特徴とするものである。
【0011】
上記の壁装材は、コットン繊維と合成繊維との混合割合が質量%比で50:50〜95:5であるコットン繊維と合成繊維とからなる混抄紙を抄造する工程と、前記混抄紙の裏面に壁紙用裏打紙を積層する工程と、裏面に壁紙用裏打紙を積層した前記混抄紙を、加熱されたエンボスロールとバックロールとの間隙を通して、前記混抄紙の表面側にエンボスロールを圧接することによりエンボス加工を施す工程とからなる製造方法により製造することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明による壁装材の実施態様の断面図を模式的に示すものであり、コットン繊維と合成繊維からなる混抄紙1の裏面に壁紙用裏打紙2が積層され、混抄紙1の表面側にエンボス加工による凹凸模様3が形成されている。
【0013】
かような構成の本発明においては、コットン繊維を合成繊維と混抄して混抄紙とし、この混抄紙を主材として使用することにより、ソフトでボリューム感があり、しかも低密度でエンボス加工性の良好な壁装材を得ることができる。
【0014】
本発明で用いられるコットン繊維は、製紙用に用いられるコットンリンター又は綿パルプと呼ばれる短繊維であり、平均繊維長1〜5mmのものが好ましく使用できる。コットン繊維の繊維長が長くなると、得られた壁装材表面の印刷適性が劣るとともに抄紙機で抄造し難くなり、繊維長が短くなると混抄紙の強度が劣る傾向がある。
【0015】
コットン繊維と混抄する合成繊維としては、塩化ビニルのような塩素を分子内に有するもの以外であれば、任意の合成繊維が選択可能であるが、特に低融点の熱可塑性合成繊維を使用することにより、エンボス加工時に溶融して繊維間の結合力を高めたり、ヒートセット性を良好にし、凹凸模様の型崩れを起こしにくくすることができる。このような低融点の熱可塑性合成繊維としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系繊維、EVA(エチレン酢酸ビニル共重合樹脂)繊維、低融点ポリエチレンテレフタレート繊維およびこれらの混合物又は複合繊維が代表的なものとして挙げられ、融点が80〜160℃、特に110〜140℃のものを選定するのが好ましい。融点が80℃未満では加工時の作業性に影響し、160℃を超えると繊維間の融着とヒートセット性が困難となる傾向が見られる。
【0016】
合成繊維としては、低融点の熱可塑性合成繊維と高融点の熱可塑性合成繊維を貼り合わせたバイメタル構造、高融点の熱可塑性合成繊維を芯とし、低融点の熱可塑性合成繊維を鞘とする芯鞘構造等の複合繊維を使用することもできる。特に、芯鞘構造の複合繊維を用いる場合は、エンボス加工時に低融点の鞘部分が溶融しても、高融点の芯部分の繊維形態が残るので芯繊維の風合いを持たせることができる。芯鞘型複合繊維としては、例えば、芯部分に融点が255〜260℃である熱可塑性ポリエチレンテレフタレート繊維(以下、高融点ポリエステル繊維という)を有し、鞘部分として融点が125〜135℃である熱可塑性ポリエチレン繊維や、融点が約110〜160℃の範囲にある熱可塑性ポリエチレンテレフタレート繊維(以下、低融点ポリエステル繊維という)を有するもの、あるいは、芯部分に融点が165〜173℃である熱可塑性ポリプロピレン繊維を有し、鞘部分として融点が125〜135℃である熱可塑性ポリエチレン繊維や、融点が120〜130℃のEVA(エチレン−酢酸ビニル共重合体)繊維等が挙げられる。
【0017】
これらの合成繊維の形態は、抄紙機で抄造できる範囲にあれば短繊維でも長繊維でも良いが、印刷適性を考慮すると0.6mm〜10mmの範囲で選定するのが望ましい。
【0018】
コットン繊維と合成繊維の混抄紙におけるコットン繊維と合成繊維の混合割合は、質量%比で50:50〜95:5とする。合成繊維の混合割合が5質量%未満であると表面強度が低下するとともに、形成された凹凸模様の型崩れも起こりやすくなる。一方、合成繊維の混合割合が50質量%を超えるとコットン繊維が少なくなるためエンボス加工時に潰れてボリューム感やソフトな風合いが損なわれる傾向がある。
【0019】
コットン繊維と合成繊維からなる混抄紙は、密度が0.2〜0.6g/cm3 であることが好ましく、0.25〜0.4g/cm3 であることがさらに好ましい。密度が0.2g/cm3 未満では、混抄紙の面が粗面になり印刷適性が悪くなるとともに強度も低下する。一方、密度が0.6g/cm3 を超えると、混抄紙の風合いが硬くなるとともに混抄紙の厚みが不足して壁装材としてのボリューム感に欠ける傾向がある。従って、コットン繊維と合成繊維とからなる混抄紙の坪量は、印刷適性、エンボス加工性、適正な厚み、コスト等を考慮して50g〜160g/m2 に設定するのが好ましい。
【0020】
コットン繊維と合成繊維の混抄紙を抄造する際には、所定の割合で混合された原料繊維の水分散液に、従来から慣用されている抄造助剤、例えば、タルク、カオリン等の填料、サイズ剤、紙力増強剤、定着剤、内添バインダー、寸法安定化剤等を配合して紙料を調整し、抄紙機を用いて常法により抄紙する。
【0021】
コットン繊維と合成繊維との混抄紙の裏面に貼り付けられる壁紙用裏打紙は、壁紙等の壁装材として使用される場合の施工性やエンボス加工性を向上させる機能を有する。代表的な壁紙用裏打紙としては、普通紙、難燃紙、水酸化アルミニウム紙等があり、燃焼時に有害ガスの発生がない澱粉系、酢酸ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、アクリル系樹脂等のエマルジョンタイプの接着剤を用いて貼り付けられる。尚、壁紙用裏打紙は、施工性、特に施工用接着剤の塗布から壁装材を壁面に貼り付けるまでの時間(オープンタイム)を長くした原紙、すなわち、施工用接着剤が壁装材の内部に浸透することを防止し、接着剤の乾きを遅くするための加工を施したものを選定するのが好ましい。このような壁紙用裏打紙としては、アクリル酸エステル系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂の水溶液、或は、スルファミン酸グアニジン等の水溶性難燃剤にワックスを添加した水溶液を塗布又は含浸したもの等が挙げられる。
【0022】
裏面に壁紙用裏打紙を貼り付けた混抄紙は、表面側に必要に応じて印刷による絵柄模様の形成、すなわち化粧加工が施される。化粧加工の方法としては、グラビア印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷等が挙げられ、これらの方法を1種又は複数組み合わせることもできる。尚、化粧加工を施す場合は、エンボス加工前でもエンボス加工後でも良いが、撥水処理を行う場合は、撥水処理前に行うことが好ましい。
【0023】
凹凸模様を形成するためのエンボス加工は、表面に凹凸模様が刻設された加熱されたエンボスロールと表面がフラットなゴムロール又はペーパーロール等のバックロールとの間に、裏面に壁紙用裏打紙を貼り付けた混抄紙を通して、混抄紙の表面側にエンボスロールを圧接し、引き続いて冷却することにより行われる。ビニル壁紙のエンボス加工と異なる点は、ビニル壁紙のエンボス加工では、ビニル壁紙側を予め加熱溶融し、これに冷却されたエンボスロールを圧接させるのに対して、本発明においては、混抄紙側を加熱することなく、あるいは、軟化しない程度に加熱しておき、これに加熱されたエンボスロールを圧接するところである。
【0024】
エンボス加工の条件、すなわちエンボスロールの表面温度、圧力及び加工速度は、混抄紙を構成している合成繊維の種類に応じて適宜設定することができる。エンボスロールの表面温度は、混抄紙を構成している低融点の熱可塑性合成繊維の融点より高く、高融点の熱可塑性合成繊維の軟化点より低く設定するのが普通であるが、高速加工を行う場合は、高融点の熱可塑性合成繊維の軟化点より高く設定することもでき、一般的には、135〜260℃の範囲に設定するのが好ましい。また、圧力は160〜1200N/cm、加工速度は、10〜60m/分の範囲が好ましく採用できる。
【0025】
本発明の壁装材は、必要に応じて難燃処理を施すことにより難燃性を付与することができる。難燃処理の方法としては、混抄紙を抄造した後、その表面に難燃剤を塗布する方法、混抄紙を難燃剤溶液に浸漬、乾燥して含浸させる方法、原料繊維を抄造する際に紙料中に難燃剤を配合する方法等が挙げられる。なお、かような難燃処理は、混抄紙の表面に必要に応じて施される後述の撥水処理あるいは、成樹脂塗布層を形成する前に行われるのが好ましい。
【0026】
難燃処理に使用する難燃剤としては、塩素を含まないものが好ましく、従来から紙材料の難燃処理に用いられている公知の難燃剤を用いることができる。例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化ジリコニウム、スルファミン酸グアニジン、リン酸グアニジン、硫酸グアニジン、リン酸アンモニウム等の難燃剤が使用できる。
【0027】
難燃剤の使用量は、混抄紙の質量に対して乾燥質量で10〜50質量%であることが好ましい。10質量%未満では所望の難燃性が付与されず、50質量%を超えて多く配合しても難燃性は横ばいで、逆に壁装材の強度が低下する。
【0028】
本発明の壁装材は、必要に応じて撥水処理を施したり、合成樹脂塗布層を形成したり、あるいは、合成樹脂塗布層を形成後撥水処理を施して防汚性、耐水性、耐湿摩擦性等を向上させることができる。
【0029】
これらの撥水処理あるいは合成樹脂塗布層の形成は、壁装材が使用される場所、すなわち汚れの種類、汚れの頻度に応じて適宜選定して施される。例えば、天井や寝室の壁のように汚れ難い場所については加工の必要は無いが、リビングの壁のように比較的汚れ易い場所については、撥水処理か合成樹脂塗布層の形成が必要となる。また、洗面所や台所の壁のように非常に汚れ易い場所については、合成樹脂塗布層の形成と撥水処理加工が要求される。
【0030】
本発明の壁装材表面に撥水処理のみを行う場合は、凹凸模様形成前後、すなわちエンボス加工の前後2回に分けて行うのが好ましい。エンボス加工前の撥水処理(1回目の撥水処理)は、シリコン系あるいはフッ素系樹脂塗工液を塗布又は転写することによって行われるが、壁装材に撥水性を付与する作用の他に、エンボスロールの離型性を良好にする効果もある。この離型効果は、製品の品質を向上させるだけでなく、エンボス加工時の加工速度をアップさせるのにも有効である。
【0031】
エンボス加工後の撥水処理(2回目の撥水処理)は、エンボス加工前に行われた1回目の撥水処理の斑を補うもので、壁装材の表面に斑のない撥水効果を付与させるものである。2回目の撥水処理に用いる塗工液は、エンボスロールの離型性向上効果を考慮する必要は無く、撥水性能又は防水性能を持つ樹脂のうちシリコン系樹脂、フッ素系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、アクリル系樹脂、ワックス等から選ばれる少なくとも1種以上の樹脂から選定され、その塗布量は、乾燥質量で0.2〜20g/m2 とするのが好ましく、0.5〜10g/m2 とするのがさらに好ましい。0.2g/m2 未満の塗布量では必要とする撥水効果が得られず、20g/m2 を超えるとコストがアップし不経済となる。
【0032】
なお、撥水処理を行う場合、印刷による化粧加工は、1回目の撥水処理の前に行うことが望ましい。
【0033】
このように撥水処理は、壁装材の表面に防汚性能を付与するものであるが、1回目の撥水処理のみでは、エンボスロールとの接触により撥水層に裂目が生じ、十分な撥水効果が得られない可能性がある。また、2回目の撥水処理のみでは、エンボス模様の凹凸により、全体に十分な撥水層を形成することができない。そのため、上述のように、凹凸模様形成前と後に2回の撥水処理を行うことにより、裂目のない撥水層が形成できるので十分な撥水性能を得ることができる。
【0034】
本発明の壁装材において、コットン繊維と合成繊維とからなる混抄紙の表面に合成樹脂塗布層を形成させる場合は、印刷による化粧加工の前でも後でも良く、形成された合成樹脂塗布層は、壁装材の防汚性、耐水性および耐湿摩擦性を向上させる機能を有する。なお、合成樹脂塗布層の形成が、印刷による化粧加工の前に行われた場合は、印刷適性も向上させる働きがある。
【0035】
合成樹脂としては、アクリル酸エステル系樹脂、ブタジエン・スチレン共重合体、ブタジエン・メチルメタクリレート共重合体、スチレン−アクリル系樹脂、オレフィン系樹脂等が使用でき、必要に応じてワックスや無機粉体、例えば水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、各種無機水和物等の吸熱脱水反応を伴うもの、または、艶消し剤としてのシリカ、または、通常製紙用に使用されている炭酸カルシウム、カオリンクレー、タルク等を混合してなるコンパウンドをこれらの樹脂に配合して使用することもできる。
【0036】
合成樹脂の塗布は、通常抄紙後、インライン又はオフラインで行われるが、オフラインで行う場合は、コットン繊維と合成繊維とからなる混抄紙の裏面に壁紙用裏打紙を積層した後でも良い。合成樹脂の塗布量は、乾燥質量で1〜15g/m2 とすることが好ましく、3〜8g/m2 がさらに好ましい。塗布量が1g/m2 未満の場合は、所望の耐湿摩擦性の向上が達成できない場合もあり、20g/m2 を超えると表面が硬くなるとともに不経済となり、コットン繊維のソフトな風合いを損ねる傾向もみられる。
【0037】
また本発明による壁装材は、合成樹脂塗布層と撥水処理を併用して壁装材の防汚性をさらに向上させることができる。この場合は、前述の撥水処理のみを行う場合とは異なり、エンボス加工による凹凸模様を形成する前に合成樹脂塗布層を形成し、撥水処理は合成樹脂塗布層形成後であれば凹凸模様の形成前あるいは凹凸模様形成後の何れか、または両方行っても良い。
【0038】
【実施例】
以下に、本発明を実施例を挙げて具体的に記述するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
【0039】
[実施例1]
平均繊維長2mmのコットン繊維70質量%、平均繊維長5mmの芯鞘構造のポリエステル繊維(芯部分が融点255〜260℃の高融点ポリエステル繊維、鞘部分が融点110℃の低融点ポリエステル繊維)30質量%を均一に混合した水分散液に、紙抄造に必要な慣用的な抄造助剤を配合して紙料を調製し、抄紙機により密度0.33g/cm3 、坪量100g/m2 の混抄紙を抄造した。
【0040】
この混抄紙の裏面に、壁紙用裏打紙として坪量85g/m2 の壁紙用普通紙をエチレン−酢酸ビニル・エマルジョン接着剤(商品名「ボンドSP800」コニシ
株式会社製)を用いて貼り合わせて、厚さ0.45mm、坪量195g/m2 の壁装材原料シートを得た。
【0041】
この壁装材原料シートを、深度0.45mmの石目模様が彫刻されたエンボスロールと表面がフラットなバックロールとの間を通して、エンボスロールの表面温度200℃、圧力(線圧)260N/cm、加工速度30m/分の条件でシートの表面側にエンボス加工を行い、図1に示す構成の厚さ0.42mmの壁装材を得た。
【0042】
[実施例2]
平均繊維長2mmのコットン繊維70質量%、平均繊維長5mmの芯鞘構造のポリエステル繊維(芯部分が融点255〜260℃の高融点ポリエステル繊維、鞘部分が融点110℃の低融点ポリエステル繊維)30質量%を均一に混合した水分散液に、紙抄造に必要な慣用的な抄造助剤を配合して紙料を調製し、抄紙機により密度0.33g/cm3 、坪量83g/m2 の混抄紙を抄造した。さらにこの混抄紙100質量部に対して、難燃剤としてスルファミン酸グアニジンを乾燥質量で20質量部となるように含浸、乾燥させて難燃処理を施した密度0.41g/cm3 、坪量100g/m2 の混抄紙を得た。
【0043】
この混抄紙の裏面に、壁紙用裏打紙として坪量85g/m2 の壁紙用難燃紙をエチレン−酢酸ビニル・エマルジョン接着剤(商品名「ボンドSP800」)を用いて貼り合わせて、厚さ0.42mm、坪量195g/m2 の壁装材原料シートを得た。
【0044】
この壁装材原料シートを、深度0.45mmの石目模様が彫刻されたエンボスロールと表面がフラットなバックロールとの間を通して、エンボスロールの表面温度200℃、圧力(線圧)260N/cm、加工速度30m/分の条件でシートの表面側にエンボス加工を行い、0.40mmの壁装材を得た。
【0045】
[実施例3]
実施例1における壁装材原料シートの表面に印刷を施した後、水性タイプのシリコン系撥水剤を乾燥重量で2g/m2 になるように塗布、乾燥して1回目の撥水処理を施し、厚さ0.45mm、坪量197g/m2 の壁装材原料シートを得た。
【0046】
この壁装材原料シートを、実施例1と同様にしてエンボス加工を行った後、さらに、シリコン系撥水剤を乾燥重量で2g/m2 になるように塗布して2回目の撥水処理を施し、厚さ0.42mmの壁装材を得た。
【0047】
[実施例4]
実施例1における壁装材原料シートの表面に印刷を施した後、水性タイプのスチレン−アクリル系樹脂塗料を乾燥重量で4g/m2 になるように塗布、乾燥して合成樹脂塗布層を形成し、厚さ0.45mm、坪量200g/m2 の壁装材原料シートを得た。
【0048】
この壁装材原料シートを、実施例1と同様にしてエンボス加工を行って、厚さ0.42mmの壁装材を得た。
【0049】
[実施例5]
実施例1における壁装材原料シートの表面に、水性タイプのスチレン−アクリル系樹脂塗料を乾燥重量で4g/m2 になるように塗布、乾燥して合成樹脂塗布層を形成した後、印刷による化粧加工を施し、厚さ0.45mm、坪量200g/m2 の壁装材原料シートを得た。
【0050】
この壁装材原料シートを、実施例1と同様にしてエンボス加工を行って、厚さ0.42mmの壁装材を得た。
【0051】
[実施例6]
実施例4で得られた壁装材原料シートに、実施例1と同様にしてエンボス加工を行った後、さらに、シリコン系撥水剤を乾燥重量で2g/m2 になるように塗布して撥水処理を施し、厚さ0.42mmの壁装材を得た。
【0052】
[比較例1]
実施例1における混抄紙を、コットン繊維100質量%からなる紙に代えた以外は、実施例1と同様にして、裏面に壁紙用裏打紙の貼り合わせ、厚さ0.45mm、坪量195g/m2 の壁装材原料シートを得た。
【0053】
この壁装材原料シートに、実施例1と同様にしてエンボス加工を行い、厚さ0.0.44mmの壁装材を得た。
【0054】
[比較例2]
実施例1における混抄紙を、芯鞘構造のポリエステル繊維100質量%からなる紙に代えた以外は、実施例1と同様にして、裏面に壁紙用裏打紙の貼り合わせ、厚さ0.40mm、坪量195g/m2 の壁装材原料シートを得た。
【0055】
この壁装材原料シートに、実施例1と同様にしてエンボス加工を行い、厚さ0.0.30mmの壁装材を得た。
【0056】
前記実施例1〜6および比較例1〜2で得られた壁装材について、エンボス加工性、印刷加工性、ボリューム感、難燃性、耐湿摩擦性、型崩れ性、撥水性、防汚性、風合いを以下の基準に従って、評価した。
【0057】
〈エンボス加工性の評価〉
壁装材の表面に形成された凹凸模様を目視にて観察し、下記の基準に従って評価した。
○:凹凸感に優れたエンボス模様が形成された。
△:エンボス模様は形成されたが凹凸感に乏しかった。
×:ほとんど凹凸がなく、凹凸感に乏しかった。
【0058】
〈印刷加工性の評価〉
壁装材原料シートの印刷状態を目視にて観察し、印刷適性及び印刷状態の安定性を標準サンプル(ビニル壁紙の印刷見本)と比較した。
○ :標準サンプルとほぼ同等。
○△:印刷適性は標準サンプルより僅かに劣る。
△ :標準サンプルより劣るが、使用できる。
× :標準サンプルより非常に劣り、使用できない。
【0059】
〈ボリューム感の評価〉
壁装材の凸部の厚みを測定し、エンボス加工前の厚みとの差(減少率)により判定した。
○:厚みの減少率が20%未満であった。
△:厚みの減少率が20%以上、35%未満であった。
×:厚みの減少率が35%以上であった。
【0060】
〈難燃性の評価〉
壁装材をJIS A 1322(1966)の基準に従って難燃性を評価した。
○:難燃性が優れていた。
△:難燃性が不十分であった。
×:ほとんど難燃性がなかった。
【0061】
〈耐湿摩擦性の評価〉
壁装材をJIS A 6921(1998)の試験方法に基づき湿潤摩擦試験を行い、摩擦回数25回後の表面状態を目視にて観察し、下記の基準に従って評価した。
○ :表面状態に特に変化は見られなかった。
○△:表面が僅かに削れたように見える。
△ :表面が削れて紙粉が発生した。
× :表面が削れて印刷層が取れてしまった。
【0062】
〈型崩れ性の評価〉
壁装材を水に30分間浸漬する。その後直ちに施工用ローラーにて壁装材表面を5往復ローラー掛けし、凹凸模様の変化を目視にて観察する。その結果を下記の基準に従って評価した。
○:凹凸模様に変化は見られなかった。
△:凹凸模様が潰れて形状が変化した。
×:凹凸模様が潰れてなくなってしまった。
【0063】
〈撥水性の評価〉
壁装材の表面に、染料で色をつけた水0.1ccをスポイトにてたらした後、水が浸透するまでの時間を測定し、その結果を下記の基準に従って評価した。
○ :水が浸透するまでの時間が10分以上。
○△:水が浸透するまでの時間が5分以上10分未満。
△ :水が浸透するまでの時間が1分以上5分未満。
× :水が浸透するまでの時間が1分以未満。
【0064】
〈防汚性の評価〉
ホコリ汚れを想定して作成した汚染物を壁装材表面に擦り付け、24時間放置後水を含ませた布で拭き取り、汚れの除去状態を目視にて観察する。その結果を下記の基準に従って評価した。
○ :汚れが残らない。
○△:殆ど汚れが残らない。
△ :やや汚れが残る。
× :かなり汚れが残る。
【0065】
〈風合いの評価〉
壁装材のソフト感及び表面タッチを下記の基準に従って評価した。
○:壁装材自体がソフトで、表面タッチもさらっとしている。
△:壁装材自体はソフトであるが、表面タッチががさついている。
×:壁装材自体が硬く、表面タッチもがさついている。
【0066】
【表1】
Figure 0003941458
【0067】
表1に示す如く、本発明の実施例1から実施例6の壁装材は、エンボス加工性、印刷加工性、ボリューム感、型崩れ性、風合いについては、すべて優れていた。また、その他の機能性及び物性も、必要に応じて難燃処理、撥水処理、合成樹脂塗布層の形成及び合成樹脂塗布層の形成と撥水処理の組み合わせにより、優れた性能が得られることが実証された。例えば、難燃性については実施例2、耐湿摩擦性については実施例4、実施例5、実施例6、撥水性及び防汚性については、実施例3、実施例4、実施例5、実施例6の壁装材で優れた結果が示されている。
【0068】
これに対して、コットン繊維のみからなる紙を用いた比較例1は、エンボス加工性、耐湿摩擦性及び型崩れ性が劣り、合成繊維のみからなる紙を用いた比較例2は、ボリューム感の低下と風合いの悪さが見られた。
【0069】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明の壁装材は、コットン繊維を主材とした混抄紙をベースとしたものであるため、燃焼時に塩化水素等の有害ガスを発生することがなく、コットン繊維の持つボリューム感とソフトな風合いをもたらすことができる。
【0070】
また、コットン繊維と混抄される合成繊維として、エンボス加工時に溶融する熱可塑性合成繊維を用いることにより、エンボス加工時に合成繊維が溶けて融着し、繊維間の結合力が高まるため、優れた凹凸模様が形成されるとともに、凹凸模様に型崩れ防止効果も付与することができる。
【0071】
さらに、必要に応じて難燃処理、撥水処理、合成樹脂塗布層の形成及びこれらの加工を組み合わせることにより、難燃性、撥水性、耐湿摩擦性、防汚性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の壁装材の実施態様を示す模式的断面図である。
【符号の説明】
1:混抄紙
2:壁紙用裏打紙
3:凹凸模様

Claims (13)

  1. コットン繊維と合成繊維との混合割合が質量%比で50:50〜95:5であるコットン繊維と合成繊維とからなる混抄紙と、前記混抄紙の裏面に積層された壁紙用裏打紙とからなり、前記混抄紙の表面側にエンボス加工による凹凸模様が形成されていることを特徴とする壁装材。
  2. 前記合成繊維は、エンボス加工時に溶融する融点を持つ熱可塑性合成繊維であることを特徴とする請求項1に記載の壁装材。
  3. 前記混抄紙の表面に印刷による化粧加工が施されていることを特徴とする請求項1〜2のいずれか1項に記載の壁装材。
  4. 前記混抄紙が難燃処理されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の壁装材。
  5. 前記混抄紙の表面が撥水処理されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の壁装材。
  6. 前記混抄紙の表面に合成樹脂塗布層を形成し、前記合成樹脂塗布層の表面側に混抄紙と合成樹脂塗布層とを一体化したエンボス加工による凹凸模様が形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の壁装材。
  7. 前記合成樹脂塗布層の表面が撥水処理されていることを特徴とする請求項6項に記載の壁装材。
  8. コットン繊維と合成繊維との混合割合が質量%比で50:50〜95:5であるコットン繊維と合成繊維とからなる混抄紙を抄造する工程と、前記混抄紙の裏面に壁紙用裏打紙を積層する工程と、裏面に壁紙用裏打紙を積層した前記混抄紙を、加熱されたエンボスロールとバックロールとの間隙を通して、前記混抄紙の表面側にエンボスロールを圧接することによりエンボス加工を施す工程とからなることを特徴とする壁装材の製造方法。
  9. 前記混抄紙の表面に印刷による化粧加工を施す工程をさらに含むことを特徴とする請求項8に記載の壁装材の製造方法。
  10. 前記混抄紙に難燃処理する工程をさらに含むことを特徴とする請求項8または9に記載の壁装材の製造方法。
  11. 前記混抄紙の表面を撥水処理する工程をさらに含むことを特徴とする請求項8〜10のいずれか1項に記載の壁装材の製造方法。
  12. 前記混抄紙の表面に合成樹脂塗布層を形成する工程をさらに含み、裏面に壁紙用裏打紙を積層し表面に合成樹脂塗布層を形成した混抄紙をエンボス加工することを特徴とする請求項8〜10のいずれか1項に記載の壁装材の製造方法。
  13. 前記合成樹脂塗布層の表面を撥水処理する工程をさらに含むことを特徴とする請求項12に記載の壁装材の製造方法。
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