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JP3721811B2 - 蛍光体及びそれを用いた気体放電デバイス - Google Patents

蛍光体及びそれを用いた気体放電デバイス Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はプラズマディスプレイパネル、照明及び各種ランプ等の気体放電デバイスに使用する蛍光体及びそれを用いた気体放電デバイスに係り、特に、気体放電デバイスの始動特性を向上できる蛍光体に関する。
【0002】
【従来技術】
蛍光ランプ或いはプラズマディスプレイパネル等は、基本的に、放電空間において生成された紫外線放射エネルギーで蛍光体を高エネルギー状態に励起し、低エネルギー状態に遷移時に発生する波長変換されたエネルギーを蛍光として外部に取り出し利用している。このような蛍光体を利用するデバイスは、その放電空間内壁に蛍光体粒子が層状に塗布された発光スクリーンが形成されるため、その放電モードが変化することが知られている。通常、蛍光体を塗布した場合、その放電開始電圧は高くなる傾向にある。これは蛍光体が絶縁体であるため、これを塗布する事により放電が阻害されるからである。また、蛍光体表面には電子が帯電し易く、いわゆるチャージアップ現象が生じ、放電開始電圧の上昇を招く場合もある。
【0003】
プラズマディスプレイパネルは、表示セルと呼ばれる小さな蛍光灯を多数並べたものであるが、放電開始電圧が高くなると、放電の応答性が悪くなり、表示セルの不点灯の原因となる。従って、そのような不良を低減するため、放電開始電圧をできるだけ低くすることが望まれている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述した事情に鑑みなされたもので、その目的とするところは、気体放電デバイスの放電開始電圧を低減させ、始動特性の優れた気体放電デバイスを実現するための蛍光体を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、仕事関数の低い化合物を蛍光体粒子表面に被覆または蛍光体粒子に混合することで気体放電デバイスの放電開始電圧を低減できることを見いだし本発明を完成させるに至った。
【0006】
即ち、本発明の目的は、下記(1)〜(4)の構成により達成することができる。
(1) 仕事関数が3.0eV以下である化合物が、蛍光体に対し0.001〜30重量%の範囲蛍光体粒子表面に被覆されているか、又は蛍光体粒子と混合されていることを特徴とする蛍光体。
(2) 前記化合物の分光反射率は可視領域において硫酸バリウム白色標準に対し60%以上であることを特徴とする前記(1)に記載の蛍光体。
(3) 前記化合物の平均粒径は0.005〜10μmの範囲であることを特徴とする前記(1)または(2)に記載の蛍光体。
(4) 前記(1)〜(3)の蛍光体をその蛍光面に具備する気体放電デバイス。
【0007】
【発明の実施の形態】
仕事関数とは、固体内から電場がほとんど0に等しい空間内に電子を移すのに要する最小エネルギーのことであり、これは同じ物体でも内部構造や表面状態に依存し敏感にかわる。本発明の蛍光体は、仕事関数が3.0eV以下の化合物が蛍光体粒子表面に被覆されているか、又は蛍光体粒子に混合されている。具体的な仕事関数の数値は、電子放出特性便覧(日ソ通信社)のリチャードソン仕事関数のデータを基にした。本発明に使用される低仕事関数の化合物としては、例えばY23、ZrO2、La23、Pr611、Nd23、Sm23、Eu23、Gd23、Tb23、Dy23、Yb23等の金属酸化物、5BaO・Nb25、一般式nBaO・HfO2(但しn=2、3、5、7)で表されるハフニウム酸バリウム、一般式nBaO・ReO2(但しn=1、2、3、5、7)で表されるレニウム酸バリウム、2BaO・WO3、3BaO・WO3、2BaO・SrO・WO3、BaO・2SrO・WO3、3SrO・WO3、2SrO・CaO・WO3、3CaO・WO3、2CaO・BaO・WO3、CaO・2BaO・WO3、BaO・SrO・CaO・WO3、3BaO・Al23、3BaO・0.5CaO・Al23等の複合酸化物、或いはLaB6、YB6、GdB6、ScB6等のホウ化物等を挙げることができる。
【0008】
また、低仕事関数の化合物の被覆或いは添加量は、蛍光体に対し0.001〜30重量%の範囲であることが好ましく、更に好ましくは0.01〜10重量%の範囲である。なぜならば、0.001重量%以下では被覆或いは添加した効果がほとんどみられず、逆に、30重量%以上では始動電圧は低下するが、この化合物は非発光物質であるため当然輝度低下の原因となるからである。
【0009】
また、上記化合物の反射率が低い場合、励起光、及び蛍光体からの発光を吸収してしまい輝度低下の原因につながる。従って、この化合物は分光反射率が可視領域において硫酸バリウム白色標準に対し60%以上であることが好ましく、更に好ましくは80%以上とする。
【0010】
上記化合物の平均粒径は、0.005〜10μmの範囲であることが好ましく、更に好ましくは0.01〜5μmの範囲とする。なぜならば、本発明の蛍光体は、蛍光体層を形成する際には、一般の塗布方法(ディップ法、スプレー法、フラッシュ法、スクリーン法、沈降法、回転法等)を用いるため、その粒径は取り扱いやすい範囲にあることが望ましい。また、平均粒径が10μmよりも大きいと被覆或いは添加した効果がなくなってしまう。
【0011】
本発明では、仕事関数が3.0eV以下である低仕事関数の化合物を蛍光体粒子に被覆、又は混合することにより、この蛍光体を用いた気体放電デバイスの放電開始電圧を低下させることができる。その理由としては、蛍光体層に存在する低仕事関数の化合物が放電空間内へ電子を放出するため、これが引き金となって低電圧で放電が開始できる。また、蛍光体層表面に電子が帯電し、チャージアップ現象が生じるのを防ぐことができる。
【0012】
<蛍光体に被覆する場合>
蛍光体に上記仕事関数の低い化合物を被覆する方法としては、その化合物を蛍光体懸濁液に必要量添加し、混合、乾燥することにより仕事関数の低い化合物を蛍光体粒子表面に被覆することができる。この時、仕事関数の低い化合物に溶媒を添加、混合し予め分散させてから、蛍光体懸濁液に添加する方が効果的である。
【0013】
<蛍光体に混合する場合>
蛍光体に上記仕事関数の低い化合物を混合するには、乳鉢、ボールミル、ミキサーミル等を用いて十分に混合し、蛍光体粒子と均一に混合されることが好ましい。
【0014】
気体放電デバイスの蛍光面を形成するには、従来から使用されている方法を適用することができる。具体的には、蛍光体をバインダー液に懸濁させた蛍光体塗布スラリーにおいて、仕事関数の低い化合物が蛍光体に対して0.001〜10重量%添加されている蛍光体塗布スラリーを調製し、これを塗布して蛍光面を形成することでも同様な効果を発揮する。
【0015】
本発明に使用する蛍光体は、ランプ用蛍光体やプラズマディスプレイ用蛍光体などの気体放電デバイス用蛍光体であれば全て使用できる。例えばランプ用蛍光体としては、アンチモン付活ハロリン酸カルシウム蛍光体に代表されるハロリン酸塩蛍光体、2価のユーロピウム付活ピロリン酸ストロンチウムに代表されるリン酸塩蛍光体、マンガン付活ケイ酸亜鉛蛍光体に代表される珪酸塩蛍光体、タングステン酸カルシウムに代表されるタングステン酸塩蛍光体、2価ユーロピウム付活アルミン酸バリウムマグネシウム蛍光体に代表されるアルミン酸塩蛍光体、3価のユーロピウム付活酸化イットリウム蛍光体に代表される希土類蛍光体等を挙げることができる。またプラズマディスプレイ用蛍光体としては、BaMgAl1017:Mn蛍光体、Zn2SiO4:Mn蛍光体、(Y、Gd)BO3:Eu蛍光体、YBO3:Eu蛍光体、或いはY23:Eu等を挙げることができる。
【0016】
【実施例】
以下、本発明を実施例により説明する。
【0017】
[実施例1]
BaCO3、CaCO3、WO3をモル比がBa:Ca:W=2:1:1となるように秤量し、これらをボールミルで2時間混合した。その混合物を空気雰囲気中、1400℃で2時間焼成し、平均粒径2.0μm、反射率が硫酸バリウム白色標準に対して90%である2BaO・CaO・WO3複合酸化物を得た。ここで、平均粒径は空気透過法によるフィッシャー・サブ・シーブ・サイザー(F.S.S.S)を用いて測定した。
【0018】
得られた2BaO・CaO・WO3複合酸化物10gに、ニトロセルロースを1重量%含む酢酸ブチル溶液90gを添加し、3mmφジルコニアビーズ200gを用いて2時間混合して、2BaO・CaO・WO3複合酸化物を10重量%含む1%ニトロセルロース−酢酸ブチルスラリーを得た。
【0019】
得られた2BaO・CaO・WO3複合酸化物の1%ニトロセルロース−酢酸ブチルスラリー5gと、アンチモン・マンガン付活ハロリン酸塩蛍光体100gと、1%ニトロセルロース−酢酸ブチル溶液100gとを混合して、蛍光体に対して0.5重量%の2BaO・CaO・WO3複合酸化物が混合された蛍光体塗布スラリーを調製した。
【0020】
この塗布スラリーを通常の方法に従い、ITO透明導電膜が施されたFL40バルブに塗布した後、乾燥して、600℃で5分間空気中でベーキングした。更にその後も通常の方法に従い、ラピッドスタート型蛍光ランプを作製した。
【0021】
[実施例2]
BaCO3、CaCO3、WO3の混合物を温度を1350℃にする以外は実施例1と同様の方法で、平均粒径1.0μm、反射率が硫酸バリウム白色標準に対して92%である2BaO・CaO・WO3複合酸化物を得た。
【0022】
その後も実施例1と同様の方法で、蛍光体に対して1.0重量%の2BaO・CaO・WO3複合酸化物が混合された蛍光体塗布スラリーを調製し、ラピッドスタート型蛍光ランプを作製した。
【0023】
[実施例3〜4]
BaCO3、SrCO3、WO3をモル比がBa:Sr:W=2:1:1となるように秤量、混合する以外は実施例1と同様の方法で平均粒径1.5μm、反射率が硫酸バリウム白色標準に対して88%である2BaO・SrO・WO3複合酸化物を得た。
【0024】
その後も実施例1と同様の方法で、蛍光体に対してそれぞれ、1.0重量%、10重量%のBaO・SrO・WO3複合酸化物が混合された蛍光体塗布スラリーを調製し、ラピッドスタート型蛍光ランプを作製した。
【0025】
[実施例5〜6]
BaCO3、SrCO3、CaCO3、WO3をモル比がBa:Sr:Ca:W=1:1:1:1となるように秤量、混合する以外は実施例1と同様の方法で平均粒径1.4μm、反射率が硫酸バリウム白色標準に対して90%であるBaO・SrO・CaO・WO3複合酸化物を得た。
【0026】
その後も実施例1と同様の方法で、蛍光体に対してそれぞれ、0.5重量%、10重量%のBaO・SrO・CaO・WO3複合酸化物が混合された蛍光体塗布スラリーを調製し、ラピッドスタート型蛍光ランプを作製した。
【0027】
[実施例7〜9]
2BaO・CaO・WO3複合酸化物の代わりに、平均粒径が2.5μm、反射率は硫酸バリウム白色標準に対して80%であるLaB6を蛍光体塗布スラリーに混合する以外は実施例1と同様の方法で、蛍光体に対してそれぞれ、0.1重量%、0.5重量%、5.0重量%のLaB6が混合された蛍光体塗布スラリーを調製し、ラピッドスタート型蛍光ランプを作製した。
【0028】
[実施例10]
実施例1で得られた2BaO・CaO・WO3複合酸化物を10重量%含む1%ニトロセルロース−酢酸ブチルスラリー5gと、アンチモンマンガン付活ハロリン酸塩蛍光体100gと、酢酸ブチル溶液50gとをよく混合後、乾燥し、アンチモンマンガン付活ハロリン酸塩蛍光体に2BaO・CaO・WO3複合酸化物が0.5%被覆された蛍光体を得た。
【0029】
得られた蛍光体100gと、1%ニトロセルロース−酢酸ブチル溶液100gとを混合して蛍光体塗布スラリーを調製し、その後は実施例1と同様にしてラピッドスタート型蛍光ランプを作製した。
【0030】
[実施例11]
実施例5で得られたBaO・SrO・CaO・WO3複合酸化物を10重量%含む1%ニトロセルロース−酢酸ブチルスラリー5gと、アンチモンマンガン付活ハロリン酸塩蛍光体100gと、酢酸ブチル溶液50gとをよく混合後、乾燥し、アンチモンマンガン付活ハロリン酸塩蛍光体にBaO・SrO・CaO・WO3複合酸化物が0.5%被覆された蛍光体を得た。得られた蛍光体を用い、実施例10と同様の方法で蛍光体塗布スラリーを調製し、ラピッドスタート型蛍光ランプを作製した。
【0031】
[実施例12〜13]
実施例7で得られたLaB6を10重量%含む1%ニトロセルロース−酢酸ブチルスラリーをそれぞれ、1g、3gと、アンチモンマンガン付活ハロリン酸塩蛍光体100gと、酢酸ブチル溶液50gとをよく混合後、乾燥し、アンチモンマンガン付活ハロリン酸塩蛍光体にLaB6がそれぞれ、0.1%、0.5%被覆された蛍光体を得た。得られた蛍光体を用い、実施例10と同様の方法で蛍光体塗布スラリーを調製し、ラピッドスタート型蛍光ランプを作製した。
【0032】
[実施例14]
BaCO3、CaCO3、Al23をモル比がBa:Ca:Al=3:0.5:1となるように秤量し、これらをボールミルで2時間混合した。その混合物を空気雰囲気中、1300℃で2時間焼成し、平均粒径が2.3μm、反射率は硫酸バリウム白色標準に対して85%である3BaO・0.5CaO・Al23複合酸化物を得た。
【0033】
得られた3BaO・0.5CaO・Al23複合酸化物と、ニトロセルロースを1重量%含む酢酸ブチル溶液90gを、3mmφジルコニアビーズ200gを用いて2時間混合し、3BaO・0.5CaO・Al23複合酸化物を10重量%含む1%ニトロセルロース−酢酸ブチルスラリーを得た。
【0034】
得られた3BaO・0.5CaO・Al23複合酸化物を10重量%含む1%ニトロセルロース−酢酸ブチルスラリーを10gと、アンチモンマンガン付活ハロリン酸塩蛍光体100gと、酢酸ブチル溶液50gとをよく混合後、乾燥し、アンチモンマンガン付活ハロリン酸塩蛍光体に3BaO・0.5CaO・Al23複合酸化物が1.0%被覆された蛍光体を得た。得られた蛍光体を用い、実施例10と同様の方法で蛍光体塗布スラリーを調製し、ラピッドスタート型蛍光ランプを作製した。
【0035】
[実施例15]
実施例1で得られた2BaO・CaO・WO3複合酸化物5gと、アンチモンマンガン付活ハロリン酸塩蛍光体100gとをボールミルを用いて乾式で十分に混合した後、1%ニトロセルロース−酢酸ブチル溶液100gと混合して蛍光体塗布スラリーを調製し、その後は実施例1と同様にしてラピッドスタート型蛍光ランプを作製した。
【0036】
[比較例1]
アンチモン・マンガン付活ハロリン酸塩蛍光体100gと、1%ニトロセルロース−酢酸ブチル溶液100gとを混合して蛍光体塗布スラリーを調製した後、実施例1と同様の方法でラピッドスタート型蛍光ランプを作製した。
【0037】
[比較例2]
2BaO・CaO・WO3複合酸化物の代わりに、平均粒径が0.5μm、反射率が硫酸バリウム白色標準に対して100%であるMgO(仕事関数:3.1〜4.4eV 電子放出便覧引用)を蛍光体塗布スラリーに混合する以外は実施例1と同様の方法で、蛍光体に対して0.5重量%のMgOが混合された蛍光体塗布スラリーを調製し、ラピッドスタート型蛍光ランプを作製した。
【0038】
実施例1〜15、比較例1〜2で作製した蛍光ランプを点灯させ、以下のようにして評価した。始動電圧(Vs)は一定電流値におけるランプ点灯時に要する電圧を示す。また0時間および1000時間点灯後の光束を測定し、光束維持率を調べた。その結果を表1に示す。
【0039】
【表1】
Figure 0003721811
【0040】
表1に示すように、本発明の蛍光体を使用したラピッドスタート型蛍光ランプは、高い光束維持率を保持し、更に始動電圧を下げることができた。
【0041】
本実施例では、ラピッドスタート型蛍光ランプについて述べたが、他にも本発明の蛍光体を用いて形成された蛍光体層を有する気体放電デバイス、例えばプラズマディスプレイパネル、無電極放電ランプについても、同様に放電開始電圧が低減する。
【0042】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明の蛍光体を用いることにより、プラズマディスプレイパネル、照明及び各種ランプ等の気体放電デバイスの放電開始電圧が低下し、始動特性の向上が可能となる。

Claims (4)

  1. リチャードソン仕事関数が3.0eV以下の化合物である、一般式nBaO・HfO (但しn=2、3、5、7)で表されるハフニウム酸バリウム、2BaO・WO 、3BaO・WO 、2BaO・SrO・WO 、BaO・2SrO・WO 、3SrO・WO 、2SrO・CaO・WO 、3CaO・WO 、2CaO・BaO・WO 、CaO・2BaO・WO 、BaO・SrO・CaO・WO 或いは3BaO・0 . 5CaO・Al が、蛍光体に対し0.001〜30重量%の範囲蛍光体粒子表面に被覆されているか、又は蛍光体粒子と混合されていることを特徴とする蛍光体。
  2. 前記化合物の分光反射率は可視領域において硫酸バリウム白色標準に対し60%以上であることを特徴とする請求項1に記載の蛍光体。
  3. 前記化合物の平均粒径は0.005〜10μmの範囲であることを特徴とする請求項1または2に記載の蛍光体。
  4. 請求項1〜3の蛍光体をその蛍光面に具備する気体放電デバイス。
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