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JP3780496B2 - 弾性表面波フィルタ - Google Patents

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JP3780496B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、圧電基板上に複数の弾性表面波電極をラダー型に構成してなる弾性表面波フィルタに関し、特に、フィルタの通過帯域における低域側の肩特性を改善した弾性表面波フィルタに関する。
【0002】
【従来の技術】
移動体通信機器において、高周波用の帯域フィルタとして、複数の弾性表面波電極を圧電基板上に構成してなる弾性表面波フィルタが知られている。例えば、特開平5−183380号公報には、圧電基板上に複数の弾性表面波電極によりラダー型フィルタ回路を構成した弾性表面波フィルタが開示されている。
【0003】
図8は、上記先行技術に開示されている弾性表面波フィルタを説明するための模式的な回路図である。
従来の弾性表面波フィルタ510は、矩形の圧電基板520を用いて構成されている。圧電基板520上には、弾性表面波電極(不図示)からなる共振子530,540,550,560が配設されている。すなわち、図に示すように、入力端子570と出力端子580との間に構成される直列腕において共振子530,540が直列に接続されている(各共振子530,540を直列共振子と称す。また、共振子530,540を併せて直列共振子群と称す。以下同じ。)。また、直列腕とグランド電極590との間に、共振子550,560が並列に接続されている(各共振子550,560を並列共振子と称す。また、共振子550,560を併せて並列共振子群と称す。以下、同じ。)。なお、直列共振子530,540と並列共振子550,560とは入出力間において交互に配置されており、各並列共振子550,560は夫々インダクタンス555,565を介してグランド電極590に接続されている。
この直列共振子530と並列共振子550の1組で1段のラダー型フィルタを構成しており、同様に直列共振子540と並列共振子560の1組で1段のラダー型フィルタを構成している。
【0004】
従来の弾性表面波フィルタ510の動作原理は以下の通りである。図9は直列・並列共振子530〜560を形成する各弾性表面波電極の構造を説明する図である。図では1ポート型弾性表面波共振子の電極部分のみが模式的に示されている。
【0005】
図において、700は弾性表面波電極である。弾性表面波電極700は中央に配置されたIDT710の両側に反射器720,730を配置した構造を有する。
IDT710は、複数の電極指711を有する櫛歯状電極710aと、複数の電極指712を有する櫛歯状電極710bとを、互いの電極指711,712が間挿し合うように交叉して配置した構造を有する。なお、例えば、櫛歯状電極710aは入出力電極に接続され、また櫛歯状電極710bはグランド電極に接続される。
【0006】
このような構造の弾性表面波電極700のIDT710に入力された信号により励振された表面波が、反射器720,730で反射されて定在波とされ、反射器720,730間に閉じ込められ高いQ値を有する共振子として動作する。この弾性表面波電極700のインピーダンス特性においては、周知のように、共振周波数でインピーダンスが低くなる極が存在し、反共振周波数においてインピーダンスが高くなる極が現れる共振特性を有するようになる。
【0007】
このような構造の直列・並列共振子530〜560を有した弾性表面波フィルタ510では、弾性表面波電極700のインピーダンス特性を利用して所望の帯域幅を有する通過帯域を得ている。すなわち、各直列共振子530,540の共振周波数と、各並列共振子550,560の反共振周波数とを略一致させることにより、この間の周波数付近において入出力インピーダンスを特性インピーダンスと整合させており、それによって通過帯域を構成している。特にラダー型フィルタ回路では、弾性表面波電極700は所定のインピーダンス特性を有するため、直列共振子530,540の反共振周波数付近では非常に高インピーダンスとなり、逆に並列共振子550,560の共振周波数付近では非常に低インピーダンスとなるため、この特性を利用してラダー型フィルタ回路では、高域側の阻止域から通過帯域を介して低域側の阻止域を形成した幅広のフィルタ特性を得ることになる。
【0008】
このようなラダー型フィルタ回路において減衰極の減衰量を改善する方法として共振子に弾性表面波電極で形成したLC回路を設けたり(特開平9−232906)、外部接続時のワイヤ長を変えることでワイヤ自体のもつインダクタンス値を変化させ減衰極の位置を変え減衰量を調整する(特開平11−55067)技術が開示されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、近年の移動体通信システムにおいては、電波の有効利用のために規格が決められており、例えば、米国のPCS規格では受信帯域が1930〜1990MHz、送信帯域が1850〜1910MHz、送受信フィルタの通過帯域同士の間隔は20MHzとなり、受信帯域に隣接して送信帯域が形成されているため、受信用フィルタにおいては、広帯域を維持しつつ、充分な減衰量と通過帯域における低挿入損失を確保することが必要となる。従って、隣接する受信帯域の低域側(左肩側)において阻止域から通過帯域の急峻な特性が必要となるが、上述の特開平9−232906や特開平11−55067の何れの技術でもってしてもフィルタ特性における広帯域化・左肩側の急峻化の達成は困難であった。
【0010】
本発明は上述の課題に鑑みて案出されたものであり、その目的は、特別なLC回路等がなくても、広域化を維持しつつ、フィルタの通過帯域における低域側の急峻性を十分取ることができる弾性表面波フィルタを提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上述の課題を解決するために本発明は、圧電基板の表面に、入力端子と出力端子との間に複数の弾性表面波電極が直列接続された直列共振子群と、直列共振子群の各弾性表面波電極の入力端子側あるいは出力端子側とグランドとの間に複数の弾性表面波電極が並列に接続された並列共振子群とを配すると共に、直列共振子群の弾性表面波電極で形成される共振周波数と並列共振子群の弾性表面波電極で形成される反共振周波数を略一致させることでフィルタの通過帯域を形成した弾性表面波フィルタにおいて、
前記並列共振子群の弾性表面波電極のうち、一部の弾性表面波電極は、得られるQ値を他の弾性表面波電極で得られるQ値よりも劣化させたQ値劣化構造とすると共に、前記一部の弾性表面波電極で形成する共振周波数が他の並列共振子群の弾性表面波電極で形成する反共振周波数よりも低く、かつ他の並列共振子群の弾性表面波電極で形成する共振周波数よりも高くしたことを特徴とする弾性表面波フィルタを提供する。
【0012】
本発明の構成によれば、前記一部の弾性表面波電極はQ値劣化構造とし、その共振周波数が、他の並列共振子群の弾性表面波電極で形成する反共振周波数よりも低く、かつ他の並列共振子群の弾性表面波電極で形成する共振周波数よりも高くしたために、フィルタ特性において低域側の減衰極から通過帯域に入るまでの間に新たな減衰極が形成され、これによりフィルタの通過帯域が広帯域を確保しつつ、通過帯域の低域側の急峻度が大きくなり十分な肩特性を確保する事が可能となる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施例について図面を用いて説明する。
図1は本発明の実施の形態に係る弾性表面波フィルタの構造を示す図であり、図2は本発明の特徴を説明するための並列共振子の拡大図である。
図1において弾性表面波フィルタAは、圧電基板1の主面に、入力端子(IN)と出力端子(OUT)との間に複数の弾性表面波電極54,55,56が直列に接続された直列共振子群と、弾性表面波電極57,58,59,60が入出力端子(IN,OUT)とグランド(GND)に対して並列に接続された並列共振子群が形成されている。以下、直列共振子群の弾性表面波電極54〜56の夫々を直列共振子と称し、並列共振子群の弾性表面波電極57〜60の夫々を並列共振子と称す。
【0014】
直列共振子群の弾性表面波電極54,55,56及び並列共振子群の弾性表面波電極57,58,59,60は、何れも中央に櫛歯状のインターデジタルトランスデューサ(以下、IDT)54a〜60aを有し、その両側に反射器54b,54c,55b,55c・・・60b,60cを形成した構造を有する。
【0015】
圧電基板1は所定カット角、所定伝搬方向となるように矩形状に切断処理された水晶、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム、四ホウ酸リチウム等から成る。
また、弾性表面波電極54,55,56及び弾性表面波電極57,58,59,60は、例えば、アルミニウム薄膜からなり、その厚みは0.1〜0.3μmで所定のパターンに被着形成されている。また、IDT54a〜60a及びその両側の反射器54b,54c,55b,55c・・・60b,60cの電極指幅及び電極指間隔は、例えば、弾性表面波の波長λに対して略1/4λとなっている。
【0016】
IDT54a〜60aの構造としては、例えば、並列共振子群の弾性表面波電極57〜60のIDT57a〜60aの構造は図2(a)(b)に示すように、電極指A1及びそれに交叉する電極指A2が互いに交叉して配設されており、発生する弾性表面波の伝搬方向に直交して整列しており、例えば、電極指A1及び電極指A2の電極幅Pwと各電極指A1、A2の電極指間隔Ppは略同じ長さに設定されている。なお、本実施例では電極幅Pwと電極指間隔Ppの長さは略同じに設定したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、電極幅Pwと電極指間隔Ppの長さを異ならせたとしても本発明の同様の効果を得ることができる。
【0017】
61は入力端子であり、62は出力端子である。入力端子61から直列にIDT54a〜56aが接続され出力端子62につながっている。これらにIDT57a〜60aの一方側が各反射器57b,58c,59c,60bを通じて接続されており、他方側が各反射器57c,58b,59b,60cにより各グランド電極(GND)に接続されている。
【0018】
ここで、本発明では、図3に示すように、並列共振子群の弾性表面波電極57〜60の内、弾性表面波電極60は、得られるQ値を劣化させるQ値劣化構造となっている。更に、Q値劣化構造に加えて、弾性表面波電極60の共振周波数Frが並列共振子群の弾性表面波電極57〜59の反共振周波数Faよりも低く、かつ弾性表面波電極57〜59の共振周波数Frよりも高くになるようにした。
【0019】
ここで、Q値は一般的にQ=2πFL/R(F:共振周波数 L:インダクタンス R:共振抵抗)としてあらわされるが、本発明は、弾性表面波電極60の共振周波数Frがフィルタの通過帯域に近く、かつ弾性表面波電極60で得られるQ値を低くすることで通過帯域の左肩を急峻なものにすることを見出したものである。
【0020】
Q値を劣化させる程度としては、弾性表面波電極60の共振周波数Frでのインピーダンスが弾性表面波電極57〜59の共振特性中で共振周波数Frと反共振周波数Faで結ばれる軌跡に近づくように共振特性の挿入損失を劣化させると良い。
【0021】
Q値劣化構造としては、共振抵抗Rを高くするように形成すれば良く、高くするためには以下のような具体的構成とすると良い。
具体的に、弾性表面波電極60の各電極指A1、A2の対数が弾性表面波電極57〜59の各電極指A1、A2の対数に比べて少なくすることで共振抵抗Rが高くなりQ値を劣化させることができる。
また、弾性表面波電極60の各電極指A1、A2同士が交叉した長さPxが他の弾性表面波電極57〜59の各電極指同士が交叉した長さPxに比べて短くすることで共振抵抗Rを高くしてQ値を劣化させることができる。
【0022】
さらに、図4に示すように、弾性表面波電極601は櫛歯状電極から形成されたサブ電極61、62から構成され、そのサブ電極61、62が互いに直列に接続されている。この櫛歯状電極からなるサブ電極61は一方が入力端子(IN)と出力端子(OUT)を結ぶ線に接続される電極61aと、電極61aに対向する電極61bと、電極61aに接続するサブ電極62の一方の電極62aと、電極62aに対向してグランド側に接続される電極62bとが直列に接続されている。この直列接続のため、共振抵抗Rが図1の弾性表面波電極60に比べて高くなり、Q値を劣化させることができる。
【0023】
一方、弾性表面波電極60で形成する共振周波数Frが他の並列共振子群の弾性表面波電極57〜59で形成する反共振周波数Faよりも低く、かつ他の並列共振子群の弾性表面波電極57〜59で形成する共振周波数Frよりも高くする為の手段としては、図2に示すように、並列共振子群の弾性表面波電極57〜60の電極指の幅Pwと各電極指同士の電極指間隔Ppで構成する電極指ピッチを、弾性表面波電極60よりも他の弾性表面波電極57〜59が長くなるように形成するとよい。この場合、電極指ピッチを変えるのは、並列共振子群の弾性表面波電極57〜60の各電極指の幅Pwを略同じとし、各電極指同士の電極指間隔Ppを変更する方法、各電極指同士の電極指間隔Ppを略同じとし、各電極指の幅Pwを変える方法及び並列共振子群の弾性表面波電極57〜60の各電極指の幅Pwを変更し、かつ各電極指同士の電極指間隔Ppを変更する方法があげられる。
【0024】
また、弾性表面波電極60のメタライゼーションレシオ(電極指ピッチに対する電極指幅Pwの比をいう。以下同じ)よりも他の並列共振子群の弾性表面波電極57〜59のメタライゼーションレシオが大きくなるように形成する方法がある。例えば、図2(a)に示す弾性表面波電極57〜59について、電極指A1、A2の電極指幅をPw=0.500μm、電極指間隔Pp=0.500μmとし、図2(b)に示す弾性表面波電極60について、電極指幅をPw=0.400μm、電極指間隔Pp=0.600μmとすることで、得られる共振周波数を異ならせることができる。
【0025】
また、他の方法としては、弾性表面波電極60の電極厚みを他の並列共振子群の弾性表面波電極57〜59の電極厚みに比べて薄くしても良い。
【0026】
なお、上述では並列共振子群の1つの弾性表面波電極60で並列共振子群の他の弾性表面波電極57〜59により形成される減衰極よりも高周波側に極を形成しているが、これに限定されることはなく並列共振子群の2つ以上の弾性表面波電極で形成してもよい。このような構成にしても同様の効果が得られる。
【0027】
かくして、本発明の弾性表面波フィルタAによれば、従来、並列共振子群の弾性表面波電極57〜60の減衰極が通過帯域の低域側の減衰極を形成するのに用いていたのに対して、並列共振子群の一つの弾性表面波電極60をQ値劣化構造とすると共に、その共振周波数Frが、他の弾性表面波電極57〜59の反共振周波数Faよりも低く、かつ他の弾性表面波電極57〜59の共振周波数Frよりも高くなるようにしたために、フィルタ特性において低域側の減衰極から通過帯域に入るまでの間で新たにもう1つの極が形成され、これによりフィルタの通過帯域が広帯域を確保しつつ、通過帯域の低域側の急峻度が大きくなり十分な肩特性を確保する事が可能となる。しかも、通過帯域減衰特性はほとんど変化しないため、従来の設計方法はそのまま使用できるものである。
【0028】
また、従来は外部引きまわし電極であるアルミ線ワイヤや金線ワイヤのワイヤ長を変えることでワイヤのもつインダクタンス値を変えて低域側の減衰域の減衰量を確保しており結線状態により極の位置が微妙にずれ、特性検査の歩留まりを落とす原因になっていたが、本発明によれば、そのようなものを利用せずに通過帯域低域側肩特性を急峻にできるため安定した歩留まりも確保できるものである。
【0029】
【実施例】
次に本発明の作用効果を確認するために本発明の実施例を示す。
(実施例1)
圧電基板1としては42°Y−Xタンタル酸リチウム基板を用い、その表面にAlまたはAl合金からなる直列共振子の弾性表面波電極54,55,56及び並列共振子の弾性表面波電極57,58,59,60を図1の配線のように形成した。これにより、中心周波数1.96GHzのラダー型SAWフィルタを製作した。
【0030】
この場合、直列共振子の弾性表面波電極54,55,56の交叉幅PxはPx=10〜15λ、並列共振子の弾性表面波電極57,58,59の交叉幅Pxは何れもPx=30λ、弾性表面波電極60の交差幅PxはPx=20λとした。また、直列共振子の弾性表面波電極54,55,56の電極対数を95対、並列共振子の弾性表面波電極57,58,59の電極対数を45対、弾性表面波電極60の電極対数を15対としている。
また、弾性表面波電極57、58,59の電極指幅Pw及び電極指間隔Ppの双方を、Pp、Pw=0.503μmとし弾性表面波電極60の電極指幅Pwと電極指間隔Ppの双方をPw、Pp=0.500μmとして弾性表面波電極57〜59よりも電極指ピッチを短くした。なお、直列共振子の弾性表面波電極54、55、56の電極指幅Pwと電極指間隔Ppの双方をPp、Pw=0.4845μmとし、電極幅Pw及び電極指間隔Ppは同じ長さに設定されている。
【0031】
このように形成した弾性表面波フィルタAのフィルタ特性を図5に示す。このとき、図5の縦軸は減衰量(5dB/div)であり、横軸は規格化周波数(中心周波数f0:1960MHz、span:196MHz)である。
【0032】
図5において0.97近傍に並列共振子の弾性表面波電極57〜59による減衰極が形成されている。さらに、1.04近傍に直列共振子の弾性表面波電極54,55,56による減衰極が形成されている。
【0033】
図5に示すように、通過帯域低域側の極の高周波側に並列共振子の弾性表面波電極60による減衰極Bが形成されることで低域側の通過域肩特性が急峻となり通過域特性が広帯域となっていることがわかる。
これに対し比較例として、直列共振子の弾性表面波電極54,55,56の交叉幅Pxは何れもPx=10〜15λ、並列共振子の弾性表面波電極57〜60の交叉幅Pxは何れもPx=30λとして同じ長さに形成し、また並列共振子の弾性表面波電極57〜60のPwおよびPpは何れもPw,Pp=0.503μmとした。
また、直列共振子の弾性表面波電極54,55,56の電極対数を95対、並列共振子の弾性表面波電極57〜60の電極対数を45対とし、電極幅Pw及び電極指間隔Ppを同じ長さに設定した比較例の弾性表面波フィルタを形成してフィルタ特性を図6に示した。図6の縦軸も減衰量(5dB/div)であり、横軸は規格化周波数(中心周波数f0:1960MHz、span:196MHz)とする。
このフィルタ特性によれば、通過帯域の低域側肩特性のスペックを十分満足するものが得られてないことがわかる。
(実施例2)
図1で示す弾性表面波電極60を図4で示す弾性表面波電極601(直列に接続されたサブ電極61、62の構造)とする以外は実施例1と同一条件で実験を行った。なお、サブ電極61、62の何れもが交叉幅PxはPx=20λ、電極指幅Pw及び電極指間隔Ppの双方をPp、Pw=0.5μmとした。また、電極対数を45対としている。
このように実験されたフィルタ特性を図7に示す。この結果でもサブ電極61,62で構成される直列共振子の弾性表面波電極601が図1で示した弾性表面波電極60に比べて共振抵抗が増加して弾性表面波電極601のQ値が他の並列共振子群の弾性表面波電極57〜59のQ値に比べて劣化しており、さらに弾性表面波電極60の共振周波数を、弾性表面波電極57〜59の反共振周波数よりも低く、かつ弾性表面波電極57〜59の共振周波数よりも高くしているので、通過帯域の左肩に新たな減衰極が発生し、通過帯域の低域側の急峻度が大きくなっていることが理解できる。
【0034】
【発明の効果】
本発明の構成によれば、一部の弾性表面波電極はQ値劣化構造とし、その共振周波数を、他の弾性表面波電極の反共振周波数よりも低く、かつ他の弾性表面波電極の共振周波数よりも高くしたために、フィルタ特性において低域側の減衰極から通過帯域に入るまでの間に新たな減衰極が形成され、これによりフィルタの通過帯域が広帯域を確保しつつ、通過帯域の低域側の急峻度が大きくなり十分な肩特性を確保する事が可能となる弾性表面波フィルタを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の弾性表面波フィルタの平面図である。
【図2】(a)は弾性表面波電極57〜59を示す図、(b)は弾性表面波電極60の構成を示す図である。
【図3】本発明の弾性表面波電極57〜59と弾性表面波電極60との共振特性を示す図である。
【図4】本発明の他の弾性表面波フィルタを説明する回路図である。
【図5】本発明のフィルタ特性を示す特性図である。
【図6】比較例のフィルタ特性を示す特性図である。
【図7】本発明の他の弾性表面波フィルタにおいてのフィルタ特性を示す特性図である。
【図8】従来の弾性表面波フィルタを説明するための模式的平面図である。
【図9】1ポート型弾性表面波電極を説明するための拡大平面図である。
【符号の説明】
A:弾性表面波フィルタ
1:圧電基板
54〜56:直列共振子の弾性表面波電極
57〜60:並列共振子の弾性表面波電極
61:入力端子
62:出力端子

Claims (7)

  1. 圧電基板の表面に、入力端子と出力端子との間に複数の弾性表面波電極が直列接続された直列共振子群と、直列共振子群の各弾性表面波電極の入力端子側あるいは出力端子側とグランドとの間に複数の弾性表面波電極が並列に接続された並列共振子群とを配すると共に、直列共振子群の弾性表面波電極で形成される共振周波数と並列共振子群の弾性表面波電極で形成される反共振周波数を略一致させることでフィルタの通過帯域を形成した弾性表面波フィルタにおいて、
    前記並列共振子群の弾性表面波電極のうち、一部の弾性表面波電極は、得られるQ値を他の弾性表面波電極で得られるQ値よりも劣化させたQ値劣化構造とすると共に、前記一部の弾性表面波電極で形成する共振周波数が他の並列共振子群の弾性表面波電極で形成する反共振周波数よりも低く、かつ他の並列共振子群の弾性表面波電極で形成する共振周波数よりも高くしたことを特徴とする弾性表面波フィルタ。
  2. 弾性表面波電極を電極指が互いに交叉するように対向配置された櫛歯状電極で構成しており、前記弾性表面波電極の電極指の幅と電極指同士の電極指間隔とからなる電極指ピッチを、前記一部の弾性表面波電極よりも前記並列共振子群の他の弾性表面波電極が長くなるように形成することで、前記一部の弾性表面波電極で形成する共振周波数が他の並列共振子群の弾性表面波電極で形成する反共振周波数よりも低く、かつ他の並列共振子群の弾性表面波電極で形成する共振周波数よりも高くしたことを特徴とする請求項1記載の弾性表面波フィルタ。
  3. 弾性表面波電極を電極指が互いに交叉するように対向配置された櫛歯状電極で構成しており、弾性表面波電極の電極指の幅と各電極指同士の電極指間隔とからなる電極指ピッチに対する電極指の幅の比を、前記一部の弾性表面波電極よりも前記並列共振子群の他の弾性表面波電極が大きくなるように形成することで、前記一部の弾性表面波電極で形成する共振周波数が他の並列共振子群の弾性表面波電極で形成する反共振周波数よりも低く、かつ他の並列共振子群の弾性表面波電極で形成する共振周波数よりも高くしたことを特徴とする請求項1記載の弾性表面波フィルタ。
  4. 前記弾性表面波電極を電極指が互いに交叉するように対向配置された櫛歯状電極で構成すると共に、前記一部の弾性表面波電極の電極厚みを他の並列共振子群の弾性表面波電極の電極厚みに比べて薄く形成することで、前記一部の弾性表面波電極で形成する共振周波数が他の並列共振子群の弾性表面波電極で形成する反共振周波数よりも低く、かつ他の並列共振子群の弾性表面波電極で形成する共振周波数よりも高くしたことを特徴とする請求項1記載の弾性表面波フィルタ。
  5. 前記Q値劣化構造として、前記弾性表面波電極を電極指が互いに交叉するように対向配置された櫛歯状電極から構成すると共に、前記一部の弾性表面波電極の各電極指の対数を他の並列共振子群の弾性表面波電極の各電極指の対数に比べて少なくしたたことを特徴とする請求項1記載の弾性表面波フィルタ。
  6. 前記Q値劣化構造として、前記弾性表面波電極を電極指が互いに交叉するように対向配置された櫛歯状電極から構成すると共に、前記一部の弾性表面波電極の各電極指同士が交叉した長さを他の並列共振子群の弾性表面波電極の各電極指同士が交叉した長さに比べて短くしてなること特徴とする請求項1記載の弾性表面波フィルタ。
  7. 前記Q値劣化構造として、前記弾性表面波電極を電極指が互いに交叉するように対向配置された櫛歯状電極から構成すると共に、前記一部の弾性表面波電極が前記櫛歯状電極から形成された複数のサブ電極の直列接続からなることを特徴とする請求項1記載の弾性表面波フィルタ。
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