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JP3772071B2 - 誘導加熱用インバータ回路を用いた定着装置 - Google Patents

誘導加熱用インバータ回路を用いた定着装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、複写機,プリンタ,ファクシミリ等の画像形成装置における定着装置に関し、さらに詳しく言えば誘導加熱型定着装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
複写機,プリンタ,ファクシミリ等の画像形成装置における定着装置として、定着ローラの周壁(心金)を誘導電流によってジュール発熱させるようにした誘導加熱方式のものが知られている。
【0003】
誘導加熱型定着装置では、誘導コイルを備えた電磁誘導加熱手段を配置し、これに高周波電流を流して誘導磁束を発生させ、この誘導磁束によりローラ外周部の導電層に誘導電流(渦電流)を発生させ、誘導電流に伴うジュール熱によりローラ表面を所定の温度となるように加熱・制御している。通常、誘導コイルに供給する高周波電流は商用電源の交流を整流回路によって整流し、インバータ回路で高周波に周波数変換して供給するようになっている。
【0004】
図11は、従来の定着装置における100V用誘導加熱用インバータ回路の一例を示すものである。この図に示す回路において、L1は誘導加熱用ワークコイルであり、Q1はスイッチング素子、Crはコンデンサである。電源Eは、商用電源を整流した直流電源を表す。なお、破線で囲まれたコイルL2及び抵抗R2は、定着ローラを電気的等価回路で示したものである。スイッチング素子Q1は通常、耐圧、電流容量の面からIGBTが使用され、D1はIGBTに寄生のダイオードを表している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
図11の回路において、スイッチング素子Q1を高周波駆動することでワークコイルL1に高周波電流を流し、その結果定着ローラ1すなわちコイルL2,抵抗R2に渦電流が流れて定着ローラ1が発熱する。ここで、スイッチング素子Q1のオン幅は、必要電力が供給されるようにパルス幅が変えられる。また、オフ時にはスイッチング素子Q1のコレクタにフライバック電圧が発生するが、これはコイルL1とコンデンサCrの共振電圧であるため、ゼロ電圧スイッチングが達成されるもののオフ幅はコイルL1とコンデンサCrの時定数で決まるため、可変不能である。したがって、画像形成に最適な温度になるように定着ローラを制御するためには、Q1のスイッチング周波数を変化させることになる。
【0006】
このように、従来の誘導加熱用インバータ回路では、定着温度を安定化させるための制御を周波数変化により行っていたが、この場合、周波数が変化することで定着ローラにおける渦電流の浸透度が変化してしまい、最適な定着温度を保つための電力を定着ローラに入れることができないという問題があった。また、渦電流浸透度が変化するため、定着ローラ表面の熱分布が変化し、定着画像の品質に影響を及ぼすという問題もあった。
【0007】
さらに、このような回路で交流200Vの回路を構成する場合、スイッチング素子Q1としては100Vの素子の2倍の耐電圧を必要とするが、このような素子は現状では100V用と同等の形状のものは少なく、あっても耐圧が不充分なため使用することができなかった。耐圧の大きなものとしてはモールドタイプの大きな形状のものがあるが、100V用のものより倍以上も大きなパッケージで、小型に作る必要がある定着装置用の高周波インバータとしては使用できるものではなく、200V系に対応した小型のインバータを実現するのは困難であった。
【0008】
また、その他に、従来の回路構成では電力の制御範囲が狭くインバータの負荷が軽い場合にはワークコイルの電流が少なくなり、共振コンデンサの電流を完全に引き抜くことができず、このため、ゼロ電圧スイッチングができなくなり、本来ゼロ電圧スイッチングによって高効率、低ノイズ化を実現していた共振インバータとしての特徴がなくなるという問題があった。
【0009】
本発明は、従来技術における上記問題を解決し、効率が良く,素子のストレスが少なく,ノイズ発生の少ない誘導加熱用インバータ回路を用いた定着装置を提供することを課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記の課題は、本発明により、電源にその一端を接続された誘導加熱コイルの他端を第1スイッチング素子で駆動する誘導加熱用インバータ回路を用いた定着装置において、前記誘導加熱コイルの両端に第1のコンデンサと第2スイッチング素子の直列回路を該第1のコンデンサの一端が電源側に接続されるように並列接続するとともに、前記第2スイッチング素子に並列に第2のコンデンサを接続し、前記誘導加熱コイルを含む負荷と前記第1のコンデンサ及び前記第2のコンデンサの閉ループ回路を動作して共振させ、前記第1スイッチング素子及び第2スイッチング素子がそれぞれ電圧、電流がゼロの点でオン/オフされることにより解決される。
【0011】
また、前記の課題を解決するため、本発明は、前記誘導加熱コイルと並列にインダクタンスとコンデンサの直列回路を接続することを提案する。
また、前記の課題を解決するため、本発明は、前記誘導加熱コイルと並列にインダクタンスと第3のスイッチング素子の直列回路を接続することを提案する。
【0012】
また、前記の課題を解決するため、本発明は、前記誘導加熱コイルと並列にインダクタンスとコンデンサと第3のスイッチング素子の直列回路を接続することを提案する。
【0013】
また、前記の課題を解決するため、本発明は、誘導加熱コイルの一端をグランドに接続し、他端に第1スイッチング素子を直列に接続して、電源の正極側が前記第1スイッチング素子となるように接続し、前記誘導加熱コイルの両端に第1のコンデンサと第2スイッチング素子の直列回路を該第1のコンデンサの一端が前記第1スイッチング素子側に接続されるように並列接続するとともに、前記第2スイッチング素子に並列に第2のコンデンサを接続した誘導加熱用インバータ回路を用い、前記誘導加熱コイルを含む負荷と前記第1のコンデンサ及び前記第2のコンデンサの閉ループ回路を動作して共振させ、前記第1スイッチング素子及び第2スイッチング素子がそれぞれ電圧、電流がゼロの点でオン/オフされることを提案する。
また、前記誘導加熱コイル、前記第1のコンデンサ及び前記第2のコンデンサの定数は、前記第1スイッチング素子及び第2スイッチング素子のゼロ電圧スイッチングを満足するように設定されるとともに、電圧ピーク及び電流ピークを共に低減できるように設定されると好適である。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態の定着装置における誘導加熱用インバータ回路の構成を示す回路図である。この図において、図11に示す回路と同じ素子には同一の符号を付している。
【0015】
図1に示す回路では、追加されたコンデンサCsと第2のスイッチング素子Q2(IGBT)が誘導加熱用ワークコイルL1に並列接続されている。また、コンデンサCsとスイッチング素子Q2の直列回路の接続点より、コンデンサC1(第2のコンデンサ)がスイッチング素子Q2と並列接続されている。Dsはスイッチング素子Q2に寄生のダイオードを表している。
【0016】
この回路では、スイッチング素子Q1がメインスイッチであり、コンデンサC1が第一共振コンデンサ、コンデンサCsが第二共振コンデンサ、スイッチング素子Q2がサブスイッチ、ダイオードDsがサブスイッチの逆導通ダイオードとなる。
【0017】
本実施形態のインバータ回路の動作原理を図2を参照して説明する。図2(a)はモード遷移図で、(b)は動作波形図である。図1の回路では、下記のモード1〜モード5の動作を周期的に繰り返す。なお、図2(b)の動作波形は上から順に、メインスイッチQ1のコレクタ−エミッタ間電圧,スイッチング素子Q1を流れる電流,サブスイッチQ2(Qs)のコレクタ−エミッタ間電圧,Q2を流れる電流,第二共振コンデンサCsの電圧,ワークコイルL1を流れる電流、の各モードにおける状態を示している。
【0018】
[mode1]は電力消費&非共振モードであり、t=t0でメインスイッチQ1(IGBT)をターンオンし、誘導過熱負荷に電力を供給しつつワークコイルL1にエネルギーを蓄積している。
【0019】
[mode2]は電力消費&部分共振モードであり、t=t1でメインスイッチQ1(IGBT)をターンオフすることにより、誘導加熱系負荷Z(L1,L2,R2),第一共振コンデンサC1,第二共振コンデンサCsの閉ループ回路が動作して部分共振モードとなる。この期間中にコンデンサC1,Csに充放電することによりメインスイッチQ1のdv/dtは軽減され、ZVS(ゼロ電圧スイッチング)でのターンオフが実現される。
【0020】
[mode3a]は電力消費&ダイオードDs導通,共振モードであり、t=t2で第一共振コンデンサC1の電圧がゼロになるとサブスイッチQ2(Qs)の逆導通ダイオードDsがオンとなり、誘導加熱系負荷Z(L1,L2,R2),第二共振コンデンサCs,ダイオードDsの閉ループ回路が動作してこのモードに入る。
【0021】
[mode3b]は電力消費&サブスイッチQ2導通,共振モードであり、t=t3でサブスイッチに流れる電流がゼロになり、この時サブスイッチQ2はZVS(ゼロ電圧スイッチング)及びZCS(ゼロ電流スイッチング)でのターンオンが実現される。このモードでインバータの動作1動作周期の間サブスイッチQ2をオンすることによって、メインスイッチQ1の導通時間を可変にしても一定動作周波数で動作することが可能となる。
【0022】
[mode4]は電力消費&部分共振モードであり、t=t4でサブスイッチQ2をターンオフする。この時、誘導加熱系負荷Z(L1,L2,R2),第一共振コンデンサC1,第二共振コンデンサCsの閉ループ回路が動作して部分共振モードとなる。この期間中に、コンデンサC1,Csに充放電することによりサブスイッチQ2のdv/dtは軽減され、ZVS(ゼロ電圧スイッチング)でのターンオフが実現される。
【0023】
[mode5]は電力回生&非共振モードであり、t=t5で共振コンデンサC1,Csの電圧の和が電源電圧Edを越えようとしたとき,メインスイッチQ1の逆導通ダイオードD1が順バイアスとなり、このモードとなる。そして、t=t0でメインスイッチQ1に流れる電流がゼロとなり、mode1に移行するが、このときZVS(ゼロ電圧スイッチング)及びZCS(ゼロ電流スイッチング)でのターンオンが実現される。
【0024】
このように、本実施形態においては、mode1〜mode5の動作が周期的に繰り返される。この動作から判るように、素子Q2,Cs,C1の追加によりオフ時の幅が変えられるように動作するため、周波数を固定したPWM(パルス幅変調)による電力制御が可能になる。このため、定着ローラの渦電流浸透度を一定にすることが可能となり、画像品質に優れた安定した定着動作を行うことができる。
【0025】
また、大きな特徴として、オフ時の電圧がサブスイッチQ2及び第二共振コンデンサCsによって抑制されるため、メインスイッチQ1,サブスイッチQ2にかかる電圧が小さく、100V用の素子が使用可能となり、小型のインバータ回路を実現することができる。これにより、交流入力電圧200V系に対応した小型の定着装置を構成することが可能となった。
【0026】
ところで、特開平9−245953号公報には、本実施形態に類似の回路構成として、図1におけるコンデンサC1をワークコイルL1と並列にしたものが記載されている。その特開平9−245953号公報に記載の回路と本実施形態の回路における補助スイッチング素子Q2にかかる電圧を入力電圧が280Vの場合についてシュミレーションした制御特性を図3に示す。
【0027】
図3には、入力電力(Pin)が変わった場合のパルス幅(Duty)の変化に対するスイッチング素子Q2の電圧のピークVceQsを、それぞれ上記従来例(a)と本実施形態(b)における特性として示してある。
【0028】
図3において、例えばPin=3KWの同一入力電力で比較すると、(a)の従来方式ではDuty=0.48で、このDutyにおけるピーク電圧VceQsは約660Vとなることが判る。それに対して、(b)の本実施形態では、Pin=3KW時のDutyは0.375であり、このときのQ2のピーク電圧VceQsは490Vであり、従来例に比べて170Vの大きな差となっている。
【0029】
このように、本実施形態では従来例に比べて大きな電圧差があり(電圧が低く)、一般にスイッチング素子の耐圧が最大でも900V程度のものしかないために従来方式では実現できなかった入力電力及び電圧範囲での動作が可能となり、その適用範囲は大きく広がるようになった。
【0030】
さらに、もう一つの特徴として、Q1,Q2のスイッチング素子はそれぞれ電圧,電流がゼロの点でオン/オフされ、ZVS(ゼロ電圧スイッチング)及びZCS(ゼロ電流スイッチング)を実現することができる。したがって、素子のスイッチング損失が少ないため、効率が良く、かつスイッチングノイズの発生の少ない誘導加熱用インバータ回路を実現することができる。
【0031】
さらに加えて、共振コンデンサCs,C1が直列に接続されているため、それぞれのコンデンサの耐圧が低いもので回路を構成することができる。周知の通り、耐圧の高いコンデンサはコストも高くサイズも大きなものになりがちであるが、本発明により耐圧の低いコンデンサを使用できる回路構成としたことにより、この面でも小型・低コストの誘導加熱用インバータ回路を実現することができる。
【0032】
次に、第2実施例について図4を参照して説明する。図4において、図1に示す前記実施例の回路と同じ素子には同一の符号を付している。
図4に示すように、この実施例の誘導加熱用インバータ回路は、直列された新たなインダクタLaとコンデンサCaをワークコイルL1に並列に付加した構成となっている。これ以外は図1に示す前記実施例の回路と同様である。
【0033】
この実施例における動作は、図1の前記実施例の回路においてインダクタンスL1に流れた電流がインダクタLaに分流するほかは図1の回路と同様の動作を行う。なお、図4の回路ではインダクタLaに直列にコンデンサCaを入れた構成となっているが、動作に問題がない場合はコンデンサCaを省略することも可能である。
【0034】
図1の前記実施例の回路では、ZVS(ゼロ電圧スイッチング)が可能な領域は原理的には第一共振コンデンサC1の充放電(図11の従来例では、共振用コンデンサCrの充放電)を完全にできるかどうかで決まる。さらに言えば、部分共振モードに入る直前のワークコイルなど(部分共振モードで作る閉回路のインダクタンス分)のコイルに流れている共振初期電流の値によって決まる。このため、図1の前記実施例及び図11の従来例の回路では、電力を絞っていくとワークコイルL1に蓄積する初期電流値(磁気エネルギー)が不足し、ZVS(ゼロ電圧スイッチング)が不能になる。
【0035】
そこで、第2実施例では、ワークコイルL1と並列にインダクタLaを付加することによって、共振初期電流の値を大きくし、ZVS(ゼロ電圧スイッチング)の領域拡大を可能としている。
【0036】
次に、本発明の第3の実施例について図5を参照して説明する。図5において、図1及び図4に示す前記実施例の回路と同じ素子には同一の符号を付している。
図5に示すように、この実施例の誘導加熱用インバータ回路は、直列されたインダクタLaとIGBTなどの第3のスイッチング素子Q3をワークコイルL1に並列に付加した構成となっている。これ以外は図1に示す前記実施例の回路と同様である。また、図4の第2実施例と比べると、コンデンサCaの代わりにスイッチング素子Q3が配置された構成である。第3スイッチング素子Q3にはダイオードD3が付設されている。
【0037】
この実施例では、軽負荷時、あるいはZVS(ゼロ電圧スイッチング)の領域をはずれるような動作条件の場合にのみ第3スイッチング素子Q3をオンとするように動作させる。なお、図5の回路では図4の回路のコンデンサCaの代わりにスイッチング素子Q3を配置しているが、動作に問題がない場合にはコンデンサCaを設けたまま、さらに第3スイッチング素子Q3を直列に配置する構成としても良い。
【0038】
この第3実施例では、軽負荷時、あるいはZVS(ゼロ電圧スイッチング)の領域をはずれるような動作条件の場合にのみ第3のスイッチング素子Q3を駆動して動作させるように構成したので、制御範囲が広がるという特徴を保ちながら、効率も向上させることができる。
【0039】
次に、本発明の第4の実施例について図6を参照して説明する。図6において、図1に示す前記実施例の回路と同じ素子には同一の符号を付している。
図6の回路では、ワークコイルL1の一端をGNDとなるようにし、これと直列に接続されるスイッチング素子Q1を電源の正極側に接続している。また、直列のコンデンサCsと第2スイッチング素子Q2とがワークコイルL1に並列に接続され、CsとQ2の接続点よりコンデンサC1がQ2と並列接続されている。Dsはスイッチング素子Q2に寄生のダイオードである。さらに、ワークコイルL1の負荷となる定着ローラ1とワークコイルL1間のギャップ距離:gを3mm以下となるように構成している。
【0040】
本実施例は、図1の前記実施例のものと比べると、ワークコイル部とスイッチング素子Q1の上下を逆転させた形であり、その動作は図1の前記実施例のものと同様の動作を行うが、ワークコイルL1の一端がGND側となっている。
【0041】
図1の回路では、ワークコイルL1には常に、スイッチング素子Q1によって駆動される高周波電圧以外に電源電圧が重畳されており、その分ワークコイルL1にかかる電圧は高い値で動作することになる。しかし、図6に示す本実施例の回路では、電源電圧の分だけワークコイルL1の電圧は(図1の回路より)低い値で動作する。
【0042】
一般的な誘導加熱型定着装置の場合、ワークコイル(誘導加熱コイル)の外周にはその負荷となる円筒状導体の定着ローラが同心円状に配置される。このような構成では、定着ローラは導体でフレームGNDとなるため、前記実施形態のようにワークコイルに電源電圧が重畳されるような回路ではワークコイルに高電圧がかかる。そのため、安全規格の絶縁耐圧の点から、ワークコイルと定着ローラの距離をあまり接近させることはできない。しかし、図6に示す本実施例の回路では、ワークコイルL1の電圧が低い分だけワークコイルと定着ローラ間のギャップを短くできる。本実施例では、ワークコイルL1と定着ローラ間のギャップ:gを3mm以下となるように構成して、効率の良い定着装置を実現することができる。
【0043】
また、ワークコイルL1の一端をGND側となるように構成したことにより、これに並列接続される回路素子もGND側の接続となり、図1の前記実施例よりもGND側の接続素子が多くなり、高周波ノイズの発生を低減させることができる。
【0044】
ところで、図1,4,5,6に示した各実施例において、スイッチング素子Q1は図2(b)に示したようにスイッチングを繰り返すが、この場合のスイッチング電圧VceQ1、及び電流i1 が素子の電圧・電流耐量を越えた場合には、スイッチング素子Q1は破壊する。
【0045】
このため、インバータの動作は素子の電圧、電流以下となるように第1共振コンデンサC1、第2共振コンデンサCs、及びワークコイルのインダクタンスL1の値を決定する必要がある。
【0046】
しかし、この場合、電圧ピークを低減するためには、L1を小さく、Csを大きく、C1を小さくすることが必要で、また、電流ピークを低減するにはL1を大きく、Csを小さく、C1を大きくする必要がある。即ち、これらの素子の定数の選定はスイッチングの電圧・電流ピークに対してそれぞれ相反する関係にあることが分かっている。
【0047】
また、これらの定数の決定に当たっては更に前述したようにZVS(ゼロ電圧スイッチング)を満足するようにする必要がある。従って、これらの素子の最適定数の決定は実験や単純な計算によって決めることは困難である。
【0048】
そこで本願発明者は、ZVS動作を満足するような動作条件での各素子の定数が最適となるような範囲のシミュレーションを行い最適の素子定数を突き止めた。
シミュレーションは通常このクラスの定着装置において使用されるスイッチング素子として一般的な値である、スイッチング電圧が700V以下、電流が70A以下の条件で行ったが、図7はその結果である(なお、スイッチング電圧、電流は上記値に限定されるものではない)。図7はC1=0.1μFの場合について、Cs、L1を変化させた場合の結果である。この図において、丸印(○)はZVS条件を表し、四角印(□)は電流条件、三角印(△)は電圧条件を表しており、図中に矢印で示した範囲が全ての条件を満たす素子定数の範囲を示している。
【0049】
すなわち第1共振コンデンサC1の容量値が0.1μFのときは、各素子の最適な定数は、ワークコイルL1が70〜100μH、第2共振コンデンサCsが1.8〜5μFの範囲にあることがわかる。
【0050】
同様に、図8はC1=0.2μFの場合についてCs、L1を変化させた場合の結果である。図8に矢印で示した範囲が全ての条件を満たす素子定数の範囲を示している。すなわち、第1共振コンデンサC1の容量値が0.2μFのときは、各素子の最適な定数は、ワークコイルL1が65〜100μH、第2共振コンデンサCsが1.8〜5μFの範囲にあることがわかる。
【0051】
また、図9はC1=0.3μFの場合についてCs、L1を変化させた場合の結果である。図9に矢印で示した範囲が全ての条件を満たす素子定数の範囲を示している。すなわち、第1共振コンデンサC1の容量値が0.3μFのときは、各素子の最適な定数は、ワークコイルL1が65〜95μH、第2共振コンデンサCsが2〜5μFの範囲にあることがわかる。
【0052】
さらに、図10はC1=0.4μFの場合についてCs、L1を変化させた場合の結果である。図10に矢印で示した範囲が全ての条件を満たす素子定数の範囲を示している。すなわち、第1共振コンデンサC1の容量値が0.4μFのときは、各素子の最適な定数は、ワークコイルL1が65〜87μH、第2共振コンデンサCsが2.3〜5μFの範囲にあることがわかる。
【0053】
このようにして、定数の範囲を決定し、最適な各素子を求めることにより、誘導加熱用インバータを最適な効率で動作させる、小型の定着ユニットを実現することができる。なお、第1共振コンデンサC1の値については0.1〜0.4μFの範囲で設定したが、この範囲はL1との関係から、インバータの動作上ほぼ最適なC1の範囲となっている。
【0054】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の誘導加熱用インバータ回路を用いた定着装置によれば、周波数を固定したPWM(パルス幅変調)による電力制御において誘導加熱用インバータを最適な効率で動作させることができる。
【0055】
請求項2の構成により、誘導加熱コイルと並列にインダクタンスとコンデンサの直列回路を接続するので、共振初期電流の値を大きくし、ZVS(ゼロ電圧スイッチング)の領域拡大を可能とすることができる。
【0056】
請求項3,4の構成により、誘導加熱コイルと並列にインダクタンスと第3のスイッチング素子の直列回路を接続、または、誘導加熱コイルと並列にインダクタンスとコンデンサと第3のスイッチング素子の直列回路を接続するので、制御範囲が広がるという特徴を保ちながら、効率も向上させることができる。
【0057】
請求項5の構成により、効率の良い定着装置を実現することができる。また、誘導加熱コイルの一端をGND側となるように構成したことにより、これに並列接続される回路素子もGND側の接続となり、高周波ノイズの発生を低減させることができる。さらに、周波数を固定したPWM(パルス幅変調)による電力制御において誘導加熱用インバータを最適な効率で動作させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態の定着装置における誘導加熱用インバータ回路の構成を示す回路図である。
【図2】そのインバータ回路の動作を説明するための、モード遷移図(a)と動作波形図(b)である。
【図3】そのインバータ回路と従来例における入力電力制御の特性を示すグラフである。
【図4】第2実施例における誘導加熱用インバータ回路の構成を示す回路図である。
【図5】第3実施例における誘導加熱用インバータ回路の構成を示す回路図である。
【図6】第4実施例における誘導加熱用インバータ回路の構成を示す回路図である。
【図7】本発明の作用を説明するグラフである。
【図8】素子定数を変えた場合の本発明の作用を説明するグラフである。
【図9】素子定数をさらに変えた場合の本発明の作用を説明するグラフである。
【図10】素子定数をさらに変えた場合の本発明の作用を説明するグラフである。
【図11】従来の定着装置における誘導加熱用インバータ回路の一例を示す回路図である。
【符号の説明】
1 定着ローラ(電気的等価回路)
C1 第2のコンデンサ(第一共振コンデンサ)
Cs コンデンサ(第二共振コンデンサ)
L1 ワークコイル(誘導加熱コイル)
La インダクタ
Q1 メインスイッチ(スイッチング素子)
Q2 サブスイッチ(第2スイッチング素子)
Q2 第3スイッチング素子

Claims (6)

  1. 電源にその一端を接続された誘導加熱コイルの他端を第1スイッチング素子で駆動する誘導加熱用インバータ回路を用いた定着装置において、
    前記誘導加熱コイルの両端に第1のコンデンサと第2スイッチング素子の直列回路を該第1のコンデンサの一端が電源側に接続されるように並列接続するとともに、前記第2スイッチング素子に並列に第2のコンデンサを接続し、
    前記誘導加熱コイルを含む負荷と前記第1のコンデンサ及び前記第2のコンデンサの閉ループ回路を動作して共振させ、前記第1スイッチング素子及び第2スイッチング素子がそれぞれ電圧、電流がゼロの点でオン/オフされることを特徴とする誘導加熱用インバータ回路を用いた定着装置。
  2. 前記誘導加熱コイルと並列にインダクタンスとコンデンサの直列回路を接続することを特徴とする、請求項1に記載の誘導加熱用インバータ回路を用いた定着装置。
  3. 前記誘導加熱コイルと並列にインダクタンスと第3のスイッチング素子の直列回路を接続することを特徴とする、請求項1に記載の誘導加熱用インバータ回路を用いた定着装置。
  4. 前記誘導加熱コイルと並列にインダクタンスとコンデンサと第3のスイッチング素子の直列回路を接続することを特徴とする、請求項1に記載の誘導加熱用インバータ回路を用いた定着装置。
  5. 誘導加熱コイルの一端をグランドに接続し、他端に第1スイッチング素子を直列に接続して、電源の正極側が前記第1スイッチング素子となるように接続し、
    前記誘導加熱コイルの両端に第1のコンデンサと第2スイッチング素子の直列回路を該第1のコンデンサの一端が前記第1スイッチング素子側に接続されるように並列接続するとともに、前記第2スイッチング素子に並列に第2のコンデンサを接続した誘導加熱用インバータ回路を用い、
    前記誘導加熱コイルを含む負荷と前記第1のコンデンサ及び前記第2のコンデンサの閉ループ回路を動作して共振させ、前記第1スイッチング素子及び第2スイッチング素子がそれぞれ電圧、電流がゼロの点でオン/オフされることを特徴とする誘導加熱用インバータ回路を用いた定着装置。
  6. 前記誘導加熱コイル、前記第1のコンデンサ及び前記第2のコンデンサの定数は、前記第1スイッチング素子及び第2スイッチング素子のゼロ電圧スイッチングを満足するように設定されるとともに、電圧ピーク及び電流ピークを共に低減できるように設定されることを特徴とする、請求項1または5に記載の誘導加熱用インバータ回路を用いた定着装置。
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