JP3763334B2 - ゴム組成物の製造方法およびゴム組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ゴムマトリックス中にシリカが均一に分散したゴム組成物とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、省資源や環境対策などが重視されるにつれて、自動車の低燃費化に対する要求は、ますます厳しくなり、自動車タイヤについても、転動抵抗を小さくすることにより、低燃費化に寄与することが求められている。タイヤの転動抵抗を小さくするには、タイヤ用ゴム材料として、一般に、発熱性の低いゴム材料を使用する。
【0003】
ジエン系ゴムに補強剤を配合したタイヤ用ゴム材料において、補強剤としてカーボンブラックに替えてシリカを用いることにより、発熱性を低めることが提案されている。ところが、シリカ配合ゴム組成物は、カーボンブラック配合ゴム組成物に比べて、十分な耐摩耗性と引張強度が得られないという問題点があった。この原因の一つは、ジエン系ゴムに対するシリカの親和性がカーボンブラックよりも小さいために、十分な補強効果を発現することができないことにあると考えられている。
【0004】
シリカとジエン系ゴムとの親和性を高めるために、シラン系カップリング剤を使用する方法が提案されている(特開平3−252431号公報、特開平3−252433号公報など)。しかし、この方法では、十分な効果を達成するためには高価なシラン系カップリング剤を多量に使用する必要がある。
【0005】
その他のゴムとシリカの親和性の改良法として、シリカと親和性のある置換基を導入したジエン系ゴムを用いることが検討されている。例えば、乳化重合法によるジエン系ゴムでは第3級アミノ基を導入したジエン系ゴム(特開平1−101344号公報など)が、また、アニオン重合法によるジエン系ゴムではアルキルシリル基(特開平1−188501号公報など)、ハロゲン化シリル基(特開平5−230286号公報など)または置換アミノ基(特開昭64−22940号公報など)などを導入したジエン系ゴムが提案されている。
【0006】
しかしながら、これらの置換基を導入した共役ジエン系ゴムの多くは、シリカと混合する際に、シリカと強く凝集して分散不良が起こる。そのため、加工性に劣り、発熱性、引張強度および耐摩耗性などの特性も充分に改善されないという欠点を有している。
【0007】
シリカをよく分散させ、加工性、発熱性、引張強度、耐摩耗性などの特性も改善するため、極性基を含有する単量体を共重合させた共役ジエン系ゴムを用いることが提案されている。しかし、主構造中に極性基を含有するので、経時安定性が不十分である、ゲル化しやすい、混練によるシリカなどの充填剤の配合時にムーニー粘度が上昇して充填剤をよく練り込めない、あるいは粘度が高いので加工性が低下するなどの問題があった。
【0008】
ゴム粒子が分散しているゴム乳化重合反応液に同じ充填剤であるカーボンブラックを分散さた後、乳化水性溶媒を除去し、カーボンブラック含有ゴム組成物を得る方法も提案されている(例えば、特開昭59−49247号公報など)。しかし、カーボンブラックをシリカに変えて同じことを試みても、シリカは親水性に優れるため、ゴム粒子が先に凝集して析出し、それに続いてシリカが凝集し、均一な組成物を得るのが困難であった。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、鋭意検討の結果、ゴム乳化分散液にシリカと共にシリル化剤を分散させることによりシリカが疎水化し、その結果として、ゴム粒子が凝集する際にゴム中にシリカが均一に分散して凝集することを見い出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
かくして、本発明によれば、(1)ゴム乳化分散液にシリカおよびシリル化剤を分散させる工程、および(2)該分散液から乳化水性溶媒を除去してゴム組成物(i)を回収する工程を含有するゴム組成物の製造方法と、この製造方法によって製造されたゴム組成物(i)が提供される。
【0011】
また、本発明によれば、ゴム組成物(i)にシランカップリング剤を配合したゴム組成物(ii)が提供される。
【0012】
さらに、本発明によれば、ゴム組成物(ii)に架橋剤を配合したゴム組成物(iii)が提供される。
【0013】
【発明の実施の形態】
[(1)ゴム乳化分散液にシリカおよびシリル化剤を分散させる工程]
(ゴム)
本発明で用いるゴムは、特に限定されない。ゴムとしての特性や、シリカとの親和性などを考慮すると、共役ジエン系ゴムが好ましく、共役ジエン−芳香族ビニル共重合体ゴムがより好ましく、極性基を含有している共役ジエン−芳香族ビニル共重合ゴムが特に好ましい。
【0014】
本発明においては、共役ジエン系ゴムは、(a)共役ジエン単量体単位が30〜100重量%、好ましくは40〜100重量%、より好ましくは50〜100重量%含有されているものである。(a)共役ジエン単量体としては、例えば、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−クロロ−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエンなどが挙げられる。これらの中でも、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエンなどが好ましく、1,3−ブタジエンがより好ましい。(a)共役ジエン単量体は、単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0015】
本発明においては、共役ジエン−芳香族ビニル共重合体は、(a)共役ジエン単量体単位が好ましくは50〜85重量%、より好ましくは55〜82重量%、特に好ましくは60〜80重量%、(b)芳香族ビニル単量体単位が好ましくは15〜50重量%、より好ましくは18〜45重量%、特に好ましくは20〜40重量%含有されているものである。(b)芳香族ビニル単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、5−t−ブチル−2−メチルスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、モノフルオロスチレンなどが好ましく、スチレンがより好ましい。(b)芳香族ビニル単量体は、単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0016】
本発明においては、極性基を含有している共役ジエン−芳香族ビニル共重合ゴムは、(a)共役ジエン単量体単位が好ましくは50〜85重量%、より好ましくは55〜82重量%、特に好ましくは60〜80重量%、(b)芳香族ビニル単量体単位が好ましくは15〜50重量%、より好ましくは18〜45重量%、特に好ましくは20〜40重量%、(c)極性基含有ビニル単量体単位0.05〜20重量%、好ましくは0.2〜15重量%、より好ましくは1〜10重量%を含有されているものである。なお、(b)芳香族ビニル単量体であり、かつ(c)極性基含有ビニル単量体単位であるものも存在する。
【0017】
極性基含有ビニル単量体が含有する極性基は、ヘテロ原子を有する基であって、ヘテロ原子としては、周期律表の第2周期ないし第4周期でかつ第5B族または第6B族に属する原子を示し、具体的には、例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子などが挙げられる。これらの中でも、窒素原子、酸素原子などが好ましく、窒素原子が特に好ましい。ヘテロ原子を含有する極性基の具体例としては、例えば、ヒドロキシル基、オキシ基、エポキシ基、カルボキシル基、カルボニル基、オキシカルボニル基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基、イミノ基、アミノ基、ニトリル基、アンモニウム基、イミド基、アミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、ハロゲン原子などが挙げられる。これらの中でも、ヒドロキシル基、オキシ基、エポキシ基、スルフィド基、ジスルフィド基、イミノ基およびアミノ基などが好ましく、ヒドロキシル基およびアミノ基などがより好ましく、アミノ基が特に好ましい。アミノ基には第1級、第2級および第3級アミノ基の三種があるが、これらの中では第3級アミノ基が好ましい。
【0018】
第1級アミノ基含有ビニル単量体としては、例えば、アクリルアミド、メタアクリルアミド、p−アミノスチレン、アミノメチル(メタ)アクリレート、アミノエチル(メタ)アクリレート、アミノプロピル(メタ)アクリレート、アミノブチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0019】
第2級アミノ基含有ビニル単量体としては、例えば、特開昭61−130355号公報などで開示されたアニリノスチレン類; 特開昭61−130356号公報などで開示されたアニリノフェニルブタジエン類; N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−(4−アニリノフェニル)メタアクリルアミドなどN−モノ置換(メタ)アクリルアミド類; などが挙げられる。
【0020】
第3級アミノ基含有ビニル単量体としては、例えば、N,N−ジ置換アミノアルキルアクリレート、N,N−ジ置換アミノアルキルアクリルアミド、N,N−ジ置換アミノ芳香族ビニル化合物、ピリジル基を有するビニル化合物などが挙げられる。これらの中でもN,N−ジ置換アミノアルキルアクリレート、N,N−ジ置換アミノアルキルアクリルアミドが好ましい。
【0021】
N,N−ジ置換アミノアクリレートとしては、例えば、N,N−ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノブチル(メタ)アクリレート、N−メチル−N−エチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジブチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジブチルアミノブチル(メタ)アクリレート、N,N−ジヘキシルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジオクチルアミノエチル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフォリンなどのアクリル酸またはメタアクリル酸のエステルなどが挙げられる。これらの中でも、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジオクチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−メチル−N−エチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどが好ましい。
【0022】
N,N−ジ置換アミノアルキルアクリルアミドとしては、例えば、N,N−ジメチルアミノメチル(メタ)アクリルアミド、N、N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノブチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノブチル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−エチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジブチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジブチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジブチルアミノブチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジヘキシルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジヘキシルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジオクチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどのアクリルアミド化合物; またはメタアクリルアミド化合物などが挙げられる。これらの中でも、N、N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジオクチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどが好ましい。
【0023】
N,N−ジ置換アミノ芳香族ビニル化合物としては、例えば、N,N−ジメチルアミノエチルスチレン、N,N−ジエチルアミノエチルスチレン、N,N−ジプロピルアミノエチルスチレン、N,N−ジオクチルアミノエチルスチレンなどのスチレン誘導体が挙げられる。
【0024】
また、ピリジル基を有するビニル化合物としては、例えば、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、5−メチル−2−ビニルピリジン、5−エチル−2−ビニルピリジンなどが挙げられる。これらの中でも、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジンなどが好ましい。
【0025】
水酸基基含有ビニル単量体の具体例としては、例えば、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどが例示される。これらの中でも、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどが好ましい。
【0026】
本発明に用いるゴムのムーニー粘度(ML1+4、100℃)は、20〜200、好ましくは30〜150、より好ましくは50〜120の範囲である。ゴムのムーニー粘度が小さいと、製造が容易な反面、充分な発熱特性や耐摩耗性などを得るのが困難であり、逆に大きいと、耐摩耗性などに優れるが、配合物ムーニー粘度が高く成りすぎて、加工性が低下する。
【0027】
本発明のゴムの重合方法は特に限定されない。重合方法としては、例えば、ラジカル発生剤を用いた懸濁重合法、塊状重合法、乳化重合法などが挙げられる。本発明においては、ゴム乳化分散液を調製するが、ゴム乳化分散液の調製が容易であることから、乳化重合法が好ましい。以下に、乳化重合を含めて、ゴム乳化分散液の調製について説明する。
【0028】
(ゴム乳化分散液)
本発明に用いるゴム乳化分散液は、乳化剤と水とを含有する乳化水性溶媒中にゴムが分散しているものであれば、特に限定されない。
【0029】
乳化重合法でゴムを重合するには、例えば、中に単量体を分散させ、ラジカル重合開始剤と接触させればよい。
【0030】
乳化剤は、重合活性などに影響を与えないものであれば、特に限定されなず、例えば、炭素数10以上の長鎖脂肪酸塩および/またはロジン酸塩が用いられる。具体的には、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、バルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸などのカリウム塩またはナトリウム塩などが例示される。
【0031】
乳化重合をする場合、単量体全体を100重量部として、水を好ましくは80〜300重量部、より好ましくは100〜250重量部、特に好ましくは150〜200重量部、乳化剤を好ましくは0.1〜10量部、より好ましくは0.5〜8重量部、特に好ましくは1〜4重量部用いて、単量体を乳化分散させる。水が多すぎると重合生産性が低下し、製造が困難になる場合があり、少なすぎると重合反応が不安定化するので、凝固物ができて製造が困難になる場合がある。乳化剤が多すぎると反応が阻害される場合があり、少なすぎると重合反応が不安定化し、凝固物ができて製造が困難になる場合がある。
【0032】
ラジカル重合開始剤としては、例えば、過硫酸アンモニウムや過硫酸カリウムのような過硫酸塩 ;過硫酸アンモニウムと硫酸第二鉄との組合わせ、有機過酸化物と硫酸第二鉄との組み合わせ、および過酸化水素と硫酸第二鉄との組み合わせなどのレドックス系開始剤; などが用いられる。
【0033】
ラジカル重合開始剤の量は用いられる重合開始剤の種類によって適宜選択すればよい。
【0034】
分子量を調節するために、連鎖移動剤を添加することもできる。連鎖移動剤としては、例えばt−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタンなどのメルカプタン類、四塩化炭素、チオグリコール酸、ジテルペン、ターピノーレン、γ−テルピネン類などを用いることができる。
【0035】
乳化重合の温度は、用いられるラジカル重合開始剤の種類によって適宜選択することができるが、通常、0〜100℃で、好ましくは0〜60℃である。重合様式は、連続重合、回分重合などのいずれでの様式でも構わない。
【0036】
乳化重合の転化率が大きくなると、ゲル化する傾向がみられる。そのため、重合転化率を90%以下に抑えるのが好ましく、特に、転化率50〜80%の範囲で重合を停止するのが好ましい。重合反応の停止は、通常、所定の転化率に達した時点で、重合系に重合停止剤を添加することによって行われる。重合停止剤としては、例えば、ジエチルヒドロキシルアミンやヒドロキシルアミンなどのアミン系化合物、ヒドロキノンやベンゾキノンなどのキノン系化合物、亜硝酸ナトリウム、ソジウムジチオカーバメートなどの化合物が用いられる。
【0037】
乳化重合反応停止後、得られたゴム乳化重合反応液から必要に応じて未反応単量体を除去し、次いで、必要に応じて硝酸、硫酸などの酸を添加混合してゴム水性分散液のpHを所定の値に調整して、ゴム乳化分散液を調製する。
【0038】
なお、ゴムを懸濁重合法や塊状重合法で重合した場合は、得られたゴムの有機溶媒溶液に、乳化剤と水とを加えて、攪拌しながら加熱などの処理によって有機溶媒を除去し、ゴムが乳化水性溶媒中に分散させてゴム乳化分散液を調製する。
【0039】
二種以上のゴムを用いる場合、乳化重合したゴムは乳化重合反応液由来のゴム水性分散液、それ以外のゴムは前述のように有機溶媒溶液から調製したものなどのゴム水性分散液として、水性分散液同士で混合して用いるのが、最終的にシリゴム組成物(i)、(ii)または(iii)を調製した場合に、シリカと各種ゴムが均一に分散しやすく好ましい。
【0040】
(シリカとシリル化剤の分散)
本発明においては、ゴム乳化分散液にシリカおよびシリル化剤を加えて分散させる。
【0041】
シリカとしては、湿式法ホワイトカーボン、コロイダルシリカ、および特開昭62−62838号公報に開示される沈降シリカなどが挙げられる。これらの中でも、含水ケイ酸を主成分とする湿式法ホワイトカーボンが特に好ましい。これらのシリカは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0042】
シリカの比表面積は、特に限定されないが、窒素吸着比表面積(BET法)で、好ましくは50〜400m2/g、より好ましくは100〜250m2/g、特に好ましくは120〜190m2/gの範囲である時に、ゴム組成物(iii)を調製した場合に、得られた組成物の補強性、耐摩耗性および発熱性などの改善が十分に達成され、好適である。ここで窒素吸着比表面積は、ASTM D3037−81に準じBET法で測定される値である。
【0043】
シリカの配合量は、ゴム100重量部に対して、好ましくは10〜200重量部、より好ましくは20〜150重量部、特に好ましくは30〜100重量部である。シリカの配合量が多すぎると十分に分散しない場合があり、配合量が少なすぎると配合効果が不十分になる。
【0044】
シリカ配合量の好ましくは30〜100重量%、より好ましくは60〜100重量%、特に好ましくは90〜100重量%、最も好ましくは100重量%を分散添加物として、ゴム乳化分散液中に分散させる。残りのシリカはゴム乳化分散液からゴム組成物(i)を回収後、ゴム組成物(ii)の調製時などに配合してもよい。シリカの配合量の内、ゴム乳化分散液に分散添加させる割合が高いほど、ムーニー粘度や発熱指数が小さくなり、好ましい。
【0045】
シリル化剤は、シリカ中に不純物として含有されるアルミニウムに結合した水酸基など、シリカ表面のシラノール基とシランカップリング剤の作用に対する阻害原因となる末端の水酸基と反応して、阻害効果を抑制するものであり、また、ゴム乳化分散液からシリカを含有するゴム組成物(i)を調製する際に、シリカ表面の親水性部分を疎水性化することにより、シリカがゴム中に均一に分散させる効果も有する。さらに、シリル化剤を配合することにより、ゴム硬度を低下させることができるとともに、得られたゴム組成物(iii)を架橋して製造されたタイヤにおいて、走行中のゴム硬度の硬度上昇を抑制し、耐チッピング性を確保することができる。
【0046】
本発明に用いられるシリル化剤は、特に制限しない。具体的には、フェニルトリクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、tert−ブチルジメチルクロロシランなどロロシラン化合物; フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシ)シラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのアルコキシシラン化合物; ヘキサメチルジシラザンなどのシラザン化合物; N−トリメチルシリルアセトアミド、N,N−(ビストリメチルシリル)アセトアミドなどのアセトアミド類; N,N−(ビストリメチルシリル)ウレアなどの尿素類; などが挙げられる。これらのシリル化剤は、単独で用いてもよいし、任意の2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのシリル化剤のうち、特にクロロシラン化合物、アルコキシシラン化合物、シラザン化合物が好ましく用いられる。
【0047】
シリル化剤の配合量は、ゴム成分100重量部に対して好ましくは0.05〜8重量部、より好ましくは0.1〜5重量部である。配合量が少なすぎると配合効果が小さく、多すぎると未反応のシリル化剤が可塑剤や軟化剤と同様に初期のゴム硬度を低下させ、さらにはコストも高くなりすぎる。
【0048】
なお、シリカとシリル化剤は別々に添加するよりも、シリカとシリル化剤を予め接触させておくことが好ましい。この処理により、シリカの表面の親水性部分が疎水性化され、ゴム中での分散性が向上する。例えば、シリル化剤の中には、乳化水性溶媒中の水と反応するものもあり、シリカとシリル化剤の添加の時間差やそれぞれの濃度によっては、シリル化剤添加の効果が小さくなる場合もあるが、シリカとシリル化剤を接触させておけば、添加の時点で、シリカ表面は疎水性化されているので、効果が失われない。
【0049】
また、シリカ、またはシリカとシリル化剤との混合物を、予め、水または乳化水性溶媒に十分に分散させておき、その分散液をゴム乳化分散液に加える方法も好ましい。この処理により、ゴム乳化分散液中でシリカが凝集した塊を形成しにくくなり、十分に分散し、その結果として乳化水性溶媒を除去した後のゴム中での分散性が向上する。
【0050】
また、乳化水性溶媒と反応して効果に対する阻害原因となったり、続く工程において問題を生じたりしない配合物を、ゴム乳化分散中に分散させて用いることができる。例えば、老化防止剤や伸展油は、通常、乳化水性溶媒と反応することがなく、後の工程でも問題を生じないので、ゴム乳化分散液中に分散させて用いることができる。老化防止剤は、凝固物を乾燥する際のゴムの劣化を防止するためにも、ゴム乳化分散液中に分散させておくのが好ましい。また、伸展油も、ゴム組成物(i)を回収後、必要に応じて行う混練が容易になることから、ゴム乳化分散液中に分散させておくのが好ましい。
【0051】
老化防止剤は、特に限定されず、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−n−ブチルフェノール、2,4−ビス(オクチルチオメチル)−6−メチルフェノール、2,4−ビス(2’,3’−ジ−ヒドロキシプロピルチオメチル)−3,6−ジ−メチルフェノール、2,4−ビス(2’−アセチルオキシエチルチオメチル)−3,6−ジ−メチルフェノールなどのフェノール系安定剤; トリス(ノニルフェニル)フォスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(オクタデシルフォスファイト)、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)フォスファイトなどのリン系安定剤; ペンタエリスリトール−テトラキス−(β−ラウリル−チオ−プロピオネート)、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネートなどのイオウ系安定剤などが例示される。
【0052】
伸展油も特に限定されず、アロマ系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、パラフィン系プロセスオイルなどのプロセスオイル; ジオクチルアジペート、ジオクチルセバケート、ジオクチルフタレートなどの可塑剤などが例示される。
【0053】
伸展油は、単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。伸展油の配合量は、使用目的に応じて適宜選択されればよいが、ジエン系ゴム100重量に対し、好ましくは3〜150重量部、より好ましくは4〜100重量部、特に好ましくは5〜75重量部の範囲である。伸展油の配合量がこの範囲にある場合、得られるゴム組成物は耐久性や防振特性および加工性が高いレベルで改善され好適である。なお、伸展油は、ゴム乳化分散液中への分散配合と、ゴム組成物(i)または(2)に配合剤を加える混練時などによる配合とを併用してもよい。
【0054】
[(2)該分散液から乳化水性溶媒を除去してゴム組成物(i)を回収する工程]
ゴム乳化分散液から乳化水性溶媒を除去する方法は特に限定されない。例えば、塩化ナトリウムなどの凝固剤を加えて、ゴム成分を分散していたシリカ、シリル化剤などの配合剤と一緒に凝固し、濾過と水洗などにより乳化剤などを十分に除去し、乾燥などにより水分を除去すればよい。得られた凝固物は、ゴムのマトリックス中にシリカ、シリル化剤などの配合剤が均一に分散しているゴム組成物(i)である。
【0055】
[ゴム組成物(i)]
本発明のゴム組成物(i)は、ゴム、シリカおよびシリル化剤を含有する組成物であるが、従来のものと比較するとシリカが均一に分散されている。このゴム組成物(i)にシランカップリング剤を混練により加えることにより、シリカが均一に分散し、かつゴムとシリカが強く結合したゴム組成物(ii)が得られる。さらに架橋剤を配合したゴム組成物(iii)はタイヤトレッド用のゴム材料として有用である。本発明のゴム組成物(i)はこれらのゴム組成物製造用マスターバッチなどとして有用な組成物である。
【0056】
[ゴム組成物(ii)]
シランカップリング剤は、シリカ表面とゴムとに作用してシリカによるゴムの補強効果を高める機能を有する。ゴム組成物(i)では、タイヤ用途などではゴムとシリカの間の親和性が不十分であり、これにシランカップリング剤を加えたゴム組成物(ii)を調製して補強効果を高める必要がある。
【0057】
シランカップリング剤としては、特に限定はないが、例えば、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシ−エトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、ビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド、および特開平6−248116号公報などに記載されるγ−トリメトキシシリルプロピルジメチルチオカルバミルテトラスルフィド、γ−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアジルテトラスルフィドなどのテトラスルフィド類などを挙げることができる。
【0058】
シランカップリング剤の配合量は、シリカ100重量部に対して、好ましくは0.1〜20重量部、より好ましくは0.5〜15重量部、特に好ましくは1〜10重量部である。
【0059】
本発明においては、シランカップリング剤と共に、老化防止剤、活性剤、可塑剤、滑剤、充填剤などのその他の配合剤をそれぞれ必要量含量することができる。
【0060】
配合剤とゴム組成物(i)の配合方法は特に限定されない。通常は、混練によって配合される。混練は、通常、80〜200℃、好ましくは100〜190℃、さらに好ましくは140〜180℃で、混練時間は、通常、30秒以上であり、好ましくは1〜30分間である。
【0061】
かくして得られたゴム組成物(ii)は、シリカ、シリル化剤およびシランカップリング剤を含有するものである。一般のシリカおよびシランカップリング剤を含有するゴム組成物と比較すると、シリカがより均一に分散しており、そのため、性能も均一である。そのため、架橋性ゴム組成物(iii)製造用マスターバッチとして有用である。
【0062】
[ゴム組成物(iii)]
架橋剤としては、特に限定はないが、例えば、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄などの硫黄; 一塩化硫黄、二塩化硫黄などのハロゲン化硫黄; ジクミルパーオキシド、ジターシャリブチルパーオキシドなどの有機過酸化物;p−キノンジオキシム、p,p’−ジベンゾイルキノンジオキシムなどのキノンジオキシム; トリエチレンテトラミン、ヘキサメチレンジアミンカルバメート、4,4’−メチレンビス−o−クロロアニリンなどの有機多価アミン化合物; メチロール基をもったアルキルフェノール樹脂; などが挙げられ、これらの中でも、硫黄が好ましく、粉末硫黄が特に好ましい。これらの架橋剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0063】
架橋剤の配合割合は、ゴム組成物(ii)中のゴム100重量部に対して、通常、0.1〜15重量部、好ましくは0.3〜10重量部、さらに好ましくは0.5〜5重量部の範囲である。架橋剤の配合割合がこの範囲にある時に、引張強度や耐摩耗性に優れるとともに、耐熱性や残留ひずみなどの特性にも優れるので特に好ましい。
【0064】
そのほかに、架橋促進剤、架橋活性化剤などを配合してもよい。
【0065】
架橋促進剤としては、例えば、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−オキシエチレン−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−オキシエチレン−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N’−ジイソプロピル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミドなどのスルフェンアミド系架橋促進剤;ジフェニルグアニジン、ジオルトトリルグアニジン、オルトトリルビグアニジンなどのグアニジン系架橋促進剤; チオカルボアニリド、ジオルトトリルチオウレア、エチレンチオウレア、ジエチルチオウレア、トリメチルチオウレアなどのチオウレア系架橋促進剤; 2−メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジスルフィド、2−メルカプトベンゾチアゾール亜鉛塩、2−メルカプトベンゾチアゾールナトリウム塩、2−メルカプトベンゾチアゾールシクロヘキシルアミン塩、2−(2,4−ジニトロフェニルチオ)ベンゾチアゾールなどのチアゾール系架橋促進剤; テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィドなどのチウラム系架橋促進剤; ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジ−n−ブチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジメチルジチオカルバミン酸鉛、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジ−n−ブチルジチオカルバミン酸亜鉛、ペンタメチレンジチオカルバミン酸亜鉛、エチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸テルル、ジメチルジチオカルバミン酸セレン、ジエチルジチオカルバミン酸セレン、ジメチルジチオカルバミン酸銅、ジメチルジチオカルバミン酸鉄、ジエチルジチオカルバミン酸ジエチルアミン、ペンタメチレンジチオカルバミン酸ピペリジン、メチルペンタメチレンジチオカルバミン酸ピペコリンなどのジチオカルバミン酸系架橋促進剤; イソプロピルキサントゲン酸ナトリウム、イソプロピルキサントゲン酸亜鉛、ブチルキサントゲン酸亜鉛などのキサントゲン酸系架橋促進剤; などの架橋促進剤が挙げられる。
【0066】
これらの架橋促進剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられるが、少なくともスルフェンアミド系架橋促進剤を含むものが特に好ましい。架橋促進剤の配合割合は、ゴム100重量部に対して、通常0.1〜15重量部、好ましくは0.3〜10重量部、さらに好ましくは0.5〜5重量部の範囲である。
【0067】
架橋活性化剤としては、特に制限はないが、例えばステアリン酸などの高級脂肪酸や酸化亜鉛などを用いることができる。酸化亜鉛としては、例えば、表面活性の高い粒度5μm以下のものを用いるのが好ましく、かかる具体例としては、粒度が、例えば、0.05〜0.2μmの活性亜鉛華や0.3〜1μmの亜鉛華などを挙げることができる。また、酸化亜鉛は、アミン系の分散剤や湿潤剤で表面処理したものなどを用いることができる。
【0068】
これらの架橋活性化剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を併用して用いることができる。架橋活性化剤の配合割合は、架橋活性化剤の種類により適宜選択される。高級脂肪酸を用いる場合、ゴム100重量部に対して、通常0.05〜15重量部、好ましくは0.1〜10重量部、より好ましくは0.5〜5重量部である。酸化亜鉛を用いる場合は、ゴム100重量部に対して、通常0.05〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部、より好ましくは0.5〜2重量部である。酸化亜鉛の配合割合がこの範囲にある時に、加工性、引張強度及び耐摩耗性などの特性が高度にバランスされ好適である。
【0069】
ゴム組成物(ii)への架橋剤などの配合方法は特に限定されないが、高温では架橋反応が開始してしまうので、高温にならない条件で配合する。通常は、混練によって行われるが、混練は、好ましくは100℃以下、より好ましくは20〜80℃で行われる。そのため、一度に多量の架橋剤などを配合するのは困難であり、好ましくは混練を二段階以上に分けて行う。こうしてゴム組成物(ii)に架橋剤などが配合され、ゴム組成物(iii)が得られる。
【0070】
こうして調製されたゴム組成物(iii)は、ゴムマトリック中にシリカが均一に、かつゴムと強い親和性を有して分散している架橋性ゴム材料であり、タイヤトレッド用などとして有用なものである。
【0071】
ゴム組成物(iii)を成型加工する方法は特に限定されず、通常120〜200℃、好ましくは140〜180℃に加熱することにより架橋し、架橋ゴム成型品を得ることができる。
【0072】
このゴム組成物を材料として用いた架橋ゴム成型品は、強度のムラが少なく、強度のムラが原因となった亀裂が少ないなどの優れた特性を有し、伸び特性が優れるほか、低発熱性にも優れ、さらにはムーニー粘度も低いといった特性を有する。
【0073】
【実施例】
以下に、製造例、実施例および比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明する。各種の物性の測定は、下記の方法に従って行った。
(1)ジエン系ゴム中のスチレン単位量は、JIS K 6383(屈折率法)に準じて測定した。
(2)ジエン系ゴム中のアミノ基含有単量体単位量は、共重合体をテトラヒドロンフランに溶解し、メタノール/アセトン(50/50容量%)で再沈澱凝固を2回行い、真空乾燥後、500MHz1H−NMRで測定した。
(3)ジエン系ゴム中の水酸基含有単量体単位量は、特開平3−174408号公報に記載される方法に従い、重合体をフェニルイソシアナート処理した後、13C−NMRスペクトルでフェニルイソシアナートのフェニル基を定量することにより算出した。
(4)重合体中の珪素含有ビニル系単量体は、共重合体をテトラヒドロフランに溶解し、メタノール/アセトン(50/50モル%)で再沈殿凝固を2回行い、真空乾燥後、29Si−NMRで測定した。
(5)ムーニー粘度(ML1+4、100℃)は、JIS K 6300に準じて測定した。この値は小さいほど好ましい。
(6)伸び指数はJIS K 6251に準じて測定した切断時伸びを、比較例1を100とした指数で示した。この値は大きいほど好ましい。
(7)発熱指数は、レオメトリックス社製RDA−IIを用い、1%ねじれ、20Hz、60℃のtanδを測定し、比較例1のtanδを100とした指数で示した。この値は小さいほど好ましい。
【0074】
参考例1〜5
撹拌機付きタンクに水200部、ロジン酸石鹸3部、t−ドデシルメルカプタン0.15部および表1の組成の単量体を仕込んだ。反応器温度を5℃とし、ラジカル重合開始剤としてクメンハイドロパーオキサイド0.1部、ソジウム・ホルムアルデヒド・スルホキシレート0.2部、硫酸第二鉄0.01部を添加して重合を開始した。転化率が70%に達した時点でジエチルヒドロキシルアミンを添加し反応を停止させた。次いで、未反応単量体を回収し、ゴム乳化分散液1〜5を得た。重合体分散液中の一部から、ジエン系ゴムを硫酸と食塩により凝固させてクラムとした後、真空乾燥機で乾燥させ、ジエン系ゴム1〜5を得た。ジエン系ゴム1〜5のスチレン単位量、アミノ基含有量単体単位量、水酸基含有単量体単位量、Si基含有単量体単位量、およびムーニー粘度を測定した結果を表1に示す。
【0075】
【表1】
【0076】
実施例1〜9、比較例1〜2
ゴム乳化分散液1〜5にシリカ(シリカ1はZeozil 1165MP、ローヌプーラン社製、窒素吸着比表面積175m2/g、シリカ2はウルトラジルVN3、デグッサ社製、窒素吸着比表面積175m2/g)、シリル化剤(フェニルトリエトキシシラン)、伸展油(サンセン410、日本石油社製)、老化防止剤(イルガノックス1520、チバガイギー社製)を表2に示す配合量になるように加えて、十分に分散するように攪拌した。この分散液に硫酸と食塩を加えてゴムを凝固させてクラムとした後、濾過し、水での洗浄と濾過を2回繰り返し、クラムドライヤーで乾燥させ、ゴム組成物(i)1〜9を得た。なお、シリカとシリル化剤は前もって接触させておいた。
【0077】
【表2】
【0078】
このゴム組成物(i)1〜9とジエン系重合体1、2に、シリカ、シリル化剤、伸展油、シランカップリング剤、ステアリン酸、酸化亜鉛(亜鉛華#1、本荘ケミカル社製、粒度0.4μm)、老化防止剤(ノクラック6C、大内新興社製)を表3に示す配合量になるように加えて、160℃で5分間混練してゴム組成物(ii)を得た。さらに、硫黄および架橋促進剤(ノクセラーCZ、大内新興社製)を表3に示す配合量になるように加えて、50℃のオープンロールで混練してゴム組成物(iii)を得た。このゴム組成物(iii)を160℃で30分間プレス架橋して試験片を作製し、各物性を測定した。結果を表3に示す。
【0079】
【表3】
【0080】
実施例3と比較例1の違いは、単量体を除去した乳化重合反応液にシリカおよびシリル化剤を分散して、重合したゴムをゴム組成物(i)として回収した実施例2の方が、単量体を除去したゴム乳化分散液からゴムを回収した後、シリカおよびシリル化剤を混練した比較例1よりも、ムーニー粘度、伸び指数、発熱指数のいずれもが優れていることがわかる。
【0081】
実施例5と比較例2の違いも、実施例3と比較例1の違いと同様である。この場合、比較例2が発熱性に大きな問題があることがわかる。
【0082】
(態様)
本発明の態様としては、
1. (1)ゴム乳化分散液にシリカおよびシリル化剤を分散させる工程、および(2)該分散液から乳化水性溶媒を除去してゴム組成物(i)を回収する工程を含有するゴム組成物(i)の製造方法、
2. ゴムがジエン系ゴム、好ましくは共役ジエン単量体単位を40重量%以上含有する極性基含有共役ジエン系ゴムである1記載のゴム組成物(i)の製造方法、
3. ゴムがヘテロ原子を有する極性基含有ビニル系単量体単位の含有量が、0.01〜20重量%、好ましくは0.02〜10重量%、より好ましくは0.05〜5重量%、最も好ましくは0.10〜1重量%、共役ジエン単量体単位の含有量が、80〜99.99重量%、好ましくは90〜99.97重量%、より好ましくは95〜99.95重量%、最も好ましくは99〜99.90重量%である極性基含有共役ジエン系ゴムである1または2記載のゴム組成物(i)の製造方法、
4. ゴムがヘテロ原子を有する極性基含有ビニル系単量体単位の含有量が、0.01〜20重量%、好ましくは0.01〜10重量%、より好ましくは0.05〜5重量%、最も好ましくは0.10〜1重量%、共役ジエン単量体単位の含有量が、通常40〜94.99重量%、好ましくは45〜85重量%、より好ましくは50〜75重量%、最も好ましくは55〜65重量%、および極性基不含芳香族ビニル単量体単位の含有量が、通常5〜60重量%、好ましくは15〜55重量%、より好ましくは25〜50重量%、最も好ましくは35〜45重量%である1または2記載のゴム組成物(i)の製造方法、
5. ゴムのムーニー粘度が20〜200、好ましくは30〜150、より好ましくは50〜120である1〜4のいずれかに記載のゴム組成物(i)、
6. (1)ゴムがラジカル開始剤を用いた乳化重合法により重合される1〜5のいずれかに記載のゴム組成物(i)の製造方法、
7. (1)単量体全体を100重量部として、水80〜300重量部、好ましくは100〜250重量部、より好ましくは150〜200重量部、乳化剤0.1〜10量部、好ましくは0.5〜8重量部、より好ましくは1〜4重量部用いて、単量体を乳化分散させて乳化重合する1〜6のいずれかに記載のゴム組成物(i)の製造方法、
8. シリカの比表面積が窒素吸着比表面積(BET法)で50〜400m2/g、好ましくは100〜250m2/g、より好ましくは120〜190m2/gである1〜7のいずれかに記載のゴム組成物(i)の製造方法、
9. ゴム100重量部に対してシリカが10〜200重量部、好ましくは20〜150重量部、より好ましくは30〜100重量部である1〜8のいずれかに記載のゴム組成物(i)の製造方法、
10. シリカ配合量の30〜100重量%、好ましくは60〜100重量%、より好ましくは90〜100重量%、最も好ましくは100重量%を(2)工程で重合後の乳化重合反応液に分散させる1〜9のいずれかに記載のゴム組成物(i)の製造方法、
11. シリル化剤の配合量がゴム成分100重量部に対して0.05〜8重量部、好ましくは0.1〜5重量部である1〜10のいずれかに記載のゴム組成物(i)の製造方法、
12. シリカとシリル化剤を予め接触させておいて(1)工程で分散させる1〜11のいずれかに記載のゴム組成物(i)の製造方法、
13. シリカを予め水または乳化水性溶媒に十分に分散させておいて(1)工程で分散させる1〜12のいずれかに記載のゴム組成物(i)の製造方法、
14. 塩化ナトリウムなどの凝固剤を加えて、ゴム成分を分散していたシリカ、シリル化剤などの配合剤と一緒に凝固し、濾過と水洗などにより乳化剤などを十分に除去し、乾燥などにより水分を除去する1〜13のいずれかにゴム組成物(i)の製造方法、
15. 1〜14のいずれかの製造方法で製造されたゴム組成物(i)、
16. ゴム組成物製造用マスターバッチであるゴム組成物(i)、
17. さらに(3)ゴム組成物(i)にシランカップリング剤を配合してゴム組成物(ii)を調製する工程を含有する1〜14のいずれかに記載のゴム組成物の製造方法、
18. シランカップリング剤の配合量がシリカ100重量部に対して0.1〜20重量部、好ましくは0.5〜15重量部、より好ましくは1〜10重量部である17記載のゴム組成物(ii)の製造方法、
19. 17または18記載のゴム組成物(ii)、
20. さらに(4)ゴム組成物(ii)に架橋剤を配合してゴム組成物(iii)を調製する工程を含有する2記載のゴム組成物(iii)の製造方法、
21. 20記載の製造方法で製造されたゴム組成物(iii)、
22. 21記載のゴム組成物を成型架橋した製品、
23. タイヤトレッドである22記載の製品、
などが例示される。
【0083】
【発明の効果】
本発明のゴム組成物(i)は、ゴムのマトリックス中にシリカが均一に分散されており、本発明のゴム組成物(i)にシランカップリング剤を配合し、さらに架橋剤などを配合したゴム組成物(iii)は、均一に分散したシリカとゴムとの親和性に優れ、ムーニー粘度が低く、伸びが大きく、低発熱性であるなどの優れた成型品材料である。このことから、ゴム組成物(iii)がタイヤトレッド用ゴム材料などとして有用である。
【表1 】
Claims (4)
- (1)ゴム乳化分散液にシリカおよびシリル化剤を分散させる工程、および(2)該分散液から乳化水性溶媒を除去してゴム組成物(i)を回収する工程を含有するゴム組成物の製造方法。
- 請求項1記載の製造方法で製造されたゴム組成物(i)。
- 請求項2記載のゴム組成物(i)にシランカップリング剤を配合したゴム組成物(ii)。
- 請求項3記載のゴム組成物(ii)に架橋剤を配合したゴム組成物(iii)。
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