JP4774654B2 - 油展ゴム及びゴム組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、補強剤としてシリカ等の無機充填剤を配合した場合に、転がり抵抗が小さく、ウェットスキッド性に優れ、十分な耐摩耗性及び引張強度等を有する加硫ゴムとすることができる共役ジエン系ゴムと伸展油とを含む油展ゴムに関する。また、本発明は、共役ジエン系ゴム又は油展ゴムと無機充填剤とを含有し、優れた加工性を有するゴム組成物に関する。このゴム組成物からなる加硫ゴムは、特にタイヤトレッドとして有用である。
【0002】
【従来の技術】
このところの自動車に対する低燃費化の要求にともない、転がり抵抗が小さく、耐摩耗性及び破壊特性に優れ、更に、操縦安定性の代表的な指標であるウェットスキッド抵抗が大きいタイヤ用ゴム組成物を調製することができる共役ジエン系ゴム等の原料ゴムが必要とされている。
【0003】
タイヤの転がり抵抗を低減するためには、加硫ゴムのヒステリシスロスを小さくすればよい。このヒステリシスロスは各種の物性を指標として評価することができる。例えば、50〜80℃における反発弾性が大きい、50〜80℃におけるtanδが小さい、あるいはグッドリッチ発熱が小さい原料ゴムが好ましい。ヒステリシスロスの小さい原料ゴムとしては、天然ゴム、イソプレンゴム及びブタジエンゴム等が挙げられるが、これらはウェットスキッド抵抗が小さいという問題を有する。
【0004】
一方、近年、タイヤ用ゴム組成物において、補強剤としてシリカ等の無機充填剤を使用する、あるいは無機充填剤とカーボンブラックとを併用する方法が提案されている。無機充填剤を使用し、あるいは無機充填剤とカーボンブラックとを併用したタイヤトレッドでは、転がり抵抗が小さく、ウェットスキッド抵抗に代表される操縦安定性に優れる。しかし、加硫ゴムの耐摩耗性及び引張強度等に劣るという問題がある。そして、その一因が、共役ジエン系ゴムに対する無機充填剤の親和性がカーボンブラックよりも小さく、十分な補強効果が得られない点にあると考えられている。
【0005】
この無機充填剤として特にシリカを用いた場合の共役ジエン系ゴムとの親和性を高めるため、従来より、シリカと親和性のある官能基を導入した共役ジエン系ゴムを用いることが検討されている。例えば、ヒドロキシル基を導入した共役ジエン系ゴム(WO96/23027号公報)、アルコキシシリル基を導入した共役ジエン系ゴム(特開平9−208623号公報)、並びにアルコキシシリル基と、アミノ基及び/又はヒドロキシル基とを導入した共役ジエン系ゴム(特開平9−208633号公報)が提案されている。しかし、これらの官能基を導入した共役ジエン系ゴムの多くは、シリカと混合する際の相互作用が強いため、分散不良が生じたり、加工時の発熱が大きく、加工性に劣る等の問題を有している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の従来の問題を解決するものであり、転がり抵抗が小さく、ウェットスキッド性に優れ、十分な耐摩耗性及び引張強度等を有する加硫ゴムとすることができる油展ゴムを提供することを目的とする。また、他の本発明は、優れた加工性を有し、自動車のタイヤトレッド用等として有用な加硫ゴムとすることができるゴム組成物を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
タイヤトレッドを形成するためのゴム組成物には、通常、耐摩耗性及び引張強度等の向上を目的として補強剤が配合されているが、シリカ等は凝集し易いため均一に分散させることは容易ではない。そして、補強剤が均一に分散していない場合は、補強剤の配合による所期の効果が得られないばかりか、加工性が低下することもある。そのため、一般に、シランカップリング剤を配合することにより分散性の向上が図られている。
【0008】
しかし、不飽和ニトリル単量体単位が分子鎖にランダムに含まれる特定の組成の共役ジエン系ゴムを使用することにより、シランカップリング剤の配合量を低減しても、あるいはシランカップリング剤を配合しなくても、耐摩耗性及び引張強度等並びに加工性をともに十分に向上させ得ることが見出された。
本発明は、このような知見に基づいてなされたものである。
【0009】
本発明の油展ゴム又はゴム組成物に含まれる共役ジエン系ゴムは、オレフィン性不飽和ニトリル単量体、芳香族ビニル単量体及び共役ジエン単量体を含む単量体を、オレフィン性不飽和ニトリル単量体を分割して添加し、且つ重合途中における全単量体仕込み分の重合転化率が10〜95%となった後に、オレフィン性不飽和ニトリル単量体の残部を間欠的に又は連続的に添加して、共重合させてなる共役ジエン系ゴムであって、ガラス転移点が−60〜0℃であり、ガラス転移の外挿開始温度と外挿終了温度との差が20℃以下であって、繰り返し単位として、(1)9〜15質量%のオレフィン性不飽和ニトリル単量体単位、(2)10〜50質量%の芳香族ビニル単量体単位、及び(3)20〜81質量%の共役ジエン単量体単位〔(1)、(2)及び(3)の合計量を100質量%とする。〕を有し、ムーニー粘度[ML1+4(100℃)]が20〜200である。
【0010】
本発明に係る「共役ジエン系ゴム」は、オレフィン性不飽和ニトリル単量体〔以下、「単量体(a)」という。〕、芳香族ビニル単量体〔以下、「単量体(b)」という。〕、及び共役ジエン単量体〔以下、「単量体(c)」という。〕を含む単量体を共重合させてなる共重合体であり、特にランダム共重合体であることが好ましい。
【0011】
単量体(a)としては、アクリロニトリル及びメタクリロニトリル等が挙げられるが、これらのうち、アクリロニトリルが好ましい。これらの単量体(a)は1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用することもできる。
共役ジエン系ゴムにおける繰り返し単位において、単量体(a)からなる単量体単位の含有量は9〜15質量%である。単量体(a)からなる単量体単位の含有量が9質量%未満であると、無機充填剤の分散が不良となり、得られる加硫ゴムの耐摩耗性等が十分に向上しない。一方、この含有量が多すぎると、得られる加硫ゴムの低温特性が低下する。
【0012】
単量体(b)としては、スチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、α−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、4−tert−ブチルスチレン及びtert−ブトキシスチレン等が挙げられるが、これらのうち、スチレンが特に好ましい。これらの単量体(b)は1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用することもできる。
【0013】
共役ジエン系ゴムにおける繰り返し単位において、単量体(b)からなる単量体単位の含有量は10〜50質量%であり、好ましくは15〜40質量%である。単量体(b)からなる単量体単位の含有量が10重量%未満であると、得られる加硫ゴムの耐摩耗性が低下する。一方、この含有量が50質量%を超えると、得られる加硫ゴムの反発弾性が小さくなり、tanδが大きくなる。
【0014】
単量体(c)としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、及びクロロプレン等が挙げられるが、これらのうち、1,3−ブタジエン、イソプレンが特に好ましい。これらの単量体(c)は1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用することもできる。
【0015】
共役ジエン系ゴムにおける繰り返し単位において、単量体(c)からなる単量体単位の含有量は20〜81質量%であり、好ましくは50〜80質量%である。単量体(c)からなる単量体単位の含有量が20質量%未満であると、得られる加硫ゴムの反発弾性が小さくなり、tanδが大きくなる。
【0016】
共役ジエン系ゴムは、必要に応じて、単量体(a)、(b)及び(c)の他、各種のエステル系単量体が共重合したものとすることができる。
このエステル系単量体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、iso−プロピル(メタ)アクリレート、n−アミル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート類、及び酢酸ビニル等のビニルエステル類が挙げられる。これらのエステル系単量体からなる単量体単位の含有量は、共役ジエン系ゴムの特性を損なわない範囲の量比とすることができるが、単量体単位全量に対して20質量%以下とすることが好ましい。
本発明の共役ジエン系ゴムとしては、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体などが挙げられる。
【0017】
共役ジエン系ゴムの上記「ガラス転移点」は、用いる単量体の組成比によって変化するが、 ASTM D3418−82(Reapproved 1988)に準じて示差走査熱量計(DSC)により測定した場合に、−60〜0℃であり、−50〜−10℃であることが好ましい。更に、ガラス転移の外挿開始温度と外挿終了温度との差は20℃以下であり、好ましくは18℃以下、より好ましくは15℃以下、更に好ましくは13℃以下である。尚、下限は通常、5℃である。この温度差が20℃を超えると、得られる加硫ゴムのウェットスキッド抵抗が低下し、tanδも大きくなり、好ましくない。また、上記単量体(a)からなる単量体単位の含有量が9〜15質量%、且つガラス転移の外挿開始温度と外挿終了温度との差が13℃以下、特に10℃以下であることが好ましい。
【0018】
尚、本発明のゴム組成物に含まれる共役ジエン系ゴムの上記「ムーニー粘度」[ML1+4(100℃)]は20〜200であり、30〜150であることが好ましい。ムーニー粘度が20未満であると、得られる加硫ゴムの耐摩耗性が低下する。一方、200を超えると、この共役ジエン系ゴムを含有するゴム組成物の加工性が低下する。
【0019】
また、共役ジエン系ゴムのGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフ)法により測定したポリスチレン換算の重量平均分子量は好ましくは100000以上であり、特に好ましくは100000〜2000000である。重量平均分子量が100000未満であると、得られる加硫ゴムの耐摩耗性が低下する傾向にあり、tanδが大きくなることもある。一方、2000000を超えると、この共役ジエン系ゴムを含有するゴム組成物の加工性が低下することがある。この重量平均分子量は、重合時、ラジカル重合において一般に使用されるアルキルメルカプタンに代表される連鎖移動剤を用いることにより制御することができる。
【0020】
共役ジエン系ゴムは、水系媒体において上記単量体(a)、(b)及び(c)並びに必要に応じてエステル系単量体をラジカル重合開始剤を用いて重合させ、製造することができる。重合方法は特に限定されないが、通常、乳化重合が好ましい。乳化重合は一般的な方法であればよく、所定の単量体を乳化剤の存在下に水系媒体において乳化させ、ラジカル重合開始剤により重合を開始し、所定の重合転化率となった時点で重合停止剤により重合を停止する方法が挙げられる。
【0021】
本発明においては、上記単量体(a)の仕込み方が重要であり、重合系に分割して添加する。単量体(a)の一部を重合開始前に投入し、残部を重合過程において重合系に間欠的に、あるいは連続的に添加するか、全量を重合過程において重合系に間欠的に、あるいは連続的に添加する。また、重合途中で測定される全単量体仕込み分の重合転化率が10〜95%、好ましくは20〜80%となった後に、単量体(a)の残部を一括して又は分割して又は連続的に添加する。尚、単量体(a)の全量を重合開始前に重合系に投入して共重合させた場合、共重合ゴムのガラス転移の開始温度と終了温度との差が20℃を超えて大きくなる傾向にあり、好ましくない。
また、重合開始前の上記単量体(a)の初期仕込み量は、使用する単量体(a)全量に対して、好ましくは20〜95質量%、より好ましくは25〜90質量%、更に好ましくは30〜85質量%である。
【0022】
乳化剤としては、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤及び両性界面活性剤等が挙げられる。また、ふっ素系の界面活性剤を使用することもできる。乳化剤は1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用することもできる。これらの乳化剤としては、アニオン系界面活性剤が多用され、例えば、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸等の炭素数10以上の長鎖脂肪酸のカリウム塩又はナトリウム塩等の他、ロジン酸塩等を使用することができる。
【0023】
ラジカル重合開始剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、tert−ブチルヒドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、パラメンタンヒドロパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド及びジクミルパーオキサイド等の有機過酸化物を使用することができる。また、アゾビスイソブチロニトリルにより代表されるアゾ化合物、過硫酸カリウムにより代表される無機過酸化物、及びこれら過酸化物と硫酸第一鉄との組み合せにより代表されるレドックス系触媒等を用いることもできる。これらのラジカル重合開始剤は1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用することもできる。
【0024】
また、共役ジエン系ゴムの分子量を調節するため、連鎖移動剤として、tert−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン等のアルキルメルカプタン類、四塩化炭素、チオグリコール類、ジテルペン、タ−ピノーレン及びγ−テルピネン類等の連鎖移動剤を使用することもできる。
【0025】
重合は酸素を除去した反応器を用いて0〜100℃で行うことができ、重合温度は0〜80℃であることが特に好ましい。重合方式は連続式でもよいし、回分式であってもよく、重合温度等、あるいは攪拌等の操作条件等を反応途中で適宜に変更することもできる。尚、重合転化率が高くなるとゲル化する傾向があるため、重合転化率は80%以下に抑えることが好ましい。重合は所定の重合転化率に達した時点で、重合停止剤を添加することにより停止することができる。この重合停止剤としては、ヒドロキシルアミン、ジエチルヒドロキシルアミン等のアミン化合物、又はヒドロキノン等のキノン化合物等を用いることができる。
【0026】
重合停止後、生成した共役ジエン系ゴムラテックスから、必要に応じて、水蒸気蒸留等の方法により未反応の単量体を除去した後、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム等の塩、及び必要であれば、塩酸、硝酸、硫酸等を更に添加し、共役ジエン系ゴムをクラムとして凝固させることができる。このクラムを洗浄し、脱水した後、ドライヤー等により乾燥することにより、共役ジエン系ゴムとすることができる。
【0027】
本発明の油展ゴムは、共役ジエン系ゴム及び伸展油を含有する。
本発明の油展ゴムに用いられる共役ジエン系ゴムのムーニー粘度[ML1+4(100℃)]は40〜200であり、好ましくは70〜170である。ムーニー粘度が40未満であると、得られる加硫ゴムの耐摩耗性が低下する。一方、200を超えると、この油展ゴムを含有するゴム組成物の加工性が低下する。
【0028】
本発明の油展ゴムに用いられる伸展油としては特に限定されず、例えば芳香族系油、ナフテン系油、パラフィン系油を挙げることができる。これらの1種でもよいし、2種以上の混合物でもよい。また、これらのうち、芳香族系の伸展油が特に好ましい。
【0029】
上記共役ジエン系ゴム及び上記伸展油の含有割合は、共役ジエン系ゴムを100質量部〔以下、「部」と略記する。〕とした場合に、10〜60部であり、20〜50部であることが好ましい。伸展油が10部未満であると、加工性が十分に向上せず、60部を超えると、ゴム組成物の調製時に所要の加工性等に応じて配合される伸展油の量比が制限されるため好ましくない。得られる油展ゴムのムーニー粘度[ML1+4(100℃)]は好ましくは20〜180、特に好ましくは30〜150である。
【0030】
本発明の油展ゴムは、乳化剤の水溶液と伸展油とを混合し、攪拌等により伸展油の乳化物を調製した後、これを共役ジエン系ゴムラテックスに混合し、上述の方法により凝固させることによって得ることができる。
【0031】
本発明のゴム組成物は、上記共役ジエン系ゴムを含有するゴム成分、並びに無機充填剤及びカーボンブラックから選ばれる少なくとも1種を含有する。上記共役ジエン系ゴムの含有量は、全ゴム成分を100部とした場合、好ましくは30部以上、より好ましくは40部以上である。尚、本発明に係わる共役ジエン系ゴムのムーニー粘度[ML1+4(100℃)]は20〜200であり、好ましくは30〜150である。
【0032】
本発明のゴム組成物に用いられるゴム成分としては、上記共役ジエン系ゴム以外に他の共役ジエン系ゴムを併用することができる。そのようなゴム成分としては、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエン−イソプレン共重合ゴム、ブタジエン−スチレン−イソプレン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、天然ゴム及びクロロプレンゴム等を使用することができる。
【0033】
本発明のゴム組成物は、更に伸展油を含有したものとすることができ、この場合、伸展油の含有量は、上記共役ジエン系ゴム100部に対して10〜60部、好ましくは20〜50部である。また、伸展油を含有させる場合、用いる共役ジエン系ゴムのムーニー粘度[ML1+4(100℃)]は、40〜200であることが好ましい。
【0034】
本発明のゴム組成物に用いられる上記無機充填剤としては、シリカ、水酸化アルミニウム、シリコン酸化物を含有する複合酸化物(例えば、酸化アルミニウム、酸化カルシウム及び酸化マグネシウムから選ばれる少なくとも1種とシリコン酸化物との複合酸化物等)、亜鉛華、クレー、炭酸カルシウム及び炭酸マグネシウム等が挙げられる。これらのうち、特に、シリカが好ましい。このシリカは特に限定されず、一般に合成ゴムの明色補強配合剤として用いられているものを使用することができる。シリカの種類等も特に限定されず、湿式法ホワイトカーボン、乾式法ホワイトカーボン、コロイダルシリカ、及び特開昭62−62838号公報に記載された沈降シリカ等が挙げられる。これらのうち、含水ケイ酸を主成分とする湿式法ホワイトカーボンが特に好ましい。これらのシリカ系化合物はそれぞれ1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用することもできる。このシリカの比表面積も特に限定されないが、窒素吸着比表面積(ASTM D3037−81に準じBET法により測定される値)で通常50〜400m2/g、特に50〜220m2/g、更には70〜220m2/gであれば、補強性、耐摩耗性及び発熱性等が十分に改良される。シリカ等の無機充填剤を単独で用いる場合の含有量は、全ゴム成分を100部とした場合に、10〜200部であり、好ましくは20〜100部である。無機充填剤の含有量が10部未満であると、十分な補強効果が得られず、加硫ゴムの耐ウェットスキッド性等が低下する。一方、この含有量が200部であれば十分な補強効果が得られ、これを超えて多量に含有させる必要はない。
【0035】
上記カーボンブラックの種類等は特に限定されないが、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、グラファイト等を使用することができる。これらのうちでは特にファーネスブラックが好ましく、その具体例としては、SAF、ISAF、ISAF−HS、ISAF−LS、IISAF−HS、HAF、HAF−HS、HAF−LS、FEF等が挙げられる。これらのカーボンブラックは1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用することもできる。
【0036】
シリカの場合と同様にして測定したカーボンブラックの窒素吸着比表面積は特に限定されないが、5〜200m2/g、特に50〜150m2/g、更には80〜130m2/gであれば、加硫ゴムの引張強度、耐摩耗性等が十分に向上する。また、カーボンブラックのDBP吸着量も特に限定されないが、5〜300ml/100g、特に50〜200ml/100g、更には80〜160ml/100gであれば、引張強度、耐摩耗性等が十分に改良されるため好ましい。更に、カーボンブラックとして、特開平5−230290号公報に記載されたセチルトリメチルアンモニウムブロマイドの吸着比表面積が110〜170m2/gであり、165MPaの圧力で4回繰り返し圧縮した後のDBP(24M4DBP)吸油量が110〜130ml/100gであるハイストラクチャーカーボンブラックを用いることにより、耐摩耗性を更に向上させることができる。
【0037】
上記カーボンブラックを単独で用いる場合の含有量は、全ゴム成分を100部とした場合に、10〜200部であり、好ましくは30〜150部である。カーボンブラックの含有量が10部未満であると、加硫ゴムの耐磨耗性が低下することがある。
【0038】
カーボンブラックは上記無機充填剤と併用することができ、無機充填剤がシリカである場合、カーボンブラックとシリカを併用する際の使用量は、共役ジエン系ゴムを含有するゴム成分100部に対して、その合計量を10〜200部、特に30〜150部とすることが好ましい。この合計量が10部未満であると、十分な補強効果が得られず、加硫ゴムの耐ウェットスキッド性等が低下することがあり、好ましくない。一方、この含有量が200部であれば十分な補強効果が得られ、これを超えて多量に含有させる必要はない。更に、シリカとカーボンブラックとの量比は特に限定されないが、シリカを100部とした場合に、カーボンブラックを2〜400部、特に5〜300部とすることが好ましい。この範囲の量比であれば、優れた耐ウェットスキッド性、反発弾性及び引張強度等を併せ有する加硫ゴムとすることができる。
【0039】
上記ゴム成分100部中に共役ジエン系ゴムが少なくとも30部含有される場合、これらの含有量は、全ゴム成分100部に対して、好ましくは上記シリカを30〜100部及び/又は上記カーボンブラックを10〜100部、より好ましくは上記シリカを30〜90部、及び/又は上記カーボンブラックを10〜90部である。また、ゴム製品の補強のためにカーボン−シリカデュアルフェーズフィラー等を用いることもできる。
【0040】
上記成分に加え、加硫剤、シランカップリング剤、老化防止剤及び加工助剤等を用いることができる。
加硫剤としては、硫黄が代表的なものであるが、その他に硫黄含有化合物、過酸化物等を用いることができる。この加硫剤は、ゴム成分を100部とした場合に、通常、0.5〜10部、特に1〜6部配合することが好ましい。
加硫剤の使用の際には、加硫促進剤、加硫助剤等を併用することもできる。この加硫促進剤としては、ヘキサメチレンテトラミン等のアルデヒドアンモニア系加硫促進剤、
N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−オキシエチレン−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−オキシエチレン−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N’−ジイソプロピル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド等のスルフェンアミド系加硫促進剤、
ジフェニルグアニジン、ジオルトトリルグアニジン、オルトトリルビグアニジン等のグアニジン系加硫促進剤、
チオカルボアニリド、ジオルトトリルチオウレア、エチレンチオウレア、ジエチルチオウレア、トリメチルチオウレア等のチオウレア系加硫促進剤、
2−メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジスルフィド、2−メルカプトベンゾチアゾール亜鉛塩、2−メルカプトベンゾチアゾールナトリウム塩、2−メルカプトベンゾチアゾールシクロヘキシルアミン塩、2−(2,4−ジニトロフェニルチオ)ベンゾチアゾール等のチアゾール系加硫促進剤、
テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等のチウラム系加硫促進剤、
ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジ−n−ブチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジメチルジチオカルバミン酸鉛、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジ−n−ブチルジチオカルバミン酸亜鉛、ペンタメチレンジチオカルバミン酸亜鉛、エチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸テルル、ジメチルジチオカルバミン酸セレン、ジエチルジチオカルバミン酸セレン、ジメチルジチオカルバミン酸銅、ジメチルジチオカルバミン酸鉄、ジエチルジチオカルバミン酸ジエチルアミン、ペンタメチレンジチオカルバミン酸ピペリジン、メチルペンタメチレンジチオカルバミン酸ピペコリン等のジチオカルバミン酸系加硫促進剤、
イソプロピルキサントゲン酸ナトリウム、イソプロピルキサントゲン酸亜鉛、ブチルキサントゲン酸亜鉛等のキサントゲン酸系加硫促進剤等が挙げられ、これらは1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらはゴム成分を100部とした場合に、0.5〜15部、1〜10部配合することが好ましい。
【0041】
本発明のゴム組成物は、無機充填剤としてシリカが含有される場合、更にシランカップリング剤を含有させることによって、得られる加硫ゴムの耐摩耗性、あるいはtanδをより向上させることができる。
このシランカップリング剤は特に限定されず、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシ−エトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、 N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトメチルジメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等を使用することができる。
また、ビス−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]テトラスルフィド、ビス−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]ジスルフィド、γ−トリメトキシシリルプロピルジメチルチオカルバミルテトラスルフィド、γ−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアジルテトラスルフィド等を用いることもできる。これらのシランカップリング剤は1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用することもできる。
シランカップリング剤の含有量は、シリカを100部とした場合に、1〜20部、特に2〜15部とすることが好ましい。
【0042】
本発明のゴム組成物及びそれを用いたゴム製品は、以下のようにして製造することができる。
先ず、共役ジエン系ゴム、あるいは油展ゴムを含むゴム成分、シリカ等の無機充填剤、カーボンブラック、カーボン−シリカデュアル・フェイズフィラー等の補強剤、ゴム用伸展油、その他の配合剤等をバンバリーミキサ等の混練機を使用して70〜180℃の温度で混練する。その後、混練物を冷却し、これに更に硫黄等の加硫剤及び加硫促進剤等を、バンバリーミキサあるいはミキシングロール等を用いて配合し、所定の形状に成形する。次いで、140〜180℃の温度で加硫し、所要の加硫ゴム、即ち、ゴム製品を得る。
【0043】
本発明のゴム組成物を用いてなる加硫ゴムは、ウェットスキッド性及び反発弾性等に優れ、十分な耐摩耗性及び引張強度等を有し、また、良好な加工性をも併せ備えており、このゴム組成物は、タイヤ用ゴム組成物として有用であり、特に、タイヤトレッド用として好適である。
【0044】
【発明の実施の形態】
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明する。
〔1〕油展共役ジエン系ゴムの製造
製造例1(油展共役ジエン系ゴムA)
重合用容器に、水を200部、ロジン酸石鹸を4.5部、ブタジエンを66部、スチレンを26部、及びアクリロニトリルを5部仕込んだ。その後、重合用容器の温度を5℃に設定し、ラジカル重合開始剤としてp−メンタンハイドロパーオキサイドを0.03部、エチレンジアミン4酢酸ナトリウムを0.02部、硫酸第1鉄7水和物を0.01部、及びソジウムホルムアルデヒドスルホキシレートを0.03部添加して重合を開始した。重合転化率が30%に達した時点で、アクリロニトリルを3部更に添加し、重合転化率が60%に達した時点で、ジエチルヒドロキシルアミンを添加して重合を停止させた。次いで、スチームストリッピングにより未反応単量体を回収し、共役ジエン系ゴムラテックスを得た。
その後、このラテックスに含有される固形分100部に対して37.5部のアロマオイル(富士興産株式会社製、商品名「フッコール・アロマックス#3」)を含む乳化物を配合し、これを硫酸と塩化ナトリウムにより凝固させてクラムとした。次いで、このクラムを熱風乾燥機により乾燥させ、アロマオイルで油展された共役ジエン系ゴムAを得た。
【0045】
ラテックスに含まれる共役ジエン系ゴムR1のムーニー粘度は127、結合アクリロニトリル量は10質量%、結合スチレン量は20質量%、重量平均分子量は640000、ガラス転移点は−43℃であり、ガラス転移の外挿開始温度と外挿終了温度との差は11℃であった。また、油展共役ジエン系ゴムAのムーニー粘度は49であった。
【0046】
ガラス転移の外挿開始温度及び外挿終了温度はASTM D3418−82(Reapproved 1988)に準じて示差走査熱量計(DSC)により測定した。外挿開始温度は、図1に示すDSCの昇温曲線において、低温側のベースラインを延長した直線と、低温側の変曲点Plと高温側の変曲点Phとの間のほぼ直線部分Lを延長した直線と、が交わる点に対応する温度軸の読みとした。また、外挿終了温度は、図1に示すDSCの昇温曲線において、高温側のベースラインを延長した直線と、直線部分Lを延長した直線と、が交わる点に対応する温度軸の読みとした。
【0047】
製造例2(油展共役ジエン系ゴムB)
重合用容器に、水を200部、ロジン酸石鹸を4.5部、ブタジエンを69部、スチレンを19部及びアクリロニトリルを7部仕込んだ。その後、重合用容器の温度を5℃に設定し、ラジカル重合開始剤としてp−メンタンハイドロパーオキサイドを0.03部、エチレンジアミン4酢酸ナトリウムを0.02部、硫酸第1鉄7水和物を0.01部、及びソジウムホルムアルデヒドスルホキシレートを0.03部添加して重合を開始した。重合転化率が30%に達した時点で、アクリロニトリルを5部更に添加し、重合転化率が60%に達した時点で、ジエチルヒドロキシルアミンを添加して重合を停止させた。
次いで、製造例1の場合と同様にしてアロマオイルで油展された共役ジエン系ゴムBを得た。
【0048】
ラテックスに含まれる共役ジエン系ゴムR2のムーニー粘度は132、結合アクリロニトリル量は14質量%、結合スチレン量は15質量%、重量平均分子量640000、ガラス転移点は−45℃であり、ガラス転移の外挿開始温度と外挿終了温度との差は12℃であった。また、油展共役ジエン系ゴムBのムーニー粘度は45であった。
【0049】
製造例3(油展共役ジエン系ゴムC)
重合用容器に、水を200部、ロジン酸石鹸を4.5部、ブタジエンを66部、スチレンを26部、及びアクリロニトリルを8部仕込んだ。その後、重合用容器の温度を5℃に設定し、ラジカル重合開始剤としてp−メンタンハイドロパーオキサイドを0.03部、エチレンジアミン4酢酸ナトリウムを0.02部、硫酸第1鉄7水和物を0.01部、及びソジウムホルムアルデヒドスルホキシレートを0.03部添加して重合を開始した。重合転化率が60%に達した時点で、ジエチルヒドロキシルアミンを添加して重合を停止させた。
次いで、製造例1の場合と同様にしてアロマオイルで油展された共役ジエン系ゴムCを得た。
【0050】
ラテックスに含まれる共役ジエン系ゴムR3のムーニー粘度は125、結合アクリロニトリル量は10質量%、結合スチレン量は20質量%、重量平均分子量は640000、ガラス転移点は−41℃であり、ガラス転移の外挿開始温度と外挿終了温度との差は25℃であった。また、油展共役ジエン系ゴムCのムーニー粘度は47であった。
【0051】
製造例4(油展共役ジエン系ゴムD)
重合用容器に、水を200部、ロジン酸石鹸を4.5部、ブタジエンを58部、及びスチレンを42部仕込んだ。その後、重合用容器の温度を5℃に設定し、ラジカル重合開始剤としてp−メンタンハイドロパーオキサイドを0.03部、エチレンジアミン4酢酸ナトリウムを0.02部、硫酸第1鉄7水和物を0.01部、及びソジウムホルムアルデヒドスルホキシレートを0.03部添加して重合を開始した。重合転化率が60%に達した時点で、ジエチルヒドロキシルアミンを添加して重合を停止させた。
次いで、製造例1の場合と同様にしてアロマオイルで油展された共役ジエン系ゴムDを得た。
【0052】
ラテックスに含まれる共役ジエン系ゴムR4のムーニー粘度は126、結合スチレン量は35質量%、重量平均分子量は760000、ガラス転移点は−40℃であった。また、油展共役ジエン系ゴムDのムーニー粘度は47であった。表1に共役ジエン系ゴム及び油展共役ジエン系ゴムの物性を示す。
【0053】
【表1】
【0054】
共役ジエン系ゴムR1〜R4のアクリロニトリル及びスチレンの結合量の測定は(a)及び(b)に示す方法により行った。また、その他各物性の測定は(c)〜(e)に示す方法により行った。
(a)結合アクリロニトリル量(質量%);ゴムをトルエンに溶解し、メタノールで再沈殿させる操作を2回行って精製し、真空乾燥した後、元素分析をし、窒素含有量から算出した。
(b)結合スチレン量(質量%);ゴムをトルエンに溶解し、メタノールで再沈殿させる操作を2回行って精製し、真空乾燥した後、赤外吸収スペクトル法により検量線を作成して求めた。
(c)ガラス転移点;セイコー電子工業株式会社製の示差走査熱量計を用いて、ASTM D3418−82(Reapproved 1988)に準じて測定した。尚、ガラス転移点はガラス転移の外挿開始温度とする。
(d)ムーニー粘度[(ML1+4(100℃)];JIS K 6300−1994に準じて、測定温度100℃、予熱時間1分、測定時間4分の条件で測定した。
(e)重量平均分子量(Mw);GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフ)を用いて、ポリスチレン換算で求めた。
【0055】
〔2〕ゴム組成物及び加硫ゴムの調製
製造例1〜4の油展共役ジエン系ゴムA〜Dを使用し、表2及び表3の配合処方でラボプラストミル(東洋精機株式会社製)により混練し、実施例1〜6及び比較例1〜4のゴム組成物とした。その後、加硫プレスにより160℃で20分加硫し、加硫ゴムを得た。また、これら各々の実施例又は比較例のゴム組成物の加工性及びムーニー粘度、並びに加硫ゴムの物性を測定した。結果を表2及び表3に併記する。尚、実施例6においては、上記共役ジエン系ゴムR1と、スチレン−ブタジエンゴム(スチレン−ブタジエンエマルジョン、商品名「SBR0120」、ジェイ・エス・アール社製)がそれぞれアロマオイルで油展された油展ゴムの混合物を用いた。また、比較例4においては、上記共役ジエン系ゴムR3と、上記スチレン−ブタジエンゴムがそれぞれアロマオイルで油展された油展ゴムの混合物を用いた。油展ゴムは、固形ゴム100部に対して37.5部のアロマオイルが含有されるように調製した。
【0056】
表2及び表3の配合処方において用いた配合剤は以下のとおりである。
(ア)シリカ;日本シリカ株式会社製、商品名「ニプシルAQ」
(イ)シランカップリング剤;デグッサ社製、商品名「Si69」
(ウ)カーボンブラック;三菱化学株式会社製、商品名「ダイヤブラックH」
(エ)老化防止剤;大内新興化学工業株式会社製、商品名「ノクラック810NA」
(オ)加硫促進剤(I);大内新興化学工業株式会社製、商品名「ノクセラーCZ」
(カ)加硫促進剤(II);大内新興化学工業株式会社製、商品名「ノクセラーD」
【0057】
また、各物性等は以下の方法により測定した。尚、ゴム組成物のムーニー粘度は油展共役ジエン系ゴムの場合と同様の方法により測定した。
(a)加工性;ゴム組成物をロールにより混練した際のロールへの巻き付き性により評価した。尚、評価基準は以下のとおりである。
○;ロール面からの浮きがなく、優れている。△;巻き付くが、浮き上がりが生じ、劣っている。×;ほとんど巻き付かず、非常に劣っている。
(b)引張特性;JIS K 6301−1995に準じ、3号型試験片を使用し、測定温度25℃、引張速度500mm/分の条件で、破断時伸び及び引張強さを測定した。
(c)反発弾性;ダンロップトリプソメ−タを用いて50℃で測定した。
(d)tanδ;米国レオメトリックス社製の動的アナライザー(RDA)を使用し、動歪み3%、周波数10Hz、測定温度0℃及び50℃の条件で測定した。0℃での数値が大きいほど、ウェットスキッド抵抗が大きく良好である。また、50℃での数値が小さいほど、転がり抵抗が小さく良好である。
(e)ランボーン摩耗指数;ランボーン型摩耗試験機を使用し、スリップ率が60%での摩耗量を算出した。測定温度は50℃である。指数が大きいほど耐摩耗性は良好である。
【0058】
【表2】
【0059】
【表3】
【0060】
表2の結果によれば、実施例1〜6のゴム組成物は、いずれも加工性に優れ、得られる加硫ゴムの物性も良好であることが分かる。また、0℃のtanδが大きく、50℃のtanδが小さいため、タイヤとした場合に、ウェットスキッド抵抗が大きく且つ転がり抵抗が小さいことが推察される。更に、ランボーン摩耗指数も十分に大きく、耐摩耗性に優れた加硫ゴムが得られることが分かる。また、シランカップリング剤を減量した実施例2及び4においては、ムーニー粘度の上昇が小幅に抑えられ、他の実施例と同等の引張強度及び耐摩耗性が得られており、シランカップリング剤を減量しても優れた性能のゴム組成物及び加硫ゴムが得られていることが分かる。シリカを含有し、カーボンブラックを含有しない実施例5は、実施例1とほぼ同等の性能を示した。
【0061】
一方、アクリロニトリルを重合過程において分割して添加せず、重合開始前に一括して添加し、製造した共役ジエン系ゴムR3は、ガラス転移の開始温度と終了温度の差が大きく、これを用いた比較例3では、加工性に劣り、0℃のtanδが十分に向上していないことが分かる(表3参照)。更に、アクリロニトリルを使用せずに製造した共役ジエン系ゴムR4を用いた比較例1、2では、シランカップリング剤の減量による加工性の低下が明らかであり、0℃のtanδも十分に向上せず、ランボーン摩耗指数も小さいことが分かる。
【0062】
【発明の効果】
本発明のゴム組成物は、良好な加工性を有し、得られるゴム製品の転がり抵抗が小さく、ウェットスキッド性に優れ、十分な耐磨耗性及び引張強度等を併せ有する加硫ゴムとすることができ、特にタイヤ用として有用である。また、本発明の油展ゴムは、上記のようなゴム組成物とするのに有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】製造例1における油展前の共役ジエン系ゴムのガラス転移の外挿開始温度と外挿終了温度の求め方を示すDSCのチャートである。
Claims (6)
- オレフィン性不飽和ニトリル単量体、芳香族ビニル単量体及び共役ジエン単量体を含む単量体を、上記オレフィン性不飽和ニトリル単量体を分割して添加し、且つ重合途中における全単量体仕込み分の重合転化率が10〜95%となった後に、該オレフィン性不飽和ニトリル単量体の残部を間欠的に又は連続的に添加して、共重合させてなり、ガラス転移点が−60〜0℃であり、ガラス転移の外挿開始温度と外挿終了温度との差が20℃以下であって、繰り返し単位として、(1)9〜15質量%のオレフィン性不飽和ニトリル単量体単位、(2)10〜50質量%の芳香族ビニル単量体単位、及び(3)20〜81質量%の共役ジエン単量体単位〔(1)、(2)及び(3)の合計量を100質量%とする。〕を有し、ムーニー粘度[ML1+4(100℃)]が40〜200である共役ジエン系ゴムを100質量部、及び伸展油を10〜60質量部含むことを特徴とする油展ゴム。
- オレフィン性不飽和ニトリル単量体、芳香族ビニル単量体及び共役ジエン単量体を含む単量体を、上記オレフィン性不飽和ニトリル単量体を分割して添加し、且つ重合途中における全単量体仕込み分の重合転化率が10〜95%となった後に、該オレフィン性不飽和ニトリル単量体の残部を間欠的に又は連続的に添加して、共重合させてなり、ガラス転移点が−60〜0℃であり、ガラス転移の外挿開始温度と外挿終了温度との差が20℃以下であって、繰り返し単位として、(1)9〜15質量%のオレフィン性不飽和ニトリル単量体単位、(2)10〜50質量%の芳香族ビニル単量体単位、及び(3)20〜81質量%の共役ジエン単量体単位〔(1)、(2)及び(3)の合計量を100質量%とする。〕を有し、ムーニー粘度[ML1+4(100℃)]が20〜200である共役ジエン系ゴムを含有するゴム成分を100質量部、並びに、無機充填剤及びカーボンブラックから選ばれる少なくとも1種を10〜200質量部含有することを特徴とするゴム組成物。
- 更に伸展油を上記ゴム成分100質量部に対して10〜60質量部含有し、上記共役ジエン系ゴムのムーニー粘度[ML1+4(100℃)]が40〜200である請求項2に記載のゴム組成物。
- 上記無機充填剤がシリカである請求項2又は3に記載のゴム組成物。
- 上記全ゴム成分100質量部中に上記共役ジエン系ゴムを少なくとも30質量部含有し、全ゴム成分100質量部に対して、上記シリカを30〜100重量部及び/又は上記カーボンブラックを10〜100重量部含有する請求項4に記載のゴム組成物。
- 更にシランカップリング剤を含む請求項4又は5に記載のゴム組成物。
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