JP3627014B2 - 補償光学装置付き眼底カメラ - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、眼底カメラに関する、特に、光書き込み型空間位相変調素子と光波干渉計から成る補償光学装置を利用して、人の眼の角膜及び水晶体に存在する複雑な収差やゆらぎの影響による分解能の低下を防止する補償光学装置付き眼底カメラに関する。
【0002】
【従来の技術】
光の波面歪みを実時間で検出し補正する補償光学技術の研究は、主に大気ゆらぎの影響によりぼやけた天体像の改善を目的として行われてきた。その典型例である波面センサーと形状可変鏡を組み合わせたシステムは、主に天文学の分野では実用化されている。
【0003】
この従来技術を図3に示す。光路中の媒質の位相変動の影響によって乱された波面60を形状可変鏡61で反射させ、その反射光の一部をビームスプリッター(BS)62によって取り出し、それを波面センサー63に入射させる。ここで、形状可変鏡61とは、薄い鏡64の背面に電歪素子65が多数取り付けられ、それぞれの電歪素子65に印可する電圧に応じて鏡の形状を任意に変化させることができる装置である。
【0004】
波面センサー63では波面の乱れが計測され、そのデータが制御装置66へと導かれる。制御装置66では、そのデータに基づいて波面を補正するために必要な鏡の形状、すなわち各電歪素子65に印可する電圧が計算され、それに基づいて形状可変鏡の形状を変化させる。この一連の動作を素早く行うことで、反射光の波面を実時間で補正することができる。この形状可変鏡61を映像システムに組み込むことにより、波面の乱れによって低下した映像システムの分解能を向上させることができる。
【0005】
一方、眼底カメラの分野では、人の眼の角膜や水晶体に存在する複雑な収差の影響により、眼球内に照射し網膜で反射して得られる撮像光の波面が歪みを生じ、これに起因して撮影される網膜像の分解能が制限されることが知られており、このような収差の影響を除去して高分解能の網膜像を得ることが求められている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
このような眼底カメラにおけるニーズに対応するために、従来の波面センサーと形状可変鏡を組み合わせたシステムを、眼底カメラに適用して収差を補正する構成も考えられるが、従来の波面センサー及び補償システムは、大型、高価、大消費電力、波面の高精度制御が困難、コンピュータによる膨大な計算が必要などの理由により、広く一般には普及していない。特に、眼底カメラ等の精密医療機器の分野には、従来のシステムは大型すぎて適用は困難である。
【0007】
本発明は、このような眼底カメラにおける従来の問題を解決することを目的とするものであり、小形で安価な装置であって消費電力が少なく、眼底カメラの分解能を損なう原因となる角膜及び水晶体の歪みをコンピュータによる計算を必要とせずに、高分解能かつ実時間で効果的に補正することができるようにした補償光学装置付き眼底カメラを実現することである。
【0008】
ところで、本発明者等は、各種の工業計測等に適用できる汎用的な補償光学装置の実現を目指して、高分解能の光書き込み型液晶空間位相変調素子とその駆動原理としてフィードバック干渉法を利用した光駆動型波面補正映像方法及び装置に係る発明についてすでに出願をしている(特願2000−227874)が、本発明は、この先行する発明を、眼底カメラに適用する具体的な構成に新規性、進歩性を有する発明である。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題を解決するために、眼底カメラ光学系、及び光書き込み型空間位相変調素子と光波干渉計で構成される補償光学装置とを有し、人の眼の角膜及び水晶体に存在する複雑な収差に起因する網膜から反射された撮像光の波面歪みに対して逆方向の波面歪みを生み出す位相分布を上記補償光学装置によって上記光書き込み型空間位相変調素子の位相変調面に形成し、上記撮像光を上記位相変調面で反射させることにより、上記撮像光の波面歪みを相殺して波面歪みの補償を行い分解能を向上させる補償光学装置付き眼底カメラであって、上記眼底カメラ光学系は、照明光を眼球内に照射し、網膜からの反射光を眼の瞳孔と共役な位置にある上記光書き込み型空間位相変素子の位相変調面で反射させ、それを眼底観察用カメラに結像させる光学系を有し、さらに、上記眼底カメラ光学系は、補償光学装置駆動用レーザー光を眼球内に照射し、網膜状の1点に収束させ、その反射光を上記位相変調面で反射させ、それを補償光学装置に導入する光学系とを有し、上記補償光学装置は、上記位相変調面で反射した上記補償光学装置駆動用レーザ光を上記光波干渉計に導入することにより角膜及び水晶体に存在する収差を反映した干渉縞を得て、上記光書き込み型空間位相変調素子の書き込み面にこれを照射することにより角膜及び水晶体に存在する収差を打ち消すような位相分布を上記位相変調面に形成することを特徴とする補償光学装置付き眼底カメラを提供する。
【0010】
そして、本発明に係る補償光学装置付き眼底カメラは、上記干渉縞を高感度CCDカメラで撮像し、この撮像データを投影装置により上記光書き込み型空間位相変調素子の書き込み面に書き込む構成としてもよい。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明に係る補償光学装置付き眼底カメラ装置の実施の形態を図面を参照して以下説明する。本カメラ装置は全体的には、図1、2に示すように、眼底カメラ光学系、位相変調器ユニットと光波干渉計とから成る補償光学装置によって構成される。なお、位相変調器ユニットには、光書き込み型液晶空間位相変調素子と、結像レンズ系、液晶ディスプレイ、光源等で構成される投影装置が含まれている。
【0012】
眼底カメラでは、人の眼の角膜や水晶体に存在する複雑な収差の影響により、その分解能が制限されることが知られている。本発明では、その収差の影響を除去して高分解能の網膜像を得るものである。
【0013】
その基本的な原理は、眼底カメラにおいて人の眼の角膜や水晶体に存在する複雑な収差やゆらぎの影響により、網膜からの反射光(撮像光)は光波の波面歪みを生じるが、この波面歪みと逆方向の波面歪みを生み出す位相分布を補償光学装置によって位相変調器ユニットにある光書き込み型液晶空間位相変調素子の位相変調面に形成し、撮像光をその位相変調面で反射させることにより、撮像光の波面歪みを相殺して波面歪みの補償を行い分解能を向上させるものである。
【0014】
上記のとおり、本カメラ装置は全体的には、眼底カメラ光学系と補償光学装置とから構成され、さらに詳細には、本カメラ装置は、補償光学装置駆動用のレーザー光源、眼底照明用のハロゲン光源、レンズL1、ビームスプリッターBS1、ビームスプリッターBS2、偏光板、レンズL2、レンズL3、ビームスプリッターBS3、ビームスプリッターBS4、レンズL4、眼底観察用カメラ、レンズL5、レンズL6、高感度CCDカメラ、マッハ・ツェンダー型干渉計、及び位相変調器ユニットとから構成される。
【0015】
眼底照明用の光源は、空間的にインコーヒレントなハロゲン光源を利用しているが、レーザー光のような空間的にコーヒレントな光源を用いてもよい。また、連続光のみならず、フラッシュ光源のような非連続光でも良い。レンズL2、L3は、眼の瞳孔と光書き込み型液晶空間位相変調素子の位相変調面が互いに光学的に共役の位置、即ち結像関係となるように配置されている。
【0016】
ハロゲン光源からの照明光は、レンズL1、ビームスプリッターBS1、ビームスプリッターBS2を通して、眼球内に照射される。この照明光は、角膜及び水晶体を通して網膜に照射され、その反射光が再度水晶体、角膜を通して眼球から出て、ビームスプリッターBS2、偏光板、レンズL2、L3、ビームスプリッターBS3、BS4を通過し、位相変調器ユニット中の光書き込み型液晶空間位相変調素子の位相変調面で反射される。その反射光が、ビームスプリッターBS4で反射し、レンズL4を通して眼底観察用カメラに結像され、網膜像が撮影される。
【0017】
補償光学装置駆動用のレーザー光は、ビームスプリッターBS1、ビームスプリッターBS2を通して眼球内に照射され、角膜及び水晶体を通して網膜上の1点に収束され、網膜からの反射光は、再度水晶体、角膜を通し眼球から出て、ビームスプリッターBS2、偏光板、レンズL2、レンズL3、ビームスプリッターBS3、ビームスプリッターBS4を通してから位相変調器ユニット中の光書き込み型液晶空間位相変調素子の位相変調面で反射される。
【0018】
補償光学装置駆動用レーザー光は直線偏光であり、上記偏光板はその偏光方向と直交した偏光成分の光波のみを透過させるように配置される。このことにより、角膜表面で反射したレーザー光を遮断し、網膜状の1点から反射したレーザー光のみを透過させることができる。
【0019】
位相変調面で反射された補償光学装置駆動用のレーザー光がビームスプリッターBS4を通過してビームスプリッターBS3により反射し、レンズL5、レンズL6、反射鏡を通して、マッハ・ツェンダー型干渉計に入射する。そして、後述する位相変調器ユニット中の光書き込み型液晶空間位相変調素子の位相変調動作を行い、撮像光の波面歪みを相殺して波面歪みの補償を行い分解能を向上させるものである。
【0020】
位相変調器ユニットをさらに詳細に説明する。上記光書き込み型液晶空間位相変調素子は、書き込み面Wに照射した光の強さに依存して、その裏側の位相変調面Rの変調位相が変化する素子である。ただし、位相変調には偏光依存性があり、液晶分子の配向方向と平行な偏光成分の光波のみの位相を変調させる。また、この素子は書き込み面Wに照射する強度パターンに応じて任意に位相変調を行うことができるため、高分解能な波面補正能力を持つ。
【0021】
波面を乱す擾乱媒質となる収差をもった人の眼の角膜及び水晶体は、上述のとおり、レンズL2とL3により位相変調面Rに結像されるように配置される。
【0022】
この光学系においては、光書き込み型液晶空間位相変調素子の位相変調面Rの位相が角膜及び水晶体に存在する収差と向きが反対で大きさがその半分の分布となると、反射の過程で両者が相殺し合い、このカメラ装置における角膜及び水晶体の収差の影響が除去される。このとき、角膜および水晶体の収差の影響によってぼやけていた眼底観察用カメラ上の像は、鮮明な像へと変化する。
【0023】
次に補償光学装置について説明する。補償光学装置駆動用レーザー光は、上記のとおり、光書き込み型液晶空間位相変調素子の位相変調面Rで反射されビームスプリッターBS4を通過し、ビームスプリッターBS3を経て、レンズL5とレンズL6、反射鏡を介してマッハ・ツェンダー型干渉計に入射する。
【0024】
この干渉計では、光波の垂直偏光成分が偏光ビームスプリッターPBSで反射され、レンズL7、反射鏡とレンズL8、半波長板、さらにビームスプリッターBS5を介して高感度CCDカメラに入射される。一方、水平偏光成分は偏光ビームスプリッターPBSを透過し、レンズL9とL10によりその大きさが拡大され乱れた波面から擬似的に参照平面波が形成され、反射鏡及びビームスプリッターBS5を介して高感度CCDカメラに入射される。これらの二つの光波により角膜及び水晶体に存在する収差を忠実に反映した干渉縞が形成され、この干渉縞が高感度CCDカメラによって撮影される。
【0025】
なお、干渉縞を形成するためには重ね合わせられる二光波の偏光方向を揃える必要があるため、半波長板を導入して一方の光波の偏光方向を90度回転させ、二光波の偏光方向を揃えている。また、この補償光学装置を駆動するためのレーザー光源の偏光方向と、それと直交する偏光成分の光波を透過するように配置された偏光板は重ね合わせられる二光波の強度が等しくなるように調整する。
【0026】
上記のように高感度CCDカメラで撮影された干渉縞の電気的映像信号は、液晶ディスプレイ上に二次元画像として表示される。この液晶ディスプレイ上の二次元画像は光源からの投光で結像レンズ系L11、L12を通して光書き込み型液晶空間位相変調素子の書き込み面W(位相変調面Rの裏側)に結像される。
【0027】
レンズL9とL10については、参照平面波を作成するための拡大率に合わせて決定する(例えば、5倍の拡大率を得るためには、レンズL9とL10の焦点距離の比を1対5にする)。以上を実現すると、光書き込み型液晶空間位相変調素子の偏光依存性により、素子の位相変調面では、入射光のうち垂直偏光成分の光波のみの位相が変調されることになり、フィードバック干渉計が実現される。その結果、光書き込み型液晶空間位相変調素子の位相変調面の位相分布が角膜及び水晶体に存在する収差やゆらぎを打ち消すような分布となり、補償光学システムとして動作することになる。
【0028】
以上本発明に係る眼底カメラ装置の実施の形態を実施例に基づいて説明したが、本発明はこのような実施例に限定されることなく特許請求の範囲記載の範囲内でいろいろな実施例があることは言うまでもない。
【0029】
【発明の効果】
以上の構成から成る本発明によると、小形で安価な装置であって消費電力が少なく、眼底カメラの分解能を損なう原因となる角膜及び水晶体の歪みをコンピュータによる計算を必要とせずに高分解能かつ実時間で効果的に補正することができるようにした補償光学装置付き眼底カメラを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の基本的構成において、主に眼底カメラ光学系を示す光学機器構成図である。
【図2】本発明の基本的構成において、主に、位相変調器ユニットと光波干渉計から成る補償光学装置を示す光学機器構成図である。
【図3】形状可変鏡を用いた従来の補償光学システムの概念図である。
【符号の説明】
BS1、BS2、BS3、BS4、BS5 ビームスプリッター
L1、L2、L3、L4、L5、L6、L7、L8、L9、L10、L11、L12 レンズ
PBS 偏光ビームスプリッター
R 光書込み型液晶空間位相変調素子の位相変調面
W 光書込み型液晶空間位相変調素子の書込み面
【発明の属する技術分野】
本発明は、眼底カメラに関する、特に、光書き込み型空間位相変調素子と光波干渉計から成る補償光学装置を利用して、人の眼の角膜及び水晶体に存在する複雑な収差やゆらぎの影響による分解能の低下を防止する補償光学装置付き眼底カメラに関する。
【0002】
【従来の技術】
光の波面歪みを実時間で検出し補正する補償光学技術の研究は、主に大気ゆらぎの影響によりぼやけた天体像の改善を目的として行われてきた。その典型例である波面センサーと形状可変鏡を組み合わせたシステムは、主に天文学の分野では実用化されている。
【0003】
この従来技術を図3に示す。光路中の媒質の位相変動の影響によって乱された波面60を形状可変鏡61で反射させ、その反射光の一部をビームスプリッター(BS)62によって取り出し、それを波面センサー63に入射させる。ここで、形状可変鏡61とは、薄い鏡64の背面に電歪素子65が多数取り付けられ、それぞれの電歪素子65に印可する電圧に応じて鏡の形状を任意に変化させることができる装置である。
【0004】
波面センサー63では波面の乱れが計測され、そのデータが制御装置66へと導かれる。制御装置66では、そのデータに基づいて波面を補正するために必要な鏡の形状、すなわち各電歪素子65に印可する電圧が計算され、それに基づいて形状可変鏡の形状を変化させる。この一連の動作を素早く行うことで、反射光の波面を実時間で補正することができる。この形状可変鏡61を映像システムに組み込むことにより、波面の乱れによって低下した映像システムの分解能を向上させることができる。
【0005】
一方、眼底カメラの分野では、人の眼の角膜や水晶体に存在する複雑な収差の影響により、眼球内に照射し網膜で反射して得られる撮像光の波面が歪みを生じ、これに起因して撮影される網膜像の分解能が制限されることが知られており、このような収差の影響を除去して高分解能の網膜像を得ることが求められている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
このような眼底カメラにおけるニーズに対応するために、従来の波面センサーと形状可変鏡を組み合わせたシステムを、眼底カメラに適用して収差を補正する構成も考えられるが、従来の波面センサー及び補償システムは、大型、高価、大消費電力、波面の高精度制御が困難、コンピュータによる膨大な計算が必要などの理由により、広く一般には普及していない。特に、眼底カメラ等の精密医療機器の分野には、従来のシステムは大型すぎて適用は困難である。
【0007】
本発明は、このような眼底カメラにおける従来の問題を解決することを目的とするものであり、小形で安価な装置であって消費電力が少なく、眼底カメラの分解能を損なう原因となる角膜及び水晶体の歪みをコンピュータによる計算を必要とせずに、高分解能かつ実時間で効果的に補正することができるようにした補償光学装置付き眼底カメラを実現することである。
【0008】
ところで、本発明者等は、各種の工業計測等に適用できる汎用的な補償光学装置の実現を目指して、高分解能の光書き込み型液晶空間位相変調素子とその駆動原理としてフィードバック干渉法を利用した光駆動型波面補正映像方法及び装置に係る発明についてすでに出願をしている(特願2000−227874)が、本発明は、この先行する発明を、眼底カメラに適用する具体的な構成に新規性、進歩性を有する発明である。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題を解決するために、眼底カメラ光学系、及び光書き込み型空間位相変調素子と光波干渉計で構成される補償光学装置とを有し、人の眼の角膜及び水晶体に存在する複雑な収差に起因する網膜から反射された撮像光の波面歪みに対して逆方向の波面歪みを生み出す位相分布を上記補償光学装置によって上記光書き込み型空間位相変調素子の位相変調面に形成し、上記撮像光を上記位相変調面で反射させることにより、上記撮像光の波面歪みを相殺して波面歪みの補償を行い分解能を向上させる補償光学装置付き眼底カメラであって、上記眼底カメラ光学系は、照明光を眼球内に照射し、網膜からの反射光を眼の瞳孔と共役な位置にある上記光書き込み型空間位相変素子の位相変調面で反射させ、それを眼底観察用カメラに結像させる光学系を有し、さらに、上記眼底カメラ光学系は、補償光学装置駆動用レーザー光を眼球内に照射し、網膜状の1点に収束させ、その反射光を上記位相変調面で反射させ、それを補償光学装置に導入する光学系とを有し、上記補償光学装置は、上記位相変調面で反射した上記補償光学装置駆動用レーザ光を上記光波干渉計に導入することにより角膜及び水晶体に存在する収差を反映した干渉縞を得て、上記光書き込み型空間位相変調素子の書き込み面にこれを照射することにより角膜及び水晶体に存在する収差を打ち消すような位相分布を上記位相変調面に形成することを特徴とする補償光学装置付き眼底カメラを提供する。
【0010】
そして、本発明に係る補償光学装置付き眼底カメラは、上記干渉縞を高感度CCDカメラで撮像し、この撮像データを投影装置により上記光書き込み型空間位相変調素子の書き込み面に書き込む構成としてもよい。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明に係る補償光学装置付き眼底カメラ装置の実施の形態を図面を参照して以下説明する。本カメラ装置は全体的には、図1、2に示すように、眼底カメラ光学系、位相変調器ユニットと光波干渉計とから成る補償光学装置によって構成される。なお、位相変調器ユニットには、光書き込み型液晶空間位相変調素子と、結像レンズ系、液晶ディスプレイ、光源等で構成される投影装置が含まれている。
【0012】
眼底カメラでは、人の眼の角膜や水晶体に存在する複雑な収差の影響により、その分解能が制限されることが知られている。本発明では、その収差の影響を除去して高分解能の網膜像を得るものである。
【0013】
その基本的な原理は、眼底カメラにおいて人の眼の角膜や水晶体に存在する複雑な収差やゆらぎの影響により、網膜からの反射光(撮像光)は光波の波面歪みを生じるが、この波面歪みと逆方向の波面歪みを生み出す位相分布を補償光学装置によって位相変調器ユニットにある光書き込み型液晶空間位相変調素子の位相変調面に形成し、撮像光をその位相変調面で反射させることにより、撮像光の波面歪みを相殺して波面歪みの補償を行い分解能を向上させるものである。
【0014】
上記のとおり、本カメラ装置は全体的には、眼底カメラ光学系と補償光学装置とから構成され、さらに詳細には、本カメラ装置は、補償光学装置駆動用のレーザー光源、眼底照明用のハロゲン光源、レンズL1、ビームスプリッターBS1、ビームスプリッターBS2、偏光板、レンズL2、レンズL3、ビームスプリッターBS3、ビームスプリッターBS4、レンズL4、眼底観察用カメラ、レンズL5、レンズL6、高感度CCDカメラ、マッハ・ツェンダー型干渉計、及び位相変調器ユニットとから構成される。
【0015】
眼底照明用の光源は、空間的にインコーヒレントなハロゲン光源を利用しているが、レーザー光のような空間的にコーヒレントな光源を用いてもよい。また、連続光のみならず、フラッシュ光源のような非連続光でも良い。レンズL2、L3は、眼の瞳孔と光書き込み型液晶空間位相変調素子の位相変調面が互いに光学的に共役の位置、即ち結像関係となるように配置されている。
【0016】
ハロゲン光源からの照明光は、レンズL1、ビームスプリッターBS1、ビームスプリッターBS2を通して、眼球内に照射される。この照明光は、角膜及び水晶体を通して網膜に照射され、その反射光が再度水晶体、角膜を通して眼球から出て、ビームスプリッターBS2、偏光板、レンズL2、L3、ビームスプリッターBS3、BS4を通過し、位相変調器ユニット中の光書き込み型液晶空間位相変調素子の位相変調面で反射される。その反射光が、ビームスプリッターBS4で反射し、レンズL4を通して眼底観察用カメラに結像され、網膜像が撮影される。
【0017】
補償光学装置駆動用のレーザー光は、ビームスプリッターBS1、ビームスプリッターBS2を通して眼球内に照射され、角膜及び水晶体を通して網膜上の1点に収束され、網膜からの反射光は、再度水晶体、角膜を通し眼球から出て、ビームスプリッターBS2、偏光板、レンズL2、レンズL3、ビームスプリッターBS3、ビームスプリッターBS4を通してから位相変調器ユニット中の光書き込み型液晶空間位相変調素子の位相変調面で反射される。
【0018】
補償光学装置駆動用レーザー光は直線偏光であり、上記偏光板はその偏光方向と直交した偏光成分の光波のみを透過させるように配置される。このことにより、角膜表面で反射したレーザー光を遮断し、網膜状の1点から反射したレーザー光のみを透過させることができる。
【0019】
位相変調面で反射された補償光学装置駆動用のレーザー光がビームスプリッターBS4を通過してビームスプリッターBS3により反射し、レンズL5、レンズL6、反射鏡を通して、マッハ・ツェンダー型干渉計に入射する。そして、後述する位相変調器ユニット中の光書き込み型液晶空間位相変調素子の位相変調動作を行い、撮像光の波面歪みを相殺して波面歪みの補償を行い分解能を向上させるものである。
【0020】
位相変調器ユニットをさらに詳細に説明する。上記光書き込み型液晶空間位相変調素子は、書き込み面Wに照射した光の強さに依存して、その裏側の位相変調面Rの変調位相が変化する素子である。ただし、位相変調には偏光依存性があり、液晶分子の配向方向と平行な偏光成分の光波のみの位相を変調させる。また、この素子は書き込み面Wに照射する強度パターンに応じて任意に位相変調を行うことができるため、高分解能な波面補正能力を持つ。
【0021】
波面を乱す擾乱媒質となる収差をもった人の眼の角膜及び水晶体は、上述のとおり、レンズL2とL3により位相変調面Rに結像されるように配置される。
【0022】
この光学系においては、光書き込み型液晶空間位相変調素子の位相変調面Rの位相が角膜及び水晶体に存在する収差と向きが反対で大きさがその半分の分布となると、反射の過程で両者が相殺し合い、このカメラ装置における角膜及び水晶体の収差の影響が除去される。このとき、角膜および水晶体の収差の影響によってぼやけていた眼底観察用カメラ上の像は、鮮明な像へと変化する。
【0023】
次に補償光学装置について説明する。補償光学装置駆動用レーザー光は、上記のとおり、光書き込み型液晶空間位相変調素子の位相変調面Rで反射されビームスプリッターBS4を通過し、ビームスプリッターBS3を経て、レンズL5とレンズL6、反射鏡を介してマッハ・ツェンダー型干渉計に入射する。
【0024】
この干渉計では、光波の垂直偏光成分が偏光ビームスプリッターPBSで反射され、レンズL7、反射鏡とレンズL8、半波長板、さらにビームスプリッターBS5を介して高感度CCDカメラに入射される。一方、水平偏光成分は偏光ビームスプリッターPBSを透過し、レンズL9とL10によりその大きさが拡大され乱れた波面から擬似的に参照平面波が形成され、反射鏡及びビームスプリッターBS5を介して高感度CCDカメラに入射される。これらの二つの光波により角膜及び水晶体に存在する収差を忠実に反映した干渉縞が形成され、この干渉縞が高感度CCDカメラによって撮影される。
【0025】
なお、干渉縞を形成するためには重ね合わせられる二光波の偏光方向を揃える必要があるため、半波長板を導入して一方の光波の偏光方向を90度回転させ、二光波の偏光方向を揃えている。また、この補償光学装置を駆動するためのレーザー光源の偏光方向と、それと直交する偏光成分の光波を透過するように配置された偏光板は重ね合わせられる二光波の強度が等しくなるように調整する。
【0026】
上記のように高感度CCDカメラで撮影された干渉縞の電気的映像信号は、液晶ディスプレイ上に二次元画像として表示される。この液晶ディスプレイ上の二次元画像は光源からの投光で結像レンズ系L11、L12を通して光書き込み型液晶空間位相変調素子の書き込み面W(位相変調面Rの裏側)に結像される。
【0027】
レンズL9とL10については、参照平面波を作成するための拡大率に合わせて決定する(例えば、5倍の拡大率を得るためには、レンズL9とL10の焦点距離の比を1対5にする)。以上を実現すると、光書き込み型液晶空間位相変調素子の偏光依存性により、素子の位相変調面では、入射光のうち垂直偏光成分の光波のみの位相が変調されることになり、フィードバック干渉計が実現される。その結果、光書き込み型液晶空間位相変調素子の位相変調面の位相分布が角膜及び水晶体に存在する収差やゆらぎを打ち消すような分布となり、補償光学システムとして動作することになる。
【0028】
以上本発明に係る眼底カメラ装置の実施の形態を実施例に基づいて説明したが、本発明はこのような実施例に限定されることなく特許請求の範囲記載の範囲内でいろいろな実施例があることは言うまでもない。
【0029】
【発明の効果】
以上の構成から成る本発明によると、小形で安価な装置であって消費電力が少なく、眼底カメラの分解能を損なう原因となる角膜及び水晶体の歪みをコンピュータによる計算を必要とせずに高分解能かつ実時間で効果的に補正することができるようにした補償光学装置付き眼底カメラを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の基本的構成において、主に眼底カメラ光学系を示す光学機器構成図である。
【図2】本発明の基本的構成において、主に、位相変調器ユニットと光波干渉計から成る補償光学装置を示す光学機器構成図である。
【図3】形状可変鏡を用いた従来の補償光学システムの概念図である。
【符号の説明】
BS1、BS2、BS3、BS4、BS5 ビームスプリッター
L1、L2、L3、L4、L5、L6、L7、L8、L9、L10、L11、L12 レンズ
PBS 偏光ビームスプリッター
R 光書込み型液晶空間位相変調素子の位相変調面
W 光書込み型液晶空間位相変調素子の書込み面
Claims (2)
- 眼底カメラ光学系、及び光書き込み型空間位相変調素子と光波干渉計で構成される補償光学装置とを有し、人の眼の角膜及び水晶体に存在する複雑な収差に起因する網膜から反射された撮像光の波面歪みに対して逆方向の波面歪みを生み出す位相分布を上記補償光学装置によって上記光書き込み型空間位相変調素子の位相変調面に形成し、上記撮像光を上記位相変調面で反射させることにより、上記撮像光の波面歪みを相殺して波面歪みの補償を行い分解能を向上させる補償光学装置付き眼底カメラであって、
上記眼底カメラ光学系は、照明光を眼球内に照射し、網膜からの反射光を眼の瞳孔と共役な位置にある上記光書き込み型空間位相変調素子の位相変調面で反射させ、それを眼底観察用カメラに結像させる光学系を有し、
さらに、上記眼底カメラ光学系は、補償光学装置駆動用レーザー光を眼球内に照射し、網膜上の1点に収束させ、その反射光を上記位相変調面で反射させ、それを補償光学装置に導入する光学系とを有し、
上記補償光学装置は、上記位相変調面で反射した上記補償光学装置駆動用レーザー光を上記光波干渉計に導入することにより角膜及び水晶体に存在する収差を反映した干渉縞を得て、上記光書き込み型空間位相変調素子の書き込み面にこれを照射することにより角膜及び水晶体に存在する収差を打ち消すような位相分布を上記位相変調面に形成することを特徴とする補償光学装置付き眼底カメラ。 - 上記干渉縞を高感度CCDカメラで撮像し、この撮像データを投影装置により上記光書き込み型空間位相変調素子の書き込み面に書き込むことを特徴とする請求項1記載の補償光学装置付き眼底カメラ。
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