JP3623578B2 - エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物系樹脂組成物及びその用途 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(以下EVOHと略す)と特定のポリアミド系樹脂を含有する樹脂組成物及び該樹脂組成物を延伸してなる多層構造体に関し、更に詳しくはロングラン成形や延伸性に優れたEVOH系樹脂組成物及び該樹脂を用いた耐レトルト性や耐ボイル性に優れたボイル殺菌又はレトルト殺菌処理用多層フィルム包材、レトルト殺菌処理用容器、レトルト殺菌処理用ふた材や制振性に優れたガソリンタンク、建築用内装材等の多層構造体に関する。
【0002】
【従来の技術】
EVOHとポリアミド系樹脂との組成物は、前者に基づくガスバリヤー性、耐油性、耐溶剤性と後者に基づく耐衝撃性を利用して食品包装用のフィルム、シート、パリソン、容器やガソリンタンク等種々の用途に使用されている。
そして、該用途に用いるEVOHとポリアミド系樹脂との組成物として、従来のEVOHとポリアミド系樹脂との組成物(特開昭54−78749号公報、特開昭54−78750号公報、特開昭62−225535号公報、特開平4−76040号公報、特開平4−178447号公報)の成形性の改良を目的として本出願人は、EVOHと特定の末端調製ポリアミド系樹脂のブレンド物に更にヒンダードフェノール系化合物及び脂肪族カルボン酸アルカリ土類金属塩を配合することを提案した。(特願平5−164013号)
また一方では、2種のEVOHにポリアミド系樹脂を配合して(特公昭63−56893号公報、特開平4−202549号公報)、延伸性やロングラン成形性の向上が試みられている。
更に、EVOHとポリアミド系樹脂からなる樹脂組成物を振動が絶えず負荷される冷媒ガス用ホース(特開平2−86436号公報)や制振材用途として自動車のドアミラーステイ等(特開平1−263151号公報)に用いることが提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、本出願人による特願平5−164012号開示技術では、面積倍率3〜10倍程度の延伸倍率の用途においては、十分に実用に耐え得るものであるが、昨今の市場においては面積倍率20倍以上の高延伸性が要求されており、新なる改良の必要が生じてきた。
また、特公昭63−56893号公報開示技術では、延伸性(但し、200%延伸)は良好であるものの、延伸前のフィルムを得るための成形性、特にロングラン成形性については考慮されておらず、本発明者等の検討によれば5日以上のロングラン成形を行うとゲル、フィッシュアイ、フィルム切れ、吐出不安定(サージング現象)等の発生の恐れがあることが判明した。この点を改良すべくなされたのが特開平4−202549号公報開示技術であるが、特願平5−164012号開示技術と同様、高延伸性についてはまだまだ改良の余地がある。
【0004】
更に、特開平2−86436号公報開示技術では、EVOHとポリアミド系樹脂の組成物からなるホースについての耐ピンホール性や耐クラック性等は考慮されているものの、該組成物の成形性や延伸性については、一切考慮されておらず、又特開平1−263151号公報開示技術は、自動車のドアミラーステイ等の成型物(エンジニアリングプラスチック)に関するもので、EVOH特有のガスバリヤー性等の考慮は全くなく、更には特開平2−86436号公報開示技術同様該組成物の成形性や延伸性については、一切考慮されていないもので、まだまだ改良の余地があるものである。
本発明は、このような背景下において、ロングラン成形性、面積倍率で20倍以上の高延伸性等に優れたEVOH系樹脂組成物及び該樹脂を用いたレトルト用及びガソリンタンク、建築用内装材用等の多層構造体を提供することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決する為の手段】
かかる課題について、本発明者等が鋭意検討した結果、エチレン含有率が20〜60モル%でケン化度95%以上のエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(a)、エチレン含有率が25〜65モル%でケン化度が70モル%以上のエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(b)、カプロアミドを主たる構成単位とし、メチレン基数とアミド基数の比が5.20≦CH2/NHCO≦6.50を満足する脂肪族ポリアミドで、かつ末端調整剤を使用して末端カルボキシル基含有量[X]および末端アミノ基含有量[Y]が[Y]<[X]+5(ただし、[X],[Y]の単位はμeq/g・ポリマー)を満足するように調整した末端調整ポリアミド系樹脂(c)及び脂肪族カルボン酸アルカリ土類金属塩(d)からなり、(b)のエチレン含有率が(a)のエチレン含有率よりも3モル%以上多く、(a):(b)の重量比が90:10から10:90で、(a+b):(c)の重量比が50:50〜96:4で、(a+b+c)の合計量に対する(d)の配合割合が金属換算で0.5〜15μmol/gであるEVOH系樹脂組成物が、ガスバリヤー性、耐油性、耐溶剤性等のEVOHが有する特性を低下させることなく、ロングラン成形性、面積倍率20倍以上の高延伸性等に優れ、とりわけボイル殺菌またはレトルト殺菌(以下、まとめてレトルト殺菌と称す)処理用フィルム包材やガソリンタンク、建築用内装材、冷媒ガス用ホース等の多層構造体に有用であることを見いだし本発明の完成に至った。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のEVOH(a)としては、エチレン含有率20〜60モル%(好ましくは25〜55モル%)、酢酸ビニル単位のケン化度が95モル%以上(好ましくは98モル%以上)のものが用いられる。エチレン含有率が20モル%未満では溶融成形性の低下を招き、逆にエチレン含有率が60モル%を越えると酸素ガスバリヤー性の低下を招き、ケン化度が95モル%未満では耐熱水性が劣り不適当である。
該EVOH(a)は、少量であれば、α−オレフィン、不飽和カルボン酸系化合物、不飽和スルホン酸系化合物、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、ビニルエーテル、塩化ビニル、スチレン等の他のコモノマーで「共重合変性」されても差し支えない。又、本発明の趣旨を損なわない範囲で、ウレタン化、アセタール化、シアノエチル化など「後変性」されても差し支えない。
【0007】
また、上記のEVOH(a)と併用されるEVOH(b)は、エチレン含有率25〜65モル%(好ましくは30〜60モル%)、酢酸ビニル単位のケン化度が70モル%以上(好ましくは80モル%以上、更に好ましくは85モル%以上)のものが用いられる。エチレン含有率及びケン化度については、EVOH(a)と同等の理由により上記の範囲に規定されるもので、上記EVOH(a)と同様の「共重合変性」或いは「後変性」されていても差し支えない。但し、本発明においては、EVOH(b)のエチレン含有率をEVOH(a)のエチレン含有率よりも3モル%以上、好ましくは5モル%以上多くする必要があり、該含有率の差が3モル%未満では、延伸性の改善効果が十分ではなく、面積倍率20倍以上の高延伸が不可能となり不適当である。尚、ケン化度の差については、特に限定されないが、さらなる延伸性の向上を期待するときはEVOH(a)のケン化度がEVOH(b)のケン化度よりも1モル%以上大きいことが好ましい。
【0008】
末端調整ポリアミド系樹脂(c)としては、カプロアミドを主たる構成単位とし、メチレン基数とアミド基数の比が、5.20≦CH2/NHCO≦6.50を満足する脂肪族ポリアミドで、かつ末端調整剤を使用して末端カルボキシル基含有量[X]および末端アミノ基含有量[Y]が、[Y]<[X]+5(ただし、[X],[Y]の単位はμeq/g・ポリマー)を満足するように調整したポリアミド系樹脂が用いられる。
【0009】
このような末端調整ポリアミド系樹脂(c)を得るには、まずカプロアミド成分と他の脂肪族ポリアミドを共重合する。この共重合体中のカプロアミド単位は95〜55重量%、殊に90〜60重量%、なかんずく90〜65重量%存在することが望ましく、カプロアミド単位が余りに少ないときはEVOH(a+b)の改質効果が不足し、カプロアミド単位が余りに多いときはEVOH(a+b)に混合して用いたときの溶融成形時の温度が高くなってロングラン成形にマイナスとなる。カプロアミド成分と共重合させる他の脂肪族ポリアミドとしては、炭素数6〜12のアミノカルボン酸やラクタム、炭素数6〜12の二塩基性酸、炭素数4〜10のジアミンなどがあげられる。
【0010】
上記共重合体のアミド基濃度は、メチレン基数とアミド基数の比が、5.20≦CH2/NHCO≦6.50の範囲内にあることが必要である。より好ましい範囲は5.20〜6.00、殊に5.30〜5.80である。そのためには、アミド基濃度が10以上の成分を全共重合体中に5重量%以上、好ましくは10重量%以上導入することが必要である。メチレン基数とアミド基数の比が上記範囲よりも小さいときにはロングラン成形性が損なわれ、上記範囲よりも多いときは共重合体中のカプロアミド単位が不足し、EVOH(a+b)の改質効果が不足する。
【0011】
上記共重合体の例としては、ナイロン6と、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610などからなる共重合体があげられ、特に、ナイロン6・12、ナイロン6・11、ナイロン6・66・12、ナイロン6・66・11などの共重合体が好ましい。共重合体の融点は160〜215℃、特に165〜215℃の範囲内にあることが望ましい。
【0012】
上記共重合体はカルボキシル基とアミノ基とを持つものであるが、この末端カルボキシル基含有量[X]および末端アミノ基含有量[Y]が、[Y]<[X]+5(ただし、[X],[Y]の単位はμeq/g・ポリマー)を満足することが要求される。すなわち、分子中の末端カルボキシル基の含有量が末端調節剤により末端アミノ基の含有量よりも大きくなるように調整されねばならない。この場合、末端アミノ基含有量[Y]の絶対値は70μeq/g・ポリマー以下、殊に50μeq/g・ポリマー以下であることが望ましい。末端アミノ基含有量[Y]が大きいときはロングラン成形性の点で不利とある。一方、末端アミノ基含有量[Y]が少ないことはこのましいが、樹脂の製造が困難となるので、10μeq/g・ポリマー程度にとどめるべきである。なお末端カルボキシル基含有量[X]の絶対値は、100μeq/g・ポリマー以下、殊に70μeq/g・ポリマー以下とするのが適当である。
【0013】
上記における末端調節剤としては、炭素数2〜23のカルボン酸、炭素数2〜20のジアミンが用いられる。
ここで炭素数2〜23のモノカルボン酸としては、脂肪族モノカルボン酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、カプリン酸、ペラルゴン酸、ウンデカン酸、ラウリル酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ミリトレイン酸、パルメチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、アラキン酸、ベヘン酸等)、脂環式モノカルボン酸(シクロヘキサンカルボン酸、メチルシクロヘキサンカルボン酸等)、芳香族モノカルボン酸(安息香酸、トルイン酸、エチル安息香酸、フェニル酢酸等)などがあげられる。
【0014】
炭素数2〜20のジアミンとしては、脂肪族ジアミン(エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、ヘキサデカメチレンジアミン、2,2,4−(または2,4,4−)トリメチルヘキサメチレンジアミン)等)、脂環式ジアミン(シクロヘキサンジアミン、ビス−(4,4′−アミノシクロヘキシル)メタン等)、芳香族ジアミン(キシリレンジアミン等)などが挙げられる。
【0015】
また、上記のモノカルボン酸のほかに、脂肪族ジカルボン酸(マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、テトラデカンジオン酸、ヘキサデカンジオン酸、ヘキサデセンジオン酸、オクタデカンジオン酸、オクタデセンジオン酸、エイコサジオン酸、エイコセンジオン酸、ドコサンジオン酸、2,2,4−トリメチルアジピン酸等)、脂環式ジカルボン酸(1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等)、芳香族ジカルボン酸(テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、キシリレンジカルボン酸等)などのジカルボン酸類を使用したり併用したりすることもできる。
【0016】
末端調節剤の使用量は特に限定されないが、通常カルボキシル基の量がアミノ基の量よりも0.1〜18meq/mol、好ましくは0.2〜15meq/mol過剰に用いる。末端調節剤の使用量が余りに少ないときはロングラン成形性の改善効果が乏しく、一方余りに多いときは重合度の上昇が遅く、製造上好ましくない。
ポリアミドの重合度は、特に限定はされないが、JIS K6810に従って測定する相対粘度で1.7〜4.0、殊に2.0〜4.0であることが好ましい。
【0017】
ポリアミドの重合方法としては、溶融重合、界面重合、溶液重合、塊状重合、固相重合、あるいはこれらを組合わせた方法を採用することができる。
又、ポリアミド原料としては、より良好な耐ボイル性及び耐レトルト性が得られるという点よりε−カプロラクタムが特に好ましい。
脂肪族カルボン酸アルカリ土類金属塩(d)としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリ酸など炭素数1〜9程度の脂肪族カルボン酸のベリリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、ストロンチウム塩、バリウム塩が挙げられ、特に炭素数2〜4の脂肪族カルボン酸のマグネシウム塩とカルシウム塩が重要である。
【0018】
本発明のEVOH系樹脂組成物は、上記の如きEVOH(a)、EVOH(b)、末端調整ポリアミド系樹脂(c)及び脂肪族カルボン酸アルカリ土類金属塩(d)からなるものであるが、その配合割合に関しては、(a)と(b)との配合割合は重量比で90:10〜10:90であることが必要で、好ましくは80:20〜20:80で、上記範囲外では最終樹脂組成物の延伸性改善効果が十分ではなく、また(b)の配合割合が該上記の重量比よりも多い場合には、ガスバリヤー性が低下する。
また、(a+b)と(c)との配合割合は重量比で50:50〜96:4であることが必要で、末端調整ポリアミド系樹脂(c)の配合割合が該重量比よりも少ない場合は、耐ボイル性、耐レトルト性の改良効果が充分に現れず、また延伸性並びに制振性の改善効果が十分ではなく、逆に多い場合は、EVOH(a+b)の有する酸素ガスバリヤー性が損なわれる。好ましくは70:30〜90:10である。
【0019】
脂肪族カルボン酸アルカリ土類金属塩(d)の配合割合は、(a+b+c)の合計量に対し、金属換算で0.5〜15μmol/g、好ましくは1〜9μmol/gであることが必要であり、0.5μmol/g未満では溶融粘度の上昇を招き、逆に15μmol/gを越えると成形時にゲルの発生や発泡を生じさせたり、フィルムの着色や成形性の不安定化を招くことがあり不適当である。
上記の(a)〜(d)よりなるEVOH系樹脂組成物は、上記以外に可塑剤、フィラー、ブロッキング防止剤、着色剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤等の添加剤を適宜配合することができる。
【0020】
特に本発明の更なる効果を得るためにヒンダードフェノール系化合物(e)や滑剤(f)を更に配合することは有効で、ヒンダードフェノール系化合物(e)としては、N,N′−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナミド)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス〔メチレン−3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、n−オクタデシル−β−(4′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート、2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2′−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4′−チオビス(6−t−ブチル−m−クレゾール)、4,4′−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕などが挙げられ、好ましくはN,N′−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕から選ばれる少なくとも一種が用いられる。
【0021】
ヒンダードフェノール系化合物(e)の配合割合は、(a+b+c)との合計量に対して0.005〜1重量%の範囲にあることが好ましく、ヒンダードフェノール系化合物(e)の配合割合が上記範囲より少ないときは、酸化防止性が不足するため成形中に酸化性ゲルやダイス滞留物を生じやすくなったり、上記に示した脂肪族カルボン酸アルカリ土類金属塩(d)との相乗効果が低下しフィルム外観に優れた多層構造体が得られない。一方その配合割合を上記範囲より多くしても高温酸化性ゲルの抑制効果及び脂肪族カルボン酸アルカリ土類金属塩(d)との相乗効果は一定限度以上には改善されず、またコスト的に不利となり、更に好ましくは0.05〜0.8重量%で、特に好ましくは0.1〜0.5重量%である。
【0022】
また、滑剤(f)としては、エチレンビスステアリルアマイド等のエチレンビス脂肪酸(炭素数16〜18)アマイド、高級脂肪酸(炭素数8〜22)アマイド、ステアリン酸亜鉛,ステアリン酸アルミニウム,ステアリン酸カルシウム,ステアリン酸マグネシウム等の高級脂肪酸金属塩、ポリプロピレングリコールのアジペート系縮合物、ポリプロピレンのセバート系縮合物、高分子エステル[例えば商品名を挙げれば、スパームアセチ(日本油脂社製)、ヘキストワックス−E(ヘキストジャパン社製)、ライトール(三和油脂社製)、木ろう(野田ワックス社製)]、脂肪酸エステル[例えば商品名を挙げれば、ブチルステアレート、ニッサンカスターワックス−A(以上、日本油脂社製)、TB−121(松本油脂製薬社製)]、粘度法による分子量が900〜30000のポリエチレン等の低分子量ポリオレフィン、粘度法による分子量が1000〜20000で酸価が5〜100の範囲の変性ポリエチレン、変性ポリプロピレン等の低分子量ポリオレフィン等が挙げられ、好ましくはエチレンビスステアリルアマイド等のエチレンビス脂肪酸(炭素数16〜18)アマイド、高級脂肪酸(炭素数8〜22)アマイド、ステアリン酸亜鉛,ステアリン酸アルミニウム,ステアリン酸カルシウム,ステアリン酸マグネシウム等の高級脂肪酸金属塩、粘度法による分子量が1000〜20000で酸価が5〜100の範囲の変性ポリエチレン、変性ポリプロピレン等の低分子量ポリオレフィンが用いられ、更に好ましくはステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウムが用いられる。
【0023】
滑剤(f)の配合割合は、その種類により一概に言えないが、上記(a+b+c)の合計量に対して、0.001〜1重量%が好ましく、更に好ましくは0.01〜1重量%である。該配合割合が0.001重量%未満では押出機やダイス内の滞留物の増加を招き、逆に1重量%を越えると成形時のサージング現象が多くなり安定した成形物が得られなくなる傾向にある。
上記の(a)〜(d)、更には上記(e)及び(f)等をブレンドする方法に関しては、特に限定されず、バンバリーミキサー等でドライブレンドする方法や単軸または二軸の押出機等でペレット化して乾燥させる方法等任意のブレンド方法が採用され得る。
更に上記のEVOH系樹脂組成物(ブレンド物)は、溶融成形によりフィルム、シート、容器等の形状に成形される。溶融成形法としては、押出成形法(ブロー成形法、押出コーティング法を含む)、射出成形法をはじめとする任意の溶融成形法が採用され得る。
【0024】
該溶融成形法においては、樹脂温度を235〜260℃に設定して溶融成形することが好ましく、該温度が235℃未満では長時間の押出成形においてゲルやフィッシュアイ等が発生し、逆に260℃を越えるとフィルム中の発泡、フィルムの着色、成形時の吐出不安定等が起こって好ましくなく、より好ましくは240〜250℃である。
上記の樹脂組成物(層)は、各種の樹脂層と積層されて多層構造体となり、各種用途に供される。
中でも本発明の樹脂組成物を中間層に配し、ポリアミド系樹脂を両外層に配するようにして多層共押出成形することにより得られる多層構造体やポリオレフィン系樹脂を(接着樹脂を介して)両外層に配するようにして多層共押出成形することにより得られる多層構造体は、特に重要で、前者はレトルト用包装材料に後者はガソリンタンク、冷媒ガス用ホース、建築用内装材(壁紙、床材等)等の制振用の材料として有用である。
上記のレトルト用包装材料について、具体的に説明する。
【0025】
積層構成としては、上記の如くポリアミド系樹脂層/本発明の樹脂組成物層/ポリアミド系樹脂層が挙げられるが、ヒートシール性、高湿度下のガスバリヤー性等の実用性を考慮すれば、(内側)熱可塑性樹脂層/ポリアミド系樹脂層/本発明の樹脂組成物層/ポリアミド系樹脂層(外側)、(内側)熱可塑性樹脂層/ポリアミド系樹脂層/本発明の樹脂組成物層/ポリアミド系樹脂層/熱可塑性樹脂層(外側)等の積層構成が挙げられる。尚、上記の熱可塑性樹脂とは、ポリアミド系樹脂を除くものである。
上記のポリアミド系樹脂層に用いられるポリアミド系樹脂としては、ナイロン6、ナイロン6・4、ナイロン6・6、ナイロン6・9、ナイロン6・12、ナイロン11、ナイロン12及びこれらの共重合体、非晶性ポリアミド等が挙げられ、ナイロン6、ナイロン6とナイロン12の共重合体、ナイロン6と非晶性ポリアミドとのブレンド物等が特に有用である。
【0026】
また、上記の熱可塑性樹脂層に用いられる熱可塑性樹脂としては、樹脂製容器や袋等のヒートシールに用いられる公知のシーラント(ヒートシール)用熱可塑性樹脂を任意に用いることができ、具体的にポリプロピレンホモポリマー、エチレンをグラフト重合したポリプロピレン、前記ポリプロピレンをベースとし、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等をブレンドしたもの、ポリプロピレン以外の高密度ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂、コポリエステル等が挙げられ、ヒートシール性、透明性及びレトルト分野であることを考慮するとポリプロピレンホモポリマー、エチレンをグラフト重合したポリプロピレン、前記ポリプロピレンをベースとし高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等をブレンドしたものが特に好適に使用されるが、特にヒートシール性を必要としないときは、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、酢酸ビニル、アクリル酸エステル、或いはブテン、ヘキセン、4−メチル−1−ペンテンなどのα−オレフィン類を共重合したポリエチレン、アイオノマー樹脂、ポリプロピレンホモポリマー、エチレンをグラフト共重合したポリプロピレン、或いはエチレン、ヘキセン、4−メチル−1−ペンテンなどのα−オレフィン類を共重合したポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリ4−メチル−1−ペンテン等のポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスチレン系樹脂等が挙げられ、これら樹脂の単独または2種以上のブレンド物が使用され、中でもポリプロピレンホモポリマー、エチレンをグラフト重合したポリプロピレン、前記ポリプロピレンをベースとし高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等をブレンドしたものが好適に使用される。
【0027】
レトルト用の多層構造体の製造にあたっては、上述したようにT−ダイ法、インフレーション法等の共押出法、ブロー成形法、共射出法等の公知の方法を採用することができ、特に限定されるものではないが、製造法の一例として共押出法による上記のポリアミド系樹脂層/本発明の樹脂組成物層/ポリアミド系樹脂層構成の多層構造体の製造法を以下に説明する。
【0028】
上記の多層構造体を共押出法によって製造する場合には、2種3層の共押出成形装置を用いて、温度240〜250℃程度の設定されたTダイより共押出した後、チルロール等により冷却して3層の積層体を得ることができる。該方法は接着性樹脂を用いずに積層しているが、接着性樹脂を介して積層することも可能で、該接着性樹脂としてはポリプロピレン、ポリエチレン、あるいはエチレンと共重合しうるモノマー(酢酸ビニル、アクリル酸エステル等)の共重合体等のポリオレフィン系樹脂を無水マレイン酸など付加して変性した樹脂が用いられ、ポリアミド系樹脂層/接着性樹脂/本発明の樹脂組成物層/接着性樹脂/ポリアミド系樹脂層の3種5層の共押出成形装置により、フィルム外観の良好な多層構造体が得られる。
【0029】
また、ドライラミネーション法、エクストルージョンラミネーション法等を用いて上記の如き多層構造体を得ることもできる。
つまり、本発明の樹脂組成物層及びポリアミド系樹脂層の各層を2軸押出機等であらかじめ成形しておき、該各層をウレタン系等の接着性樹脂によりドライラミネートする方法等が挙げられる。
上記の熱可塑性樹脂層/ポリアミド系樹脂層/本発明の樹脂組成物層/ポリアミド系樹脂層、熱可塑性樹脂層/ポリアミド系樹脂層/本発明の樹脂組成物層/ポリアミド系樹脂層/熱可塑性樹脂層等の4層以上の多層構造体についても、上記と同様の方法により多層構造体を作製することができる。
【0030】
また、上記の多層共押出成形やドライラミネーション法、エクストルージョンラミネーション法等で例示した多層構造体以外にも、本発明の樹脂組成物層を用いた多層構造体の層構成としては、本発明の樹脂組成物層をE、熱可塑性樹脂層をT、ポリアミド系樹脂層をPとすると、T/E/P、E/T/E/T、E/P/E/P、E/T/E/P、T/E/T/E/T、P/E/P/E/P、T/E/P/E/T、E/P/E/T、P/E/P/E/T、P/E/T/E/T等(いずれも接着剤層は省略)の層構成を挙げることができる。
【0031】
かかる多層構造体において、各層の厚みは積層体(多層構造体)の種類により一概に言えないが、本発明の樹脂組成物層の厚みは、3〜250μmが好ましく、更に好ましくは5〜100μmで特に5〜80μmが好ましい。またポリアミド系樹脂層及び熱可塑性樹脂層の厚みは、3〜500μmが好ましく、更に好ましくは5〜300μmで特に5〜150μmが好ましい。
かかる多層構造体は、レトルト殺菌処理用のフィルム包材として有用で、該フィルム包材のより具体的な用途としてはふた材、パウチ類、真空包装、スキンパック、深絞り包装、ロケット包装が挙げられる。
【0032】
該ふた材は、酸素ガスバリヤー性樹脂を積層したポリプロピレン等の熱可塑性樹脂からなる容器にヒートシール法によりヒートシールする方法が好適に用いられる。かかるふた材は、透明性に優れ、又内容物を確認しながら開封することができる。
該パウチ類は、三方シール、四方シール、ピロー、ガゼット、スタンデイングパウチなどの形態で使用される。
【0033】
上記の多層構造体は、上記フィルム包装以外にカップまたはトレー等の容器としても優れた特性を発揮することができる。容器の成形方法としては、共押出成形によりシートを成形し、加熱軟化させた後、真空成形法、プラグアシスト成形法、圧空成形法、CD法等により所定の容器に成形する方法や射出成形法等の任意の方法が用いられ、更にはブロー成形により、チューブ状またはボトル状にすることもできる。
【0034】
かかる多層構造体をふた材、パウチ、トレー、カップ類あるいはボトル、チューブの形態で使用した容器はレトルト殺菌処理、又はボイル殺菌処理として公知の熱水加熱処理をすることができる。レトルト処理は回収式、置換式、蒸気式、シャワー式、スプレー式等各種の方法が採用される。
また、かかる多層構造体よりなるふた材、パウチ、トレー、カップ類あるいはボトル、チューブ等の容器に用いたときは、スープ、豚汁、ミートソース、おでん、ピラフ、うどん、酢豚、ハンバーグ、ステーキ、調理済カレー等の食品を充填した状態で、レトルト殺菌処理を行うことができる。
【0035】
次に本発明のEVOH系樹脂組成物をガソリンタンク、建築用内装材(壁紙、床材等)等の材料として用いる場合の多層構造体について説明する。
該用途に用いる多層構造体の構成としては、本発明の樹脂組成物層とポリオレフィン系樹脂層やポリ塩化ビニル樹脂層等との積層構成が挙げられ、具体的にはガソリンタンク用途としては、ポリオレフィン系樹脂層/本発明の樹脂組成物層/ポリオレフィン系樹脂層が、建築用内装材(壁紙、床材等)用途としては、ポリ塩化ビニル樹脂層/本発明の樹脂組成物層/ポリ塩化ビニル樹脂層等が好適に用いられる。
【0036】
上記の多層構造体に用いられるポリオレフィン系樹脂としては、ポリプロピレン、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体或いはこれらの共重合体や変性物等が挙げられ、中でもポリプロピレン、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレンが好適に用いられる。
かかる多層構造体の製造に当たっては、上記のレトルト殺菌処理用のフィルム包材と同様の方法によって製造することができる。
以上、本発明のEVOH系樹脂組成物を用いた多層構造体として、レトルト殺菌処理用フィルム包材やガソリンタンク、建築用内装材(壁紙、床材等)について説明したが、これら以外にもブローボトル、冷媒ガス用ホース等の用途に供することができる。
【0037】
【作 用】
本発明のEVOH系樹脂組成物は、ガスバリヤー性、耐油性、耐溶剤性等のEVOHが有する特性を低下させることなく、ロングラン成形性、面積倍率20倍以上の高延伸性等に優れ、とりわけレトルト殺菌処理用フィルム包材や制振性を必要とされるガソリンタンク、建築用内装材、冷媒ガス用ホース等の多層構造体に有用で、更には該多層積層体を製造するにあたり、EVOH系樹脂組成物からなるガスバリヤー性樹脂層を235〜260℃で押出成形することにより、長時間の加工成形性という効果も奏するものである。
【0038】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。
以下の(a)〜(d)及び(e)、(f)を用意した。
【0039】
【0040】
【0041】
【0042】
脂肪族カルボン酸アルカリ土類金属塩(d)
d−1:酢酸マグネシウム4水和物
d−2:プロピオン酸カルシウム
d−3:酪酸マグネシウム
【0043】
滑剤(f)
f−1:エチレンビスステアリルアマイド
f−2:ポリエチレン(粘度法による分子量3200、酸価20KOHmg/g)
f−3:ステアリン酸亜鉛
f−4:ステアリン酸マグネシウム
f−5:ステアリン酸亜鉛/ステアリン酸カルシウム=1/0.5(重量比)
【0044】
実施例1〜11及び比較例1〜11
〈単層溶融成形〉
表1〜6に示す(a)〜(d)成分(更に(e)、(f)成分を添加し)を、二軸押出機(または単軸押出機)により溶融混練後、冷却してペレット化した。次いで該ペレットを、Tダイを備えた押出機に供給して溶融押出して、厚さ100μmの単層フィルム(I)を製膜した。押出成形条件は下記のように設定した。
押出機:40mm径押出機
スクリュー:フルフライト型
押出温度:押出機温度230℃、ダイ温度250℃、樹脂温度245℃
スクリュー回転数:40rpm
【0045】
実施例1で得られた単層フィルム(I)のガスバリヤー性、耐油性及び耐溶剤性を以下のごとく評価したが、いずれもEVOH(a−1)単体と比べて多少の低下は認められるものの実用的に支障のないものであった。
(ガスバリヤー性)
OXTRAN10/50型(MOCON社製)測定器により、測定した上記の単層フィルム(I)及びEVOH(a−1)フィルムの酸素透過度は、それぞれ2.3(cc・20μm/m2・day・atm)及び0.6(cc・20μm/m2・day・atm)であった。
(耐油性)
ガソリン、軽油、灯油及び重油に上記の単層フィルム(I)を室温で7日間浸漬したが、EVOH(a−1)フィルムと同様に著しい外観変化は認められなかった。
【0046】
(耐溶剤性)
ベンゼン、トルエン、アセトン及び四塩化炭素に上記の単層フィルム(I)を室温で7日間浸漬したが、EVOH(a−1)フィルムと同様に著しい外観変化は認められなかった。
〈共押出成形〉
ナイロン6樹脂90重量%と非晶性ポリアミド10重量%とを含有するポリアミド系樹脂Yと上記同様表1〜6に示す(a)〜(d)、(a)〜(e)、(a)〜(f)よりなる樹脂組成物Xとを温度245℃に設定したTダイよりY/X/Yの層構成となるように共押出した。その後、90℃のロール延伸機により3倍に延伸し、更に100℃の雰囲気のテンター延伸機により3.5倍延伸、続いて同テンターにより幅4%程度縮小させつつ210℃での雰囲気で熱固定した。得られた多層構造体(II)の各層厚みはY/X/Y=5/10/5(μm)であった。
上記で得られた単層フィルム(I)及び多層構造体(II)について、以下の評価を行った。
【0047】
(延伸加工性)
上記の〈単層溶融成形〉を5日間連続して行って得られた5日後の単層フィルム(I)から10×10cmのフィルム(20枚)を採取して、下記の条件で同時二軸延伸(5×5倍)を(20回)行い、そのときの成功フィルムの枚数を調べた。
尚、二軸延伸処理後のフィルムの外観を目視観察してフィルムに破断や穴あき等の異状が認められないものを成功フィルムとした。
二軸延伸機:岩本製作所(株)製、
延伸温度:100℃
延伸速度:100m/sec
【0048】
(レトルト性)
上記で得られた多層構造体(II)をレトルト装置(ヤマト科学(株)製,オートクレーブSM−31)を用いて121℃水蒸気雰囲気中で30分間レトルト殺菌処理を行った後、室温30分間放置後の多層構造体(II)の外観を目視観察した。
判定基準は以下のとうり。
○ −−− 透明で変色は認められなかった。
× −−− ヘイズ又は白化が認められた。
(制振性)
(株)レオロジ製のDVE−V4レオスペクトラを用いて上記単層フィルム(I)及び多層構造体(II)のtanδ(高さ、位置、半価幅)を以下の条件で測定した。
温度:−100〜200℃
昇温速度:3℃/min
周波数:10Hz
サンプルサイズ:20×5mm
ゲージ長さ:10mm
ゲージ厚さ:30μm
【0049】
尚、表1〜6においては、単層フィルム(I)のtanδの高さ、位置、半価幅をそれぞれ制振性(AI)、制振性(BI)、制振性(CI)とし、同じく多層構造体(II)のそれぞれを制振性(AII)、制振性(BII)、制振性(CII)として表した。
実施例及び比較例の評価結果を表1〜6に併せて示す。
尚、表1〜6に示す(d)成分の金属名の後の数値は、(a+b+c)の合計量に対する金属の配合量(μmol/g)を表したものであり、(e)及び(f)成分の数字は、(a+b+c)の合計量に対するそれぞれの配合割合をppm値で表したものである。
【0050】
【表1】
【0051】
【表2】
【0052】
【表3】
【0053】
【表4】
【0054】
【表5】
【0055】
【表6】
【0056】
実施例12
実施例1〜11で得られた多層構造体(II)をふた材として水の入ったポリプロピレン製のカップ状容器に無延伸ポリプロピレン層を内面としてヒートシーラーにより熱接着を行った。これを前述の実施例及び比較例で示したレトルト装置を使用して121℃、30分のレトルト殺菌処理を行った。
レトルト処理直後、ふたのフィルムは透明であり、波模様などもなく外観良好であった。
【0057】
実施例13
実施例1〜11で得られた多層構造体(II)をパウチ状にヒートシール加工し、中に水を入れて口部をヒートシールした。これを前述の実施例及び比較例で示したレトルト装置を使用して121℃、30分のレトルト殺菌処理を行った。
レトルト処理直後、パウチは透明であり、波模様などもなく外観良好であった。
【0058】
実施例14
高密度ポリエチレン樹脂/接着性樹脂(カルボン酸変性ポリエチレン系樹脂)/実施例1の本発明の樹脂組成物/接着性樹脂(カルボン酸変性ポリエチレン系樹脂)/高密度ポリエチレン樹脂=300μm/50μm/50μm/50μm/300μm(厚み)からなる5×5×5cmの多層ボトル(ガソリンの注入口を設けて、ポリエチレン製のキャップで密閉できるようにした)を成形して、該ボトルを島津万能疲れ試験機に取り付け、振幅1mm,荷重1kgで106回繰り返し疲労を加えた後、該ボトルにガソリンを約100ml入れてキャップで密閉した。該密閉ボトルをガラス容器(デシケーター)中に密閉状態で1週間放置し、該ガラス容器内の気体を採取してガスクロマトグラフィーにてガソリン成分の分析を行った。また、比較のために未疲労のボトルにガソリンを入れて同様にガソリン成分を測定したが両者に差異は認められず、本発明の樹脂組成物を用いた多層ボトルはガソリンタンク用途においても良好な結果を示した。
尚、実施例2〜11の単層フィルム(I)についても上記と同様の評価を行ったが、いずれの場合も上記と同様良好な結果が得られた。
【0059】
実施例15
厚さ1mmのPVC(ポリ塩化ビニル)フィルムに実施例1の単層フィルム(I)に用いられる樹脂組成物を10μmの厚さになるように押出ラミネーションして積層フィルムを得た後、ブルュウエル&ケアー(B&K)制振性能自動測定システムを用いて該積層フィルムの損失係数を評価した。その結果、室温付近に大きなピークが現れて制振特性が良好であることが確認された。
尚、実施例2〜11の単層フィルム(I)についても上記と同様の評価を行ったが、いずれの場合も上記と同様良好な結果が得られた。
【0060】
【発明の効果】
本発明のEVOH系樹脂組成物は、ガスバリヤー性、耐油性、耐溶剤性等のEVOHが有する特性を低下させることなく、ロングラン成形性、面積倍率20倍以上の高延伸性等に優れ、とりわけレトルト殺菌処理用フィルム包材や制振性を必要とされるガソリンタンク、建築用内装材等の多層構造体に有用で、更には該多層構造体を製造するにあたり、EVOH系樹脂組成物よりなるガスバリヤー性樹脂層を235〜260℃で押出成形することにより長時間の加工成形性という効果も奏するものである。
Claims (14)
- エチレン含有率が20〜60モル%でケン化度95%以上のエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(a)、エチレン含有率が25〜65モル%でケン化度が70モル%以上のエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(b)、末端調製剤により末端COOH基の数(x)と末端CONRR′基(但し、Rは炭素数1〜22の炭化水素基、R′は水素又は炭素数1〜22の炭化水素基)の数(y)が、100×y/(x+y)≧5を満足するように調整した末端調整ポリアミド系樹脂(c)及び脂肪族カルボン酸アルカリ土類金属塩(d)からなり、(b)のエチレン含有率が(a)のエチレン含有率よりも3モル%以上多く、(a):(b)の重量比が90:10〜10:90で、(a+b):(c)の重量比が50:50〜96:4で、(a+b+c)の合計量に対する(d)の配合割合が金属換算で0.5〜15μmol/gであることを特徴とするエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物系樹脂組成物。
- 末端調整ポリアミド系樹脂(c)のポリアミド原料がε−カプロラクタムであることを特徴とする請求項1記載のエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物系樹脂組成物。
- 脂肪族カルボン酸アルカリ土類金属塩(d)が炭素数2〜4の脂肪族カルボン酸のマグネシウム塩であることを特徴とする請求項1または2記載のエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物系樹脂組成物。
- 更にヒンダードフェノール系化合物(e)を(a+b+c)の合計量に対する(e)の配合割合が0.005〜1重量%になるように配合したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物系樹脂組成物。
- ヒンダードフェノール系化合物(e)がN,N′−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項4記載のエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物系樹脂組成物。
- 更にエチレンビス脂肪酸アマイド、高級脂肪酸金属塩、高分子エステル、脂肪酸エステル、炭化水素化合物から選ばれる少なくとも1種の滑剤(f)を配合したことを特徴とする請求項1〜5いずれか記載のエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物系樹脂組成物。
- 請求項1〜6いずれか記載のエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物系樹脂組成物を延伸した層を含むことを特徴とする多層構造体。
- エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物系樹脂組成物を延伸した層が235〜260℃の樹脂温度で押出成形されたことを特徴とする請求項7記載の多層構造体。
- ボイル殺菌又はレトルト殺菌用多層フィルムに用いることを特徴とする請求項7または8記載の多層構造体。
- ボイル殺菌又はレトルト殺菌用容器に用いることを特徴とする請求項7または8記載の多層構造体。
- ボイル殺菌又はレトルト殺菌用パウチに用いることを特徴とする請求項7または8記載の多層構造体。
- ボイル殺菌又はレトルト殺菌用ふた材に用いることを特徴とする請求項7または8記載の多層構造体。
- ガソリンタンクに用いることを特徴とする請求項7または8記載の多層構造体。
- 建築用内装材に用いることを特徴とする請求項7または8記載の多層構造体。
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