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JP3614519B2 - 絶縁ゲート型半導体装置の駆動方法及び装置 - Google Patents

絶縁ゲート型半導体装置の駆動方法及び装置 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
絶縁ゲ−トバイポ−ラトランジスタ(Insulated gate bipolar transistor:以下、IGBTと称す)や、MOSGTO(Metal oxide gate turn−off thyristor)等の絶縁ゲート型半導体装置の駆動方法及び駆動装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
IGBTや、MOSGTOは、絶縁ゲートに加える電圧で電流を制御できる、いわゆる電圧駆動型素子であるため、電流駆動型のバイポ−ラトランジスタやGTOより駆動電力が小さく、このため、駆動回路を簡単にできるので、電源やインバ−タ等の分野に急速に広まっている。
【0003】
IGBTの断面構造を図10に示す。p+層101の上にn−層102が設けられている。n−層102内には複数個のp層103が設けられている。さらにp層103内には、n+層104が設けられている。n+層104、p層103、n−層102表面には、ゲート絶縁膜105及びゲート電極106が設けられ、絶縁ゲートが形成されている。p+層101の下方に位置する裏面には、コレクタ電極106が設けられている。また、p層103とn+層104とを短絡して、エミッタ電極108が設けられている。また、エミッタ電極108は、絶縁膜107を介してゲート電極106上にも形成されている。
【0004】
このような構造を備えたIGBTでは、図中に概念的に示されている、エミッタ−ゲート間容量CGEは、ゲート絶縁膜105直下のp層103とゲート電極106間の容量CGE1と、絶縁膜107を挟んでゲート電極106とエミッタ電極108間の容量CGE2の並列接続で表される。一方、ゲート−コレクタ間容量CGCは、ゲート絶縁膜105を挟んで、n−層102とゲート電極106間の容量で表される。
【0005】
エミッタ−ゲート間容量CGEと、ゲート−コレクタ間容量CGCとの、コレクタ−エミッタ間電圧依存性を、図11に示す。ゲート−コレクタ間容量CGCは、コレクタ−エミッタ間電圧が大きくなるとn−層102に空乏層がのびるため、容量は急激に小さくなる。一方、p層103にはあまり空乏層は伸びないため、エミッタ−ゲート間容量CGEのコレクタ−エミッタ間電圧依存性は小さい。
【0006】
誘導負荷に接続されたIGBTを駆動する駆動回路の従来例を、図12に示す。IGBT1のエミッタは、電源Vccのアース側に接続されている。コレクタ側は、ダイオードDのアノード側に接続されている。ダイオードDのカソード側は電源Vccの高圧側に接続されている。また、ダイオードDの両端にはインダクタンス負荷Lが接続されている。
【0007】
IGBT1のゲートには、ゲート抵抗Rgが接続されている。ゲート抵抗Rgのもう一方は、駆動回路2に接続されている。駆動回路2は、例えば、npnトランジスタQ1、pnpトランジスタQ2、npnトランジスタQ3、及び、抵抗rbから構成され、電源VGEと接続されている。
【0008】
この従来の駆動回路2においては、npnトランジスタQ1のコレクタ、及び抵抗rbの一端は、電源VGEの高電位側に接続されている。pnpトランジスタQ2のコレクタ及びnpnトランジスタQ3のエミッタは、電源VGEのアース側に接続されている。抵抗rbの他端と、npnトランジスタQ1及びpnpトランジスタQ2のベースと、npnトランジスタQ3のコレクタとは、互いに接続されている。また、npnトランジスタQ1及びpnpトランジスタQ2のエミッタは、ゲート抵抗Rgを介してIGBT1と接続されている。
【0009】
この従来の駆動回路2により駆動される、ターンオン時におけるIGBT1の各部の波形を図13に示す。
【0010】
駆動回路2のnpnトランジスタQ3に正の電圧を加えると(図13(1)参照)、npnトランジスタQ3がオンし、抵抗rbを通してベース電流ibがnpnトランジスタQ1に流れ込み、npnトランジスタQ1はオンする。すると、npnトランジスタQ1を通じてIGBT1のゲートに電流が流れ込み(図13(3)参照)、ゲート−エミッタ間容量CGE及びゲート−コレクタ間容量CGCを充電する。
【0011】
上記両容量が充電されるに従い、ゲート電圧は増加し(図13(2)参照)、ある値Vthを越えると、IGBT1のコレクタに電流Icが流れ始める(図13(4)参照)。このnpnトランジスタQ3にオン信号を加えてからIGBT1に電流が流れるまでの時間を遅延時間tdと呼ぶ。
【0012】
また、このターンオン時には、図13(4)に示すように、IGBT1のコレクタに接続されているダイオードDが逆バイアス状態となり、ダイオードDの逆回復電流が流れ込む。このため、IGBT1の電流はピークを持つ。電流が流れてある時間がたつと、IGBT1のコレクターエミッタ間電圧Vceは急激に低下する。
【0013】
ところで、IGBT1がオフしている状態では、空乏層が伸びているため、ゲート−コレクタ間容量CGCは非常に小さい値となっている。しかし、コレクターエミッタ間電圧Vceが低下すると、ゲート−コレクタ間容量CGCは急激に増加する。このため、ゲート電圧及びゲート電流はほぼ一定となる。この時、コレクターエミッタ間の電圧Vceは、Vce(res)でほぼ一定となる。
【0014】
その後、ゲート−コレクタ間容量CGCが充電されると、ゲート電圧は、VGEー(npnトランジスタQ1のベース−エミッタ間電圧≒0.7V)になる。このとき、コレクターエミッタ間の電圧Vceは、前記Vce(res)からさらに低下し、最終的に定常値Vce(sat)となる。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来の駆動回路2では、ゲート抵抗Rgの値が固定されていた。このため、ゲート抵抗Rgの抵抗値が小さいと、IGBT1のゲート電圧の時間変化率が大きくなり、この結果、IGBT1のコレクタ電流の時間変化率di/dtが大きくなっていた(図13(4)の領域A)。
【0016】
この電流の時間変化率di/dtが大きくなると、ダイオードDの逆回復時の電流変化率di/dtが大きくなる(図13(4)の領域B)。このため、IGBT1の回路に浮遊インダクタンスL’が存在する場合には、その浮遊インダクタンスに流れる電流の時間変化によって生じる跳ね上がり電圧(L’×di/dt(領域B))も大きなものとなる。従来の駆動回路においては、この跳ね上がり電圧による素子や装置の破壊、あるいは、当該跳ね上がり電圧により生じたノイズによる誤動作が引き起こされるという問題があった。
【0017】
一方、上記問題を避けるために、ゲート抵抗Rgの抵抗値を大きくして、電流の時間変化率di/dtを抑えると、ゲート電圧が、ゲート−コレクタ間容量CGCのため一定になる期間tres(図13(3)参照)が長くなり、その間はコレクタ−エミッタ間電圧Vceは、定常値Vce(sat)よりは高いVce(res)となっている。このため、いわゆるターンオン損失が増大するという問題があった。
【0018】
本発明は、上述した問題点を考慮してなされたもので、上述したIGBTを含む絶縁ゲート型半導体素子を含む半導体装置において、いわゆるターンオン損失を低減することが可能な、絶縁ゲート型半導体装置の駆動方法及びその装置を提供することを目的とする。
【0019】
さらに、本発明の他の目的は、上記駆動方法およびその装置において、ターンオン時の電流の時間変化率di/dtを低減することが可能な、絶縁ゲート型半導体装置の駆動方法及びその装置を提供することにある。
【0020】
【課題を解決するための手段】
本発明の絶縁ゲート型半導体素子の駆動方法は、上記目的を達成するために、ゲートにオン信号が加わった直後の初期状態が、ゲート電圧が時間と共に上昇する第1の期間と、当該第1の期間に続く、ゲート電圧がゲート−コレクタ間容量の増加のためほぼ一定となる第2の期間とを少なくとも含んでいる、絶縁ゲート型半導体素子を備えた絶縁ゲート型半導体装置の駆動方法において、前記ゲートに印加する駆動電圧を、前記初期状態が続く期間中に変化させるものであり、前記第1の期間全体を少なくとも含む第1’の期間に前記ゲートに印加する駆動電圧を、当該第1’の期間に連続して設定される、前記第2の期間の少なくとも一部を含む第2’の期間に前記ゲートに印加する駆動電圧よりも低くする。
【0021】
本発明の駆動方法は、また、上記目的を達成するために、ゲートにオン信号が加わった直後の初期状態が、コレクタに電流が流れ始めるまでの第1の期間と、当該第1の期間の後でかつゲート電圧が時間と共に上昇する第2の期間と、ゲート電圧がゲート−コレクタ間容量の増加のためほぼ一定となる第3の期間とを少なくとも含んでいる、絶縁ゲート型半導体素子を備えた絶縁ゲート型半導体装置の駆動方法において、前記ゲートに印加する駆動電圧を、前記初期状態が続く期間中に変化させるものであり、前記第1の期間に前記ゲートに印加する駆動電圧V1と、前記第2の期間全体を少なくとも含む第2’の期間に前記ゲートに印加する駆動電圧V2と、当該第2’の期間に連続して設定される、前記第3の期間の少なくとも一部を含む第3’の期間に前記ゲートに印加する駆動電圧V3とを、V2<V1、かつ、V2<V3となるように設定する。
【0022】
本発明の絶縁ゲート型半導体素子の駆動装置は、上記目的を達成するために、前記駆動電圧を発生する第1及び第2の駆動回路と、前記第1の駆動回路と前記ゲートとを接続する第1のゲート抵抗、及び、前記第2の駆動回路と前記ゲートを接続する、前記第1のゲート抵抗の抵抗値よりも小さい抵抗値の第2のゲート抵抗と、入力されるオン信号に応じて、最初に、前記第1の駆動回路を動作させると共に、動作させる駆動回路を切り換えるタイミングを決定し、該タイミングに応じて前記第1の駆動回路の動作を停止し、第2の駆動回路の動作を開始する制御回路とを有し、前記制御回路は、前記絶縁ゲート型半導体素子のゲート電圧が安定する定常状態を達成する以前の初期状態における、ゲート電圧が時間と共に増加する第1の期間以降で、かつ、ゲート電圧がゲート−コレクタ間容量の増加のためほぼ一定となる第2の期間の終了前に、動作させる駆動回路を切り換えるための前記タイミングを決定するタイミング決定回路を有する。
【0023】
本発明の駆動装置は、また、上記目的を達成するために、前記駆動電圧を発生する第1、第2、及び、第3の駆動回路と、前記第1の駆動回路と前記ゲートとを接続する第1のゲート抵抗、前記第2の駆動回路と前記ゲートを接続する第2のゲート抵抗、及び、前記第3の駆動回路と前記ゲートを接続する第3のゲート抵抗と、入力されるオン信号に応じて、最初に前記第1の駆動回路を動作させると共に、動作させる駆動回路を前記第1の駆動回路から前記第2の駆動回路へ切り換える第1のタイミング、及び、前記第2の駆動回路から前記第3の駆動回路へ切り換える第2のタイミングをそれぞれ決定し、該第1及び第2のタイミングに応じて前記3つの駆動回路を順次動作させる制御回路とを有し、前記制御回路は、前記絶縁ゲート型半導体素子のゲート電圧が安定する定常状態を達成する以前の初期状態における、ゲートに電圧が印加されてからコレクタに電流が流れ始めるまでの第1の期間の終了とほぼ同期する時点を前記第1のタイミングとし、該第1のタイミングの後の、ゲート電圧が時間と共に増加する第2の期間以降で、かつ、ゲート電圧がゲート−コレクタ間容量の増加のためほぼ一定となる第3の期間の終了前での時点を前記第2のタイミングとして決定するタイミング決定回路を有し、前記第2のゲート抵抗の抵抗値は、前記第1、第3のゲート抵抗の抵抗値のいずれよりも大きいものとする。
【0024】
本発明の駆動装置は、また、上記目的を達成するために、入力されるオン信号により前記駆動電圧を発生する駆動回路と、前記駆動回路と前記ゲートとを接続するゲート抵抗と、前記ゲートにそれぞれ接続される、第1の容量及び該第1の容量よりも静電容量が小さい第2の容量と、前記オン信号に応じて、最初、前記第1の容量を前記ゲートに電気的に接続してその充電を開始させると共に、前記ゲートへ電気的に接続し充電を行わせる容量を切り換えるタイミングを決定し、該タイミングに応じて前記第1の容量の充電を停止し、前記第2の容量を前記ゲートに接続しその充電を開始させる制御回路とを有し、前記制御回路は、前記絶縁ゲート型半導体素子のゲート電圧が安定する定常状態を達成する以前の初期状態における、ゲート電圧が時間と共に増加する第1の期間以降で、かつ、ゲート電圧がゲート−コレクタ間容量の増加のためほぼ一定となる第2の期間の終了前に、充電すべき容量を切り換えるための前記タイミングを決定するタイミング決定回路を有する。
【0025】
【作用】
本発明の駆動装置及び方法によれば、絶縁ゲート型半導体素子のゲート電圧が、ターンオン時の初期状態において、ゲート−コレクタ間容量の増加のためほぼ一定の電圧となっている期間が終了する以前に、ゲートに供給されるゲート電流がより少ない量に制限できるため、ターンオン時の電流の時間変化率di/dtの増加を抑制することができる。
【0026】
また、絶縁ゲート型半導体素子のゲート電圧が一定の電圧に達した以降は、上記期間で供給されるゲート電流よりも、より大きな電流を供給することができるため、コレクタ−エミッタ間電圧が速やかに定常値Vce(sat)になり、ターンオン損失を低減することができる。
【0027】
【実施例】
以下、本発明による絶縁ゲート型半導体装置の駆動方法、及び、それを実現する駆動装置の実施例を図面を使って、詳細に説明する。
【0028】
本発明を適用した駆動装置の第1の実施例の回路構成を図1に示す。なお、本図では、駆動の対象となるIGBT1だけ表示し、IGBT1に接続される負荷など、その他のIGBT装置の構成は省略している。
【0029】
本実施例の駆動装置は、入力端子7に加えられるオン信号に従ってIGBT1を駆動するもので、2個の駆動回路2、3と、駆動回路2、3とIGBT1のゲートとをそれぞれ接続するゲート抵抗4、5と、両駆動回路2、3を駆動するゲート用電源6と、各駆動回路の動作を制御する制御回路とを有する。
【0030】
制御回路は、入力されるオン信号を予め定めた時間t1だけ遅延させて出力する遅延回路8と、当該遅延出力に応じて、動作される駆動回路を切り換える論理回路9とを有する。
【0031】
なお、本実施例では後述する理由から、ゲート抵抗5の抵抗値は、ゲート抵抗4の抵抗値よりも小さいものとする。
【0032】
駆動回路2は、npnトランジスタQ1、pnpトランジスタQ2、npnトランジスタQ3、及び、抵抗rb1から構成されている。npnトランジスタQ1のコレクタ及び抵抗rb1は、ゲート用電源6の高電位側に接続されている。pnpトランジスタQ2のコレクタ及びnpnトランジスタQ3のエミッタは、ゲート用電源6のアース側に接続されている。抵抗rb1、npnトランジスタQ1及びpnpトランジスタQ2のベース、npnトランジスタQ3のコレクタは、互いに接続されている。npnトランジスタQ1及びpnpトランジスタQ2のエミッタは、ゲート抵抗4に接続されている。
【0033】
駆動回路3は、駆動回路2と同様に、npnトランジスタQ4、pnpトランジスタQ5、npnトランジスタQ6、及び、抵抗rb2から構成されている。npnトランジスタQ4のコレクタ及び抵抗rb2は、ゲート用電源6の高電位側に接続されている。pnpトランジスタQ5のコレクタ及びnpnトランジスタQ6のエミッタは、ゲート用電源6のアース側に接続されている。抵抗rb2、npnトランジスタQ4及びpnpトランジスタQ5のベース、npnトランジスタQ3のコレクタは、互いに接続されている。npnトランジスタQ4及びpnpトランジスタQ5のエミッタは、ゲート抵抗5に接続されている。
【0034】
論理回路9は、遅延回路8の出力を反転するインバータ92と、インバータ92の出力と入力端子7からIGBT1のオン信号の論理和をとるANDゲート91とを有する。論理回路9のANDゲート91からの出力は、駆動回路2のnpnトランジスタQ3に接続されている。
【0035】
遅延回路8は、入力端子7に加えられるオン信号を、所定の時間(本実施例では時間t1)だけ遅延させて出力するもので、その出力は、論理回路9及び駆動回路3のnpnトランジスタQ6に接続されている。
【0036】
本実施例の動作を、図2を参照して説明する。図2は、図1に示す本装置の各部における波形を示している。
【0037】
入力端子7にIGBT1に対する、外部からのオン信号(図2(1))が加わると、この時点では遅延回路8の出力はLowレベルのままであるため、論理回路9の出力はHiレベルとなり、npnトランジスタQ3のベース電圧(図2(2))は正の電圧になる。よって、駆動回路2が動作して、ゲート抵抗4を通じてIGBT1のゲート容量(=CGE+CGC)を充電する。
【0038】
次に、オン信号が入力されてから時間t1後には、遅延回路8からの出力がHiレベルとなるため、npnトランジスタQ3のベース電圧が0になると同時に、npnトランジスタQ6のベース電圧(図2(3))が正になる。よって、駆動回路3が動作して、ゲート抵抗5を通じてIGBT1のゲート容量を充電する。
【0039】
以上のように駆動回路2、3を動作させることにより、IGBT1のゲート電圧、ゲート電流、コレクタ電圧、及び、コレクタ電流は、図2(4)、(5)、(6)に示すように変化する。
【0040】
本実施例では、抵抗値の異なる2つのゲート抵抗4、5にそれぞれ接続された駆動回路2、3の駆動タイミングを制御することにより、IGBT1のターンオン時の初期状態の時間変化特性に対応して、IGBT1のゲート電極への給電を行うものである。
【0041】
ここで、2つの駆動回路を切り換えるタイミングに対応する遅延時間t1は、入力端子7にオン信号が加わってから、ゲート電圧がゲート−コレクタ容量CGCの増加によりほぼ一定となる時間t2より長くし、かつ、前記オン信号が加わってから、ゲート電圧がCGCの増加により一定となり再び増加するまでの時間t3より短くなるように予め選ぶものとする。
【0042】
本実施例によれば、IGBT1の電流が最初に増加する領域では、抵抗値の大きなゲート抵抗4を通して駆動回路2がゲート電流を供給するため、コレクタ電流の時間変化率di/dtを低減させることができる。
【0043】
さらに、本実施例によれば、ゲート−コレクタ容量CGCのためゲート電圧が一定となる領域では、抵抗値の小さいゲート抵抗5を通じてゲート電流を供給するため、ゲート電圧が一定となる期間が短くなり、このためターンオン損失が減少する。
【0044】
次に、本発明を適用した駆動装置の第2の実施例を説明する。
【0045】
本実施例の駆動装置は、図3に示すように、入力端子7に加えられるオン信号に従ってIGBT1を駆動するものであり、上記第1の実施例(図1参照)と同じ構成である、2個の駆動回路2、3、当該駆動回路2、3とIGBT1のゲートとをそれぞれ接続するゲート抵抗4、5、及び、両駆動回路2、3を駆動するゲート用電源6を有する。
【0046】
ここで、上記第1の実施例と同様に、ゲート抵抗5の抵抗値は、ゲート抵抗4の抵抗値よりも小さいものとする。
【0047】
本実施例の駆動装置は、さらに、上記2つの駆動回路2、3の動作タイミングを制御する制御回路として、上記図1の第1の実施例で使用されていた遅延回路8及び論理回路9の代わりに、論理回路15と、IGBT1のコレクタ電圧を検出して駆動回路の切り換えタイミングを決定するコレクタ電圧判定回路とを備えている。
【0048】
このコレクタ電圧判定回路は、IGBT1のコレクタに接続されるツエナーダイオード10と、ツエナーダイオード10のアノードに接続される抵抗11と、抵抗11に接続される抵抗12とを有する。ここで、抵抗12の他端側は、ゲート用電源6のアースに接続されている。
【0049】
ここで、ツエナーダイオード10のツエナー電圧を、ゲート−コレクタ容量CGCのためゲート電圧が一定となるときのコレクタ−エミッタ電圧Vce(res)より高く設定しておく。
【0050】
このコレクタ電圧判定回路は、さらに、抵抗11及び12の接続点にそれぞれのベースが接続されている、npnトランジスタ13及びpnpトランジスタ14を有する。npnトランジスタ13及びpnpトランジスタ14のエミッタは、互いに接続され、論理回路15の入力側に接続されている。
【0051】
論理回路15は、npnトランジスタ13及びpnpトランジスタ14のエミッタ側と接続されているインバータ1502と、入力端子7に入力される信号とインバータ1502の出力との論理和をとるANDゲート1501と、前記エミッタでの電圧と入力端子7に入力される信号との論理和をとるANDゲート1503とを有する。ANDゲート1501、1503の出力は、それぞれ、駆動回路2のトランジスタQ3のゲート、駆動回路3のトランジスタQ6のゲートに接続されている。
【0052】
次に、本実施例の動作を説明する。
【0053】
入力端子7にターンオン信号が入力された直後は、IGBT1のコレクタ電圧が高く(図2(6)参照)、この間は、ツエナーダイオード10が導通し、電流が抵抗11及び12に流れる。この時抵抗12に生じる電圧降下によりnpnトランジスタ13がオンし、論理回路15へ正の電圧(Highレベル)を出力する。
【0054】
この出力電圧が正かつ、入力端子7にオン信号が入力されている期間では、論理回路15のANDゲート1503により、npnトランジスタQ3にオン信号が伝わり、駆動回路2が動作する。よって、IGBT1のゲートには、駆動回路2により、ゲート抵抗4を通じて電流が供給される。
【0055】
次に、IGBT1のゲート容量が充電され、コレクタ電圧が低下すると、ツエナーダイオード10には電流が流れなくなる。すると、npnトランジスタ13がオフ状態となり、論理回路15への出力電圧は0となる。
【0056】
この出力電圧が0かつ、入力端子7にオン信号が加わっている期間では、論理回路15のANDゲート1501により、npnトランジスタQ6にオン信号が出力され、駆動回路3が動作する。したがって、IGBT1のゲートには、ゲート抵抗4に比較して抵抗値がより小さなゲート抵抗5を通じて、電流が供給される。
【0057】
本実施例によれば、IGBT1のコレクタ電流が増加する領域(図2(6)参照)では、抵抗値のより大きなゲート抵抗4でゲート電流を供給するため、電流変化率di/dtの増加を抑制することができる。
【0058】
さらに、本実施例によれば、IGBT1がターンオンし、コレクタ電圧が減少して、ゲート−コレクタ容量CGCが増加する期間では、抵抗値のより小さなゲート抵抗5でゲート電流を供給することができる。このため、ゲート電圧が一定となる期間が、ゲート抵抗4を通じて給電したとした場合よりも短くなり、ターンオン損失を減少させることが可能となる。
【0059】
また、上記第1の実施例では、ある期間だけ、駆動回路2を動作させ、別の期間では駆動回路3を動作させるため、遅延回路を使用していた。ところが、IGBT1の特性のばらつきにより、遅延時間や、ゲート電圧が一定になる時間がばらつくことがあり、このため、素子によっては、遅延回路の定数を調整する必要がある場合がある。
【0060】
これに対して、本実施例によれば、IGBT1のコレクタ電圧を直接検出して、2つの駆動回路を切り替えるため、IGBT素子の特性ばらつきを考慮する必要がなく、個々のIGBT素子の特性によらず、ターンオン損失をほぼ一定の範囲内に抑えることが可能となる。
【0061】
次に、本発明を適用した駆動装置の第3の実施例を図4を参照して説明する。本実施例は、2つの駆動回路2、3の動作タイミングを制御するために、IGBT1のゲート電圧を検出し、当該ゲート電圧に基づいて制御を実行するものである。
【0062】
本実施例の駆動装置は、図4に示すように、上記第1の実施例(図1参照)と同じ構成である、2個の駆動回路2、3、当該駆動回路2、3とIGBT1のゲートとをそれぞれ接続するゲート抵抗4、5、及び、両駆動回路2、3を駆動するゲート用電源6を有する。ここで、上記第1の実施例と同様に、ゲート抵抗5の抵抗値は、ゲート抵抗4の抵抗値よりも小さいものとする。
【0063】
本実施例の駆動装置は、さらに、上記2つの駆動回路2、3の動作タイミングを制御する制御回路として、上記図1の第1の実施例で使用されていた遅延回路8及び論理回路9の代わりに、論理回路18と、IGBT1のゲート電圧と基準電圧17を比較するコンパレータ16とから構成されるゲート電圧判定回路とが設けられている。
【0064】
論理回路18は、コンパレータ16の出力とと入力端子7に入力される信号との論理和をとるANDゲート1803と、コンパレータ16の出力を入力とするインバータ1802と、入力端子7に入力される信号とインバータ1802の出力との論理和をとるANDゲート1801とを有する。
【0065】
ANDゲート1801、1803の出力は、それぞれ、駆動回路2のトランジスタQ3のゲート、駆動回路3のトランジスタQ6のゲートに接続されている。
【0066】
次に、本実施例の動作を説明する。
【0067】
入力端子7にオン信号が入力され、かつ、IGBT1のゲート電圧が基準電圧17より低い間は、コンパレータの出力は0である。このため、論理回路18のANDゲート1801が、駆動回路2のトランジスタQ3にオン信号を出力する。よって、駆動回路2が動作し、抵抗値のより大きなゲート抵抗4を通じて、IGBT1のゲート電流が供給される。
【0068】
本実施例では、基準電圧17をゲート−コレクタ容量CGCにより一定となるIGBT1のゲート電圧より、少し低く設定するものとする。
【0069】
このような設定により、IGBT1のゲート電圧が一定となる直前に、コンパレータ16の出力は正(Highレベル)となる。この正の出力により、ANDゲート1801の出力はLowレベルとなり、駆動回路2からゲート抵抗4を通じての電流の供給が停止すると共に、論路回路18のもう一方のANDゲート1803はHighレベルとなり、駆動回路3のトランジスタQ6にオン信号を伝え、抵抗値のより小さなゲート抵抗5を通じてゲート電流が供給される。
【0070】
本実施例によれば、IGBT1のゲート電圧変化を検出し、それを制御に利用することで、IGBTのゲート電圧が一定となる期間をより短くすることができるため、ターンオン損失を減少させることができる。
【0071】
次に、本発明を適用したIGBT駆動装置の第4の実施例を、図5を参照して説明する。本実施例では、マルチエミッタ構成を備えるIGBTを利用するものであり、2つの駆動回路2、3の動作タイミングを制御するために、前記マルチエミッタのうちの1つのエミッタから全エミッタ電流の1部を検出し、当該エミッタ電流の1部に基づいて、前記制御を実行するものである。
【0072】
なお、IGBT素子のエミッタ電極は、通常、複数の個別エミッタ電極を接続して構成するものであり、本実施例では、この個別エミッタ電極の1つから出力されるエミッタ電流を検出するものである。また、エミッタ電流に限らず、初期状態の時間変化特性に対応してその電流量が変化する電流であれば、その他の電流を利用する構成としても良い。
【0073】
本実施例の駆動装置は、図5に示すように、コンパレータ16で基準電圧17と比較する対象が異なるだけで、その他の全ての構成は、上記第3の実施例(図4参照)と同じである。すなわち、本実施例では、IGBT1のエミッタ電流の一部を、1つのエミッタ1aを通して取り出し、抵抗19の両端に生ずる電圧と、基準電圧17とをコンパレータ16で比較し、その比較結果を論理回路18に出力する。
【0074】
IGBT1のエミッタ電流は、実質的にはコレクタ電流(例えば図2(6)参照)とほぼ同じように、IGBT1のターンオン初期状態において変化するものであり、さらに、取りだしたエミッタ電流の一部は、前記エミッタ電流(エミッタ電流の総量)の増減に比例して変化する。
【0075】
したがって、入力端子7にオン信号が加わり、かつ、IGBT1に流れるエミッタ電流の一部が予め定めたしきい値以下では、論理回路18により、駆動回路2のトランジスタQ3にオン信号が出力され、当該電流が前記予め定めたしきい値以上になると、駆動回路3のトランジスタQ6にオン信号が出力される。
【0076】
本実施例によれば、IGBT1のエミッタ電流の一部が予め定めたしきい値までは、より大きな抵抗値のゲート抵抗を通じて駆動することで、電流変化率di/dtを抑え、それ以降の期間では、より小さな抵抗値のゲート抵抗値を通じて駆動することで、ゲート電圧が一定となる期間を短くし、ターンオン損失を減らすことができる。
【0077】
次に、本発明を適用した駆動装置の第5の実施例を、図6、図7を参照して説明する。
【0078】
本実施例は、上記第1の実施例(図1参照)において、駆動回路の個数を2つから3つに増やし、これら3つの駆動回路に接続するゲート抵抗の抵抗値を予め定めた値にし、さらに、各駆動回路の動作タイミングを制御することにより、IGBT1の初期状態における時間変化特性に、より的確に対応させた駆動方法を実現するものである。
【0079】
本実施例では、上記第1の実施例の構成と同じ構成については、上記第1の実施例と同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0080】
本実施例の駆動装置は、図6に示すように、3個の駆動回路2、3、23と、駆動回路2、3、23とIGBT1のゲートとをそれぞれ接続するゲート抵抗4、5、24と、駆動回路2、3、23を駆動するゲート用電源6と、各駆動回路の動作タイミングを制御する制御回路である、遅延回路8、25及び論理回路27とを有する。
【0081】
駆動回路23は、駆動回路2あるいは3と同様に、npnトランジスタQ7、pnpトランジスタQ8、npnトランジスタQ9、及び、抵抗rb3から構成されている。npnトランジスタQ7のコレクタ及び抵抗rb3は、ゲート用電源6の高電位側に接続されている。pnpトランジスタQ8のコレクタ及びnpnトランジスタQ9のエミッタは、ゲート用電源6のアース側に接続されている。抵抗rb3、npnトランジスタQ7及びpnpトランジスタQ8のベース、npnトランジスタQ9のコレクタは、互いに接続されている。npnトランジスタQ7及びpnpトランジスタQ8のエミッタは、ゲート抵抗24に接続されている。
【0082】
なお、本実施例では、IGBT1のゲートに接続されている、ゲート抵抗4、5及び24の3つの抵抗の抵抗値は、以下の関係を満たしているものとする。
【0083】
(ゲート抵抗5の抵抗値)>(ゲート抵抗4、24の抵抗値)
遅延回路25は、入力端子7に加えられるオン信号を、時間tdだけ遅延させて出力する。ここで、時間tdとは、IGBT1にターンオン信号を加えてから、当該IGBT1に電流が流れるまでの遅延時間(図7(7)参照)とする。
【0084】
また、遅延回路8は、入力端子7に加えられるオン信号を、上記第1の実施例で説明した条件を満足する時間t1だけ遅延させるものであり、その出力は、駆動回路23のトランジスタQ9のベースと接続されている。遅延回路8及び遅延回路25の出力、及び、入力端子7は、論理回路27と接続されている。
【0085】
論理回路27は、遅延回路8、25の出力とそれぞれ接続しているインバータ2704、2702、入力端子7に加えられる信号とインバータ2702の出力とインバータ2704の出力との論理和をとるANDゲート2701、及び、入力端子7に加えられる信号と遅延回路25の出力とインバータ2704の出力との論理和をとるANDゲート2703から構成される。ANDゲート2701、2703の出力は、それぞれ、駆動回路2のトランジスタQ3のベース、駆動回路3のトランジスタQ6のベースに接続されている。
【0086】
本実施例の動作を、図7を参照して説明する。
【0087】
入力端子7にゲートオン信号が入ると(図7(1))、その直後では、両遅延回路8、25からの出力はLowレベルであるため、ANDゲート2701の出力がHighレベルとなる。このため、トランジスタQ3のベース電圧が正になり(図7(2))、駆動回路2が動作して、抵抗4を通じてゲート電流がIGBT1のゲートに供給される。
【0088】
次に、ターンオン時から時間td後には、遅延回路25の出力がHighレベルとなる。このため、ANDゲート2701の出力がLowレベルとなり、npnトランジスタQ3のベース電圧が0になる。一方、この時点でも遅延回路8の出力は依然としてLowレベルである。よって、ANDゲート2703がHighレベルとなり、npnトランジスタQ6のベース電圧が正になり(図7(3))、駆動回路2が動作して、ゲート抵抗5を通じてゲート電流がIGBT1のゲートに供給される。
【0089】
さらに、ターンオン時から時間t1後には、遅延回路8の出力もHighレベルとなるため、ANDゲート2703の出力はLowレベルとなる。よって、npnトランジスタQ6のベース電圧が0になると同時に、トランジスタQ9のベース電圧が正になり(図7(4))、駆動回路23が動作して、抵抗24を通じてゲート電流がIGBT1のゲートに供給される。
【0090】
以上説明したように、本実施例の駆動装置では、IGBT1のゲートには、初めに、ゲート抵抗4、次にゲート抵抗5、最後にゲート抵抗24を通じてゲートに電流が供給される。
【0091】
本実施例によれば、初期状態における最初の期間(時間<td)には、IGBT1のゲートに電流を供給するときのゲート抵抗をより小さくすることで、遅延時間tdを短くすることができる。さらに、ゲート電流が流れ始めてからゲート電圧がほぼ一定になった後の予め定めた時点までの期間(td<時間<t1)、より大きな抵抗値を備えたゲート抵抗を通して、IGBT1のゲートへ給電することにより、ゲート電流の時間変化率di/dtを小さく抑えることができる。さらに、IGBT1のゲート電圧がほぼ一定となった後の前記予め定めた時点以降の期間(時間t1以降)に、再び抵抗値がより小さいゲート抵抗を通じて給電することにより、ターンオン損失を小さくすることができる。
【0092】
以上の各実施例では、ゲート抵抗が接続された駆動回路を複数設け、それら駆動回路のうち、駆動する駆動回路を順次切り換えることにより、ゲートに接続するゲート抵抗の抵抗値を変え、ゲートへの印加電圧を切り換えていたが、本発明では、ゲートへの印加電圧の切り換え方法、及びゲート抵抗の切り換え方法は、上述した実施例に限定されるものではない。本発明においては、初期状態の期間中に所定のタイミングで、ゲートへの印加電圧、あるいは、ゲートへ供給される電流が切り換えられるものであれば、その他の方法及び装置を用いても良い。
【0093】
また、以上の各実施例では、ある時点で動作する駆動回路を1つとし、互いに異なる抵抗値のゲート抵抗が接続されている駆動回路を順次切り換えることにより印加電圧を変化させていたが、駆動回路を切り換えるかわりに動作させる駆動回路の個数を変化させることで、印加する駆動電圧あるいは供給するゲート電流量を変化させる構成としても良い。
【0094】
次に、本発明を適用した駆動装置の第6の実施例を図9を参照して説明する。
【0095】
以上の実施例では、絶縁ゲート型トランジスタのゲート電圧の時間変化に対応して、駆動回路に接続しているゲート抵抗を切り換えることにより、駆動方法を制御していたが、IGBTのゲートに複数の容量を接続し、これらのうち充電すべき容量を切り換えることでも、上記各実施例で達成されたものと同様な効果が得られる。
【0096】
なお、本実施例では、上記第1の実施例と同じ構成については同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0097】
本実施例の駆動回路は、図9に示すように、駆動回路2と、駆動回路2とIGBT1のゲートとの間を接続するゲート抵抗4と、ゲート抵抗4と共にIGBT1のゲートに接続される容量C1、C2と、容量C1、C2にそれぞれ接続されるn−MOSFETM1、M2と、容量C1、C2の切り換えタイミングを制御するための遅延回路8及び論理回路9とを有する。
【0098】
なお、本実施例では、容量C1は、容量C2より、その静電容量が大きいものとする。
【0099】
駆動回路2をオンするnpnトランジスタQ3のベースは、入力端子7と接続されている。入力端子7は、また、遅延回路8及び論理回路9のANDゲート91の入力側にも接続されている。
【0100】
遅延回路8は、上記第1の実施例の遅延回路と同様に、入力信号を時間t1だけ遅延させて出力するもので、その出力は、論理回路9のインバータ92の入力及びn−MOSFETM1のゲートに接続されている。論理回路9のANDゲート91の出力は、n−MOSFETM2のゲートに接続されている。
【0101】
本実施例の動作について説明する。
【0102】
入力端子7にオン信号(正の信号)が加わると、トランジスタQ3及びQ1がオンして、ゲート抵抗4を通じて、IGBT1のゲートに電流が流れる。この時、n−MOSFETM1もオンするので、容量C1の充電が開始される。
【0103】
次に、ターンオン時から時間t1後、すなわち、IGBT1のゲート電圧がほぼ一定になる時間(図2参照)で、遅延回路9の出力がHighレベルとなり、論理回路9の出力がLowレベルとなるため、n−MOSFETM2がオンし、n−MOSFETM1がオフする。このため、容量C1の充電が停止され、容量C2の充電が開始される。
【0104】
本実施例において、容量C1>容量C2なので、IGBT1のゲート電圧の立ち上がり期間(時間<t1)では、容量C2が接続されている場合に比較して、コレクタ電流Iの時間変化率dI/dtがより低く抑えることができる。
【0105】
また、t1以降の期間では、容量の小さい容量C2だけを充電するように構成されているため、ゲート電圧がほぼ一定になる時間を、容量C1が接続されている場合よりも、短くすることができる。
【0106】
本実施例では、n−MOSFETの回路を用いて、2つの容量の切り換えを行い、ゲートへ流れる電流からの吸収する量を変えているが、上記2つの容量の切り換えを実行する回路は、本実施例に限定されるものではなく、他の回路構成によって実現しても構わない。
【0107】
次に、以上第1の実施例から第6の実施例で説明した、本発明を適用した駆動回路を使って構成したモータ駆動用インバータ回路の一実施例を、図8を参照して説明する。
【0108】
本実施例のインバータ回路においては、図8に示すように、IGBT200a、200b、200c、200d、200e、200fに、逆並列にダイオード201a、201b、201c、201d、201e、201fがそれぞれ接続されており、IGBT200a及び200d、IGBT200b及び200e、IGBT200c及び200fが、直列に接続され、U相、V相、W相の各相の電圧を発生するように構成されている。
【0109】
各2つのIGBTが接続された中点より、各相の出力がでており、駆動すべきモータ206と接続されている。
【0110】
ここで、上アーム駆動回路204、及び、下アーム駆動回路205は、上述した実施例で説明した、本発明を適用した駆動回路の一つを利用するものとする。また、各駆動回路204、205は、各IGBTのオン、オフタイミングを所定の周期で行わせるためのタイミング信号の発生回路も含むものとする。
【0111】
本実施例において、上アーム側のIGBT200a、200b、200cのコレクタは共通であり、整流回路203の高電位側と接続されている。また、下アーム側のIGBT200d、200e、200fのエミッタは共通であり、整流回路203のアース側と接続されている。
【0112】
整流回路203は、交流202を直流に変換する。各IGBT200は、この直流を受電し、再度交流に変換してモータ206を駆動する。上アーム駆動回路204、及び、下アーム駆動回路205は、各IGBTのゲートに駆動信号を伝え、所定の周期で個々のIGBTをオン、オフさせる。
【0113】
本実施例では、本発明を適用した駆動回路204、205を使用することにより、各IGBTのコレクタ電流における電流変化率di/dtを抑制することができる。このため、各ダイオード201へのはね上がり電圧が従来より小さくなり、本インバータ回路の信頼性が増すとともに、ノイズを発生を低減させることができる。
【0114】
さらに、駆動回路204、205により、従来よりターンオン損失を低減することができるため、本例のインバータ回路の高効率化を図ることができる。
【0115】
なお、以上の実施例では、半導体素子の例としてIGBTのみについて述べたが、絶縁ゲートを持つ他の素子、例えば、MOSFETやMOSGTOでも、上述したIGBTと同様な駆動方法及び装置を用いて駆動することで、同様の効果を達成することができる。
【0116】
【効果】
本発明によれば、IGBT等の絶縁ゲート型半導体素子を含む半導体装置において、いわゆるターンオン損失を低減することが可能な、絶縁ゲート型半導体装置の駆動方法及びその装置を提供することができる。
【0117】
さらに、本発明によれば、上記駆動方法およびその装置において、ターンオン時の電流の時間変化率di/dtを低減することが可能な、絶縁ゲート型半導体装置の駆動方法及びその装置を提供することができる。
【0118】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用した第1の実施例の回路図。
【図2】第1の実施例の各部における波形を示す波形図。
【図3】本発明を適用した第2の実施例の回路図。
【図4】本発明を適用した第3の実施例の回路図。
【図5】本発明を適用した第4の実施例の回路図。
【図6】本発明を適用した第5の実施例の回路図。
【図7】第5の実施例の各部における波形を示す波形図。
【図8】本発明を適用した駆動回路を使ったモータ駆動用インバータ回路の一実施例の回路図。
【図9】本発明を適用した第6の実施例の回路図。
【図10】IGBTの内部構成を示す断面図。
【図11】IGBTのゲート−エミッタ間容量、ゲート−コレクタ間容量の、コレクタ−エミッタ間電圧依存性を示すグラフ。
【図12】誘導負荷を備えたIGBTを駆動する従来の駆動回路の回路図。
【図13】図12の従来例の各部における波形を示す波形図。
【符号の説明】
1:IGBT、2:駆動回路、3:駆動回路、4:ゲート抵抗、5:ゲート抵抗、6:ゲート電源、7:入力端子、8:遅延回路、9:論理回路、10:ツエナーダイオード、11:抵抗、12:抵抗、13:npnトランジスタ、14:pnpトランジスタ、15:論理回路、16:コンパレータ、17:基準電源、18:論理回路、19:抵抗、23:駆動回路、24:ゲート抵抗、25:遅延回路、27:論理回路、200a、200b、200c、200d、200e、200f:IGBT、201a、201b、201c、201d、201e、201f:ダイオード、202:交流電源、203:整流回路、204:上アーム駆動回路、205:下アーム駆動回路、206:モータ。

Claims (13)

  1. 絶縁ゲート型半導体素子のゲートに駆動電圧を印加する駆動装置による、絶縁ゲート型半導体装置の駆動方法において、
    該駆動装置が、第1の駆動回路と、第2の駆動回路と、該第1の駆動回路と第2の駆動回路の動作を制御する制御手段とを備え、
    前記第1の駆動回路の出力が第1のゲート抵抗を介して前記ゲートに接続し、
    前記第2の駆動回路の出力が第2のゲート抵抗を介して前記ゲートに接続し、
    該第1のゲート抵抗の抵抗値は該第2のゲート抵抗の抵抗値より大きく、
    前記制御手段が、入力された前記絶縁ゲート型半導体素子のオン信号を受けて、
    1 の所定期間、前記第1の駆動回路を動作させ、かつ前記第2の駆動回路を停止し、前記第1の駆動回路から第1のゲート抵抗を介してゲート駆動電圧を出力する第1のステップと、
    該第1の所定期間経過後に、前記第1の駆動回路を停止し、前記第2の駆動回路を動作させ、前記第2の駆動回路から第2のゲート抵抗を介してゲート駆動電圧を出力する第2のステップとを有し、
    前記第1の所定期間が、ゲート電圧が時間と共に増加する期間以降で、かつ、ゲート電圧がほぼ一定となる期間の終了前である
    ことを特徴とする絶縁ゲート型半導体装置の駆動方法。
  2. 絶縁ゲート型半導体素子のゲートに駆動電圧を印加する駆動装置による、絶縁ゲート型半導体装置の駆動方法において、
    該駆動装置が、駆動回路と、該駆動回路と前記ゲートとを接続するゲート抵抗と、
    第1のコンデンサと、第2のコンデンサと、
    該第1のコンデンサと第2のコンデンサの充電を制御する制御手段とを備え、
    前記第1のコンデンサの一端を前記ゲート抵抗とゲートとの接続点に接続し、他端を第1のMOSFETに接続し、
    前記第2のコンデンサの一端を前記ゲート抵抗とゲートとの接続点に接続し、他端を第2のMOSFETに接続し、
    前記第1のコンデンサの静電容量が前記第2のコンデンサの静電容量より大きく、
    前記制御手段が、入力された前記絶縁ゲート型半導体素子のオン信号を受けて、
    第1の所定時間、前記第1のMOSFETのみを導通させて前記第1のコンデンサを充電する第1の充電ステップと、
    該第1の所定期間経過後に、前記第2のMOSFETのみを導通させて前記第2のコンデンサを充電する第2の充電ステップとを有し、
    前記第1の所定期間が、ゲート電圧が時間と共に増加する期間以降で、かつ、ゲート電圧がほぼ一定となる期間の終了前である
    ことを特徴とする絶縁ゲート型半導体装置の駆動方法。
  3. 絶縁ゲート型半導体素子のゲートに駆動電圧を印加する駆動装置による、絶縁ゲート型半導体装置の駆動方法において、
    該駆動装置が、第1の駆動回路と、第2の駆動回路を、第3の駆動回路と、
    該第1の駆動回路と第2の駆動回路と第3の駆動回路との動作を制御する制御手段とを備え、
    前記第1の駆動回路の出力が第1のゲート抵抗を介して前記ゲートに接続し、
    前記第2の駆動回路の出力が第2のゲート抵抗を介して前記ゲートに接続し、
    前記第3の駆動回路の出力が第3のゲート抵抗を介して前記ゲートに接続し、
    該第2のゲート抵抗の抵抗値は該第1のゲート抵抗の抵抗値あるいは該第3のゲート抵抗の抵抗値のいずれより大きく、
    前記制御手段が、入力された前記絶縁ゲート型半導体素子のオン信号を受けて、
    1 の所定期間、前記第1の駆動回路のみを動作させてゲート駆動電圧を出力する第1のステップと、
    該第 1 の所定期間経過後の第2の所定期間、前記第2の駆動回路のみを動作させてゲート駆動電圧を出力する第2のステップと、
    該第2の所定期間経過後に、前記第3の駆動回路のみを動作させてゲート駆動電圧を出力する第3のステップとを有し、
    前記第2の所定期間が、ゲート電圧が時間と共に増加する期間以降で、かつ、ゲート電圧がほぼ一定となる期間の終了前である
    ことを特徴とする絶縁ゲート型半導体装置の駆動方法。
  4. 絶縁ゲート型半導体素子のゲートに駆動電圧を印加する、絶縁ゲート型半導体装置の駆動装置において、
    該駆動装置が、第1の駆動回路と、第2の駆動回路と、該第1の駆動回路と第2の駆動回路の動作を制御する制御回路とを備え、
    前記第1の駆動回路の出力が第1のゲート抵抗を介して前記ゲートに接続し
    前記第2の駆動回路の出力が第2のゲート抵抗を介して前記ゲートに接続し、
    該第1のゲート抵抗の抵抗値は該第2のゲート抵抗の抵抗値より大きく
    前記制御回路が、入力された前記絶縁ゲート型半導体素子のオン信号を受けて、
    1 の所定期間、前記第1の駆動回路のみを動作させてゲート駆動電圧を出力し、
    該第 1 の所定期間経過後に前記第2の駆動回路のみを動作させてゲート駆動電圧を出力させるものであり、
    前記第1の所定期間が、ゲート電圧が時間と共に増加する期間以降で、かつ、ゲート電圧がほぼ一定となる期間の終了前である
    ことを特徴とする絶縁ゲート型半導体装置の駆動装置。
  5. 請求項4において、
    前記制御回路が、前記入力されオン信号を前記第1の所定期間遅延する遅延回路を備えていることを特徴とする絶縁ゲート型半導体装置の駆動装置。
  6. 請求項4において、
    前記制御回路が、前記絶縁ゲート型半導体素子のコレクタ電圧を予め定めた電圧と比較するコレクタ電圧判定回路を備え、該コレクタ電圧判定回路がコレクタ電圧が該予め定めた電圧以下になったと判定した時点を前記第1の所定期間経過時点として、前記第2の駆動回路のみを動作させることを特徴とする絶縁ゲート型半導体装置の駆動装置。
  7. 請求項4において、
    前記制御回路が、前記絶縁ゲート型半導体素子のゲート電圧を予め定めた電圧と比較するゲート電圧判定回路を備え、該ゲート電圧判定回路がゲート電圧が該予め定めた電圧値以上なったと判定した時点を前記第1の所定期間経過時点として、前記第2の駆動回路のみを動作させることを特徴とする絶縁ゲート型半導体装置の駆動装置。
  8. 請求項4において、
    前記制御回路が、前記絶縁ゲート型半導体素子のエミッタ電流、コレクタ電流、及び、前記2種類の電流の一方の電流に対応して変化する電流のうち、いずれか1つの電流の電流値を検出し、該検出された電流値が予め定めた電流値以上かどうかを判定する電流判定回路を有し、該電流判定回路が、前記検出した電流値が前記予め定めた電流値以上となったと判定した時点を前記第1の所定期間経過時点として、前記第2の駆動回路のみを動作させることを特徴とする絶縁ゲート型半導体装置の駆動装置。
  9. 絶縁ゲート型半導体素子のゲートに駆動電圧を印加する、絶縁ゲート型半導体装置の駆動装置において、
    該駆動装置が、第1の駆動回路と、第2の駆動回路と、第3の駆動回路と、
    該第1の駆動回路と第2の駆動回路と第3の駆動回路との動作を制御する制御回路とを備え、
    前記第1の駆動回路の出力が第1のゲート抵抗を介して前記ゲートに接続し、
    前記第2の駆動回路の出力が第2のゲート抵抗を介して前記ゲートに接続し
    前記第3の駆動回路の出力が第3のゲート抵抗を介して前記ゲートに接続し、
    該第2のゲート抵抗の抵抗値は該第1のゲート抵抗の抵抗値あるいは該第3のゲート抵抗の抵抗値のいずれより大きく、
    前記制御回路が、入力された前記絶縁ゲート型半導体素子のオン信号を受けて、
    1 の所定期間、前記第1の駆動回路のみを動作させてゲート駆動電圧を出力し、
    該第 1 の所定期間経過後の第2の所定期間、前記第2の駆動回路のみを動作させてゲート駆動電圧を出力し、
    該第2の所定期間経過後に、前記第3の駆動回路のみを動作させてゲート駆動電圧を出力するものであって、
    前記第2の所定期間が、ゲート電圧が時間と共に増加する期間以降で、かつ、ゲート電圧がほぼ一定となる期間の終了前である
    ことを特徴とする絶縁ゲート型半導体装置の駆動装置。
  10. 請求項9において、
    前記制御回路が、前記入力されオン信号を前記第1の所定期間が終了する第1の所定時点まで遅延させる第1の遅延回路と、前記入力されたオン信号を前記第2の所定期間が終了する第2の所定時点になるまで遅延させる第2の遅延回路とを備えていることを特徴とする絶縁ゲート型半導体装置の駆動装置。
  11. 絶縁ゲート型半導体素子のゲートに駆動電圧を印加する、絶縁ゲート型半導体装置の駆動装置において、
    該駆動装置が、駆動回路と、駆動回路と前記ゲートとを接続するゲート抵抗と、
    第1のコンデンサと、第2のコンデンサと
    該第1のコンデンサと第2のコンデンサの充電を制御する制御回路とを備え、
    前記第1のコンデンサの一端を前記ゲート抵抗とゲートとの接続点に接続し、他端を第1のMOSFETに接続し、
    前記第2のコンデンサの一端を前記ゲート抵抗とゲートとの接続点に接続し、他端を第2のMOSFETに接続し、
    前記第1のコンデンサの静電容量が前記第2のコンデンサの静電容量より大きく、
    前記制御回路が、入力された前記絶縁ゲート型半導体素子のオン信号を受けて、
    第1の所定時間、前記第1のMOSFETのみを導通させて前記第1のコンデンサを充電し、
    該第1の所定期間経過後に、前記第2のMOSFETのみを導通させて前記第2のコンデンサを充電し、
    前記第1の所定期間が、ゲート電圧が時間と共に増加する期間以降で、かつ、ゲート電圧がほぼ一定となる期間の終了前である
    ことを特徴とする絶縁ゲート型半導体装置の駆動装置。
  12. 請求項11において、
    前記制御回路が、前記入力されオン信号を前記第1の所定期間遅延する遅延回路を備えていることを特徴とする絶縁ゲート型半導体装置の駆動装置。
  13. 直流電力を交流電力に変換する、複数個の絶縁ゲート型半導体素子を有する上アームと、該上アームと同数個の絶縁ゲート型半導体素子を有する下アームと、前記上アームのゲ ートに駆動信号を与える上アーム駆動装置と、前記下アームのゲートに駆動信号を伝える下アーム駆動装置とを備えるインバータ回路において、
    前記上アーム駆動装置と下アーム駆動装置とが、請求項4から12のいずれかに記載の絶縁ゲート型半導体装置の駆動装置であることを特徴とするインバータ回路。
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