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JP3600036B2 - 有機エレクトロルミネッセンス素子 - Google Patents

有機エレクトロルミネッセンス素子 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子は、透明ガラス基板上に、ホール注入電極、有機層、電子注入電極を順次積層した構造を有しており、新しい自発光型素子として期待されている。そして、前記有機層の構造としては、▲1▼ホール輸送層と発光層とから成る構造(SH−A構造)、▲2▼発光層と電子注入層とから成る構造(SH−B構造)、▲3▼ホール輸送層と発光層と電子注入層とから成る構造(DH構造)が知られている。そして、前記ホール注入電極としては、Au(金)やITO(インジウム−スズ酸化物)のような仕事関数の大きな電極材料を用い、電子注入電極としては、Mgのような仕事関数の小さな電極材料を用いている。また、前記ホール輸送層としてはp型半導体の性質を有する有機材料が用いられ、電子輸送層としてはn型半導体の性質を有する有機材料が用いられている。
【0003】
そして、上記発光層は、前記SH−A構造においては、n型半導体の性質を有する材料が用いられ、SH−B構造においては、p型半導体の性質を有する材料が用いられ、DH構造においては、中性に近い性質を有する材料が用いられる。いずれにしても、ホール注入電極から注入されたホールと電子注入電極から注入された電子とが、発光層とホール(又は電子)輸送層の界面、および発光層内で再結合して発光するという原理に基づいている。従って、発光機構が「衝突励起型発光」である無機エレクトロルミネッセンス素子と比べて、有機エレクトロルミネッセンス素子は低電圧で発光が可能といった特徴を有し、このことが表示素子として期待される理由となっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
前述したように、上記有機エレクトロルミネッセンス素子は、有機材料を主材料に用いているため、素子特性は有機材料の性能に大きく左右される。特に、発光材料、キャリア輸送材料、ホスト材料は重要であり、今後、素子特性を上げるためには、成膜安定性等優れた特性を持つ材料が要望されている。
【0005】
この発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子の発光特性を向上できる有機膜を提供し、この有機膜を発光層に用いて性能を向上した有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この発明は、ホール注入電極と電子注入電極との間に、有機キャリア輸送層と有機発光層を備えた有機エレクトロルミネッセンス素子において、上記有機層の少なくとも一層に、配位子としてアゾメチン基にベンゾチアゾール及びその誘導体又はベンゾオキサゾール及びその誘導体或いはクマリン及びその誘導体のいずれかが結合した分子と中心金属イオンとの間で配位結合をしたキレート金属錯体が含まれていることを特徴とする。
【0007】
上記キレート金属錯体の金属イオンが、周期律表2族又は3族に属することを特徴とする。周期律表2族の金属イオンとしては、例えば亜鉛(Zn)、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)の金属イオンが用いられ、周期律表3族の金属イオンとしては、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)が用いられる。
【0010】
上記したキレート金属錯体は蛍光を持った固体を得ることができ、キャリア輸送性にも優れる。また、成膜後も膜の安定性が高いため、この発明のキレート金属錯体を用いて有機エレクトロルミネッセンス素子を作成すると、安定な素子を作成することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態につき図面を参照して説明する。
図1は、この実施の形態の有機エレクトロルミネッセンス素子を示した縦断側面図である。
【0012】
この有機エレクトロルミネッセンス素子は、透明ガラス基板1上に成膜されたインジウム−スズ酸化物(ITO)から成るホール注入電極(陽極)2と、下記の化学式(1)で示されるトリフェニルアミン系誘導体(MTDATA)から成る膜厚が500オングストロームのホール注入層3と、下記の化学式(2)で示されるトリフェニルアミン系誘導体(NPD)から成る膜厚が200オングストロームのホール輸送層4と、この発明のキレート金属錯体からなる膜厚400オングストロームの発光層5とMgIn合金(比率10対1)から成る膜厚が2000オングストロームの電子注入電極(陰極)6とがこの順に成膜されて成るものである。
【0013】
この発明の第1の実施の形態においては、キレート金属錯体として、下記の化学式(3)で示されるアゾメチン基にベンゾチアゾール(benzothiazole)が結合した分子にZnが配位結合した2アゾメチン−ベンゾチアゾール(2AZM−BTZ)が用いられる。
【0014】
【化1】
Figure 0003600036
【0015】
【化2】
Figure 0003600036
【0016】
【化3】
Figure 0003600036
【0017】
次に、上記図1に示した構造の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法について説明する。
【0018】
まず、透明ガラス基板1上にインジウム−スズ酸化物(ITO)を形成したものを中性洗剤により洗浄した後、アセトン中で20分間、エタノール中で20分間、それぞれ超音波洗浄を行う。次に、この洗浄済みの基板を沸騰したエタノール中に約1分間浸して取り出し、直ぐに送風乾燥を行う。その後、上記ITO、即ち、ホール注入電極3上に、上記化学式(1)で示されるMTDATAを蒸着してホール注入層3を形成し、このホール注入層3上に化学式(2)で示したNPDを真空蒸着してホール輸送層4を形成する。更に、このホール輸送層4上に、上記化学式(3)で示した2AZM−BTZを真空蒸着して発光層5を形成する。そして、発光層5上にMgIn合金から成る電子注入電極4(陰極)を形成する。なお、上述の蒸着はいずれも真空度1×10−6Torrで基板温度制御無しの条件下で行った。
【0019】
かかる構造の有機エレクトロルミネッセンス素子は、前記発光層5としてこの発明の化学式(3)で示される2AZM−BTZから成る有機膜を用いたものである。この構造の有機エレクトロルミネッセンス素子を用いて次のような発光実験を行った。前記ホール注入電極2をプラスに、電子注入電極5をマイナスにそれぞれバイアスし、電圧を印加する。電圧が8Vのときに輝度が1740cd/mの黄色(発光ピーク波長:555nm、色座標:x=0.451、y=0.527)の発光を得ることができた。
【0020】
この素子を封止して、空気中に1カ月放置した後、順バイアスに電圧を印加した結果、同様の発光を得ることができ、安定であることが分かった。
【0021】
上記2AZM−BTZは、以下に示すような方法で合成を行った。2−アミノベンゾチアゾール2g(13.3mmol)及びサリチルアルデヒド1.63g(13.3mmol)をエタノール30ml中に入れ、窒素ガス雰囲気下、1時間還流させた。次に、酢酸亜鉛2水和物1.46g(6.65mmol)を15mlのメタノールに溶解した状態で、反応系に入れ、1時間程度還流させると、オレンジ色の沈殿物が析出した。この沈殿物を吸引濾過し、乾燥させた後、トレイン・サブリメーション法を用いた昇華精製装置にかけて精製を行った結果、黄色の蛍光を持った結晶が得られた。
【0022】
次に、この発明の第2の実施の形態について説明する。この発明の第2の実施の形態においては、発光層5となるキレート金属錯体として、下記の化学式(4)で示されるアゾメチン基にベンゾオキサゾール(benzooxazole)が結合した分子にZnが配位結合した2アゾメチン−ベンゾチオキサゾール(2AZM−BOX)が用いられた。発光層5として、2AZM−BOXを用いた以外は第1の実施の形態と同じ条件で有機エレクトロルミネッセンスを作成した。
【0023】
【化4】
Figure 0003600036
【0024】
かかる構造の有機エレクトロルミネッセンス素子は、前記発光層5としてこの発明の化学式(4)で示される2AZM−BOXから成る有機膜を用いたものである。この構造の有機エレクトロルミネッセンス素子を用いて、第1の実施の形態と同様に次のような発光実験を行った。前記ホール注入電極2をプラスに、電子注入電極5をマイナスにそれぞれバイアスし、電圧を印加する。電圧が8Vのときに輝度が2100cd/mの黄緑発光(色座標:x=0.410、y=0.578)を得ることができた。
【0025】
この素子を封止して、空気中に1カ月放置した後、順バイアスに電圧を印加した結果、同様の発光を得ることができ、安定であることが分かった。
【0026】
次に、この発明の第3の実施の形態について説明する。この発明の第3の実施の形態においては、発光層5となるキレート金属錯体として、下記の化学式(5)で示されるアゾメチン基にクマリン(Coumarin)が結合した分子にZnが配位結合した2アゾメチン−クマリン(2AZM−C)を用いた。発光層5として、2AZM−Cを用いた以外は第1の実施の形態と同じ条件で有機エレクトロルミネッセンスを作成した。
【0027】
【化5】
Figure 0003600036
【0028】
かかる構造の有機エレクトロルミネッセンス素子は、前記発光層5としてこの発明の化学式(5)で示される2AZM−Cから成る有機膜を用いたものである。この構造の有機エレクトロルミネッセンス素子を用いて、第1の実施の形態と同様に次のような発光実験を行った。前記ホール注入電極2をプラスに、電子注入電極5をマイナスにそれぞれバイアスし、電圧を印加する。電圧が8Vのときに輝度が1100cd/mの黄色発光(色座標:x=0.481、y=0.495)を得ることができた。
【0029】
また、この素子を封止して、空気中に1カ月放置した後、順バイアスに電圧を印加した結果、同様の発光を得ることができ、安定であることが分かった。
【0030】
上記した第1ないし第3の実施の形態においては、キレート金属錯体の金属イオンとして、亜鉛(Zn)を用いた場合について説明したが、他の金属イオンとして、周期律表2族又は3族に属する金属を用いても同様に金属錯体を形成することがきる。周期律表2族の金属イオンとしては、亜鉛(Zn)、以外に、例えばベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)の金属イオンが用いることができ、周期律表3族の金属イオンとしては、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)が用いることができる。
【0031】
次に、この発明の第4の実施の形態について説明する。この発明の第4の実施の形態においては、発光層5となるキレート金属錯体として、下記の化学式(6)で示されるサリシリデンジアミノベンゾフラン(Salicydenediaminobenzofuran)分子にZnが配位結合した1アゾメチン−ベンゾフラン(1AZM−BFR)を用いた。発光層5として、1AZM−BFRを用いた以外は第1の実施の形態と同じ条件で有機エレクトロルミネッセンスを作成した。
【0032】
【化6】
Figure 0003600036
【0033】
かかる構造の有機エレクトロルミネッセンス素子は、前記発光層5としてこの発明の化学式(6)で示される1AZM−BFRから成る有機膜を用いたものである。この構造の有機エレクトロルミネッセンス素子を用いて、第1の実施の形態と同様に次のような発光実験を行った。前記ホール注入電極2をプラスに、電子注入電極5をマイナスにそれぞれバイアスし、電圧を印加する。電圧が10Vのときに輝度が105cd/mの赤色発光(色座標:x=0.629、y=0.369)を得ることができた。
【0034】
また、この素子を封止して、空気中に1カ月放置した後、順バイアスに電圧を印加した結果、同様の発光を得ることができ、安定であることが分かった。
【0035】
尚、上記した第4の実施の形態においては、キレート金属錯体の金属イオンとして、亜鉛(Zn)を用いた場合について説明したが、他の金属イオンとして、周期律表2族に属する金属を用いても同様に金属錯体を形成することがきる。周期律表2族の金属イオンとしては、亜鉛(Zn)、以外に、例えばベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)の金属イオンが用いることができる。
【0036】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明のキレート金属錯体を有機エレクトロルミネッセンス素子に用いると、良好な発光特性が得られることが分かり、本発明によるキレート金属錯体は、発光材料として、優れた特性を示すことが分かった。このように、この発明によれば、有機エレクトロルミネッセンス素子の発光特性を向上させることできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の有機エレクトロルミネッセンス素子を示した縦断側面図である。
【符号の説明】
1 透明ガラス基板1
2 ホール注入電極(陽極)
3 ホール注入層
4 ホール輸送層
4 発光層
6 電子注入電極(陰極)

Claims (2)

  1. ホール注入電極と電子注入電極との間に、有機キャリア輸送層と有機発光層を備えた有機エレクトロルミネッセンス素子において、上記有機層の少なくとも一層に、配位子としてアゾメチン基にベンゾチアゾール及びその誘導体又はベンゾオキサゾール及びその誘導体或いはクマリン及びその誘導体のいずれかが結合した分子と中心金属イオンとの間で配位結合をしたキレート金属錯体が含まれていることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
  2. 上記キレート金属錯体の金属イオンが、周期律表2族又は3族に属することを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
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