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JP3580126B2 - 赤外線センサ - Google Patents

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  • Radiation Pyrometers (AREA)
  • Spectrometry And Color Measurement (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、直列接続された複数個の熱電対により赤外線量や温度、温度変化等を計測する赤外線センサに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、人体等から発せられる赤外線を検出する赤外線センサが防犯装置、耳式体温計等の様々な分野で使用されている。
【0003】
図1及び第2図は、熱型赤外線センサとして用いられている、従来の一般的なサーモパイル型赤外線センサ1の構造を示す平面図及び一部破断した斜視図である。このサーモパイル型赤外線センサ1にあっては、枠状をしたヒートシンク2内の空洞部3上面に熱絶縁薄膜4を張ってあり、ヒートシンク2上面から熱絶縁薄膜4上面にかけて2種の金属又は半導体(第1熱電材料5、第2熱電材料6)を多数配線し、ヒートシンク2上面で両金属を接合させて熱電対の冷接点7を形成し、熱絶縁薄膜4上面で両金属を接合させて熱電対の温接点8を形成し、熱電対を直列に接続されたサーモパイル9の両端にそれぞれ電極10を設けている。熱絶縁薄膜4の上に形成された温接点8は矩形状に形成された赤外線吸収体11により覆われている。また、サーモパイル9及び赤外線吸収体11の上方には、赤外線フィルタ12が配設されている。
【0004】
しかして、赤外線フィルタ12を透過した赤外線が赤外線吸収体11に吸収されて熱に変換されると、ヒートシンク2上に形成された冷接点7と温接点8に温度差が生じることでサーモパイル9の電極10間に起電力が生じる。すなわち、第1及び第2熱電材料5,6の接合部(熱電対)の温度がTの時、当該接合部に生じる熱起電力がφ(T)で表されるとし、熱絶縁薄膜4上にはm個の温接点8が設けられ、ヒートシンク22上にもm個の冷接点7が設けられているとすると、温接点8の温度がTw、冷接点7の温度がTcであるときには、サーモパイル9の両端の電極10間には、次の(1)式で表される起電力Vが発生する。
V=m[φ(Tw)−φ(Tc)]
従って、ヒートシンク2の温度Tcが既知であるとすると、電極10間に発生する起電力Vを測定することで測定対象物の温度Twを非接触で計測することができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従来の赤外線センサでは、サーモパイルに入射する赤外線の波長領域は、使用されている赤外線フィルタの透過率特性によって決まるが、赤外線フィルタとしては、安価であるためシリコン・フィルタが用いられることが多い。しかし、シリコン・フィルタでは、可視光線および近赤外線が比較的よく透過するためセンサの誤動作が起きやすいという欠点があった。このため、ノイズとなる波長域の光をカットするため、フィルタの片面または両面に反射防止膜(多層膜)等を形成することにより、5μm以下の波長の光をカットオフした赤外線フィルタも用いられている(特開平4−315927号公報、特開平7−120307号公報)。しかし、このような赤外線センサは、非常に高価であった。
【0006】
本発明は叙上の従来例の欠点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、高感度で安価な赤外線センサを提供することにある。
【0007】
【発明の開示】
請求項1に記載した赤外線センサは、赤外線の強弱により温度が変化する赤外線吸収体と、前記赤外線吸収体の温度を電気信号に変換する素子と、前記赤外線吸収体に対向する回折レンズとを有する赤外線センサにおいて、前記赤外線吸収体は環状に形成されていて前記変換素子の温度感知部分を覆っており、前記回折レンズは、その光軸が前記赤外線吸収体の中心軸と一致するようにして環状に形成されており、回折レンズと赤外線吸収体との距離が、検出対象となる赤外線波長に対する回折レンズの焦点距離よりも長く、もしくは短くなるようにし、前記回折レンズを透過した検出対象となる波長の赤外線は、前記赤外線吸収体と一致する領域に広がって前記赤外線吸収体に照射されるようにしたものである。
【0008】
請求項1の赤外線センサにあっては、環状に形成されたフレネルレンズ等の回折レンズによって赤外線吸収体に赤外線を集光させるようにしているから、感度を向上させることができる。しかも、回折レンズと赤外線吸収体との距離が、検出対象となる赤外線波長に対する回折レンズの焦点距離よりも長く、もしくは短くなるようにしているから、赤外線吸収体の面積を広くでき、赤外線吸収体による赤外線の検出効率を高くすることができる。また、回折レンズを用いることによりコストも安価にできる。
さらに、請求項1に記載の赤外線センサにあっては、前記赤外線吸収体が環状に形成されていて前記変換素子の温度感知部分を覆っているので、検出対象となる赤外線波長よりも波長の短い光を赤外線吸収体の内周側へ逃がすことができ、計測対象となる波長域の赤外線だけを選択的に検出することができる。
【0009】
請求項2に記載の実施態様は、請求項1記載の赤外線センサにおいて、前記回折レンズと前記赤外線吸収体との距離が、検出対象となる赤外線波長に対する回折レンズの焦点距離よりも長くなるようにし、検出対象となる赤外線波長より短い波長の光は、前記回折レンズを透過して赤外線吸収体の開口を通過するようにしたものである。
【0010】
請求項3に記載の実施態様は、請求項1記載の赤外線センサにおける前記回折レンズが、シリコン基板の上面に形成された輪帯状のフレネルレンズであることを特徴としている。
【0011】
請求項4に記載の実施態様は、請求項1記載の赤外線センサにおいて、前記赤外線吸収体と前記変換素子を設けた第1のシリコン基板と、前記回折レンズを形成された第2のシリコン基板を重ねて積層一体化したことを特徴としている。
【0012】
請求項3に記載の赤外線センサは、全体が積層一体化されているので、赤外線センサを小型化することができる。また、回折レンズと赤外線吸収体とのアライメント等も容易に行なえる。
【0013】
【発明の実施の形態】
(第1の実施形態)
図3は本発明の一実施形態によるサーモパイル型赤外線センサ21の一部破断した斜視図、図4はその断面図である。このサーモパイル型赤外線センサ21にあっては、シリコン基板によって形成されたヒートシンク22の中央部上面に空洞部23が開口されており、空洞部23の上面には熱絶縁薄膜24が形成されている。この熱絶縁薄膜24は、Si0やSiNなどによって形成されており、熱容量を小さくするため数ミクロンの厚みにしている。ヒートシンク22と熱絶縁薄膜24の境界部分においては、ヒートシンク22の上面と熱絶縁薄膜24の上面にかけて第1熱電材料25と第2熱電材料26が交互に配線されており、ヒートシンク22上面で第1及び第2熱電材料25,26を接合させて熱電対の冷接点27を設け、熱絶縁薄膜24上面で第1及び第2熱電材料25,26を接合させて熱電対の温接点28を設け、これによって熱電対が直列に接続された温度計測用のサーモパイル29を形成している(図5)。熱絶縁薄膜24上の温接点28が設けられた領域は、図5に示すように、Au、Bi等の金属黒からなる赤外線吸収体30によって円環状に覆われている。また、温度計測用のサーモパイル29の両端には、それぞれ電極31が設けられている。なお、図5において、斜線を施した領域のサーモパイル29は第1の熱電材料25を表し、斜線を施していない領域のサーモパイル29は第2の熱電材料26を表し、網掛けした領域は赤外線吸収体30を設ける領域を示している。
【0014】
さらに、ヒートシンク22上には、シリコン基板によって形成されたレンズ基板32がシリコンフュージョンボンディング等によって接合されている。レンズ基板32の上面には、図6に示すような輪帯状をしたフレネルレンズ33が形成されている。また、レンズ基板32の下面には凹部34が設けられており、凹部34の周囲をヒートシンク22に接合させてある。従って、サーモパイル29や赤外線吸収体30は、ヒートシンク22とレンズ基板32との間に気密的に封入されており、サーモパイル29等の特性変化が少なくなっている。また、内部に窒素ガスや不活性ガスを封入することもできる。さらに、電極31の位置に対向させて、レンズ基板32には電極31を外部に露出させるためのホール35が穿孔されている。
【0015】
しかして、この赤外線センサ21に赤外線が入射すると、赤外線はフレネルレンズ33によって集光され、温接点28上に形成された赤外線吸収体30に吸収されて熱に変換される。そして、ヒートシンク22上に形成された冷接点27と温接点28に温度差が生じることでサーモパイル29の電極31間に起電力が出力される。
【0016】
ここで、例えば赤外線吸収体30を円板状にして、フレネルレンズ33の焦点を赤外線吸収体30の1点にスポット状に集光させると検出効率は高くなるが、赤外線吸収体30の面積が小さくなり、サーモパイル29の熱電対本数を多くとることができないため出力が落ちる。また、光学系のアライメントにも高い精度が要求される。
【0017】
そこで、本発明においては、図7に示すように、フレネルレンズ33の焦点が、検出対象とする波長λの赤外線において赤外線受光面の位置の手前または奥になるようにわざとずらし、赤外線受光面において当該波長λの赤外線が輪帯状に少し広がるように設計する。赤外線受光面で輪帯状に少し広がっている赤外線領域に一致させて赤外線吸収体30の位置及びサイズを決めることにより、赤外線吸収体30の面積を広げることができ、サーモパイル29の熱電対本数(温接点数)を減らすことなく赤外線吸収体30による赤外線の検出効率を高くすることができる。なお、図7に示す33Aは、比較のためにフレネルレンズ33の大きさを示したもの(フレネルレンズ33の影)である。
【0018】
さらに、図8に示すように、フレネルレンズ33は波長により焦点距離が異なるため、フレネルレンズ33と円環状の赤外線吸収体30とを組合わせ、赤外線吸収体30の輪帯の幅および直径の大きさを調節することにより、特定の波長域の赤外線のみを険出することができる。すなわち、特定の波長外の光は、赤外線吸収体30の外周側もしくは内周側へ外れるようにして、赤外線吸収体30に照射されないようにする。具体的にいうと、検出対象とする赤外線の波長領域のうち最大波長の光が赤外線吸収体30の外周縁(又は、内周円)に照射され、最小波長の光が赤外線吸収体30の内周縁(又は、外周円)に照射されるようにする。
【0019】
これと同じ効果を赤外線フィルタで実現しようとすると、フィルタの両面に反射防止用の多層膜を施すなどの加工が必要となるため高価なデバイスとなるが、この方法を用いれば安価で容易に実現することができる。例えばSiフィルタは、1〜15μmの赤外線を通すが、このうち5μm以下の波長をカットし、波長10μm付近の赤外線を主に検出したい場合には、図9に示すように、波長1〜5μmの赤外線の光路を赤外線吸収体30からはずし、波長10μm(5〜15μm)の赤外線の光路の部分に赤外線吸収体30を配置してやればよい。
【0020】
また、この実施形態によれば、サーモパイル29及び赤外線吸収体30を形成したヒートシンク22とフレネルレンズ33を形成したレンズ基板32とを積層して内部にサーモパイル29や赤外線吸収体30を封止する構造としているので、光学系のアライメントが容易に行える。また、金属ステムや缶ケース等が不要になるので、コストダウンを図ることができる。
【0021】
次に、上記サーモパイル型赤外線センサ21の製造方法を図10により説明する。まず、ヒートシンク22となるシリコン基板36の両面に窒化膜等からなる熱絶縁薄膜24a,24bを被覆する[図10(a)]。ついで、シリコン基板36の赤外線検出面側にビスマスとアンチモン等の異種熱電材料からなる熱電対を複数個直列に接続し、複数の温接点28及び冷接点27を有するサーモパイル29を形成する。このときビスマスとアンチモンの電導ラインは、それぞれ蒸着法およびフォトリソグラフィ工程、リフトオフ法によりパターニングされる[図10(b)]。この後、スパッタなどによりシリコン基板36の両面に酸化膜等からなる絶縁膜37を被覆する[図10(c)]。シリコン基板36の赤外線検出面側に形成された絶縁膜37を、フォトリソグラフィ工程により赤外線吸収体30のパターンに合わせて一部除去した後、蒸着やスパッタなどにより金やビスマス等の金属黒を堆積させ、リフトオフ法により温接点28を覆う赤外線吸収体30を輪帯状にパターニングし、絶縁膜37を剥離する[図10(d)]。ついで、熱絶縁薄膜24に孔又はスリットをあけてKOH溶液等によりシリコン基板36を赤外線検出面側から異方性エッチングすることにより空洞部23と宙空状の熱絶縁薄膜24を形成する[図10(e)]。
【0022】
一方、レンズ基板32となるシリコン基板38を異方性エッチングすることにより、電極31を取り出すためのホール35をあけ[図(f)]、シリコン基板38の赤外線検出面側と反対側の面を異方性エッチングすることにより凹部34を形成する[図10(g)]。こうして製作されたヒートシンク22とレンズ基板32を重ね合わせ、電極31とホール35等を位置合わせして接合する[図10(h)]。この後、レンズ基板32の赤外線検知面側にAuやAlの金属膜を蒸着またはスパッタし、フォトリソグラフィ工程によりフレネルレンズ33のパターンを形成する[図10(i)]。このとき、両面アライナを用いることにより、フレネルレンズ33と赤外線吸収体30の各中心が一致するように形成する。また、同時にレンズ基板32とヒートシンク22の間の内部空間を真空に封止する。
【0023】
フレネルレンズ33は、シリコン基板38を等方性エッチングすることによって形成することができるが、あるいは、レンズ基板32上に金属や有機系の薄膜を形成し、これをエッチングすることによってフレネルレンズ33を形成してもよい。
【0024】
(第2の実施形態)
図11は本発明の別な実施形態によるサーモパイル型赤外線センサ41を示す断面図である。この実施形態では、1枚のシリコン基板にサーモパイル29と赤外線吸収体30とフレネルレンズ33を形成している。すなわち、シリコン基板によって形成されたヒートシンク(兼レンズ基板)22の下面には、空洞部23が形成されており、空洞部23の下面に熱絶縁薄膜24が設けられている。熱絶縁薄膜24の下面にはサーモパイル29が設けられており、サーモパイル29の下面(あるいは上面)には、円環状をした熱絶縁薄膜24が形成されている。そして、このヒートシンク22の上面にエッチング等によって直接フレネルレンズ33が形成されている。
【0025】
このような実施形態によれば、1枚のシリコン基板の表裏にフレネルレンズ33とサーモパイル29及び赤外線吸収体30とを設けているので、光学系のアライメントが容易になり、またコストも安価になる。
【0026】
(第3の実施形態)
図12は本発明の別な実施形態によるサーモパイル型赤外線センサ42を示す断面図である。この実施形態にあっては、サーモパイル29と円環状をした赤外線吸収体30を形成されたヒートシンク22をステム43上に形成し、ステム43上に取り付けられた缶ケース44の窓部45にフレネルレンズ33を有するレンズ基板32を取り付けたものである。
【0027】
このような実施形態によれば、既存の赤外線センサのパッケージ形態を利用することができる。
【0028】
なお、赤外線吸収体は、上記のような円環状のものが望ましいが、円板状にしても差し支えない。また、回折レンズとしては、フレネルレンズに限らず、輪帯状のパターンを有するゾーンプレートを用いてもよい。
【0029】
また、上記実施形態では、赤外線吸収体の温度を電気信号に変換する素子としてサーモパイルを用いた場合について説明したが、この変換素子としては、サーミスタ・ボロメータや焦電型赤外線センサを用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来のサーモパイル型赤外線センサの構造を示す平面図である。
【図2】同上の赤外線センサの一部破断した斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態によるサーモパイル型赤外線センサの構造を示す一部破断した斜視図である。
【図4】同上の赤外線センサの断面図である。
【図5】同上の赤外線センサのヒートシンクを示す平面図である。
【図6】同上の赤外線センサの平面図である。
【図7】同上の赤外線センサの作用説明図である。
【図8】同上の赤外線センサにおけるフレネルレンズの働きを説明する図である。
【図9】同上の赤外線センサにおけるフレネルレンズと赤外線吸収体の設計例を説明する図である。
【図10】(a)〜(i)は同上の赤外線センサの製造工程図である。
【図11】本発明の別な実施形態によるサーモパイル型赤外線センサを示す断面図である。
【図12】本発明のさらに別な実施形態によるサーモパイル型赤外線センサを示す断面図である。
【符号の説明】
22 ヒートシンク
24 熱絶縁薄膜
27 冷接点
28 温接点
29 サーモパイル
30 熱吸収体
32 レンズ基板
33 フレネルレンズ

Claims (4)

  1. 赤外線の強弱により温度が変化する赤外線吸収体と、前記赤外線吸収体の温度を電気信号に変換する素子と、前記赤外線吸収体に対向する回折レンズとを有する赤外線センサにおいて、
    前記赤外線吸収体は環状に形成されていて前記変換素子の温度感知部分を覆っており、
    前記回折レンズは、その光軸が前記赤外線吸収体の中心軸と一致するようにして環状に形成されており、
    回折レンズと赤外線吸収体との距離が、検出対象となる赤外線波長に対する回折レンズの焦点距離よりも長く、もしくは短くなるようにし、前記回折レンズを透過した検出対象となる波長の赤外線は、前記赤外線吸収体と一致する領域に広がって前記赤外線吸収体に照射されることを特徴とする赤外線センサ。
  2. 前記回折レンズと前記赤外線吸収体との距離が、検出対象となる赤外線波長に対する回折レンズの焦点距離よりも長くなるようにし、検出対象となる赤外線波長より短い波長の光は、前記回折レンズを透過して赤外線吸収体の開口を通過することを特徴とする、請求項1に記載の赤外線センサ。
  3. 前記回折レンズは、シリコン基板の上面に形成された輪帯状のフレネルレンズであることを特徴とする、請求項1に記載の赤外線センサ。
  4. 前記赤外線吸収体と前記変換素子を設けた第1のシリコン基板と、前記回折レンズを形成された第2のシリコン基板を重ねて積層一体化したことを特徴とする、請求項1に記載の赤外線センサ。
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