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JP3553439B2 - 亀裂モニタリング方法および亀裂モニタリング装置 - Google Patents

亀裂モニタリング方法および亀裂モニタリング装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、プラントの高温厚肉配管の溶接部の内部に生じた亀裂の長さをプラントを運転しながらモニタリングする亀裂モニタリング方法および亀裂モニタリング装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
発電所等においては、プラントの高温厚肉配管(例えば主蒸気管(肉厚:100mm程度)や高温再熱蒸気管(肉厚:30〜40mm程度))の溶接部などを超音波探傷試験(Ultrasonic test:UT)法やTOFD(Time of Flight Diffraction)法などのような非破壊検査法により定期的に点検し、亀裂の有無やその長さなどをチェックしている。
【0003】
定期点検により亀裂を発見した場合には、亀裂を生じた上記配管を即時に交換するのは非常に難しいため、当該亀裂の長さやプラントの運転条件等に基づいて、当該配管の使用可能時間を算出して補修計画を立て、補修するまで当該配管をそのままの状態で使用している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、亀裂を生じた配管においては、亀裂の大きさやプラントの運転条件等に基づいて、当該配管の使用可能時間を算出しているため、この使用可能時間内であれば、特に問題なく使用を継続することができるものの、何らかの原因により、亀裂の成長速度に変化を生じて使用可能時間が変化してしまう虞がある。そこで、安全性を確保するため、プラントの運転中でも上記亀裂の状態をモニタリングできるようにすることが強く求められている。しかしながら、上述したようなUT法やTOFD法においては、その探子が高温環境下(500〜600℃)で使用することができないため、上述したようなモニタリングに適用することができなかった。
【0005】
このようなことから、本発明は、プラント運転中の高温環境下であっても、配管の内部に生じている亀裂を常にモニタリングすることが正確且つ簡単にできる亀裂モニタリング方法および亀裂モニタリング装置を提供することを目的とした。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前述した課題を解決するための、第一番目の発明による亀裂モニタリング方法は、プラントを運転しながら当該プラントの高温厚肉配管の溶接部の内部に生じている亀裂の長さをモニタリングする亀裂モニタリング方法であって、位置をあらかじめ特定された前記亀裂を間に挟むように保護ボックスの内部に取り付けられた一対の耐熱性の電流入出力電極を前記配管の外周面に当該保護ボックスと共に取り付けると共に、前記電流入出力電極の間に位置して前記亀裂を挟むように前記保護ボックスの内部に取り付けられた少なくとも一対の耐熱性の亀裂用電位差計測電極を前記配管の外周面に当該保護ボックスと共に取り付ける電極取付工程と、前記電流入出力電極間に10Hz以下の交流電流と50Hz以上の交流電流とを交互に流すと共に、前記亀裂用電位差計測電極間の電位差を計測する亀裂間電位差計測工程と、前記亀裂用電位差計測電極間の電位差を補正する亀裂間電位差補正工程と、前記亀裂間電位差補正工程で得られた前記電位差に基づいて、前記亀裂の長さを求める亀裂長さ算出工程とを行うことを特徴とする。
【0007】
第二番目の発明による亀裂モニタリング方法は、第一番目の発明の亀裂モニタリング方法において、前記配管の前記亀裂の成長時に電位差を最も感度よく計測できるように前記電極取付工程での前記電流入出力電極および前記亀裂用電位差計測電極の取り付け位置を前記亀裂の周辺の電場解析に基づいて設定することを特徴とする。
【0008】
第三番目の発明による亀裂モニタリング方法は、第二番目の発明の亀裂モニタリング方法において、一対の前記亀裂用電位差計測電極が、前記配管の前記亀裂の成長方向と交差する方向で当該亀裂の中心を挟むように前記電極取付工程で前記保護ボックスを当該配管に取り付けることを特徴とする。
【0009】
第四番目の発明による亀裂モニタリング方法は、第三番目の発明の亀裂モニタリング方法において、他の対の前記亀裂用電位差計測電極が、前記配管の前記亀裂の成長方向と交差する方向で当該亀裂の成長方向先端側を挟むように前記電極取付工程で前記保護ボックスを当該配管に取り付けることを特徴とする。
【0010】
第五番目の発明による亀裂モニタリング方法は、第一から四番目のいずれかの発明の亀裂モニタリング方法において、前記電極取付工程で前記保護ボックスを前記配管の外周面に対して着脱可能に取り付けるようにしたことを特徴とする。
【0014】
番目の発明による亀裂モニタリング方法は、第一から番目のいずれかの発明の亀裂モニタリング方法において、前記亀裂間電位差補正工程が、前記配管の外周面に取り付けた一対の耐熱性の補正用電位差計測電極間の電位差に基づいて、前記亀裂用電位差計測電極間の前記電位差を補正することを特徴とする。
【0015】
番目の発明による亀裂モニタリング方法は、第一から番目のいずれかの発明の亀裂モニタリング方法において、前記亀裂間電位差補正工程が、前記配管の温度に基づいて、前記亀裂用電位差計測電極間の前記電位差を補正することを特徴とする。
【0016】
番目の発明による亀裂モニタリング方法は、第一から番目のいずれかの発明の亀裂モニタリング方法において、前記亀裂間電位差補正工程が、前記配管の内部の圧力に基づいて、前記亀裂用電位差計測電極間の前記電位差を補正することを特徴とする。
【0017】
番目の発明による亀裂モニタリング方法は、第一から番目のいずれかの発明の亀裂モニタリング方法において、前記亀裂長さ算出工程が、前記配管の前記亀裂の周辺部分の電場解析または実験により得られる当該亀裂の長さと当該亀裂間の電位差との相関関係に基づいて、前記亀裂間電位差補正工程で得られた前記電位差から当該亀裂の長さを求めることを特徴とする。
【0018】
番目の発明による亀裂モニタリング方法は、第一から番目のいずれかの発明の亀裂モニタリング方法において、前記亀裂長さ算出工程が、前記配管の前記亀裂の周辺部分の電場解析または実験に基づいて、応力変化量ごとの前記亀裂の最大亀裂長さと当該亀裂間の電位差変化量との相関関係を求める第一のステップと、前記配管の温度および圧力に基づいて、当該配管における高負荷時と低負荷時との二時点間での応力変化量を求める第二のステップと、上記二時点間の電位差変化量より、応力変化量に対応する前記亀裂の長さ求める第三のステップとを行うことを特徴とする。
【0019】
一方、前述した課題を解決するための、第十一番目の発明による亀裂モニタリング装置は、プラントを運転しながら当該プラントの高温厚肉配管の溶接部の内部に生じている亀裂の長さをモニタリングする亀裂モニタリング装置であって、前記配管の外周面に取り付けられる保護ボックスと、前記亀裂を挟むように前記保護ボックスの内部に配設されて前記配管の外周面に取り付けられる耐熱材料製の一対の電流入出力電極と、前記電流入出力電極の間に位置して前記亀裂を挟むように前記保護ボックスの内部に配設されて前記配管の外周面に取り付けられる耐熱材料製の少なくとも一対の亀裂用電位差計測電極とを備えてなるセンサヘッドと、前記センサヘッドの前記電流入出力電極間に10Hz以下の交流電流と50Hz以上の交流電流とを交互に流す交流電源と、前記センサヘッドの前記亀裂用電位差計測電極間の電位差を計測する亀裂用電位差計測手段と、前記亀裂用電位差計測手段で計測した前記センサヘッドの前記亀裂用電位差計測電極間の電位差を補正する亀裂間電位差補正手段と前記亀裂間電位差補正手段で得られた前記電位差に基づいて、前記亀裂の長さを求める亀裂長さ算出手段とを備えてなることを特徴とする。
【0020】
十二番目の発明による亀裂モニタリング装置は、第十一番目の発明の亀裂モニタリング装置において、前記配管の前記亀裂の成長時に電位差を最も感度よく計測できるように前記センサヘッドの前記電流入出力電極および前記亀裂用電位差計測用電極の位置が前記配管の前記亀裂の周辺部分の電場解析に基づいて設定されていることを特徴とする。
【0021】
十三番目の発明による亀裂モニタリング装置は、第十二番目の発明の亀裂モニタリング装置において、前記配管の前記亀裂の成長方向と交差する方向で当該亀裂の中心を挟むように前記センサヘッドの一対の前記亀裂用電位差計測電極が当該配管に取り付けられることを特徴とする。
【0022】
十四番目の発明による亀裂モニタリング装置は、第十三番目の発明の亀裂モニタリング装置において、前記配管の前記亀裂の成長方向と交差する方向で当該亀裂の成長方向先端側を挟むように前記センサヘッドの他の対の前記亀裂用電位差計測電極を当該配管に取り付けることを特徴とする。
【0023】
十五番目の発明による亀裂モニタリング装置は、第十一から十四番目のいずれかの発明の亀裂モニタリング装置において、前記センサヘッドを前記配管の外周面に着脱可能に取り付ける取付手段を設けたことを特徴とする。
【0027】
十六番目の発明による亀裂モニタリング装置は、第十一から十五番目のいずれかの発明の亀裂モニタリング装置において、前記亀裂間電位差補正手段が、前記配管の外周面に取り付けられるように前記センサヘッドに設けられた耐熱材料製の一対の補正用電位差計測電極と、前記補正用電位差計測電極間の電位差を計測する補正用電位差計測手段とを備えてなることを特徴とする。
【0028】
十七番目の発明による亀裂モニタリング装置は、第十一から十六番目のいずれかの発明の亀裂モニタリング装置において、前記亀裂間電位差補正手段が、前記配管の温度を計測する配管温度計測手段を備えてなることを特徴とする。
【0029】
十八番目の発明による亀裂モニタリング装置は、第十一から十七番目のいずれかの発明の亀裂モニタリング装置において、前記亀裂間電位差補正手段が、前記配管の内部の圧力を計測する配管圧力計測手段を備えてなることを特徴とする。
【0030】
十九番目の発明による亀裂モニタリング装置は、第十一から十八番目のいずれかの発明の亀裂モニタリング装置において、前記亀裂長さ算出手段が、前記配管の前記亀裂の周辺部分の電場解析または実験により得られる当該亀裂の長さと当該亀裂間の電位差との相関関係に基づいて、前記亀裂間電位差補正手段で得られた前記電位差から当該亀裂の長さを求めることを特徴とする。
【0031】
二十番目の発明による亀裂モニタリング装置は、第十一から十九番目のいずれかの発明の亀裂モニタリング装置において、前記亀裂長さ算出手段が、前記配管の前記亀裂の周辺部分の電場解析または実験に基づいて、応力変化量ごとの前記亀裂の最大亀裂長さと当該亀裂間の電位差変化量との相関関係を求める第一のステップと、前記配管の温度および圧力に基づいて、当該配管における高負荷時と低負荷時との二時点間での応力変化量を求める第二のステップと、上記二時点間の電位差変化量より、応力変化量に対応する前記亀裂の長さを求める第三のステップとを行うことを特徴とする。
【0032】
二十一番目の発明による亀裂モニタリング装置は、第十一から二十番目のいずれかの発明の亀裂モニタリング装置において、前記センサヘッドが複数設けられ、前記亀裂間電位差計測手段が複数の前記センサヘッドの前記亀裂用電位差計測電極間の電位差をそれぞれ計測し、前記亀裂間電位差補正手段が前記亀裂用電位差計測手段で計測した複数の前記センサヘッドの各前記亀裂用電位差計測電極間の電位差をそれぞれ補正し、前記亀裂長さ算出手段が前記亀裂間電位差補正手段で得られた各電位差に基づいて、各前記亀裂の長さをそれぞれ求めることを特徴とする。
【0033】
二十二番目の発明による亀裂モニタリング装置は、第十一から二十一番目のいずれかの発明の亀裂モニタリング装置において、前記亀裂間電位差計測手段、亀裂間電位差補正手段および前記亀裂長さ算出手段が前記配管から離れた遠隔地に配備されていることを特徴とする。
【0034】
【発明の実施の形態】
本発明による亀裂モニタリング方法および亀裂モニタリング装置の実施の形態を以下に説明するが、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。
【0035】
[第一番目の実施の形態]
本発明による亀裂モニタリング方法および亀裂モニタリング装置の第一番目の実施の形態を図1〜5を用いて説明する。図1は、亀裂モニタリング装置の配管側での概略構成図、図2は、図1の矢線II部の抽出拡大図、図3は、図1の要部の他の例の概略構成図、図4は、各電極の配置状態の説明図、図5は、亀裂モニタリング装置の集中管理室側での概略構成図である。
【0036】
図1,2,4に示すように、本実施の形態における亀裂モニタリング装置は、発電所等におけるプラントの高温厚肉配管100(例えば主蒸気管(肉厚:100mm程度)や高温再熱蒸気管(肉厚:30〜40mm程度))の溶接部100aの内側に生じた亀裂100bをモニタリングする場合に適用される。
【0037】
図1,2,4に示すように、保護ボックス11の内部には、交流電流を入力する耐熱材料製(例えばインコネル等)の電流入力電極12aと、交流電流を取り出す耐熱材料製(例えばインコネル等)の電流出力電極12bと、耐熱材料製(例えばインコネル等)の二対の亀裂用電位差計測電極12c〜12fと、耐熱材料製(例えばインコネル等)の一対の補正用電位差計測電極12g,12hとが配設されている。これら電極12a〜12hは、高温厚肉配管100の亀裂100bの成長時に電位差を最も感度よく計測できるように当該配管100の亀裂100bの周辺部分の電場解析に基づいてその位置が設定されている。
【0038】
すなわち、図4に示すように、高温厚肉配管100の亀裂100bの成長方向(長さ方向)と交差する方向(幅方向)で亀裂100bの中心側を挟めるように亀裂用電位差計測電極12c,12dを保護ボックス11に取り付け、亀裂100bの成長方向(長さ方向)と交差する方向(幅方向)で亀裂100bの成長方向先端側を挟めるように亀裂用電位差計測電極12e,12fを保護ボックス11に取り付けるのである。
【0039】
具体的には、電流入出力電極12a,12bは、直線的に配設され、その間隔が規定の長さL(例えば150mm)となっている。一方の対をなす亀裂用電位差計測電極12c,12dは、電流入出力電極12a,12b間の中央部に同一直線上で配設され、その間隔が規定の長さW(例えば40mm)となっている。他方の対をなす亀裂用電位差計測電極12e,12fは、上述した一方の対をなす亀裂用電位差計測電極12c,12dと隣り合うように所定の間隔(例えば15mm)をあけて配設されている。補正用電位差計測電極12g,12hは、電流入出力電極12a,12b間の電流入力電極12a寄りに同一直線上で配設され、その間隔が規定の長さ(例えば20mm)となっている。このような保護ボックス11、各電極12a〜12hなどにより、本実施の形態ではセンサヘッド10を構成している。
【0040】
ここで、センサヘッド10の取り付けは、上記配管100の外周面に保護ボックス11を溶接で固定することも可能であるが、着脱に問題を生じるため、例えば、図3に示すように、取付手段である鋼製のベルト24を用いて保護ボックス11を当該配管100の外周面に着脱可能に縛り着けるとよい。なお、図1中、101は保温材である。
【0041】
図1,2に示すように、保護ボックス11には、引出管21の一端が連結されている。引出管21の他端には、端子ボックス22が取り付けられている。端子ボックス22には、シールド線23の一端が接続されている。センサヘッド10の上記各電極12a〜12hは、前記引出管21の内部に配線された図示しない導線を介して上記端子ボックス22内で上記シールド線23の一端に接続している。シールド線23の他端は、中継器24を介して前記配管100から離れた遠隔地の集中管理室30にまで電気的に連絡している。
【0042】
図5に示すように、集中管理室30には、前記センサヘッド10の電流入出力電極12a,12b間に所定の周波数の交流電流を流す交流電源31と、亀裂計測用電極12c,12d間および亀裂計測用電極12e,12f間の電位差をそれぞれ計測する亀裂用電位差計測手段である亀裂用電位差計32と、補正用電位差計測電極12g,12h間の電位差を計測する補正用電位差計測手段である補正用電位差計33とが設けられており、上記中継器24を介して上記シールド線23にそれぞれ電気的に接続している。
【0043】
また、集中管理室30には、前記配管100の内部の圧力を検知する図示しない圧力センサに接続された圧力計34および前記補正用電位差計33での計測結果に基づいて、亀裂用電位差計32で得られた電位差を補正する補正演算装置35が設けられている。このような前記圧力センサ、圧力計34などにより、本実施の形態では配管圧力計測手段を構成し、当該配管圧力計測手段、前記補正用電位差計測電極12g,12h、補正用電位差計33、補正演算装置35などにより、本実施の形態では亀裂間電位差補正手段を構成している。
【0044】
さらに、集中管理室30には、補正演算装置35で補正された前記電位差に基づいて、前記配管100の亀裂100bの長さを求める亀裂長さ算出手段である亀裂長さ算出装置36が設けられている。
【0045】
このような亀裂モニタリング装置を使用した亀裂モニタリング方法を次に説明する。
【0046】
<亀裂位置の特定>
発電所等のプラントのボイラの高温厚肉配管100(例えば主蒸気管(肉厚:100mm程度)や高温再熱蒸気管(肉厚:30〜40mm程度))の溶接部100aなどにおいて、定期点検時に従来から行われている非破壊検査法(TOFD法など)により亀裂100bの有無やその長さなどの確認を行う。
【0047】
<電極取付工程>
亀裂100bの位置や長さ等を確認したら、高温厚肉配管100の外周面にセンサヘッド10を規定位置に固定する。この規定位置は、亀裂100bが成長したときに、電気抵抗(電位差)を最も感度よく計測できる箇所であり、当該亀裂100bの周辺の電位分布を電算機等で電場解析して選定する。なぜなら、この亀裂100bの成長に伴う電圧変化の量が非常に小さく(10−3〜10−6V)、高い精度が要求されるからである。
【0048】
このような電場解析によると、図4に示したように、亀裂用電位差計測電極12c,12d間の中心位置で亀裂100bの成長方向(長さ方向)と交差する方向(幅方向)から亀裂100bの中心側を挟むと共に、亀裂用電位差計測電極12e,12f間の中心位置で亀裂100bの成長方向(長さ方向)と交差する方向(幅方向)から亀裂100bの成長方向先端側を挟むようにセンサヘッド10を高温厚肉配管100に取り付けると好ましい。特に、前記電流入出力電極12a,12b間の長さLが高温厚肉配管100の肉厚の約3.5倍以上になると、亀裂100bの周辺の電位分布が一様になるため、肉厚30〜40mm程度の高温厚肉配管100においては、電流入出力電極12a,12b間の長さLを150mm程度に設定することが好ましい。
【0049】
また、図6に示すように、亀裂用電位差計測電極12c,12d間および亀裂用電位差計測電極12e,12f間の長さWと電圧変化量との関係を亀裂100bの長さごとに求めると、電圧変化の最も大きい上記長さWは上記亀裂100bの長さに関係なく図6より算出される。
【0050】
よって、通常、高温厚肉配管100の肉厚や亀裂100bの長さはある一定の範囲内であるので、電流入出力電極12a,12b間の長さLや亀裂用電位差計測電極12c,12d間の長さWなど各電極12a〜12h等の位置関係を固定しても、常に最適な状態になるのである。このため、上述した各種条件を満たすように上記各電極12a〜12h等を保護ボックス11に位置決め固定して当該保護ボックス11の規定位置に亀裂100bが位置するようにセンサヘッド10を高温厚肉配管100に取り付ければ、上記各電極12a〜12hを規定位置に容易に取り付けることができる。
【0051】
また、上述した電場解析または実験により、図7に示すように、亀裂100bの長さと亀裂100b間の電位差との関係を表す亀裂成長評価線を予め求めておく。
【0052】
<亀裂間電位差計測工程>
以上のように定期点検時にセンサヘッド10を取り付け、プラント等の運転を開始したら、交流電気抵抗法により、交流電源31から電流入出力電極12a,12b間に交流電流を流して、亀裂用電位差計測電極12c,12d間および亀裂用電位差計測電極12e,12f間の電位差を亀裂用電位差計32で計測する。
【0053】
なお、これと同時に、補正用電位差計測電極12g,12h間の電位差を補正用電位差計33で計測すると共に、高温厚肉配管100の内部圧力を前記圧力センサから圧力計34で計測する。
【0054】
ここで、上記電極12a,12bに加える電流の周波数が10Hzよりも大きいと、高温厚肉配管100の表面側の電気抵抗しか計測することができないため、高温厚肉配管100の内側にある亀裂100bを計測する場合には、10Hz以下の周波数の交流電流を加える必要がある。このような交流電気抵抗法は、ノイズ処理が容易であるため、亀裂100bのわずかな変化を確認するのに非常に好都合である。
【0055】
<亀裂間電位差補正工程>
このようにして計測した亀裂100b部分の電圧およびプラント運転出力(高温厚肉配管100の温度、圧力)の時間に対する変化を図8に示す。図8からわかるように、プラント運転時(高温厚肉配管100の温度、圧力が高い場合)には、電圧が大きくなり、プラント停止時(高温厚肉配管100の温度、圧力が低い場合)には、電圧が小さくなる。
【0056】
つまり、温度の変化に伴って、高温厚肉配管100自身の電気抵抗が変化してしまうと共に、圧力の変化に伴って、亀裂100bの大きさが変化してしまい、電圧が変化するのである。
【0057】
そこで、補正用電位差計測電極12g,12h間の電位差に基づいて、亀裂用電位差計測電極12c,12d間および亀裂用電位差計測電極12e,12f間の電位差を補正演算装置35により補正して、温度因子による誤差を取り除くと共に、上記圧力計34での計測結果に基づいて、亀裂用電位差計測電極12c,12d間および亀裂用電位差計測電極12e,12f間の電位差を補正演算装置35により対応する圧力ごとに補正するのである。
【0058】
このようにして補正された亀裂100b間の電位差と高温厚肉配管100の内部圧力との関係を図9に示す。図9からわかるように、プラントの運転時間ごとに圧力との相関関係が得られ、運転時間が多くなって、亀裂100bが成長すると、当該亀裂100b間の電位差が上昇する。
【0059】
<亀裂長さ算出工程>
続いて、補正演算装置35で補正された亀裂100b間の電位差から、亀裂長さ算出装置36が前述した亀裂成長評価線(図7)に基づいて亀裂100bの長さを求める。この長さをプラント運転時間ごとにプロットしていくことにより、図10に示すように、限界値を求めることができる。
【0060】
したがって、このような亀裂モニタリング方法および亀裂モニタリング装置によれば、プラントの運転中であっても、亀裂100aの長さをモニタリングすることができるので、従来のように定期点検時の結果から予測をたてるだけの場合よりも、正確性および安全性を大幅に向上させることができる。
【0061】
また、センサヘッド10を複数設け、これらセンサヘッド10を各高温厚肉配管100の各亀裂100bの周辺部分にそれぞれ取り付け、これらセンサヘッド10を前記中継器24等を介して集中管理室30の各電位差計32,33にそれぞれ接続することにより、これら各電位差計32,33で各センサヘッド10の各電極12c〜12h間の電位差をそれぞれ計測し、これら計測結果を補正演算装置35で各センサヘッド10ごとにそれぞれ補正し、補正演算装置35で得られた各センサヘッド10ごとの電位差に基づいて亀裂長さ算出装置36が各センサヘッド10ごとに各亀裂100bの長さをそれぞれ算出すれば、複数の高温厚肉配管100の複数の亀裂100bを一括して同時にモニタリングすることが容易にできる。
【0062】
なお、本実施の形態では、一方の亀裂用電位差計測電極12c,12dで亀裂の中心側を挟むと共に、他方の亀裂用電位差計測電極12e,12fで亀裂100bの成長方向先端側を挟むことにより、亀裂100bの成長をより正確に把握できるようにしたが、一対の亀裂用電位差計測電極12c,12dだけであっても亀裂100bの長さをモニタリングすることができる。
【0063】
また、本実施の形態では、交流電源31からセンサヘッド10の電流入出力電極12a,12b間に10Hz以下の交流電流を流すことにより、高温厚肉配管100の内部にある亀裂100bをモニタリングするようにしたが、例えば、交流電源31からセンサヘッド10の電流入出力電極12a,12b間に50Hz以上の交流電流を流すようにすれば、クリープボイド等による高温厚肉配管100の表面側の材料劣化の状態をモニタリングすることができる。さらに、10Hz以下の交流電流と50Hz以上の交流電流とを交互に流すようにすれば、高温厚肉配管100の内部にある亀裂100bをモニタリングしながら、クリープボイド等による高温厚肉配管100の表面側の材料劣化の状態も同時にモニタリングすることができるので、安全性をより向上させることができる。
【0064】
また、本実施の形態では、補正用電位差計測電極12g,12h間の電位差に基づいて、亀裂用電位差計測電極12c,12d間および亀裂用電位差計測電極12e,12f間の電位差を補正して、温度因子による誤差を取り除くようにしたが、これらの補正用電位差計測電極12g,12hや補正用電位差計33などに代えて、例えば、高温厚肉配管100の温度と電位差との相関関係を予め求めておき、高温厚肉配管100に熱電対などの耐熱性の温度センサを取り付けて、前記温度センサで測定した温度に基づいて、亀裂100b間の電位差を補正することにより、温度因子による誤差を取り除くことも可能である。また、これら両者共に併用することにより、より正確な測定を行うことも可能である。なお、上記例では、温度センサなどにより配管温度計測手段を構成している。
【0065】
また、本実施の形態では、圧力計34での計測結果に基づいて、亀裂用電位差計測電極12c,12d間および亀裂用電位差計測電極12e,12f間の電位差を補正演算装置35により対応する圧力ごとに補正したが、圧力変動が比較的小さい場合には、省くことも可能である。
【0066】
[第二番目の実施の形態]
本発明による亀裂モニタリング方法および亀裂モニタリング装置の第二番目の実施の形態を次に説明する。
【0067】
本実施の形態における亀裂モニタリング装置は、以下の構成以外は前述した第一番目の実施の形態の亀裂モニタリング装置と同一である。
(1)高温厚肉配管100の温度を計測する熱電対がセンサヘッド10内に設けられている。
(2)上記熱電対および圧力計34は、集中管理室30の亀裂長さ算出装置36に電気的に接続されている。
【0068】
次に、このような亀裂モニタリング装置を使用した亀裂モニタリング方法を説明する。
【0069】
<亀裂位置の特定>
前述した第一番目の実施の形態と同様である。
【0070】
<電極取付工程>
前述した第一番目の実施の形態と同様である。
ただし、亀裂100bの長さと亀裂100b間の電位差との関係を表す亀裂成長評価線は不要である。
【0071】
<亀裂間電位差計測工程>
前述した第一番目の実施の形態と同様である。
ただし、熱電対により高温厚肉配管100の温度を計測しておく。
【0072】
<亀裂間電位差補正工程>
前述した第一番目の実施の形態と同様である。
ただし、前述した圧力による補正は行わない。
【0073】
<亀裂長さ算出工程>
亀裂100b部分の電圧およびプラント運転出力(高温厚肉配管100の温度、圧力)の時間に対する変化を図11に示す。図11からわかるように、プラント運転時(高温厚肉配管100の温度、圧力が高い場合)には、電圧が大きくなり、プラント停止時(高温厚肉配管100の温度、圧力が低い場合)には、電圧が小さくなる。
【0074】
つまり、温度の変化に伴って、高温厚肉配管100自身の電気抵抗が変化してしまうと共に、圧力の変化に伴って、亀裂100bの大きさが変化してしまい、電圧が変化するのである。
【0075】
ここで、圧力変動に伴う電圧の変化についてさらに説明する。
プラント運転時などのように高温厚肉配管100の内部の圧力が高い場合には、高温厚肉配管100に大きな応力σが加わって亀裂100bの幅(開口量)δが大きくなる。一方、プラント停止時などのように高温厚肉配管100の内部の圧力が低い場合には、高温厚肉配管100に加わる応力σは小さく、亀裂100bの幅(開口量)δも小さくなる。
【0076】
これを平板状として考えると、上記応力と上記開口量との間には、下記の式(1),(2)に示すような関係が成り立つ。
δ=(4σa/E´)V(a/b) (1)
δ=(4σa/E´)V(a/b) (2)
ただし、aは亀裂100bの長さの半分値、bは平板の亀裂100bの長さ方向の長さ(無限大)の半分値、E´はヤング率、Vは修正係数である。
【0077】
上記(1)式から上記(2)式を引くと、下記の式(3)となる。
Figure 0003553439
【0078】
ここで、亀裂100bの開口量の変化量Δδは、亀裂100bの断面積の変化量と略等しく、この断面積の変化量は、亀裂100b間の電位差変化量ΔVと比例関係にあることから、ΔVからΔδを求めると共に、高温厚肉配管100の温度および圧力から応力変化量Δσを求めれば、上記(3)式より亀裂100bの長さ2aを求めることができる。
【0079】
具体的には、亀裂長さ算出装置36が以下のような各ステップに基づいた演算を行う。
【0080】
《第一のステップ》
高温厚肉配管100の亀裂100bの周辺部分の電場解析または実験に基づいて、応力変化量Δσごとの亀裂100bの最大亀裂長さ2σと亀裂100b間の電位差変化量ΔVとの相関関係を求める。
【0081】
《第二のステップ》
前記熱電対で計測された高温厚肉配管100の温度および前記圧力計34からの高温厚肉配管100の圧力に基づいて、当該配管100における高負荷時と低負荷時との二時点間での応力変化量Δσを求める。
【0082】
《第三のステップ》
上記二時点間の電位差変化量ΔVより、応力変化量Δσに対応する亀裂100bの長さ2aを求める。
【0083】
すなわち、開口変化量Δδと亀裂100bの長さの半分値aとは、図12に示すように、各応力変化量Δσごとに相関関係が得られ、この相関関係に基づいて、亀裂100bの長さ2aが求められるのである。
【0084】
したがって、このような亀裂モニタリング方法および亀裂モニタリング装置によれば、前述した第一番目の実施の形態の場合と同様な効果を得ることができるのはもちろんのこと、前述した第一番目の実施の形態の場合よりも短時間で計測することができる。
【0085】
また、前述した第一番目の実施の形態の場合と組み合わせれば、亀裂100bの長さをより精度よく計測することができる。
【0086】
なお、本実施の形態では、前記熱電対で計測された高温厚肉配管100の温度および前記圧力計34からの高温厚肉配管100の圧力に基づいて、当該配管100に加わっている応力σを求めたが、これら熱電対や圧力計に代えて、応力センサなどをセンサヘッド10の内部に取り付けて高温厚肉配管100の亀裂100b周辺の応力を直接計測し、その結果を亀裂長さ算出装置36に送るようにすることも可能である。
【0087】
【発明の効果】
第一番目の発明による亀裂モニタリング方法は、プラントを運転しながら当該プラントの高温厚肉配管の溶接部の内部に生じている亀裂の長さをモニタリングする亀裂モニタリング方法であって、位置をあらかじめ特定された前記亀裂を間に挟むように保護ボックスの内部に取り付けられた一対の耐熱性の電流入出力電極を前記配管の外周面に当該保護ボックスと共に取り付けると共に、前記電流入出力電極の間に位置して前記亀裂を挟むように前記保護ボックスの内部に取り付けられた少なくとも一対の耐熱性の亀裂用電位差計測電極を前記配管の外周面に当該保護ボックスと共に取り付ける電極取付工程と、前記電流入出力電極間に10Hz以下の交流電流と50Hz以上の交流電流とを交互に流すと共に、前記亀裂用電位差計測電極間の電位差を計測する亀裂間電位差計測工程と、前記亀裂用電位差計測電極間の電位差を補正する亀裂間電位差補正工程と、前記亀裂間電位差補正工程で得られた前記電位差に基づいて、前記亀裂の長さを求める亀裂長さ算出工程とを行うので、配管が高温であっても、亀裂の長さをモニタリングすることができる。このため、従来のような定期点検時の結果から予測をたてるだけの場合よりも、正確性および安全性を大幅に向上させることができる。また、配管の内部にある亀裂をモニタリングしながら、配管の表面側のクリープボイド等による材料劣化等の状態もモニタリングすることができる。これにより、安全性をより向上させることができる。
【0088】
第二番目の発明による亀裂モニタリング方法は、第一番目の発明の亀裂モニタリング方法において、前記配管の前記亀裂の成長時に電位差を最も感度よく計測できるように前記電極取付工程での前記電流入出力電極および前記亀裂用電位差計測電極の取り付け位置を前記亀裂の周辺の電場解析に基づいて設定するので、亀裂の成長に伴う電位差が非常に小さくても、高い精度で測定することができる。
【0089】
第三番目の発明による亀裂モニタリング方法は、第二番目の発明の亀裂モニタリング方法において、一対の前記亀裂用電位差計測電極が、前記配管の前記亀裂の成長方向と交差する方向で当該亀裂の中心を挟むように前記電極取付工程で前記保護ボックスを当該配管に取り付けるので、亀裂の成長に伴う電位差が非常に小さくても、高い精度で測定することができる。
【0090】
第四番目の発明による亀裂モニタリング方法は、第三番目の発明の亀裂モニタリング方法において、他の対の前記亀裂用電位差計測電極が、前記配管の前記亀裂の成長方向と交差する方向で当該亀裂の成長方向先端側を挟むように前記電極取付工程で前記保護ボックスを当該配管に取り付けるので、亀裂の成長をより正確に把握することができる。
【0091】
第五番目の発明による亀裂モニタリング方法は、第一から四番目のいずれかの発明の亀裂モニタリング方法において、前記電極取付工程で前記保護ボックスを前記配管の外周面に対して着脱可能に取り付けるようにしたので、上記電極の着脱を容易に行うことができる。
【0095】
番目の発明による亀裂モニタリング方法は、第一から番目のいずれかの発明の亀裂モニタリング方法において、前記亀裂間電位差補正工程が、前記配管の外周面に取り付けた一対の耐熱性の補正用電位差計測電極間の電位差に基づいて、前記亀裂用電位差計測電極間の前記電位差を補正するので、亀裂用電位差計測電極間の電位差を正確に補正することがでる。
【0096】
番目の発明による亀裂モニタリング方法は、第一から番目のいずれかの発明の亀裂モニタリング方法において、前記亀裂間電位差補正工程が、前記配管の温度に基づいて、前記亀裂用電位差計測電極間の前記電位差を補正するので、亀裂用電位差計測電極間の電位差を正確に補正することがでる。
【0097】
番目の発明による亀裂モニタリング方法は、第一から番目のいずれかの発明の亀裂モニタリング方法において、前記亀裂間電位差補正工程が、前記配管の内部の圧力に基づいて、前記亀裂用電位差計測電極間の前記電位差を補正するので、亀裂用電位差計測電極間の電位差を正確に補正することがでる。
【0098】
番目の発明による亀裂モニタリング方法は、第一から番目のいずれかの発明の亀裂モニタリング方法において、前記亀裂長さ算出工程が、前記配管の前記亀裂の周辺部分の電場解析または実験により得られる当該亀裂の長さと当該亀裂間の電位差との相関関係に基づいて、前記亀裂間電位差補正工程で得られた前記電位差から当該亀裂の長さを求めるので、亀裂の長さを正確に求めることができる。
【0099】
番目の発明による亀裂モニタリング方法は、第一から番目のいずれかの発明の亀裂モニタリング方法において、前記亀裂長さ算出工程が、前記配管の前記亀裂の周辺部分の電場解析または実験に基づいて、応力変化量ごとの前記亀裂の最大亀裂長さと当該亀裂間の電位差変化量との相関関係を求める第一のステップと、前記配管の温度および圧力に基づいて、当該配管における高負荷時と低負荷時との二時点間での応力変化量を求める第二のステップと、上記二時点間の電位差変化量より、応力変化量に対応する前記亀裂の長さ2aを求める第三のステップとを行うので、亀裂の長さを正確に求めることができる。
【0100】
一方、前述した課題を解決するための、第十一番目の発明による亀裂モニタリング装置は、プラントを運転しながら当該プラントの高温厚肉配管の溶接部の内部に生じている亀裂の長さをモニタリングする亀裂モニタリング装置であって、前記配管の外周面に取り付けられる保護ボックスと、前記亀裂を挟むように前記保護ボックスの内部に配設されて前記配管の外周面に取り付けられる耐熱材料製の一対の電流入出力電極と、前記電流入出力電極の間に位置して前記亀裂を挟むように前記保護ボックスの内部に配設されて前記配管の外周面に取り付けられる耐熱材料製の少なくとも一対の亀裂用電位差計測電極とを備えてなるセンサヘッドと、前記センサヘッドの前記電流入出力電極間に10Hz以下の交流電流と50Hz以上の交流電流とを交互に流す交流電源と、前記センサヘッドの前記亀裂用電位差計測電極間の電位差を計測する亀裂用電位差計測手段と、前記亀裂用電位差計測手段で計測した前記センサヘッドの前記亀裂用電位差計測電極間の電位差を補正する亀裂間電位差補正手段と前記亀裂間電位差補正手段で得られた前記電位差に基づいて、前記亀裂の長さを求める亀裂長さ算出手段とを備えてなるので、配管が高温であっても、亀裂の長さをモニタリングすることができる。このため、従来のような定期点検時の結果から予測をたてるだけの場合よりも、正確性および安全性を大幅に向上させることができる。また、配管の内部にある亀裂をモニタリングしながら、配管の表面側のクリープボイド等による材料劣化等の状態もモニタリングすることができる。これにより、安全性をより向上させることができる。
【0101】
十二番目の発明による亀裂モニタリング装置は、第十一番目の発明の亀裂モニタリング装置において、前記配管の前記亀裂の成長時に電位差を最も感度よく計測できるように前記センサヘッドの前記電流入出力電極および前記亀裂用電位差計測用電極の位置が前記配管の前記亀裂の周辺部分の電場解析に基づいて設定されているので、亀裂の成長に伴う電位差が非常に小さくても、高い精度で測定することができる。
【0102】
十三番目の発明による亀裂モニタリング装置は、第十二番目の発明の亀裂モニタリング装置において、前記配管の前記亀裂の成長方向と交差する方向で当該亀裂の中心を挟むように前記センサヘッドの一対の前記亀裂用電位差計測電極が当該配管に取り付けられているので、亀裂の成長に伴う電位差が非常に小さくても、高い精度で測定することができる。
【0103】
十四番目の発明による亀裂モニタリング装置は、第十三番目の発明の亀裂モニタリング装置において、前記配管の前記亀裂の成長方向と交差する方向で当該亀裂の成長方向先端側を挟むように前記センサヘッドの他の対の前記亀裂用電位差計測電極を当該配管に取り付けているので、亀裂の成長をより正確に把握することができる。
【0104】
十五番目の発明による亀裂モニタリング装置は、第十一から十四番目のいずれかの発明の亀裂モニタリング装置において、前記センサヘッドを前記配管の外周面に着脱可能に取り付ける取付手段を設けたので、センサヘッドの着脱を容易に行うことができる。
【0108】
十六番目の発明による亀裂モニタリング装置は、第十一から十五番目のいずれかの発明の亀裂モニタリング装置において、前記亀裂間電位差補正手段が、前記配管の外周面に取り付けられるように前記センサヘッドに設けられた耐熱材料製の一対の補正用電位差計測電極と、前記補正用電位差計測電極間の電位差を計測する補正用電位差計測手段とを備えてなるので、亀裂用電位差計測電極間の電位差を正確に補正することがでる。
【0109】
十七番目の発明による亀裂モニタリング装置は、第十一から十六番目のいずれかの発明の亀裂モニタリング装置において、前記亀裂間電位差補正手段が、前記配管の温度を計測する配管温度計測手段を備えてなるので、亀裂用電位差計測電極間の電位差を正確に補正することがでる。
【0110】
十八番目の発明による亀裂モニタリング装置は、第十一から十七番目のいずれかの発明の亀裂モニタリング装置において、前記亀裂間電位差補正手段が、前記配管の内部の圧力を計測する配管圧力計測手段を備えてなるので、亀裂用電位差計測電極間の電位差を正確に補正することがでる。
【0111】
十九番目の発明による亀裂モニタリング装置は、第十一から十八番目のいずれかの発明の亀裂モニタリング装置において、前記亀裂長さ算出手段が、前記配管の前記亀裂の周辺部分の電場解析または実験により得られる当該亀裂の長さと当該亀裂間の電位差との相関関係に基づいて、前記亀裂間電位差補正手段で得られた前記電位差から当該亀裂の長さを求めるので、亀裂の長さを正確に求めることができる。
【0112】
二十番目の発明による亀裂モニタリング装置は、第十一から十九番目のいずれかの発明の亀裂モニタリング装置において、前記亀裂長さ算出手段が、前記配管の前記亀裂の周辺部分の電場解析または実験に基づいて、応力変化量ごとの前記亀裂の最大亀裂長さと当該亀裂間の電位差変化量との相関関係を求める第一のステップと、前記配管の温度および圧力に基づいて、当該配管における高負荷時と低負荷時との二時点間での応力変化量を求める第二のステップと、上記二時点間の電位差変化量より、応力変化量に対応する前記亀裂の長さを求める第三のステップとを行うので、亀裂の長さを正確に求めることができる。
【0113】
二十一番目の発明による亀裂モニタリング装置は、第十一から二十番目のいずれかの発明の亀裂モニタリング装置において、前記センサヘッドが複数設けられ、前記亀裂間電位差計測手段が複数の前記センサヘッドの前記亀裂用電位差計測電極間の電位差をそれぞれ計測し、前記亀裂間電位差補正手段が前記亀裂用電位差計測手段で計測した複数の前記センサヘッドの各前記亀裂用電位差計測電極間の電位差をそれぞれ補正し、前記亀裂長さ算出手段が前記亀裂間電位差補正手段で得られた各電位差に基づいて、各前記亀裂の長さをそれぞれ求めるので、複数の配管の複数の亀裂を一括して同時にモニタリングすることが容易にできる。
【0114】
二十二番目の発明による亀裂モニタリング装置は、第十一から二十一番目のいずれかの発明の亀裂モニタリング装置において、前記亀裂間電位差計測手段、亀裂間電位差補正手段および前記亀裂長さ算出手段が前記配管から離れた遠隔地に配備されているので、配管から離れた場所であってもモニタリングすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による亀裂モニタリング装置の第一番目の実施の形態の亀裂モニタリング装置の配管側での概略構成図である。
【図2】図1の矢線II部の抽出拡大図である。
【図3】図1の要部の他の例の概略構成図である。
【図4】各電極の配置状態の説明図である。
【図5】亀裂モニタリング装置の集中管理室側での概略構成図である。
【図6】亀裂の各長さごとにおける電力入出力電極間の距離と電圧変化量との関係を表すグラフである。
【図7】亀裂長さと電位差との関係を表すグラフである。
【図8】亀裂間の電圧およびプラント運転出力の時間に対する変化を表すグラフである。
【図9】亀裂間の電位差と配管の内部圧力との関係を表すグラフである。
【図10】プラントの運転時間と亀裂長さとの関係を表すグラフである。
【図11】亀裂間の電圧およびプラント運転出力の時間に対する変化を表すグラフである。
【図12】各応力変化量ごとの開口変化量と亀裂の長さの半分値との関係を表すグラフである。
【符号の説明】
10 センサヘッド
11 保護ボックス
12a 電力入力電極
12b 電力出力電極
12c〜12f 亀裂用電位差計測電極
12g,12h 補正用出に差計測電極
13 ベルト
21 引出管
22 端子ボックス
23 シールド線
24 中継器
30 集中管理室
31 交流電源
32 亀裂用電位差計
33 補正用電位差計
34 圧力計
35 補正演算装置
36 亀裂長さ算出装置
100 高温厚肉配管
100a 溶接部
100b 亀裂
101 保温材

Claims (22)

  1. プラントを運転しながら当該プラントの高温厚肉配管の溶接部の内部に生じている亀裂の長さをモニタリングする亀裂モニタリング方法であって、
    位置をあらかじめ特定された前記亀裂を間に挟むように保護ボックスの内部に取り付けられた一対の耐熱性の電流入出力電極を前記配管の外周面に当該保護ボックスと共に取り付けると共に、前記電流入出力電極の間に位置して前記亀裂を挟むように前記保護ボックスの内部に取り付けられた少なくとも一対の耐熱性の亀裂用電位差計測電極を前記配管の外周面に当該保護ボックスと共に取り付ける電極取付工程と、
    前記電流入出力電極間に10Hz以下の交流電流と50Hz以上の交流電流とを交互に流すと共に、前記亀裂用電位差計測電極間の電位差を計測する亀裂間電位差計測工程と、
    前記亀裂用電位差計測電極間の電位差を補正する亀裂間電位差補正工程と、
    前記亀裂間電位差補正工程で得られた前記電位差に基づいて、前記亀裂の長さを求める亀裂長さ算出工程と
    を行うことを特徴とする亀裂モニタリング方法。
  2. 請求項1に記載の亀裂モニタリング方法において、
    前記配管の前記亀裂の成長時に電位差を最も感度よく計測できるように前記電極取付工程での前記電流入出力電極および前記亀裂用電位差計測電極の取り付け位置を前記亀裂の周辺の電場解析に基づいて設定することを特徴とする亀裂モニタリング方法。
  3. 請求項2に記載の亀裂モニタリング方法において、
    一対の前記亀裂用電位差計測電極が、前記配管の前記亀裂の成長方向と交差する方向で当該亀裂の中心を挟むように前記電極取付工程で前記保護ボックスを当該配管に取り付けることを特徴とする亀裂モニタリング方法。
  4. 請求項3に記載の亀裂モニタリング方法において、
    他の対の前記亀裂用電位差計測電極が、前記配管の前記亀裂の成長方向と交差する方向で当該亀裂の成長方向先端側を挟むように前記電極取付工程で前記保護ボックスを当該配管に取り付けることを特徴とする亀裂モニタリング方法。
  5. 請求項1から4のいずれかに記載の亀裂モニタリング方法において、
    前記電極取付工程で前記保護ボックスを前記配管の外周面に対して着脱可能に取り付けるようにしたことを特徴とする亀裂モニタリング方法。
  6. 請求項1からのいずれかに記載の亀裂モニタリング方法において、
    前記亀裂間電位差補正工程が、前記配管の外周面に取り付けた一対の耐熱性の補正用電位差計測電極間の電位差に基づいて、前記亀裂用電位差計測電極間の前記電位差を補正することを特徴とする亀裂モニタリング方法。
  7. 請求項1からのいずれかに記載の亀裂モニタリング方法において、
    前記亀裂間電位差補正工程が、前記配管の温度に基づいて、前記亀裂用電位差計測電極間の前記電位差を補正することを特徴とする亀裂モニタリング方法。
  8. 請求項1からのいずれかに記載の亀裂モニタリング方法において、
    前記亀裂間電位差補正工程が、前記配管の内部の圧力に基づいて、前記亀裂用電位差計測電極間の前記電位差を補正することを特徴とする亀裂モニタリング方法。
  9. 請求項1からのいずれかに記載の亀裂モニタリング方法において、
    前記亀裂長さ算出工程が、前記配管の前記亀裂の周辺部分の電場解析または実験により得られる当該亀裂の長さと当該亀裂間の電位差との相関関係に基づいて、前記亀裂間電位差補正工程で得られた前記電位差から当該亀裂の長さを求めることを特徴とする亀裂モニタリング方法。
  10. 請求項1からのいずれかに記載の亀裂モニタリング方法において、
    前記亀裂長さ算出工程が、
    前記配管の前記亀裂の周辺部分の電場解析または実験に基づいて、応力変化量ごとの前記亀裂の最大亀裂長さと当該亀裂間の電位差変化量との相関関係を求める第一のステップと、
    前記配管の温度および圧力に基づいて、当該配管における高負荷時と低負荷時との二時点間での応力変化量を求める第二のステップと、
    上記二時点間の電位差変化量より、応力変化量に対応する前記亀裂の長さを求める第三のステップと
    を行うことを特徴とする亀裂モニタリング方法。
  11. プラントを運転しながら当該プラントの高温厚肉配管の溶接部の内部に生じている亀裂の長さをモニタリングする亀裂モニタリング装置であって、
    前記配管の外周面に取り付けられる保護ボックスと、前記亀裂を挟むように前記保護ボックスの内部に配設されて前記配管の外周面に取り付けられる耐熱材料製の一対の電流入出力電極と、前記電流入出力電極の間に位置して前記亀裂を挟むように前記保護ボックスの内部に配設されて前記配管の外周面に取り付けられる耐熱材料製の少なくとも一対の亀裂用電位差計測電極とを備えてなるセンサヘッドと、
    前記センサヘッドの前記電流入出力電極間に10Hz以下の交流電流と50Hz以上の交流電流とを交互に流す交流電源と、
    前記センサヘッドの前記亀裂用電位差計測電極間の電位差を計測する亀裂用電位差計測手段と、
    前記亀裂用電位差計測手段で計測した前記センサヘッドの前記亀裂用電位差計測電極間の電位差を補正する亀裂間電位差補正手段と
    前記亀裂間電位差補正手段で得られた前記電位差に基づいて、前記亀裂の長さを求める亀裂長さ算出手段と
    を備えてなることを特徴とする亀裂モニタリング装置。
  12. 請求項11に記載の亀裂モニタリング装置において、
    前記配管の前記亀裂の成長時に電位差を最も感度よく計測できるように前記センサヘッドの前記電流入出力電極および前記亀裂用電位差計測用電極の位置が前記配管の前記亀裂の周辺部分の電場解析に基づいて設定されていることを特徴とする亀裂モニタリング装置。
  13. 請求項12に記載の亀裂モニタリング装置において、
    前記配管の前記亀裂の成長方向と交差する方向で当該亀裂の中心を挟むように前記センサヘッドの一対の前記亀裂用電位差計測電極が当該配管に取り付けられることを特徴とする亀裂モニタリング装置。
  14. 請求項13に記載の亀裂モニタリング装置において、
    前記配管の前記亀裂の成長方向と交差する方向で当該亀裂の成長方向先端側を挟むように前記センサヘッドの他の対の前記亀裂用電位差計測電極を当該配管に取り付けることを特徴とする亀裂モニタリング装置。
  15. 請求項11から14のいずれかに記載の亀裂モニタリング装置において、
    前記センサヘッドを前記配管の外周面に着脱可能に取り付ける取付手段を設けたことを特徴とする亀裂モニタリング装置。
  16. 請求項11から15のいずれかに記載の亀裂モニタリング装置において、
    前記亀裂間電位差補正手段が、前記配管の外周面に取り付けられるように前記センサヘッドに設けられた耐熱材料製の一対の補正用電位差計測電極と、前記補正用電位差計測電極間の電位差を計測する補正用電位差計測手段とを備えてなることを特徴とする亀裂モニタリング装置。
  17. 請求項11から16のいずれかに記載の亀裂モニタリング装置において、
    前記亀裂間電位差補正手段が、前記配管の温度を計測する配管温度計測手段を備えてなることを特徴とする亀裂モニタリング装置。
  18. 請求項11から17のいずれかに記載の亀裂モニタリング装置において、
    前記亀裂間電位差補正手段が、前記配管の内部の圧力を計測する配管圧力計測手段を備えてなることを特徴とする亀裂モニタリング装置。
  19. 請求項11から18のいずれかに記載の亀裂モニタリング装置において、
    前記亀裂長さ算出手段が、前記配管の前記亀裂の周辺部分の電場解析または実験により得られる当該亀裂の長さと当該亀裂間の電位差との相関関係に基づいて、前記亀裂間電位差補正手段で得られた前記電位差から当該亀裂の長さを求めることを特徴とする亀裂モニタリング装置。
  20. 請求項11から19のいずれかに記載の亀裂モニタリング装置において、
    前記亀裂長さ算出手段が、
    前記配管の前記亀裂の周辺部分の電場解析または実験に基づいて、応力変化量ごとの前記亀裂の最大亀裂長さと当該亀裂間の電位差変化量との相関関係を求める第一のステップと、
    前記配管の温度および圧力に基づいて、当該配管における高負荷時と低負荷時との二時点間での応力変化量を求める第二のステップと、
    上記二時点間の電位差変化量より、応力変化量に対応する前記亀裂の長さを求める第三のステップと
    を行うことを特徴とする亀裂モニタリング装置。
  21. 請求項11から20のいずれかに記載の亀裂モニタリング装置において、
    前記センサヘッドが複数設けられ、
    前記亀裂間電位差計測手段が複数の前記センサヘッドの前記亀裂用電位差計測電極間の電位差をそれぞれ計測し、
    前記亀裂間電位差補正手段が前記亀裂用電位差計測手段で計測した複数の前記センサヘッドの各前記亀裂用電位差計測電極間の電位差をそれぞれ補正し、
    前記亀裂長さ算出手段が前記亀裂間電位差補正手段で得られた各電位差に基づいて、各前記亀裂の長さをそれぞれ求める
    ことを特徴とする亀裂モニタリング装置。
  22. 請求項11から21のいずれかに記載の亀裂モニタリング装置において、
    前記亀裂間電位差計測手段、亀裂間電位差補正手段および前記亀裂長さ算出手段が前記配管から離れた遠隔地に配備されていることを特徴とする亀裂モニタリング装置。
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