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JP6254033B2 - 寿命評価方法及び寿命評価装置 - Google Patents

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JP6254033B2 JP2014070399A JP2014070399A JP6254033B2 JP 6254033 B2 JP6254033 B2 JP 6254033B2 JP 2014070399 A JP2014070399 A JP 2014070399A JP 2014070399 A JP2014070399 A JP 2014070399A JP 6254033 B2 JP6254033 B2 JP 6254033B2
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Description

本発明は、高温機器に使用される耐熱鋼管の溶接部において、特に、異なる材料同士をつなぎ合わせて形成される異材継手部の寿命を評価する寿命評価方法及び寿命評価装置に関するものである。
蒸気タービンやボイラ等の高温配管には、使用温度によって低合金鋼や高クロム鋼が使用されており、材料が変わる接合部には低合金鋼と高クロム鋼との異材溶接継手が存在する。配管の溶接部は、高温・長時間の使用に伴って主としてクリープ損傷に起因する経年劣化が進行し、特に異種材料による溶接継手部(以下、異材継手部という)では異材継手部の界面にクリープ損傷が生じ、ラボでのクリープ破断試験では試験条件によっては界面破断を生じる場合があることが文献で報告されている。このため、配管の溶接部では、損傷の有無を定期的又は稼動状況等に応じて検査し、検査結果に基づき必要に応じて配管の寿命を診断している。異材継手部を対象とした損傷の検査手法として、水蒸気酸化スケールの厚さが温度と時間の関数であることに基づいて、水蒸気酸化スケールの厚さから、高温状態にあることで生じるクリープ疲労で発生するき裂による損傷度を評価診断する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。この損傷診断方法では、所定のパラメータとして、管内面の水蒸気酸化スケールと、ボイラの起動停止回数とを含んでいる。
特開2003−90506号公報
しかしながら、従来方法は配管の外表面におけるき裂発生までの寿命を評価するものが一般的であり、たとえば超音波探傷検査(Ultrasonic Testing、以下、「UT検査」と称する。)で配管の内面や内部にき裂発生が検出された場合には適用できない。ここで、検出されたき裂が限界き裂深さに達する前に、取り替え等のメンテナンス処置を進める必要があるが、異材継手部周りの取り替えを行うためには、異材継手部を構成する材料を手配することになり、この手配に時間を要することから、暫定的に異材継手部を継続して使用する場合がある。このため、配管の内面や内部にき裂発生が検出された場合、限界き裂に達するまでのき裂伝播寿命を精度良く評価することが望まれている。
また、異材継手部は、高温・長時間の使用に伴って経年劣化が進行しており、き裂が検出された部位および時間によって、今後き裂が伝播していく部位の予クリープ損傷量(以後、予損傷量と称する。)も都度異なっている。この予クリープ損傷量により変化する異材継手部の材料特性としては、クリープ速度とき裂伝播速度があり、それぞれき裂伝播評価精度に影響を及ぼすパラメータである。しかしながら、特許文献1の損傷診断方法では、所定のパラメータとして、管内面の水蒸気酸化スケールと、ボイラの起動停止回数とを含んでいるが、予損傷量による材料特性の変化を考慮していないことから、異材継手部の寿命を精度良く評価することが困難である。
そこで、本発明は、異材継手部の予損傷量を考慮して、異材継手部のき裂伝播寿命を精度良く評価することができる寿命評価方法及び寿命評価装置を提供することを課題とする。
本発明の寿命評価方法は、異なる材料同士をつなぎ合わせることで形成される異材継手部に発生する主き裂が、限界き裂に達するまでの寿命を評価する寿命評価方法において、前記異材継手部に発生した前記主き裂の長さを取得する主き裂長さ取得工程と、クリープ変形によって前記異材継手部が受けた予損傷量を評価する予損傷量評価工程と、評価した前記予損傷量に基づいて、前記異材継手部の寿命を算出するための因子となるクリープ定数を補正するクリープ定数補正工程と、前記クリープ定数補正工程において補正された前記クリープ定数に基づいて、前記異材継手部の寿命を算出する寿命算出工程と、を備えることを特徴とする。
また、本発明の寿命評価装置は、異なる材料同士をつなぎ合わせることで形成される異材継手部に発生する主き裂が、限界き裂に達するまでの寿命を評価する寿命評価方法において、前記異材継手部に発生した前記主き裂の長さを取得する主き裂長さ取得工程と、クリープ変形によって前記異材継手部が受けた予損傷量を評価する予損傷量評価工程と、評価した前記予損傷量に基づいて、前記異材継手部の寿命を算出するための因子となるクリープ定数を補正するクリープ定数補正工程と、前記クリープ定数補正工程において補正された前記クリープ定数に基づいて、前記異材継手部の寿命を算出する寿命算出工程と、を備えることを特徴とする。
この構成によれば、異材継手部の予損傷量に基づいて、異材継手部の寿命を算出するための因子となるクリープ定数を補正することができるため、予損傷量を考慮することができ、これにより、異材継手部の寿命を精度良く算出することができる。なお、主き裂は、異材継手部に発生する単体のき裂であってもよいし、異材継手部に発生する複数のき裂をつなぎ合わせて単一のき裂とみなしたみなしき裂であってもよい。
また、前記クリープ定数は、クリープ速度及びクリープき裂伝播速度であり、前記クリープき裂伝播速度は、前記クリープ速度を因子として含むき裂評価パラメータと、前記異材継手部の材料定数とに基づいて算出され、前記クリープ定数補正工程は、損傷前の前記異材継手部の前記クリープ速度を、評価した前記予損傷量に応じて補正するクリープ速度補正工程と、評価した前記予損傷量に応じた前記材料定数を設定する材料定数設定工程と、前記クリープ速度補正工程において補正した前記クリープ速度に基づいて、前記き裂評価パラメータを算出するき裂評価パラメータ算出工程と、前記き裂評価パラメータ算出工程において算出した前記き裂評価パラメータと、前記材料定数設定工程において設定された前記材料定数とに基づいて、前記クリープき裂伝播速度を補正するクリープき裂伝播速度補正工程と、を有し、前記寿命算出工程は、前記クリープき裂伝播速度補正工程で補正された、前記クリープ定数である前記クリープき裂伝播速度に基づいて、前記異材継手部の寿命を算出する所定の算出式から、前記異材継手部の寿命を算出することが好ましい。
この構成によれば、クリープ定数としてのクリープ速度及びクリープき裂伝播速度を、予損傷量に応じて補正することができるため、クリープき裂伝播速度に基づいて算出される異材継手部の寿命を精度良く算出することができる。
また、前記予損傷量評価工程では、前記異材継手部の検査時に計測される前記主き裂の長さと前記異材継手部の使用時間とに基づいて取得される複数の計測点を補間する、前記クリープき裂伝播速度に関するき裂進展カーブを導出することで、前記予損傷量を評価し、前記クリープ定数補正工程では、前記予損傷量評価工程において導出した前記き裂進展カーブに基づいて、前記クリープ定数を補正することが好ましい。
この構成によれば、異材継手部に発生する現実の主き裂のクリープき裂伝播速度から、異材継手部の予損傷量を評価することができるため、クリープ定数を適切に補正することができる。
また、前記予損傷量評価工程では、クリープ変形によって前記異材継手部が受ける前記予損傷量を、応力解析によって評価することが好ましい。
この構成によれば、異材継手部の予損傷量を、応力解析によって評価することができるため、異材継手部を実計測することなく予損傷量を評価することができ、クリープ定数を適切に補正することができる。
また、前記予損傷量評価工程では、前記異材継手部の検査時に計測される前記異材継手部の表面組織を取得し、取得した前記表面組織から前記予損傷量を評価することが好ましい。
この構成によれば、実計測した異材継手部の表面組織から、異材継手部の予損傷量を評価することができるため、クリープ定数を適切に補正することができる。
また、前記予損傷量評価工程では、前記異材継手部に作用する作用応力を応力解析によって取得し、取得した前記表面組織と、取得した前記作用応力とに基づいて、前記予損傷量を評価することが好ましい。
この構成によれば、実計測した異材継手部の表面組織と、応力解析によって異材継手部に作用する作用応力とを用いることで、異材継手部の予損傷量をより精度良く評価することができるため、クリープ定数をより適切に補正することができる。
図1は、内表面にき裂が発生した溶接継手部(の異材継手界面)を、軸方向に直交する面で切ったときの断面図である。 図2は、き裂が発生した溶接継手部を、軸方向に沿って切ったときの部分断面図である。 図3は、本実施例に係る寿命評価装置のブロック図である。 図4は、寿命評価方法で用いられるき裂評価モデルを示す説明図である。 図5は、応力に応じて変化するクリープ速度のグラフである。 図6は、き裂評価パラメータに応じて変化するクリープき裂伝播速度のグラフである。 図7は、予損傷量に応じて変化する第1材料定数及び第2材料定数のグラフである。 図8は、本実施例に係る寿命評価方法に関するフローチャートである。 図9は、使用時間に応じて変化する主き裂のグラフである。 図10は、溶接継手部の厚さ方向における応力分布のグラフである。 図11は、溶接継手部の厚さ方向における予損傷量の分布のグラフである。
以下に、本発明に係る実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能であり、また、実施例が複数ある場合には、各実施例を組み合わせることも可能である。
本実施例に係る寿命評価方法は、異なる金属材料同士を溶接によりつなぎ合わせることで形成される溶接継手部(異材継手部)10の寿命を推定する方法である。この寿命評価方法では、溶接継手部10に発生した主き裂11が、溶接継手部10の厚み方向において、処置可能な限界き裂15(図9参照)に達するまでの寿命を推定している。先ず、寿命評価方法の説明に先立ち、評価対象となる溶接継手部10について説明する。
図1は、内表面にき裂が発生した溶接継手部(の異材継手界面)を、軸方向に直交する面で切ったときの断面図である。図2は、き裂が発生した溶接継手部を、軸方向に沿って切ったときの部分断面図である。図3は、本実施例に係る寿命評価装置のブロック図である。図4は、寿命評価方法で用いられるき裂評価モデルを示す説明図である。図5は、応力に応じて変化するクリープ速度のグラフである。図6は、き裂評価パラメータに応じて変化するクリープき裂伝播速度のグラフである。図7は、予損傷量に応じて変化する第1材料定数及び第2材料定数のグラフである。図8は、本実施例に係る寿命評価方法に関するフローチャートである。図9は、使用時間に応じて変化する主き裂のグラフである。図10は、溶接継手部の厚さ方向における応力分布のグラフである。図11は、溶接継手部の厚さ方向における予損傷量の分布のグラフである。
図1及び図2に示すように、溶接継手部10は、円筒形の第1母材18と、円筒形の第2母材19とを接合する、いわゆる溶金部である。第1母材18は、高クロム鋼を用いて構成され、第1母材18の第2母材19側の端面には、インコネル(登録商標)等のニッケル基合金を用いてバタリング部10aが形成されている。第2母材19は、低合金鋼を用いて構成され、第2母材19の第1母材18側の端面にも、インコネル等のニッケル基合金を用いてバタリング部10bが形成されている。そして、第1母材18のバタリング部10aと第2母材19のバタリング部10bとが突き合せて形成される開先に対し、インコネル等のニッケル基合金からなる溶加材を用いて溶接することにより、溶接継手部10が形成される。このため、溶接継手部10は、インコネル等のニッケル基合金を用いて構成される。
ここで、溶接継手部10には、高温下で熱応力、内圧および外力が作用することにより時間の経過に伴ってクリープ損傷が進行していく。溶接継手部10にクリープ損傷が与えられると、溶接継手部10は、その材料特性が変化してしまう。このため、本実施例では、溶接継手部10に与えられる予損傷量を考慮して、溶接継手部10の寿命を評価している。
次に、図1及び図2を参照して、溶接継手部10に発生する主き裂11について説明する。図2に示すように、主き裂11は、主に、高クロム鋼を用いて構成される第1母材18と、溶接継手部10との界面に発生する。また、図1に示すように、主き裂11は、例えば、第1母材18及び第2母材19の周方向の一部に亘って形成されている。この主き裂11は、溶接継手部10の厚さ方向に沿って伝播する。ここで、主き裂11としては、単体のき裂11であってもよいし、複数のき裂を厚さ方向に沿ってつなぎ合わせて単一のき裂とみなしたみなしき裂11であってもよい。なお、主き裂11の厚み方向における長さをaとする。
次に、溶接継手部10の寿命を評価する寿命評価装置20について説明する。寿命評価装置20は、記憶部21と、記憶部21に格納されたデータに基づいて演算を行う演算部22とを備えている。
記憶部21は、溶接継手部10に作用する作用応力に関するデータD1、溶接継手部10周りの温度に関するデータD2、クリープ速度に関するデータD3、クリープき裂伝播速度に関するデータD4、溶接継手部10に与えられる予損傷量に関するデータD5及び溶接継手部10に発生する主き裂11の長さに関するデータD6等が記憶されている。
作用応力に関するデータD1は、溶接継手部10の応力解析(FEM解析(有限要素解析))を行うことで得られるデータとなっている。ここで、溶接継手部10に作用する作用応力としては、例えば、熱応力があり、第1母材18と第2母材19とが離れる方向に作用する応力となっている。温度に関するデータD2は、溶接継手部10周りの解析によって得られるデータとなっている。
主き裂11の長さに関するデータD6は、溶接継手部10の検査時において計測されることにより得られるデータとなっている。ここで、主き裂11の長さは、図2に示す超音波探傷装置30を用いて計測される。
ここで、超音波探傷装置30は、溶接継手部10近傍に配置される超音波探触子31と、超音波探触子31に接続された超音波探傷器32とを備える。超音波探触子31は、超音波を発信(照射)可能に構成されると共に、き裂等によって反射された超音波(反射波)を受信可能に構成されている。超音波探触子31は、溶接継手部10へ向けて、超音波を送信可能に設置される。超音波探傷器32は、超音波探触子31から照射する超音波の照射信号を生成すると共に、超音波探触子31を介して入力された反射波の反射信号を取得している。そして、超音波探傷器32は、反射波に基づいて、溶接継手部10に発生した主き裂11の長さを取得する。そして、超音波探傷装置30によって探傷することで取得された溶接継手部10の主き裂11は、寿命評価装置20に入力され、これにより、寿命評価装置20は、溶接継手部10に発生した主き裂11の長さを取得する。
クリープ速度に関するデータD3は、例えば、図5に示すデータである。図5のグラフは、その横軸がクリープ速度となっており、その縦軸が応力(作用応力)となっている。クリープ速度は、クリープ変形によって溶接継手部10に所定の応力が与えられたときの単位時間当たりにおける変形量である。
ここで、図5には、クリープ速度に関するクリープ速度ラインが複数形成されている。このクリープ速度ラインは、予損傷量と対応付けられている。例えば、複数のクリープ速度ラインとして、クリープ速度ラインL1、クリープ速度ラインL2、クリープ速度ラインL3が用意されている。クリープ速度ラインL1は、予損傷量がゼロ、つまり、新材となるクリープ速度ラインである。クリープ速度ラインL2は、クリープ速度ラインL1に比して予損傷量が大きいときのクリープ速度ラインであり、所定の応力が与えられたときのクリープ速度がクリープ速度ラインL1に比して大きくなっている。クリープ速度ラインL3は、クリープ速度ラインL2に比して予損傷量が大きいときのクリープ速度ラインであり、所定の応力が与えられたときのクリープ速度がクリープ速度ラインL2に比して大きくなっている。このため、複数のクリープ速度ラインL1,L2,L3は、予損傷量が大きくなるにつれて、クリープ速度ラインL1からクリープ速度ラインL3に向かって(図5に示す矢印の方向に向かって)遷移する。このように、クリープ速度は、予損傷量に応じて補正可能なクリープ定数となっている。
なお、本実施例では、3つのクリープ速度ラインL1,L2,L3に対応させて、3つの予損傷量を対応付けたが、この構成に限定されない。つまり、クリープ速度ラインは、予損傷量と対応付けられていればよく、予損傷量に応じて連続的に変化するクリープ速度ラインとしてもよい。
クリープき裂伝播速度に関するデータD4は、例えば、図6に示すデータである。図6のグラフは、その横軸がき裂評価パラメータCとなっており、その縦軸がクリープき裂伝播速度da/dtとなっている。詳細は後述するが、き裂評価パラメータCは、溶接継手部10の厚さ方向におけるき裂の長さ、作用応力、溶接継手部10の厚さ方向における板厚、クリープ速度を因子として含んでいる。クリープき裂伝播速度da/dtは、クリープ変形によって溶接継手部10に所定の応力が与えられたときの単位時間当たりにおけるき裂の進展量である。
ここで、図6には、クリープき裂伝播速度に関するクリープき裂伝播速度ラインが複数形成されている。このクリープき裂伝播速度ラインは、予損傷量と対応付けられている。例えば、複数のクリープき裂伝播速度ラインとして、クリープき裂伝播速度ラインL4、クリープき裂伝播速度ラインL5、クリープき裂伝播速度ラインL6が用意されている。クリープき裂伝播速度ラインL4は、予損傷量がゼロ、つまり、新材となるクリープき裂伝播速度ラインである。クリープき裂伝播速度ラインL5は、クリープき裂伝播速度ラインL4に比して予損傷量が大きいときのクリープき裂伝播速度ラインであり、所定の応力が与えられたときのクリープき裂伝播速度がクリープき裂伝播速度ラインL4に比して大きくなっている。クリープき裂伝播速度ラインL6は、クリープき裂伝播速度ラインL5に比して予損傷量が大きいときのクリープき裂伝播速度ラインであり、所定の応力が与えられたときのクリープき裂伝播速度がクリープき裂伝播速度ラインL5に比して大きくなっている。このため、複数のクリープき裂伝播速度ラインL4,L5,L6は、予損傷量が大きくなるにつれて、クリープき裂伝播速度ラインL4からクリープき裂伝播速度ラインL6に向かって(図6に示す矢印の方向に向かって)遷移する。このように、クリープき裂伝播速度は、予損傷量に応じて補正可能なクリープ定数となっている。
このクリープき裂伝播速度da/dtは、予損傷量に応じて変化するが、具体的に、下記する計算式(1)によって表される。なお、Aは、第1材料定数であり、nは、第2材料定数であり、第1材料定数A及び第2材料定数nは、予損傷量に応じて設定される。
Figure 0006254033
計算式(1)に示すように、上記の3つのクリープき裂伝播速度ラインL4,L5,L6は、予損傷量に応じて設定される第1材料定数A及び第2材料定数nによって規定される。つまり、3つのクリープき裂伝播速度ラインL4,L5,L6は、3つの予損傷量を対応付けられており、3つの予損傷量には、3つの第1材料定数A及び第2材料定数nが対応付けられている。ここで、図7を参照し、予損傷量に応じて設定される第1材料定数A及び第2材料定数nについて説明する。
図7のグラフは、その横軸が予損傷量となっており、その縦軸が第1材料定数A及び第2材料定数nの値となっている。このグラフには、予損傷量に応じて変化する第1材料定数Aのラインと、予損傷量に応じて変化する第2材料定数nのラインが形成されている。第1材料定数Aのライン及び第2材料定数nのラインは、予損傷量に応じて連続的に変化する直線となっている。このように、第1材料定数A及び第2材料定数nは、予損傷量に応じて変化するパラメータとなっている。
なお、上記のクリープき裂伝播速度ラインL4,L5,L6は、クリープ速度ラインと同様に、予損傷量と対応付けられていればよく、予損傷量に応じて連続的に変化するクリープき裂伝播速度ラインとしてもよい。つまり、第1材料定数A及び第2材料定数nは、図7に示すように、予損傷量に応じて連続的に変化するものであってもよい。
予損傷量に関するデータD5は、後述する予損傷量評価工程において評価された溶接継手部10の予損傷量に関するデータである。この予損傷量に基づいて、クリープ速度が補正されたり、第1材料定数A及び第2材料定数nが設定されて、クリープき裂伝播速度が補正されたりする。
演算部22は、記憶部21に記憶された各種データに基づいて、主き裂11が発生した溶接継手部10の寿命を算出する演算処理を実行している。
ここで、主き裂11の寿命を評価するにあたって用いられるき裂評価モデルの一例としては、図4に示すモデルとなっている。すなわち、図1に示すように、溶接継手部10に発生した主き裂11は、周方向の一部に亘って形成されているが、溶接継手部10の寿命の算出を行うにあたって用いられるモデルは、溶接継手部10に発生した主き裂11が、周方向の全周に亘って形成されたとみなす(図4の左図)と共に、溶接継手部10を軸方向に沿って切った断面となる簡易な平板モデル(図4の右側)Mとして取り扱う。
そして、寿命評価装置20は、図4のき裂評価モデルを用いて、上記したき裂評価パラメータCを求めている。ここで、Cは、下記する計算式(2)で表される。
Figure 0006254033
なお、計算式(2)及び図4に記載される各種パラメータは、下記のとおりである。
:C積分(き裂評価パラメータ)
α,n:クリープ速度をNorton則で表した場合の材料定数
σ,ε:部材(溶接継手部10)の降伏応力,降伏ひずみ=1
b,L:部材幅,長さ
:形状補正係数
a:き裂(主き裂11)の長さ
E:部材(溶接継手部10)のヤング率
ν:部材(溶接継手部10)のポアソン比
:部材単位厚さあたりの参照荷重
c:部材リガメント部長さ(b−a)
)付の記号:時間微分を表す
次に、図8を参照して、上記の記憶部21及び演算部22を備える寿命評価装置20によって、主き裂11が発生した溶接継手部10の寿命を評価する演算処理(寿命評価方法)について説明する。
図8に示すように、寿命評価装置20による溶接継手部10の寿命の評価に先立ち、溶接継手部10に発生した主き裂11の長さを取得すべく、図2に示す超音波探傷装置30を用いて溶接継手部10に発生した主き裂11の長さを計測する(ステップS1)。超音波探傷装置30によって探傷することで取得された溶接継手部10の主き裂11は、寿命評価装置20に入力され、これにより、寿命評価装置20は、溶接継手部10に発生した主き裂11の長さを取得する(主き裂長さ取得工程)。
続いて、後述する予損傷量評価工程において、溶接継手部10に与えられた予損傷量が評価される(予損傷量評価工程)。予損傷量評価工程によって評価された予損傷量は、寿命評価装置20に入力され、これにより、寿命評価装置20は、溶接継手部10に与えられた予損傷量を取得し、記憶部21に、データD5として記憶する(ステップS2)。
この後、寿命評価装置20は、解析によって既知となる作用応力及び温度を取得し、記憶部21に、データD1及びデータD2として記憶する(ステップS3)。
次に、寿命評価装置20は、記憶部21に記憶された各種データに基づいて、溶接継手部10の寿命を算出する。先ず、寿命評価装置20は、記憶部21に記憶された予損傷量に関するデータD5に基づいて、図5に示すグラフ(データD3)のクリープ速度カーブを補正する。これにより、クリープ速度は、予損傷量に応じて補正される(ステップS4:クリープ速度補正工程)。
続いて、寿命評価装置20は、ステップS4において補正したクリープ速度に基づいて、き裂評価パラメータCを算出する(ステップS5:き裂評価パラメータ算出工程)。なお、き裂評価パラメータCを算出するにあたり、上記の計算式(2)において、主き裂11の長さaは、ステップS1で取得し、作用応力(σ,ε)は、ステップS3で取得し、クリープ速度は、ステップS4で取得しており、他のパラメータについては既知の値となっている。
ステップS5において、き裂評価パラメータCを算出すると、寿命評価装置20は、記憶部21に記憶された予損傷量に関するデータD5に基づいて、図7に示すグラフから、第1材料定数A及び第2材料定数nを設定する(ステップS6:材料定数設定工程)。
この後、寿命評価装置20は、ステップS5において算出したき裂評価パラメータCと、ステップS6において設定した第1材料定数A及び第2材料定数nとに基づいて、計算式(1)から、クリープき裂伝播速度を算出することで、クリープき裂伝播速度を補正する(ステップS7:クリープき裂伝播速度補正工程)。これにより、寿命評価装置20は、クリープ定数としてのクリープ速度及びクリープき裂伝播速度を、ステップS4及びステップS7において補正する(クリープ定数補正工程)。
ステップS7において、補正されたクリープき裂伝播速度を算出すると、寿命評価装置20は、下記する計算式(3)に基づいて、主き裂11が進展する長さaを求める。
Figure 0006254033
そして、寿命評価装置20は、進展する主き裂11の長さaが、限界き裂に達するまでの時間を、溶接継手部10の寿命として算出する(ステップS8:寿命算出工程)。以上のように、寿命評価装置20は、上記の一連のステップを実行することで、溶接継手部10の寿命を算出し、溶接継手部10の寿命を算出する演算処理を終了する。
次に、ステップS2において寿命評価装置20により取得される、溶接継手部10の予損傷量を評価する予損傷量評価工程について説明する。溶接継手部10の予損傷量は、種々の評価手法を用いることで評価することができ、一例として、下記する3つの予損傷量評価工程について説明する。
先ず、第1の予損傷量評価工程では、溶接継手部10の検査時に計測される主き裂11の長さと溶接継手部10の使用時間とに基づいて取得される複数の計測点に基づいて、溶接継手部10の予損傷量を評価している。ここで、図9に示すグラフは、その横軸が使用時間となっており、その縦軸が主き裂11の長さとなっている。また、P1,P2は、溶接継手部10の検査時に計測される主き裂11の長さと溶接継手部10の使用時間とに基づいて取得される計測点である。U1は、補正前のクリープき裂伝播速度に関するき裂進展カーブであり、U2は、補正後のクリープき裂伝播速度に関するき裂進展カーブである。
この予損傷量評価工程では、計測点P1及び計測点P2を補間するように、き裂進展カーブU2をフィッティングさせる。これにより、予損傷量評価工程では、計測点P1,P2に基づいて、補正前のき裂進展カーブU1を補正することができる。ここで、フィッティングさせたき裂進展カーブU2は、クリープき裂伝播速度に関するカーブとなっていることから、予損傷量評価工程では、補正されたクリープき裂伝播速度を取得できる。このため、補正されたクリープき裂伝播速度に基づいて、上記した図8の演算処理を逆解析することで、溶接継手部10の予損傷量を評価することができる。
次に、第2の予損傷量評価工程では、クリープ変形によって溶接継手部10が受ける予損傷量を応力解析によって評価している。つまり、この予損傷量評価工程では、溶接継手部10(実機)の形状を模擬した実機モデルを作成し、この実機モデルを用いて応力解析を行うことで、溶接継手部10の予損傷量を算出する。
そして、第3の予損傷量評価工程では、溶接継手部10の検査時に計測される溶接継手部10の表面組織を取得すると共に、溶接継手部10に作用する作用応力を応力解析によって取得し、取得した表面組織及び作用応力に基づいて、溶接継手部10の予損傷量を評価している。ここで、図10のグラフは、その横軸が溶接継手部10の厚さ(深さ)となっており、その縦軸が応力(作用応力)となっている。図10に示すように、応力解析によって得られた溶接継手部10の厚さ方向における応力分布は、開先形状や管の扁平度によって肉厚内部に極大点を持つ応力分布となる場合がある。予損傷量評価工程では、表面組織の予損傷量を基準として、この応力分布を考慮し(つまり、表面組織の予損傷量に、応力分布に基づく補正値を乗算して)、図11に示す溶接継手部10の厚さ方向における予損傷量を導出している。図11のグラフは、その横軸が溶接継手部10の厚さ(深さ)となっており、その縦軸が予損傷量(クリープ損傷率=経過時間/破断時間)となっている。
以上のように、本実施例によれば、溶接継手部10の予損傷量に基づいて、溶接継手部10の寿命を算出するための因子となるクリープ定数(クリープ速度及びクリープき裂伝播速度)を補正することができるため、予損傷量を考慮して、溶接継手部10の寿命を精度良く算出することができる。
また、本実施例によれば、第1の予損傷量評価工程において、溶接継手部10に発生する現実の主き裂11のクリープき裂伝播速度から、溶接継手部10の予損傷量を評価することができるため、クリープ定数を適切に補正することができる。
また、本実施例によれば、第2の予損傷量評価工程において、溶接継手部10の予損傷量を、応力解析によって評価することができるため、溶接継手部10を実計測することなく、予損傷量を評価することができ、クリープ定数を適切に補正することができる。
また、本実施例によれば、第3の予損傷量評価工程において、実計測した溶接継手部10の表面組織と、応力解析によって溶接継手部10に作用する作用応力とを用いることで、溶接継手部10の予損傷量を精度良く評価することができるため、クリープ定数を適切に補正することができる。
なお、本実施例では、図4に示すき裂評価モデルを用いてき裂評価パラメータを算出したが、この構成に限定されない。例えば、溶接継手部10(実機)の形状を模擬した実機き裂評価モデルを作成し、この実機き裂評価モデルを用いてき裂解析を行うことで、き裂評価パラメータを算出してもよい。
10 溶接継手部
10a 第1母材のバタリング部
10b 第2母材のバタリング部
11 主き裂
15 限界き裂
18 第1母材
19 第2母材
20 寿命評価装置
21 記憶部
22 演算部
30 超音波探傷装置
31 超音波探触子
32 超音波探傷器
D1 作用応力に関するデータ
D2 温度に関するデータ
D3 クリープ速度に関するデータ
D4 クリープき裂伝播速度に関するデータ
D5 予損傷量に関するデータ
D6 主き裂の長さに関するデータ
L1,L2,L3 クリープ速度ライン
L4,L5,L6 クリープき裂伝播速度ライン
U1,U2 き裂進展カーブ
P1,P2 計測点
M 平板モデル

Claims (7)

  1. 異なる材料同士をつなぎ合わせることで形成される異材継手部に発生する主き裂が、限界き裂に達するまでの寿命を評価する寿命評価方法において、
    前記異材継手部に発生した前記主き裂の長さを取得する主き裂長さ取得工程と、
    クリープ変形によって前記異材継手部が受けた予損傷量を評価する予損傷量評価工程と、
    評価した前記予損傷量に基づいて、前記異材継手部の寿命を算出するための因子となるクリープ定数を補正するクリープ定数補正工程と、
    前記クリープ定数補正工程において補正された前記クリープ定数に基づいて、前記異材継手部の寿命を算出する寿命算出工程と、を備えることを特徴とする寿命評価方法。
  2. 前記クリープ定数は、クリープ速度及びクリープき裂伝播速度であり、
    前記クリープき裂伝播速度は、前記クリープ速度を因子として含むき裂評価パラメータと、前記異材継手部の材料定数とに基づいて算出され、
    前記クリープ定数補正工程は、
    損傷前の前記異材継手部の前記クリープ速度を、評価した前記予損傷量に応じて補正するクリープ速度補正工程と、
    評価した前記予損傷量に応じた前記材料定数を設定する材料定数設定工程と、
    前記クリープ速度補正工程において補正した前記クリープ速度に基づいて、前記き裂評価パラメータを算出するき裂評価パラメータ算出工程と、
    前記き裂評価パラメータ算出工程において算出した前記き裂評価パラメータと、前記材料定数設定工程において設定された前記材料定数とに基づいて、前記クリープき裂伝播速度を補正するクリープき裂伝播速度補正工程と、を有し、
    前記寿命算出工程は、
    前記クリープき裂伝播速度補正工程で補正された、前記クリープ定数である前記クリープき裂伝播速度に基づいて、前記異材継手部の寿命を算出する所定の算出式から、前記異材継手部の寿命を算出することを特徴とする請求項1に記載の寿命評価方法。
  3. 前記予損傷量評価工程では、
    前記異材継手部の検査時に計測される前記主き裂の長さと前記異材継手部の使用時間とに基づいて取得される複数の計測点を補間する、前記クリープき裂伝播速度に関するき裂進展カーブを導出することで、前記予損傷量を評価し、
    前記クリープ定数補正工程では、
    前記予損傷量評価工程において導出した前記き裂進展カーブに基づいて、前記クリープ定数を補正することを特徴とする請求項1または2に記載の寿命評価方法。
  4. 前記予損傷量評価工程では、
    クリープ変形によって前記異材継手部が受ける前記予損傷量を、応力解析によって評価することを特徴とする請求項1または2に記載の寿命評価方法。
  5. 前記予損傷量評価工程では、
    前記異材継手部の検査時に計測される前記異材継手部の表面組織を取得し、取得した前記表面組織から前記予損傷量を評価することを特徴とする請求項1または2に記載の寿命評価方法。
  6. 前記予損傷量評価工程では、
    前記異材継手部に作用する作用応力を応力解析によって取得し、取得した前記表面組織と、取得した前記作用応力とに基づいて、前記予損傷量を評価することを特徴とする請求項5に記載の寿命評価方法。
  7. 異なる材料同士をつなぎ合わせることで形成される異材継手部に発生する主き裂が、限界き裂に達するまでの寿命を評価する寿命評価装置において、
    前記異材継手部に発生した前記主き裂の長さと、クリープ変形によって前記異材継手部が受けた予損傷量と、前記異材継手部の寿命を算出するための因子となるクリープ定数と、を記憶する記憶部と、
    前記記憶部に記憶された前記クリープ定数に基づいて、前記異材継手部の寿命を算出する演算部と、を備え、
    前記演算部は、前記異材継手部の寿命の算出に先立ち、前記記憶部に記憶された前記予損傷量に基づいて、前記クリープ定数を補正することを特徴とする寿命評価装置。
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