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JP3411353B2 - 摺動材料 - Google Patents

摺動材料

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JP3411353B2
JP3411353B2 JP31321593A JP31321593A JP3411353B2 JP 3411353 B2 JP3411353 B2 JP 3411353B2 JP 31321593 A JP31321593 A JP 31321593A JP 31321593 A JP31321593 A JP 31321593A JP 3411353 B2 JP3411353 B2 JP 3411353B2
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JP
Japan
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resin
sulfur
volume
sliding material
solid lubricant
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JP31321593A
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辰彦 福岡
真也 川上
正春 菊地
寛 伊藤
勝 吉川
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Taiho Kogyo Co Ltd
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Taiho Kogyo Co Ltd
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、摺動材料に関するもの
であり、さらに詳しく述べるならば、銅又は銅合金の焼
結空孔に樹脂を充填し、さらに必要により固体潤滑剤、
耐摩耗性成分などを添加しあるいはオイルを含油させた
摺動材料の改良に関するものである。また、本発明の摺
動材料は、家庭用クーラーコンプレッサーなど潤滑条件
がドライ条件、限りなくドライに近い条件、境界潤滑か
ら流体条件までの範囲のいずれにも適用でき、またこれ
らの間で摺動条件が変化しても焼付を起き難いものであ
る。
【0002】
【従来の技術】上記摺動材料においては一般に銅(合
金)は裏金に焼結され、焼結により形成された焼結層に
高分子トライボ材料と称される多種の樹脂が含浸・焼成
されている。この材料では、樹脂が耐焼付性に優れてお
り、焼結合金は耐荷重性などに優れいているとの対照的
性質を利用し、前者により焼付防止機能を後者により荷
重を支える機能を分担させている。加えて、摺動中に樹
脂が焼結合金の表面を皮膜となって覆い、焼結銅合金の
耐焼付性不良をある程度補っている。
【0003】本出願人の出願に係る特開平5−1571
15号公報によると裏金表面にCu又はCu合金焼結層
を形成し、焼結合金の空孔に樹脂及び固体潤滑剤を充填
した摺動材料の改良が提案されている。この材料では、
焼結層としては純銅、青銅、鉛青銅、リン青銅などある
いはこれにFe−P化合物などを分散した複合合金が挙
げられている。固体潤滑剤としては二硫化モリブデン及
びグラファイトが挙げられている。さらに樹脂として
は、ポリイミド、ポリエステルイミド、ポリエーテルイ
ミド及びフェノール樹脂が挙げられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】従来の摺動材料におい
ては、軸受と相手軸が片当たりすると樹脂皮膜によって
は焼結銅合金の耐焼付性不良は補いきれず、相手軸への
銅または銅合金の凝着により焼付に至る。また、樹脂及
び焼結銅合金層は摺動中に摩耗し、これにつれて後者の
露出面積割合が増大すると摺動面の耐焼付性は低下し、
ある露出面積に達した時点で焼付に至る。このような点
が従来の樹脂充填銅系焼結材料の性能の限界となってい
た。
【0005】前掲特開平5−157115号公報による
と、Cu又はCu焼結合金の粒径、空孔率、銅合金表面
層の露出率を特定することにより耐焼付性を向上する提
案がなされており、それなりの効果を奏しているが、や
はり焼結合金が耐焼付性に劣るので片当たりなどが発生
した際には耐焼付性が低下することは否めない。
【0006】従来の銅合金の摺動特性を高めるために、
P,AlなどのCuマトリックスを強化する元素を添加
する、なじみ性が優れたPb,Biなどを添加する、グ
ラファイトなどの耐焼付性向上成分を添加する、アルミ
ナなどの耐摩耗性成分を添加するなどの提案がなされ、
それなりの成果を達成しているが焼結層は本質的に耐焼
付性に劣っている。
【0007】したがって、本発明は、樹脂充填焼結摺動
材料の焼結銅合金の耐焼付性を高めることにより、摺動
中に片当たりや焼結層露出面積の増大が起こった時にも
焼付が起こり難い摺動材料を提供することを目的とす
る。特に、本発明は、従来提案されてきた広範囲の組成
の樹脂充填−焼結摺動材料について耐焼付性を改良する
ために適用可能な技術的手段を見出すことによりクーラ
ーコンプレッサー、オートマチックトランスミッション
などの各種産業機器の軸受部に使用可能な材料を提供す
ることを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者は以上の観点か
ら研究を行い、次のように考察した。樹脂充填焼結銅系
材料が、油の供給が少ない、油の粘度が低い、すべり速
度が大きいかつ/又は荷重が大きいなどの摺動条件にお
かれると、軸受と軸との間の摩擦面間に存在する油膜が
薄くなり、混合潤滑や境界潤滑状態を呈するようにな
る。そうした条件下では摩擦による発熱が大きくなり、
さらに、実際の使用条件下で生ずる軸と軸受の片当りな
どがさらに発熱の増加を助長する。従来の樹脂充填焼結
摺動材料の焼付が起こるのはこのような条件下である。
このような焼付を起こす摩擦熱を逆に利用してなんらか
の反応を摺動面で起こさせることにより、焼付を防止で
きるのではないかと着想から鋭意検討を行った。
【0009】本発明者らは、上述のような摺動条件では
AgとSが摺動材料の表面で反応し、濃縮して焼付を防
止すること、Agは焼結銅合金に含有させる一方でSは
樹脂、固体潤滑剤及び/又は軸受含油オイルから供給で
きることを発見して、本発明を完成した。
【0010】本発明の一つの摺動材料は、硫黄を固体潤
滑剤から供給するものであり、0.1〜5重量%のAgを含有
し、残部Cu及び不可避的不純物からなる焼結銅合金と該
焼結銅合金の焼結空孔に充填された硫黄含有固体潤滑剤
及び樹脂とからなり、摺動材料全体に対して前記硫黄含
有固体潤滑剤と前記樹脂の合計は5〜80%体積%であ
り、前記硫黄含有固体潤滑剤と前記樹脂との合計に対し
て前記硫黄含有固体潤滑剤は5〜80体積%であり、前記
樹脂は20〜95体積%であることを特徴とする。
【0011】この摺動材料が摺動されると、固体潤滑剤
は相手軸により引き伸ばされて焼結合金の露出表面と接
触し、固体潤滑剤に含有されている硫黄が上述のような
摩擦面の発熱による温度で分解しかつ相手軸と軸受の間
の圧力により摺動面に加圧される結果焼結層表面と反応
しそして濃縮する。一方焼結合金中の銀もSと反応して
Sと同じ部位に濃縮して、銀と硫黄の濃縮層(以下「A
g−S濃縮層」と言う)が形成される。Ag−S濃縮層
はSIMS(Secondary Ion Mass Spectro−scopy )分
析により検出され、耐焼付性を向上させることが確認で
きた。Ag−S濃縮層では硫化銀が生成されているもの
と考えられる。
【0012】Ag−S濃縮層は軸受と相手軸が油膜を介
さず直接ミクロ的に接触し摩擦が生じ、発熱が多い部位
ほど形成され易い。この部位は焼付が起こり易い場所で
あるので、Ag−S濃縮層生成部位と焼付が起こり易い
摺動部位とは一致することになる。Ag−S濃縮層は軸
受と軸が接触する部位に生成された後、軸と軸受との相
対運動により摺動面に薄く伸びた状態となる。この結果
軸受−軸の間の凝着が抑えられ耐焼付性が向上する。す
るとAg−S濃縮層が形成された軸受の摺動面は凝着を
起こすことなく相手軸となじみ、その部位における潤滑
条件は境界潤滑から流体潤滑から移行する。引き続いて
その部位の温度が下がり、その後更なるAg−S濃縮層
の形成は抑制される。もし、上述の部位と別の場所で焼
付が起こり易くなるとその部位でAg−S濃縮層が形成
される。このようにAg−S濃縮層は焼付が起こり易い
任意の部位に局部的に生成し、焼付が起こらないような
部位では生成し難い。
【0013】本発明において、Agの含有量が0.1重
量%未満であると上記したAg−S濃縮層の生成が顕著
でなく、一方5重量%を超えると銅合金が硬くなりすぎ
て摺動特性が不良になる。好ましいAgの含有量は0.
2〜3.0重量%、より好ましくは0.5〜1.5重量
%である。Ag以外の成分は特に限定されず、本発明の
銅合金は工業的純銅にAgを添加したものであってもよ
く、公知の添加成分を加えたものであってもよい。もち
ろんこれらの添加成分の有無及び種類により銅合金の摺
動特性は変わるがAg−S濃縮層の生成は高温と高圧で
起こる反応に起因するので添加成分の有無、種類によっ
ては影響されないのである。
【0014】硫黄含有固体潤滑剤は、MoS2 ,WS2
,PbS,Ag2 S,Bi2 S3 ,CdS,FeS,
FeS2 ,ZnS,Sb3 S2 及びCuSからなる群か
ら選択された1種又は2種以上であることが好ましい。
【0015】硫黄含有固体潤滑剤が樹脂との合計に対し
て5体積%未満であると、硫黄の供給量が不足してAg-S
濃縮層の生成が顕著でなく、一方樹脂との合計に対して
80体積%を超えるとそれらを結合する樹脂の割合が少
なくなり強度及び耐摩耗性が不足する。好ましい硫黄含
有固体潤滑剤の量は10〜70体積%であり、より好ま
しくは20〜60体積%である。なお、本発明で言う体
積は見掛け体積%であり、樹脂成分を充填した際に生じ
た空孔なども体積に含まれる。
【0016】また、樹脂としては特に限定されず、ポリ
アセタール(POM)、ポリフェニレンサルファイド(PP
S)を含む公知のトライボロジカル高分子をすべて使用
することができるが、特に、ポリイミド(PI)、ポリア
ミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリ
エーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアミド(PA)、
フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリテトラフルオロエ
チレン(PTFE)、及びフッ素系溶融樹脂(パーフルオロ
アルコキシ樹脂(PFA)、エチレンテトラフルオロエチ
レン共重合樹脂(ETFE)、フルオロエチレン−フロオロ
プロピレン共重合樹脂(FEP))などを好ましく使用す
ることができる。樹脂の量は硫黄含有固体潤滑剤との合
計に対して20〜95体積%の範囲内において耐焼付性
と耐荷重性を両立させることができる。好ましい樹脂の
量は30〜90体積%であり、より好ましくは40〜80体積%
である。
【0017】なお、硫黄含有固体潤滑剤と樹脂の合計は
摺動材料に対して5〜80体積%の範囲内にあることが
必要である。これらの合計が5体積%未満であると、境
界潤滑条件あるいは極めてドライに近い摺動条件での耐
焼付性に優れず、一方80体積%を超えると耐荷重性が
低下する。これの成分の好ましい合計量は10〜70体積%
であり、より好ましくは20〜60体積%である。
【0018】以下、各種構造の樹脂充填焼結摺動材料に
本発明原理を適用した発明を説明するが、上記において
説明したAg−S濃縮層生成及び焼付防止の状況、Ag
量限定理由、樹脂の種類及び量、充填剤などは下記にお
いても共通するので、共通事項の説明は省略し当該構造
に特長的な点のみを説明することを理解されたい。
【0019】硫黄を樹脂から供給するようにした本発明
の摺動材料は、0.1〜5重量%のAgを含有する焼結銅
合金、及び前記焼結銅合金の5〜80体積%の焼結空孔に
含浸された硫黄又は硫黄含有化合物含有樹脂とからな
り、樹脂は摺動材料全体に対して20〜95体積%であり、
かつ樹脂中の硫黄又は硫黄含有化合物の含有量は0.01〜
1体積%であることを特徴とするものである。
【0020】すなわちこの発明では摺動中に樹脂が焼結
金属の露出面を薄い膜となって被覆するときに、該樹脂
中のS(元素状硫黄)又は硫黄含有化合物と銅合金中の
Agが反応してAg−S濃縮層を形成するところに特長
がある。硫黄含有化合物としては、テトラメチルチウラ
ム・ジサルファイドで代表されるチウラム類、モルホリ
ン・ジサルファイド、ジチオ酸塩を好ましく使用するこ
とができる。硫黄含有化合物の樹脂中の含有量が0.0
1体積%未満であるとAg−S濃縮層が顕著に生成せ
ず、1体積%を超えると焼結層の銅との反応が顕著にな
りすぎ、耐摩耗性が損なわれる。硫黄含有化合物の好ま
しい含有量は0.1〜0.7体積%であり、より好まし
くは0.2〜0.5体積%である。
【0021】上記した樹脂から硫黄を供給する摺動材料
の耐焼付性をさらに高めるために、さらに樹脂との合計
に対して5〜80体積%の固体潤滑剤を添加することがで
きる。ただし固体潤滑剤と樹脂の合計量は摺動材料全体
に対して5〜80体積%の範囲内でなければならない。ま
た、この固体潤滑剤の少なくとも一部を硫黄含有固体潤
滑剤として固体潤滑剤と樹脂の両方から硫黄を供給する
こともできる。
【0022】本発明の原理は含油軸受にも適用すること
ができ、その構成は上記した各種摺動材料の焼結空孔に
樹脂及び該当する場合は樹脂と固体潤滑剤など焼結合金
成分以外の成分(以下「樹脂等」と言う)との合計量の
体積を100%として0.1〜10体積%のオイルを含
浸せしめたものである。オイルとしてはシリコン系油、
パラフィン系油、オレフィン系油、グリコール系油、ナ
フテン系油、エステル系油などのあらゆる潤滑油を使用
することができる。オイルの添加量は0.1体積%未満
では耐焼付性を向上させることができず、10体積%を
超えると耐摩耗性が低下するので、上記の範囲内とする
ことが好ましい。特に好ましいオイル添加量は0.5〜
5体積%である。
【0023】また、オイルから硫黄を供給する本発明の
摺動材料は、0.1〜5重量%のAgを含有する焼結銅合金、
ならびに焼結銅合金の焼結空孔に充填された硫黄含有化
合物含有樹脂及びオイルからなり、樹脂とオイルの合計
は摺動材料全体に対して20〜95体積%であり、オイルは
前記樹脂等の体積を100体積%として0.1〜10体積%であ
ることを特徴とするものである。この摺動材料では摺動
面を被覆するオイル中の硫黄含有化合物が高温・高圧で
分解して硫黄を発生し、これが摺動面に濃縮するのであ
る。同じような作用は、機械の潤滑油に含まれる硫黄や
硫黄含有化合物が摺動材料の銀と反応して硫化銀を反応
生成することによっても起こり得るが、この場合は、油
中の硫黄や硫黄含有化合物の濃度は少ないため、摺動材
料中に硫黄含有化合物を含む場合より効果が小さい。
【0024】オイル中に含有される硫黄含有化合物とし
てはジベンジルサルファイド及びMoS2 を初めとする
硫黄含有固体潤滑剤を好ましく使用することができる。
これらの化合物のうちオイルとの溶解性に富み、それ自
身も極圧性をもつジベンジルサルファイドが特に好まし
い。硫黄含有化合物のオイル中の含有量が0.1体積%
未満であるとAg−S濃縮層生成が顕著でなく、さらに
10体積%を超えると焼結層の銅との反応が顕著になり
すぎ耐摩耗性が損なわれるので0.1〜7体積%の範囲
が好ましい。特に好ましい含有量は0.3〜5体積%で
ある。なお、オイルに硫黄含有化合物を含有させる場合
にも、硫黄含有固体潤滑剤及び/又は樹脂から硫黄を供
給させることもできる。
【0025】上述した固体潤滑剤、樹脂及び/又はオイ
ルから硫黄を供給する方法において、焼結合金自体に硫
黄を含有させることにより焼結銅合金からも硫黄を供給
させることができる。この場合、銅合金中に不純物とし
て微量(0.0001%)含有される不純物もAg−S
濃縮層生成に多少は寄与するが、より積極的に硫黄を銅
合金に添加することによりCu中のSによりAg−S濃
縮層の生成を促進することができる。
【0026】Cu中でAgは一部は微細な共晶組織を作
り、一部はCuマトリックスに均一に固溶している。一
方SはCuにほとんど固溶せず硫化銅として存在してい
るが、摩擦による熱によりAgとSとの濃縮層が摺動面
に形成される。本発明の摺動材料においてSが1重量%
を超えると多量の硫化銅の生成により銅材料が脆くな
る。したがって、本発明においてはCu中のSは1重量
%以下とすることが好ましい。
【0027】焼結合金自身の耐摩耗性を向上させるため
に、銅合金との合計に対して0.1〜20体積%のAl2O3,Si3
N4及びFe3Pからなる群から選択された1種または2種以上
を焼結合金に含有させることができる。好ましい添加量
は5〜12重量%である。
【0028】以上説明したように種々の硫黄供給源をも
つように構成した摺動材料に、硫黄を供給しない公知の
種々の添加剤を添加することができる。これらの添加剤
の作用はそれ自身公知である。これらの添加剤は焼結銅
合金の露出面で高温・高圧反応で生成するAg−S濃縮
層を生成を妨げない。またAg−S濃縮層は境界潤滑に
より高温・高圧状態が惹起された時にかつその状態にな
った部位に生成するので、その時以外にかつその部位以
外で発揮される公知の添加剤の作用を妨げない。これら
の添加剤の種類及び添加量は特に限定されないが、固体
潤滑剤、樹脂及び耐摩耗性成分などの量は摺動材料全体
の80体積%を超えないようにすることである。以下、添
加剤の種類及び量の好ましい実施態様を例示し説明す
る。
【0029】添加剤の第一群は、グラファイト、PTFE、
Pb、Zn、フッ化カーボン、フッ化Pb及びBNからなる群
固体潤滑剤であり、これらの1種又は2種以上は焼結空
孔に充填されて摩耗係数を低下させることにより摺動特
性を改良に寄与する。その添加量は固体潤滑剤との合計
に対して5〜80体積%が好ましく、5体積%未満であると
添加の効果がなく80体積%を超えると強度が低下する。
特に、好ましい添加量は15〜45体積%である。
【0030】添加剤の第二群は、Al2O3、SiO2、Si3N4
クレイ、タルク、TiO2、ムライト、マイカ及び炭酸カル
シウムからなる群であり、これらの1種又は2種以上は
樹脂層成分中に分散して焼結すると特に耐摩耗性向上の
効果が高い。その添加量は銅合金との合計に対して総量
で0.5〜20体積%であることが好ましい。添加量が0.5体
積%未満であると耐摩耗性向上の効果が少なく、一方20
体積%を超えると相手軸を著しく摩耗するので、上記範
囲の添加量が好ましい。特に好ましい添加量は3〜15体
積%である。
【0031】添加剤の第三群は、無機、有機もしくは金
属繊維を含有するものであり、樹脂を繊維強化すること
により耐摩耗性を改良するものである。これらの繊維と
しては樹脂複合材料にて公知の全てのものを使用するこ
とができるが、中でもガラス繊維、カーボン繊維、チタ
ン酸カリウム繊維などの無機繊維、芳香族ポリアミドな
どの有機繊維、SiCウィスカなどのウィスカ、Cuもしく
はステンレス系などの金属繊維を使用することが好まし
い。1種又は2種以上の繊維の添加量は0.5〜20体積%の
範囲が好ましく、添加量が樹脂等との合計に対して0.5
体積%未満であると耐摩耗性向上の効果が僅かであり、
20体積%を超えると相手軸を摩耗する。好ましい添加量
は3〜15体積%である。
【0032】また、上述したように本発明においては銅
合金のAg以外の成分の種類及び量は任意であるが、C
u−Ag合金は耐摩耗性及び低摩擦特性が不足するの
で、これらの性質を特に向上させる必要があるときは次
のような成分を添加した銅合金を本発明において使用し
てもよい。
【0033】その第一は、20%以下のSn,0.5%
以下のP,5%以下のAl,1%以下のSi,5%以下
のMn,5%以下のCr,5%以下のNi及び30%以
下のZnからなる群から選択されたCuマトリックス強
化元素を1種又は2種以上を含有する銅合金である。S
nは20%,Pは0.5%、Alは5%、Siは1%、
Mnは5%、Crは5%、Niは5%、Znは30%を
超えるとCuの延性が損なわれるので、これらの値を添
加量の上限とする必要がある。好ましい含有量は、Sn
は1〜10%,Pは0.2〜0.4%、Alは1〜3
%、Siは0.1〜0.5%、Mnは1〜3%、Crは
1〜3%、Niは1〜3%、Znは15〜20%であ
る。
【0034】その第二は、Cu−Ag合金にあるいは上
記第一の銅合金に加えて、それぞれ30%以下のPb及
びBiからなる群から選択された1種又は2種の凝着防
止元素を含有する銅合金である。Pb及びBiはなじみ
性及び異物埋収性を高める元素である。これらの元素の
含有量が30%を超えると銅合金の強度が低下し、好ま
しくない。好ましい含有量は20%以下である。
【0035】上記した各種組成の摺動材料は、一体構造
とするかあるいは裏金に焼結したバイメタル構造とする
こともでき、後者の場合摺動面で一部焼結銅合金が露出
した構造とすることもでき、またドライ条件で使用され
る樹脂等で焼結層を被覆した構造とすることもできる。
このような表面被覆樹脂が消失し、焼結材料が露出した
時にAg−S濃縮層が焼付防止の効果を発揮する。本発
明の摺動材料の製造方法は一般的方法であり、例えば前
掲特開平5−157115号などに記載された方法によ
ることができる。さらに、熱可塑性樹脂及び添加剤を混
合、混練した組成物を樹脂の融点以上に加熱してロール
等を用いて青銅焼結層内へ含浸させる方法や、上記組成
物のペレットを青銅焼結層上に散布した後予熱しロール
で圧下する方法も採用することができる。
【0036】
【作用】以上説明したように、本発明の摺動材料のAg
−S濃縮層は焼結銅合金の焼付が起こり易い部位にかつ
起こり易い時に形成される。すなわち、片当たりが発生
した部位あるいは焼結層の露出面積が急激に増大した時
にAg−S濃縮層形成され、どちらでもない状況(以下
「定常状況」と言う)では実質的に生成されない。定常
状況では、硫黄含有固体潤滑剤及び硫黄含有オイルは通
常の潤滑作用を営み、硫黄含有樹脂は通常の焼付防止作
用を営むが、片当たりなど発生した時に硫黄を摺動面に
供給し、硫黄が焼結銅合金から供給される銀と反応して
Ag−S濃縮層を形成する。したがって本発明は軸受が
遭遇する多様な状況において摺動性能を良好に保つこと
ができる。すなわち、片当たり、焼結合金層露出面積の
増大の他に異物の混入、潤滑油の不足、潤滑油の低粘度
化、荷重の増大、すべり速度の増大などの状況において
良好な性能を保つことができる。
【0037】また、片当たりが発生する部位が摺動面で
時間の経過とともに変わっても必要部位にAg−S濃縮
層を発生させることができる。その後、焼付が起こらな
くなると、摺動面の温度が下がるのでAg−S濃縮層の
生成は抑制される。このことは、銅合金よりは強度が低
いAg−S濃縮層が極端に厚くなり、焼結層全体の強度
低下を招かないことを意味する。以下実施例により本発
明を説明する。
【0038】
【実施例】
実施例1 図1〜9に示す組成の摺動材料を以下の方法で調製し
た。焼結層のCu系合金はあらかじめ表に示す組成とな
るように溶製した後、エアアトマイズを行い粒径が−1
00+200メッシュの粉末を篩分けした。
【0039】銅合金粉末を裏金鋼板上に厚みが0.3m
m、密度が約3.5g/ccとなるように散布した後8
30℃で0.5時間焼結した。この結果空孔率が約45
%の焼結層が得られた。
【0040】空孔を有する焼結層付き裏金を表に示す樹
脂層成分を溶剤に分散させた液に浸漬し液をミキサで攪
拌して、樹脂層成分を焼結層空孔に含浸した。その後1
50℃で30分間乾燥を行って樹脂層成分を充填した。
図1〜9の表に示す樹脂層成分の割合は樹脂層成分内の
体積%である。又全体に対する樹脂層成分の割合は50
体積%である。
【0041】さらに、含油材料に関しては樹脂層成分を
分散させた液にオイルを配合するか又は上記の製法を行
った後にオイルを含油させた。図8の表中のオイルの量
は樹脂成分100体積%に対するオイルの量である。
【0042】このようにして得られた供試剤1〜54に
つき下記方法による焼付試験を行い、耐焼付性を測定し
た。その結果を図1〜9の表に示す。 焼付試験方法 試験機:ピンオンディスク型摩擦摩耗試験機 荷重:すべり距離500m毎に0.1kNづつ漸増 速度:1m/s オイル:パラフィン系鉱油(添加剤なし) 供給油量:2mg/min
【0043】図9の表において、No55,56、58
はAgが添加されない銅合金を焼結層としてPAI及び
PTFEを焼結空孔に充填したものである。この材料の
焼付荷重は本発明実施例のNo1より低い。No57は
Agを本発明の下限未満で銅合金に添加しかつ、Sn,
Pbのような摺動特性を改良する元素が添加されていな
い。このために焼付荷重はNo51,52より一層低く
なっている。図1〜8の表は本発明の実施例に相当する
供試材の摺動層の組成を示しており、いずれも優れた焼
付荷重を有している。
【0044】実施例2 実施例1の方法に準じ、樹脂層成分の割合を図10のよ
うに変えた摺動材料No59〜63を調製した。なお、
焼結層成分はCu99重量%、Ag1重量%であり、樹
脂層はPAI60体積%、MoS2 40体積%であっ
た。試験結果を図10の表に示す。
【0045】
【発明の効果】以上説明したようにまた実施例から明ら
かなように、本発明は、従来の焼結合金の本質的欠点で
ある耐焼付性不良を大幅に軽減しもって非常に広範囲の
組成の摺動層の耐焼付性を高めることができるという面
で実用上画期的なものであり、また焼付きをもたらす摩
擦熱を摺動特性に好ましい減少に作用を転換したという
面でトライボロジ的にも非常に有意義である。よって本
発明は摺動部材の設計の面で産業に貢献するところが大
きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】固体潤滑剤から硫黄を供給する本発明の摺動材
料の組成と焼付荷重を示す図表である。
【図2】硫黄を供給する固体潤滑剤と硫黄を供給しない
固体潤滑剤を併用した本発明の摺動材料の組成と焼付荷
重を示す図表である。
【図3】固体潤滑剤から硫黄を供給する本発明の摺動材
料の組成と焼付荷重を示す図表である。
【図4】固体潤滑剤から硫黄を供給する本発明の摺動材
料の組成と焼付荷重を示す図表である。
【図5】樹脂中に添加された化合物あるいは固体潤滑剤
から硫黄を供給する本発明の摺動材料の組成と焼付荷重
を示す図表である。
【図6】硫黄を供給する固体潤滑剤と耐摩耗性成分を併
用した本発明の摺動材料の組成と焼付荷重を示す図表で
ある。
【図7】硫黄を供給する固体潤滑剤と、繊維又は硫黄を
供給する樹脂成分を併用した本発明の摺動材料の組成と
焼付荷重を示す図表である。
【図8】硫黄を供給する固体潤滑剤及び又は含油オイル
中の硫黄を供給する化合物を併用した本発明の摺動材料
の組成と焼付荷重を示す図表である。
【図9】銀が添加されないもしくは添加量が少ない焼結
合金と硫黄を供給する固体潤滑剤を組み合わせた比較例
の摺動材料の組成と焼付荷重を示す図表である。
【図10】樹脂層成分の割合を変えた摺動材料の焼付荷
重を示す図表である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI C10M 103:04 C10M 103:06 C 103:06 107:00 107:00) C10M 135:00 (C10M 169/04 C10N 10:02 103:04 30:06 107:00 40:02 135:00) C10N 10:02 30:06 40:02 (72)発明者 伊藤 寛 愛知県豊田市緑ケ丘3丁目65番地 大豊 工業株式会社内 (72)発明者 吉川 勝 愛知県豊田市緑ケ丘3丁目65番地 大豊 工業株式会社内 (56)参考文献 特開 平5−157115(JP,A) 特開 昭64−16842(JP,A) 特開 平4−88209(JP,A) 特開 平4−89892(JP,A) 特許3274261(JP,B2) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C10M 111/04 C10M 103/04 - 103/06 C10M 107/00 - 107/54 C10M 135/00 - 135/36 C10M 169/04 C10N 10:02 C10N 30:06 C10N 40:02 F16C 33/12 C22C 9/00

Claims (19)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 0.1〜5重量%のAgを含有し、残部Cu及び
    不可避的不純物からなる焼結銅合金と該焼結銅合金の焼
    結空孔に充填された硫黄含有固体潤滑剤及び樹脂とから
    なり、摺動材料全体に対して前記硫黄含有固体潤滑剤と
    前記樹脂の合計は5〜80%体積%であり、前記硫黄含有
    固体潤滑剤と前記樹脂との合計に対して前記硫黄含有固
    体潤滑剤は5〜80体積%であり、前記樹脂は20〜95体積
    %であることを特徴とする摺動材料。
  2. 【請求項2】 0.1〜5重量%のAgを含有し、残部Cu及び
    不可避的不純物からなる焼結銅合金と、前記焼結銅合金
    の焼結空孔に含浸された硫黄もしくは硫黄化合物含有樹
    脂とからなり、摺動材料全体に対して樹脂は5〜80体
    積%であり、前記樹脂が0.01〜1体積%の前記硫黄
    又は硫黄含有化合物があることを特徴とする摺動材料。
  3. 【請求項3】 0.1〜5重量%のAgを含有し、残部Cu及び
    不可避的不純物からなる焼結銅合金と、前記焼結銅合金
    の焼結空孔に充填された、硫黄もしくは硫黄化合物含有
    樹脂及びオイルからなり、摺動材料全体に対して前記硫
    黄もしくは硫黄含有化合物樹脂は5〜80体積%であり、
    前記オイルは前記硫黄もしくは硫黄化合物含有樹脂の体
    積を100体積%として0.1〜10体積%であることを特徴と
    する摺動材料。
  4. 【請求項4】 摺動材料全体に対して、前記樹脂との合
    計で5〜80体積%の固体潤滑剤をさらに含有し、固体
    潤滑剤と樹脂の合計に対して固体潤滑剤は5〜80体積
    %である請求項2記載の摺動材料。
  5. 【請求項5】 さらに、摺動材料全体に対して前記樹脂
    との合計で5〜80体積%の固体潤滑剤を含有し、固体潤
    滑剤と樹脂の合計に対して固体潤滑剤は5〜80体積%で
    あることを特徴とする請求項3記載の摺動材料。
  6. 【請求項6】 前記固体潤滑剤の少なくとも一部が硫黄
    含有固体潤滑剤である請求項4又は5記載の摺動材料。
  7. 【請求項7】 前記樹脂が0.01〜1体積%の硫黄又は硫
    黄含有化合物を含有することを特徴とする請求項5記載
    の摺動材料。
  8. 【請求項8】 前記硫黄含有固体潤滑剤が、MoS2, WS2,
    PbS, As2S, Bi2S3, CdS, FeS, FeS2, ZnS, Sb3S2, 及
    びCuSからなる群から選択された1種又は2種以上であ
    る請求項1又は6記載の摺動材料。
  9. 【請求項9】 前記樹脂に含有される硫黄含有化合物が
    チウラム類、モルホリン・ジサルファイド及びジチオ酸
    塩からなる群から選択された1種又は2種以上である請
    求項2又は7記載の摺動材料。
  10. 【請求項10】 前記樹脂に含有される硫黄含有化合物
    はジベンジルサルファイド及びジチオ酸塩からなる群か
    ら選択された1種又は2種である請求項3記載の摺動材
    料。
  11. 【請求項11】 前記焼結銅合金の空孔にさらにオイル
    が含有され、該オイルは前記樹脂又は樹脂と固体潤滑剤
    の合計を100体積%とし0.1〜10体積%であることを特徴
    とする請求項1、2又は4項記載の摺動材料。
  12. 【請求項12】 前記固体潤滑剤が、グラファイト、PT
    FE、Pb、Zn、フッ化カーボン、フッ化Pb、及びBNからな
    る群から選択された1種又は2種以上である請求項4又は
    5記載の摺動材料。
  13. 【請求項13】 焼結銅合金との合計に対して0.5〜20
    体積%のAl2O3,SiO2, Si3N4, クレイ、タルク、TiO2,ム
    ライト、マイカ及び炭酸カルシウムからなる群から選択
    された1種又は2種以上の耐摩耗性成分をさらに含有す
    る−但し焼結銅合金以外の成分の合計量は摺動材料全体
    に対して5体積%以下80体積%以下である−ことを特
    徴とする請求項1から12までの何れか1項記載の摺動
    材料。
  14. 【請求項14】 摺動材料全体に対して0.5〜20体積%
    の無機、有機もしくは金属繊維を含有し、かつ摺動材料
    全体に対して焼結銅合金及びオイル以外の成分は5〜80
    体積%であることを特徴とする請求項1から13までの何
    れか1項記載の摺動材料。
  15. 【請求項15】 前記焼結銅合金がさらに0.0001〜1重量
    %のSを含有することを特徴とする請求項1から13までの
    何れか1項記載の摺動材料。
  16. 【請求項16】 前記焼結銅合金がさらに20重量%以
    下のSn、0.5重量%以下のP、5重量%以下のAl、1重量
    %以下のSi、5重量%以下のMn、5重量%以下のCr、5
    重量%以下のNi及び30重量%以下のZnからなる群から選
    択された1種又は2種以上をさらに含有することを特徴
    とする請求項1から15まで何れか1項記載の摺動材料。
  17. 【請求項17】 前記焼結合金が総量で30重量%以下の
    Pb及びBiからなる群から選択された1種又は2種をさらに
    含有することを特徴とする請求項1から16まで何れか1
    項記載の摺動材料。
  18. 【請求項18】 裏金に焼結された焼結合金の表面が固
    体潤滑剤、耐摩耗性成分及び繊維からなる群から選択さ
    れた少なくとも1種を含有する樹脂により被覆されてい
    ることを特徴とする請求項1から17までの何れか1項記
    載の摺動材料。
  19. 【請求項19】 前記樹脂が焼結合金の表面を局部的に
    被覆し、焼結合金の表面の一部が露出していることを特
    徴とする請求項18記載の摺動材料。
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