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JP2006037180A - 耐焼付性に優れたPbフリー銅合金複合摺動材 - Google Patents

耐焼付性に優れたPbフリー銅合金複合摺動材 Download PDF

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Abstract

【課題】 Cu合金とMoS2、WS2を焼結すると焼結中にこれら硫化物が酸化され摺動性能を損う。
【解決手段】 焼結合金と複合する硫化物をCuS, Cu2S, ZnS, Ag2S, K2S, CaS, 又はFeSとする。これらの硫化物は相手材と凝着し難い。さらにCu合金にSn, Ag, Ni, Zn等を添加することによりCuマトリックスを強化する。
【選択図】 なし

Description

本発明は、銅系焼結摺動材料に関するものであり、さらに詳しく述べるならば、耐焼付性に優れたPbフリー銅合金複合摺動材に関するものである。
銅系摺動材料としては、Cu-Pb合金、Cu-Sn合金、Cu-Sn-Pb合金焼結材が一般に使用されている。銅合金中のPbは低融点相を形成し、摺動時の温度上昇によりPbが溶け出し、摺動面を冷却する効果とPbの自己潤滑作用により、耐焼付性を確保する。Pb以外で銅合金が境界潤滑時に相手材に凝着するのを防ぐ成分として、少量のAgが添加されている銅合金複合摺動材がある(特許文献1、米国特許第6348114号明細書参照)。少量のAgと潤滑油中のSが反応し、境界潤滑下で摩擦熱により摺動面に形成されるAg-S濃縮層が摺動面に薄く伸び、軸−軸受の間の凝着を抑える。
Pbを含む銅合金は潤滑油中の成分により腐食し、摺動特性が低下する。また、Pbは環境負荷物質であるために、Pbフリーの要求が高いが、Pbを添加しないCu、Cu-Sn合金では摺動特性、特に境界潤滑下での耐焼付性が劣る。この点を克服するために、Pbを含有せず、MoS2などのトライボ材料の添加により摺動特性を高めた焼結銅合金が後述のように公知である。
さらに、Ag添加銅合金がATFやエンジンオイルなどS分の多い潤滑油下で摺動されると、表面にAg-Sが生成するが、S分の少ない環境では硫化物の生成が少なく、Agの効果が十分発揮できない。
Sn:5〜16%、MoS2:5〜16%、残部Cuからなる組成の焼結層を自動車部品のブシュ、ワッシャの摺動層とすることが特許文献2(特許第3042539号)で提案されている。なお、MoS2はNi、Cuめっきされることもある。
また、Cu系焼結合金に、1〜10%のグラファイト、MoS2及びWS2の少なくとも1種と1〜30%のFe3P、Fe-Niなどの硬質物とを分散したブシュ材料(特許文献3、特許第3042539号明細書参照)や、1〜10%のグラファイトと0.05〜1%未満のAlO3を分散したブシュ材料(特許文献4、特許第2974738号明細書)も提案されている。
特許文献5(WO96/27685)には、次の組成をもつ耐硫化腐食性に優れた銅合金が開示されている。必須成分:Ni:5% を超え50%以下、Ag:0.1〜2%。任意成分(1) Sn:20%以下、 P:0.5%以下、Al:5%以下、Si:1%以下、Mn:5%以下、Zn:30%以下、Fe:10%以下、Sb:1%以下の一種又は2種以上;(2)総量で30%以下のPb及び/又は Bi;(3)総量で30%以下の MoS2、WS2、BN;(4)総量で20%以下のAl2O3、SiC、SiO2、Fe3P、AlN、Si3N4、TiC、WC、BN、NiB;(5)S:0.001〜1%。
米国特許第6348114号明細書 特許第3013946号明細書 特許第3042539号明細書 特許第2974738号明細書 WO96/27685号公報
従来銅系焼結材料に複合されていたトライボ材料は次のような問題があることが分かった。
(1)MoS2、WS2:銅系焼結材料の焼結は一般的に還元性雰囲気中で行なわれるが、このような条件下においてもMoS2、WS2は部分的に酸化することが知られている。このため添加量に見合った潤滑性能が発揮されない。しかし、対策としてMoS2, WS2の添加量を増やすと、銅系焼結材料の強度が低下する。
(2)黒鉛(グラファイト):黒鉛は銅と反応しないことから、元々銅合金の鋳型などに使用されているので、銅合金に対して焼結なじみ性が乏しい。したがって、銅マトリックス中の保持力が弱く、摺動中に黒鉛粒子は脱落する危険がある。
したがって、本発明は従来のトライボ材料を添加しないでPb含有銅系焼結合金と同等以上の性能を発揮できる銅系焼結摺動材料を提供することを目的とする。
本発明は、Cu及び不可避的不純物からなる銅合金と硫化物とを複合した焼結摺動材であって、前記硫化物が銅合金100質量部に対して0.1〜10質量部のMoS2及びWS2を除く硫化物であることを特徴する耐焼付性に優れたPbフリー銅合金複合摺動材を提供するものである。
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明の焼結摺動材の複合成分である硫化物の種類はCuS、Cu2S、ZnS、Ag2S、K2S、CaS、NiS及びFeS など、あるいはこれらの複化合物もしくは金属元素が過剰もしくは不足した非化学量論化合物が挙げられるが、焼結の温度である700〜1000℃で分解しない硫化物であれば、種類は特に限定しない。これらの硫化物の添加量が銅合金の100質量部に対して0.1質量部以下ではその効果がなく、また10質量部以上では強度が低下する。好ましい硫化物の添加量は1〜5質量部である。なお、硫化物を添加すると、その周囲のCuマトリクスが硫化しやすくなり、耐摩耗性、強度低下が予想されるので、Cuマトリクス中に下記のSn、Ni等の成分を添加してこれを防止することが好ましい。
SnはCuマトリックスの強度を上げ、耐疲労性、耐摩耗性の向上に効果がある。さらに、硫化物が添加されたことによる銅合金の硫化を防止する効果もある。銅合金中のSn含有量が20質量%を超えると銅合金が脆くなる。したがって、Sn含有量は20質量%以下であり、好ましくは1〜15質量%である。
Pは銅合金の融点を下げ、焼結性を高める。銅合金中のPの含有量が0.5質量%を超えると銅合金が脆くなる。したがって、Pの含有量は0.5質量%以下であり、好ましくは0.01〜0.2質量%、より好ましくは0.01〜0.1質量%である。
本発明の焼結摺動材の複合成分である銅合金に添加されることがあるAg、Ni、Zn、In、Biなどの任意添加元素:Ag、Ni等はCuマトリクスの強度を上げ、耐疲労性、耐摩耗性の向上に効果がある。また、摺動時の発熱と潤滑油中のSにより銅マトリクスが硫化腐食を起こすのを抑制する。特に、潤滑油中のS量が多い部位での使用や高温になるような部位に使用される摺動材ではZnやNiの添加が望ましい。BiはCu中に固溶せず、二次相粒子として存在する。Biは融点が低いため、摺動時に発生した熱で摺動表面に溶け出して、摺動面の温度を下げて、焼付を防止する。
しかし、Ag:5質量%以上、Ni:10質量%以上、Zn:30質量%以上、In:10質量%以上では銅合金の硬さが上がりすぎてなじみ性を低下して耐焼付性が低下する。Bi:20質量%以上では銅合金の融点が下がりすぎて強度が低下する。好ましい添加量は、 Ag:0.1〜2.0質量%、Ni:1.0〜5.0質量%、Zn:5.0〜30質量%、In:1.0〜5.0質量%である。
黒鉛、MoS2、WS2:これらの物質は自己潤滑性を発揮する成分公知の固体潤滑剤であるが、本発明において補助的に添加することは支障がない。これらの添加量が銅合金100質量部に対して、10質量部を超えると、固体潤滑剤どうしが凝集しやすくCuとの密着が悪くなるので、銅表面の加工時に欠けが生じやすく、性能低下につながる。また強度が低下する。好ましい添加量は1〜5質量部である。これらの固体潤滑剤の粒径は平均で10〜30μmであることが好ましい。
Fe3P、FeB、AlN、Al2O3、SiC、SiO2、Si3N4:さらに本発明においてはこれらの硬質物の1種もしくは2種以上を添加して耐摩耗性を高めることができる。これらの硬質物の添加量は銅合金の100質量部に対して10質量部を超えると摺動材の強度が低下する。好ましい添加量は0.1〜5.0質量部である。これらの硬質物の粒径は平均で10〜50μmであることが好ましい。
本発明摺動材の複合成分である硫化物はMoS2,WS2に比べると摩擦係数が高く、後者のようなへき開機構で摺動特性を向上しないが、脆いため、相手材に凝着しにくく、銅合金全体の耐凝着性を向上する。本発明摺動材の複合成分である硫化物は多量に存在すると、銅合金の耐摩耗性が低下することが懸念される。しかし、Sn、Ag、Ni、Zn等によりCuマトリクスを強化すると摺動性能は低下しない。また、これらの元素が合金中にあると摺動時の発熱によるCuの硫化を抑えるので、硫化物が添加されていても周囲のCuが硫化腐食することはない。
本発明摺動材の複合成分である硫化物自体の潤滑性能はPbに比べ低いのでBiまたは黒鉛、MoS2等の固体潤滑材を添加することが好ましい。
以下、実施例により本発明をより詳しく説明する。
表1に組成を示す銅合金アトマイズ粉末(粒径180μm以下)に硫化物粉末を表1に示す割合で混合し、鋼板上に1mmに散布した後、高周波加熱焼結した。高周波加熱焼結の焼結条件は、還元雰囲気下において、2分以内で700〜1000℃の焼結温度まで昇温し、その焼結温度での保持時間は3分以内とし、冷却はガス冷却または/およびロール冷却により2〜3分以内で速やかに室温まで冷却した。その後圧延し、同じ条件で再度焼結を行い、得られた材料を試験片とした。
試験方法は次のとおりであった。
試験機:ピンオンディスク試験機
荷重:4MPa/10min漸増
油種:パラフィン系ベースオイル
油温:室温
相手材:SUJ2
試験の結果を表1に示す。
Figure 2006037180
表1に示すように、本発明実施例No.2の焼付面圧はやや低いが、Pb含有銅合金とほぼ同等以上の性能が得られた。
以上説明したように、本発明の摺動材料はPbを含有せずに、優れた耐焼付性をもっているので、燃料噴射ポンプ用ブシュ、オートマチックトランスミッション用ブシュとして非常に適している。

Claims (6)

  1. Cu及び不可避的不純物からなる銅合金と、硫化物とを複合した焼結摺動材であって、前記硫化物が前記銅合金100質量部に対して0.1〜10質量部のMoS2及びWS2を除く硫化物であることを特徴とする耐焼付性に優れたPbフリー銅合金複合摺動材。
  2. 前記銅合金が、質量百分率で、Sn:20%以下及び P:0.5%以下を含むことを特徴とする請求項1に記載の耐焼付性に優れたPbフリー銅合金複合摺動材。
  3. 前記銅合金がさらにAg:5質量%以下、Ni:10質量%以下、Bi:20質量%以下、In:10質量%以下、及びZn:30質量%以下のうち1種又は2種以上を含むことを特徴とする請求項2に記載の耐焼付性に優れたPbフリー銅合金複合摺動材。
  4. 前記銅合金100質量部に対して10質量部以下の黒鉛、MoS2及びWS2のうち1種もしくは2種以上をさらに複合してなることを特徴とする請求項1から3までの何れか1項に記載の耐焼付性に優れたPbフリー銅合金複合摺動材。
  5. 前記銅合金100質量部に対して、10質量部以下のFe3P、Fe2P、FeB、AlN、Al2O3、SiC、SiO2及びSi3N4のうち1種もしくは2種以上をさらに複合してなることを特徴とする請求項1から4までの何れか1項に記載の耐焼付性に優れたPbフリー銅合金複合摺動材。
  6. 前記MoS2及びWS2を除く硫化物は CuS、Cu2S、ZnS、Ag2S、K2S、CaS、NiS及びFeSのうち1種又は2種以上である請求項1から5までの何れか1項に記載の耐焼付性に優れたPbフリー銅合金複合摺動材。
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