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JP2777100B2 - 内径仕上げ刃付き盛上げタップ - Google Patents

内径仕上げ刃付き盛上げタップ

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JP2777100B2
JP2777100B2 JP8024188A JP2418896A JP2777100B2 JP 2777100 B2 JP2777100 B2 JP 2777100B2 JP 8024188 A JP8024188 A JP 8024188A JP 2418896 A JP2418896 A JP 2418896A JP 2777100 B2 JP2777100 B2 JP 2777100B2
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tap
diameter
groove
biting
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JP8024188A
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浩人 菅野
茂 林
一光 皆川
亜雄 林
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OSG Corp
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OSG Corp
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、塑性変形によって
めねじを形成する盛上げタップに関し、特に、アルミニ
ウム合金の鋳抜き穴などに対しても高能率の加工が可能
で且つ長寿命が得られる内径仕上げ刃付き盛上げタップ
に関するものである。
【0002】
【従来の技術】径方向に突き出す突出部とその突出部に
続いて小径の逃げ部とがねじの進み方向に沿って交互に
且つ軸芯まわりにおいて略等角度間隔で連なるように設
けられたおねじ部を有し、被加工物に設けられた下穴の
表層部に前記突出部を食い込ませることにより塑性変形
させてめねじを形成する盛上げタップの一種に、盛り上
げによって形成されためねじの内径を仕上げる内径仕上
げ刃付きの盛上げタップが提案されている。たとえば実
公昭60−15623号公報に記載されているタップが
それである。
【0003】このような、内径仕上げ刃付きの盛上げタ
ップによれば、めねじの山頂、すなわちめねじの内径に
生じる不完全な山の形状の除去や、たとえばテーパ状の
鋳抜き穴などのように予め被加工物に形成された下穴の
寸法が管理限界以下の小さい穴であった場合において、
塑性流動する被加工物の余肉が多くてその余肉が行き場
を失って過大なトルクをもたらすことによりタップの折
損が防止されたり、或いはめねじの内径精度が高められ
るなどの利点があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記従来の
内径仕上げ刃付き盛上げタップは、タップのおねじ部の
谷径の最高部を、そのおねじ部の外径の最高部である突
出部(ローブ)に続く逃げ部に位置させ、その谷径の最
高部を切れ刃とするための溝を設けることにより構成さ
れている。
【0005】しかしながら、一般に、盛上げタップのお
ねじ部を形成するに際しては、ねじ山が外周面に形成さ
れた研削砥石によって研削するねじ研と称される工程に
よって、おねじ部のねじ山と谷底とを同時に加工するの
が普通であるが、上記のような従来の内径仕上げ刃付き
盛上げタップでは、おねじ部の山と谷底との凹凸形状が
周方向において同期しておらず、それを製作するに際し
て、個別に研削する必要がある。このため、製造工程が
複雑となるだけでなく、ねじ山の寸法管理が困難となる
一方、高い寸法精度を得ようとすれば、おねじ部全体の
精度を高めねばならず、高い加工技術および製造コスト
が必要となるという欠点があった。
【0006】本発明は、以上の事情を背景として為され
たものであり、その目的とするところは、従来と同様の
簡単な工程でおねじ部が基本的に形成されてねじ山の寸
法管理が容易であり、製造コストが軽減される内径仕上
げ刃付き盛上げタップを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】斯かる目的を達成するた
め、本発明の要旨とするところは、径方向に突き出す突
出部とその突出部に続く小径の逃げ部とがねじの進み方
向に沿って交互に且つ軸芯まわりにおいて所定の角度間
隔で連なるように均一高さのねじ山に沿って設けられた
おねじ部を有し、そのおねじ部の突出部を被加工物に設
けられた下穴の表層部に食い込ませることにより塑性変
形させてめねじを形成する盛上げタップにおいて、前記
おねじ部における1リード内に位置する前記突出部のう
ちの一部の突出部の谷底径を他の突出部の谷底径よりも
大径とし、その一部の突出部を谷底まで除去し、その除
去された部分のその谷底に対応する部分に切れ刃を形成
するための溝を設けたことにある。
【0008】
【発明の効果】このようにすれば、おねじ部において1
リード内に位置する突出部の中の一部の突出部を谷底ま
で除去し、その除去された部分のその谷底に相当する部
分に切れ刃が形成されていることから、おねじ部のねじ
山の食い込みによって塑性変形させられる肉のうち谷底
径よりも内側へ移動した余肉は上記切れ刃によって削除
されるので、所定精度のめねじが容易に転造成形され
る。そして、本発明の内径仕上げ刃付き盛上げタップで
は、おねじ部の突出部に続く逃げ部に谷底の最大径を形
成するのではなく、山と谷底との凹凸形状が周方向にお
いて同期しているので、ねじ山が外周面に形成された研
削砥石によって研削するねじ研と称される工程によっ
て、おねじ部の山と谷とが同時に且つ高精度で形成され
得るので、おねじ部のねじ山の寸法管理が極めて容易と
なり、製造コストが軽減される。
【0009】
【発明の他の態様】ここで、好適には、前記突出部のう
ち、前記おねじ部の1リード当たりにおける突出部の数
の約数であって1を除く所定の数を1周期としたときに
その1周期に該当する位置の突出部が谷底まで除去され
る。これにより、除去される突出部は軸方向において連
続して隣接することになる。
【0010】また、好適には、前記おねじ部は、その外
径が先端側へ向かう程小径となる食付き部とその食付き
部の基端側に続いて外形が一定に形成された完全山部と
から成り、少なくとも前記完全山部における前記内径仕
上げ刃の径は前記めねじの内径と一致させられている。
このようにすれば、少なくとも完全山部において、おね
じのねじ山の食い込みによって塑性変形させられる余肉
のうち谷底径よりも内側へ移動したものは上記切れ刃に
よって削除されて高い精度のめねじが転造成形される。
【0011】好適には、上記おねじ部は1つのねじ研工
程によって加工されるねじ山が形成されるので、そのお
ねじ部のねじ山の高さは、少なくとも前記完全山部にお
いて均一であり、その完全山部において前記除去されて
いない突出部の谷底の径は除去された突出部の谷底の径
すなわち形成すべきめねじの内径よりも小径とされる。
このようにすれば、めねじの盛り上げに際して、めねじ
のねじ山の頂部に形成される余肉が好適に除去される。
【0012】また、好適には、前記軸方向において隣接
する突出部を谷まで除去した部分は、前記おねじ部の軸
方向全域にわたって形成される。また、好適には、前記
溝は、前記食付き部の軸方向全域にわたって形成され
る。このようにすれば、最も転造負荷が大きい食付き部
全体において、切れ刃よりも内側へ移動した余肉が切削
されるので、転造トルクが一層軽減される利点がある。
【0013】また、好適には、前記溝は、前記完全山部
と前記食付き部の完全山部側とに形成され、その食付き
部には、その溝に続く油溝がその食付き部の先端まで形
成される。このようにすれば、溝が浅いために食付き部
の軸方向全体にその溝が形成されない場合でも、転造負
荷が大きい食付き部の軸方向全体にわたって切削油が好
適に供給される利点がある。
【0014】また、好適には、少なくとも前記食付き部
に形成された突出部および切れ刃は、工具鋼、高速度
鋼、合金鋼などの比較的耐久性の高い金属材料製の本体
の周方向の一部に固着された超硬合金、超高圧焼結体な
どの耐摩耗材料により構成されたものである。このよう
にすれば、最も摩擦負荷が大きい突出部および切れ刃が
超硬合金、超高圧焼結体などの耐摩耗材料により構成さ
れているので、転造ねじの精度が長期間にわたって得ら
れるとともに、本体全体を超硬合金により構成する場合
に比較して、転造ねじの折損が防止される利点がある。
【0015】
【発明の実施の態様】以下、本発明の一実施例を図面に
基づいて詳細に説明する。
【0016】図1は、本発明の一実施例の内径仕上げ刃
付き盛上げタップ(以下、盛上げタップと称する)10
の正面を示しており、図2は、そのII-II 視断面であっ
て、理解を容易にするためにそのねじ山の谷底に沿って
切断した図を示している。上記の盛上げタップ10は、
その基端部において図示しないチャック装置によって把
持されるシャンク部12を備えるとともに、その先端部
においてめねじを転造するためのおねじ部14を備えて
いる。
【0017】上記おねじ部14は、その外径が先端側へ
向かう程小径となる食付き部16とその食付き部16の
基端側に続いて外径が一定に形成された完全山部18と
から成る。その完全山部18は、そのねじ山および谷の
形状が図示しない被加工物の下穴の表層に転造成形すべ
きめねじのねじ山および谷の形状と略一致させられてお
り、転造過程において専らそのめねじ表面の仕上げとね
じ込み方向の推進力を発生させる。
【0018】上記おねじ部14は、外側へ湾曲した辺か
らなる多角形状、本実施例では外側へ湾曲した四辺から
なる略四角形状の断面を備えており、谷底からの高さが
均一のねじ山が所定のリード角の蔓巻き線に沿って形成
されている。上記ねじ山には、その一断面において外周
側へ突き出した4個の突出部20、20’と、その突出
部20、20’に連続して小径となる逃げ部22、2
2’とが形成されていることから、上記おねじ部14に
は、径方向に突き出す突出部20、20’とその突出部
20、20’に続いて小径の逃げ部22、22’とがね
じの進み方向に沿ってすなわち上記蔓巻き線に沿って交
互に且つ軸芯まわりにおいて所定の角度、すなわち本実
施例では90°の等角度間隔で連なるように設けられて
いる。また、本実施例では、突出部20、20’は、蔓
巻き線に沿って90°の等角度間隔で連なるように設け
られている結果、図1に示すように、軸方向に平行な方
向に沿って蔓巻き線の1リード(1回転)毎に互いに隣
接している。
【0019】上記の蔓巻き線に沿って形成された複数の
突出部20、20’のうちの一部であっておねじ部14
の軸方向において隣接する突出部20’がねじ山の谷底
に到達するまで平面研削によって除去されている。すな
わち、蔓巻き線に沿って形成された複数の突出部20、
20’の1リード当たりの個数の約数であって1を除く
所定の数(本実施例では2)を1周期としたときにその
1周期に該当する位置の突出部(本実施例では1個おき
の突出部)20’が谷底まで除去されているのである。
この結果、図2に示す完全山部18の断面において、そ
の突出部20’の谷底の最大径位置Dに接し且つその谷
底の最大径位置Dと回転中心Oとを結ぶ半径ODに直交
する研削面Aが形成されている。
【0020】そして、上記突出部20’が除去されるこ
とにより形成された研削面Aにおいて、上記谷底に対応
する部分であってその最大径位置Dには、転造するめね
じの内径仕上げのための切れ刃24を形成するために盛
上げタップ10の軸心に平行であって半円形の横断面形
状を有する溝26が設けられている。ここで、除去され
ない突出部20の外形は除去された突出部20’の外形
より小径とされている。すなわち、盛上げタップ10の
回転中心をO、突出部20の最大径位置をB、突出部2
0の谷底位置をEとすると、以下のように相互の径寸法
が設定されている。
【0021】すなわち、完全山部18のねじ山は1つの
ねじ研工程により形成されているので、同じ高さとされ
ており、しかも、そのねじ研工程において、除去されな
い突出部20の山径(2×OB)が転造すべきめねじの
谷径と一致するように、また、突出部20’の谷底径
(2×OD)が転造すべきめねじの内径(山径)と一致
するように、上記ねじ山が形成されていることから、除
去されていない突出部20の山径および谷底径(2×O
E)は、前記除去されている突出部20’の山径および
谷底径(2×OD)よりもそれぞれ小径とされている。
したがって、上記突出部20’の谷底径(2×OD)と
同じ径の研削面A内の最小径位置に溝26により切れ刃
24が形成されているので、その切れ刃24の回転軌跡
の径すなわち突出部20’の谷底径(2×OD)は、転
造成形すべきめねじの内径と一致させられているのであ
る。
【0022】次に、以上のように構成された盛上げタッ
プ10の製造方法を以下に説明する。先ず、ねじ研工程
において、工具鋼、高速度鋼、合金鋼などの比較的耐久
性の高い金属材料から成る棒材が所定の長さに切断され
た丸棒状素材の外周面に対して、ねじ山が外周面に形成
された研削砥石を用いて研削するねじ研が施されること
により、タップ本体の先端部に、図3に示すように外側
へ湾曲した四辺からなる略四角形状の断面のおねじ部1
4が形成され、そのおねじ部14の所定リード角の蔓巻
き線に沿ったねじ山に、外周側へ突き出した4個の突出
部20、20’と、その突出部20、20’に続いてそ
れよりも小径となる逃げ部22、22’とが形成されて
いる。上記ねじ山の谷底からの高さは上記研削砥石の外
周面に形成されたねじ山の高さと等しくされ、少なくと
も完全山部18において均一の高さとなっている。
【0023】このようなねじ研工程では、たとえば、上
記素材の軸まわりにおいて90°毎の4位置に位置決め
された状態で保持されつつ、その四角形状の一辺の曲率
中心まわりの円弧に沿って移動させられる過程で、回転
中の上記研削砥石により盛上げタップ10の丸棒状素材
の外周面が研削される。これにより、突出部20’の谷
底径(2×OD)が盛り上げにより形成すべきめねじの
内径(山径)と一致し、且つ突出部20の山径(2×O
B)が盛り上げにより形成すべきめねじの谷径と一致す
るように盛上げタップ10のねじ山が形成される。
【0024】次いで、突出部除去工程において、蔓巻き
線に沿って連なる突出部20、20’のうちの1個おき
の突出部20’を、それが1リード毎に隣接する方向す
なわち本実施例では盛上げタップ10の軸心に平行な方
向において平面研削を施こすことによって谷底に到達す
るまで削除し、図4に示すように前記研削面Aを形成す
る。
【0025】そして、溝形成工程において、上記研削面
Aの最小径位置を示す線の回転方向側に前記溝26が研
削によって図2に示すように形成されることにより、そ
の最小径位置を示す線に沿った切れ刃24が形成され
る。この溝形成工程では、上記溝26の横断面形状と同
様の研削面断面形状を外周部に備えた研削砥石が用いら
れる。
【0026】以上のように構成された本実施例の盛上げ
タップ10を用いることにより、図5に示すように転造
が進行し、被加工物30の下穴の表層に高い精度のめね
じ32が得られる。すなわち、図5の(a) に示す被加工
物30の下穴の表層に対して盛上げタップ10の食付き
部16が螺進させられることにより食い込まされると、
図5(b) に示すように塑性変形が開始され、その食付き
部16に続いて完全山部18がさらに螺進させられる
と、図5(c) に示すように塑性変形が進行してめねじ3
2の山頂から余肉34が内周方向へ形成されるが、切れ
刃24の通過によって図5(d) に示すようにその余肉3
4が除去される。したがって、たとえばAC2Cなどと
して知られるダイキャスト製軽合金部材に設けられたテ
ーパ状鋳抜き穴などの寸法管理の困難な下穴に対して
も、内径寸法精度の高いめねじ32が形成されるのであ
る。たとえばめねじの等級が6Hの通常の下穴寸法は1
1.34mm〜11.41 mmが推奨されているのに対して、上記の
テーパ状鋳抜き穴では、口元径が11.30mm であるが深さ
18mmの出口径が10.80mm である。
【0027】上述のように、本実施例の盛上げタップ1
0によれば、突出部20のうちの一部であって軸方向に
隣接する突出部20’を谷底まで除去し、その除去され
た部分のその谷底に相当する部分に形成すべきめねじ3
2の内径と径寸法が一致させられた切れ刃24が形成さ
れていることから、おねじ部14のねじ山の食い込みに
よって塑性変形させられる肉のうち谷底最大径よりも内
側へ移動した余肉34は上記切れ刃24によって削除さ
れるので、高い精度のめねじ32が転造成形されるとと
もに、内径が管理限界よりも小さい下穴に対しても転造
負荷も軽減されて過大トルクによる折損も好適に防止さ
れる。
【0028】そして、本実施例の内径仕上げ刃付き盛上
げタップ10の製造に際して、おねじ部14の突出部2
0、20’に続く逃げ部22、22’に谷底の最大径を
形成するのではなく、山と谷底との凹凸形状が周方向に
おいて同期しているので、ねじ山が外周面に形成された
研削砥石によって研削するねじ研と称される工程によっ
て、おねじ部14の山と谷とが同時に且つ高精度で能率
よく形成され得て、おねじ部14の寸法管理が極めて容
易となって高い精度の盛上げタップ10を容易に製造で
きるとともに、盛上げタップ10を安価に製造できる。
【0029】因みに、従来の内径仕上げ刃付き盛上げタ
ップ40によれば、図6のおねじ部の断面に示すよう
に、おねじ部のねじ山に突出部42が形成されるととも
に谷底にも突出部44が形成されており、ねじ山の突出
部42の間に溝46が形成されることにより谷底の突出
部44にその谷底の最大径の切れ刃48が形成されてい
る。このため、ねじ山と谷底との凹凸形状が周方向にお
いて同期しておらず、そのようなおねじ部のねじ山は、
ねじ山が外周面に形成された研削砥石によって研削する
1つのねじ研工程によって形成することが不可能である
ため、複数種類のねじ研削工程を用いて個別に研削加工
する必要があるので、製造工程が複雑となるだけでな
く、ねじ山の寸法管理が困難となる一方、高い寸法精度
を得ようとすれば、おねじ部全体の精度を高めねばなら
ず、高い加工技術および製造コストが必要となるという
欠点があったのである。
【0030】次に、本発明の他の実施例を説明する。な
お、以下の説明において前述の実施例と共通する部分に
は同一の符号を付して説明を省略する。
【0031】図7は、本発明の他の実施例における盛上
げタップ50のおねじ部の断面を示している。図におい
て、突出部20に相当する部分には、超硬合金或いは超
高圧焼結体などの耐摩耗材料52が埋設された状態で固
着されており、最も転造負荷の大きい突出部20や切れ
刃24の耐久性が高められている。本実施例の盛上げタ
ップ50には、たとえば工具鋼、高速度鋼、合金鋼など
であって図8に示すように所定長さに切断された丸棒状
素材54が用いられる。この丸棒状素材54の外周面に
は、複数本の上記耐摩耗材料52が螺旋状に埋設されて
おり、その耐摩耗材料52の埋設部分に突出部20、2
0’が形成されるように前記ねじ研が実施される。これ
により、1リード毎の突出部20、20’は軸方向にお
いてスパイラル状に隣接するとともに、研削面Aおよび
溝26もスパイラル状に形成される。本実施例によれ
ば、最も摩擦負荷が大きい突出部20および切れ刃24
が超硬合金などの耐摩耗材料52により構成されている
ので、転造ねじの精度が長期間にわたって得られるとと
もに、本体全体を超硬合金により構成する場合に比較し
て、転造ねじの折損が防止される利点がある。
【0032】図9は、本発明の他の実施例における盛上
げタップ60のおねじ部の断面を示している。図におい
て、おねじ部の断面は、外側へ湾曲した六辺から成る略
正六角形状を示しており、突出部20が中心角60°の
等角度間隔で設けられている。また、図2の実施例と同
様に、蔓巻き線に沿って設けられた突出部20のうちの
1個おきの突出部20’が除去されることによりその突
出部20’の谷底に対応する部分すなわち谷底径の最大
部分が切れ刃24となるように溝26が形成されてい
る。
【0033】図10は、本発明の他の実施例における盛
上げタップ62のおねじ部の断面を示している。図にお
いて、軸心まわりの120°の等角度間隔で突出部20
が設けられ、一対の突出部20の間において突出部2
0’が形成されるとともに、その突出部20’がその位
置の谷底まで除去され且つその突出部20’の谷底に対
応する部分すなわち谷底径の最大部分が切れ刃24とな
るように溝26が形成されている。
【0034】図11は、本発明の他の実施例における盛
上げタップ64の要部を拡大して示している。図におい
て、溝26は、完全山部18においてはその軸方向の全
域にわたって形成されているが、食付き部16の完全山
部18側の一部まで連続し、そこが終端となっている。
本実施例では、図1の実施例に比較して溝26の深さが
浅く且つ食付き部16のテーパ角が大きいからである
が、それらのうちの一方だけでも同様である。本実施例
では、上記溝26の端部から食付き部16の先端まで溝
26よりも小さい幅寸法であって横断面矩形の油溝66
が形成されている。この油溝66は、好ましくは食付き
部16のテーパ角の1/2と同様の角度で、中心線に対
して傾斜した方向へ形成されている。本実施例によれ
ば、おねじ部14の軸方向にわたる全体に溝26が形成
されていない場合でも、溝26の終端と食付き部16の
先端面とを連通させるための油溝66が形成されている
ので、めねじ転造中における転造部に対する潤滑油の供
給が可能となる利点がある。
【0035】図12は、本発明の他の実施例における盛
上げタップ70の要部を拡大して示している。図におい
て、食付き部16の軸方向全体において、突出部20’
をその谷底まで除去した第2の研削面A’とその部分に
前記溝26に連続する第2の溝26’とが形成されてい
る。この第2の研削面A’および第2の溝26’は、前
記溝26と同じ横断面形状ではあるが、食付き部16の
テーパ角の1/2と同様の角度で、中心線に対して傾斜
した方向へ形成されている。これにより、食付き部16
の軸方向の全体においても、完全山部18と同様に、突
出部20のうちの一部であって軸方向に隣接する突出部
20’を谷底まで除去した第2の切れ刃24’が形成さ
れている。本実施例によれば、最も転造負荷の大きい食
付き部16において、ねじ山の谷底に到達する余肉が上
記第2の切れ刃24’によって除去されるので、テーパ
状の鋳抜き穴などの小径の下穴にめねじを形成するに際
しても、回転トルクが軽減されるとともに、盛上げタッ
プ70の折損が好適に防止される。
【0036】以上、本発明の一実施例を図面に基づいて
説明したが、本発明はその他の態様において適用され
る。
【0037】たとえば、前述の実施例では、所定の蔓巻
き線に沿って形成された突出部20、20’のうちの1
つおきの突出部20’、或いは2つおきの突出部20’
が除去されていたけれども、おねじ部14の1リード当
たりにおける突出部20の数の約数であって1を除く所
定の数を1周期としたときにその1周期に該当する位置
の突出部20’が谷底まで除去されればよい。これによ
り、おねじ部14では突出部20’が軸方向において連
続的に隣接することになるからである。たとえば、おね
じ部14の1リード当たりにおける突出部20、20’
の数が4であるときには、1個おきの突出部(1リード
当たり2個の突出部)20’、或いは3個おきの突出部
(1リード当たり1個の突出部)20’が除去される。
また、おねじ部14の1リード当たりにおける突出部2
0、20’の数が6であるときには、1個おきの突出部
(1リード当たり3個の突出部)20’、2個おきの突
出部(1リード当たり2個の突出部)20’、或いは5
個おきの突出部(1リード当たり1個の突出部)20’
が除去される。
【0038】また、前述の図1の実施例では、切れ刃2
4および溝26は、おねじ部14の軸方向全域にわたっ
て形成されていたが、おねじ部14の一部、好適にはお
ねじ部14の食付き部16側の一部と、食付き部16の
軸方向の全域、或いは食付き部16の一部、好適には食
付き部16の完全山部18側の一部との両方或いは一方
に設けられていても一応の効果が得られる。
【0039】また、前述の図1の実施例において、研削
面Aおよび溝26が盛上げタップ10の軸心に平行な方
向へ直線状に形成されていたが、螺旋状に形成されてい
てもよい。また、直線状或いは螺旋状の油溝が前記溝2
6とは独立におねじ部14の軸方向全域にわたって形成
されていてもよい。さらに、上記油溝および溝26は軸
方向の途中において連結されていてもよい。
【0040】また、前述の実施例の盛上げタップ10、
50、60、62、64、70は、その表面に窒化処理
により表面硬化処理、TiN、TiCNコーティングに
より表面被覆処理が施されてもよいし、その全体が64
〜70HRCの硬さを有する高速度工具鋼、超硬合金、
超微粒子超硬合金から構成されていてもよい。また、切
れ刃24の表面には硬質炭素被膜処理が施されてもよ
い。
【0041】また、前述の実施例において、切れ刃24
の径すなわち谷底の最大径はめねじの内径寸法と一致さ
せられているが、これは、その切れ刃24の径が転造す
べきめねじの内径の略許容寸法範囲内とされているとい
う意味である。
【0042】また、前述の実施例においては突出部20
が同じ高さに形成されているが、たとえば周方向におい
て複数個おきの突出部20’を除去することによって溝
26間に複数の突出部20を設け、切れ刃24の回転方
向後方において位置する複数の突出部20の高さ寸法を
順次大きくすることにより、突出部20に負荷される塑
性変形抵抗を均一化させてもよい。このようにすれば、
突出部20の破損が好適に防止され、盛上げタップの耐
久性が高められる。
【0043】なお、上述したのはあくまでも本発明の一
実施例であり、本発明はその主旨を逸脱しない範囲にお
いて種々変更が加えられ得るものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例の盛上げタップを示す正面図
である。
【図2】図1の実施例におけるおねじ部の断面を拡大し
て説明する図である。また、図1の実施例の盛上げタッ
プの製造工程を説明する図であって、溝形成工程を説明
する図である。
【図3】図1の実施例の盛上げタップの製造工程を説明
する図であって、ねじ研工程によりねじ山が形成された
状態を示す図である。
【図4】図1の実施例の盛上げタップの製造工程を説明
する図であって、突出部除去工程により研削面Aが形成
された状態を示す図である。
【図5】図1の実施例の盛上げタップによってめねじが
転造される過程を説明する図である。
【図6】従来の内径仕上げ刃付き盛上げタップのおねじ
部を説明する断面図である。
【図7】本発明の他の実施例を説明する図2に相当する
図である。
【図8】図7の実施例の盛上げタップに用いられる素材
を説明する斜視図である。
【図9】本発明の他の実施例を説明する図2に相当する
図である。
【図10】本発明の他の実施例を説明する図2に相当す
る図である。
【図11】本発明の他の実施例を説明する図1に相当す
る図である。
【図12】本発明の他の実施例を説明する図1に相当す
る図である。
【符号の説明】
10,50,60,62,64,70:盛上げタップ 14:おねじ部 16:食付き部 18:完全山部 20:突出部、20’:突出部 22:逃げ部 24:切れ刃、24’:第2の切れ刃(切れ刃) 26:溝、26’:第2の溝(溝)
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平7−223119(JP,A) 実開 昭63−50615(JP,U) 実開 平5−88836(JP,U) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) B23G 5/06

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 径方向に突き出す突出部と該突出部に続
    いて小径の逃げ部とがねじの進み方向に沿って交互に且
    つ軸芯まわりにおいて所定の角度間隔で連なるように均
    一高さのねじ山に沿って設けられたおねじ部を有し、該
    おねじ部の突出部を被加工物に設けられた下穴の表層部
    に食い込ませることにより塑性変形させてめねじを形成
    する盛上げタップにおいて、 前記おねじ部における1リード内に位置する前記突出部
    のうちの一部の突出部の谷底径を他の突出部の谷底径よ
    りも大径とし、該一部の突出部を谷底まで除去し、該除
    去された部分の該谷底に対応する部分に切れ刃を形成す
    るための溝を設けたことを特徴とする内径仕上げ刃付き
    盛上げタップ。
  2. 【請求項2】 前記おねじ部は、その外径が先端側へ向
    かう程小径となる食付き部と該食付き部の基端側に続い
    て外径が一定に形成された完全山部とから成り、該完全
    山部における前記内径仕上げ刃の径は前記めねじの内径
    と一致させられている請求項1の内径仕上げ刃付き盛上
    げタップ。
  3. 【請求項3】 前記軸方向において隣接する突出部を谷
    底まで除去した部分は、前記おねじ部の軸方向全域にわ
    たって形成されている請求項2の内径仕上げ刃付き盛上
    げタップ。
  4. 【請求項4】 前記溝は、前記食付き部の軸方向全域に
    わたって形成されたものである請求項1乃至3のいずれ
    かの内径仕上げ刃付き盛上げタップ。
  5. 【請求項5】 前記溝は、前記食付き部の完全山部側に
    形成され、該食付き部には、該溝に続く油溝が該食付き
    部の先端まで形成されたものである請求項1乃至4のい
    ずれかの内径仕上げ刃付き盛上げタップ。
  6. 【請求項6】 少なくとも前記食付き部に形成された突
    出部および切れ刃は、合金鋼製の本体の周方向の一部に
    固着された超硬合金により構成されたものである請求項
    1乃至5のいずれかの内径仕上げ刃付き盛上げタップ。
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