JP2573754B2 - 多芯ケーブル - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は医療機器、計測機器など
の電子機器内または機器間のように、屈曲性および雑音
防止が特に要求される多芯ケーブルに関するものであ
る。

【０００２】

【従来の技術】電子機器内の配線あるいは機器間の配線
等に使用される多芯ケーブルは、その取扱い上、柔軟性
に富むものが使用され、屈曲等の運動が加えられる頻度
が高い。屈曲等の運動が加えられると、多芯ケーブルを
構成する夫々の電線同士がこすり合わされ静電気が発生
し、これが信号を伝える中心導体やアースに影響をおよ
ぼし、信号への雑音の原因となる。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】多芯ケーブルに屈曲等
の運動が加えられると電線同士がこすり合わされ静電気
が発生し、これが信号を伝える中心導体やアースに影響
をおよぼし、信号への雑音の原因になることは従来より
知られていた。そこで、その対策として一芯ずつを横巻
き線等でシールドし、これをより合わせて多芯ケーブル
とすることが考えられた。しかし、医療機器、計測機器
等の高精度化に伴い、それらの機器内、または機器間に
使用される多芯ケーブルでは、横巻線等による各芯シー
ルドでもなおかつ、屈曲等の運動時には、雑音が問題に
なるようになり、その対策が必要になってきた。

【０００４】

【課題を解決するための手段】本発明は、医療機器、計
測機器等の高精度を要求される用途に於いて、屈曲等の
運動が加えられても前述のような雑音が発生しない多芯
ケーブルを得ることを目的とするもので、各芯の外被表
面に帯電防止材を塗布した後、多芯数の電線をより合わ
せることを特徴とし、なお好ましくは、その集合体を導
電性テープで抑え巻きしてなる多芯ケーブルである。

【０００５】

【作用】各芯の外被表面に帯電防止材を塗布した後、多
芯数の電線をより合わせた多芯ケーブルなので、屈曲等
の運動が加えられても、静電気の発生が殆どなく、従っ
て雑音の発生も殆どない。又、多少静電気が発生したと
しても抑え巻きの導電性テープを介することにより、一
括シールドを通じてケーブル外部に逃がすことがより完
全になる。又、各芯の外被表面に帯電防止剤を塗布して
もかとう性という点には、ほとんど変化がなく、所定の
柔軟性は保持することが出来る。

【０００６】

【実施例】中心導体１として０．０５ｍｍの錫メッキ軟
銅線の７本より使用し、絶縁体２としてフッ素樹脂を押
出しにより成形し、外径約０．３８ｍｍに仕上げた。こ
の絶縁電線に０．０３ｍｍの錫メッキ軟銅線をシールド
としてビッチ約９ｍｍで横巻き線３を施し、外被４とし
て４μｍ厚、２．５ｍｍ巾のポリエステルテープを２枚
重ね巻きした後、熱処理によって一体化し、同軸芯を仕
上げた。

【０００７】前述の同軸芯の外被４の表面に帯電防止剤
を塗布した後、次の様な手順で撚り合せた。すなわち前
述の同軸芯１６芯をより合わせてＡ芯図２（ａ）とし
た。次に前述の同軸芯４芯をより合わせてＢ芯図２
（ｂ）とした。そして、Ｂ芯４ユニット及びＡ芯７ユニ
ットを図２（ｃ）の如くにより合わせた。これらの集合
体上に厚さ５０μｍ、巾２５ｍｍ、体積抵抗率１．３×
１０²（Ω−ｃｍ）程度の導電性テープ５を約１／３重
ねで抑え巻きした。更に、遮蔽用として素線径１２０μ
ｍの銅箔糸を複数本用い、ピッチ約６５ｍｍで 編組６
を施した。その編組６の外周にポリ塩化ビニル樹脂組成
物を厚さ約０．７ｍｍで押出し被覆して外被７を形成
し、最終外径約９．４ｍｍで、本発明の多芯ケーブルを
仕上げた。（以下本発明の多芯ケーブルという）

【０００８】本発明の多芯ケーブルの特徴は、同軸芯の
外被表面に帯電防止剤を塗布した後、多芯により合わせ
ることと、より合せた集合体を導電性テープで抑え巻き
をすることとにあるが、帯電防止剤としては、いわゆる
外部用帯電防止剤として市販されているものを用いるこ
とができる。具体的には、たとえばNalauryl aminoprop
ionate,Diethanolamine salt lauryl amino propionate
など、吸着力の強いカチオン、両性界面活性剤を低沸点
の有機溶剤に溶かして、これを同軸芯の外被表面に塗布
することが好ましい。

【０００９】次に、本発明の多芯ケーブルと同様だが、
同軸線の外被表面に帯電防止剤を塗布せずにより合わせ
て集合し、その集合体を導電性のない通常のテフロンテ
ープで抑え巻きした多芯ケーブルを作成した。（以下比
較例の多芯ケーブルという）

【００１０】本発明の効果を確認するために、本発明の
多芯ケーブルと比較例の多芯ケーブルとに同様の屈曲を
与え、そのときに発生する雑音の測定を行った。図３
は、その測定を実施している様子を示す。すなわち、約
１．５ｍの多芯ケーブルサンプルを屈曲試験機に装着
し、多芯ケーブルのほぼ中央部を直径１２．５ｍｍのマ
ンドレル８にて固定し、屈曲部以外の部分を固定台９に
固定して試験機による屈曲以外の動きがサンプルに加わ
らないように装着する。屈曲部の動きは、機械的に行い
±９０°の角度を１分間に３０回の速さで往復運動させ
た。また、固定側のサンプル端からケーブル集合体をつ
つんでいる遮蔽用の一括編組６をアースにおとし、次に
同軸１芯を取り出し、その同軸の横巻き線３及び中心導
体１をグラフテック社ＴＹＰＥ ＷＲ３７０１リニアコ
ーダＦのプラス側に接続して、屈曲運動中に発生する電
圧を測定した。その結果は図４に示した通り、比較例の
多芯ケーブルの場合は最大４．２５ｍＶの静電電圧が発
生したのに対して、本発明の多芯ケーブルの場合は最大
でも０．５７５ｍＶの静電電圧しか発生しなかった。

【００１１】

【発明の効果】実施例に於いて述べた如く、本発明の多
芯ケーブルは、比較例の多芯ケーブルに比べて屈曲によ
る雑音の発生が顕著に防止されている。しかも、屈曲柔
軟性は従来と大差なく取り扱いも容易である。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の多芯ケーブルを構成する同軸芯の部分
切断略図である。

【図２】 （ａ）同軸芯を１６芯集合したＡ芯の断面を示す。 （ｂ）同軸芯を４芯集合したＢ芯の断面を示す。 （ｃ）本発明の多芯ケーブルの断面を示す。

【図３】多芯ケーブルに屈曲を与えながら、その時の雑
音を測定している様子を示す。

【図４】本発明の多芯ケーブルと比較例の多芯ケーブル
とで屈曲時の雑音特性を測定した結果を示す。

【符号の説明】

１：中心導体 ２：絶縁体 ３：横巻き線 ４：同軸芯の外被 ５：抑え巻きテープ ６：遮蔽用編組 ７：多芯ケーブル外被 ８：マンドレル ９：固定台 １０：測定器（グラフテック社 ＴＹＰＥ ＷＲ３７０
１ リニアコーダＦ）

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 佐藤 和宏 神奈川県横浜市栄区田谷町１番地 住友 電気工業株式会社横浜製作所内 (56)参考文献 実開 昭57−171220（ＪＰ，Ｕ) 実開 昭55−5468（ＪＰ，Ｕ) 実開 昭56−148813（ＪＰ，Ｕ)

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 よりあわせ集合して成る多芯ケーブルに
   おいて各々の電線の外被表面に帯電防止剤を有し、か
   つ、抑え巻きテープとして、導電性テープを用いたこと
   を特徴とする多芯ケーブル。