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JP2022061805A - 溶接継手の製造方法及び開先充填用のフラックス入りカットワイヤ - Google Patents

溶接継手の製造方法及び開先充填用のフラックス入りカットワイヤ Download PDF

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JP2022061805A
JP2022061805A JP2020169975A JP2020169975A JP2022061805A JP 2022061805 A JP2022061805 A JP 2022061805A JP 2020169975 A JP2020169975 A JP 2020169975A JP 2020169975 A JP2020169975 A JP 2020169975A JP 2022061805 A JP2022061805 A JP 2022061805A
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孟 松尾
Takeshi Matsuo
孝浩 加茂
Takahiro Kamo
耕太郎 渡邊
Kotaro Watanabe
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Nippon Steel Corp
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Abstract

Figure 2022061805000001
【課題】予熱作業の負担を減らしながら、低温割れを防止することができ、しかも、作業環境やコスト性においても有利に溶接継手を得ることができる溶接継手の製造方法、及びこれに用いられるフラックス入りカットワイヤを提供する。
【解決手段】所定の弗化物を含むフラックスを有したフラックス入りカットワイヤを開先内の少なくとも一部に充填して溶接するフラックス入りカットワイヤ溶接工程を備えた溶接継手の製造方法であり、また、これに用いられるフラックス入りカットワイヤであって、鋼製外皮と、この鋼製外皮の内部に充填されて弗化物を含むフラックスとを有したものである。
【選択図】図1

Description

この発明は、母材間に設けた開先内にカットワイヤを充填して溶接する溶接継手の製造方法、及び、これに用いられる開先充填用のフラックス入りカットワイヤに関する。
近年、造船、鉄骨、橋梁などの大型鋼構造物の製作分野において、軽量化と高性能化を両立させるため、鋼板の高強度化が進んでいる。また、施工効率向上の観点から、主に板継溶接で採用されるサブマージアーク溶接(SAW)では、片面溶接、両面一層溶接等の大入熱溶接に対応可能な溶接材料が要求される。
一般に、溶接金属の強度は母材強度以上とすることが求められる。そのため、鋼板の高強度化に伴い、溶接金属も高強度化することが必要となる。しかしながら、引張強さが780MPa以上の高強度鋼板を溶接するような場合には、溶接部での低温割れが問題となる。特に、板厚が厚い極厚の高強度鋼の多層盛り溶接の初層では、その発生確率が高くなってしまう。そのため、この低温割れを防ぐために溶接部の予熱作業が必要となるが、極厚鋼板のような場合には、予熱作業自体が多大な負荷となってしまう。
この低温割れについては、溶接金属中の拡散性水素が影響するため、サブマージアーク溶接に用いられるフラックスや溶接ワイヤに弗化物を添加することで、水素イオン(H)を弗化物イオン(F)と結合させて、アーク外に排出させ、溶融池中に取り込まれる水素濃度を低減させる方法が知られている。
例えば、特許文献1には、サブマージアーク溶接に用いられる溶接ワイヤであって、ワイヤ中に充填されるフラックス成分中に、融点が1000℃以下であり、かつ粉末状のフッ素化合物を0.1質量%以上10質量%未満含んだフラックス入りワイヤが記載されている。また、特許文献2には、SiO等のほかに、CaFを9~21%、MgF、MnFの一種又は二種を2~10%、Li弗化物をLi換算で0.02~1.0%含有するフラックスを用いて、所定のワイヤと共に、780MPa高張力鋼をサブマージアーク溶接することが記載されている。
しかしながら、上記特許文献1では、原油輸送用高強度パイプライン等のような鋼管の製管溶接を目的にしており、その実施例で使用される鋼板の板厚も25mmである。つまり、板厚が50mm以上の極厚の高強度鋼板について、特許文献1のようなフラックス入りワイヤで多層盛り溶接を行おうとすると、ヒュームやスパッタの発生による作業環境の問題が顕著になる。しかも、全てのパスにこのようなフラックス入りワイヤを用いることは、コスト高を招いてしまう。
また、上記特許文献2では、実施例において板厚が80mmの780MPa鋼を2パスで1層の多層盛り溶接する例を示しているが、その明細書中の記載から明らかなように、予熱温度100℃での予熱作業を必要としている(段落0044参照)。更に、特許文献1のフラックス入りワイヤや、特許文献2のフラックスを用いて、サブマージアーク溶接を行うと、弗化物がアークによって乖離するため、アークが不安定になり、ビード形状が不良となってしまう。
一方で、サブマージアーク溶接において大入熱にて継手を製造する際には、高い溶着効率及び溶込み深さの制御のために、細径鋼素線を所定の長さに細かく裁断したカットワイヤを開先内に充填することが行われている。そして、特許文献3には、カットワイヤ素線がCu被着層で覆われており、その表面に油が塗布されたカットワイヤが記載されている。
この特許文献3において、Cu被着層を設ける理由は、その高い通電性によりアークスタート性を考慮したものであり、また、ワイヤ表面に適切な油分量の油を塗布するのは、アークスタート性を損なうことなく耐錆性を向上させるものであって、低温割れ性が低下するのを防止するためとする(段落0013、0021参照)。つまり、特許文献3におけるカットワイヤの油量制御では、拡散性水素の増加を抑えることはできても、低減を図ることにはならない。そのため、鋼板や溶接金属の高強度化が進む場合において、低温割れの問題を確実に防止するのは難しい。なお、上述したような開先内に充填するカットワイヤは、これまでにソリッドワイヤをカットしたものが主に使用されてきた。
特開2013-123711号公報 特開平5-212583号公報 特開平9-94690号公報
このように、鋼板の高強度化や溶接金属の高強度化が進むにあたり、本発明者らは、極厚の高強度鋼板の場合であっても、予熱作業の負担を減らしながら、低温割れを防ぐことができ、しかも、ヒュームやスパッタによる作業環境の問題を極力抑えることができる方法について鋭意検討した結果、所定の弗化物を含んだフラックス入りのカットワイヤを開先内に充填して溶接することで、上記の課題を解決することができることを見出し、本発明を完成させた。
したがって、本発明の目的は、予熱作業の負担を減らしながら、低温割れを防止することができ、しかも、作業環境やコスト性においても有利に溶接継手を得ることができる溶接継手の製造方法を提供することにある。
また、本発明の別の目的は、このような溶接継手の製造方法に用いられるフラックス入りカットワイヤを提供することにある。
すなわち、本発明の要旨は次のとおりである。
(1)母材間に設けた開先内にカットワイヤを充填して溶接する溶接継手の製造方法であって、
鋼製外皮と、この鋼製外皮の内部に充填されて弗化物を含むフラックスとを有したフラックス入りカットワイヤを、前記開先内の少なくとも一部に充填して溶接するフラックス入りカットワイヤ溶接工程を備えたことを特徴とする溶接継手の製造方法。
(2)前記弗化物が、CaF、MgF、LiF、NaF、KZrF、KSiF、及びNaAlFからなる群から選ばれる1種又は2種以上である請求項(1)に記載の溶接継手の製造方法。
(3)前記フラックス入りカットワイヤは、該フラックス入りカットワイヤの全質量に対する質量割合で、
前記弗化物をF換算値で0.01質量%以上含むと共に、C、Si、Mn、Cu、Ni、Cr、Mo、Nb、V、Ti、Al、B、及びBiからなる化学成分の含有量がC:0.120%以下、Si:2.00%以下、Mn:3.50%以下、Cu:5.00%以下、Ni:5.00以下、Cr:5.00%以下、Mo:5.00%以下、Nb:0.50%以下、V:0.50%以下、Ti:0.50%以下、Al:1.70%以下、B:0.020%以下、及びBi:0.030%以下であり、また、
P及びSからなる不純物元素の含有量がP:0.030%以下及びS:0.020%以下である(1)又は(2)に記載の溶接継手の製造方法。
(4)前記フラックス入りカットワイヤ溶接工程が、開先内に前記フラックス入りカットワイヤを充填して1パスで溶接するフラックス入りカットワイヤ充填1パス溶接からなる(1)~(3)のいずれかに記載の溶接継手の製造方法。
(5)前記フラックス入りカットワイヤ溶接工程が、開先内の初層に前記フラックス入りカットワイヤを充填して溶接する1層盛りの溶接、又は、開先内の初層と2層目以降に前記フラックス入りカットワイヤを充填して溶接する多層盛りの溶接からなり、少なくとも前記母材の温度が予熱相当温度に達するまで行われるものである(1)~(3)のいずれかに記載の溶接継手の製造方法。
(6)前記溶接の手段がサブマージアーク溶接又はガスシールドアーク溶接である(1)~(5)のいずれかに記載の溶接継手の製造方法。
(7)前記母材は、引張強さが780MPa以上の高強度鋼材からなる(1)~(6)のいずれかに記載の溶接継手の製造方法。
(8)前記母材は、厚さが50mm以上の極厚鋼材からなる(1)~(7)のいずれかに記載の溶接継手の製造方法。
(9)溶接継手を製造する際に母材間に設けた開先内に充填する開先充填用のカットワイヤであって、鋼製外皮と、この鋼製外皮の内部に充填されて弗化物を含むフラックスとを有することを特徴とする開先充填用のフラックス入りカットワイヤ。
(10)前記弗化物が、CaF、MgF、LiF、NaF、KZrF、KSiF、及びNaAlFからなる群から選ばれる1種又は2種以上である(9)に記載の開先充填用のフラックス入りカットワイヤ。
(11)該フラックス入りカットワイヤの全質量に対する質量割合で、
前記弗化物をF換算値で0.01質量%以上含むと共に、C、Si、Mn、Cu、Ni、Cr、Mo、Nb、V、Ti、Al、B、及びBiからなる化学成分の含有量がC:0.120%以下、Si:2.00%以下、Mn:3.50%以下、Cu:5.00%以下、Ni:5.00以下、Cr:5.00%以下、Mo:5.00%以下、Nb:0.50%以下、V:0.50%以下、Ti:0.50%以下、Al:1.70%以下、B:0.020%以下、及びBi:0.030%以下であり、また、
P及びSからなる不純物元素の含有量がP:0.030%以下及びS:0.020%以下である(9)又は(10)に記載の開先充填用のフラックス入りカットワイヤ。
(12)前記母材は、引張強さが780MPa以上の高強度鋼材からなる(9)~(11)のいずれかに記載の開先充填用のフラックス入りカットワイヤ。
(13)前記母材は、厚さが50mm以上の極厚鋼材からなる(9)~(12)のいずれかに記載の開先充填用のフラックス入りカットワイヤ。
本発明によれば、例えば、極厚の高強度鋼板を溶接する場合であっても、予熱作業の負担を減らして、低温割れを防ぐことができるようになり、しかも、ヒュームやスパッタによる作業環境の問題を極力抑えて、コスト性においても有利に溶接継手を製造することができるようになる。
図1は、本発明におけるフラックス入りカットワイヤ溶接工程の一例を示す説明図である。 図2は、本発明におけるフラックス入りカットワイヤ溶接工程の他の一例を示す説明図である。 図3は、実施例において耐低温割れ性の評価に使用した開先形状とフラックス入りカットワイヤを充填する様子を示す説明図である。 図4は、実施例において開先初層での耐低温割れ性の評価に使用した開先形状とフラックス入りカットワイヤを充填する様子を示す説明図である。
本発明は、鋼製外皮とこの鋼製外皮の内部に充填されるフラックスとを有したフラックス入りカットワイヤを用いるものであり、母材間に設けた開先内の少なくとも一部にこのフラックス入りカットワイヤを充填して溶接するフラックス入りカットワイヤ溶接工程を備えるようにして、溶接継手を製造する。以下、本発明に係るフラックス入りカットワイヤについて説明すると共に、これを用いた溶接継手の製造方法について説明する。
〔フラックス入りカットワイヤ〕
先ず、フラックス入りカットワイヤについて、フラックスとしては、弗化物を含んだものを用いるようにする。弗化物は、溶接金属中の拡散性水素量を減少させて、溶接金属の耐低温割れ性を顕著に向上させる働きを持つ。これは、フラックス入りカットワイヤを溶接した際にフラックスが溶融し、そのフラックス中の弗素(F)が水素(H)と結合して弗化水素(HF)となり、このHFが溶接金属外に放出されるためと推測される。
これらの弗化物について、好ましくは、CaF、MgF、LiF、NaF、KZrF、KSiF、及びNaAlFからなる群から選ばれた1種又は2種以上であるのがよい。これらの化合物によれば、電離して生じるCa、Mg、Li、Na、K、Zr、Si、及びAlが、いずれも酸素と結合して溶接金属中の酸素量を低減させることができ、脱酸元素として作用する。これにより、溶接金属の靭性や伸びを改善する点で有利である。
上述したように、弗化物は、溶接金属中の拡散性水素量を十分に低減できる観点から、この弗化物の含有量について、弗化物に含まれる弗素(F)の量をフラックス入りカットワイヤの全質量に対する質量%で表すF換算値で規定すれば、フラックス入りカットワイヤの全質量に対する質量割合で0.01%以上含まれるようにするのがよく、好ましくは0.03%以上であるのがよく、より好ましくは0.05%以上であるのがよく、更に好ましくは0.10%以上であるのがよい。この含有量はフラックス中に含まれる弗化物の合計量を表す。つまり、フラックス中に含まれる弗化物の質量割合の合計がF換算値で0.01%以上となる限り、各弗化物の含有量の下限値は特に制限されるものではない。また、このF換算値は、弗化物に含まれる弗素(F)の量をフラックス入りワイヤの全質量に対する質量%で示すものであることから、弗化物の種類が上述した好ましい例の弗化物である場合には、F換算値は次の式Aより求めることができる。
0.487×CaF+0.610×MgF+0.732×LiF+0.452×NaF+0.402×KZrF+0.517×KSiF+0.543×NaAlF … …式A
ここで、式A中の弗化物の化学式は、各化学式に対応する弗化物の、フラックス入りワイヤの全質量に対する質量%を示す。各弗化物の化学式の係数は、各弗化物の化学式量から算出したものである。なお、弗化物の種類がこれらの場合であるとして、そのときの含有量は、フラックス入りカットワイヤの全質量に対する質量割合で0.10%以上含まれるようにするのがよく、好ましくは0.5%以上、より好ましくは1.0%以上、更に好ましくは2.0%以上であるのがよい。
ここで、本発明におけるフラックス入りカットワイヤでは、フラックスが鋼製外皮の内部(内側)に充填されているため、弗化物が多量に含まれていても溶接中のスパッタ量は増大しない。そのため、拡散性水素量を低減する観点から、弗化物の質量割合の上限は特に制限されないことになる。但し、鋼製外皮の存在と、それによりフラックスの充填がなされることを考慮すると、実質的に、弗化物の質量割合の上限はF換算値で71.80%であると言える。また、この上限はF換算値で60%であってもよく、F換算値で55%であってもよく、F換算値で50%であってもよい。
また、本発明におけるフラックス入りカットワイヤは、弗化物以外に、例えば、溶接金属の化学成分や炭素当量(Ceq)等を制御するための合金成分を含有させてもよい(これらの化学成分や合金成分を単に「化学成分」という。)。その際、例えば、金属粉や合金粉は、溶接の際に鋼製外皮と同様に溶融する。そのため、弗化物以外の化学成分は、例えば、金属粉や合金粉の形態でフラックスに含めるようにしてもよく、鋼製外皮の形態で含まれるようにしてもよく、鋼製外皮の外表面にめっきとして含まれるようにしてもよく、いずれも同様の効果を奏する。なお、弗化物以外のこれらの化学成分は、カットワイヤではないフラックス入りワイヤの場合のように、アーク安定性や全姿勢溶接性が求められないことから、酸化物や炭酸塩の状態である必要がなく、上記のような金属粉や合金粉の形態で含有させることができる。
具体的には、本発明のフラックス入りカットワイヤは、フラックス入りカットワイヤの全質量に対する質量割合で、弗化物をF換算値で0.01%以上含むと共に、任意成分としてC、Si、Mn、Cu、Ni、Cr、Mo、Nb、V、Ti、Al、B、及びBiからなる群から選ばれるいずれか1種又は2種以上の化学成分を含み、これらの化学成分の含有量はC:0.120%以下、Si:2.00%以下、Mn:3.50%以下、Cu:5.00%以下、Ni:5.00以下、Cr:5.00%以下、Mo:5.00%以下、Nb:0.50%以下、V:0.50%以下、Ti:0.50%以下、Al:1.70%以下、B:0.020%以下、及びBi:0.030%以下であり、また、P及びSからなる不純物元素の含有量がそれぞれP:0.030%以下及びS:0.020%以下であるのが好ましい。なお、本発明においては、上述した弗化物を含むことにより、これら任意の化学成分を含むことなく、拡散性水素量の低減を図ることができるため、これら任意の化学成分のそれぞれの含有量の下限値は0%である。
このうち、任意成分としての化学成分において、「C:0.120%以下」におけるCは、固溶強化によって溶接金属の耐力及び引張強さを確保するために重要な元素である。但し、フラックス入りカットワイヤにおけるC含有量が0.120%を超えると、溶接金属中のC含有量が過剰になり、溶接金属の耐力及び引張強さが過度に上昇して、溶接金属の靭性が低下する。溶接金属の靭性、耐力、及び引張強さの全てを安定的に確保するためには、このC含有量の上限値を0.10%にするのが好ましい。一方、C含有量の下限は0%であるが、必要に応じて、C含有量の下限を0.010%、0.020%、0.030%、0.040%、又は0.050%としてもよい。同様に、C含有量の上限を0.100%、0.090%、0.080%、又は0.070%としてもよい。
「Si:2.00%以下」におけるSiは、脱酸元素であり、溶接金属の酸素量を低減して溶接金属の清浄度を高める働きを有する。フラックス入りカットワイヤにおけるSi含有量が2.00%を超える場合、Siが溶接金属の靱性を劣化させる。溶接金属の靭性を安定して確保するために、このSi含有量の上限は1.90%、1.80%、1.70%、又は1.50%としてもよい。一方、Si含有量の下限は0%であるが、必要に応じて、Si含有量の下限を0.01%、0.02%、0.03%、又は0.04%としてもよい。
「Mn:3.50%以下」におけるMnは、溶接金属の焼入性を確保して溶接金属の強度を高めるために必要な元素であるが、0%でもよい。溶接金属の強度を高めるために、フラックス入りカットワイヤにおけるMn含有量の下限値を0.50%、0.75%、1.0%としてもよい。一方、このMn含有量が3.50%を超える場合、溶接金属の粒界脆化感受性が増加して溶接金属の靱性が劣化する。従って、Mn含有量の上限値は3.50%であるが、Mn含有量の上限値を3.00%、2.50%、又は2.00%としてもよい。
「Cu:5.00%以下」におけるCuは、溶接金属の強度と靭性を向上させる効果を有するが、0%でもよい。Cuは、フラックス入りカットワイヤにおける鋼製外皮の表面のめっきに含まれてもよく、フラックスに単体又は合金として含まれてもよい。このCu含有量は、鋼製外皮やフラックスに含まれるCuと表面のめっきに含まれるCuとの合計量である。このCu含有量が5.00%を超えると、溶接金属の靭性が低下する。Cu含有量の上限値は、好ましくは4.00%、3.00%、又は2.00%である。一方、Cu含有量の下限値は、好ましくは0.05%、0.1%、又は0.15%である。
「Ni:5.00%以下」におけるNiは必須成分ではないので、フラックス入りカットワイヤでのNi含有量の下限値は0%である。また、このNi含有量が5.00%を超えると、凝固割れが起こり易くなる。Ni含有量の上限値は、好ましくは4.00%、3.00%、又は2.00%である。一方で、Ni含有量の下限値は、好ましくは0.05%、0.1%、又は0.15%である。
「Cr:5.00%以下」におけるCrは必須成分ではないので、フラックス入りカットワイヤでのCr含有量の下限値は0%である。一方、Crは、溶接金属の焼入性を高めるので、溶接金属の強度を向上させるために有効な元素である。その効果を十分に得るためには、Cr含有量を0.10%以上とすることが好ましい。また、Cr含有量が5.00%を超える場合、溶接金属が過剰に硬化し、溶接金属の靱性を劣化させる。Cr含有量の上限値は、好ましくは4.00%、3.00%、2.00%、又は1.00%である。
「Mo:5.00%以下」におけるMoは必須成分ではないので、フラックス入りカットワイヤでのMo含有量の下限値は0%である。一方、Moは、溶接金属の焼入れ性を向上させる効果を有するので、溶接金属の高強度化に有効な元素である。その効果を得るためには、Mo含有量を0.01%以上とすることが好ましい。しかしながら、このMo含有量が5.00%を超える場合、溶接金属の靭性が劣化することがあるので、Mo含有量は5.00%以下とする。Mo含有量の上限値は、好ましくは4.00%、3.00%、2.00%、1.00%、又は0.60%である。
「Nb:0.50%以下」におけるNbは必須成分ではないので、フラックス入りカットワイヤでのNb含有量の下限値は0%である。一方、Nbは、溶接金属において微細炭化物を形成し、この微細炭化物が溶接金属中で析出強化を生じさせるので、Nbは溶接金属の引張強さを向上させる。その効果を十分に得るためには、Nb含有量を0.005%以上とすることが好ましい。しかしながら、このNb含有量が0.50%を超えることは、Nbが溶接金属中で粗大な析出物を形成して溶接金属の靭性を劣化させるので、好ましくない。Nb含有量の上限値は、好ましくは0.40%、0.30%、0.20%、又は0.10%である。
「V:0.500%以下」におけるVは必須成分ではないので、フラックス入りカットワイヤでのV含有量の下限値は0%である。一方、Vは溶接金属の焼入れ性を向上させるので、溶接金属の高強度化に有効な元素である。その効果を十分に得るためには、V含有量を0.010%以上とすることが好ましい。このV含有量が0.500%を超える場合、溶接金属中のV炭化物の析出量が過剰となり、溶接金属が過剰に硬化し、溶接金属の靭性を劣化させる。V含有量の上限値は、好ましくは0.400%、0.300%、0.200%、又は0.100%である。
「Ti:0.50%以下」におけるTiは必須成分ではないので、フラックス入りカットワイヤでのTi含有量の下限値は0%である。一方、Tiは脱酸元素であり、溶接金属中の酸素量を低減させる効果がある。また、フラックス入りカットワイヤに含まれるTiは、溶接金属中に僅かに残留して固溶Nを固定するので、固溶Nが溶接金属の靱性に及ぼす悪影響を緩和する効果を有する。そのため、フラックス入りカットワイヤが0.01%以上のTiを含有してもよい。しかしながら、Ti含有量が0.50%を越えると、溶接金属において過度な析出物の生成による靱性劣化が生じるおそれがある。ここで、フラックス入りカットワイヤにTiを含有させる場合、フェロチタン(鉄とチタンとの合金)をフラックス中に含有させることが考えられる。Ti含有量の上限値は、好ましくは0.40%、0.30%、0.20%、又は0.10%である。
「Al:1.70%以下」におけるAlは脱酸元素であり、Siと同様に、溶接金属中の酸素量を低減させ、溶接金属の清浄度向上効果を有する。フラックス入りカットワイヤにおけるAl含有量が1.70%を超える場合、Alが窒化物及び酸化物等を形成して、溶接金属の靱性を減少させる。そのため、フラックス入りカットワイヤにおけるAl含有量の上限を1.70%とする。この上限値は、好ましくは1.60%、1.50%、1.40%、又は1.30%である。Al含有量の下限値は、好ましくは0.005%、0.010%、0.050%、0.100%、0.150%又は0.200%である。
「B:0.020%以下」におけるBは必須成分ではないので、フラックス入りカットワイヤでのB含有量の下限値は0%である。一方、Bは、溶接金属において固溶Nと結びついてBNを形成するので、固溶Nが溶接金属の靭性に及ぼす悪影響を減じる効果を有する。また、Bは溶接金属の焼入性を高めるので溶接金属の強度を向上させる効果も有する。そのため、フラックス入りカットワイヤが0.0005%以上のBを含有してもよい。しかしながら、このB含有量が0.020%超になると、溶接金属中のBが過剰となり、粗大なBN及びFe23(C、B)等のB化合物を形成して溶接金属の靭性を劣化させるので、好ましくない。B含有量の上限値は、好ましくは0.015%、0.010%、0.005%、0.003%、又は0.001%である。
「Bi:0.030%以下」におけるBiは必須成分ではないので、フラックス入りカットワイヤでのBi含有量の下限値は0%である。一方、Biは、スラグの剥離性を改善する元素である。その効果を十分に得るために、Bi含有量を0.005%以上、0.010%以上又は0.012%以上とすることが好ましい。一方で、Bi含有量が0.030%を超える場合、溶接金属に凝固割れが発生しやすくなるので、Bi含有量の上限値は0.030%である。このBi含有量の上限値は、好ましくは0.025%、0.020%、又は0.010%である。
また、前記不純物元素として存在する「P:0.030%以下」におけるPは、溶接金属の靱性を低下させるので、フラックス入りカットワイヤ中のP含有量は極力低減させる必要がある。そのため、P含有量の下限値は0%である。また、このP含有量が0.030%以下であれば、Pの靱性への悪影響が許容できる範囲内となる。溶接金属の凝固割れを防止するために、より好適には、このP含有量は0.020%以下、0.015%以下、又は0.010%以下である。
また、前記不純物元素として存在する「S:0.020%以下」におけるSは、溶接金属中に過大に存在すると、溶接金属の靱性と延性を共に劣化させるので、フラックス入りカットワイヤにおけるS含有量は極力低減させるのが望ましい。そのため、このS含有量の下限値は0%である。また、S含有量が0.020%以下であれば、溶接金属の靱性及び延性にSが及ぼす悪影響が許容できる範囲内となる。より好適には、0.010%以下、0.008%以下、0.006%以下、又は0.005%以下である。
本発明におけるフラックス入りカットワイヤは、上述したような化学成分を含んでもよく、また、含まなくてもよいが、これらの化学成分と前記弗化物及び不純物元素のほかに、Fe及び不純物を含む。このうち、Feとしては、鋼製外皮に加えて、鉄粉を含むようにしてもよい。すなわち、フラックス入りカットワイヤにおけるフラックスの充填率の調整のために、或いは、溶着効率の向上のために、必要に応じてフラックス中に鉄粉を含有させるようにしてもよい。この鉄粉の含有量は特に制限されないが、鉄粉の表層に付着した酸素が溶接金属の酸素量を増加させて、靭性を低下させることも考えられることから、最大でも、フラックス入りカットワイヤの全質量に対する質量割合で90.0%未満、望ましくは80.0%未満にするのがよい。鉄粉の含有量の上限値については8.0%、6.0%、4.0%、2.0%、又は1.0%に制限してもよい。勿論、本発明に係るフラックス入りカットワイヤにおいて鉄粉は必須ではないので、鉄粉の含有量の下限値は0%である。
また、不純物については、フラックス入りカットワイヤを工業的に製造する際に、原料に由来して、又は、製造工程の種々の要因によって混入する成分である。これらは、本発明に係るフラックス入りカットワイヤに悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。
更に、本発明におけるフラックス入りカットワイヤは、上述された弗化物、化学成分、及び不純物元素以外の他の金属元素の酸化物や炭酸塩等も、その特性を損なわない範囲で含有してもよい。この場合、これらの酸化物や炭酸塩は、上述された弗化物、化学成分、不純物元素、並びにFe及び不純物の含有量には含まれないものとする。但し、これらの酸化物や炭酸塩については、それを含有する場合を排除するものではないことを表すものである。すなわち、本発明におけるフラックス入りカットワイヤは、前述の弗化物をF換算値で所定の割合で含むと共に、前述の化学成分及び不純物元素の含有量がそれぞれ所定の範囲であり、残部がFe及び不純物、又は、Fe、不純物、及びこれらの酸化物や炭酸塩からなる化学組成を有するものである。好ましくは、前述の弗化物をF換算値で所定の割合で含むと共に、前述の化学成分及び不純物元素の含有量がそれぞれ所定の範囲であり、残部がFe及び不純物からなる化学組成を有する。
更に、上述した事項が満たされる限り、本発明に係るフラックス入りカットワイヤの鋼製外皮は特に制限されないが、例えば、鋼製外皮が軟鋼外皮からなる場合、その外皮の化学組成は、C:0.1%以下、Si:0.10%以下、Mn:3.00%以下、P:0.030%以下、S:0.020%以下、Al:0.1%以下、及びN:0.030%以下であり、残部が鉄及び不純物であるものを挙げることができる。
本発明におけるフラックス入りカットワイヤは、鋼製外皮にフラックスが充填されたワイヤ形状の状態で、所定の長さに細かく裁断することで得ることができる。カットされたフラックス入りカットワイヤの形状について特に制限はなく、細径鋼素線を所定の長さに細かく裁断して、断面が円形をなした一般的なカットワイヤと同程度にすることができるが、フラックスが充填されることなどを考慮すると、その直径としてはφ1.0~φ3.0mmであるのがよい。ちなみに、従来のカットワイヤの直径はφ1.0~φ2.0mm程度である。一方で、フラックス入りカットワイヤの長さは0.5~3.5mmであるのがよい。一般的なカットワイヤでは、その長さはワイヤ径の0.5~2.0倍相当である。
また、フラックスの充填率については、上述した条件が満たされる限り、特に制限されない。例えば、フラックス入りカットワイヤの全質量に対する質量割合で、フラックスの充填率の下限値を10%、又は12%としてもよい。また、フラックスの充填率の上限値を80%、又は90%としてもよい。
ここで、溶接金属の拡散性水素量を低減するために、好ましくは、フラックス入りカットワイヤに含まれる水素量が、フラックス入りカットワイヤの全質量に対して12ppm以下であるのがよい。この水素量は、フラックス入りカットワイヤの製造時に侵入するほか、フラックス入りカットワイヤの保管の間に水分が侵入することにより増大するおそれがあることから、カットワイヤ製造後から使用までの期間が長い場合には、水分の浸入を防止しながら保管することが望ましい。
本発明におけるフラックス入りカットワイヤを製造するにあたり、その手順等は特に制限されないが、裁断する前のフラックスが充填されたワイヤを製造する方法として、以下のような例を示すことができる。
先ず、鋼製外皮の継目が溶接されてスリット状の隙間がないシームレス形状のフラックス入りカットワイヤの製造方法としては、弗化物や化学成分等が所定の範囲内になるようにフラックスを調製する工程のほか、鋼帯を長手方向に送りながら、成形ロールを用いて成形してU字型のオープン管を得る工程と、オープン管の開口部を通じてオープン管内にフラックスを供給する工程と、オープン管の開口部の相対するエッジ部を突合せ溶接してシームレス管を得る工程と、シームレス管を伸線して所定の線径を有するフラックス入りのワイヤを得る工程と、伸線する工程の途中、又は完了後にフラックス入りのワイヤを焼鈍する工程とを備える。その後、ワイヤを所定の長さに裁断することで、フラックス入りカットワイヤを得ることができる。
ここで、突合せ溶接は、電縫溶接、レーザ溶接、又はTIG溶接等により行われる。また、伸線工程の途中又は伸線工程の完了後に、ワイヤ中の水分を除去するために焼鈍を行う。好ましくは、ワイヤに含まれるH含有量を12ppm以下とするために、焼鈍温度は650℃以上とし、焼鈍時間は4時間以上とするのがよい。但し、フラックスの変質を防ぐために、焼鈍温度は900℃以下とする。なお、突合せ溶接のかわりに、鋼製外皮の隙間をろう付けしても、スリット状の隙間がないワイヤを得ることができる。
また、鋼製外皮の継目を溶接せずに、スリット状の隙間を有したままのフラックス入りカットワイヤを得るようにしてもよい。その場合には、オープン管の端部を突き合わせ溶接してシームレス管を得る工程のかわりに、オープン管を成形して、オープン管の端部を突き合わせてスリット状の隙間有りの管を得る工程を有する点以外は、シームレス形状を有するワイヤの製造方法と同様である。スリット状の隙間を有するワイヤの製造方法は、突き合わせられたオープン管の端部をかしめる工程を更に備えてもよい。スリット状の隙間を有するワイヤの製造方法では、スリット状の隙間を有した状態で管を伸線する。
本発明に係るフラックス入りカットワイヤは、上述したように、鋼製外皮の継目が溶接されてスリット状の隙間がないシームレス形状のワイヤを裁断したものであってもよく、鋼製外皮の継目が溶接されずに、スリット状の隙間を有したワイヤを裁断したものであってもよいが、好ましくは、鋼製外皮にスリット状の隙間がないワイヤをカットしたフラックス入りカットワイヤであるのがよい。溶接時に溶接部に侵入するH(水素)は、溶接金属及び被溶接材中に拡散し、応力集中部に集積して低温割れの発生原因となる。Hの供給源は様々であるが、溶接部の清浄度や溶接条件が厳密に管理された状態であれば、フラックス入りカットワイヤ中に含まれる水分(H2O)がHの供給源となり得て、この水分の量が溶接継手の拡散性水素量に影響する場合がある。そのため、スリット状の隙間がないシームレス形状のワイヤを裁断したものが望ましいが、スリット状の隙間を有したワイヤを裁断したものである場合には、例えば、真空包装して保管したり、乾燥した状態を保持できる容器内でフラックス入りカットワイヤを保管するようにすればよい。
また、本発明におけるフラックス入りカットワイヤは、その表面に油(潤滑剤)が塗布されたものであってもよい。充填材表面に塗布された潤滑剤は、保管時の錆発生を抑える効果がある。このような潤滑剤としては、様々な種類のもの(例えばパーム油等の植物油)を使用できるが、溶接金属の低温割れを抑制するためには、H(水素)を含有しないパーフルオロポリエーテル油(PFPE油)を使用するのが好ましい。なお、フラックス入りカットワイヤが、その表面にめっきを備えたものである場合には、潤滑剤はめっきの表面に塗布される。
〔溶接継手の製造方法〕
次に、上述したフラックス入りカットワイヤを用いて溶接継手を製造するにあたり、本発明では、母材間に設けた開先内の少なくとも一部にフラックス入りカットワイヤを充填して溶接するフラックス入りカットワイヤ溶接工程を備えるようにする。つまり、溶接継手を製造するにあたり、1パスから最終パスのいずれか1つ以上において、本発明に係るフラックス入りカットワイヤを母材の開先内に充填して溶接する。溶接が1パスのみである場合、その1パスにおいて本発明のフラックス入りカットワイヤを用いるようにする。
なかでも、このフラックス入りカットワイヤ溶接工程については、少なくとも開先内の初層に本発明に係るフラックス入りカットワイヤを充填して、溶接を行うのが好ましい。すなわち、低温割れの発生確率が高い開先内の初層にフラックス入りカットワイヤを充填することで、例えば予熱温度を50℃以下に下げることができるなど、予熱作業の負荷を確実に低減することができ、或いは、予熱作業自体を不要にすることができる。
図1及び図2には、それぞれ本発明におけるフラックス入りカットワイヤ溶接工程の一例が示されている。このうち、図1は、母材1と母材2との間に設けられた開先3内の一部にフラックス入りカットワイヤ4を充填して、溶接を行う例である。先ず、図1(a)に示されるように、母材1、2の裏面に裏当材5を取り付けた上で、開先3内の初層に本発明に係るフラックス入りカットワイヤ4を充填する。次いで、図1(b)に示したように、充填したフラックス入りカットワイヤ4の略中心部上に溶接用ワイヤ6を配置し、アークを発生させて溶接を行う。
ここで、図1(b)における溶接により、母材1及び母材2の温度が、予熱作業を行う場合の予熱温度(予熱相当温度)に達していれば、例えば100℃に達していれば、低温割れのおそれが排除されることから、以降の溶接では、本発明のフラックス入りカットワイヤを用いずに、溶接継手を製造するようにしてもよい。もし、母材1及び母材2が、予熱相当温度に達していない場合には、図1(c)に示したように、初層に充填したフラックス入りカットワイヤ4を含んで得られた溶接金属7の上に、再度、本発明のフラックス入りカットワイヤ4を散布して開先3内に充填し、溶接用ワイヤ6を配置して溶接を行う。以降、これを繰り返して、母材1及び母材2の温度が予熱相当温度に達するまで、本発明のフラックス入りカットワイヤ4を充填して溶接し、予熱相当温度に達したところで、先の場合と同様に、本発明のフラックス入りカットワイヤを用いずに、溶接するようにすればよい。
図1に示したフラックス入りカットワイヤ溶接工程の例は、開先内の初層にフラックス入りカットワイヤを充填して溶接する1層盛りの溶接か、又は、開先内の初層と2層目以降にフラックス入りカットワイヤを充填して溶接する多層盛りの溶接からなる場合であって、少なくとも母材の温度が100℃に達するまで、フラックス入りカットワイヤを充填して溶接するものである。つまり、開先内の初層溶接に本発明に係るフラックス入りカットワイヤを用いることで、溶接金属の拡散性水素量を減らすことができる。しかも、このフラックス入りカットワイヤ溶接工程が予熱作業を兼ねることになることから、予熱作業を不要にしたり、予熱作業の負担を大幅に減らすことができる。
また、図2に示したように、本発明に係るフラックス入りカットワイヤ溶接工程は、開先内にフラックス入りカットワイヤを充填して1パスで溶接するフラックス入りカットワイヤ充填1パス溶接からなるようにしてもよい。すなわち、図2(a)に示したように、母材1、2の裏面に裏当材5を取り付けた上で、この図2の例では、開先3内のほぼ全て、例えば、開先内高さの80%程度を充填するように、本発明に係るフラックス入りカットワイヤ4を散布する。次いで、図2(b)のように、充填したフラックス入りカットワイヤ4の略中心部上に溶接用ワイヤ6を配置し、アークを発生させて溶接することで、図2(c)に示したように、フラックス入りカットワイヤ4を含んだ溶接金属7によって溶接継手を製造する。
図2に示したフラックス入りカットワイヤ溶接工程の例では、開先内のほぼ全てに本発明に係るフラックス入りカットワイヤが用いられるため、やはり、予熱作業を不要にしたり、予熱作業の負担を大幅に減らすことができる。
これらの図1、図2では、母材間の開先がいわゆるV型開先の例を示したが、本発明においてはこの開先形状に制限はなく、V型以外にも、例えばI型、レ型、K型、J型、X型、U型、H形等の開先形状や、これら以外の任意の形状の開先であってもよい。また、本発明においては、片面溶接の場合であってもよく、両面溶接の場合であっても適用可能である。更には、図1の例のように多層盛りの溶接の場合、各層を2パス以上に分けて溶接するようにしてもよい。
本発明において用いられる溶接方法(溶接手段)については特に制限されないが、開先内に充填したフラックス入りカットワイヤを確実に溶かすために、好ましくは、サブマージアーク溶接であるか、又はガスシールドアーク溶接であるのがよい。ただし、立向溶接や上向溶接では、フラックス入りカットワイヤを開先内に充填することが困難な場合があるため、溶接姿勢は下向又は横向きであるのが望ましい。
また、本発明における溶接継手の製造方法では、母材の種類や形状等は特に制限されないが、低温割れが問題となり、予熱作業に負担がかかるような場面での適用が最も効果的である。すなわち、代表的には、引張強さが780MPa以上1500MPa以下の高強度鋼材からなる母材の溶接である。また、厚さが50mm以上250mm以下の極厚鋼材の場合には、予熱作業の負担が特に大きくなることから、特に、極厚の高強度鋼材が母材となる場合に本発明を適用するのは極めて効果的であると言える。なお、開先を形成する母材の組み合わせは任意であり、同じ種類同士の母材であってもよく、互いに異なる母材であっても構わない。
また、一般に、溶接継手の製造方法では、母材鋼板(母材)と、溶接金属及び溶接熱影響部から構成される溶接部とを備えた溶接継手が得られるところ、本発明では、所定の弗化物を含んだフラックス入りカットワイヤを開先充填材として用いることから、好適には、溶接金属の拡散性水素量が1.0ml/100g以下の溶接継手を得ることができ、特に、所定の化学成分を更に含んだフラックス入りカットワイヤを用いることで、高強度、高靱性の溶接継手が得られるようになる。
(実施例)
次に、実施例等に基づき本発明をより具体的に説明する。但し、下記の実施例は本発明を限定する性質のものではなく、前・後記の趣旨に徹して設計変更することはいずれも本発明の技術的範囲に含まれるものである。
本発明例及び比較例のフラックス入りカットワイヤ(試料番号1~47)は、次の方法により製造した。
先ず、鋼帯を長手方向に送りながら、成形ロールを用いて成形してU型のオープン管を得た。このオープン管の開口部を通じてオープン管内にフラックスを供給し、オープン管の開口部の相対するエッジ部を突合わせ溶接してシームレス管を得た。このシームレス管を伸線して、スリット状の隙間がないフラックス入りのワイヤを得た。但し、その際に、一部の試料は、シーム溶接をしないスリット状の隙間有りの管とし、それを伸線してワイヤとした。このようにして、最終の充填材径がφ2.0mmのフラックス入りのワイヤを試作した。
なお、これらワイヤの伸線作業の途中で、フラックス入りのワイヤを650~950℃の温度範囲内で4時間以上焼鈍した。試作後、一部のワイヤ表面には潤滑剤を塗布した。そして、製造したフラックス入りのワイヤを長さが2.0mmになるように裁断して、フラックス入りカットワイヤの各試料を準備した。これらフラックス入りカットワイヤの構成を表1及び表2に示す。
Figure 2022061805000002
Figure 2022061805000003
表1~2に開示された各弗化物、任意成分としての化学成分及び鉄粉(Fe粉)、並びに不純物元素として含まれる各元素の含有量の単位は、フラックス入りカットワイヤの全質量に対する質量割合(質量%)である。表中で開示されたフラックス入りカットワイヤのF換算値は、フラックス入りカットワイヤ中の弗化物に含まれる弗素(F)の量について、フラックス入りカットワイヤの全質量に対する質量%で示すものであり、上述した式Aによって求められた値である。
また、フラックス入りカットワイヤの化学組成における残部(すなわち、表1及び表2に開示された各元素以外の成分)は、鉄(意図的に添加されたFe粉を含む。)及び不純物である。また、各フラックス入りカットワイヤのワイヤ構造は表1に示したとおりであり、更に、備考欄で特に断りが無い限り、油は塗布していない。一方で、表2に開示されたフラックス入りカットワイヤに化学成分として含まれる各元素は、鋼製外皮又は金属粉の形態で含まれるものである。なお、表において、化学成分や化合物などの含有量に係る表中の空欄は、その化学成分や化合物などが意図的に添加されていないことを意味する。また、弗化物や化学成分については不可避的に混入されることもある。
発明例及び比較例のフラックス入りカットワイヤは、以下に説明する方法により評価した。
先ず、i)耐低温割れ性の評価として、板厚が50mmである引張強さ780MPa級鋼に対して、表3の溶接条件1で溶接を行い、JIS Z3159:1993に準じてH型拘束割れ試験で評価した。開先形状は、図3に示すY型として、スリット長さ300mmとした。また、開先3内でのフラックス入りカットワイヤ4の散布厚さは8mmとした。更には、溶接フラックスとして日鉄溶接工業(株)製NB-250Hを使用し、溶接ワイヤには日鉄溶接工業(株)製Y-80M(ワイヤ径φ4.8mm)を使用した。
また、ii)開先内の初層における耐低温割れ性の評価として、板厚が50mmである引張強さ780MPa級鋼に対して、表3の溶接条件2で溶接を行った。その際、開先形状は、図4に示すV型として、開先3内でのフラックス入りカットワイヤ4の散布厚さは2mmとした。更には、溶接ワイヤは日鉄溶接工業(株)製Y-82C(ワイヤ径φ1.2mm)を使用し、裏当材5には日鉄溶接工業(株)製SB-41を使用した。なお、これらの評価における溶接条件1、2では、いずれも母材(鋼材)1、2の予熱作業は行わずに試験を実施した。
Figure 2022061805000004
また、iii)溶接金属の拡散性水素量について、次の評価を行った。すなわち、溶接金属の拡散性水素量を評価する際の溶接条件は、表3に記載の溶接条件3とした。また、試験板及びエンドタブに対して発明例及び比較例のフラックス入りカットワイヤを2mmの厚さとなるように散布し、その後、溶接フラックスを10mmの厚さとなるように散布した。ここで、溶接フラックスとして日鉄溶接工業(株)製NB-250Hを使用し、溶接ワイヤには日鉄溶接工業(株)製Y-80M(ワイヤ径φ4.0mm)を使用した。また、溶接金属の拡散性水素量の測定は、JIS Z 3118:2007(鋼溶接部の水素量測定方法)に準拠したガスクロマトグラフ法によって実施した。溶接金属の拡散性水素量が1.0ml/100g以下となるフラックス入りカットワイヤについて、拡散性水素量に関して合格とした。
更には、i)H型溶接割れ試験後、及び、ii)初層における耐低温割れ性の評価後において、ビード表面の凹凸について、ビード長さ25mmピッチで高低差を測定し、ビード形状を評価した。このとき、i)H型溶接割れ試験後、ii)初層における耐低温割れ性の評価後ともに、ビード形状の表面凹凸が3mm以下である場合を良好(○)とし、3mm超の場合を不良(×)として評価した。そして、ii)初層における耐低温割れ性とビード形状の評価について、「割れ無し」であり、かつビード形状が良好(○)である場合を総合判定で合格とし、1つ以上で不良(×)と評価された場合には総合判定を不合格とした。
上述の方法により評価した各試験結果は表4に示されている。発明例のフラックス入りカットワイヤを用いて溶接を行った場合、鋼材の予熱が行われなくても、H型溶接割れ試験、初層における耐低温割れ性の評価のいずれの断面においても断面割れ無し(断面割れが発生していないこと)であった。つまり、発明例のフラックス入りカットワイヤが極めて高い耐低温割れ性を有していることが確認された。また、表4の試験結果に示されているように、発明例のフラックス入りカットワイヤを用いることで、ビード形状評価が合格であり、良好な溶接作業性を示した。一方、比較例のフラックス入りカットワイヤを用いた場合には、H型溶接割れ試験、初層における耐低温割れ性の評価のいずれの断面においても断面割れが有り(断面割れが発生していること)であった。
Figure 2022061805000005
以上のとおり、本発明によれば、極厚の高強度鋼板を溶接する場合であっても、予熱作業の負担を減らして、低温割れを防ぐことができるようになり、しかも、ヒュームやスパッタによる作業環境の問題を極力抑えながら、良好なビード形状を有する溶接することができ、コスト性においても有利に溶接継手を製造することができるようになる。
1、2:母材(鋼材)、3:開先、4:フラックス入りカットワイヤ、5:裏当材、6:溶接用ワイヤ、7:溶接金属。

Claims (13)

  1. 母材間に設けた開先内にカットワイヤを充填して溶接する溶接継手の製造方法であって、
    鋼製外皮と、この鋼製外皮の内部に充填されて弗化物を含むフラックスとを有したフラックス入りカットワイヤを、前記開先内の少なくとも一部に充填して溶接するフラックス入りカットワイヤ溶接工程を備えたことを特徴とする溶接継手の製造方法。
  2. 前記弗化物が、CaF、MgF、LiF、NaF、KZrF、KSiF、及びNaAlFからなる群から選ばれる1種又は2種以上である請求項1に記載の溶接継手の製造方法。
  3. 前記フラックス入りカットワイヤは、該フラックス入りカットワイヤの全質量に対する質量割合で、
    前記弗化物をF換算値で0.01質量%以上含むと共に、C、Si、Mn、Cu、Ni、Cr、Mo、Nb、V、Ti、Al、B、及びBiからなる化学成分の含有量がC:0.120%以下、Si:2.00%以下、Mn:3.50%以下、Cu:5.00%以下、Ni:5.00以下、Cr:5.00%以下、Mo:5.00%以下、Nb:0.50%以下、V:0.50%以下、Ti:0.50%以下、Al:1.70%以下、B:0.020%以下、及びBi:0.030%以下であり、また、
    P及びSからなる不純物元素の含有量がP:0.030%以下及びS:0.020%以下である請求項1又は2に記載の溶接継手の製造方法。
  4. 前記フラックス入りカットワイヤ溶接工程が、開先内に前記フラックス入りカットワイヤを充填して1パスで溶接するフラックス入りカットワイヤ充填1パス溶接からなる請求項1~3のいずれかに記載の溶接継手の製造方法。
  5. 前記フラックス入りカットワイヤ溶接工程が、開先内の初層に前記フラックス入りカットワイヤを充填して溶接する1層盛りの溶接、又は、開先内の初層と2層目以降に前記フラックス入りカットワイヤを充填して溶接する多層盛りの溶接からなり、少なくとも前記母材の温度が予熱相当温度に達するまで行われるものである請求項1~3のいずれかに記載の溶接継手の製造方法。
  6. 前記溶接の手段がサブマージアーク溶接又はガスシールドアーク溶接である請求項1~5のいずれかに記載の溶接継手の製造方法。
  7. 前記母材は、引張強さが780MPa以上の高強度鋼材からなる請求項1~6のいずれかに記載の溶接継手の製造方法。
  8. 前記母材は、厚さが50mm以上の極厚鋼材からなる請求項1~7のいずれかに記載の溶接継手の製造方法。
  9. 溶接継手を製造する際に母材間に設けた開先内に充填する開先充填用のカットワイヤであって、鋼製外皮と、この鋼製外皮の内部に充填されて弗化物を含むフラックスとを有することを特徴とする開先充填用のフラックス入りカットワイヤ。
  10. 前記弗化物が、CaF、MgF、LiF、NaF、KZrF、KSiF、及びNaAlFからなる群から選ばれる1種又は2種以上である請求項9に記載の開先充填用のフラックス入りカットワイヤ。
  11. 該フラックス入りカットワイヤの全質量に対する質量割合で、
    前記弗化物をF換算値で0.01質量%以上含むと共に、C、Si、Mn、Cu、Ni、Cr、Mo、Nb、V、Ti、Al、B、及びBiからなる化学成分の含有量がC:0.120%以下、Si:2.00%以下、Mn:3.50%以下、Cu:5.00%以下、Ni:5.00以下、Cr:5.00%以下、Mo:5.00%以下、Nb:0.50%以下、V:0.50%以下、Ti:0.50%以下、Al:1.70%以下、B:0.020%以下、及びBi:0.030%以下であり、また、
    P及びSからなる不純物元素の含有量がP:0.030%以下及びS:0.020%以下である請求項9又は10に記載の開先充填用のフラックス入りカットワイヤ。
  12. 前記母材は、引張強さが780MPa以上の高強度鋼材からなる請求項9~11のいずれかに記載の開先充填用のフラックス入りカットワイヤ。
  13. 前記母材は、厚さが50mm以上の極厚鋼材からなる請求項9~12のいずれかに記載の開先充填用のフラックス入りカットワイヤ。
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