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JP2020015092A - 2相ステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤ、溶接方法および溶接金属 - Google Patents

2相ステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤ、溶接方法および溶接金属 Download PDF

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JP2020015092A
JP2020015092A JP2019095052A JP2019095052A JP2020015092A JP 2020015092 A JP2020015092 A JP 2020015092A JP 2019095052 A JP2019095052 A JP 2019095052A JP 2019095052 A JP2019095052 A JP 2019095052A JP 2020015092 A JP2020015092 A JP 2020015092A
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石▲崎▼ 圭人
Yoshihito Ishizaki
圭人 石▲崎▼
尚英 古川
Naohide Furukawa
尚英 古川
雅弘 井元
Masahiro Imoto
雅弘 井元
雄太 木下
Yuta Kinoshita
雄太 木下
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Abstract

【課題】−40℃を下回る低温においても低温靱性に優れる溶接金属を、溶接欠陥が生じることなく、また、良好な溶接作業性で得ることができる2相ステンレス鋼フラックス入りワイヤを提供する。【解決手段】Al、Mg、希土類元素、Ca、Zr、及びTiからなる群より選ばれる少なくとも1種の強脱酸元素と、金属酸化物および金属フッ化物を含むスラグ形成剤とを含有し、全質量あたりNiを8.00〜10.50質量%、Nを0.20〜0.40質量%、強脱酸元素を合計で0.50〜2.00質量%、及び金属フッ化物をフッ素換算値で1.30〜3.30質量%含有し、全質量あたりのNi含有量のN含有量に対する比率であるNi/Nが、20≦Ni/N≦40を満足する2相ステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤ。【選択図】なし

Description

本発明は、2相ステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤ、当該フラックス入りワイヤを用いた溶接方法および当該溶接方法によって作製される溶接金属に関する。
フェライト(α)とオーステナイト(γ)が微細に混在した組織を有する2相ステンレス鋼は、耐食性、強度、低温靱性、疲労強度等に優れていることから、化学プラント機器、石油または天然ガスの掘削用油井管、ケミカルタンカー、海洋構造物、橋梁等、様々な分野で用いられている。しかしながら、これらの溶接部(溶接金属)は溶接時の溶接材料、施工条件および溶接条件によって、その性能が大きく変わってしまうため、従来、溶接に係る材料や条件の選定には注意が必要であった。
特に海洋構造物は高い低温靱性が要求されることから、純Arガスを用いたTIG(Tungsten Inert Gas)溶接によって、介在物を極力少なくした清浄度の高い溶接金属を得ることで高い低温靱性を確保していた。しかしながら、TIG溶接では能率性が悪いという問題があり、より能率性の高いMAG(Metal Active Gas)溶接の適用が望まれるが、MAG溶接ではその清浄度の低さから低温靱性が確保し難いという課題があった。
上記課題に対し、特許文献1では、2相ステンレス鋼向けアーク溶接用フラックス入りワイヤを用いたMAG溶接において、ワイヤ全質量あたりのTi量、Al量および両者の関係を適切に制御することにより溶接金属中に残留する非金属介在物の組成を改質し、1.5μm以上の粗大介在物の個数密度を低下させることで、優れた低温靱性、耐孔食性および耐気孔性を得ることができることが開示されている。
また、特許文献2では、2相ステンレス鋼向けアーク溶接用フラックス入りワイヤを用いたMAG溶接において、ワイヤに適正な範囲でN、Cr及びMoを含有させた上で、Biの含有量を規制し、さらに希土類元素成分を適量添加することで、2相ステンレス鋼等の溶接部において、優れた耐孔食性を維持しながら、より高い低温靱性を得ることができることが開示されている。
特開2017−148821号公報 特開2011−125875号公報
前述のように、特許文献1に記載の発明は1.5μm以上の粗大介在物に着目し、その個数密度を低下せしめたものである。しかしながら、1.5μmを下回る介在物であっても、例えばその介在物が連結している場合や、集合している場合等には、粗大介在物と同じく、低温靱性を劣化させる要因となる。
よって、溶接金属の低温靱性をより安定かつ向上させるためには、溶接金属に含まれる介在物を大きさに関わらず減少させ、溶接金属の清浄度を高める必要がある。
また、特許文献2に記載の発明では、ワイヤに希土類元素成分を適量添加し、溶接金属の組織を微細化することによって、溶接金属の低温靱性を向上させているが、清浄度については着目されていない。また、TiO、SiO等を必須として、相当量の酸化物をワイヤに添加していることから、得られる溶接金属中には酸化物が介在物として残留する可能性が高い。
したがって、引用文献2では−40℃で低温靱性を評価しているが、それを下回る温度においては低温靱性の要求を満たすことは困難であると考えられる。
本発明は上記に鑑みてなされたものであって、その目的は、2相ステンレス鋼の溶接において、溶接割れと言ったような溶接欠陥が生じること無く、−40℃を下回る厳しい環境においても良好な低温靱性を有する溶接金属を、良好な溶接作業性で得ることができる2相ステンレス鋼フラックス入りワイヤ、当該ワイヤを用いた溶接方法、および当該溶接方法によって作製された溶接金属を提供することを目的とする。
上記の課題を解決する本発明の2相ステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤは、2相ステンレス鋼のガスシールドアーク溶接に用いる2相ステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤであって、Al、Mg、希土類元素、Ca、Zr、及びTiからなる群より選ばれる少なくとも1種の強脱酸元素と、金属酸化物および金属フッ化物を含むスラグ形成剤とを含有し、2相ステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤ全質量あたり
Niを8.00〜10.50質量%、
Nを0.20〜0.40質量%、
強脱酸元素を合計で0.50〜2.00質量%、及び
金属フッ化物をフッ素換算値で1.30〜3.30質量%含有し、
2相ステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤ全質量あたりのNi含有量のN含有量に対する比率であるNi/Nが、20≦Ni/N≦40を満足する。
本発明の2相ステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤの一態様は、2相ステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤ全質量あたり
Cを0.005〜0.020質量%、
Siを0.10〜1.00質量%、
Mnを0.40〜1.00質量%、
Crを21.0〜25.0質量%、及び
Moを2.50〜4.50質量%
からなる群から選ばれる少なくとも1種をさらに含有してもよい。
本発明の2相ステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤの一態様は、2相ステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤ全質量あたり
Pを0.020質量%以下(0質量%を含む)、
Sを0.020質量%以下(0質量%を含む)、
Alを0.700質量%以下(0質量%を含む)、
Mgを1.00質量%以下(0質量%を含む)、
Caを1.000質量%以下(0質量%を含む)、
希土類元素を合計で1.000質量%以下(0質量%を含む)、
Cuを1.00質量%以下(0質量%を含む)、
Liを0.500質量%以下(0質量%を含む)、
Naを0.500質量%以下(0質量%を含む)、
Kを0.500質量%以下(0質量%を含む)、
Zrを0.50質量%以下(0質量%を含む)、及び
Tiを0.50質量%以下(0質量%を含む)
からなる群から選ばれる少なくとも1種をさらに含有してもよい。
本発明の2相ステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤの一態様は、残部がFeおよび不可避不純物からなってもよい。
本発明の2相ステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤの一態様において、金属フッ化物は、BaFのみ、または、BaFと、LiF、NaF、KF、MgF、CaF、NaAlF、KSiF、及びSrFからなる群より選ばれる少なくとも1種とからなり、2相ステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤ全質量あたりBaFを5.50〜15.00質量%含有してもよい。
本発明の2相ステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤの一態様において、金属酸化物の含有量は、2相ステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤ全質量あたり2.50質量%以下であってもよい。
本発明の2相ステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤの一態様において、強脱酸元素およびスラグ形成剤はフラックスに含有され、2相ステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤのフラックス充填率が20〜40質量%であってもよい。
また、本発明の2相ステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤを用いた本発明のガスシールドアーク溶接方法は、2相ステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤ側の極性がマイナス、母材側の極性がプラスとなる正極性とし、シールドガス雰囲気中で溶接を行う。
本発明のガスシールドアーク溶接方法の一態様において、シールドガスはArを90体積%以上含有してもよい。
本発明のガスシールドアーク溶接方法の一態様において、シールドガスはArとOとの混合ガスであってもよい。
本発明のガスシールドアーク溶接方法の一態様において、シールドガスはArとCOとの混合ガスであってもよい。
また、本発明の溶接金属は、溶接金属全質量あたり
Cを0.010〜0.050質量%、
Siを0.10〜1.00質量%、
Mnを0.40〜1.40質量%、
Pを0.030質量%以下(0質量%を含む)、
Sを0.020質量%以下(0質量%を含む)、
Crを24.0〜27.0質量%、
Niを8.00〜12.00質量%、
Nを0.20〜0.30質量%、
Moを2.50〜4.50質量%、
Alを0.400質量%以下(0質量%を含む)、
Mgを0.30質量%以下(0質量%を含む)、
Caを0.200質量%以下(0質量%を含む)、
希土類元素を合計で0.200質量%以下(0質量%を含む)、
Cuを1.00質量%以下(0質量%を含む)、
Zrを0.20質量%以下(0質量%を含む)、
Tiを0.20質量%以下(0質量%を含む)、及び
Oを0.030質量%以下(0質量%を含む)含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなり、
含有する円相当直径が4μm以上である介在物の個数密度が330個/mm以下である。
本発明の溶接金属の一態様において、溶接金属全質量あたりのNi含有量のN含有量に対する比率であるNi/Nが、25≦Ni/N≦50を満足してもよい。
本発明の溶接金属の一態様において、含有する円相当直径が1.2μm以上である介在物の個数密度が500個/mm以下であり、かつ円相当直径が4μm以上である介在物の個数密度が20個/mm以下であってもよい。
本発明の2相ステンレス鋼フラックス入りワイヤ、及び当該ワイヤを用いた溶接方法によれば、溶接欠陥を抑制でき、−40℃を下回る低温においても低温靱性に優れる溶接金属を、良好な溶接作業性で得ることができる。また、本発明の溶接金属は、−40℃を下回る低温においても低温靱性に優れる。
図1は、溶接継手の開先形状を示す模式図である。
以下、本発明を実施するための形態について、詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
[2相ステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤ]
本実施形態の2相ステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤ(以下、単に「ワイヤ」ともいう。)は、筒状を呈する外皮と、その外皮の内側に充填されたフラックスとで構成される。なお、本実施形態のワイヤは、外皮に継目のないシームレスタイプ、外皮に継目のあるシームタイプのいずれの形態であってもよい。また、本実施形態のワイヤは、外皮の外側であるワイヤ表面に銅メッキが施されていてもよく、施されていなくてもよい。外皮の材質は特に問わず、軟鋼であってもステンレス鋼であってもよい。
本実施形態のワイヤの製造方法も特に限定されないが、例えば、まず外皮内にフラックスを充填し、次いで穴ダイスやローラダイスを用いて伸線することにより縮径し、所定の外径を有するワイヤを得ることができる。
本実施形態のワイヤの外径は特に限定されないが、ワイヤ生産性の観点から例えば1.2〜1.6mmとすることが好ましい
また、フラックス充填率も特に限定されないが、作業性の観点からは20〜40質量%であることが好ましい。なお、フラックス充填率はフラックスの質量のワイヤの全質量に対する割合である。
本実施形態のワイヤは、Al、Mg、希土類元素(以下、「REM」と記載する場合もある。)、Ca、Zr、及びTiからなる群より選ばれる少なくとも1種の強脱酸元素と、金属酸化物および金属フッ化物を含むスラグ形成剤とを含有する2相ステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤであって、全質量あたりNiを8.00〜10.50質量%、Nを0.20〜0.40質量%、強脱酸元素を合計で0.50〜2.00質量%、及び金属フッ化物をフッ素換算値で1.30〜3.30質量%含有し、ワイヤ全質量あたりのNi含有量のN含有量に対する比率であるNi/Nが、20≦Ni/N≦40を満足する2相ステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤである。
以下において、本実施形態のワイヤに含有される各成分量の数値限定理由について説明する。なお、以下において、ワイヤ中の各成分量は、ワイヤの全質量に対する含有量であり、すなわち、ワイヤ全質量あたりの含有量(質量%)である。ワイヤの全質量とは、特別な説明が無い限り、外皮とフラックスにおける成分量の総和を意味する。なお、ここでの外皮とは、表面にメッキが施されている場合には当該メッキも含むものである。
<スラグ形成剤>
本実施形態のワイヤは、金属酸化物および金属フッ化物を含むスラグ形成剤を含有する。スラグ形成剤は、ビード上にスラグを形成させ、あらゆる姿勢で良好なビード形状を得るために用いられる。スラグ形成剤は、フラックス中に含有されることが好ましい。
スラグ形成剤としては、一般的には金属酸化物が用いられているが、ワイヤが金属酸化物を含有する場合、溶接金属中に介在物として存在する酸化物の量が増加、即ち、溶接金属の清浄度が低下し、溶接金属の低温靱性に悪影響を与える。
そこで、本実施形態のワイヤにおいては、金属酸化物に加えて金属フッ化物を含むスラグ形成剤を使用することで、ビード形状を良好とする効果を得つつ、低温靱性を向上させた。
(金属フッ化物:フッ素換算値で1.30〜3.30質量%)
金属フッ化物は、スラグ形成剤としてビード形状を良好にする効果に加え、拡散性水素量を低減する効果や溶接金属の酸素量を維持する効果があり、低温靱性の向上に効果的な成分である。本実施形態においては、ビード形状を良好にし、また、溶接金属の酸素量を十分に低減し、優れた低温靱性を達成するために、ワイヤの金属フッ化物量を、ワイヤ全質量あたりフッ素換算値で1.30質量%以上とする。また、当該ワイヤの金属フッ化物量を1.70質量%以上とすることが好ましく、2.30質量%以上とすることがより好ましい。
一方、フッ化物は蒸気圧が高いため、ワイヤの金属フッ化物含有量が増加すると、その蒸気によりアークが不安定化し、溶接作業性が劣化する。しかし、本実施形態のワイヤにおいては、後述するように強脱酸元素を含有すること、および正極性で溶接を行うことによって、通常溶接作業性に悪影響を及ぼす量の金属フッ化物を含有する場合においても、良好な溶接作業性を維持することができる。ただし、金属フッ化物量が過大になると、溶接作業性を維持することが困難になるおそれがある。したがって、本実施形態では、ワイヤ中の金属フッ化物量を、ワイヤ全質量あたりフッ素換算値で3.30質量%以下とする。また、当該ワイヤ中の金属フッ化物量を3.00質量%以下とすることが好ましく、2.80質量%以下とすることがより好ましい。
金属フッ化物の種類は特に限定されないが、BaFのみからなること、またはBaFと、LiF、NaF、KF、MgF、CaF、NaAlF、KSiF、及びSrFからなる群より選ばれる少なくとも1種とからなることが、アーク安定性の観点から好ましい。また、BaFの含有量はワイヤ全質量あたり5.50質量%以上であることが好ましく、7.00質量%以上であることがより好ましく、10.00質量%以上であることがさらに好ましい。また、BaFの含有量は15.00質量%以下であることが好ましく、13.00質量%以下であることがより好ましく、12.00質量%以下であることがさらに好ましい。
なかでも特に、BaFとNaFとを含有することが好ましい。この場合のBaF含有量のNaF含有量に対する比率であるBaF/NaFの値は、ビード形状を整えるため、30以上であることが好ましく、40以上であることがより好ましい。また、アーク安定性の観点から、BaF/NaFの値は250以下であることが好ましく、200以下であることがより好ましい。
(金属酸化物:2.50質量%以下)
本実施形態のワイヤには、LiO、KO、NaO等のアルカリ金属酸化物やTiO、Al、SiO、Fe3、希土類酸化物等の金属酸化物が含有される。希土類酸化物とは、例えばLaやCeOといったような酸化物等が挙げられる。これらの金属酸化物は、スラグ形成成分として溶接作業性向上等の効果を得るために意図的に添加されたものや、不純物として含有されるものである。
本実施形態のワイヤにおいて、金属酸化物は先述のとおり溶接金属の低温靱性に悪影響を及ぼすため、含有量を抑制することが好ましい。具体的には、本実施形態のワイヤにおける金属酸化物の含有量は、2.50質量%以下であることが好ましく、1.80質量%以下であることがより好ましく、1.10質量%以下であることがさらに好ましい。
酸化物は溶接金属の低温靱性を向上させるためには含有しないことが好ましいが、アルカリ金属酸化物、例えば、LiO、KO、及びNaOは、アークの安定性を向上させ、溶接作業性を向上させる作用を有するため、溶接金属の低温靱性を損なわない範囲で意図的に含有させてもよい。本実施形態のワイヤにアルカリ金属酸化物を含有させる場合の含有量は、溶接作業性の観点からは合計で0.01質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましく、0.10質量%以上であることがさらに好ましい。一方、低温靱性の観点からはアルカリ金属酸化物の含有量は合計で0.50質量%以下であることが好ましく、0.45質量%以下であることがより好ましく、0.40質量%以下であることがさらに好ましい。また、本実施形態のワイヤにアルカリ金属酸化物を含有させる場合は、アーク安定性等の観点からLiOを含有させることがより好ましい。
TiO、Al、SiO、Fe等の金属酸化物、即ち、アルカリ金属酸化物以外の金属酸化物は、スラグ形成剤中に不純物として含有される成分、または、溶接作業性を向上させるために意図的に含有させてもよい成分である。これらの成分は溶接金属の低温靱性を向上させるためには含有量を低減することが好ましい。したがって、本実施形態のワイヤにおけるアルカリ金属酸化物以外の金属酸化物の含有量は、合計で2.00質量%以下であることが好ましく、1.80質量%以下であることがより好ましく、1.60質量%以下であることがさらに好ましい。また、含有量の下限は特に限定されないが、通常は0.10質量%以上である。
<強脱酸元素:合計で0.50〜2.00質量%>
本実施形態のワイヤはAl、Mg、希土類元素、Ca、Zr、及びTiからなる群より選ばれる少なくとも1種の強脱酸元素を含有する。また、好ましくはAl、Mg、希土類元素、及びCaからなる群より選ばれる少なくとも1種の強脱酸元素を含有する。これらの元素は、単体の金属粉やFe−Al、Al−Mg等の合金からなる金属粉、すなわち複合金属粉の状態でフラックス中に含有されることが好ましい。
これらの強脱酸元素を含むワイヤを用いて正極性で溶接を行った場合、ワイヤ先端の溶融部下方において強脱酸元素が酸化物を形成する。当該酸化物は仕事関数が低く、アークの発生点となる陰極点として作用するため、ワイヤ先端の下部でアークを安定化させることができる。よって、先述のようにワイヤが所定量の金属フッ化物を含有する場合においても、アークの偏向を抑制でき、良好な溶接作業性を維持することができる。本実施形態のワイヤにおいては、当該良好な溶接作業性を維持するため、強脱酸元素の含有量は合計で0.50質量%以上とする。また、強脱酸元素の含有量は合計で0.70質量%以上とすることが好ましい。
一方、強脱酸元素の含有量が合計で2.00質量%を超えると、合金の歩留まりが高くなり、強度過多となり、溶接割れが発生する可能性が高くなる。よって、本実施形態のワイヤにおける強脱酸元素の含有量は、合計で2.00質量%以下とする。また、強脱酸元素の含有量は合計で1.80質量%以下とすることが好ましい。
以下、強脱酸元素のそれぞれの含有量の好ましい範囲について説明する。
(Al:0.700質量%以下(0質量%を含む))
本実施形態のワイヤにおいて、Alの含有量は特に限定されないが、溶接金属中にAlNが生成し靭性を劣化させるため、0.700質量%以下であることが好ましく、0.500質量%以下であることがより好ましい。また、他の強脱酸元素が含有されているのであれば下限は特に限定されない(0質量%であってもよい)が、不純物としてAlが0.001質量%以上含まれる場合がある。また、立向溶接といった溶落ち等の溶接欠陥が特に問題になる溶接方法によっては、Alは0.100質量%以上含有されると良い。
なお、Alは脱酸効果が高く、単体として添加させても化合物に変化しやすい性質を持つため、本発明におけるAlの含有量とは、Al単体およびAl化合物のAl換算値の合計である。
(Mg:1.00質量%以下(0質量%を含む))
本実施形態のワイヤにおいて、Mgの含有量は特に限定されないが、溶接金属の強度過多による溶接割れ防止のため、1.00質量%以下であることが好ましく、0.80質量%以下であることがより好ましい。また、他の強脱酸元素が含有されているのであれば下限は特に限定されないが(0質量%であってもよい)、溶接金属の脱酸のため、Mgの含有量は0.01質量%以上であることが好ましく、0.10質量%以上であることがより好ましい。
なお、Mgは脱酸効果が高く、単体として添加させても化合物に変化しやすい性質を持つため、本発明におけるMgの含有量とは、Mg単体およびMg化合物のMg換算値の合計である。
(希土類元素:1.000質量%以下(0質量%を含む))
本発明において、希土類元素とは、原子番号57〜71の全ての元素を意味する。これらの元素を一種のみ含んでいてもよいし、二種以上を含んでいてもよい。希土類元素は脱酸及び/又は脱硫効果が高く、希土類元素単体として添加させても化合物に変化しやすい性質を持つため、本発明における希土類元素の含有量とは、希土類元素単体および希土類元素化合物の希土類元素換算値の合計である。なお、二種以上の希土類元素の単体及び/又は化合物を含むときはそれらすべての含有量の合計である。希土類元素の内、Ce、Laは脱酸および脱硫効果が強く、これらの酸化物および硫化物は仕事関数が低く、陰極点として良好な作用を有することから希土類元素の中でもCe及び/又はLaを用いることが好ましい。また、本実施形態のワイヤにおいて、希土類元素の含有量は特に限定されないが、強度過多による割れ防止のため、合計で1.000質量%以下であることが好ましく、0.950質量%以下であることがより好ましい。また、他の強脱酸元素が含有されているのであれば下限は特に限定されない(0質量%であってもよい)が、溶接金属の脱酸のため、希土類元素の含有量は合計で0.010質量%以上であることが好ましく、0.100質量%以上であることがより好ましい。
(Ca:1.000質量%以下(0質量%を含む))
本実施形態のワイヤにおいて、Caの含有量は特に限定されないが、溶接金属の強度過多による溶接割れ防止のため、1.000質量%以下であることが好ましく、0.800質量%以下であることがより好ましい。また、他の強脱酸元素が含有されているのであれば下限は特に限定されない(0質量%であってもよい)が、溶接金属の脱酸のため、Caの含有量は0.010質量%以上であることが好ましく、0.030質量%以上であることがより好ましい。
なお、Caは脱酸及び/又は脱硫効果が高く、単体として添加させても化合物に変化しやすい性質を持つため、本発明におけるCaの含有量とは、Ca単体およびCa化合物のCa換算値の合計である。
(Zr:0.50質量%以下(0質量%を含む))
本実施形態のワイヤにおいて、Zrの含有量は特に限定されないが、溶接金属の強度過多による溶接割れ防止のため、0.50質量%以下であることが好ましく、0.40質量%以下であることがより好ましい。また、他の強脱酸元素が含有されているのであれば下限は特に限定されない(0質量%であってもよい)が溶接金属の脱酸のため、Zrの含有量は0.01質量%以上であることが好ましく、0.03質量%以上であることがより好ましい。
なお、Zrは脱酸効果が高く、単体として添加させても化合物に変化しやすい性質を持つため、本発明におけるZrの含有量とは、Zr単体およびZr化合物のZr換算値の合計である。
(Ti:0.50質量%以下(0質量%を含む))
本実施形態のワイヤにおいて、Tiの含有量は特に限定されないが、溶接金属の強度過多による溶接割れ防止のため、0.50質量%以下であることが好ましく、0.40質量%以下であることがより好ましい。また、他の強脱酸元素が含有されているのであれば下限は特に限定されない(0質量%であってもよい)が、溶接金属の脱酸のため、Tiの含有量は0.01質量%以上であることが好ましく、0.03質量%以上であることがより好ましい。
なお、Tiは脱酸効果が高く、単体として添加させても化合物に変化しやすい性質を持つため、本発明におけるTiの含有量とは、Ti単体およびTi化合物のTi換算値の合計である。
<Ni:8.00〜10.50質量%>
また、本実施形態のワイヤは、Niを含有する。Niはオーステナイト組織の安定化に寄与し、溶接金属の低温靱性向上に作用する。Niの含有量を8.00質量%以上とすることにより、得られる溶接金属において十分な低温靱性を得ることができる。一方、Niの含有量を10.50質量%以下とすることにより、得られる溶接金属において2相ステンレス鋼に必要とされる延性を得ることができる。したがって、本実施形態のワイヤにおけるNi含有量は、8.00〜10.50質量%とする。また、本実施形態のワイヤにおけるNi含有量は、得られる溶接金属の延性をより向上させるためには9.00質量%以下であることが好ましく、低温靱性をより向上させるためには8.05質量%以上であることが好ましい。
<N:0.20〜0.40質量%>
また、本実施形態のワイヤは、Nを含有する。NはNiと同様に、オーステナイト組織の安定化に寄与し、溶接金属の低温靱性向上に作用する。Nの含有量を0.20質量%以上とすることにより、得られる溶接金属において十分な低温靱性を得ることができる。一方、Nの含有量を0.40質量%以下とすることにより、窒化物生成または過度な強度上昇により得られる溶接金属における低温靱性の低下を防ぎ、または溶接割れを防ぐことができる。したがって、本実施形態のワイヤにおけるN含有量は、0.20〜0.40質量%とする。また、本実施形態のワイヤにおけるN含有量は、得られる溶接金属の低温靱性をより向上させるためには0.25質量%以上であることが好ましく、0.39質量%以下であることが好ましい。
<Ni/N:20〜40>
本実施形態のワイヤにおいて、Ni含有量のN含有量に対する比率であるNi/Nの値が20以上40以下であると、得られる溶接金属のフェライト粒内で微細なオーステナイト相が生成し、低温靱性が良好となる。一方、Ni/Nの値が20〜40の範囲外であると、得られる溶接金属の粒界にオーステナイト相が生成しやすくなり、十分な低温靱性を得ることができない。したがって、本実施形態のワイヤにおいてNi含有量のN含有量に対する比率であるNi/Nの値は20〜40とする。
また、得られる溶接金属の低温靱性をより向上させるために、本実施形態のワイヤにおけるNi/Nの値は、21以上であることが好ましく、25以上であることがより好ましい。また、Ni/Nの値は35以下であることが好ましく、30以下であることがより好ましい。
<C:0.005〜0.020質量%>
Cは溶接金属の強度を向上させる元素である一方で、溶接金属の最終凝固部に偏析し、融液の融点を低下させ、耐高温割れ性を劣化させる成分であるが、2相ステンレス鋼としての必要範囲内で任意で含有させてもよい。本実施形態のワイヤにCを含有させる場合の含有量は、溶接金属の強度を向上させるためには0.005質量%以上であることが好ましく、0.006質量%以上であることがより好ましい。また、耐高温割れ性を向上させるためには、Cの含有量は0.020質量%以下であることが好ましく、0.015質量%以下であることがより好ましい。
<Si:0.10〜1.00質量%>
Siは脱酸元素であり、溶接金属の最終凝固部に偏析し、融液の融点を低下させ、耐高温割れ性を劣化させる成分であるが、2相ステンレス鋼としての必要範囲内で任意で含有させてもよい。本実施形態のワイヤにSiを含有させる場合の含有量は、脱酸作用により溶接金属中の酸素を低減し、溶接金属の低温靱性を向上させるためには0.10質量%以上であることが好ましく、0.20質量%以上であることがより好ましい。また、耐高温割れ性を向上させるためには、Siの含有量は1.00質量%以下であることが好ましく、0.80質量%以下であることがより好ましい。
<Mn:0.40〜1.00質量%>
MnはSiと同じく脱酸元素であり、かつオーステナイト組織を安定化させる効果がある一方で溶接金属の最終凝固部に偏析し、融液の融点を低下させ、耐高温割れ性を劣化させる成分であるが、2相ステンレス鋼としての必要範囲内で任意で添加してもよい。本実施形態のワイヤにMnを含有させる場合の含有量は、脱酸作用により溶接金属中の酸素を低減し、溶接金属の低温靱性を向上させるためには0.40質量%以上であることが好ましく、0.50質量%以上であることがより好ましい。また、耐高温割れ性を向上させるためには、Mnの含有量は1.00質量%以下であることが好ましく、0.95質量%以下であることがより好ましい。
<P:0.020質量%以下、S:0.020質量%以下(いずれも0質量%を含む)>
P及びSは、一般的に不純物として混入する元素である。本実施形態のワイヤにおいては、良好な耐高温割れ性を確保するためには、P及びSの含有量は、それぞれ0.020質量%以下であることが好ましく、0.018質量%以下であることがより好ましい。また、P及びSの含有量は低ければ低いほど良く、不純物のため下限は特に限定されない(0質量%であってもよい)が実際的には0質量%超である。
<Cr:21.0〜25.0質量%>
Crは溶接金属の強度を向上させるとともにフェライト相を安定化させる効果があり、2相ステンレス鋼としての必要範囲内で任意で添加してもよい。本実施形態のワイヤにCrを含有させる場合の含有量は、溶接金属の強度を向上させるためには21.0質量%以上であることが好ましく、21.1質量%以上であることがより好ましい。また、溶接金属の靱性及び耐高温割れ性を向上させるためには、Crの含有量は25.0質量%以下であることが好ましく、24.0質量%以下であることがより好ましい。
<Mo:2.50〜4.50質量%>
MoはCrと同じく、溶接金属の強度を向上させる効果があり、2相ステンレス鋼としての必要範囲内で任意で添加してもよい。本実施形態のワイヤにMoを含有させる場合の含有量は、溶接金属の強度を向上させるためには2.50質量%以上であることが好ましく、2.60質量%以上であることがより好ましい。また、溶接金属の靱性及び耐高温割れ性を向上させるためには、Moの含有量は4.50質量%以下であることが好ましく、3.80質量%以下であることがより好ましい。
<Cu:1.00質量%以下(0質量%を含む)>
本実施形態のワイヤには、先述のとおり銅メッキが施される場合がある。
銅メッキを施す場合には、ワイヤ送給安定性及びワイヤ通電性の観点から、ワイヤ中のCu含有量は0.05質量%以上であることが好ましく、0.10質量%以上であることがより好ましい。また、Cu粉の詰りによるワイヤ送給不良抑制の観点から、ワイヤ中のCu含有量は1.00質量%以下であることが好ましく、0.50質量%以下であることがより好ましい。
また、ワイヤ中の銅メッキ以外の部分に含有されるCuの含有量は、0.10質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以下であることがより好ましい(0質量%であってもよい)。
<残部>
本実施形態のワイヤの残部は、Fe及び不可避的不純物からなる。
Feは、外皮を構成するFe、フラックスに添加されている鉄粉、合金粉のFeとして含有される。本実施形態のワイヤにおいて、Feの含有量は好ましくは40質量%以上、より好ましくは45質量%以上である。
また、本実施形態のワイヤには、先述のスラグ形成剤中に不純物として含有されうる金属酸化物の他に、不可避的不純物としてW、Nb、V、Co、Zn、B等が含有され得る。
また、本実施形態のワイヤには、前述した各成分の他に、本発明の効果が阻害されない範囲で、前述した元素以外の合金元素などが添加されていてもよい。例えば、アーク安定化のためにLi、Na、K等のアルカリ金属をそれぞれ0.500質量%以下の範囲で添加してもよいが、添加しなくてもよい(それぞれの含有量が0質量%であってもよい)。
[ガスシールドアーク溶接方法]
続いて、本実施形態のガスシールドアーク溶接方法(以下、単に「溶接方法」ともいう。)について説明する。
本実施形態の溶接方法は、上記の本実施形態のワイヤを用いた溶接方法であって、本実施形態のワイヤ側の極性がマイナス、母材側の極性がプラスとなる正極性とし、シールドガス雰囲気中で溶接を行うガスシールドアーク溶接方法である。
<極性>
本実施形態の溶接方法においては、先述のとおり、所定のワイヤを用いた溶接において、ワイヤ側の極性がマイナス、母材側の極性がプラスとなる正極性で溶接を行うことにより、溶接金属の低温靱性の向上と、溶接作業性の維持とを両立している。
本実施形態の溶接方法においては、正極性で溶接を行う限りにおいて特に溶接条件に制限はないが、例えば溶接電流を120〜350A、アーク電圧を15〜40Vとして溶接を行うことが好ましい。
<シールドガス>
本実施形態の溶接方法において使用するシールドガスは特に限定されるものではないが、溶接金属部の清浄度をあげるため、Arを90体積%以上含有するガスを用いることが好ましい。また、アークを安定化させるため、Arを90体積%以上含有するArとOとの混合ガスまたはArを90体積%以上含有するArとCOとの混合ガスを用いることがより好ましい。なお、ArとOとの混合ガスにおいては、Arを98体積%以上、残部をOおよび不純物とすることがより好ましく、ArとCOとの混合ガスにおいては、Arを95体積%以上、残部をCOおよび不純物とすることがより好ましい。
<母材>
本実施形態の溶接方法における溶接の対象、即ち母材は、2相ステンレス鋼であれば特に限定されない。
[溶接金属]
続いて、本実施形態の溶接金属について説明する。
本実施形態の溶接金属は、全質量あたりCを0.010〜0.050質量%、Siを0.10〜1.00質量%、Mnを0.40〜1.40質量%、Pを0.030質量%以下(0質量%を含む)、Sを0.020質量%以下(0質量%を含む)、Crを24.0〜27.0質量%、Niを8.00〜12.00質量%、Nを0.20〜0.30質量%、Moを2.50〜4.50質量%、Alを0.400質量%以下(0質量%を含む)、Mgを0.30質量%以下(0質量%を含む)、Caを0.200質量%以下(0質量%を含む)、希土類元素を合計で0.200質量%以下(0質量%を含む)、Cuを1.00質量%以下(0質量%を含む)、Zrを0.20質量%以下(0質量%を含む)、Tiを0.20質量%以下(0質量%を含む)、Oを0.030質量%以下(0質量%を含む)含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる。
本実施形態の溶接金属は、上述の溶接方法により得られる溶接金属である。以下において、本実施形態の溶接金属に含有される各成分量の数値限定理由について説明する。
<C:0.010〜0.050質量%>
本実施形態の溶接金属は、Cを0.010〜0.050質量%含有する。溶接金属中のC含有量の数値限定理由は、上述したワイヤ中のC含有量の数値限定理由と同様である。また、溶接金属中のC含有量は、0.015質量%以上であることが好ましく、また、0.040質量%以下であることが好ましい。
<Si:0.10〜1.00質量%>
本実施形態の溶接金属は、Siを0.10〜1.00質量%含有する。Si含有量の数値限定理由は、上述したワイヤ中のSi含有量の数値限定理由と同様である。また、溶接金属中のSi含有量は、0.20質量%以上であることが好ましく、また、0.80質量%以下であることが好ましい。
<Mn:0.40〜1.40質量%>
本実施形態の溶接金属は、Mnを0.40〜1.40質量%含有する。Mn含有量の数値限定理由は、上述したワイヤ中のMn含有量の数値限定理由と同様である。また、溶接金属中のMn含有量は、0.50質量%以上であることが好ましく、また、1.30質量%以下であることが好ましい。
<P:0.030質量%以下(0質量%を含む)>
本実施形態の溶接金属において、Pの含有量は0.030質量%以下とする。P含有量の数値限定理由は、上述したワイヤ中のP含有量の数値限定理由と同様である。また、溶接金属中のP含有量は0.025質量%以下であることが好ましい。また、Pの含有量は低ければ低いほど良く、不純物のため下限は特に限定されない(0質量%であってもよい)が、0質量%超であることが実際的である。
<S:0.020質量%以下(0質量%を含む)>
本実施形態の溶接金属において、Sの含有量は0.020質量%以下とする。S含有量の数値限定理由は、上述したワイヤ中のS含有量の数値限定理由と同様である。また、溶接金属中のS含有量は0.010質量%以下であることが好ましい。また、Sの含有量は低ければ低いほど良く、不純物のため下限は特に限定されない(0質量%であってもよい)が、0質量%超であることが実際的である。
<Cr:24.0〜27.0質量%>
本実施形態の溶接金属は、Crを24.0〜27.0質量%含有する。Cr含有量の数値限定理由は、上述したワイヤ中のCr含有量の数値限定理由と同様である。また、溶接金属中のCr含有量は、24.1質量%以上であることが好ましく、また、26.5質量%以下であることが好ましい。
<Ni:8.00〜12.00質量%>
本実施形態の溶接金属は、Niを8.00〜12.00質量%含有する。Ni含有量の数値限定理由は、上述したワイヤ中のNi含有量の数値限定理由と同様である。また、溶接金属中のNi含有量は、8.05質量%以上であることが好ましく、また、10.50質量%以下であることが好ましい。
<N:0.20〜0.30質量%>
本実施形態の溶接金属は、Nを0.20〜0.30質量%含有する。N含有量の数値限定理由は、上述したワイヤ中のN含有量の数値限定理由と同様である。また、溶接金属中のN含有量は、0.21質量%以上であることが好ましく、また、0.29質量%以下であることが好ましい。
<Mo:2.50〜4.50質量%>
本実施形態の溶接金属は、Moを2.50〜4.50質量%含有する。Mo含有量の数値限定理由は、上述したワイヤ中のMo含有量の数値限定理由と同様である。また、溶接金属中のMo含有量は、3.00質量%以上であることが好ましく、また4.00質量%以下であることが好ましい。
<Al:0.400質量%以下(0質量%を含む)>
本実施形態の溶接金属において、Alの含有量は0.400質量%以下(0質量%を含む)とする。Al含有量の数値限定理由は、上述したワイヤ中のAl含有量の数値限定理由と同様である。また、溶接金属中のAl含有量は、0.001質量%以上であることが好ましく、また、0.300質量%以下であることが好ましい。
<Mg:0.30質量%以下(0質量%を含む)>
本実施形態の溶接金属において、Mgの含有量は0.30質量%以下(0質量%を含む)とする。Mg含有量の数値限定理由は、上述したワイヤ中のMg含有量の数値限定理由と同様である。また、溶接金属中のMg含有量は、0.0001質量%以上であることが好ましく、また、0.20質量%以下であることが好ましい。
<Ca:0.200質量%以下(0質量%を含む)>
本実施形態の溶接金属において、Caの含有量は0.200質量%以下(0質量%を含む)とする。Ca含有量の数値限定理由は、上述したワイヤ中のCa含有量の数値限定理由と同様である。また、溶接金属中のCa含有量は、0.0001質量%以上であることが好ましく、また、0.050質量%以下であることが好ましい。
<希土類元素:合計で0.200質量%以下(0質量%を含む)>
本実施形態の溶接金属において、希土類元素の含有量は合計で0.200質量%以下(0質量%を含む)とする。希土類元素含有量の数値限定理由は、上述したワイヤ中の希土類元素含有量の数値限定理由と同様である。また、溶接金属中の希土類元素含有量は合計で、0.0001質量%以上であることが好ましく、また、0.050質量%以下であることが好ましい。
<Cu:1.00質量%以下(0質量%を含む)>
本実施形態の溶接金属において、Cuの含有量は1.00質量%以下(0質量%を含む)とする。Cu含有量の数値限定理由は、上述したワイヤ中のCu含有量の数値限定理由と同様である。また、溶接金属中のCu含有量は、0.001質量%以上であることが好ましく、また、0.50質量%以下であることが好ましい。
<Zr:0.20質量%以下(0質量%を含む)>
本実施形態の溶接金属において、Zrの含有量は0.20質量%以下(0質量%を含む)とする。Zr含有量の数値限定理由は、上述したワイヤ中のZr含有量の数値限定理由と同様である。また、溶接金属中のZr含有量は、0.0001質量%以上であることが好ましく、また、0.10質量%以下であることが好ましい。
<Ti:0.20質量%以下(0質量%を含む)>
本実施形態の溶接金属において、Tiの含有量は0.20質量%以下(0質量%を含む)とする。Ti含有量の数値限定理由は、上述したワイヤ中のTi含有量の数値限定理由と同様である。また、溶接金属中のTi含有量は、0.0001質量%以上であることが好ましく、また、0.10質量%以下であることが好ましい。
<O:0.030質量%以下(0質量%を含む)>
溶接金属中に酸化物が介在物として存在すると低温靱性が劣化する。本実施形態の溶接金属においては、Oの含有量が0.030質量%を超えると得られる溶接金属において十分な低温靱性を得ることができない。したがって、本実施形態の溶接金属においては、Oの含有量を0.030質量%以下とする。また、Oの含有量は0.025質量%以下とすることが好ましい。
なお、Oの含有量の下限は特に限定されず、0質量%であってもよいが、通常0.001質量%以上である。
<Ni/N:25〜50>
本実施形態の溶接金属において、Ni含有量のN含有量に対する比率であるNi/Nの値は25以上50以下であることが好ましい。当該好ましい範囲の理由は、上述したワイヤ中のNi含有量のN含有量に対する比率であるNi/Nの数値限定理由と同様である。
また、本実施形態の溶接金属におけるNi/Nの値は30以上であることがより好ましく、また、45以下であることがより好ましい。
<残部>
本実施形態の溶接金属の残部は、Fe及び不可避的不純物からなる。不可避的不純物としては、Nb、V、W、Co、Zn、Sn、B等が含有され得る。
<溶接金属の低温靱性>
先述のとおり、本実施形態の溶接金属は低温靱性に優れ、特に−40℃を下回る低温においても優れた低温靱性を発揮する。低温靱性を評価する方法としては、特に限定されないが、例えばシャルピー試験が挙げられる。
本実施形態の溶接金属は、実施例の欄に記載のシャルピー試験により測定される−46℃における吸収エネルギーの値が27J以上であることが好ましく、34J以上であることがより好ましく、47J以上であることがさらに好ましい。
また、実施例の欄に記載のシャルピー試験により測定される0℃における吸収エネルギーの値が40J以上であることが好ましく、47J以上であることがより好ましく、70J以上であることがさらに好ましい。
また、本実施形態の溶接金属は、低温靱性の値が均一であることが好ましく、実施例の欄に記載のシャルピー試験により測定される−46℃、又は0℃における吸収エネルギーの3回の測定結果のばらつきが少ないことが好ましく、3回の測定値における最高値と最低値の差がそれぞれ20J以下であることがより好ましい
<介在物の個数密度>
本実施形態の溶接金属は、溶接ワイヤまたは母材に由来する成分によって、例えばAlN、TiN、Al、MgO、TiO又はSiO等の介在物を一つ以上不可避的に含有する。これらの介在物を多く含む場合、およびこれらの介在物が粗大になる場合に溶接金属の靱性が劣化する恐れがある。したがって、本実施形態の溶接金属において、円相当直径が4μm以上である粗大な介在物の個数密度を330個/mm以下と規定する。
また、−40℃を下回る厳しい環境における溶接金属の低温靱性をより確保するためには、円相当直径が1.2μm以上である介在物の個数密度を500個/mm以下とし、かつ円相当直径が4μm以上である介在物の個数密度を20個/mm以下とすることが好ましい。さらに、円相当直径が1.2μm以上である介在物の個数密度を200個/mm以下とし、かつ円相当直径が4μm以上である介在物の個数密度を10個/mm以下とすることがより好ましい。
なお、円相当直径が4μm以上である粗大な介在物の個数密度は低ければ低いほどよく、下限は特に限定されないが、存在しない、すなわち、0個/mmであることが好ましい。また、円相当直径が1.2μm以上である介在物の個数密度も低ければ低いほどよく、下限は特に限定されない(0個/mmであってもよい)が、0個/mm超であることが実際的である。
なお、円相当直径とは、各介在物の面積と同一面積の円の直径を意味する。
溶接金属中に含有される介在物の個数密度は、実施例の欄に記載の方法により測定することができる。
以下、実施例及び比較例により、本発明の効果について具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
まず、オーステナイト系ステンレス鋼を外皮とし、この外皮を円筒状に成型しながら、その内部にフラックスを充填することで、ワイヤ全質量あたりで表1及び2に示す組成を有する実施例(W1〜W7、W13〜W17)および比較例(W8〜W12)の2相ステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤを作製した。なお、フラックス充填率はいずれも34質量%とし、残部はFeおよび不純物で構成されている。
表中の各欄の数値は各成分のワイヤ全質量あたりの含有量(質量%)を示し、「REM」欄の数値は希土類元素の含有量(質量%)の合計を示し、「Ni/N」欄の数値は、Ni含有量のN含有量に対する比率を示す。また、表2に示している酸化物の内、Fe、SiO、Alは、意図的に添加したものではなく、不純物として含まれたものである。
Figure 2020015092
Figure 2020015092

次に、図1に示すように、板厚が20mmの溶接構造用圧延鋼板(JIS G3106:2015年、SM490A)からなる母材1の開先面に同一ワイヤで4層バタリングを行ってバタリング層3を形成し、開先角度が45°となるように斜面を形成した。その後、母材1同士をルートギャップが10mmとなるように配置し、開先が狭まる側に同一ワイヤで3層バタリングした裏当金2を配置した。
次に、W1〜17のフラックス入りワイヤをそれぞれ用いて、以下に示す溶接条件で母材1を溶接し、400mm長さの溶接継手(溶接金属)M1〜M19を作製した。得られた溶接金属M1〜M19の化学成分組成を表3に示す。なお、表3中の「溶接時の作業性」は母材に付着したスパッタを目視で観測する官能評価で判断し、「溶接時の作業性」欄の「A」は、溶接時の作業性が良好でスパッタ除去の補修作業が必要とされない場合であることを意味し、溶接時の作業性が粗悪でスパッタ除去の補修作業が必要とされるものは「B」と判定したが、いずれも「A」であった。
(溶接条件)
溶接姿勢:下向
極性:正極性(ワイヤ側の極性がマイナス、母材側の極性がプラス)
溶接電流:250〜300A
アーク電圧:27〜30V
溶接速度:24〜69cm/min
シールドガス:90体積%Ar+10体積%O(溶接金属M1〜M17)
95体積%Ar+5体積%CO(溶接金属M18)
98体積%Ar+2体積%O(溶接金属M19)
シールドガス流量:25L/min
ワイヤ突出し長さ:20mm
予熱:15〜100℃
パス間温度:50〜150℃
積層:6層12パス
Figure 2020015092
得られた各例の溶接金属について、以下に示す方法で引張試験、硬さ試験、シャルピー試験、溶接欠陥及び含有する介在物に関する評価を行った。
(引張試験)
各例の溶接金属について、AWS A5.22に準じた引張試験により、0.2%耐力、及び引張強度を測定した。結果を表4に示す。
なお、表中「※1」は溶接金属に欠陥があり、試験開始直後に破断したことを示す。
また、表中「※2」は溶接金属に割れが多発しており、引張試験に用いる試験片を採取できず、試験を行えなかったことを示す。
(硬さ試験)
各例の溶接金属について、JIS Z 2244:2009年に準じた硬さ試験により、ビッカース硬さを測定した。結果を表4の「硬さ」の欄に示す。試験力は98Nで、溶接金属中央からビード表面に向かって1mmピッチで5点測定した平均値を示す。
(シャルピー試験)
各例の溶接金属について、溶接継手の板厚方向中央かつ溶接金属の幅方向中央部よりAWS A5.22に準じたシャルピー衝撃試験片を採取し、シャルピー試験により、吸収エネルギーの測定を行った。試験は、0℃と−46℃においてそれぞれ3回ずつ行った。結果を表4の「吸収エネルギー(J)」の欄に示す。表4中「N1」〜「N3」欄の数値は、それぞれ1〜3回目の測定値を、「平均」欄の数値は3回の測定値の平均値を、「最大値と最小値の差」欄の数値は3回の測定値の内の最大値と最小値の差を示す。
また、表中「※3」は溶接金属に割れが多発しており、シャルピー衝撃試験片を採取できず、試験を行えなかったことを示す。
(溶接欠陥の評価)
各例の溶接金属について、目視により溶接欠陥の有無を確認した。結果を表4の「溶接欠陥」の欄に示す。「無」は溶接欠陥が確認されなかったことを示し、「溶接割れ」は溶接割れが発生しており、引張試験及びシャルピー試験を実施できなかったことを意味する。
(介在物の評価)
各例の溶接金属について、溶接方向に垂直な面で切断し、鏡面研磨した。つづいて、溶接金属部を光学顕微鏡により400倍で4視野撮影することにより、含有する介在物の個数密度を求めた。介在物は円相当直径が1.2μm以上の物と、4μm以上の物の個数密度をそれぞれ求めた。なお、円相当直径とは、対象となる介在物の面積と同一面積となる円の直径を示す。結果を表3の「1.2μm以上の介在物個数密度 個/mm」及び「4μm以上の介在物個数密度 個/mm」にそれぞれ示す。
Figure 2020015092

ワイヤW8は、強脱酸元素の含有量が合計で2.04質量%と多かった。ワイヤW8を用いて得られた溶接金属M8は、Moの含有量が4.75質量%と多く、Alの含有量が1.430質量%と多く、Nの含有量が0.16質量%と少なかった。溶接金属M8は、シャルピー試験に使用する試験片を採取できないほど割れが多発しており、品質に劣った。また、円相当直径が4μm以上の介在物の個数密度が435個/mmと多かった。
ワイヤW9は、強脱酸元素の含有量が合計で2.04質量%と多かった。ワイヤW9を用いて得られた溶接金属M9は、Crの含有量が23.1質量%と少なく、Alの含有量が1.200質量%と多く、Nの含有量が0.18質量%と少なかった。溶接金属M9は、引張試験及びシャルピー試験に使用する試験片を採取できないほど割れが多発しており、品質に劣った。また、円相当直径が4μm以上の介在物の個数密度が331個/mmと多かった。
ワイヤW10は、Niの含有量が7.87質量%と少なく、Nの含有量が0.48質量%と多く、Ni/Nの値が16と小さく、強脱酸元素の含有量が合計で2.04質量%と多かった。ワイヤW10を用いて得られた溶接金属M10は、Crの含有量が23.1質量%と少なく、Alの含有量が0.980質量%と多かった。溶接金属M10は、引張試験及びシャルピー試験に使用する試験片を採取できないほど割れが多発しており、品質に劣った。また、円相当直径が4μm以上の介在物の個数密度が352個/mmと多かった。
ワイヤW11は、強脱酸元素の含有量が合計で2.04質量%と多かった。ワイヤW11を用いて得られた溶接金属M11は、Alの含有量が0.940質量%と多く、Nの含有量が0.16質量%と少なかった。溶接金属M11は、引張試験及びシャルピー試験に使用する試験片を採取できないほど割れが多発しており、品質に劣った。また、円相当直径が4μm以上の介在物の個数密度が352個/mmと多かった。
ワイヤW12は、Niの含有量が7.96質量%と少なかった。ワイヤW12を用いて得られた溶接金属M12は、Alの含有量が0.490質量%と多く、Nの含有量が0.18質量%と少なかった。溶接金属M12は、引張試験及びシャルピー試験に使用する試験片を採取できないほど割れが多発しており、品質に劣った。
一方、ワイヤW1〜7及びW13〜17を使用して得られた溶接金属M1〜7及びM13〜19は、円相当直径が4μm以上の介在物の個数密度が非常に小さく、0℃及び−46℃におけるシャルピー試験により測定された吸収エネルギーが大きく、低温靱性に優れるものであった。また、溶接作業性にも優れ、溶接割れ等の溶接欠陥も生じなかった。
1:母材
2:裏当金
3:バタリング層

Claims (14)

  1. 2相ステンレス鋼のガスシールドアーク溶接に用いる2相ステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤであって、
    Al、Mg、希土類元素、Ca、Zr、及びTiからなる群より選ばれる少なくとも1種の強脱酸元素と、金属酸化物および金属フッ化物を含むスラグ形成剤とを含有し、
    前記2相ステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤ全質量あたり
    Niを8.00〜10.50質量%、
    Nを0.20〜0.40質量%、
    前記強脱酸元素を合計で0.50〜2.00質量%、及び
    前記金属フッ化物をフッ素換算値で1.30〜3.30質量%含有し、
    前記2相ステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤ全質量あたりのNi含有量のN含有量に対する比率であるNi/Nが、20≦Ni/N≦40を満足する2相ステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤ。
  2. 前記2相ステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤ全質量あたり
    Cを0.005〜0.020質量%、
    Siを0.10〜1.00質量%、
    Mnを0.40〜1.00質量%、
    Crを21.0〜25.0質量%、及び
    Moを2.50〜4.50質量%
    からなる群から選ばれる少なくとも1種をさらに含有する請求項1に記載の2相ステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤ。
  3. 前記2相ステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤ全質量あたり
    Pを0.020質量%以下(0質量%を含む)、
    Sを0.020質量%以下(0質量%を含む)、
    Alを0.700質量%以下(0質量%を含む)、
    Mgを1.00質量%以下(0質量%を含む)、
    Caを1.000質量%以下(0質量%を含む)、
    希土類元素を合計で1.000質量%以下(0質量%を含む)、
    Cuを1.00質量%以下(0質量%を含む)、
    Liを0.500質量%以下(0質量%を含む)、
    Naを0.500質量%以下(0質量%を含む)、
    Kを0.500質量%以下(0質量%を含む)、
    Zrを0.50質量%以下(0質量%を含む)、及び
    Tiを0.50質量%以下(0質量%を含む)
    からなる群から選ばれる少なくとも1種をさらに含有する請求項1または2に記載の2相ステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤ。
  4. 残部がFeおよび不可避不純物からなる請求項1〜3のいずれか1項に記載の2相ステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤ。
  5. 前記金属フッ化物は、BaFのみ、または、BaFと、LiF、NaF、KF、MgF、CaF、NaAlF、KSiF、及びSrFからなる群より選ばれる少なくとも1種とからなり、前記2相ステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤ全質量あたり前記BaFを5.50〜15.00質量%含有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の2相ステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤ。
  6. 前記金属酸化物の含有量は、前記2相ステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤ全質量あたり2.50質量%以下である請求項1〜5のいずれか1項に記載の2相ステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤ。
  7. 前記強脱酸元素および前記スラグ形成剤はフラックスに含有され、前記2相ステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤのフラックス充填率が20〜40質量%である請求項1〜6のいずれか1項に記載の2相ステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤ。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の2相ステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤを用いたガスシールドアーク溶接方法であって、前記2相ステンレス鋼溶接用フラックス入りワイヤ側の極性がマイナス、母材側の極性がプラスとなる正極性とし、シールドガス雰囲気中で溶接を行うガスシールドアーク溶接方法。
  9. 前記シールドガスがArを90体積%以上含有する請求項8に記載のガスシールドアーク溶接方法。
  10. 前記シールドガスがArとOとの混合ガスである請求項9に記載のガスシールドアーク溶接方法。
  11. 前記シールドガスがArとCOとの混合ガスである請求項9に記載のガスシールドアーク溶接方法。
  12. 溶接金属全質量あたり
    Cを0.010〜0.050質量%、
    Siを0.10〜1.00質量%、
    Mnを0.40〜1.40質量%、
    Pを0.030質量%以下(0質量%を含む)、
    Sを0.020質量%以下(0質量%を含む)、
    Crを24.0〜27.0質量%、
    Niを8.00〜12.00質量%、
    Nを0.20〜0.30質量%、
    Moを2.50〜4.50質量%、
    Alを0.400質量%以下(0質量%を含む)、
    Mgを0.30質量%以下(0質量%を含む)、
    Caを0.200質量%以下(0質量%を含む)、
    希土類元素を合計で0.200質量%以下(0質量%を含む)、
    Cuを1.00質量%以下(0質量%を含む)、
    Zrを0.20質量%以下(0質量%を含む)、
    Tiを0.20質量%以下(0質量%を含む)、及び
    Oを0.030質量%以下(0質量%を含む)含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなり、
    含有する円相当直径が4μm以上である介在物の個数密度が330個/mm以下である溶接金属。
  13. 前記溶接金属全質量あたりのNi含有量のN含有量に対する比率であるNi/Nが、25≦Ni/N≦50を満足する請求項12に記載の溶接金属。
  14. 含有する円相当直径が1.2μm以上である介在物の個数密度が500個/mm以下であり、かつ円相当直径が4μm以上である介在物の個数密度が20個/mm以下である請求項12または13に記載の溶接金属。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN114669837A (zh) * 2021-12-16 2022-06-28 山西北方机械制造有限责任公司 一种用于双相不锈钢试板焊接的气体保护焊工艺
CN115803144A (zh) * 2020-09-07 2023-03-14 株式会社神户制钢所 药芯焊丝

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