この発明に係る眼科用手術顕微鏡の実施形態の例について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、この明細書において引用された文献の記載内容や任意の公知技術を、以下の実施形態に援用することが可能である。
実施形態に係る眼科用手術顕微鏡は、眼科分野における診療や手術において被検眼の拡大像を観察(撮影)するために使用される。観察対象部位は、被検眼の任意の部位であってよく、例えば、前眼部においては角膜や隅角や硝子体や水晶体や毛様体などであってよく、後眼部においては網膜や脈絡膜や硝子体であってよい。また、観察対象部位は、瞼や眼窩など眼の周辺部位であってもよい。
実施形態に係る眼科用手術顕微鏡は、被検眼を拡大観察するための顕微鏡としての機能に加え、他の眼科装置としての機能を有する。他の眼科装置としての機能の例として、光コヒーレンストモグラフィ(以下、OCT)、レーザ治療、眼軸長測定、屈折力測定、高次収差測定などがある。OCTは、被検眼の断層像や3次元画像の取得や、眼組織のサイズ(網膜厚等)の測定や、眼の機能情報(血流情報等)の取得などに使用される。レーザ治療は、網膜や隅角の光凝固治療などに使用される。他の眼科装置は、被検眼の検査や測定や画像化を光学的手法で行うことが可能な任意の構成を備える。以下の実施形態では、OCT機能とレーザ治療機能とを顕微鏡に組み合わせた構成を説明する。特に、実施形態に係る眼科用手術顕微鏡は、公知のスウェプトソースOCTの手法を用いて被検眼のOCT画像を取得することが可能である。スウェプトソース以外のタイプ、例えばスペクトラルドメインOCTの手法を用いる眼科用手術顕微鏡に対して、この発明に係る構成を適用することも可能である。
以下、実施形態に係る眼科用手術顕微鏡は、グリノー式実体顕微鏡を備えているものとして説明するが、ガリレオ式実体顕微鏡を備えていてもよい。グリノー式実体顕微鏡を備えている場合、対物レンズの径を小さくできるため、光学設計や機構設計の自由度を向上させることが可能になる。ガリレオ式実体顕微鏡を備えている場合、双眼光学系が共通の対物レンズを備え、双眼光学系の左右の光軸が平行であるため、他の光学系や光学素子を組み合わせ易くすることが可能になる。
[構成]
〔眼科用手術顕微鏡の全体構成〕
図1に、実施形態に係る眼科用手術顕微鏡1の全体構成の概要を示す。眼科用手術顕微鏡1は、支柱2と、第1アーム3と、第2アーム4と、駆動装置5と、術者用顕微鏡6と、助手用顕微鏡7と、フットスイッチ8とを含む。支柱2は、眼科用手術顕微鏡1の全体を支持する。支柱2の上端には、第1アーム3の一端が接続されている。第1アーム3の他端には、第2アーム4の一端が接続されている。第2アーム4の他端には、駆動装置5が接続されている。術者用顕微鏡6は、駆動装置5により懸架されている。助手用顕微鏡7は、術者用顕微鏡6に付設されている。フットスイッチ8は、各種操作を術者等の足で行うために用いられる。駆動装置5は、術者等による操作に応じて、術者用顕微鏡6と助手用顕微鏡7とを上下方向(垂直方向)及び水平方向に3次元的に移動させるように作用する。被検眼(手術眼、患者眼)Eは、手術を受ける患者の眼である。図1において、前置レンズ90は、術者用顕微鏡6の対物レンズ(後述)と被検眼Eとの間に配置されている。
術者用顕微鏡6は、各種光学系や駆動系などを収納する鏡筒部9を有する。鏡筒部9の上部には、左右一対の接眼部30a(30La、30Ra)が設けられている。術者は、接眼部30La、30Raを覗き込んで被検眼Eを両眼で観察する。
術者用顕微鏡6には、前置レンズ90が保持アーム91を介して接続されている。保持アーム91の上端部は垂直方向に回動可能に設けられており、前置レンズ90を被検眼Eと対物レンズの前側焦点位置との間の位置から退避できるようになっている。この退避された前置レンズ90及び保持アーム91は、後述の収納部に収納可能に構成されている。
〔術者用顕微鏡の構成〕
図2A〜図2Cに、図1の術者用顕微鏡6の構成の一例を説明するための拡大図を示す。図2Aは、術者用顕微鏡6の外観側面図を表す。図2Bは、術者用顕微鏡6の外観正面図を表す。図2Cは、前置レンズ90の収納態様を示す透視側面図を表す。術者用顕微鏡6は、本体部6aと、鏡筒部9と、左右一対の接眼部30a(30La、30Ra)とを含む。なお、図2Bでは、接眼部30aの図示は省略されている。前置レンズ90は、保持アーム91等を介して鏡筒部9に接続され、鏡筒部9に設けられた対物レンズと被検眼Eとの間に挿脱可能に設けられている。
本体部6aには、術者用顕微鏡6の動作制御を行う制御回路や、この制御回路によって鏡筒部9を上下に微動させる駆動装置等が格納されている。鏡筒部9には、被検眼Eを照明・観察するための後述の光学系が格納されている。この光学系は、対物レンズを含む。
前置レンズ90は、上述のように、保持アーム91等を介して術者用顕微鏡6に接続されている。前置レンズ90は、保持アーム91の先端部に設けられた保持板91aに取り付けられている。
保持アーム91と保持板91aとは、枢軸91bを軸に回動可能に接続されている。保持板91aには傾斜部91cが設けられている。保持アーム91には、保持アーム91を旋回させるための操作ノブ92が設けられている。
術者用顕微鏡6には、更に、昇降アーム71と、昇降アーム71の下部に接続された接続部71bと、接続部71bに接続された上昇規制部材72と、接続部71bに挿通して設けられた連結ノブ73と、収納部74とが設けられている。昇降アーム71の上部には、フリンジ部71aが設けられている。収納部74は、上昇規制部材72に着脱可能に設けられ、前置レンズ90及び保持アーム91を収納する。
保持アーム91は、枢軸74aを軸に回動可能に収納部74に設けられている。保持アーム91の上部には、コイルスプリング78が取り付けられている。なお、収納部74が上昇規制部材72に対して着脱可能とされているのは、手術後等に前置レンズ90や保持アーム91を滅菌するときに取り外す必要があるからである。また、前置レンズ90等を取り外した状態においても、通常の手術用顕微鏡として利用することが可能である。以下、本段落に登場した各部材による構成をまとめて前置レンズ支持部と称することがある。
本体部6aには、昇降アーム71を支持する昇降アーム支持部材76を上下方向に駆動するための駆動部75が設けられている。昇降アーム71は、昇降アーム支持部材76を挿通して設けられている。また、昇降アーム71は、フリンジ部71aにより昇降アーム支持部材76からの落下が防止されている。結局、駆動部75による昇降アーム支持部材76の上下移動にしたがって前置レンズ90が上下に移動され、鏡筒部9に設けられた対物レンズとの距離が相対的に変位されることとなる。このような構成により、鏡筒部9の上下微動とは独立して、前置レンズ90のみを上下に移動させることが可能となる。
本体部6aの下部には、上昇規制部材72とともに前置レンズ支持部の上方への移動範囲を規制する上昇規制部材77が取り付けられている。上昇規制部材77には、連結ノブ73を操作して前置レンズ支持部を本体部6aに連結して固定するための連結穴77aが形成されている。前置レンズ支持部の本体部6aへの連結は、駆動部75により前置レンズ支持部を最も上の位置まで上昇させた後(このとき、連結ノブ73の凸部73aと連結穴77aとの位置が合うようになっている。)、連結ノブ73を所定の方向に回転操作して凸部73aを連結穴77aに嵌入することにより行われる。
図2A及び図2Bには、術者用顕微鏡6の前置レンズ90が被検眼Eと対物レンズとの間に挿入された状態(使用状態)が図示されている。術者は、前置レンズ90の使用を止めてこれを退避させるときには、操作ノブ92を把持して枢軸74aを軸に保持アーム91を上方に旋回させることにより、前置レンズ90及び保持アーム91を収納部74に収納する。一方、収納部74に収納された前置レンズ90を使用状態とするには、同じ要領で保持アーム91を下方に旋回させる。
図2Cには、前置レンズ90が収納部74(収納位置)に収められた状態が図示されている。同図によれば、枢軸74aを軸として上方に旋回された前置レンズ90及び保持アーム91は、収納部74の長手方向に沿って収納されるようになっている。また、保持板91aは、枢軸91bを軸に回動されて、折り曲げられたような状態で収納される。これは、保持板91aの傾斜部91cと、収納部74の端部に取り付けられた接触部材74bとの作用によるものである。すなわち、保持アーム91が上方に旋回されると傾斜部91cが接触部材74bに接触し、傾斜部91cの傾斜に案内されて保持板91aが枢軸91bを軸に回動し、自動的に折り曲げられて収納されるよう構成されている。また、収納部74には、前置レンズ90が収納されているか否かを検出するためのマイクロスイッチ79が設けられている。前置レンズ90が収納部74に収納されると、保持板91aの一部がマイクロスイッチ79に接触してスイッチオン状態とされ、収納が解除されると接触状態も解除されてスイッチオフ状態とされる。
〔光学系の構成〕
次に、術者用顕微鏡6の鏡筒部9に格納されている光学系について、図3〜図6を参照して説明する。図3は後眼部を観察するときの光学系を示し、図4は前眼部を観察するときの光学系を示す。図5及び図6は、上記の「他の眼科装置としての機能」を提供するための光学系を示す。なお、後述の照射系40の少なくとも一部は、鏡筒部9の上部に設けられていてもよい。
術者用顕微鏡6(眼科用手術顕微鏡1)は、照明系10(左照明系10L、右照明系10R)と、受光系20(左受光系20L、右受光系20R)と、接眼系30(左接眼系30L、右接眼系30R)と、照射系40とを含む。照射系40は、OCT系60と、レーザ治療系80とを含む。後眼部(網膜等)を観察するときには、被検眼Eの直前に前置レンズ90が配置される。なお、図3に示すような非接触の前置レンズ90の代わりにコンタクトレンズ等を用いることが可能である。また、隅角を観察するときにはコンタクトミラー(三面鏡等)等を用いることができる。
(照明系10)
照明系10は、被検眼Eに照明光を照射する。図示は省略するが、照明系10は、照明光を発する光源や、照明野を規定する絞りや、レンズ系などを含む。照明系の構成は、従来の眼科装置(例えばスリットランプ顕微鏡、眼底カメラ、レフラクトメータ等)と同様であってよい。
左照明系10L及び右照明系10Rは、それぞれ左受光系20L及び右受光系20Rと同軸に構成されている。具体的には、観察者の左眼E0Lに提示される像を取得するための左受光系20Lには、例えばハーフミラーからなるビームスプリッタ11Lが斜設されている。ビームスプリッタ11Lは、左受光系20Lの光路に左照明系10Lの光路を結合している。左照明系10Lから出力された照明光は、ビームスプリッタ11Lにより反射され、左受光系20Lと同軸で被検眼Eを照明する。同様に、観察者の右眼E0Rに提示される像を取得するための右受光系20Rには、右受光系20Rの光路に右照明系10Rの光路を結合するビームスプリッタ11Rが斜設されている。
左受光系20L(右受光系20R)の光軸に対する照明光の位置を変更可能に構成することができる。この構成は、例えば、従来の眼科用手術顕微鏡と同様に、ビームスプリッタ11L(ビームスプリッタ11R)に対する照明光の照射位置を変更するための手段を設けることにより実現される。
本例では、対物レンズ21Lと被検眼Eとの間にビームスプリッタ11Lが配置されているが、照明光の光路が左受光系20Lに結合される位置は、左受光系20Lの任意の位置でよい。同様に、対物レンズ21Rと被検眼Eとの間にビームスプリッタ11Rが配置されているが、照明光の光路が右受光系20Rに結合される位置は、右受光系20Rの任意の位置でよい。
(受光系20)
本実施形態では、左右一対の左受光系20L及び右受光系20Rが設けられている。左受光系20Lは、観察者の左眼E0Lに提示される像を取得するための構成を有し、右受光系20Rは、右眼E0Rに提示される像を取得するための構成を有する。左受光系20Lと右受光系20Rは同じ構成を備える。左受光系20L(右受光系20R)は、対物レンズ21L(対物レンズ21R)と、結像レンズ22L(結像レンズ22R)と、撮像素子23L(撮像素子23R)とを含む。
なお、結像レンズ22L(結像レンズ22R)が設けられていない構成を適用することも可能である。本実施形態のように結像レンズ22L(結像レンズ22R)が設けられている場合、対物レンズ21L(対物レンズ21R)と結像レンズ22L(結像レンズ22R)との間をアフォーカルな光路(平行光路)とすることができる。それにより、フィルタ等の光学素子を配置することや、光路結合部材を配置して他の光学系からの光路を結合することが容易になる(すなわち、光学的構成の自由度や拡張性が向上される)。
対物光軸AL1は、左受光系20Lの対物レンズ21Lの光軸を示し、対物光軸AR1は、右受光系20Rの対物レンズ21Rの光軸を示す。撮像素子23L(撮像素子23R)は、例えばCCDイメージセンサやCMOSイメージセンサ等のエリアセンサである。
以上は、被検眼Eの後眼部(眼底)を観察するときの受光系20の構成である(図3)。一方、前眼部を観察するときには、図4に示すように、前置レンズ90が被検眼Eの直前から退避され、収納部74に収納される。対物レンズ21L(対物レンズ21R)に対して被検眼E側の位置に、フォーカスレンズ24L(フォーカスレンズ24R)とウェッジプリズム25L(ウェッジプリズム25R)とが配置される。本例のフォーカスレンズ24L(フォーカスレンズ24R)は凹レンズであり、対物レンズ21L(対物レンズ21R)の焦点距離を延長するように作用する。ウェッジプリズム25L(ウェッジプリズム25R)は、左受光系20L(右受光系20R)の光路(対物光軸AL1(AR1))を所定角度だけ外側に偏向する(符号AL2及びAR2で示す)。このように、フォーカスレンズ24L及びウェッジプリズム25Lが左受光系20Lに配置され、かつ、フォーカスレンズ24R及びウェッジプリズム25Rが右受光系20Rに配置される。それにより、後眼部観察用の焦点位置F1から前眼部観察用の焦点位置F2に切り替えられる。
フォーカスレンズとして凸レンズを用いることが可能である。その場合、フォーカスレンズは、後眼部観察時に光路に配置され、前眼部観察時に光路から退避される。フォーカスレンズの挿入/退避によって焦点距離を切り替える代わりに、例えば光軸方向に移動可能なフォーカスレンズを設けることにより焦点距離を連続的又は段階的に変更できるように構成することが可能である。
図4に示す例では、ウェッジプリズム25L、25Rの基底方向は外側である(つまりベースアウト配置である)が、ベースイン配置のウェッジプリズムを用いることができる。その場合、ウェッジプリズムは、後眼部観察時に光路に配置され、前眼部観察時に光路から退避される。ウェッジプリズムの挿入/退避によって光路の方向を切り替える代わりに、プリズム量(及びプリズム方向)が可変なプリズムを設けることにより光路の向きを連続的又は段階的に変更できるように構成することが可能である。
(接眼系30)
本実施形態では、左右一対の左接眼系30L及び右接眼系30Rが設けられている。左接眼系30Lは、接眼部30Laに設けられている。右接眼系30Rは、接眼部30Raに設けられている。左接眼系30Lは、左受光系20Lにより取得された被検眼Eの像を観察者の左眼E0Lに提示するための構成を有し、右接眼系30Rは、右受光系20Rにより取得された被検眼Eの像を右眼E0Rに提示するための構成を有する。左接眼系30Lと右接眼系30Rは同じ構成を備える。左接眼系30L(右接眼系30R)は、左表示部31L(右表示部31R)と、左接眼レンズ系32L(右接眼レンズ系32R)とを含む。
左表示部31L(右表示部31R)は、例えばLCD等のフラットパネルディスプレイである。左表示部31L(右表示部31R)の表示面のサイズは、例えば(対角線長)7インチ以下とされる。なお、左接眼レンズ系32L及び右接眼レンズ系32Rの構成や機構の配置を工夫することにより、7インチを超える画面サイズや小サイズの左表示部31L及び右表示部31Rを適用することができる。
後述のように、左接眼系30Lと右接眼系30Rとの間隔を変更することが可能である。それにより、術者等の観察者の眼幅に応じて左接眼系30Lと右接眼系30Rとの間隔を調整することができる。また、左接眼系30Lと右接眼系30Rとの相対的向きを変更することが可能である。つまり、左接眼系30Lの光軸と右接眼系30Rの光軸とがなす角度を変更することが可能である。それにより、両眼(左眼E0L及び右眼E0R)の輻輳を誘発することができ、観察者による立体視を支援することができる。
(照射系40)
照射系40は、前述した「他の眼科装置」としての機能を実現するための光を、受光系20の対物光軸(AL1及びAR1、並びにAL2及びAR2)と異なる方向から被検眼Eに照射する。本例の照射系40は、OCTのための光(測定光)と、レーザ治療のための光(照準光、治療用レーザ光)とを被検眼Eに照射する。
照射系40は、光スキャナ41と、結像レンズ42と、リレーレンズ43と、偏向ミラー44と、コリメートレンズ52A、52Bと、光路結合部材53と、OCT系60と、レーザ治療系80とを含む。光スキャナ41には、OCT系60及びレーザ治療系80からの光が導かれる。
OCT系60からの光(測定光)は、光ファイバ51Aにより導かれ、そのファイバ端面から出射する。このファイバ端面に臨む位置には、コリメートレンズ52Aが配置されている。コリメートレンズ52Aにより平行光束とされた測定光は、OCT用光路とレーザ治療用光路とを結合する光路結合部材53に導かれる。一方、レーザ治療系80からの光(照準光、治療用レーザ光)は、光ファイバ51Bにより導かれ、そのファイバ端面から出射する。このファイバ端面に臨む位置には、コリメートレンズ52Bが配置されている。コリメートレンズ52Bにより平行光束とされた測定光は、光路結合部材53に導かれる。
OCTのための光の波長とレーザ治療のための光の波長とが異なる場合、光路結合部材53としてダイクロイックミラーを用いることができる。典型的には、OCTのための光として1050nm程度の中心波長を備える広帯域光を利用し、かつ、レーザ治療のための光として635nm程度の波長のレーザ光を用いることができる(照準光としては例えば任意の可視光を用いることができる)。前眼部を観察する場合と後眼部を観察する場合とで、OCTのための光の波長を変更することが可能である。例えば、前眼部を観察する場合のOCTのための光として1050nm程度の中心波長を備える広帯域光を利用し、後眼部を観察する場合のOCTのための光として1050nmより長波長の中心波長を備える広帯域光を利用することができる。
他方、双方の波長が実質的に同じ場合や近い場合には、光路結合部材53としてハーフミラーを用いることが可能である。他の例として、OCTを行うタイミングとレーザ治療を行うタイミングとが異なる場合には、クイックリターンミラー等の光路切替部材を光路結合部材53として用いることが可能である。図3等に示す例では、OCT系60からの測定光は光路結合部材53を透過して光スキャナ41に入射し、レーザ治療系80からの光は光路結合部材53に反射されて光スキャナ41に入射する。
光スキャナ41は、2次元光スキャナであり、水平方向(x方向)へ光を偏向するxスキャナ41Hと、垂直方向(y方向)へ光を偏向するyスキャナ41Vとを含む。xスキャナ41H及びyスキャナ41Vは、それぞれ任意の形態の光スキャナであってよく、例えばガルバノミラーが使用される。光スキャナ41は、例えば、コリメートレンズ52A及び52Bのそれぞれの射出瞳位置又はその近傍位置に配置される。更に、光スキャナ41は、例えば、結像レンズ42の入射瞳位置又はその近傍位置に配置される。
本例のように2つの1次元光スキャナを組み合わせて2次元光スキャナを構成する場合、2つの1次元光スキャナは所定距離(例えば10mm程度)だけ離れて配置される。それにより、例えば、いずれかの1次元光スキャナを上記射出瞳位置及び/又は上記入射瞳位置に配置することができる。
結像レンズ42は、光スキャナ41を通過した平行光束(測定光、照準光、治療用レーザ光)を一旦結像させる。更に、この光を被検眼E(眼底、角膜等の観察部位)において再結像させるために、この光をリレーレンズ43によりリレーし、偏向ミラー44により被検眼Eに向けて反射する。
照射系40により導かれてきた光が受光系20の対物光軸(AL1及びAR1、並びにAL2及びAR2)と異なる方向から被検眼Eに照射されるように、偏向ミラー44の位置は予め決定されている。本例では、互いの対物光軸が非平行に配置された左受光系20Lと右受光系20Rとの間の位置に偏向ミラー44が配置されている。このような配置を可能にする要因の一つに、リレーレンズ43を配置したことによる光学的構成の自由度の向上がある。また、例えば、水平方向の光スキャナ(本例ではxスキャナ41H)と共役な位置と、対物レンズ21L及び対物レンズ21Rとの間の距離を十分に小さく設計することが可能となるため、装置の小型化を図ることができる。
一般に、光スキャナ41によるスキャン可能範囲(スキャン可能角度)は制限されているので、焦点距離が可変な結像レンズ42(又は結像レンズ系)を適用することによってスキャン可能範囲を拡大することが可能である。その他にも、スキャン可能範囲を拡大するための任意の構成を適用することが可能である。
(OCT系60)
図5に、OCT系60の構成の例を示す。OCT系60は、OCTを実行するための干渉光学系を含む。図5に示す光学系は、スウェプトソースOCTの例であり、波長走査型(波長掃引型)光源からの光を測定光と参照光とに分割し、被検眼Eからの測定光の戻り光と参照光路を経由した参照光とを干渉させて干渉光を生成し、この干渉光を検出する。干渉光学系による干渉光の検出結果(検出信号)は、干渉光のスペクトルを示す信号であり、制御部100に送られる。
光源ユニット61は、一般的なスウェプトソースタイプのOCT装置と同様に、出射光の波長を走査(掃引)可能な波長走査型(波長掃引型)光源を含む。光源ユニット61は、人眼では視認できない近赤外の波長帯において、出力波長を時間的に変化させる。
光源ユニット61から出力された光L0は、光ファイバf1によりファイバカプラ62に導かれて測定光LSと参照光LRとに分割される。
測定光LSは、光ファイバf2により導かれてファイバ端面から出射され、コリメートレンズ63により平行光束とされ、コーナーキューブ64に導かれる。コーナーキューブ64は、測定光LSの進行方向を逆方向に折り返す。コーナーキューブ64は、測定光LSの入射光路及び出射光路に沿う方向に移動可能とされ、それにより測定光LSの光路の長さが変更される。なお、コーナーキューブ64と同様の手段が、参照光LRの光路に設けられ、参照光LRの光路の長さを変更するようにしてもよい。
コーナーキューブ64を経由した測定光LSは、偏向ミラー65により偏向され、コリメートレンズ66により光ファイバ51Aのファイバ端面に集光され、上記の経路を経由して被検眼Eに照射される。測定光LSは、被検眼Eの様々な深さ位置において反射・散乱される。被検眼Eからの測定光LSの戻り光は、反射光や後方散乱光を含み、往路と同じ経路を逆向きに進行してファイバカプラ62に導かれ、光ファイバf3を経由してファイバカプラ67に到達する。
一方、ファイバカプラ62により生成された参照光LRは、光ファイバf4によりファイバカプラ67に導かれる。ファイバカプラ67は、光ファイバf3により導かれてきた測定光LSと、光ファイバf4により導かれてきた参照光LRとを合成して(干渉させて)干渉光を生成する。ファイバカプラ67は、所定の分岐比(例えば1:1)でこの干渉光を分割することにより、一対の干渉光LCを生成する。ファイバカプラ67から出射した一対の干渉光LCは、それぞれ光ファイバf5、f6により検出器68に導かれる。
検出器68は、例えば一対の干渉光LCをそれぞれ検出する一対のフォトディテクタを含み、これらによる検出結果の差分を出力するバランスドフォトダイオード(Balanced Photo Diode)である。検出器68は、その検出結果(検出信号)を制御部100に送る。
本例ではスウェプトソースOCTが適用されているが、他のタイプのOCT、例えばスペクトラルドメインOCTを適用することが可能である。
(レーザ治療系80)
図6に、レーザ治療系80の構成例を示す。レーザ治療系80は、レーザ治療を行うための構成を含む。特に、レーザ治療系80は、被検眼Eに照射される光を発生する。レーザ治療系80は、照準光源81Aと、治療光源81Bと、ガルバノミラー82と、遮光板83とを含む。なお、これら以外の部材をレーザ治療系80に設けることができる。例えば、光ファイバ51Bの直前位置に、レーザ治療系80により発生された光を光ファイバ51Bの端面に入射させる光学素子(レンズ等)を設けることができる。
照準光源81Aは、レーザ治療を施す部位に照準を合わせるための照準光LAを発生する。照準光源81Aとしては任意の光源が用いられる。本実施形態では、被検眼Eの撮影画像を観察しつつ照準を合わせる構成が適用されるので、撮像素子23(撮像素子23L及び23R)が感度を有する波長帯の光を発する光源(レーザ光源、発光ダイオード等)が照準光源81Aとして用いられる。なお、目視観察により照準合わせを行う構成が適用される場合には、照準光LAとして可視光が用いられる。照準光LAは、ガルバノミラー82に導かれる。
治療光源81Bは、治療用レーザ光(治療光LT)を発する。治療光LTは、その用途に応じて可視レーザ光でも不可視レーザ光でもよい。また、治療光源81Bは、異なる波長のレーザ光を発する単一のレーザ光源又は複数のレーザ光源であってよい。治療光LTは、ガルバノミラー82に導かれる。
照準光LAと治療光LTは、ガルバノミラー82の反射面の同じ位置に到達するようになっている。なお、照準光LAと治療光LTをまとめて「照射光」と呼ぶことがある。ガルバノミラー82(の反射面)の向きは、少なくとも、照射光を光ファイバ51Bに向けて反射させる向き(照射用向き)と、照射光を遮光板83に向けて反射させる向き(停止用向き)とに変更される。
ガルバノミラー82が停止用向きに配置されている場合、照射光は遮光板83に到達する。遮光板83は、例えば照射光を吸収する材質及び/又は形態からなる部材であり、遮光作用を有する。
本実施形態では、照準光源81Aと治療光源81Bは、それぞれ連続的に光を発生する。そして、ガルバノミラー82を照射用向きに配置させることで、照射光を被検眼Eに照射させる。また、ガルバノミラー82を停止用向きに配置させることで、被検眼Eに対する照射光の照射を停止させる。他の実施形態において、照準光源81A及び/又は治療光源81Bは、断続的に光を発生可能に構成されてよい。すなわち、照準光源81A及び/又は治療光源81Bは、パルス光を発生可能に構成されてよい。そのためのパルス制御は制御部100により実行される。この構成が適用される場合、ガルバノミラー82及び遮光板83を設ける必要はない。
(制御部100)
制御部100は、眼科用手術顕微鏡1の各部の制御を実行する(図7参照)。制御部100は、照明系10、撮像素子23、表示部31、マイクロスイッチ79、光スキャナ41、OCT系60、レーザ治療系80等を制御する。照明系10に対する制御の例として、光源の点灯、消灯、光量調整、絞りの調整、スリット照明が可能な場合にはスリット幅の調整などがある。撮像素子23に対する制御の例として、露光調整やゲイン調整や撮影レート調整などがある。
制御部100は、各種の情報を表示部31(左表示部31L、右表示部31R)に表示させる。例えば、制御部100は、撮像素子23Lにより取得された画像(又はそれを処理して得られた画像)を左表示部31Lに表示させ、かつ、撮像素子23Rにより取得された画像(又はそれを処理して得られた画像)を右表示部31Rに表示させる。また、制御部100は、左表示部31L、右表示部31Rや図示しない別の表示部にグラフィカルユーザインターフェース(GUI)を表示させることが可能である。GUIには、例えば、光学系の設定を変更するための操作アイコンを含む操作画面や、撮像素子23L、23Rにより取得された画像(又はそれを処理して得られた画像)が表示される。
制御部100は、マイクロスイッチ79のスイッチ状態を検出することにより、前置レンズ90が収納部74に収納されているか否かを判定する。本実施形態では、マイクロスイッチ79がスイッチオフ状態であるとき、制御部100は、前置レンズ90が対物レンズ21L、21Rと被検眼Eとの間に配置されていると判断する。マイクロスイッチ79がスイッチオン状態であるとき、制御部100は、前置レンズ90が収納部74に収納されていると判断する。制御部100は、マイクロスイッチ79のスイッチ状態に応じて、眼科用手術顕微鏡1の各部を制御することが可能である。
光スキャナ41に対する制御の例として、測定光LSの偏向制御や、照準光LA及び/又は治療光LTの偏向制御などがある。測定光LSの偏向制御として、例えば予め設定されたOCTスキャンパターン(偏向パターン)に応じた複数の位置に測定光LSが照射されるように、測定光LSを順次に偏向する制御などがある。照準光LA及び/又は治療光LTの偏向制御として、例えば予め設定されたレーザ治療パターン(偏向パターン)に応じた複数の位置に照準光LA及び/又は治療光LTが照射されるように、照準光LA及び/又は治療光LTを順次に偏向する制御などがある。
OCT系60に含まれる制御対象としては、光源ユニット61、検出器68などがある。レーザ治療系80に含まれる制御対象としては、照準光源81A、治療光源81B、ガルバノミラー82などがある。
更に、制御部100は、各種の機構を制御する。そのような機構としては、ステレオ角変更部20A、合焦部24A、光路偏向部25A、間隔変更部30A、及び向き変更部30Bが設けられている。また、制御部100は、光路長変更部60Aを制御することが可能である。
制御部100は、プロセッサを含む。プロセッサの機能は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、プログラマブル論理デバイス(例えば、SPLD(Simple Programmable Logic Device)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array))等の回路により実現される。制御部100は、例えば、記憶回路や記憶装置に格納されているプログラムを読み出し実行することで、実施形態に係る機能を実現する。
ステレオ角変更部20Aは、左受光系20Lと右受光系20Rとを相対的に回転移動する。すなわち、ステレオ角変更部20Aは、互いの対物光軸(例えばAL1とAR1)がなす角度を変更するように左受光系20Lと右受光系20Rとを相対移動させる。この相対移動は、例えば、左受光系20Lと右受光系20Rとを反対の回転方向に同じ角度だけ移動させるものである。この移動態様においては、互いの対物光軸(例えばAL1とAR1)がなす角の二等分線の向きは一定である。一方、当該二等分線の向きが変化するように上記相対移動を行うことも可能である。
合焦部24Aは、左右のフォーカスレンズ24L及び24Rを光路に対して挿入/退避させる。合焦部24Aは、左右のフォーカスレンズ24L及び24Rを同時に挿入/退避させるように構成されていてよい。他の例において、合焦部24Aは、左右のフォーカスレンズ24L及び24Rを(同時に)光軸方向に移動させることによって焦点位置を変更するように構成されてよい。或いは、左右のフォーカスレンズ24L及び24Rの屈折力を(同時に)変更することによって焦点距離を変更するように構成されてよい。
光路偏向部25Aは、左右のウェッジプリズム25L及び25Rを光路に対して挿入/退避させる。光路偏向部25Aは、左右のウェッジプリズム25L及び25Rを同時に挿入/退避させるように構成されていてよい。他の例において、光路偏向部25Aは、左右のウェッジプリズム25L及び25Rのプリズム量(及びプリズム方向)を(同時に)変更することによって左受光系20L及び右受光系20Rの光路の向きを変更するように構成されてよい。
間隔変更部30Aは、左接眼系30L及び右接眼系30Rの間隔を変更する。間隔変更部30Aは、互いの光軸の相対的向きを変化させずに左接眼系30L及び右接眼系30Rを相対的に移動するように構成されてよい。
向き変更部30Bは、左接眼系30L及び右接眼系30Rの相対的向きを変更する。向き変更部30Bは、互いの光軸がなす角度を変更するように左接眼系30Lと右接眼系30Rとを相対移動させる。この相対移動は、例えば、左接眼系30Lと右接眼系30Rとを反対の回転方向に同じ角度だけ移動させるものである。この移動態様においては、互いの光軸がなす角の二等分線の向きは一定である。一方、当該二等分線の向きが変化するように上記相対移動を行うことも可能である。
光路長変更部60Aは、参照光LRの光路長及び測定光LSの光路長の少なくとも一方を変更することにより参照光LRの光路長と測定光LSの光路長との差を変更する。本実施形態では、光路長変更部60Aは、コーナーキューブ64とコーナーキューブ64を測定光LSの光路に沿って移動させる移動機構とを含む。制御部100からの制御を受けた移動機構が測定光LSの光路に沿ってコーナーキューブ64を移動させて測定光LSの光路長を変更することにより、参照光LRの光路長と測定光LSの光路長との差が変更される。なお、光路長変更部60Aは、互いに光路長が異なる複数の測定光路を設け、制御部100からの制御を受け、複数の測定光路の1つを選択するように構成されていてもよい。
また、光路長変更部60Aは、参照光LRの光路長を変更するように構成されていてもよい。すなわち、光路長変更部60Aは、参照光LRの光路に設けられたコーナーキューブとコーナーキューブを参照光LRの光路に沿って移動させる移動機構とを含んでもよい。制御部100からの制御を受けた移動機構が参照光LRの光路に沿ってコーナーキューブを移動させて参照光LRの光路長を変更することにより、参照光LRの光路長と測定光LSの光路長との差が変更される。なお、光路長変更部60Aは、互いに光路長が異なる複数の参照光路を設け、制御部100からの制御を受け、複数の参照光路の1つを選択するように構成されていてもよい。
(データ処理部200)
データ処理部200は、各種のデータ処理を実行する。このデータ処理には、画像を形成する処理や、画像を加工する処理などが含まれる。また、データ処理部200は、画像や検査結果や測定結果の解析処理や、被検者に関する情報(電子カルテ情報等)に関する処理を実行可能であってよい。データ処理部200には、変倍処理部210と、OCT画像形成部220とが含まれる。
変倍処理部210は、撮像素子23により取得された画像を拡大する。この処理は、いわゆるデジタルズーム処理であり、撮像素子23により取得された画像の一部を切り取る処理と、その部分の拡大画像を作成する処理とを含む。画像の切り取り範囲は、観察者により又は制御部100により設定される。変倍処理部210は、左受光系20Lの撮像素子23Lにより取得された画像(左画像)と、右受光系20Rの撮像素子23Rにより取得された画像(右画像)とに対して、同じ処理を施す。それにより、観察者の左眼E0Lと右眼E0Rとに同じ倍率の画像が提示される。
なお、このようなデジタルズーム機能に加えて、又はそれの代わりに、いわゆる光学ズーム機能を設けることが可能である。光学ズーム機能は、左受光系20L及び右受光系20Rのそれぞれに変倍レンズ(変倍レンズ系)を設けることにより実現される。具体例として、変倍レンズを(選択的に)光路に対して挿入/退避する構成や、変倍レンズを光軸方向に移動させる構成がある。光学ズーム機能に関する制御は制御部100によって実行される。
OCT画像形成部220は、OCT系60の検出器68により得られる干渉光LCの検出結果に基づいて、被検眼得の画像を形成する。制御部100は、検出器68から順次に出力される検出信号をOCT画像形成部220に送る。OCT画像形成部220は、例えば一連の波長走査毎に(Aライン毎に)、検出器68により得られた検出結果に基づくスペクトル分布にフーリエ変換等を施すことにより、各Aラインにおける反射強度プロファイルを形成する。更に、OCT画像形成部220は、各Aラインプロファイルを画像化することにより画像データを形成する。それにより、Bスキャン像(断面像)やボリュームデータ(3次元画像データ)が得られる。
データ処理部200は、OCT画像形成部220により形成された画像(OCT画像)を解析する機能を備えていてよい。この解析機能としては、網膜厚解析や、正常眼との比較解析などがある。このような解析機能は、公知のアプリケーションを用いて実行される。また、データ処理部200は、受光系20により取得された画像を解析する機能を備えていてよい。また、データ処理部200は、受光系20により取得された画像の解析とOCT画像の解析とを組み合わせた解析機能を備えていてもよい。
データ処理部200は、プロセッサを含む。プロセッサの機能は、例えば、CPU、GPU、ASIC、プログラマブル論理デバイス等の回路により実現される。データ処理部200は、例えば、記憶回路や記憶装置に格納されているプログラムを読み出し実行することで、実施形態に係る機能を実現する。
(ユーザインターフェイス300)
ユーザインターフェイス(UI)300は、観察者等と眼科用手術顕微鏡1との間で情報のやりとりを行うための機能を備える。ユーザインターフェイス300は、表示デバイスと操作デバイス(入力デバイス)とを含む。表示デバイスは、表示部31を含んでよく、それ以外の表示デバイスを含んでもよい。操作デバイスは、各種のハードウェアキー及び/又はソフトウェアキーを含む。操作デバイスの少なくとも一部と表示デバイスの少なくとも一部とを一体的に構成することが可能である。タッチパネルディスプレイはその一例である。
(通信部400)
通信部400は、他の装置に情報を送信する処理と、他の装置から送られた情報を受信する処理とを行う。通信部400は、既定のネットワーク(LAN、インターネット等)に準拠した通信デバイスを含んでいてよい。例えば、通信部400は、医療機関内に設けられたLANを介して、電子カルテデータベースや医用画像データベースから情報を取得する。また、外部モニタが設けられている場合、通信部400は、眼科用手術顕微鏡1により取得される画像(受光系20により取得される画像、OCT画像等)を、実質的にリアルタイムで外部モニタに送信することができる。
受光系20及び接眼系30は、実施形態に係る「観察系」の一例である。左照明系10L、左受光系20L及び左接眼系30Lは、実施形態に係る「左観察系」の一例である。右照明系10R、右受光系20R及び右接眼系30Rは、実施形態に係る「右観察系」の一例である。参照光LRの光路に配置された光学素子は、実施形態に係る「参照アーム」の一例である。測定光LSの光路に配置された光学素子は、実施形態に係る「測定アーム」の一例である。収納部74は、実施形態に係る「所定の退避位置に前置レンズを保持する保持部」の一例である。マイクロスイッチ79は、実施形態に係る「前置レンズが所定の退避位置から移動されたことを検出する検出部」の一例である。OCT系60は、実施形態に係る「OCT光学系」の一例である。
[動作]
図8に、実施形態に係る眼科用手術顕微鏡1の動作例のフロー図を示す。図8は、被検眼Eの前眼部を観察するための前眼部観察モードから被検眼Eの眼底を観察するための眼底観察モードに移行する場合の眼科用手術顕微鏡1の動作例を表す。
(S1)
前眼部観察モードでは、前置レンズ90は、対物レンズ21L、21Rと被検眼Eとの間から退避され、収納部74に収納されている。それにより、マイクロスイッチ79はスイッチオン状態とされる。前眼部観察モードにおいて、術者は、鏡筒部9と被検眼Eとの間の距離を調整しつつ、左接眼系30L及び右接眼系30Rを覗き込んで被検眼Eの前眼部を両眼で観察することができる。
(S2)
前眼部観察モードにおいて、術者が操作ノブ92を把持して保持アーム91を下方に旋回させることにより前置レンズ90を対物レンズ21L、21Rと被検眼Eとの間に配置させると、マイクロスイッチ79はスイッチオン状態からスイッチオフ状態に変化する。制御部100は、マイクロスイッチ79のスイッチ状態を監視しており、スイッチオン状態からスイッチオフ状態への変化を前置レンズ90のリリース(すなわち、前置レンズ90の収納部74からの離脱)として検出する。前置レンズ90のリリースが検出されなかったとき(S2:N)、眼科用手術顕微鏡1の動作はS1に移行し、前眼部観察モードが継続される。前置レンズ90のリリースが検出されたとき(S2:Y)、眼科用手術顕微鏡1の動作はS3に移行する。
(S3)
S2において、前置レンズ90のリリースが検出されたとき(S2:Y)、制御部100は、OCT系60における測定光LSの光路長と参照光LRの光路長との光路長差が眼底観察用の光路長差に対応するように光路長変更部60Aを制御する。本実施形態では、制御部100からの制御を受け、測定光LSの光路長が所定の光路長だけ短くなるようにコーナーキューブ64が測定光LSの光路に沿って移動される。なお、参照光LRの光路長を変更する場合、制御部100からの制御を受け、参照光LRの光路長が所定の光路長だけ長くなるようにコーナーキューブが参照光LRの光路に沿って移動される。
(S4)
術者は、鏡筒部9と前置レンズ90との間の距離を調整した後、被検眼Eの位置に合わせて、鏡筒部9及び前置レンズ90を連動させて鏡筒部9及び前置レンズ90と被検眼Eとの距離を調整する。なお、鏡筒部9を上下方向に移動させる移動機構が設けられている場合、制御部100は、移動機構により鏡筒部9だけを移動させて鏡筒部9と前置レンズ90との間の距離を調整した後、被検眼Eの位置に合わせて、鏡筒部9と前置レンズ90とを一体となって被検眼Eとの距離を調整することが可能である。
(S5)
眼科用手術顕微鏡1の観察モードは、眼底観察モードに移行し、眼科用手術顕微鏡1の動作は終了する(エンド)。なお、眼底観察モードへの移行前に、制御部100は、OCT系60により得られる測定光の戻り光に基づく干渉光により得られる眼底の断層像の表示部31における表示位置が所定の位置に表示されるように参照光の光路長と測定光の光路長とを調整することが可能である。眼底観察モードにおいて、術者は、左接眼系30L及び右接眼系30Rを覗き込んで被検眼Eの眼底を両眼で観察することができる。
図9に、実施形態に係る眼科用手術顕微鏡1の他の動作例のフロー図を示す。図9は、被検眼Eの眼底を観察するための眼底観察モードから被検眼Eの前眼部を観察するための前眼部観察モードに移行する場合の眼科用手術顕微鏡1の動作例を表す。
(S11)
眼底観察モードでは、前置レンズ90は、対物レンズ21L、21Rと被検眼Eとの間に配置されている。それにより、マイクロスイッチ79はスイッチオフ状態とされる。眼底観察モードにおいて、術者は、鏡筒部9及び前置レンズ90と被検眼Eとの間の距離を調整しつつ、左接眼系30L及び右接眼系30Rを覗き込んで被検眼Eの眼底を両眼で観察することができる。
(S12)
眼底観察モードにおいて、術者が操作ノブ92を把持して保持アーム91を上方に旋回させることにより前置レンズ90を対物レンズ21L、21Rと被検眼Eとの間から退避させて収納部74に収納させると、マイクロスイッチ79はスイッチオフ状態からスイッチオン状態に変化する。制御部100は、マイクロスイッチ79のスイッチ状態を監視しており、スイッチオフ状態からスイッチオン状態への変化を前置レンズ90の収納として検出する。前置レンズ90の収納が検出されなかったとき(S12:N)、眼科用手術顕微鏡1の動作はS11に移行し、眼底観察モードが継続される。前置レンズ90の収納が検出されたとき(S12:Y)、眼科用手術顕微鏡1の動作はS13に移行する。
(S13)
S12において、前置レンズ90の収納が検出されたとき(S12:Y)、制御部100は、OCT系60における測定光LSの光路長と参照光LRの光路長との光路長差が前眼部観察用の光路長差に対応するように光路長変更部60Aを制御する。本実施形態では、制御部100からの制御を受け、測定光LSの光路長が所定の光路長だけ長くなるようにコーナーキューブ64が測定光LSの光路に沿って移動される。なお、参照光LRの光路長を変更する場合、制御部100からの制御を受け、参照光LRの光路長が所定の光路長だけ短くなるようにコーナーキューブが参照光LRの光路に沿って移動される。
(S14)
術者は、被検眼Eの位置に合わせて、鏡筒部9と被検眼Eとの距離を調整する。なお、鏡筒部9を上下方向に移動させる移動機構が設けられている場合、制御部100は、被検眼Eの位置に合わせて、移動機構により鏡筒部9を移動させて鏡筒部9と被検眼Eとの距離を調整することが可能である。
(S15)
眼科用手術顕微鏡1の観察モードは、前眼部観察モードに移行し、眼科用手術顕微鏡1の動作は終了する(エンド)。なお、前眼部観察モードへの移行前に、制御部100は、OCT系60により得られる測定光の戻り光に基づく干渉光により得られる眼底の断層像の表示部31における表示位置が所定の位置に表示されるように参照光の光路長と測定光の光路長とを調整することが可能である。前眼部観察モードにおいて、術者は、左接眼系30L及び右接眼系30Rを覗き込んで被検眼Eの前眼部を両眼で観察することができる。
[変形例]
(第1変形例)
上記の実施形態では、前置レンズ90のリリースが検出されたとき、又は前置レンズ90の収納が検出されたとき、OCT系60における光路長差を変更する場合について説明した。しかしながら、実施形態に係る眼科用手術顕微鏡1の動作はこれに限定されるものではない。以下では、実施形態の第1変形例に係る眼科用手術顕微鏡について、実施形態との相違点を中心に説明する。
図10に、実施形態の第1変形例に係る眼科用手術顕微鏡の制御系のブロック図の一例を示す。図10において、図7と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
第1変形例に係る制御部100aが実施形態に係る制御部100と異なる点は、制御部100aの制御対象が、光路長変更部60Aに代えて、波長変更部60B、ビーム径変更部60C、及び分散補償変更部60Dが追加された点である。なお、制御部100aは、光路長変更部60Aに加えて、波長変更部60B、ビーム径変更部60C、及び分散補償変更部60Dを制御することが可能である。
波長変更部60Bは、光源ユニット61から出力される光の波長(中心波長)を変更する。具体的には、波長変更部60Bは、前置レンズ90が対物レンズと被検眼Eとの間に配置されたとき、光源ユニット61から出力される光の波長を眼底用波長に変更する。また、波長変更部60Bは、前置レンズ90が対物レンズと被検眼Eとの間から退避されたとき、光源ユニット61から出力される光の波長を前眼部用波長に変更する。眼底用波長は、前眼部用波長より短い波長であってよい。制御部100は、マイクロスイッチ79のスイッチ状態に基づいて波長変更部60Bを制御することが可能である。
波長変更部60Bは、制御部100aからの制御を受け、出力する光の波長を変更可能な光源により、光源ユニット61から出力される光の波長を変更することが可能である。また、波長変更部60Bは、制御部100aからの制御を受け、互いに異なる波長の光を出力する複数の光源の1つが出力する光を選択するようにしてもよい。更に、波長変更部60Bは、制御部100aからの制御を受け、光源ユニット61から出力される光の光路に1以上の波長選択部材(フィルタ部材)を挿脱させることにより光源ユニット61から出力される光の波長を変更してもよい。
ビーム径変更部60Cは、被検眼Eに照射される測定光LSのビーム径を変更する。具体的には、ビーム径変更部60Cは、前置レンズ90が対物レンズと被検眼Eとの間に配置されたとき、測定光LSのビーム径を眼底用ビーム径に変更する。また、ビーム径変更部60Cは、前置レンズ90が対物レンズと被検眼Eとの間から退避されたとき、測定光LSのビーム径を前眼部用ビーム径に変更する。眼底用ビーム径は、前眼部用ビーム径より大きくてよい。制御部100は、マイクロスイッチ79のスイッチ状態に基づいてビーム径変更部60Cを制御することが可能である。
ビーム径変更部60Cは、制御部100aからの制御を受け、OCT系60内のコリメートレンズを移動させることにより測定光LSのビーム径を変更することが可能である。また、ビーム径変更部60Cは、制御部100aからの制御を受け、光源ユニット61からの光の光路又は測定光LSの光路に設けられた絞りを制御することにより測定光LSのビーム径を変更してもよい。更に、ビーム径変更部60Cは、制御部100aからの制御を受け、互いにビーム径が異なる光を出力する複数の光源の1つが出力する光を選択するようにしてもよい。
分散補償変更部60Dは、測定光LS又は参照光LRに対する分散補償を変更する。具体的には、分散補償変更部60Dは、前置レンズ90が対物レンズと被検眼Eとの間に配置されたとき、測定光LS及び参照光LRの少なくとも一方に対して眼底用の分散補償を施す。また、ビーム径変更部60Cは、前置レンズ90が対物レンズと被検眼Eとの間から退避されたとき、測定光LS及び参照光LRの少なくとも一方に対して前眼部用の分散補償を施す。制御部100は、マイクロスイッチ79のスイッチ状態に基づいて分散補償変更部60Dを制御することが可能である。
分散補償変更部60Dは、制御部100aからの制御を受け、測定光LS及び参照光LRの光路の少なくとも一方に対して、眼球の分散補償を行うための分散補償部材を挿脱させることにより分散補償を変更することが可能である。例えば、分散補償部材を移動する移動機構が設けられており、制御部100aが移動機構を制御することにより、測定光LS及び参照光LRの少なくとも一方の光路に対して分散補償部材を挿脱させる。
また、制御部100aは、マイクロスイッチ79のスイッチ状態に対応して(すなわち、前置レンズ90の移動に対応して)、表示手段(ユーザインターフェイス300として設けられた表示デバイス)に表示させるGUIの内容(又は表示形態)を変更することが可能である。例えば、GUIは、光スキャナ41による光の偏向パターンのリストを含み、制御部100aは、マイクロスイッチ79のスイッチ状態に対応して、表示手段に表示されるリストを変更する。具体的には、前置レンズ90が対物レンズと被検眼Eとの間に配置されたとき、制御部100aは、表示手段に表示されるリストを眼底用の偏向パターンのリストに変更する。また、前置レンズ90が対物レンズと被検眼Eとの間から退避されたとき、制御部100aは、表示手段に表示されるリストを前眼部用の偏向パターンのリストに変更する。制御部100aは、表示手段に表示させた偏向パターンのリストの中から術者等により選択された偏向パターンに基づいて光スキャナ41を制御する。なお、制御部100aは、表示部31に上記のGUIを表示させ、マイクロスイッチ79のスイッチ状態に対応して、表示部31に表示させるGUIの内容を変更するようにしてもよい。また、制御部100aは、表示部31等の表示手段に上記のGUIを表示させ、マイクロスイッチ79のスイッチ状態に対応して、表示手段に表示させるGUIのレイアウトを変更するようにしてもよい。
なお、図10では、制御部100aが、マイクロスイッチ79のスイッチ状態に対応して、主にOCT系60を制御する場合について説明したが、レーザ治療系80を制御してもよい。例えば、波長変更部60Bは、照準光LA及び治療光LTの少なくとも一方の波長を変更してもよい。
(第2変形例)
上記の実施形態又は第1変形例では、検出部としてのマイクロスイッチ79を用いて前置レンズ90の収納部74からのリリースを検出する場合(すなわち、退避位置からの離脱)について説明した。しかしながら、実施形態に係る眼科用手術顕微鏡1の動作はこれに限定されるものではない。例えば、検出部は、対物レンズと被検眼Eとの間の所定の挿入位置への前置レンズ90の配置や、収納部74における所定の退避位置からの挿入位置までの間の任意の移動を検出するものであってよい。
例えば、検出部が枢軸91bを軸とする保持板91a(前置レンズ90)の回動を検出することにより、前置レンズ90が対物レンズと被検眼Eとの間に配置されたか否かを判断するようにしてもよい。また、検出部が、対物レンズと被検眼Eとの間の所定の位置に前置レンズ90が配置されたか否かを検出することにより、前置レンズ90が対物レンズと被検眼Eとの間に配置されたか否かを判断するようにしてもよい。
(第3変形例)
上記の実施形態又はその変形例に係る光学系の構成は図3及び図4で説明した構成に限定されるものではない。
図11に、実施形態の第3変形例に係る眼科用手術顕微鏡の光学系の構成例を示す。図11において、図3と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
第3変形例に係る眼科用手術顕微鏡の光学系が図3に示す光学系と異なる点は、補助レンズ110L、110R、111が追加されている点である。補助レンズ110Lは、左受光系20L(左観察系)の焦点位置と前置レンズ90の後側焦点位置とを略一致させるために対物レンズ21Lと前置レンズ90との間の対物光軸AL1に配置されている。補助レンズ110Rは、右受光系20R(右観察系)の焦点位置と前置レンズ90の後側焦点位置とを略一致させるために対物レンズ21Rと前置レンズ90との間の対物光軸AR1に配置されている。補助レンズ111は、照射系40の焦点位置と前置レンズ90の後側焦点位置とを略一致させるために偏向ミラー44と前置レンズ90との間の照射系40の光軸に配置されている。
補助レンズ110L、110R、111は、それぞれの光路における挿入位置から一体となって退避可能に構成されている。例えば、対物レンズと被検眼Eとの間に前置レンズ90が配置されたとき、補助レンズ110L、110R、111は、それぞれの光路の挿入位置に配置される。また、対物レンズと被検眼Eとの間から前置レンズ90が退避されたとき、補助レンズ110L、110R、111は、それぞれの光路から退避される。
なお、図11では、対物レンズ21Lの光軸、対物レンズ21Rの光軸、及び照射系40の光軸のそれぞれに補助レンズ110L、110R、111が挿脱されル場合について説明したが、実施形態に係る眼科用手術顕微鏡の構成はこれに限定されるものではない。例えば、対物レンズ21Lの光軸、対物レンズ21Rの光軸、及び照射系40の光軸のうち少なくとも2つの光軸に共通の単一の補助レンズが挿脱されてもよい。
このように補助レンズ110L、110R、111を設け、各系の焦点位置と前置レンズ90の後側焦点位置とを略一致させるようにしたので、前置レンズ90が対物レンズと被検眼Eとの間に配置された場合に、鏡筒部9と前置レンズ90との間の距離を調整する必要がなくなる。
[作用・効果]
実施形態の眼科用手術顕微鏡の作用及び効果について説明する。
実施形態に係る眼科用手術顕微鏡(眼科用手術顕微鏡1)は、観察系(受光系20、接眼系30)と、照射系(照射系40)と、前置レンズ(前置レンズ90)と、制御部(制御部100、100a)とを含む。観察系は、対物レンズ(対物レンズ21L、21R)を介して被検眼(被検眼E)を双眼で観察するために用いられる。照射系は、被検眼に光(測定光LS、照準光LA、治療光LT)を照射するために用いられる。前置レンズは、観察系の光路及び照射系の光路に挿入可能である。制御部は、観察系の光路及び照射系の光路に挿入するための前置レンズの移動に対応して、照射系を制御する。
このような構成によれば、観察系の光路及び照射系の光路に挿入可能な前置レンズの移動に対応して照射系を制御するようにしたので、手術中に前置レンズが配置された場合であっても術者(助手を含む)が照射系を調整する必要がなくなる。それにより、術者や患者への負担を軽減することが可能になる。
また、実施形態に係る眼科用手術顕微鏡は、観察系の光路及び照射系の光路から外れた所定の退避位置に前置レンズを保持する保持部(収納部74)と、前置レンズが退避位置から移動されたことを検出する検出部(マイクロスイッチ79)と、を含み、制御部は、前置レンズの移動が検出部により検出されたことに対応して、照射系を制御してもよい。
このような構成によれば、光路から外れた所定の退避位置に保持された前置レンズの移動の検出結果に基づいて照射系を制御するようにしたので、前置レンズが被検眼の直前に配置された場合でも術者が照射系を調整する必要がなくなる。それにより、術者や患者への負担を軽減することが可能になる。
また、実施形態に係る眼科用手術顕微鏡では、照射系は、光の波長を変更する波長変更部(波長変更部60B)を含み、制御部は、前置レンズの移動に対応して波長変更部を制御してもよい。
このような構成によれば、前置レンズの移動に対応して照射系により被検眼に照射される光の波長を変更するようにしたので、前置レンズが被検眼の直前に配置された場合でも術者が照射系により照射される光の波長を変更する必要がなくなる。それにより、術者や患者への負担を軽減することが可能になる。
また、実施形態に係る眼科用手術顕微鏡では、照射系は、光のビーム径を変更するビーム径変更部(ビーム径変更部60C)を含み、制御部は、前置レンズの移動に対応してビーム径変更部を制御してもよい。
このような構成によれば、前置レンズの移動に対応して照射系により被検眼に照射される光のビーム径を変更するようにしたので、前置レンズが被検眼の直前に配置された場合でも術者が照射系により照射される光のビーム径を変更する必要がなくなる。それにより、術者や患者への負担を軽減することが可能になる。
また、実施形態に係る眼科用手術顕微鏡では、照射系は、光路に挿入可能な分散補償部材と、分散補償部材を移動する移動機構と、を含み、制御部は、前置レンズの移動に対応して移動機構を制御してもよい。
このような構成によれば、前置レンズの移動に対応して光路に分散補償部材を挿脱させるようにしたので、前置レンズが被検眼の直前に配置された場合でも術者が分散補償部材の挿脱を行う必要がなくなる。それにより、術者や患者への負担を軽減することが可能になる。
また、実施形態に係る眼科用手術顕微鏡では、照射系は、光コヒーレンストモグラフィ(OCT)を行うための、測定アーム(測定光LSの光路に配置された光学素子)と参照アーム(参照光LRの光路に配置された光学素子)とを備えたOCT系(OCT系60)と、測定アーム及び参照アームの少なくとも一方の光路長を変更する光路長変更部(光路長変更部60A)を含み、制御部は、前置レンズの移動に対応して光路長変更部を制御してもよい。
このような構成によれば、前置レンズの移動に対応して測定アーム及び参照アームの少なくとも一方の光路長を変更するようにしたので、前置レンズが被検眼の直前に配置された場合でも術者がOCT系を調整する必要がなくなる。それにより、術者や患者への負担を軽減することが可能になる。
また、実施形態に係る眼科用手術顕微鏡では、制御部は、表示手段(表示部31)にグラフィカルユーザインターフェース(GUI)を表示させ、前置レンズの移動に対応して、表示手段に表示させるGUIの内容を変更してもよい。
このような構成によれば、前置レンズの移動に対応して、表示手段に表示させるGUIの内容を変更するようにしたので、前置レンズが被検眼の直前に配置された場合でも術者によるGUIに対する操作を簡素化することができる。それにより、手術時間を短縮して術者や患者への負担を軽減することが可能になる。
また、実施形態に係る眼科用手術顕微鏡では、照射系は、光を偏向する光スキャナ(光スキャナ41)を含み、GUIは、光スキャナによる光の偏向パターンのリストを含み、制御部は、前置レンズの移動に対応して、表示手段(ユーザインターフェイス300に設けられた表示デバイス)に表示されるリストを変更してもよい。
このような構成によれば、前置レンズの移動に対応して、表示手段に表示させる光スキャナによる光の偏向パターンのリストを変更するようにしたので、前置レンズが被検眼の直前に配置された場合でも術者によるGUIに対する操作を簡素化することができる。それにより、手術時間を短縮して術者や患者への負担を軽減することが可能になる。
また、実施形態に係る眼科用手術顕微鏡では、観察系は、対物レンズとしての左対物レンズ(対物レンズ21L)を含む左観察系(左照明系10L、左受光系20L及び左接眼系30L)と、対物レンズとしての右対物レンズ(対物レンズ21R)を含む右観察系(右照明系10R、右受光系20R及び右接眼系30R)と、を含み、左対物レンズの光軸と右対物レンズの光軸とは非平行であってもよい。
このような構成によれば、グリノー式実体顕微鏡において、術者や患者への負担を軽減することが可能になる。
また、実施形態に係る眼科用手術顕微鏡は、観察系の焦点位置と前置レンズの後側焦点位置とを一致させるために対物レンズと前置レンズとの間に挿入される補助レンズ(補助レンズ110L、110R、111)を含んでもよい。
このような構成によれば、観察系と前置レンズとの間の距離を調整する必要がなくなり、術者や患者への負担をより一層軽減することが可能になる。
上記の実施形態又はその変形例は、本発明を実施するための例示に過ぎない。本発明を実施しようとする者は、本発明の要旨の範囲内において任意の変形、省略、追加、置換等を施すことが可能である。
上記の実施形態又はその変形例において、左接眼系30L及び右接眼系30Rのそれぞれは、接眼レンズに光束を導くものであってもよい。また、照射系40は、被検眼Eのデータ収集用の光、刺激用の光、治療用の光のうち少なくとも1つを被検眼Eに照射するものであってよい。