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JP2020066752A - Al−Mg−Si系アルミニウム合金押出材およびその製造方法 - Google Patents

Al−Mg−Si系アルミニウム合金押出材およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】腐食環境でも腐食減量を抑制できるAl-Mg-Si系アルミニウム合金押出材を提供する。【解決手段】Si:0.95質量%〜1.25質量%、Mg:0.80質量%〜1.05質量%、Cu:0.30質量%〜0.50質量%、Mn:0.40質量%〜0.60質量%、Fe:0.15質量%〜0.30質量%、Cr:0.09質量%〜0.21質量%、B:0.0001質量%〜0.03質量%を含有し、Znの含有率が0.25質量%以下、Zrの含有率が0.05質量%以下、Tiの含有率が0.10質量%以下であり、残部がAl及び不可避不純物からなるアルミニウム合金押出材であって、前記アルミニウム合金押出材の押出方向に平行な断面であって該押出材の重心を通る断面において金属組織は繊維状組織を有し、かつ前記断面の全体面積に占める前記繊維状組織の面積の割合が90%以上であり、前記押出材の外側表面に再結晶層が存在しており、該再結晶層の厚さが100μm以下である構成とする。【選択図】図2

Description

本発明は、高強度で耐食性に優れたAl−Mg−Si系アルミニウム合金押出材およびその製造方法に関する。
Al−Mg−Si系アルミニウム合金は、強度を有しながら耐食性やリサイクル性に優れる点で実用的な合金であることから、高強度と耐食性が要求される車両、船舶、自動車、自動二輪車等の輸送機の構造材として用いられている。
Al−Mg−Si系アルミニウム合金の中では、特に6061が多用されているが、車体構造の軽量化による輸送効率向上のために、更なる軽量化が求められており、そのために材料としての高強度化を図ることが要求されている。このような高強度化を図るべくアルミニウム合金の添加金属種及びその含有率の変更等による改良が検討されている。
その一方で、アルミニウム合金を高強度化すると、耐食性が低下しやすいという問題があった。例えば7000系アルミニウム合金では、高強度化により応力腐食割れが発生する恐れが高くなるため、適切な表面処理を施さなければ、腐食環境下での使用は困難である。また、6000系アルミニウム合金では、7000系と比較すると応力腐食割れは生じ難いと言えるが、しかし高強度化の実現のために添加元素量を多くすると耐食性が低下することが知られている。ここで、耐食性とは、腐食環境下での腐食量の少なさを意味するものである。例えば腐食による減量が大きいと構造材としての耐久性に問題を生じ得る。従って、耐食性の向上に関しては、応力腐食割れの抑制と共に、腐食減量をいかに低減または抑制するかが重要となってくる。
耐食性の向上を図る従来技術としては、特定組成のアルミ合金の溶湯を鋳造し、得られた鋳造品に均質化処理および塑性加工を施し、得られた塑性加工品に、溶体化処理、水焼入れ処理および人工時効硬化処理を施し、前記人工時効硬化処理におけるピーク時効時点以降の時効処理時間を、当該塑性加工品の導電率が、ピーク時効時点での導電率に対して0より大で1IACS%以下の増分を有する時間とした過時効処理を用いる製造方法が知られている(特許文献1)。
また、耐食性の向上を図るものとして、特定組成のアルミ合金からなり、0.2%耐力が270〜330MPaであり、この押出材の厚み方向断面における組織が主として繊維状組織であり、表層部の再結晶組織の厚さが片側500μm以下であるアルミニウム合金押出材が提案されている(特許文献2)。
また、耐食性を向上し得るものとして、特定組成のアルミ合金からなり、耐力が350MPa以上であり、晶出物の粒径が5μm以下に規制されており、熱間押出方向と平行な断面における繊維状組織の面積比率が95%以上であるアルミニウム合金押出材が提案されている(特許文献3)。
特許第4801386号公報 特許第5473718号公報 特許第6022882号公報
特許文献1に記載の製法では、塑性加工後の後工程で溶体化処理を行うので、加工歪みが駆動力となって再結晶を引き起こしやすい傾向がある。再結晶、特に粗大再結晶は、強度の低下、強度のばらつき、耐食性の低下を引き起こす可能性がある。また、塑性加工後の後工程で溶体化処理を行うことでコストの増大も招く。また、特許文献1に記載の耐食性向上(腐食減量の抑制)のための過時効処理についても強度の低下とコスト増大を招く懸念があった。
また、特許文献2には、耐食性の評価として腐食減量に関して開示がなく、従って腐食減量を低減または抑制するにはいかなる構成にすればよいかについての知見は、特許文献2からは得られない。また、特許文献3には、耐食性の評価として腐食減量に関して開示がなく、従って腐食減量を低減または抑制するにはいかなる構成にすればよいかについての知見は、特許文献3からは得られない。
本発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、高強度であると共に、腐食環境下等で使用されても腐食減量を小さく抑制できるAl−Mg−Si系アルミニウム合金押出材及びその製造方法を提供することを目的とする。
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
[1]Si:0.95質量%〜1.25質量%、Mg:0.80質量%〜1.05質量%、Cu:0.30質量%〜0.50質量%、Mn:0.40質量%〜0.60質量%、Fe:0.15質量%〜0.30質量%、Cr:0.09質量%〜0.21質量%、B:0.0001質量%〜0.03質量%を含有し、Znの含有率が0.25質量%以下、Zrの含有率が0.05質量%以下、Tiの含有率が0.10質量%以下であり、残部がAl及び不可避不純物からなるアルミニウム合金押出材であって、
前記アルミニウム合金押出材の押出方向に平行な断面であって該押出材の重心を通る断面において金属組織は繊維状組織を有し、かつ前記断面の全体面積に占める前記繊維状組織の面積の割合が90%以上であり、前記押出材の外側表面に再結晶層が存在しており、該再結晶層の厚さが100μm以下であることを特徴とするAl−Mg−Si系アルミニウム合金押出材。
[2]Si:0.95質量%〜1.25質量%、Mg:0.80質量%〜1.05質量%、Cu:0.30質量%〜0.50質量%、Mn:0.40質量%〜0.60質量%、Fe:0.15質量%〜0.30質量%、Cr:0.09質量%〜0.21質量%、B:0.0001質量%〜0.03質量%を含有し、Znの含有率が0.25質量%以下、Zrの含有率が0.05質量%以下、Tiの含有率が0.10質量%以下であり、残部がAl及び不可避不純物からなるアルミニウム合金の溶湯を得る溶湯形成工程と、
前記得られた溶湯を鋳造加工することによってビレットを得る鋳造工程と、
前記ビレットに均質化熱処理を行う均質化熱処理工程と、
前記均質化熱処理後のビレットに熱間押出加工を行って押出材を得る押出工程と、
上記熱間押出加工後から0.01秒〜60秒以内に前記押出材を急冷する急冷行程と、
前記急冷行程を経た押出材を加熱して時効処理を行う時効処理工程と、を含み、
前記時効処理工程を経て得られた押出材は、押出方向に平行な断面であって該押出材の重心を通る断面において金属組織は繊維状組織を有し、かつ前記断面の全体面積に占める前記繊維状組織の面積の割合が90%以上であり、前記押出材の外側表面に再結晶層が存在しており、該再結晶層の厚さが100μm以下であることを特徴とするAl−Mg−Si系アルミニウム合金押出材の製造方法。
[3]Si:0.95質量%〜1.25質量%、Mg:0.80質量%〜1.05質量%、Cu:0.30質量%〜0.50質量%、Mn:0.40質量%〜0.60質量%、Fe:0.15質量%〜0.30質量%、Cr:0.09質量%〜0.21質量%、B:0.0001質量%〜0.03質量%を含有し、Znの含有率が0.25質量%以下、Zrの含有率が0.05質量%以下、Tiの含有率が0.10質量%以下であり、残部がAl及び不可避不純物からなるアルミニウム合金の溶湯を得る溶湯形成工程と、
前記得られた溶湯を鋳造加工することによってビレットを得る鋳造工程と、
前記ビレットを480℃〜530℃の温度に2時間〜15時間保持する均質化熱処理を行う均質化熱処理工程と、
前記均質化熱処理後のビレットを150℃/時間以上の平均冷却速度で200℃以下まで冷却する冷却工程と、
前記冷却工程を経たビレットを500℃〜560℃にした状態で3m/分〜30m/分の押出速度で熱間押出加工を行って押出材を得る押出工程と、
前記熱間押出加工後から0.01秒〜60秒以内に前記押出材を500℃〜570℃の状態から100℃/秒以上の冷却速度で150℃以下まで急冷する急冷工程と、
前記急冷工程を経た押出材を160℃〜200℃の温度で1時間〜12時間加熱して時効処理を行う時効処理工程と、を含み、
前記時効処理工程を経て得られた押出材は、押出方向に平行な断面であって該押出材の重心を通る断面において金属組織は繊維状組織を有し、かつ前記断面の全体面積に占める前記繊維状組織の面積の割合が90%以上であり、前記押出材の外側表面に再結晶層が存在しており、該再結晶層の厚さが100μm以下であることを特徴とするAl−Mg−Si系アルミニウム合金押出材の製造方法。
[1]の発明では、高強度であると共に、腐食環境下等で使用されても腐食減量を小さく抑制できるAl−Mg−Si系アルミニウム合金押出材を提供できる。
[2]の発明では、高強度であると共に、腐食環境下等で使用されても腐食減量を小さく抑制できるAl−Mg−Si系アルミニウム合金押出材を製造できる。
[3]の発明では、高強度であると共に、腐食環境下等で使用されても腐食減量をより小さく抑制できるAl−Mg−Si系アルミニウム合金押出材を製造できる。
本発明に係るAl−Mg−Si系アルミニウム合金押出材の一例を示す斜視図である。 実施例4のAl−Mg−Si系アルミニウム合金押出材の縦断面(押出方向に平行な断面であって該押出材の重心を通る縦断面)の金属組織写真である。
本発明に係るアルミニウム合金押出材は、Si:0.95質量%〜1.25質量%、Mg:0.80質量%〜1.05質量%、Cu:0.30質量%〜0.50質量%、Mn:0.40質量%〜0.60質量%、Fe:0.15質量%〜0.30質量%、Cr:0.09質量%〜0.21質量%、B:0.0001質量%〜0.03質量%を含有し、Znの含有率が0.25質量%以下、Zrの含有率が0.05質量%以下、Tiの含有率が0.10質量%以下であり、残部がAl及び不可避不純物からなるアルミニウム合金押出材であって、前記アルミニウム合金押出材の押出方向に平行な断面であって該押出材の重心を通る断面において金属組織は繊維状組織を有し、かつ前記断面の全体面積に占める前記繊維状組織の面積の割合が90%以上であり、前記押出材の外側表面に再結晶層が存在しており、該再結晶層の厚さが100μm以下であることを特徴とする。前記アルミニウム合金押出材としては、アルミニウム合金中空押出材またはアルミニウム合金中実押出材が挙げられる。前記再結晶層の厚さは50μm以下であるのが好ましい。
上記構成のアルミニウム合金押出材(中空材又は中実材)は、高強度であると共に、腐食環境下等で使用されても腐食減量を小さく抑制できるので、例えば、自動車、鉄道等の車両の車体の構造材(フレーム等)として好適である。
本発明に係るアルミニウム合金押出材1の一実施形態を図1に示す。この図1に示すアルミニウム合金押出材1は、中実材であるが、特にこのような形状に限定されるものではない。前記押出材1の断面形状としては、特に限定されるものではないが、車両構造部材の軽量化を実現できて、且つ構造材としての十分な剛性と強度を確保できる断面形状を採用するのが好ましい。
なお、上記アルミニウム合金の組成(各成分の含有率範囲の限定意義等)については、本発明の製造方法を説明した後の段落においてまとめて詳細に説明する。
次に、本発明に係る、アルミニウム合金押出材1の製造方法について説明する。本製造方法は、Si:0.95質量%〜1.25質量%、Mg:0.80質量%〜1.05質量%、Cu:0.30質量%〜0.50質量%、Mn:0.40質量%〜0.60質量%、Fe:0.15質量%〜0.30質量%、Cr:0.09質量%〜0.21質量%、B:0.0001質量%〜0.03質量%を含有し、Znの含有率が0.25質量%以下、Zrの含有率が0.05質量%以下、Tiの含有率が0.10質量%以下であり、残部がAl及び不可避不純物からなるアルミニウム合金の溶湯を得る溶湯形成工程と、前記得られた溶湯を鋳造加工することによってビレットを得る鋳造工程と、を含む。
(溶湯形成工程)
前記溶湯形成工程では、Si:0.95質量%〜1.25質量%、Mg:0.80質量%〜1.05質量%、Cu:0.30質量%〜0.50質量%、Mn:0.40質量%〜0.60質量%、Fe:0.15質量%〜0.30質量%、Cr:0.09質量%〜0.21質量%、B:0.0001質量%〜0.03質量%を含有し、Znの含有率が0.25質量%以下、Zrの含有率が0.05質量%以下、Tiの含有率が0.10質量%以下であり、残部がAl及び不可避不純物からなる組成となるように溶解調製されたアルミニウム合金溶湯を得る。
(鋳造工程)
次に、前記得られた溶湯を鋳造加工することによって鋳造材を得る(鋳造工程)。鋳造方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を用いればよく、例えば、連続鋳造圧延法、ホットトップ鋳造法、フロート鋳造法、半連続鋳造法(DC鋳造法)等が挙げられる。この鋳造工程において、冷却速度の速い鋳造加工を行うことによって鋳塊(ビレット)中に形成される金属組織や晶出物の結晶粒径を小さくするのが好ましい。
以下、順に、均質化熱処理工程、冷却工程、押出工程、急冷工程、時効処理工程を実施するのがよい。
(均質化熱処理工程)
得られたビレットに対して均質化熱処理を行う。即ち、ビレットを480℃〜530℃の温度で2時間〜15時間保持する均質化熱処理を行う。480℃未満では、鋳塊ビレットの軟化が不十分となり、熱間押出加工時の圧力が著しく高くなって、外観品質が悪化するし、生産性も低下する。一方、530℃を超えると、MnとCrの析出物が粗大化することで再結晶を抑制する効果が低下し、再結晶の発生により、押出材の靱性が低下するし、高強度も得られ難い。中でも、均質化熱処理の温度は、485℃〜525℃に設定するのが好ましい。
また、均質化熱処理の時間が2時間未満では、鋳塊ビレットの軟化が不十分となり、熱間押出加工時の圧力が著しく高くなって、外観品質が低下するし、生産性も低下する。また、2時間未満では、鋳塊組織中の結晶粒内の偏析を無くして均質化することが不十分になり、押出材の靱性が低下するし、高強度も得られ難い。一方、均質化熱処理の時間が15時間を超えると、均質化熱処理によるそれ以上の効果は得られず、かえって生産性を低下させるものとなる。
(冷却工程)
次に、前記均質化熱処理後のビレットを150℃/時間以上の平均冷却速度で200℃以下の温度まで冷却する。平均冷却速度は、大きい方がより好ましい。この冷却工程における冷却方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、ファン冷却、ミスト冷却などが挙げられる。このようにビレットを150℃/時間以上の平均冷却速度で強制冷却する理由は、均質化熱処理後の冷却過程で固溶元素の析出物が粗大に成長するのを抑制するためである。粗大成長を抑制することで、後の時効処理による強度向上を十分に実現できると共に、押出材の靱性を十分に確保できる。
(押出工程)
前記冷却工程を経たビレットを500℃〜560℃にした状態で3m/分〜30m/分の押出速度で熱間押出加工を行って押出材を得る。加熱温度が500℃未満では、鋳塊に添加されている元素がマトリックス中に溶けずに残留することで時効処理による強度向上を実現できない。一方、加熱温度が560℃を超えると、押出加工後の加工発熱により押出材に局所的に共晶融解(バーニング)が発生する恐れがある。従って、熱間押出加工時の加熱温度は500℃〜560℃に設定する。中でも、熱間押出加工時の加熱温度は510℃〜550℃に設定するのが好ましい。なお、ビレットの加熱時間は、特に限定されるものではないが、加熱装置が押出工程のオンライン上に設置されていることを考慮して、良好な生産性を確保できる時間に設定されるが、30分以内に設定されるのが好ましく、15分以内に設定されるのが特に好ましい。
前記熱間押出加工の際の押出速度は、3m/分〜30m/分に設定する。押出速度は、生産性を考慮すると、速ければ速いほど好ましいものの、押出速度が30m/分を超えると、押出材の表面に剥離や割れが生じる恐れがある。一方、押出速度が3m/分未満では、生産性が低下する。
(急冷工程)
前記熱間押出加工後から0.01秒〜60秒以内に前記押出材を急冷する。このとき、押出材を500℃〜570℃の状態から100℃/秒以上の冷却速度で150℃以下まで急冷するのが好ましい。押出材の温度は、金型から排出された直後の押出材の温度を非接触温度計または接触温度計で計測する。この計測温度が500℃未満では、鋳塊に添加されている元素がマトリックス中に溶けずに残留することで時効処理による強度向上を実現できない。前記計測温度が570℃を超えている場合には、押出材に局所的に共晶融解(バーニング)が発生する恐れがある。中でも、前記熱間押出加工後の押出材の温度が510℃〜560℃になっているのが好ましい。また、前記熱間押出加工後から0.01秒〜30秒以内に前記押出材を急冷するのが好ましく、前記熱間押出加工後から0.01秒〜15秒以内に前記押出材を急冷するのが特に好ましい。
前記熱間押出加工直後の500℃〜570℃の温度の押出材を100℃/秒以上の冷却速度で150℃以下まで急冷するが、このような急冷は、例えば、押出出口側に設置してある冷却装置を用いて実施することができる。上記のような条件での急冷(上記の急冷工程)は、押出材の金属組織が繊維状組織を有し、かつ押出材の断面の全体面積に占める繊維状組織の面積の割合が90%以上である金属組織を形成させる上で重要な工程である。この急冷工程において、冷却速度が100℃/秒未満では、冷却時の焼き入れが不十分となって、押出材の靱性が低下するし、高強度も得られ難い。前記冷却速度は500℃/秒以下であるのが好ましく、この場合には肉厚の厚い部分と薄い部分で熱収縮差による変形が生じ難く寸法精度が良い。この急冷工程での冷却速度は200℃/秒〜400℃/秒であるのが特に好ましい。
前記急冷工程における冷却方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、ファン空冷、ミスト冷却、シャワー冷却、液体窒素冷却、水冷等の方法が挙げられる。また、前記例示の冷却方法を適宜組み合わせて急冷を実施するようにしてもよい。
(時効処理工程)
次に、前記急冷工程を経た押出材を160℃〜200℃の温度で1時間〜12時間加熱して時効処理を行う。時効処理温度が160℃未満では、析出物が微細になりすぎて時効硬化が十分になされず、高強度の押出材が得られなくなる。一方、時効処理温度が200℃を超えると、過時効処理となって析出物が粗大化して、高強度の押出材が得られなくなる。また、時効処理時間が1時間未満では、亜時効処理となって高強度の押出材が得られなくなる。時効処理時間が12時間を超えると、過時効処理となって高強度の押出材が得られなくなる。中でも、前記時効処理温度を170℃〜190℃に設定するのが好ましい。また、前記時効処理時間は2時間〜10時間に設定するのが好ましい。
上述した溶湯形成工程、鋳造工程、均質化熱処理工程、冷却工程、押出工程、急冷工程、時効処理工程を経て得られたアルミニウム合金押出材は、押出方向に平行な断面であって該押出材の重心を通る断面において金属組織は繊維状組織を有し、かつ前記断面の全体面積に占める前記繊維状組織の面積の割合が90%以上であり、前記押出材の外側表面に再結晶層が存在しており、該再結晶層の厚さが100μm以下である得られたアルミニウム合金押出材1は、高強度であると共に、腐食環境下等で使用されても腐食減量を小さく抑制できる。
なお、本発明の上記製造方法において、押出工程以降に、溶体化処理や焼き入れ処理を行うと、形成された繊維状組織が損なわれてしまうので、このような溶体化処理や焼き入れ処理を行うのは望ましくない。
また、本発明の上記製造方法において、例えば、自動車、鉄道等の車両の車体構造材(フレーム等)等として適用するために、必要に応じて、押出工程以降に、引抜加工、切削加工、曲げ加工、潰し加工、溶接加工、機械締結加工等のうちの1種又は2種以上の加工を実施してもよい。
次に、上述した本発明に係るアルミニウム合金押出材および本発明に係るアルミニウム合金押出材の製造方法における「アルミニウム合金」の組成について、以下詳述する。前記アルミニウム合金は、Si:0.95質量%〜1.25質量%、Mg:0.80質量%〜1.05質量%、Cu:0.30質量%〜0.50質量%、Mn:0.40質量%〜0.60質量%、Fe:0.15質量%〜0.30質量%、Cr:0.09質量%〜0.21質量%、B:0.0001質量%〜0.03質量%を含有し、Znの含有率が0.25質量%以下、Zrの含有率が0.05質量%以下、Tiの含有率が0.10質量%以下であり、残部がAl及び不可避不純物からなるアルミニウム合金である。
前記Siは、Mgと共存してMg2Si系析出物を形成し、押出材の強度向上に寄与する。Siは、上述したとおりMgの含有量に対してMg2Siを生成する量を超えて過剰に添加することにより、時効処理による強度向上を十分に実現できることから、Si含有率は、0.95質量%以上に設定する。一方、Si含有率が1.25質量%を超えると、Siの粒界析出が多くなり、押出材の靱性が低下するし、熱間押出加工時の押出性が悪くなる。従って、Si含有率は、0.95質量%〜1.25質量%に設定する。中でも、Si含有率は、1.00質量%〜1.20質量%に設定するのが好ましく、1.05質量%〜1.15質量%に設定するのがより好ましい。
前記Mgは、Siと共存してMg2Si系析出物を形成し、押出材の強度向上に寄与する。Mg含有率が0.80質量%より小さいと、析出強化の効果が十分に得られず高強度を確保することができない。一方、Mg含有率が1.05質量%を超えると、Mg2Si系析出物が増加し過ぎることによって、押出材の靱性を低下させるし、熱間押出加工時の押出圧力が著しく高くなることにより外観品質が悪化し、生産性を低下させる。従って、Mg含有率は、0.80質量%〜1.05質量%に設定する。中でも、Mg含有率は、0.85質量%〜1.05質量%に設定するのが好ましく、0.90質量%〜1.00質量%に設定するのがより好ましい。
前記Feは、AlFeSi相として晶出することで結晶粒の粗大化を防止する効果がある。Fe含有率が0.15質量%より小さいと、結晶粒の粗大化防止効果が十分に得られない。一方、Fe含有率が0.30質量%を超えると、粗大な金属間化合物を生成し、押出材の靱性を低下させるし、熱間押出加工時にピックアップと呼ばれる外観不良が発生する恐れがある。従って、Fe含有率は、0.15質量%〜0.30質量%に設定する。中でも、Fe含有率は、0.15質量%〜0.25質量%に設定するのが好ましい。
前記Mnは、AlMnSi相として晶出し、晶出しないMnは析出して再結晶を抑制する効果がある。この再結晶を抑制する作用により、熱間押出加工後の組織を繊維状組織化できることで高強度を実現できる。Mn含有率が0.40質量%より小さいと、上記の再結晶抑制効果が得られなくなり、再結晶組織が粗大化して成長することで強度が低下する(高強度を確保できない)上に、組織制御が困難になり繊維状組織と再結晶組織とが混合した組織状態になって靱性が低下する。一方、Mn含有率が0.60質量%を超えると、粗大な金属間化合物を生成し、押出材の靱性を低下させる。従って、Mn含有率は、0.40質量%〜0.60質量%に設定する。中でも、Mn含有率は、0.44質量%〜0.56質量%に設定するのが好ましい。なお、Mnは、同様の効果を有するCrと複合的に添加することにより、上記の効果を相乗的に向上させることができる。
前記Cuは、Mg2Si系析出物の見かけの過飽和量を増加させ、Mg2Si析出量を増加させることによって最終製品の押出材の時効硬化を著しく促進させる。Cu含有率が0.30質量%より小さいと、時効硬化が十分に得られない。一方、Cu含有率が0.50質量%を超えると、押出材の靱性が低下するし、熱間押出加工時の押出性が悪くなる。また、過度に添加量を増やし過ぎると、耐食性を低下させ、粒界腐食の感受性を高め、応力腐食割れを引き起こす恐れがある。従って、Cu含有率は、0.30質量%〜0.50質量%に設定する。中でも、Cu含有率は、0.35質量%〜0.50質量%に設定するのが好ましく、0.40質量%〜0.50質量%に設定するのがより好ましい。
前記Crは、AlCrSi相として晶出し、晶出しないCrは析出して再結晶を抑制する効果がある。この再結晶を抑制する作用により、熱間押出加工後の組織を繊維状組織化できることで高強度を実現できる。Cr含有率が0.09質量%より小さいと、上記の再結晶抑制効果が得られなくなり、再結晶組織が粗大化して成長することで強度が低下する(高強度を確保できない)上に、組織制御が困難になり繊維状組織と再結晶組織とが混合した組織状態になって靱性が低下する。一方、Cr含有率が0.21質量%を超えると、粗大な金属間化合物を生成し、押出材の靱性を低下させる。従って、Cr含有率は、0.09質量%〜0.21質量%に設定する。中でも、Cr含有率は、0.11質量%〜0.19質量%に設定するのが好ましい。なお、Crは、同様の効果を有するMnと複合的に添加することにより、上記の効果を相乗的に向上させることができる。
前記B(硼素)は、Tiとの共存により結晶粒の微細化を図る上で有効な元素である。B含有率が0.0001質量%より小さいと、結晶粒の微細化の効果が十分に得られない恐れがある。一方、B含有率が0.03質量%を超えると、TiB2が過剰に生成されて切削加工性が低下する恐れがある。従って、B含有率は、0.0001質量%〜0.03質量%に設定する。
前記Tiは、結晶粒の微細化を図る上で有効な元素であり、また鋳造棒(ビレット)に鋳塊割れが発生することを防止することに寄与する。Ti含有率が0.10質量%を超えると、粗大なTi化合物が晶出し、押出材の靱性を低下させる。従って、Ti含有率は0.10質量%以下(Ti非含有;即ちTi含有率0質量%を含む)に設定する。
前記Zrは、MnやCrと同様に再結晶を抑制する効果を有する元素であるが、このZrの含有率は0.05質量%以下に設定する。Zr含有率が0.05質量%を超えると、上述したTiの結晶粒微細化効果を阻害する上に、押出材の靱性を低下させる。従って、Zr含有率は0.05質量%以下に設定する。Zr非含有であってもよい(Zr含有率は0質量%であってもよい)。中でも、Zr含有率は0.01質量%以下(0質量%を含む;即ちZr非含有を含む)に設定するのが好ましい。
前記Znは、鋳造性の向上を図る上で有効な元素であるが、Zn含有率が0.25質量%を超えると、耐食性や靱性を低下させる恐れがある。従って、Zn含有率は0.25質量%以下(Zn非含有;即ちZn含有率0質量%を含む)に設定する。
次に、本発明の具体的実施例について説明するが、本発明はこれら実施例のものに特に限定されるものではない。
<実施例1>
Si:0.95質量%、Fe:0.20質量%、Cu:0.30質量%、Mn:0.44質量%、Mg:0.80質量%、Cr:0.09質量%、B:0.004質量%、Zn:0.03質量%、Zr:0.01質量%、Ti:0.02質量%を含有し、残部がAl及び不可避不純物からなるアルミニウム合金を加熱してアルミニウム合金溶湯を得た後、該アルミニウム合金溶湯を用いてホットトップ鋳造法により直径156mm、長さ450mmの鋳塊ビレットを作製した。
次に、前記鋳塊ビレットに対して500℃で8時間の均質化熱処理を行った(均質化熱処理工程)。前記均質化熱処理工程を経た後の鋳塊ビレットを220℃/時間の鋳塊冷却速度で鋳塊が150℃以下の温度になるまで強制冷却を行った(冷却工程)。次に、前記冷却工程を経た鋳塊ビレットに、鋳塊加熱温度535℃、押出速度12m/分の条件で熱間押出加工を行うことによって、幅80mmで厚さが6.0mmの板状の押出材(図1参照)を得た(押出工程)。次いで、前記熱間押出加工直後の(熱間押出加工後から2秒以内の)540℃の押出材(押出ダイス出口での押出材の温度を接触温度計で測定した)を400℃/秒の冷却速度で100℃以下の温度になるまで急冷した(急冷工程)。前記急冷工程を経た押出材を300mmの長さに切断した後、170℃で8時間加熱して時効処理を行った(時効処理工程)。こうして図1に示すAl−Mg−Si系アルミニウム合金押出材1を得た。
<実施例2>
前記アルミニウム合金溶湯として、表1に示すアルミニウム合金No.A2(表1に示す元素を表に記載の含有率で含有し、残部がAl及び不可避不純物からなるアルミニウム合金)からなるアルミニウム合金溶湯を用い、均質化熱処理を480℃×8時間の条件で行った以外は、実施例1と同様にして、図1に示すAl−Mg−Si系アルミニウム合金押出材1を得た。
<実施例4>
前記アルミニウム合金溶湯として、表1に示すアルミニウム合金No.A2(表1に示す元素を表に記載の含有率で含有し、残部がAl及び不可避不純物からなるアルミニウム合金)からなるアルミニウム合金溶湯を用い、均質化熱処理を525℃×8時間の条件で行った以外は、実施例1と同様にして、図1に示すAl−Mg−Si系アルミニウム合金押出材1を得た。
<実施例3、5〜17>
前記アルミニウム合金溶湯として、表1に示すアルミニウム合金組成(表1に示す元素を表に記載の含有率で含有し、残部がAl及び不可避不純物からなるアルミニウム合金)からなるアルミニウム合金溶湯を用いた以外は、実施例1と同様にして、図1に示すAl−Mg−Si系アルミニウム合金押出材1を得た。
<比較例1、2、4、5>
前記アルミニウム合金溶湯として、表2に示すアルミニウム合金組成(表2に示す元素を表に記載の含有率で含有し、残部がAl及び不可避不純物からなるアルミニウム合金)からなるアルミニウム合金溶湯を用いた以外は、実施例1と同様にして、Al−Mg−Si系アルミニウム合金押出材を得た。
<比較例3、6、7>
前記アルミニウム合金溶湯として、表2に示すアルミニウム合金塑性(表2に示す元素を表に記載の含有率で含有し、残部がAl及び不可避不純物からなるアルミニウム合金)からなるアルミニウム合金溶湯を用い、均質化熱処理を565℃×8時間の条件で行った以外は、実施例1と同様にして、Al−Mg−Si系アルミニウム合金押出材を得た。
<比較例9〜16>
前記アルミニウム合金溶湯として、表2に示すアルミニウム合金組成(表2に示す元素を表に記載の含有率で含有し、残部がAl及び不可避不純物からなるアルミニウム合金)からなるアルミニウム合金溶湯を用いた以外は、実施例1と同様にして、Al−Mg−Si系アルミニウム合金押出材を得た。
<比較例8>
Si:1.10質量%、Fe:0.20質量%、Cu:0.40質量%、Mn:0.50質量%、Mg:0.95質量%、Cr:0.15質量%、B:0.004質量%、Zn:0.03質量%、Zr:0.01質量%、Ti:0.02質量%を含有し、残部がAl及び不可避不純物からなるアルミニウム合金を加熱してアルミニウム合金溶湯を得た後、該アルミニウム合金溶湯を用いてホットトップ鋳造法により直径80mm、長さ80mmの鋳塊ビレットを作製した。
次に、前記鋳塊ビレットに対して500℃で7時間の均質化熱処理を行った(均質化熱処理工程)。前記均質化熱処理工程を経た後の鋳塊ビレットを150℃/時間の鋳塊冷却速度で鋳塊が150℃以下の温度になるまで強制冷却を行った(冷却工程)。次に、前記冷却工程を経た鋳塊ビレットに、鋳塊加熱温度530℃に加熱し、熱間鍛造加工を行うことによって、直径80mm×高さ80mmの円柱体を鍛造により高さ16mmにまで鍛造加工して鍛造材を得た。次いで、前記鍛造材に530℃の温度で4時間の溶体化処理を実施し、水焼き入れ後に、170℃で8時間加熱して時効処理を行った。こうしてAl−Mg−Si系アルミニウム合金鍛造材を得た。
上記のようにして得られた各アルミニウム合金押出材、鍛造材について、下記の方法により金属組織の観察を行うと共に、下記評価法に基づいて各種評価を行った。
<金属組織の観察方法>
押出材について該押出材の押出方向に平行な断面であって該押出材の重心を通る断面を切り出した後、押出材の前記断面(切断面)を鏡面研磨し、次いで電解エッチングを行った後、断面(切断面)を光学顕微鏡で観察した。各押出材の前記断面(切断面)の光学顕微鏡を用いた金属組織写真において、複数視野における画像解析から、前記断面における全体面積に占める繊維状組織の面積の割合を求め、該割合が90%以上であるものを「繊維状組織」と判定し(表3、4参照)、前記割合が20%以上90%未満であるもの(繊維状組織以外の組織が再結晶組織であるもの)を「混合組織」と判定し、前記割合が20%未満であるもの(繊維状組織以外の組織が再結晶組織であるもの)を「再結晶組織」と判定した(表3、4参照)。
「再結晶層の厚さ」については、繊維状組織の形態をとるものについての前記光学顕微鏡を用いた金属組織写真において最表面からの再結晶層厚さを求めた(図2参照)。
比較例8の鍛造材については該鍛造材の加工方向に平行な断面で切り出した後、鍛造材の前記断面(切断面)を鏡面研磨し、次いで電解エッチングを行った後、断面(切断面)を光学顕微鏡で観察した。押出材の場合と同様に金属組織の形態と割合を求めて判定を実施した(表4参照)。
<引張特性評価法(引張強さ及び0.2%耐力の測定法)>
JIS Z2241−2011に準拠して室温(25℃)で引張試験を行うことによって、押出材(又は鍛造材)の0.2%耐力(MPa)を測定した。即ち、押出材(又は鍛造材)からJIS Z2201−1998に記載の方法によりJIS5号試験片を採取した。このJIS5号試験片の大きさは、平行部の幅25mm×平行部の長さ60mm×厚さ2.5mmとした。また、試験片において標点間距離を50mmに設定した。前記試験片についてインストロン型引張試験機を用いて引張試験を行った。引張試験速度は、2mm/分に設定し、耐力測定以降は10mm/分に設定した。JIS5号試験片のn数を3個として、3つの試験片の平均値を「0.2%耐力」とした(表3、4参照)。なお、表3、4において、0.2%耐力が370MPa以上であるものを「◎」と表記し、0.2%耐力が350MPa以上370MPa未満であるものを「○」と表記し、0.2%耐力が350MPa未満であるものを「×」と表記した。
<腐食環境下での腐食減量の評価法(耐食性評価法)>
押出材は、幅80mmで厚さが6.0mmの板状の押出材を長さ120mmに切断して評価用試験片とした。鍛造材は、比較例8の鍛造加工材から幅80mmで厚さが6.0mm、長さ120mmのサイズに切削加工して評価用試験片を作製した。腐食減量の評価は、自動車部品外観腐食試験方法(JASO M610−92)に記載されているCCT試験で実施した。このCCT試験は、塩水噴霧(5%NaCl水溶液、35℃)×2時間、60℃で乾燥×4時間、湿潤(50℃、98%RH)×2時間の合計8時間を1サイクルとして、120サイクル(960時間)及び360サイクル(2880時間)で腐食試験を行った。所定サイクルの腐食試験後に評価用試験片を取り出した後、この評価用試験片に対してリン酸クロム酸液で洗浄を行うことによって腐食生成物を取り除いた後、腐食による質量減少量(腐食試験前の試験片の質量−腐食試験後の試験片の質量)を求めた。評価用試験片のn数を3個として、3つの試験片の平均値を「腐食減量」として表3、4に記載した。
CCT試験は、一般的に120サイクル以下で実施されるが、表3、4の結果からわかるように、120サイクルでは腐食減量の値に顕著な差が認められない。一方、360サイクルの長期間の評価になると、腐食減量の値に顕著な差が認められた。360サイクルのCCT試験後で腐食減量が0.80mg/cm2以下であったものを「○」と表記し、0.80mg/cm2を超えたものを「×」と表記した。
<総合評価>
「0.2%耐力」および「腐食減量」の2つの評価項目のうち、1項目以上に「×」の評価結果があったものを「不合格」とし、2つの評価項目全てにおいて「×」の評価結果が無かったものを「合格」とした。
表から明らかなように、本発明に係る実施例1〜17のAl−Mg−Si系アルミニウム合金押出材は、0.2%耐力が350MPa以上であって高強度であり、360サイクルのCCT試験後の腐食減量が十分に抑制されていた。
これに対し、本発明の範囲を逸脱する比較例1〜16では、総合評価が不合格であった。
本発明に係るAl−Mg−Si系アルミニウム合金押出材および本発明の製造方法で得られるAl−Mg−Si系アルミニウム合金押出材は、高強度であると共に、腐食環境下等で使用されても腐食減量を小さく抑制できるので、従来の鉄系材料の代替材として好適に使用できる。例えば、車両、船舶、自動車、自動二輪車等の輸送機の車体の構造材(フレーム等)として使用することで車体の軽量化に貢献できる。
1…アルミニウム合金押出材

Claims (3)

  1. Si:0.95質量%〜1.25質量%、Mg:0.80質量%〜1.05質量%、Cu:0.30質量%〜0.50質量%、Mn:0.40質量%〜0.60質量%、Fe:0.15質量%〜0.30質量%、Cr:0.09質量%〜0.21質量%、B:0.0001質量%〜0.03質量%を含有し、Znの含有率が0.25質量%以下、Zrの含有率が0.05質量%以下、Tiの含有率が0.10質量%以下であり、残部がAl及び不可避不純物からなるアルミニウム合金押出材であって、
    前記アルミニウム合金押出材の押出方向に平行な断面であって該押出材の重心を通る断面において金属組織は繊維状組織を有し、かつ前記断面の全体面積に占める前記繊維状組織の面積の割合が90%以上であり、前記押出材の外側表面に再結晶層が存在しており、該再結晶層の厚さが100μm以下であることを特徴とするAl−Mg−Si系アルミニウム合金押出材。
  2. Si:0.95質量%〜1.25質量%、Mg:0.80質量%〜1.05質量%、Cu:0.30質量%〜0.50質量%、Mn:0.40質量%〜0.60質量%、Fe:0.15質量%〜0.30質量%、Cr:0.09質量%〜0.21質量%、B:0.0001質量%〜0.03質量%を含有し、Znの含有率が0.25質量%以下、Zrの含有率が0.05質量%以下、Tiの含有率が0.10質量%以下であり、残部がAl及び不可避不純物からなるアルミニウム合金の溶湯を得る溶湯形成工程と、
    前記得られた溶湯を鋳造加工することによってビレットを得る鋳造工程と、
    前記ビレットに均質化熱処理を行う均質化熱処理工程と、
    前記均質化熱処理後のビレットに熱間押出加工を行って押出材を得る押出工程と、
    上記熱間押出加工後から0.01秒〜60秒以内に前記押出材を急冷する急冷行程と、
    前記急冷行程を経た押出材を加熱して時効処理を行う時効処理工程と、を含み、
    前記時効処理工程を経て得られた押出材は、押出方向に平行な断面であって該押出材の重心を通る断面において金属組織は繊維状組織を有し、かつ前記断面の全体面積に占める前記繊維状組織の面積の割合が90%以上であり、前記押出材の外側表面に再結晶層が存在しており、該再結晶層の厚さが100μm以下であることを特徴とするAl−Mg−Si系アルミニウム合金押出材の製造方法。
  3. Si:0.95質量%〜1.25質量%、Mg:0.80質量%〜1.05質量%、Cu:0.30質量%〜0.50質量%、Mn:0.40質量%〜0.60質量%、Fe:0.15質量%〜0.30質量%、Cr:0.09質量%〜0.21質量%、B:0.0001質量%〜0.03質量%を含有し、Znの含有率が0.25質量%以下、Zrの含有率が0.05質量%以下、Tiの含有率が0.10質量%以下であり、残部がAl及び不可避不純物からなるアルミニウム合金の溶湯を得る溶湯形成工程と、
    前記得られた溶湯を鋳造加工することによってビレットを得る鋳造工程と、
    前記ビレットを480℃〜530℃の温度に2時間〜15時間保持する均質化熱処理を行う均質化熱処理工程と、
    前記均質化熱処理後のビレットを150℃/時間以上の平均冷却速度で200℃以下まで冷却する冷却工程と、
    前記冷却工程を経たビレットを500℃〜560℃にした状態で3m/分〜30m/分の押出速度で熱間押出加工を行って押出材を得る押出工程と、
    前記熱間押出加工後から0.01秒〜60秒以内に前記押出材を500℃〜570℃の状態から100℃/秒以上の冷却速度で150℃以下まで急冷する急冷工程と、
    前記急冷工程を経た押出材を160℃〜200℃の温度で1時間〜12時間加熱して時効処理を行う時効処理工程と、を含み、
    前記時効処理工程を経て得られた押出材は、押出方向に平行な断面であって該押出材の重心を通る断面において金属組織は繊維状組織を有し、かつ前記断面の全体面積に占める前記繊維状組織の面積の割合が90%以上であり、前記押出材の外側表面に再結晶層が存在しており、該再結晶層の厚さが100μm以下であることを特徴とするAl−Mg−Si系アルミニウム合金押出材の製造方法。
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