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JP2020066590A - 水性眼科用組成物及び保存効力向上方法 - Google Patents

水性眼科用組成物及び保存効力向上方法 Download PDF

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Abstract

【課題】、亜硫酸塩又はチオ硫酸塩と、非イオン性界面活性剤とを含む、保存効力に優れる組成物及び保存効力向上方法を提供する。【解決手段】(A)亜硫酸塩及びチオ硫酸塩から選ばれる1種以上、(B)非イオン性界面活性剤、及び(C)流動パラフィン及びワセリンから選ばれる1種以上を含有する水性眼科用組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、水性眼科用組成物及び保存効力向上方法に関するものである。
水性眼科組成物は、開封後も継続的に使用することが予想されるため、微生物汚染等による製品の腐敗を防止されていることが望ましい。そのため、腐敗を防止するために防腐剤等の殺菌作用や抗菌作用のある成分を配合する必要がある。亜硫酸塩、チオ硫酸塩は抗菌作用を持つ添加物の1つであることが知られている。しかしながら、亜硫酸塩、チオ硫酸塩は、眼科用組成物の防腐剤としては使用されていない。
一方、眼科用組成物は多様な成分を含有しているため、析出を防止するために非イオン性界面活性剤を配合することが多い。
特開2008−222638号公報
本発明は本課題を鑑みてなされたものであり、亜硫酸塩又はチオ硫酸塩と、非イオン性界面活性剤とを含む、保存効力に優れる組成物及び保存効力向上方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、亜硫酸塩、チオ硫酸塩は、眼科用組成物の防腐剤として使用したところ、保存効力が不十分であること、さらに、非イオン性界面活性剤は亜硫酸塩の抗菌効果を低下させる作用を有することを知見した。
本発明者らは、上記問題を解決するために、亜硫酸塩又はチオ硫酸塩と、非イオン性界面活性剤とを含む組成物に、流動パラフィン及びワセリンから選ばれる1種以上を配合することで、目的とする保存効力が得られることを知見し、本発明をなすに至ったものである。
従って、本発明は下記水性眼科用組成物及び保存効力向上方法を提供する。
1.(A)亜硫酸塩及びチオ硫酸塩から選ばれる1種以上、
(B)非イオン性界面活性剤、及び
(C)流動パラフィン及びワセリンから選ばれる1種以上
を含有する水性眼科用組成物。
2.水性眼科用組成物中のエマルションの平均粒子径が100nm以下である1記載の水性眼科用組成物。
3.(A)亜硫酸塩及びチオ硫酸塩から選ばれる1種以上と、(B)非イオン性界面活性剤とを含有する水性眼科用組成物に、
(C)流動パラフィン及びワセリンから選ばれる1種以上
を配合する、水性眼科用組成物の保存効力向上方法。
本発明によれば、保存効力に優れる、亜硫酸塩又はチオ硫酸塩と、非イオン性界面活性剤とを含む組成物を提供することができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
[(A)成分]
本発明の(A)成分は、亜硫酸塩及びチオ硫酸塩から選ばれる1種以上であり、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
本発明の亜硫酸塩としては、製剤上許容される亜硫酸塩が挙げられる。例えば、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、乾燥亜硫酸ナトリウム(無水亜硫酸ナトリウム)、ピロ亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸カリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム等が挙げられる。本発明のチオ硫酸塩としては、例えば、チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸アンモニウムが挙げられる。中でも、保存効力が良好である観点から、乾燥亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウムが好ましい。特に、日本薬局方に収載されたものが好適である。
(A)成分の配合量は、保存効力の点から、水性眼科用組成物中(以下、組成物と記載する場合がある)、0.005w/v%(質量/体積%、g/100mL)以上が好ましく、眼刺激の観点から、0.5w/v%以下が好ましい。0.01〜0.4w/v%がより好ましく、0.02〜0.2w/v%がさらに好ましい。
非イオン性界面活性剤を含む組成物では、非イオン性界面活性剤の酸化分解によるホルムアルデヒドの発生(分解物)という課題が生じる。亜硫酸塩又はチオ硫酸塩は、この酸化分解を抑制することができる。この点からは(A)成分の配合量は、組成物中0.01w/v%以上が好ましく、眼刺激の観点から、0.5w/v%以下が好ましい。0.02〜0.4w/v%がより好ましく、0.05〜0.2w/v%がさらに好ましい。
[(B)成分]
本発明の(B)成分は、非イオン性界面活性剤であり、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。具体的には、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(POEソルビタン脂肪酸エステル)、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(POEPOPグリコール)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール等が挙げられる。中でも、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールが好ましい。
ポリオキシエチレンヒマシ油(POEヒマシ油)は、ヒマシ油に酸化エチレン(EO)を付加重合することによって得られる化合物であり、酸化エチレンの平均付加モル数が異なるいくつかの種類が知られている。ポリオキシエチレンヒマシ油における酸化エチレンの平均付加モル数については、特に限定はないが、3〜60モルが例示される。具体的にはポリオキシエチレンヒマシ油3(EO平均付加モル数3)、ポリオキシエチレンヒマシ油10(EO平均付加モル数10)、ポリオキシエチレンヒマシ油20(EO平均付加モル数20)、ポリオキシエチレンヒマシ油35(EO平均付加モル数35)、ポリオキシエチレンヒマシ油40(EO平均付加モル数40)、ポリオキシエチレンヒマシ油50(EO平均付加モル数50)、ポリオキシエチレンヒマシ油60(EO平均付加モル数60)等が挙げられる。中でも、ポリオキシエチレンヒマシ油35が好ましい。
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(POE硬化ヒマシ油)は、水添したヒマシ油に酸化エチレンを付加重合することによって得られる化合物であり、酸化エチレンの平均付加モル数が異なるいくつかの種類が知られている。ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油における酸化エチレンの平均付加モル数については、特に限定はないが、5〜100モルが例示される。具体的にはポリオキシエチレン硬化ヒマシ油5(EO平均付加モル数5)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油10(EO平均付加モル数10)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油20(EO平均付加モル数20)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油30(EO平均付加モル数30)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40(EO平均付加モル数40)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50(EO平均付加モル数50)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60(EO平均付加モル数60)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油80(EO平均付加モル数80)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油100(EO平均付加モル数100)等が挙げられる。中でも、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60が好ましい。
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(POEソルビタン脂肪酸エステル)としては、モノラウリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(ポリソルベート20)、モノパルミチン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(ポリソルベート40)、モノステアリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(ポリソルベート60)、トリステアリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(ポリソルベート65)、モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(ポリソルベート80)が挙げられる。中でも、モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(ポリソルベート80)が好ましい。
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(POEPOPグリコール)は、ポリオキシエチレン鎖(POE)とポリオキシプロピレン鎖(POP)からなるブロック共重合体であり、酸化エチレン(EO)と酸化プロピレン(PO)の平均付加モル数が異なるいくつかの種類が知られている。ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールにおける酸化エチレンと酸化プロピレンの平均付加モル数については、特に限定はないが、平均付加モル数5〜200モルが例示される。具体的にはポリオキシエチレン(200)ポリオキシプロピレン(70)グリコール(EO平均付加モル数200、PO平均付加モル数70)、ポリオキシエチレン(196)ポリオキシプロピレン(67)グリコール(EO平均付加モル数196、PO平均付加モル数67)、ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール(EO平均付加モル数160、PO平均付加モル数30)、ポリオキシエチレン(120)ポリオキシプロピレン(40)グリコール(EO平均付加モル数120、PO平均付加モル数40)、ポリオキシエチレン(42)ポリオキシプロピレン(67)グリコール(EO平均付加モル数42、PO平均付加モル数67)、ポリオキシエチレン(54)ポリオキシプロピレン(39)グリコール(EO平均付加モル数54、PO平均付加モル数39)、ポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(20)グリコール(EO平均付加モル数20、PO平均付加モル数20)等が挙げられる。中でも、ポリオキシエチレン(200)ポリオキシプロピレン(70)グリコールが好ましい。
モノステアリン酸ポリエチレングリコールは、ステアリン酸に酸化エチレンを付加重合することによって得られる化合物であり、酸化エチレンの平均付加モル数が異なるいくつかの種類が知られている。モノステアリン酸ポリエチレングリコールにおける酸化エチレンの平均付加モル数については、特に限定はないが、5〜100モルが例示される。具体的にはモノステアリン酸ポリエチレングリコール10(EO平均付加モル数10)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール25(EO平均付加モル数25)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール40(EO平均付加モル数40)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール45(EO平均付加モル数45)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール55(EO平均付加モル数55)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール100(EO平均付加モル数100)等が挙げられる。中でもステアリン酸ポリエチレングリコール−40が好ましい。
(B)成分の配合量は、組成物中0.001〜10w/v%が好ましく、0.01〜5w/v%がより好ましく、0.1〜1w/v%がさらに好ましい。
ポリオキシエチレンヒマシ油又はポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を配合する場合、その配合量は、組成物中0.001〜10w/v%が好ましく、0.01〜5w/v%がより好ましく、0.1〜1w/v%がさらに好ましい。
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを配合する場合、その配合量は、組成物中0.005〜10w/v%が好ましく、0.05〜5w/v%がより好ましく、0.5〜1w/v%がさらに好ましい。
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールを配合する場合、その配合量は、組成物中0.002〜10w/v%が好ましく、0.02〜5w/v%がより好ましく、0.2〜1w/v%がさらに好ましい。
[(C)成分]
本発明の(C)成分は、流動パラフィン及びワセリンから選ばれる1種以上であり、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。(C)成分により、(A)亜硫酸塩又はチオ硫酸塩と、(B)非イオン性界面活性剤とを含む組成物の保存効力が向上する。
流動パラフィンは、飽和脂質が増加した不安定な涙液油層に対して、涙液油層安定化効果が高い成分である。流動パラフィンは、トリグリセリドからなる植物油や炭化水素の中でも炭素鎖長の短いスクワラン等と比較して極性が低い油分である。また、流動パラフィンは原油から得られる炭化水素類の混合物であり、常温で液体である。例えば、原油の常圧蒸留残油を原料に減圧蒸留,溶剤脱歴処理を行い、その後溶剤精製法又は水素化分解法処理を行う方法等により製造される。本発明に用いられる流動パラフィンに特に制限はなく、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。具体的には、炭化水素の炭素鎖長に特に制限はないが、15〜45のものが好適に用いられる。また、炭化水素における二重結合の有無について特に制限はないが、飽和炭化水素を多く含むものが好適に用いられる。さらに、炭化水素の構造としては、直鎖、分岐鎖及び環状構造のいずれを含んでいてもよく、いずれの比重の流動パラフィンであっても用いることができる。特に、日本薬局方に収載された流動パラフィン及び軽質流動パラフィン等が好適である。なお、安定剤として適当な型のトコフェロールを含んでいてもよい。
流動パラフィンの粘度はその分子量と相関しており、第17改正日本薬局方第1法(37.8℃)の測定方法において、粘度30〜100mm2/sのものが好ましく、粘度37〜88mm2/sのものがより好ましく、74〜88mm2/sのものがさらに好ましい。
ワセリンは、石油から蒸留精製したときに残る半固形の油脂性物質であり,固形炭化水素と液状炭化水素からなる。常温では半固形であり、固体と液体が共存する。いずれの比重のワセリンであっても用いることができる。本発明に用いられるワセリンに特に制限はなく、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
上記炭化水素の炭素鎖長に特に制限はないが、15以上のものが好適に用いられる。また、炭化水素における二重結合の有無について特に制限はないが、飽和炭化水素を多く含むものが好適に用いられる。さらに、炭素鎖は直鎖、分岐及び環状のいずれであってもよいが、大部分が分岐鎖を有するパラフィン(イソパラフィン)である。
ワセリンとしては、日本薬局方に収載された白色ワセリン及び黄色ワセリンが好適である。なお、安定剤として適当な型のトコフェロールを含んでいてもよい。
(C)成分の配合量は、組成物中0.0001〜1w/v%が好ましく、0.005〜0.5w/v%がより好ましく、0.01〜0.2w/v%がさらに好ましい。
流動パラフィンを配合する場合、0.001〜1w/v%が好ましく、0.005〜0.5w/v%がより好ましく、0.01〜0.2w/v%がさらに好ましい。
ワセリンを配合する場合、0.0001〜0.1w/v%が好ましく、0.001〜0.05w/v%がより好ましく、0.001〜0.01w/v%がさらに好ましい。
各成分の下記で表される配合質量比は以下の通りである。なお、上記比率はw/v%比であるが、質量比と同じ値となる。
[(B)/(A)]
1.5≦(B)/(A)≦100が好ましく、1.8≦(B)/(A)≦37.5がより好ましく、3.0≦(B)/(A)≦15がさらに好ましい。下限未満になると、亜硫酸塩により点眼時に刺激感を感じる可能性が高くなり、上限を超えると、保存効力及び(B)成分の分解物抑制効果が低下する。
[(B)/(C)]
(C)が流動パラフィンの場合、0.5≦(B)/(C)≦100が好ましく、3≦(B)/(C)≦75がより好ましく、5≦(B)/(C)≦50がさらに好ましい。
(C)がワセリンの場合、5≦(B)/(C)≦1,000が好ましく、10≦(B)/(C)≦100がより好ましい。下限未満になると組成物に白濁が生じやすくなり、上限を超えると、点眼時に刺激感を生じる可能性が高くなる。
[その他の成分]
本発明の組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、眼科用組成物に配合されるその他の成分を適量配合することができる。その他の成分としては、油成分、防腐剤、糖類、緩衝剤、pH調整剤、等張化剤、安定化剤、清涼化剤、多価アルコール、粘稠剤、薬物等が挙げられる。これらの成分は、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて配合することができる。下記に示す成分の配合量は、配合する場合の好ましい範囲である。
油成分として、例えば、ヒマシ油、大豆油、オリーブ油、ゴマ油、コーン油、ヤシ油、アーモンド油、中鎖脂肪酸トリグリセリド、ミックストコフェロール、ワックスエステル、ステロールエステル等が挙げられる。油成分を配合する場合、その配合量は組成物中0.001〜1.0w/v%が好ましく、0.001〜0.5w/v%がより好ましく、0.001〜0.25w/v%がさらに好ましく、0.1w/v%以下が最も好ましい。
防腐剤の中でもアルキル鎖やベンゼン環等の疎水部を有する防腐剤として、チメロサール、フェニルエチルアルコール、アルキルアミノエチルグリシン、クロルヘキシジングルコン酸、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル等が挙げられる。防腐剤を配合する場合、その配合量は0.0001〜0.5w/v%が好ましい。
本発明の組成物は、(A)、(B)、(C)成分により保存効力を得るものであるが、防腐剤を配合することもできる。防腐剤としては、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ソルビン酸、チメロサール、フェニルエチルアルコール、アルキルアミノエチルグリシン、クロルヘキシジングルコン酸、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル等が挙げられる。これらは、組成物中に0.1w/v%以下配合でき、0.01w/v%以下が好ましく、0.001w/v%以下がより好ましく、0.0001w/v%以下がさらに好ましく、配合しないことが最も好ましい。
糖類としては、例えば、グルコース、シクロデキストリン、キシリトール、ソルビトール、マンニトール等が挙げられる。なお、これらは、d体、l体又はdl体のいずれでもよい。糖類を配合する場合、その配合量は組成物中0.001〜5.0w/v%が好ましく、0.001〜1w/v%がより好ましく、0.001〜0.1w/v%がさらに好ましい。
緩衝剤としては、例えば、ホウ酸又はその塩(ホウ砂等)、トロメタモール、クエン酸又はその塩(クエン酸ナトリウム等)、リン酸又はその塩(リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム等)、酒石酸又はその塩(酒石酸ナトリウム等)、グルコン酸又はその塩(グルコン酸ナトリウム等)、酢酸又はその塩(酢酸ナトリウム等)、炭酸又はその塩(炭酸水素ナトリウム等)、各種アミノ酸類(イプシロン−アミノカプロン酸、アスパラギン酸カリウム、アミノエチルスルホン酸、グルタミン酸、グルタミン酸ナトリウム)等が挙げられる。保存効力の観点から、ホウ酸、ホウ砂、トロメタモールが好ましい。緩衝剤を配合する場合、その配合量は、組成物中0.001〜5.0w/v%が好ましく、0.001〜2w/v%がより好ましく、0.001〜1w/v%がさらに好ましい。
pH調整剤としては、無機酸又は無機アルカリ剤が挙げられる。例えば、無機酸としては(希)塩酸が挙げられる。無機アルカリ剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等が挙げられる。組成物のpHは3.5〜8.0が好ましく、5.5〜8.0がより好ましい。なお、pHの測定は、25℃でpHメータ(HM−25R、東亜ディーケーケー(株))を用いて行う。
等張化剤としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、乾燥炭酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム等が挙げられる。涙液油層不安定化が引き起こす諸症状をより改善する点から、塩化ナトリウム又は塩化カリウムを配合し、等張化されていることが好ましい。組成物の対生理食塩水浸透圧比は、0.60〜2.00が好ましく、0.60〜1.55がより好ましく、0.83〜1.20が最も好ましい。なお、浸透圧の測定は、25℃で自動浸透圧計(A2O、アドバンスドインストルメンツ社)を用いて行う。
安定化剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エデト酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム水和物、シクロデキストリン、ジブチルヒドロキシトルエン等が挙げられる。中でも、保存効力と(B)成分の分解物抑制効果の観点から、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)が好ましい。安定化剤を配合する場合、その配合量は組成物中0.001〜5.0w/v%が好ましく、0.001〜1w/v%がより好ましく、0.001〜0.1w/v%がさらに好ましい。
清涼化剤としては、例えば、メントール、カンフル、ボルネオール、ゲラニオール、シネオール、リナロール等が挙げられる。d体、l体又はdl体のいずれでもよい。清涼化剤を配合する場合、その配合量は組成物中0.0001〜0.2w/v%が好ましい。
多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。多価アルコールを配合する場合、その配合量は組成物中0.001〜5.0w/v%が好ましく、0.001〜1w/v%がより好ましく、0.001〜0.1w/v%がさらに好ましい。
粘稠剤としては、例えば、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、ヒアルロン酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ポリアクリル酸、カルボキシビニルポリマー等が挙げられる。粘稠剤を配合する場合、その配合量は組成物中0.001〜5.0w/v%が好ましく、0.001〜1w/v%がより好ましく、0.001〜0.1w/v%がさらに好ましい。
薬物(薬学的有効成分)としては、例えば、充血除去成分(例えば、エピネフリン、塩酸エピネフリン、エフェドリン塩酸塩、塩酸テトラヒドロゾリン、ナファゾリン塩酸塩、ナファゾリン硝酸塩、フェニレフリン塩酸塩、dl−メチルエフェドリン塩酸塩等)、消炎・収斂剤(例えば、ネオスチグミンメチル硫酸塩、イプシロン−アミノカプロン酸、アラントイン、ベルベリン塩化物水和物、ベルベリン硫酸塩水和物、アズレンスルホン酸ナトリウム、グリチルリチン酸二カリウム、硫酸亜鉛、乳酸亜鉛、リゾチーム塩酸塩等)、抗ヒスタミン剤(例えば、ジフェンヒドラミン塩酸塩、クロルフェニラミンマレイン酸塩等)、水溶性ビタミン類(フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム、シアノコバラミン、ピリドキシン塩酸塩、パンテノール、パントテン酸カルシウム、パントテン酸ナトリウム等)、アミノ酸類(例えば、L−アスパラギン酸カリウム、L−アスパラギン酸マグネシウム、L−アスパラギン酸カリウム・マグネシウム(等量混合物)、アミノエチルスルホン酸、コンドロイチン硫酸ナトリウム等)、サルファ剤等が挙げられる。薬物を配合する場合、薬物の配合量は、各薬物の有効な適性量を選択することができるが組成物中0.001〜5w/v%が好ましく、0.001〜1w/v%がより好ましく、0.001〜0.1w/v%がさらに好ましい。
[製造方法]
本発明の組成物の製造方法は特に限定されないが、例えば、(C)成分等の油性成分と、(B)成分等の界面活性剤成分の混合溶液を、(A)成分等の水性成分を含む水溶液と混合し、混合して乳化させ、pH調整後、総体積を水により調製することにより得ることができる。各液体の混合方法は、一般的な方法でよく、パルセーター、プロペラ羽根、パドル羽根、タービン羽根等を用いて適宜行われるが、回転数は特に限定されず、激しく泡立たない程度に設定することが好ましい。各液体の混合温度は特に限定しないが、油性成分と界面活性剤成分が共に融解温度以上であることが好ましく、具体的には40〜95℃の範囲から適宜選定される。
エマルションの平均粒子径を小さくするため、好ましくは高圧乳化による微細化工程を行う。高圧乳化条件は、噴射圧は100〜245MPaが好ましく、200〜245MPaがより好ましい。さらに背圧を印加することが好ましく、背圧は3〜10MPaが好ましく、3〜5MPaがより好ましい。さらにパス回数は1〜10回が好ましく、1〜5回がより好ましい。
また、得られた組成物を樹脂製容器に充填後、さらに包装体により密封し、上記容器と上記包装体との間に形成された空間の不活性ガス濃度を封入してもよく、眼科用組成物を樹脂製容器に充填し、脱酸素剤と共に包装体により密封してもよい。
[水性眼科用組成物]
本発明の組成物は、「水性眼科用組成物」である。本発明において、「水性眼科用組成物」とは、媒質が水である眼科用組成物をいう。水性眼科用組成物にすることにより、涙液と組成物の混合を容易にし、(C)成分による涙液油層安定性を高めることができる。なお、水の配合量は、組成物中90.0〜99.3w/v%が好ましく、93.0〜99.0w/v%がより好ましく、95.0〜97.5w/v%がさらに好ましい。
本発明の組成物中に含まれるエマルション粒子((B)成分と(C)成分の会合体)の平均粒子径は、100nm以下が好ましく、10〜50nmがより好ましく、20〜40nmがさらに好ましい。このような粒径とすることで、保存効力がより向上する。
なお、本発明において平均粒子径とは、光子相関法で求めた自己相関関数よりキュムラント法で算出した平均粒子径(メディアン径)を指す。粒子径は、動的光散乱等の原理を応用した各種測定装置により、恒温槽を用い、25℃一定の温度条件のもと測定する。例えば、粒子径測定装置(ELSZ−200ZS、大塚電子社製)にて測定することができる。
本発明の組成物の透過率は10〜100%が好ましく、80〜100%がより好ましい。本発明の透過率は、分光光度計(例えば、UV−1800、(株)島津製作所)を用いて測定した波長600nmの透過率をいう。
本発明の組成物は目への適応を容易にする点から液体が好ましく、20mPa・s以下が好ましく、10mPa・s以下がより好ましく、5mPa・s以下がさらに好ましい。なお、粘度の測定方法はコーンプレート型粘度計(DV2T、英弘精機(株))を用いて行う。
本発明の組成物は、そのまま液剤としてもよく、ゲル剤等に調製してもよい。使用形態としては、具体的には点眼剤(例えば、一般用点眼剤、コンタクトレンズ用点眼剤等)、洗眼剤(一般用洗眼剤、コンタクトレンズをはずした後に使用する洗眼剤等)、コンタクトレンズ装着液、コンタクト取り出し液等が挙げられる。中でも、コンタクトレンズ用点眼剤、コンタクトレンズをはずした後に使用する洗眼剤、コンタクトレンズ装着液、コンタクト取り出し液等のコンタクトレンズ用眼科用組成物として好適である。コンタクトレンズとしては、ハードコンタクトレンズ、O2ハードコンタクトレンズ、ソフトコンタクトレンズ、シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ等特に限定されない。
本発明の組成物は、点眼剤又はコンタクトレンズ用点眼剤として使用する場合、1回につき10〜100μLを1〜3滴、1日につき1〜6回点眼することが好ましく、1回につき10〜50μLを1〜3滴、1日につき1〜6回がより好ましい。1回につき10〜30μLを1〜3滴、1日につき1〜6回がさらに好ましい。洗眼剤として使用する場合、1回につき3〜6mL、1日につき3〜6回洗眼することが好ましい。
[防腐剤組成物]
本発明は、亜硫酸塩又はチオ硫酸塩と、非イオン性界面活性剤とを含む組成物に、流動パラフィン及びワセリンから選ばれる1種以上を配合することで、目的とする保存効力が得られることから、以下のような発明を提供する。
(A)亜硫酸塩及びチオ硫酸塩から選ばれる1種以上及び(B)非イオン性界面活性剤を含有する水性眼科用組成物配合用であって、(C)流動パラフィン及びワセリンから選ばれる1種以上を含有する防腐剤組成物。
好適な成分、配合量等は上記と同じである。
[保存効力向上方法]
本発明は、
(A)亜硫酸塩及びチオ硫酸塩から選ばれる1種以上と、(B)非イオン性界面活性剤とを含有する水性眼科用組成物に、
(C)流動パラフィン及びワセリンから選ばれる1種以上
を配合する、水性眼科用組成物の保存効力向上方法を提供する。好適な成分、配合量等は上記と同じである。
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。組成の「%」はw/v%(g/100mL)、組成の「%」はw/v%、比率は質量比(w/v%比と同じ値)を示す。
[表中に高圧乳化なしと記載された実施例及び比較例]
(A)成分及び各水性成分を90mLの水に溶解し、90℃15分間加温混合して水性成分水溶液を得た。同時に、(C)等の油性成分と(B)非イオン性界面活性剤のプレミックスを作製し、90℃15分間加熱混合した。次に、プレミックスを上記水性成分水溶液に所定量加え、さらに90℃15分間加熱混合した。その後、室温まで冷却し、pH調整を行い、全量が100mLになるように水を加えた。
[表中に高圧乳化ありと記載された実施例及び比較例]
(A)成分及び各水性成分を90mLの水に溶解し、90℃15分間加温混合して水性成分水溶液を得た。同時に、(C)等の油性成分と(B)非イオン性界面活性剤のプレミックスを作製し、90℃15分間加熱混合した。次に、プレミックスを上記水性成分水溶液に所定量加え、さらに90℃15分間加熱混合した。その後、室温まで冷却し、pH調整を行い、全量が100mLになるように水を加えた。さらに、高圧乳化機(スターバーストミニ、(株)スギノマシン)を用い、噴射圧200MPa背圧3MPaにて5回処理を行ない、水性眼科用組成物を調製した。得られた水性眼科用組成物について、下記評価を行った。
[保存効力]
表1に示す実施例1、比較例1について、第17改正日本薬局方・参考情報の保存効力試験法に準じて保存効力試験を実施した。被検菌株は以下に示す細菌及び真菌の5種を用い、各例の試料1mLあたりが105個になるように菌を加え、25℃に静置した。7日後に各試料1mLをカンテン培地にて5日間培養し、生菌数を測定した。
初発菌数(105個/mL)に対する残存率(%)を算出した。操作は無菌的に行った。表2の判定基準を満たすものを適合、満たさないものを不適合とした。
Figure 2020066590
Figure 2020066590
実施例1ではすべての菌種において基準に適合した。比較例1は4菌種で基準に適合したが、黄色ブドウ球菌では不適合であった。
以上のことから、(A)亜硫酸塩及びチオ硫酸塩から選ばれる1種以上と(B)非イオン性界面活性剤とを含有する組成物の保存効力の判定には、黄色ブドウ球菌が最適と判断され、下記表に示す組成の実施例及び比較例について、黄色ブドウ球菌のみで評価した。
Figure 2020066590
Figure 2020066590
Figure 2020066590
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Figure 2020066590
[分解物の濃度]
下記実施例については、下記方法で保存後の分解物量を評価した。
各水性眼科用組成物を調製し、20mLのガラス製アンプルに充填後密閉し、70℃で6日間保存した。保存後のホルムアルデヒド量を、以下の方法に従って定量した。
<ホルムアルデヒド定量法>
保存後の水性眼科用組成物中のホルムアルデヒド含量を、高速液体クロマトグラフィー法(カラム:内径約4.6mm,長さ約15cmのステンレス管に約5μmの液体クロマトグラフィー用オクタデシルシリル化シリコーンポリマー被覆シリカゲルを充填、移動相:水/アセトニトリル混液(4:1)、検出器:紫外吸光光度計(測定波長:413nm))により測定し、ホルムアルデヒド含量を算出した。
Figure 2020066590
比較例11と実施例19〜23とを比較することにより、(A)成分に分解物抑制効果があり、(A)の濃度の増加により、分解物抑制効果が高まることが確認された。
上記例で使用した原料を下記に示す。なお、特に明記がない限り、表中の各成分の量は純分換算量である。
流動パラフィン:第17改正日本薬局法第1法(37.8℃)粘度76.6mm2/s(74〜88mm2/s)(KAYDOL、島貿易社製)
白色ワセリン(日本薬局方 白色ワセリン、健栄製薬社製)
精製ラノリン(日本薬局方 精製ラノリン、健栄製薬社製)
レチノールパルミチン酸エステル(レチノールパルミチン酸エステル、DSM社製)
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油:ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60(HCO60(医薬用)、日本サーファクタント工業社製)
POEヒマシ油:ポリオキシエチレンヒマシ油35(ユニオックスC35、日油社製)
POEソルビタン脂肪酸エステル:ポリオキシエチレン(20)ソルビタン脂肪酸エステル(レオドール TW−O120V、花王社製)
POEPOPグリコール:ポリオキシエチレン(196)ポリオキシプロピレン(67)グリコール(LutrolF127、BASFジャパン社製)
ホウ酸(関東化学社製)
ホウ砂(小堺製薬社製)
塩化ナトリウム(富田製薬社製)
塩化カリウム(赤穂化成社製)
水酸化ナトリウム(和光純薬工業社製)
乾燥亜硫酸ナトリウム(乾燥亜硫酸ナトリウム「製造専用」(日本薬局方)、国産化学社製)
亜硫酸水素ナトリウム(亜硫酸水素ナトリウム「製造専用」(日本薬局方)、富士フイルム和光純薬社製)
本発明は、水性眼科用組成物及び保存効力向上方法に関するものである。
水性眼科組成物は、開封後も継続的に使用することが予想されるため、微生物汚染等による製品の腐敗を防止されていることが望ましい。そのため、腐敗を防止するために防腐剤等の殺菌作用や抗菌作用のある成分を配合する必要がある。亜硫酸塩、チオ硫酸塩は抗菌作用を持つ添加物の1つであることが知られている。しかしながら、亜硫酸塩、チオ硫酸塩は、眼科用組成物の防腐剤としては使用されていない。
一方、眼科用組成物は多様な成分を含有しているため、析出を防止するために非イオン性界面活性剤を配合することが多い。
特開2008−222638号公報
本発明は本課題を鑑みてなされたものであり、亜硫酸塩又はチオ硫酸塩と、非イオン性界面活性剤とを含む、保存効力に優れる組成物及び保存効力向上方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、亜硫酸塩、チオ硫酸塩は、眼科用組成物の防腐剤として使用したところ、保存効力が不十分であること、さらに、非イオン性界面活性剤は亜硫酸塩の抗菌効果を低下させる作用を有することを知見した。
本発明者らは、上記問題を解決するために、亜硫酸塩又はチオ硫酸塩と、非イオン性界面活性剤とを含む組成物に、流動パラフィン及びワセリンから選ばれる1種以上を配合することで、目的とする保存効力が得られることを知見し、本発明をなすに至ったものである。
従って、本発明は下記水性眼科用組成物及び保存効力向上方法を提供する。
1.(A)亜硫酸塩及びチオ硫酸塩から選ばれる1種以上、
(B)非イオン性界面活性剤、及び
(C)流動パラフィン及びワセリンから選ばれる1種以上
を含有する水性眼科用組成物。
2.水性眼科用組成物中のエマルションの平均粒子径が100nm以下である1記載の水性眼科用組成物。
3.(A)亜硫酸塩及びチオ硫酸塩から選ばれる1種以上と、(B)非イオン性界面活性剤とを含有する水性眼科用組成物に、
(C)流動パラフィン及びワセリンから選ばれる1種以上
を配合する、上記水性眼科用組成物の保存効力向上方法。
本発明によれば、保存効力に優れる、亜硫酸塩又はチオ硫酸塩と、非イオン性界面活性剤とを含む水性眼科用組成物を提供することができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
[(A)成分]
本発明の(A)成分は、亜硫酸塩及びチオ硫酸塩から選ばれる1種以上であり、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
本発明の亜硫酸塩としては、製剤上許容される亜硫酸塩が挙げられる。例えば、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、乾燥亜硫酸ナトリウム(無水亜硫酸ナトリウム)、ピロ亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸カリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム等が挙げられる。本発明のチオ硫酸塩としては、例えば、チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸アンモニウムが挙げられる。中でも、保存効力が良好である観点から、乾燥亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウムが好ましい。特に、日本薬局方に収載されたものが好適である。
(A)成分の配合量は、保存効力の点から、水性眼科用組成物中(以下、組成物と記載する場合がある)、0.005w/v%(質量/体積%、g/100mL)以上が好ましく、眼刺激の観点から、0.5w/v%以下が好ましい。0.01〜0.4w/v%がより好ましく、0.02〜0.2w/v%がさらに好ましい。
非イオン性界面活性剤を含む組成物では、非イオン性界面活性剤の酸化分解によるホルムアルデヒドの発生(分解物)という課題が生じる。亜硫酸塩又はチオ硫酸塩は、この酸化分解を抑制することができる。この点からは(A)成分の配合量は、組成物中0.01w/v%以上が好ましく、眼刺激の観点から、0.5w/v%以下が好ましい。0.02〜0.4w/v%がより好ましく、0.05〜0.2w/v%がさらに好ましい。
[(B)成分]
本発明の(B)成分は、非イオン性界面活性剤であり、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。具体的には、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(POEソルビタン脂肪酸エステル)、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(POEPOPグリコール)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール等が挙げられる。中でも、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールが好ましい。
ポリオキシエチレンヒマシ油(POEヒマシ油)は、ヒマシ油に酸化エチレン(EO)を付加重合することによって得られる化合物であり、酸化エチレンの平均付加モル数が異なるいくつかの種類が知られている。ポリオキシエチレンヒマシ油における酸化エチレンの平均付加モル数については、特に限定はないが、3〜60モルが例示される。具体的にはポリオキシエチレンヒマシ油3(EO平均付加モル数3)、ポリオキシエチレンヒマシ油10(EO平均付加モル数10)、ポリオキシエチレンヒマシ油20(EO平均付加モル数20)、ポリオキシエチレンヒマシ油35(EO平均付加モル数35)、ポリオキシエチレンヒマシ油40(EO平均付加モル数40)、ポリオキシエチレンヒマシ油50(EO平均付加モル数50)、ポリオキシエチレンヒマシ油60(EO平均付加モル数60)等が挙げられる。中でも、ポリオキシエチレンヒマシ油35が好ましい。
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(POE硬化ヒマシ油)は、水添したヒマシ油に酸化エチレンを付加重合することによって得られる化合物であり、酸化エチレンの平均付加モル数が異なるいくつかの種類が知られている。ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油における酸化エチレンの平均付加モル数については、特に限定はないが、5〜100モルが例示される。具体的にはポリオキシエチレン硬化ヒマシ油5(EO平均付加モル数5)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油10(EO平均付加モル数10)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油20(EO平均付加モル数20)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油30(EO平均付加モル数30)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40(EO平均付加モル数40)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50(EO平均付加モル数50)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60(EO平均付加モル数60)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油80(EO平均付加モル数80)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油100(EO平均付加モル数100)等が挙げられる。中でも、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60が好ましい。
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(POEソルビタン脂肪酸エステル)としては、モノラウリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(ポリソルベート20)、モノパルミチン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(ポリソルベート40)、モノステアリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(ポリソルベート60)、トリステアリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(ポリソルベート65)、モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(ポリソルベート80)が挙げられる。中でも、モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(ポリソルベート80)が好ましい。
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(POEPOPグリコール)は、ポリオキシエチレン鎖(POE)とポリオキシプロピレン鎖(POP)からなるブロック共重合体であり、酸化エチレン(EO)と酸化プロピレン(PO)の平均付加モル数が異なるいくつかの種類が知られている。ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールにおける酸化エチレンと酸化プロピレンの平均付加モル数については、特に限定はないが、それぞれ平均付加モル数5〜200モルが例示される。具体的にはポリオキシエチレン(200)ポリオキシプロピレン(70)グリコール(EO平均付加モル数200、PO平均付加モル数70)、ポリオキシエチレン(196)ポリオキシプロピレン(67)グリコール(EO平均付加モル数196、PO平均付加モル数67)、ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール(EO平均付加モル数160、PO平均付加モル数30)、ポリオキシエチレン(120)ポリオキシプロピレン(40)グリコール(EO平均付加モル数120、PO平均付加モル数40)、ポリオキシエチレン(42)ポリオキシプロピレン(67)グリコール(EO平均付加モル数42、PO平均付加モル数67)、ポリオキシエチレン(54)ポリオキシプロピレン(39)グリコール(EO平均付加モル数54、PO平均付加モル数39)、ポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(20)グリコール(EO平均付加モル数20、PO平均付加モル数20)等が挙げられる。中でも、ポリオキシエチレン(200)ポリオキシプロピレン(70)グリコールが好ましい。
モノステアリン酸ポリエチレングリコールは、ステアリン酸に酸化エチレンを付加重合することによって得られる化合物であり、酸化エチレンの平均付加モル数が異なるいくつかの種類が知られている。モノステアリン酸ポリエチレングリコールにおける酸化エチレンの平均付加モル数については、特に限定はないが、5〜100モルが例示される。具体的にはモノステアリン酸ポリエチレングリコール10(EO平均付加モル数10)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール25(EO平均付加モル数25)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール40(EO平均付加モル数40)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール45(EO平均付加モル数45)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール55(EO平均付加モル数55)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール100(EO平均付加モル数100)等が挙げられる。中でもステアリン酸ポリエチレングリコール40が好ましい。
(B)成分の配合量は、組成物中0.001〜10w/v%が好ましく、0.01〜5w/v%がより好ましく、0.1〜1w/v%がさらに好ましい。
ポリオキシエチレンヒマシ油又はポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を配合する場合、その配合量は、組成物中0.001〜10w/v%が好ましく、0.01〜5w/v%がより好ましく、0.1〜1w/v%がさらに好ましい。
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを配合する場合、その配合量は、組成物中0.005〜10w/v%が好ましく、0.05〜5w/v%がより好ましく、0.5〜1w/v%がさらに好ましい。
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールを配合する場合、その配合量は、組成物中0.002〜10w/v%が好ましく、0.02〜5w/v%がより好ましく、0.2〜1w/v%がさらに好ましい。
[(C)成分]
本発明の(C)成分は、流動パラフィン及びワセリンから選ばれる1種以上であり、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。(C)成分により、(A)亜硫酸塩又はチオ硫酸塩と、(B)非イオン性界面活性剤とを含む組成物の保存効力が向上する。
流動パラフィンは、飽和脂質が増加した不安定な涙液油層に対して、涙液油層安定化効果が高い成分である。流動パラフィンは、トリグリセリドからなる植物油や炭化水素の中でも炭素鎖長の短いスクワラン等と比較して極性が低い油分である。また、流動パラフィンは原油から得られる炭化水素類の混合物であり、常温で液体である。例えば、原油の常圧蒸留残油を原料に減圧蒸留溶剤脱歴処理を行い、その後溶剤精製法又は水素化分解法処理を行う方法等により製造される。本発明に用いられる流動パラフィンに特に制限はなく、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。具体的には、炭化水素の炭素鎖長に特に制限はないが、15〜45のものが好適に用いられる。また、炭化水素における二重結合の有無について特に制限はないが、飽和炭化水素を多く含むものが好適に用いられる。さらに、炭化水素の構造としては、直鎖、分岐鎖及び環状構造のいずれを含んでいてもよく、いずれの比重の流動パラフィンであっても用いることができる。特に、日本薬局方に収載された流動パラフィン及び軽質流動パラフィン等が好適である。なお、安定剤として適当な型のトコフェロールを含んでいてもよい。
流動パラフィンの粘度はその分子量と相関しており、第17改正日本薬局方第1法(37.8℃)の測定方法において、粘度30〜100mm2/sのものが好ましく、粘度37〜88mm2/sのものがより好ましく、74〜88mm2/sのものがさらに好ましい。
ワセリンは、石油から蒸留精製したときに残る半固形の油脂性物質であり,固形炭化水素と液状炭化水素からなる。常温では半固形であり、固体と液体が共存する。いずれの比重のワセリンであっても用いることができる。本発明に用いられるワセリンに特に制限はなく、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
上記炭化水素の炭素鎖長に特に制限はないが、15以上のものが好適に用いられる。また、炭化水素における二重結合の有無について特に制限はないが、飽和炭化水素を多く含むものが好適に用いられる。さらに、炭素鎖は直鎖、分岐及び環状のいずれであってもよいが、大部分が分岐鎖を有するパラフィン(イソパラフィン)である。
ワセリンとしては、日本薬局方に収載された白色ワセリン及び黄色ワセリンが好適である。なお、安定剤として適当な型のトコフェロールを含んでいてもよい。
(C)成分の配合量は、組成物中0.0001〜1w/v%が好ましく、0.005〜0.5w/v%がより好ましく、0.01〜0.2w/v%がさらに好ましい。
流動パラフィンを配合する場合、0.001〜1w/v%が好ましく、0.005〜0.5w/v%がより好ましく、0.01〜0.2w/v%がさらに好ましい。
ワセリンを配合する場合、0.0001〜0.1w/v%が好ましく、0.001〜0.05w/v%がより好ましく、0.001〜0.01w/v%がさらに好ましい。
各成分の下記で表される配合質量比は以下の通りである。なお、上記比率はw/v%比であるが、質量比と同じ値となる。
[(B)/(A)]
1.5≦(B)/(A)≦100が好ましく、1.8≦(B)/(A)≦37.5がより好ましく、3.0≦(B)/(A)≦15がさらに好ましい。1.5未満になると、亜硫酸塩により点眼時に刺激感を感じる可能性が高くなる
[(B)/(C)]
(C)が流動パラフィンの場合、0.5≦(B)/(C)≦100が好ましく、3≦(B)/(C)≦75がより好ましく、5≦(B)/(C)≦50がさらに好ましい。
(C)がワセリンの場合、5≦(B)/(C)≦1,000が好ましく、10≦(B)/(C)≦100がより好ましい。上記好ましい範囲の下限未満になると組成物に白濁が生じやすくなり、上記好ましい範囲の上限を超えると、点眼時に刺激感を生じる可能性が高くなる。
[その他の成分]
本発明の組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、眼科用組成物に配合されるその他の成分を適量配合することができる。その他の成分としては、油成分、防腐剤、糖類、緩衝剤、pH調整剤、等張化剤、安定化剤、清涼化剤、多価アルコール、粘稠剤、薬物等が挙げられる。これらの成分は、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて配合することができる。下記に示す成分の配合量は、配合する場合の好ましい範囲である。
油成分として、例えば、ヒマシ油、大豆油、オリーブ油、ゴマ油、コーン油、ヤシ油、アーモンド油、中鎖脂肪酸トリグリセリド、ミックストコフェロール、ワックスエステル、ステロールエステル等が挙げられる。油成分を配合する場合、その配合量は組成物中0.001〜1.0w/v%が好ましく、0.001〜0.5w/v%がより好ましく、0.001〜0.25w/v%がさらに好ましく、0.1w/v%以下が最も好ましい。
本発明の組成物は、(A)、(B)、(C)成分により保存効力を得るものであるが、防腐剤を配合することもできる。防腐剤としては、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ソルビン酸、チメロサール、フェニルエチルアルコール、アルキルアミノエチルグリシン、クロルヘキシジングルコン酸、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル等が挙げられる。これらは、組成物中に0.1w/v%以下配合でき、0.01w/v%以下が好ましく、0.001w/v%以下がより好ましく、0.0001w/v%以下がさらに好ましく、配合しないことが最も好ましい。
糖類としては、例えば、グルコース、シクロデキストリン、キシリトール、ソルビトール、マンニトール等が挙げられる。なお、これらは、d体、l体又はdl体のいずれでもよい。糖類を配合する場合、その配合量は組成物中0.001〜5.0w/v%が好ましく、0.001〜1w/v%がより好ましく、0.001〜0.1w/v%がさらに好ましい。
緩衝剤としては、例えば、ホウ酸又はその塩(ホウ砂等)、トロメタモール、クエン酸又はその塩(クエン酸ナトリウム等)、リン酸又はその塩(リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム等)、酒石酸又はその塩(酒石酸ナトリウム等)、グルコン酸又はその塩(グルコン酸ナトリウム等)、酢酸又はその塩(酢酸ナトリウム等)、炭酸又はその塩(炭酸水素ナトリウム等)、各種アミノ酸類(イプシロン−アミノカプロン酸、アスパラギン酸カリウム、アミノエチルスルホン酸、グルタミン酸、グルタミン酸ナトリウム)等が挙げられる。保存効力の観点から、ホウ酸、ホウ砂、トロメタモールが好ましい。緩衝剤を配合する場合、その配合量は、組成物中0.001〜5.0w/v%が好ましく、0.001〜2w/v%がより好ましく、0.001〜1w/v%がさらに好ましい。
pH調整剤としては、無機酸又は無機アルカリ剤が挙げられる。例えば、無機酸としては(希)塩酸が挙げられる。無機アルカリ剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等が挙げられる。組成物のpHは3.5〜8.0が好ましく、5.5〜8.0がより好ましい。なお、pHの測定は、25℃でpHメータ(HM−25R、東亜ディーケーケー(株))を用いて行う。
等張化剤としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、乾燥炭酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム等が挙げられる。涙液油層不安定化が引き起こす諸症状をより改善する点から、塩化ナトリウム又は塩化カリウムを配合し、等張化されていることが好ましい。組成物の対生理食塩水浸透圧比は、0.60〜2.00が好ましく、0.60〜1.55がより好ましく、0.83〜1.20が最も好ましい。なお、浸透圧の測定は、25℃で自動浸透圧計(A2O、アドバンスドインストルメンツ社)を用いて行う。
安定化剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エデト酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム水和物、シクロデキストリン、ジブチルヒドロキシトルエン等が挙げられる。中でも、保存効力と(B)成分の分解物抑制効果の観点から、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)が好ましい。安定化剤を配合する場合、その配合量は組成物中0.001〜5.0w/v%が好ましく、0.001〜1w/v%がより好ましく、0.001〜0.1w/v%がさらに好ましい。
清涼化剤としては、例えば、メントール、カンフル、ボルネオール、ゲラニオール、シネオール、リナロール等が挙げられる。d体、l体又はdl体のいずれでもよい。清涼化剤を配合する場合、その配合量は組成物中0.0001〜0.2w/v%が好ましい。
多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。多価アルコールを配合する場合、その配合量は組成物中0.001〜5.0w/v%が好ましく、0.001〜1w/v%がより好ましく、0.001〜0.1w/v%がさらに好ましい。
粘稠剤としては、例えば、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、ヒアルロン酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ポリアクリル酸、カルボキシビニルポリマー等が挙げられる。粘稠剤を配合する場合、その配合量は組成物中0.001〜5.0w/v%が好ましく、0.001〜1w/v%がより好ましく、0.001〜0.1w/v%がさらに好ましい。
薬物(薬学的有効成分)としては、例えば、充血除去成分(例えば、エピネフリン、塩酸エピネフリン、エフェドリン塩酸塩、塩酸テトラヒドロゾリン、ナファゾリン塩酸塩、ナファゾリン硝酸塩、フェニレフリン塩酸塩、dl−メチルエフェドリン塩酸塩等)、消炎・収斂剤(例えば、ネオスチグミンメチル硫酸塩、イプシロン−アミノカプロン酸、アラントイン、ベルベリン塩化物水和物、ベルベリン硫酸塩水和物、アズレンスルホン酸ナトリウム、グリチルリチン酸二カリウム、硫酸亜鉛、乳酸亜鉛、リゾチーム塩酸塩等)、抗ヒスタミン剤(例えば、ジフェンヒドラミン塩酸塩、クロルフェニラミンマレイン酸塩等)、水溶性ビタミン類(フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム、シアノコバラミン、ピリドキシン塩酸塩、パンテノール、パントテン酸カルシウム、パントテン酸ナトリウム等)、アミノ酸類(例えば、L−アスパラギン酸カリウム、L−アスパラギン酸マグネシウム、L−アスパラギン酸カリウム・マグネシウム(等量混合物)、アミノエチルスルホン酸、コンドロイチン硫酸ナトリウム等)、サルファ剤等が挙げられる。薬物を配合する場合、薬物の配合量は、各薬物の有効な適性量を選択することができるが組成物中0.001〜5w/v%が好ましく、0.001〜1w/v%がより好ましく、0.001〜0.1w/v%がさらに好ましい。
[製造方法]
本発明の組成物の製造方法は特に限定されないが、例えば、(C)成分等の油性成分と、(B)成分等の界面活性剤成分の混合溶液を、(A)成分等の水性成分を含む水溶液と混合し、混合して乳化させ、pH調整後、総体積を水により調することにより得ることができる。各液体の混合方法は、一般的な方法でよく、パルセーター、プロペラ羽根、パドル羽根、タービン羽根等を用いて適宜行われるが、回転数は特に限定されず、激しく泡立たない程度に設定することが好ましい。各液体の混合温度は特に限定しないが、油性成分と界面活性剤成分が共に融解温度以上であることが好ましく、具体的には40〜95℃の範囲から適宜選定される。
エマルションの平均粒子径を小さくするため、好ましくは高圧乳化による微細化工程を行う。高圧乳化条件は、噴射圧は100〜245MPaが好ましく、200〜245MPaがより好ましい。さらに背圧を印加することが好ましく、背圧は3〜10MPaが好ましく、3〜5MPaがより好ましい。さらにパス回数は1〜10回が好ましく、1〜5回がより好ましい。
また、得られた組成物を樹脂製容器に充填後、さらに包装体により密封し、上記容器と上記包装体との間に形成された空間の不活性ガスを封入してもよく、眼科用組成物を樹脂製容器に充填し、脱酸素剤と共に包装体により密封してもよい。
[水性眼科用組成物]
本発明の組成物は、「水性眼科用組成物」である。本発明において、「水性眼科用組成物」とは、媒質が水である眼科用組成物をいう。水性眼科用組成物にすることにより、涙液と組成物の混合を容易にし、(C)成分による涙液油層安定性を高めることができる。なお、水の配合量は、組成物中90.0〜99.3w/v%が好ましく、93.0〜99.0w/v%がより好ましく、95.0〜97.5w/v%がさらに好ましい。
本発明の組成物中に含まれるエマルション粒子((B)成分と(C)成分の会合体)の平均粒子径は、100nm以下が好ましく、10〜50nmがより好ましく、20〜40nmがさらに好ましい。このような粒径とすることで、保存効力がより向上する。
なお、本発明において平均粒子径とは、光子相関法で求めた自己相関関数よりキュムラント法で算出した平均粒子径(メディアン径)を指す。粒子径は、動的光散乱等の原理を応用した各種測定装置により、恒温槽を用い、25℃一定の温度条件のもと測定する。例えば、粒子径測定装置(ELSZ−200ZS、大塚電子社製)にて測定することができる。
本発明の組成物の透過率は10〜100%が好ましく、80〜100%がより好ましい。本発明の透過率は、分光光度計(例えば、UV−1800、(株)島津製作所)を用いて測定した波長600nmの透過率をいう。
本発明の組成物は目への適応を容易にする点から液体が好ましく、粘度は20mPa・s以下が好ましく、10mPa・s以下がより好ましく、5mPa・s以下がさらに好ましい。なお、粘度の測定方法はコーンプレート型粘度計(DV2T、英弘精機(株))を用いて行う。
本発明の組成物は、そのまま液剤としてもよく、ゲル剤等に調製してもよい。使用形態としては、具体的には点眼剤(例えば、一般用点眼剤、コンタクトレンズ用点眼剤等)、洗眼剤(一般用洗眼剤、コンタクトレンズをはずした後に使用する洗眼剤等)、コンタクトレンズ装着液、コンタクト取り出し液等が挙げられる。中でも、コンタクトレンズ用点眼剤、コンタクトレンズをはずした後に使用する洗眼剤、コンタクトレンズ装着液、コンタクト取り出し液等のコンタクトレンズ用眼科用組成物として好適である。コンタクトレンズとしては、ハードコンタクトレンズ、O2ハードコンタクトレンズ、ソフトコンタクトレンズ、シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ等が挙げられ、特に限定されない。
本発明の組成物は、点眼剤又はコンタクトレンズ用点眼剤として使用する場合、1回につき10〜100μLを1〜3滴、1日につき1〜6回点眼することが好ましく、1回につき10〜50μLを1〜3滴、1日につき1〜6回がより好ましい。1回につき10〜30μLを1〜3滴、1日につき1〜6回がさらに好ましい。洗眼剤として使用する場合、1回につき3〜6mL、1日につき3〜6回洗眼することが好ましい。
[防腐剤組成物]
本発明は、亜硫酸塩又はチオ硫酸塩と、非イオン性界面活性剤とを含む組成物に、流動パラフィン及びワセリンから選ばれる1種以上を配合することで、目的とする保存効力が得られることから、以下のような発明を提供する。
(A)亜硫酸塩及びチオ硫酸塩から選ばれる1種以上及び(B)非イオン性界面活性剤を含有する水性眼科用組成物配合用であって、(C)流動パラフィン及びワセリンから選ばれる1種以上を含有する防腐剤組成物。
好適な成分、配合量等は上記と同じである。
[保存効力向上方法]
本発明は、
(A)亜硫酸塩及びチオ硫酸塩から選ばれる1種以上と、(B)非イオン性界面活性剤とを含有する水性眼科用組成物に、
(C)流動パラフィン及びワセリンから選ばれる1種以上
を配合する、上記水性眼科用組成物の保存効力向上方法を提供する。好適な成分、配合量等は上記と同じである。
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。組成の「%」はw/v%(g/100mL)、比率は質量比(w/v%比と同じ値)を示す。
[表中に高圧乳化なしと記載された実施例及び比較例]
(A)成分及び各水性成分を90mLの水に溶解し、90℃15分間加温混合して水性成分水溶液を得た。同時に、(C)等の油性成分と(B)非イオン性界面活性剤のプレミックスを作製し、90℃15分間加熱混合した。次に、プレミックスを上記水性成分水溶液に所定量加え、さらに90℃15分間加熱混合した。その後、室温まで冷却し、pH調整を行い、全量が100mLになるように水を加えた。
[表中に高圧乳化ありと記載された実施例及び比較例]
(A)成分及び各水性成分を90mLの水に溶解し、90℃15分間加温混合して水性成分水溶液を得た。同時に、(C)等の油性成分と(B)非イオン性界面活性剤のプレミックスを作製し、90℃15分間加熱混合した。次に、プレミックスを上記水性成分水溶液に所定量加え、さらに90℃15分間加熱混合した。その後、室温まで冷却し、pH調整を行い、全量が100mLになるように水を加えた。得られたものに、高圧乳化機(スターバーストミニ、(株)スギノマシン)を用い、噴射圧200MPa背圧3MPaにて5回処理を行ない、水性眼科用組成物を調製した。得られた水性眼科用組成物について、下記評価を行った。
[保存効力]
表1に示す実施例1、比較例1について、第17改正日本薬局方・参考情報の保存効力試験法に準じて保存効力試験を実施した。被検菌株は以下に示す細菌及び真菌の5種を用い、各例の試料1mLあたり15個になるように菌を加え、25℃に静置した。7日後に各試料1mLをカンテン培地にて5日間培養し、生菌数を測定した。
初発菌数(105個/mL)に対する残存率(%)を算出した。操作は無菌的に行った。表2の判定基準を満たすものを適合、満たさないものを不適合とした。
Figure 2020066590
Figure 2020066590
実施例1ではすべての菌種において基準に適合した。比較例1は4菌種で基準に適合したが、黄色ブドウ球菌では不適合であった。
以上のことから、(A)亜硫酸塩及びチオ硫酸塩から選ばれる1種以上と(B)非イオン性界面活性剤とを含有する組成物の保存効力の判定には、黄色ブドウ球菌が最適と判断され、下記表に示す組成の実施例及び比較例について、黄色ブドウ球菌のみで評価した。
Figure 2020066590
Figure 2020066590
Figure 2020066590
Figure 2020066590
Figure 2020066590
[分解物の濃度]
下記実施例については、下記方法で保存後の分解物量を評価した。
各水性眼科用組成物を調製し、20mLのガラス製アンプルに充填後密閉し、70℃で6日間保存した。保存後のホルムアルデヒド量を、以下の方法に従って定量した。
<ホルムアルデヒド定量法>
保存後の水性眼科用組成物中のホルムアルデヒド含量を、高速液体クロマトグラフィー法(カラム:内径約4.6mm,長さ約15cmのステンレス管に約5μmの液体クロマトグラフィー用オクタデシルシリル化シリコーンポリマー被覆シリカゲルを充填、移動相:水/アセトニトリル混液(4:1)、検出器:紫外吸光光度計(測定波長:413nm))により測定し、ホルムアルデヒド含量を算出した。
Figure 2020066590
比較例11と実施例19〜23とを比較することにより、(A)成分に分解物抑制効果があり、(A)の濃度の増加により、分解物抑制効果が高まることが確認された。
上記例で使用した原料を下記に示す。なお、特に明記がない限り、表中の各成分の量は純分換算量である。
流動パラフィン:第17改正日本薬局第1法(37.8℃)粘度76.6mm2/s(74〜88mm2/s)(KAYDOL、島貿易社製)
白色ワセリン(日本薬局方 白色ワセリン、健栄製薬社製)
精製ラノリン(日本薬局方 精製ラノリン、健栄製薬社製)
レチノールパルミチン酸エステル(レチノールパルミチン酸エステル、DSM社製)
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油:ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60(HCO60(医薬用)、日本サーファクタント工業社製)
POEヒマシ油:ポリオキシエチレンヒマシ油35(ユニオックスC35、日油社製)
POEソルビタン脂肪酸エステル:ポリオキシエチレン(20)ソルビタン脂肪酸エステル(レオドール TW−O120V、花王社製)
POEPOPグリコール:ポリオキシエチレン(196)ポリオキシプロピレン(67)グリコール(LutrolF127、BASFジャパン社製)
ホウ酸(関東化学社製)
ホウ砂(小堺製薬社製)
塩化ナトリウム(富田製薬社製)
塩化カリウム(赤穂化成社製)
水酸化ナトリウム(和光純薬工業社製)
乾燥亜硫酸ナトリウム(乾燥亜硫酸ナトリウム「製造専用」(日本薬局方)、国産化学社製)
亜硫酸水素ナトリウム(亜硫酸水素ナトリウム「製造専用」(日本薬局方)、富士フイルム和光純薬社製)

Claims (3)

  1. (A)亜硫酸塩及びチオ硫酸塩から選ばれる1種以上、
    (B)非イオン性界面活性剤、及び
    (C)流動パラフィン及びワセリンから選ばれる1種以上
    を含有する水性眼科用組成物。
  2. 水性眼科用組成物中のエマルションの平均粒子径が100nm以下である請求項1記載の水性眼科用組成物。
  3. (A)亜硫酸塩及びチオ硫酸塩から選ばれる1種以上と、(B)非イオン性界面活性剤とを含有する水性眼科用組成物に、
    (C)流動パラフィン及びワセリンから選ばれる1種以上
    を配合する、水性眼科用組成物の保存効力向上方法。
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