JP2019110043A - 電池システム - Google Patents
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Abstract
【課題】水系電池の過放電時に発生する水素ガスが電池内圧に及ぼす影響を考慮して高い精度で電池内圧を推定する。【解決手段】ECUは、正極電位がしきい値Th1よりも低い状態で対象セルの放電が行なわれているか否かに基づいて、対象セルが過放電中であるか否かを判断する(S11)。そして、対象セルが過放電中である場合には、ECUは、対象セルの過放電中に流れる積算電気量を用いて水素ガス発生量Hmを推定する(S12)。さらに、ECUは、酸素ガス発生量Omも推定する(S13)。そして、ECUは、水素ガス発生量Hmと酸素ガス発生量Omとを用いて、対象セルのセル内圧Pcを推定する(S14)。【選択図】図5
Description
本開示は、電池システムに関し、特に、水系電解液を用いた二次電池のケース内の圧力を推定する電池システムに関する。
水系電解液を用いた二次電池(以下、「水系電池」と称する場合がある)として、ニッケル水素電池が知られている。ニッケル水素電池の過充電時には、正極から酸素ガスが発生する。こうした酸素ガスの発生に伴って電池ケース内の圧力(以下、「電池内圧」と称する場合がある)が上昇する。電池内圧の変化は電池の性能に影響するため、電池内圧を高い精度で検出することが求められる。特開2017−91790号公報(特許文献1)には、正極における酸素ガス発生量と、負極における酸素ガス吸収量と、負極における水素平衡圧とを用いて、電池内圧を推定する電池システムが開示されている。
水系電池では、過放電時に正極から水素ガスが発生する。上記の特許文献1に記載の電池システムでは、水系電池の過放電時に発生する水素ガスが電池内圧に及ぼす影響が考慮されていない。よって、電池内圧の推定精度を高めるためには、さらなる改善の余地がある。
本開示は上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、水系電池の過放電時に発生する水素ガスが電池内圧に及ぼす影響を考慮して高い精度で電池内圧を推定することである。
本開示の電池システムは、二次電池と、ガス量推定部と、圧力推定部とを備える。二次電池は、そのケース内に、正極と、負極と、水系電解液とを有する。ガス量推定部は、二次電池の過放電中に正極で発生する水素ガスの量を、二次電池の過放電中に流れる積算電気量を用いて推定するように構成される。圧力推定部は、ガス量推定部により推定された水素ガスの量を用いて、二次電池のケース内の圧力を推定するように構成される。なお、上記の過放電中においては、正極の電位がしきい値よりも低い状態で放電が行なわれる。
上記電池システムでは、ガス量推定部が、水系電池の過放電中に流れる積算電気量(以下、「積算電気量ΔC」と称する場合がある)を用いて、過放電中に水系電池の正極で発生する水素ガスの量(以下、「水素ガス発生量Hm」と称する場合がある)を推定する。水素ガス発生量Hmと積算電気量ΔCとが高い相関性を示すことから、ガス量推定部は、積算電気量ΔCを用いることで、水素ガス発生量Hmを高い精度で推定することが可能になる。また、圧力推定部は、高い精度で推定された水素ガス発生量Hmを用いることで、水系電池のケース内の圧力である電池内圧を高い精度で推定することができる。
このように、上記電池システムによれば、水系電池の過放電時に発生する水素ガスが電池内圧に及ぼす影響を考慮して高い精度で電池内圧を推定することができる。
また、上記のように電池内圧及び水素ガス発生量Hmが高い精度で推定されることによって、たとえば以下に示す電池の劣化を抑制することが可能になる。
電池のSOC(State Of Charge)が100%に近い状態で電池を放置したり、電池のSOCが0%に近い状態で電池を使用(放電)したりすると、電池の劣化が進行しやすくなる。このため、電池のSOCは、下限SOC及び上限SOCによって定まる使用SOC範囲内に収まるように制御される。なお、SOCは、セルの蓄電残量を示し、たとえば、満充電状態に対する蓄電量を0〜100%で表わしたものである。
使用SOC範囲を狭めることで、電池は、劣化しにくくなり、高い性能を維持しやすくなる。しかし、使用SOC範囲が狭いと、電池の制御において、上記の高い性能を十分に発揮させることができなくなる。詳しくは、電池の制御において、使用SOC範囲は、電池の実質的な放電容量に対応するため、使用SOC範囲が狭くなると、電池の放電容量が小さくなる。たとえば、電池のSOCが下限SOCに達すると、電池に蓄積した電力が残っていても、その電力(下限SOCに対応する電力)を使用(放電)することはできなくなる。よって、電池の放電容量を大きくするためには、電池の使用SOC範囲を広くすることが望ましい。
本願発明者は、水系電池の正極の材料や処理を変えることで、低SOCで水系電池の放電を行なったときの正極の劣化が抑制されることを確認した。このように改良された正極を有する水系電池(たとえば、高次Na処理が施された正極を有するニッケル水素電池)では、下限SOCを低く設定して使用SOC範囲を広くすることが可能になる。
また、電池ケースに弁(以下、「調圧弁」と称する場合がある)を設けることで、電池内圧を調整することが可能になる。たとえば、過放電中に水系電池の正極で水素ガスが発生した場合には、上記の調圧弁を開くことによって、発生した水素ガスを電池ケース外へ放出して、電池内圧の上昇を抑制することができる。
下限SOCを低く設定することで、低SOCのときに電池の放電が行なわれる頻度が高くなる。SOCが低下することにより正極の電位も低下するため、下限SOCが低く設定されると、電池は過放電状態になりやすくなる。また、組電池においてはセル毎のSOCにばらつきがあることから、特定のセルのみが過放電状態になることもある。電池が過放電状態になっても、上記の調圧弁を開くことにより過放電中に発生した水素ガスを電池ケース外へ放出することができるため、電池内圧の上昇を抑制することは可能である。しかし、水系電池において、水素ガスの発生源は、電解液に含まれる水(H2O)であり、調圧弁を開いて水素ガスを電池ケース外に放出すると、電池ケース内の水が減少する(ひいては、電解液に含まれる水が減る)ことになる。水系電池の電解液に含まれる水が過剰に減ると、水系電池の劣化が進行する。以下、水系電池の電解液に含まれる水が過剰に減ることを、「電解液枯れ」と称する場合がある。
水素ガス発生量Hmが多いときに調圧弁を開くと、多くの水素ガスが電池ケース外へ放出され、電解液枯れが起きやすくなる。このため、水素ガス発生量Hmが所定のしきい値(Th3)以上であり、かつ、電池内圧(Pc)が所定のしきい値(Th4)以上である場合には水系電池の出力電力を制限して、調圧弁を開弁せずに電池内圧の上昇を抑制することが好ましい。このようにすることで、電解液枯れによる電池の劣化を抑制することができる。なお、過放電により発生した水素ガスを、ケース外に放出せずにある程度の期間ケース内に留めておくと、水素ガスは電極での反応を通じて水(電解液)に戻る。
本開示によれば、水系電池の過放電時に発生する水素ガスが電池内圧に及ぼす影響を考慮して高い精度で電池内圧を推定することが可能になる。
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
以下では、この実施の形態に係る電池システムが電気自動車に適用される例について説明する。しかし、電池システムの適用対象は、電気自動車に限定されず、ハイブリッド車であってもよい。また、電池システムの用途は車両用に限定されるものではなく、定置用であってもよい。
図1は、本実施の形態に係る電池システムが搭載された車両1の全体構成を概略的に示すブロック図である。
図1を参照して、車両1は、モータジェネレータ(以下、「MG(Motor Generator)」と称する)10と、動力伝達ギア20と、駆動輪30と、電力制御ユニット(以下、「PCU(Power Control Unit)」と称する)40と、システムメインリレー(以下、「SMR(System Main Relay)」と称する)50と、電池システム2とを備える。電池システム2は、バッテリ100と、電圧センサ210と、電流センサ220と、温度センサ230と、電子制御ユニット(以下、「ECU(Electronic Control Unit)」と称する)300とを備える。
MG10は、たとえば三相交流回転電機である。MG10の出力トルクは、減速機等によって構成された動力伝達ギア20を介して駆動輪30に伝達される。MG10は、車両1の回生制動動作時には、駆動輪30の回転力によって発電することも可能である。MG10に加えてエンジン(図示せず)が搭載されたハイブリッド車では、エンジン及びMG10を協調的に動作させることによって必要な車両駆動力を発生させる。なお、図1ではMGが1つだけ設けられる構成が示されるが、MGの数はこれに限定されず、MGを複数(たとえば2つ)設ける構成としてもよい。
PCU40は、インバータとコンバータと(いずれも図示せず)を含む。バッテリ100の放電時には、コンバータは、バッテリ100から供給された電圧を昇圧してインバータに供給する。インバータは、コンバータから供給された直流電力を交流電力に変換してMG10を駆動する。一方、バッテリ100の充電時には、インバータは、MG10によって発電された交流電力を直流電力に変換してコンバータに供給する。コンバータは、インバータから供給された電圧を降圧してバッテリ100に供給する。
SMR50は、バッテリ100とPCU40とを結ぶ電流経路に電気的に接続されている。SMR50がECU300からの制御信号に応じて閉成されている場合、バッテリ100とPCU40との間で電力の授受が行なわれ得る。
バッテリ100は、再充電が可能に構成された直流電源である。バッテリ100は、複数の二次電池から構成される組電池を含んで構成される。この実施の形態では、バッテリ100に含まれる組電池が、直列に接続された複数の水系電池から構成される。また、水系電池としてはニッケル水素電池を採用する。ニッケル水素電池は、ケース内に、正極と、負極と、水系電解液(たとえば、アルカリ水溶液)とを有する二次電池である。以下、組電池を構成する二次電池(この実施の形態では、ニッケル水素電池)を「セル」と称する。バッテリ100に含まれる各セル101の詳細な構成については図2にて説明する。
電圧センサ210は、バッテリ100のセル毎の電圧Vbを検出する。電流センサ220は、バッテリ100に入出力される電流Ibを検出する。温度センサ230は、バッテリ100のセル毎の温度Tbを検出する。各センサは、その検出結果をECU300に出力する。電圧センサ210及び温度センサ230の各々は、たとえば1つのセル毎に1つずつ設けられている。ただしこれに限られず、電圧センサ210及び温度センサ230の各々は、複数個のセル毎に1つずつ設けられていてもよいし、1つの組電池に対して1つだけ設けられていてもよい。
ECU300は、CPU(Central Processing Unit)301と、メモリ302と、図示しない入出力バッファとを含んで構成される。メモリ302は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、及び書き換え可能な不揮発性メモリを含む。メモリ302(たとえば、ROM)に記憶されているプログラムをCPU301が実行することで、各種制御が実行される。ECU300は、たとえば、各センサから受ける信号、並びにメモリ302に記憶されたマップ及びプログラムに基づいて、車両1及び電池システム2が所望の状態となるように各機器を制御する。ECU300が行なう各種制御については、ソフトウェアによる処理に限られず、専用のハードウェア(電子回路)で処理することも可能である。
ECU300は、取得した情報(CPU301による演算結果等)を、メモリ302(たとえば、書き換え可能な不揮発性メモリ)に出力してメモリ302に保存する。メモリ302は、電池状態の検出や車両1の制御に用いられる情報等を、予め記憶していてもよい。たとえば、メモリ302は、バッテリ100の初期情報(セルの種類、容量、内部抵抗、電極の厚み、目付量等)を予め記憶していてもよい。
メモリ302は、電池の放電制御に用いられる対応情報(たとえば、正極電位及び負極電位を検出するためのマップや、後述する式(A)等)をさらに記憶していてもよい。対応情報は、相関する複数のパラメータの関係を示す情報である。なお、対応情報は、マップでもテーブルでも数式でもモデルでもよい。また、対応情報は、複数のマップ等を組み合わせて構成されていてもよい。
ECU300は、下限SOC及び上限SOCによって定まる使用SOC範囲に従ってバッテリ100の充放電を制御する。バッテリ100のSOCが上限SOCに近づくと、ECU300は、バッテリ100の入力電力(充電電力)を制限して、バッテリ100のSOCが上限SOCを超えないようにする。また、バッテリ100のSOCが下限SOCに近づくと、ECU300は、バッテリ100の出力電力(放電電力)を制限して、バッテリ100のSOCが下限SOCを下回らないようにする。下限SOC及び上限SOCは、たとえばメモリ302に記憶されている。下限SOC及び上限SOCの各々の数値は、ECU300によって変更できる。SOCの測定方法としては、たとえば、電流値積算(クーロンカウント)による手法、又は開放電圧(OCV:Open Circuit Voltage)の推定による手法など、種々の公知の手法を採用できる。
ECU300は、バッテリ100の充電電力の上限値を示す入力制限Winと、バッテリ100の放電電力の上限値を示す出力制限Woutとに基づいて、バッテリ100の入出力電力を制御するように構成される。ECU300は、バッテリ100への入力電力が入力制限Winを超えないように、バッテリ100への入力電力の制限処理を実行する。また、ECU300は、バッテリ100からの出力電力が出力制限Woutを超えないように、バッテリ100からの出力電力の制限処理を実行する。これらの制限処理は、たとえば、PCU40、SMR50等が制御されることにより行なわれる。入力制限Win及び出力制限Woutは、たとえばメモリ302に記憶されている。入力制限Win及び出力制限Woutの各々の数値は、ECU300によって変更できる。
図2は、バッテリ100に含まれるセル101の構成を示す図である。各セル101の構成は共通であるため、図2では1つのセル101のみを代表的に示す。なお、図2ではセル101のケース102の一部を透視して電極体104を示す。
図2を参照して、セル101は、たとえば金属製のケース102を備える角形密閉式のセルである。ケース102内には、ニッケル水素電池を構成する電極体104及び電解液(図示せず)が収容されている。ケース102の上部には安全弁103が設けられている。
ケース102は、いずれも金属からなるケース本体及び蓋体を含む角形ケースであり、蓋体がケース本体の開口部上で全周溶接されることにより密閉される。安全弁103は、ケース102内の圧力(以下、「セル内圧」と称する場合がある)が所定値(以下、「開弁圧Px」と称する場合がある)を超えると開弁されて、ケース102内のガス(水素ガス等)の一部を外部に排出する。この実施の形態では、セル内圧が電池内圧に相当し、安全弁103が調圧弁に相当する。
電極体104は、正極板と、負極板と、絶縁性のセパレータとを含む。正極板と負極板とはセパレータを介して交互に積層されている。すなわち、正極板と負極板との間には絶縁性のセパレータが挟まれる。正極板及び負極板は、図示しない正極端子及び負極端子にそれぞれ電気的に接続される。
ニッケル水素電池を構成する電極体104及び電解液の材料としては、ニッケル水素電池の材料として公知の各種材料の中から任意に選択した材料を用いることができる。この実施の形態においては、正極板には、水酸化ニッケル(Ni(OH)2又はNiOOH)とコバルト化合物との固溶体を含む正極活物質層と、活物質支持体(発泡ニッケル等)とを含む電極板が用いられる。正極板は、高次Na処理が施されていてもよい。負極板には、水素吸蔵合金を含む電極板が用いられる。水素吸蔵合金は、たとえば、水素吸蔵能力に優れる金属(Ti、Zr、Pd、Mg等)と水素放出能力に優れる金属(Fe、Co、Ni等)との合金である。セパレータには、親水化処理された合成繊維からなる不織布が用いられる。電解液には、水酸化カリウム(KOH)又は水酸化ナトリウム(NaOH)を含むアルカリ水溶液が用いられる。
ところで、改良された正極を有する水系電池(たとえば、高次Na処理が施された正極を有するニッケル水素電池)では、低SOCで放電を行なったときの正極の劣化(たとえば、コバルトの溶出)が抑制されるため、下限SOCを低く設定して使用SOC範囲を広くすることが可能になる。
下限SOCを低く設定することで、低SOCのときに電池の放電が行なわれる頻度が高くなる。このため、電池は過放電状態になりやすくなる。電池が過放電状態になっても、安全弁103を開くことにより過放電中に発生した水素ガスをケース102外へ放出することができるため、セル内圧の上昇を抑制することは可能である。しかし、水系電池において、水素ガスの発生源は、電解液に含まれる水(H2O)であり、安全弁103の開弁によって水素ガスをケース102外へ放出すると、ケース102内の水が減少して電解液枯れが起きやすくなる。
以下、図3を用いて、過放電中に安全弁103を開いて水素ガスをケース102外へ放出し続けたときのセル101の劣化について説明する。図3は、下記条件で過放電試験を行ない、過放電中のタイミングt11で安全弁103を開いたときのセル101の状態(電圧、内圧)の推移を示す図である。図3において、線k11はセル101の電圧を、線k12はガス排出量(積算値)を、線k13はセル101の内圧を示している。この試験においては、セル101の内圧を測定するための圧力センサをセル101に追加した。すなわち、線k13で示されるセル101の内圧は、圧力センサによって測定された値である。
[過放電試験の条件]
・放電範囲:SOCが0%から−100%になるまで
・放電電流:20A
・放電時間:21分
・環境温度:65℃
図3を参照して、セル101のSOCが0%を下回っても放電を続行すると、セル101が過放電状態になる。上記過放電試験では、セル101のSOCが0%の状態から放電を開始しているため、線k11で示されるように、放電を開始してすぐ(タイミングt11の前)にセル101が過放電状態になり、セル101の電圧が急激に低下(−側へ変化)した。そして、過放電を続けることによってセル101の正極で水素ガスが発生した。線k13で示されるように、水素ガスが発生することによってセル101の内圧が急上昇した。
・放電範囲:SOCが0%から−100%になるまで
・放電電流:20A
・放電時間:21分
・環境温度:65℃
図3を参照して、セル101のSOCが0%を下回っても放電を続行すると、セル101が過放電状態になる。上記過放電試験では、セル101のSOCが0%の状態から放電を開始しているため、線k11で示されるように、放電を開始してすぐ(タイミングt11の前)にセル101が過放電状態になり、セル101の電圧が急激に低下(−側へ変化)した。そして、過放電を続けることによってセル101の正極で水素ガスが発生した。線k13で示されるように、水素ガスが発生することによってセル101の内圧が急上昇した。
図3の例では、セル101の内圧が0.7MPa(前述の開弁圧Pxに相当する圧力)を超えたタイミングt11で安全弁103を開弁した。線k12で示されるように、安全弁103を開くことによってケース102内のガスがケース102外へ放出されるようになった。線k13で示されるように、安全弁103の開弁によってセル101の内圧が略一定に保たれた。
線k11で示されるように、放電開始から10分経過のタイミングでセル101の電圧に2度目の急激な低下が生じた。また、図3には示していないが、この電圧の低下に伴ってセル101の温度が急上昇した。そして、セル101の温度の上昇は放電を停止するまで続いた。
その後、タイミングt12(放電開始から21分経過のタイミング)でセル101の放電を停止させた。放電停止によりセル101の正極で水素ガスが発生しなくなり、時間が経つにつれてセル101の内圧が低下していった。また、セル101の放電が停止したタイミングt12でセル101の電圧は急激に上昇(+側へ変化)し、それ以降も、時間が経つにつれてセル101の電圧は緩やかに上昇していった。
線k12で示されるガス排出量(積算値)が多くなるほどセル101の電解液に含まれる水が減っていった。図3に示す過放電試験では、セル101の放電が停止するまでに10Lを超える量のガスがケース102外へ放出され、セル101が電解液枯れの状態になった。そして、電解液枯れによってセル101の劣化が進行した。
この実施の形態に従う電池システム2では、以下に示すような構成により上記セル101の劣化を抑制することを可能にしている。
ECU300は、正極電位がしきい値(以下、「しきい値Th1」と称する場合がある)よりも低い状態でセル101の放電が行なわれているか否かに基づいて、セル101が過放電中であるか否かを判断するように構成される。
そして、セル101が過放電中である場合には、ECU300(特に、「ガス量推定部」として機能する部分)は、過放電中にセル101の正極で発生する水素ガスの量である水素ガス発生量Hmを、セル101の過放電中に流れる積算電気量である積算電気量ΔCを用いて推定する。水素ガス発生量Hmと積算電気量ΔCとが高い相関性を示すことから、ECU300は、積算電気量ΔCを用いることで、水素ガス発生量Hmを高い精度で推定することが可能になる。
また、ECU300(特に、「圧力推定部」として機能する部分)は、上記のように推定された水素ガス発生量Hmを用いて、セル101のセル内圧を推定するように構成される。ECU300は、高い精度で推定された水素ガス発生量Hmを用いることで、セル101のセル内圧を高い精度で推定することができる。
上記のようにセル内圧及び水素ガス発生量Hmが高い精度で推定されることによって、たとえば以下に示すような処理を行なって、セル101の劣化を抑制することが可能になる。
水素ガス発生量Hmが所定のしきい値(以下、「しきい値Th3」と称する場合がある)以上であり、かつ、セル内圧が所定のしきい値(以下、「しきい値Th4」と称する場合がある)以上である場合に、ECU300が、セル101の出力電力を制限して、安全弁103を開弁せずにセル内圧の上昇を抑制する。このようにすることで、電解液枯れによるセル101の劣化を抑制することができる。
なお、水素ガス発生量Hmが十分低い場合には、安全弁103を開いても電解液枯れは起きないため、セル101の出力電力を制限しなくてもよい。また、セル内圧が十分低い場合には、セル内圧を低下させる必要がないため、セル101の出力電力を制限しなくてもよい。
次に、セル101の各電極での反応について説明する。以下に示す各化学反応式中においては、水素吸蔵合金を「M」で表す。
ニッケル水素電池の放電時には、正極、負極においてそれぞれ下記式(1)、(2)に示すような反応が起きる。また、ニッケル水素電池の充電時には、正極、負極においてそれぞれ下記式(3)、(4)に示すような反応が起きる。
(放電時の反応)
正極:NiOOH+H2O+e− → Ni(OH)2+OH− …(1)
負極:MH+OH− → M+H2O+e− …(2)
(充電時の反応)
正極:Ni(OH)2+OH− → NiOOH+H2O+e− …(3)
負極:M+H2O+e− → MH+OH− …(4)
上記式(1)〜(4)に示される反応によれば、放電時も充電時もガスは発生しない。しかし、放電が過剰に行なわれている状態である過放電状態と、充電が過剰に行なわれている状態である過充電状態とでは、下記式(5)〜(8)に示すような副次的な反応が起きてガスが発生する。
正極:NiOOH+H2O+e− → Ni(OH)2+OH− …(1)
負極:MH+OH− → M+H2O+e− …(2)
(充電時の反応)
正極:Ni(OH)2+OH− → NiOOH+H2O+e− …(3)
負極:M+H2O+e− → MH+OH− …(4)
上記式(1)〜(4)に示される反応によれば、放電時も充電時もガスは発生しない。しかし、放電が過剰に行なわれている状態である過放電状態と、充電が過剰に行なわれている状態である過充電状態とでは、下記式(5)〜(8)に示すような副次的な反応が起きてガスが発生する。
(過放電時の反応)
正極:2H2O+2e− → H2+2OH− …(5)
負極:2M+H2 → 2MH …(6)
(過充電時の反応)
正極:4OH− → O2+2H2O+4e− …(7)
負極:4MH+O2 → 4M+2H2O …(8)
上記式(5)に示されるように、過放電時には正極で水素ガス(H2)が発生する。ただし、発生した水素ガスを、ケース102外に放出せずにある程度の期間ケース102内に留めておくと、水素ガスは、式(6)の反応により水素吸蔵合金(M)に吸蔵され、上記式(2)の反応によって水(電解液)に戻る。
正極:2H2O+2e− → H2+2OH− …(5)
負極:2M+H2 → 2MH …(6)
(過充電時の反応)
正極:4OH− → O2+2H2O+4e− …(7)
負極:4MH+O2 → 4M+2H2O …(8)
上記式(5)に示されるように、過放電時には正極で水素ガス(H2)が発生する。ただし、発生した水素ガスを、ケース102外に放出せずにある程度の期間ケース102内に留めておくと、水素ガスは、式(6)の反応により水素吸蔵合金(M)に吸蔵され、上記式(2)の反応によって水(電解液)に戻る。
上記式(7)に示されるように、過充電時には正極で酸素ガス(O2)が発生する。また、上記式(8)に示されるように、過充電時には、負極において水素吸蔵合金(M)に吸蔵された水素と酸素ガスが反応して水になる。詳細は後述するが、本願発明者の実験等により、過放電時にも上記式(7)及び(8)に示す反応が起こり得ることが確認されている。
以下、図4を用いて、セル101の放電中における各電極の反応について説明する。図4は、セル101の放電中における電池電圧(セル電圧)の推移と各電極(正極、負極)の電位の推移とを示す図である。図4において、線k21は正極電位の推移を、線k22は負極電位の推移を、線k23はセル電圧の推移を示している。
図4を参照して、線k23で示されるように、放電初期においてはセル電圧が略一定に保たれている。タイミングt21付近まで放電を続けると、線k21で示されるように、正極電位が緩やかに低下し始め、タイミングt21で正極電位が急激に低下する。この正極電位の急激な低下は、セル101のSOCが正極の容量を下回ったことに起因すると考えられる。この急激な低下により、正極電位は約−1.0Vまで低下し、線k22で示される負極電位よりも正極電位のほうが低くなる。
タイミングt21〜t22の期間では、正極電位が負極電位と略同じになり、前述の式(5)に示す反応が起きる。すなわち、正極で水素ガス(H2)が発生する。過放電中に式(5)に示される反応が進行するほど、電極間を流れる電気量(電流)は大きくなるため、前述の積算電気量ΔCと水素ガス発生量Hmとの相関性は高い。
タイミングt22付近まで放電を続けると、線k22で示されるように、負極電位が緩やかに上昇し始め、タイミングt22で負極電位が急激に上昇する。この負極電位の急激な上昇は、セル101のSOCが負極の容量を下回ったことに起因すると考えられる。この急激な上昇により、放電初期の各電極の電位に対して電位の極性(正/負)が逆になり、負極電位が正に、正極電位が負になる。以下、このように正極及び負極が正負逆の電位になることを、「両極転極」と称する場合がある。両極転極が起きることにより、前述の式(7)に示す反応が起きるようになる。すなわち、タイミングt22以降の期間では、正極で酸素ガス(O2)が発生する。
この実施の形態では、ECU300が、前述の水素ガス発生量Hmに加えて、過放電中(特に、図4に示すタイミングt22以降の期間)にセル101の正極で発生する酸素ガスの量(以下、「酸素ガス発生量Om」と称する場合がある)も用いて、セル101のセル内圧(以下、「セル内圧Pc」と称する場合がある)を推定する。そして、ECU300は、水素ガス発生量Hmがしきい値Th3以上であり、かつ、上記のように推定されたセル内圧Pcがしきい値Th4以上である場合に、バッテリ100の出力制限を行なってセル内圧の上昇を抑制する。以下、図5〜図8を用いて、ECU300が行なう電池の放電制御について詳述する。
図5は、ECU300により実行される電池の放電制御の処理手順を示したフローチャートである。このフローチャートに示される処理は、バッテリ100の放電中に所定時間毎にメインルーチンから呼び出されて繰り返し実行される。
図5に示される処理では、ECU300が、バッテリ100に含まれる特定のセル101の内圧(セル内圧Pc)を推定し(ステップS14)、そのセル内圧Pcを用いてバッテリ100の出力制限を行なうか否かを判断する(ステップS15)。この推定の対象となるセル101を、以下では「対象セル」と称する。
この実施の形態では、1つのセル101を対象セルとする。しかしこれに限られず、複数のセル101を対象セルとしてもよい。複数のセル101を対象セルとする場合、バッテリ100の出力制限を行なうか否かの判断(ステップS15)においては、複数の推定値(セル内圧)の代表値(平均値、中央値、又は最高値等)を、バッテリ100のセル内圧Pcとして用いることができる。
図5を参照して、ECU300は、バッテリ100の放電中に対象セルの正極電位がしきい値Th1以下になったか否かを判断する(ステップS11)。
対象セルの正極電位は、参照電極を用いて実測できる。参照電極としては、たとえば標準水素電極(SHE)を使用できる。ECU300は、対象セルの正極と参照電極との電位差に基づいて、対象セルの正極電位を測定できる。ただし、対象セルの正極電位の測定方法は、こうした方法に限られず任意である。たとえば、ECU300は、メモリ302内の対応情報(マップ等)を参照することにより、対象セルのSOCから対象セルの正極電位を推定してもよい。
しきい値Th1は、ステップS11の判断において、対象セルの過放電に起因した正極電位の急激な低下(たとえば図4中のタイミングt21で生じるような正極電位の急激な低下)を検出できるように設定される。たとえば、予め実験等によりバッテリ100の放電中の正極電位の推移が求められて、その正極電位の推移に対して適切なしきい値Th1がメモリ302に格納される。詳しくは、対象セルの過放電に起因した正極電位の急激な低下が生じる前には対象セルの正極電位がしきい値Th1よりも高くなり、上記の急激な低下が生じることによって対象セルの正極電位がしきい値Th1よりも低くなるように、しきい値Th1が設定される。しきい値Th1は、固定値であってもよいし、対象セルの状態(たとえば、セル温度)等に応じて可変であってもよい。
バッテリ100の放電中において対象セルの正極電位がしきい値Th1よりも高い場合(ステップS11においてNO)には、対象セルは過放電状態ではないと判断され、処理がメインルーチンへと戻される。他方、バッテリ100の放電中において対象セルの正極電位がしきい値Th1以下になった場合(ステップS11においてYES)には、対象セルが過放電状態になったと判断され、ECU300が水素ガス発生量Hmを推定する(ステップS12)。以下、図6を用いて、水素ガス発生量Hmの推定方法について説明する。図6は、ECU300により実行される水素ガス発生量Hmの推定の処理手順を示したフローチャートである。
図6を参照して、ECU300は、積算電気量ΔCを算出し、得られた積算電気量ΔCをメモリ302に保存する(ステップS21)。すでに積算電気量ΔCがメモリ302に記憶されている場合には、その積算電気量ΔCを更新してもよい。
前述の式(5)で示される反応が起きると、対象セルの正極から負極へ電流が流れる。ECU300は、電流センサ220の検出値を用いて、対象セルの電極間を流れる電流の向きや量(電気量)を検出することにより、対象セルの正極から負極へ流れる電流の量(電気量)を求めることができる。そして、ECU300は、対象セルの正極から負極へ流れる電流の量(電気量)を積算することによって、積算電気量ΔCを算出することができる。対象セルの過放電中に図5及び図6の処理が繰り返し行なわれることで、ステップS21において、対象セルの過放電中に流れる電気量の積算値である積算電気量ΔCが算出される。
次いで、ECU300は、ステップS21で算出された積算電気量ΔCを用いて、対象セルの過放電中に正極で発生する水素ガスの量である水素ガス発生量Hmを推定する(ステップS22)。
ECU300は、積算電気量ΔCに加えて対象セルの温度を考慮して、水素ガス発生量Hmを推定してもよい。たとえば、積算電気量ΔCとセルの温度と水素ガス発生量Hmとの関係を示す情報(以下、「Hm推定情報」と称する)を、予め実験等によって求めてメモリ302に格納してもよい。ECU300は、温度センサ230の検出値(温度Tb)を用いて、対象セルの温度を求めることができる。ECU300は、Hm推定情報を参照することにより、積算電気量ΔC及びセルの温度から水素ガス発生量Hmを求めることができる。
上記水素ガス発生量Hmの推定後、処理は図5のステップS13へと戻される。図5を参照して、ECU300は酸素ガス発生量Omを推定する(ステップS13)。以下、図7を用いて、酸素ガス発生量Omの推定方法について説明する。図7は、ECU300により実行される酸素ガス発生量Omの推定の処理手順を示したフローチャートである。
図7を参照して、ECU300は、対象セルの負極電位がしきい値Th2以上になったか否かを判断する(ステップS31)。
対象セルの負極電位は、参照電極を用いて実測できる。参照電極としては、たとえば標準水素電極(SHE)を使用できる。ECU300は、対象セルの負極と参照電極との電位差に基づいて、対象セルの負極電位を測定できる。ただし、対象セルの負極電位の測定方法は、こうした方法に限られず任意である。たとえば、ECU300は、メモリ302内の対応情報(マップ等)を参照することにより、対象セルのSOCから対象セルの負極電位を推定してもよい。
しきい値Th2は、ステップS31の判断において、対象セルの過放電に起因した負極電位の急激な上昇(たとえば図4中のタイミングt22で生じるような負極電位の急激な上昇)を検出できるように設定される。たとえば、予め実験等によりバッテリ100の放電中の負極電位の推移が求められて、その負極電位の推移に対して適切なしきい値Th2がメモリ302に格納される。詳しくは、対象セルの過放電に起因した負極電位の急激な上昇が生じる前には対象セルの負極電位がしきい値Th2よりも低くなり、上記の急激な上昇(ひいては、両極転極)が生じることによって対象セルの負極電位がしきい値Th2よりも高くなるように、しきい値Th2が設定される。しきい値Th2は、固定値であってもよいし、対象セルの状態(たとえば、セル温度)等に応じて可変であってもよい。
バッテリ100の放電中において対象セルの負極電位がしきい値Th2よりも低い場合(ステップS31においてNO)には、両極転極が起きていないと判断され、処理が図5のステップS14へと戻される。他方、バッテリ100の放電中において対象セルの負極電位がしきい値Th2以上になった場合(ステップS31においてYES)には、両極転極が起きたと判断され、ECU300が酸素ガス発生量Omを推定する(ステップS32)。
ECU300は、たとえば次に示す式(A)を用いて、前述した式(7)の反応により正極で発生した酸素ガスの量である酸素ガス発生量Omを算出することができる。
Oe(t)=∫Oe(V0,Tb)dt …(A)
式(A)において、「V0」は開放電圧(OCV)を、「Tb」は対象セルの温度を、「t」は時間を表している。式(7)の反応は、対象セルの負極電位が酸素発生電位よりも高くなることによって進行する。対象セルの温度が高くなるほど酸素発生電位は低くなる傾向がある。
式(A)において、「V0」は開放電圧(OCV)を、「Tb」は対象セルの温度を、「t」は時間を表している。式(7)の反応は、対象セルの負極電位が酸素発生電位よりも高くなることによって進行する。対象セルの温度が高くなるほど酸素発生電位は低くなる傾向がある。
なお、酸素ガス発生量Omの推定方法は、上記に限られず任意に変更できる。たとえば、ECU300が、対象セルの負極から正極へ流れる電流の量(電気量)の積算値を用いて、酸素ガス発生量Omを推定するようにしてもよい。
上記酸素ガス発生量Omの算出後、処理は図5のステップS14へと戻される。図5を参照して、ECU300は、ステップS12で推定された水素ガス発生量Hmと、ステップS13で推定された酸素ガス発生量Omとを用いて、対象セルのセル内圧Pcを推定する(ステップS14)。たとえば、水素ガス発生量Hmと酸素ガス発生量Omとセル内圧Pcとの関係を示す情報(以下、「Pc推定情報」と称する)を、予め実験等によって求めてメモリ302に格納してもよい。ECU300は、Pc推定情報を参照することにより、水素ガス発生量Hm及び酸素ガス発生量Omからセル内圧Pcを求めることができる。
ECU300は、セル内圧Pcの推定において、上記の水素ガス発生量Hm及び酸素ガス発生量Omに加えて、他のパラメータを用いてもよい。たとえば、ECU300が、上記の水素ガス発生量Hm及び酸素ガス発生量Omに加えて、負極(水素吸蔵合金)における酸素ガス吸収量及び水素平衡圧を考慮して、対象セルのセル内圧Pcを推定するようにしてもよい。酸素ガス吸収量は、負極の表面層(たとえば、Ni−Co層)に吸着した水素に吸収された酸素ガスの量と、負極の内部に吸蔵された水素に吸収された酸素ガスの量との和に相当する。水素平衡圧は、負極に吸蔵された水素量と負極から放出された水素量とが釣り合うときの水素ガス圧(水素分圧)に相当する。水素平衡圧は、セル温度によって変化し得る。
ECU300は、水素ガス発生量Hmがしきい値Th3以上であり、かつ、セル内圧Pcがしきい値Th4以上であるか否かを判断する(ステップS15)。しきい値Th3には、電解液枯れを起こし得る水素ガス発生量Hmのうち最も低い量が予め実験等により求められて設定される。しきい値Th3が高過ぎると電解液枯れを防ぐことができなくなる。しきい値Th3が低過ぎると、後述するステップS16で不要な出力制限が行なわれてバッテリ100に蓄えられた電力の使用が制限されることがある。しきい値Th4には、たとえば開弁圧Pxよりも低い圧力が設定される。しきい値Th3及びTh4は、各々独立して、固定値であってもよいし、対象セルの状態(たとえば、セル温度)等に応じて可変であってもよい。
水素ガス発生量Hmがしきい値Th3未満である場合(ステップS15においてNO)には、安全弁103を開いても電解液枯れにはならないと判断され、バッテリ100の出力制限は行なわれずに、処理がメインルーチンへと戻される。
セル内圧Pcがしきい値Th4未満である場合(ステップS15においてNO)には、対象セルのケース102内の圧力を低下させる必要はないと判断され、バッテリ100の出力制限は行なわれずに、処理がメインルーチンへと戻される。
他方、水素ガス発生量Hmがしきい値Th3以上であり、かつ、セル内圧Pcがしきい値Th4以上である場合(ステップS15においてYES)には、ECU300が、バッテリ100の出力制限(Wout制限)を行なって、安全弁103を開弁せずにセル内圧の上昇を抑制する(ステップS16)。その後、処理がメインルーチンへと戻される。
ECU300は、バッテリ100の放電電力の上限値を示す出力制限Woutの値を小さくすることで、バッテリ100の放電電力を制限できる。バッテリ100の放電電力が制限されると、前述の式(5)及び(7)の反応が進みにくくなり、対象セルのケース102内でのガスの発生(ひいては、セル内圧の上昇)が抑制される。
図8は、この実施の形態に従う電池システム2の動作の一例を示す図である。ECU300が上記図5の処理を繰り返し行なうことによって、対象セルの正極電位、積算電気量ΔC、セル内圧Pc、出力制限Woutはそれぞれ、たとえば図8中に線k31、線k32、線k33、線k34で示すように推移する。図8において、横軸の時間「0」は、放電開始時を示している。
図8を参照して、タイミングt31で対象セルの正極電位がしきい値Th1以下になったと判断され(図5のステップS11においてYES)、図6のステップS21において積算電気量ΔCの算出(対象セルの過放電中に流れる電気量の積算)が開始する。タイミングt31〜t32の期間においては、前述の式(5)で示される反応により水素ガスが発生する。そして、タイミングt32の前には水素ガス発生量Hm(図8には図示せず)がしきい値Th3以上になる。
その後、タイミングt32で水素ガス発生量Hmがしきい値Th3以上であり、かつ、セル内圧Pcがしきい値Th4以上であると判断され(図5のステップS15においてYES)、ECU300によりバッテリ100の出力制限(Wout制限)が行なわれる(図5のステップS16)。ECU300は、出力制限Woutの値を徐々に小さくして、最終的には出力制限Woutを0にする。タイミングt33で出力制限Woutが0になることで、バッテリ100の放電が禁止される。線k33で示されるように、バッテリ100の出力制限が行なわれることで、セル内圧の上昇が抑制される。セル内圧は、開弁圧Pxを超えないように制御される。このような制御が行なわれることで、電解液枯れによるセル101の劣化が抑制される。
ステップS11、S31、S15において各パラメータ(正極電位、負極電位、水素ガス発生量Hm、酸素ガス発生量Om)がしきい値と一致する場合にYES、NOのいずれと判断するかは任意に変更可能であり、図5、図7に示す例とは異なるように変更してもよい。
酸素ガスが発生しない条件でバッテリ100の放電が行なわれるような用途で電池システム2が使用される場合には、図5のステップS13(ひいては、図7に示す一連の処理)を割愛し、ECU300が水素ガス発生量Hmのみを用いてセル内圧Pcを推定するようにしてもよい。
上記実施の形態では、電池システム2が、放電時の電池内圧の変化のみを考慮して現在の電池内圧を推定する例が示されている。しかしこれに限られず、電池システムが、放電時の電池内圧の変化に加えて充電時の電池内圧の変化も考慮して、現在の電池内圧を推定するようにしてもよい。
上記の電池システム2によれば、セル内圧を高い精度で推定することが可能になる。セル内圧の推定及びその結果の出力までをECU300が行ない、その後の処理はユーザに委ねるようにしてもよい。
上記の電池システム2が適用される車両1の構成は適宜変更可能である。また、バッテリ100の構成も適宜変更可能である。たとえば、組電池に代えて単電池を採用してもよい。
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 車両、2 電池システム、10 MG、20 動力伝達ギア、30 駆動輪、40 PCU、100 バッテリ、101 セル、102 ケース、103 安全弁、104 電極体、210 電圧センサ、220 電流センサ、230 温度センサ、300 ECU、301 CPU、302 メモリ。
Claims (1)
- ケース内に、正極と、負極と、水系電解液とを有する二次電池と、
前記二次電池の過放電中に前記正極で発生する水素ガスの量を、前記二次電池の前記過放電中に流れる積算電気量を用いて推定するガス量推定部と、
前記ガス量推定部により推定された水素ガスの量を用いて、前記二次電池の前記ケース内の圧力を推定する圧力推定部と、
を備え、
前記過放電中においては、前記正極の電位がしきい値よりも低い状態で放電が行なわれる、電池システム。
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