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JP6668983B2 - 電池システム - Google Patents

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JP6668983B2
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Description

本発明は電池システムに関し、より特定的には、ニッケル水素電池を含む電池システムに関する。
ニッケル水素電池の正極内にNiHが生成すると、その生成量が増加するに従ってニッケル水素電池の容量が低下する。そのため、NiHの生成を抑制するための制御が提案されている。たとえば特開2011−233423号公報(特許文献1)は、正極の構成(正極の高さと長さとの比など)を特定の構成とすることによってNiHの生成を抑制する技術を開示する。
特開2011−233423号公報
NiHの生成に起因する満充電容量の低下が考慮されないと、ニッケル水素電池の各種充放電制御に弊害が生じ得る。一例として、NiHの生成に起因して満充電容量がある程度低下していた場合には、それ以上のNiHの生成を抑制することが求められる。そうしないと、NiHが生成量が過度に大きくなり、その結果として満充電容量が必要量を下回る可能性があるためである。
あるいは他の一例として、いわゆる電流積算方式によるニッケル水素電池のSOC(State Of Charge)推定処理ではニッケル水素電池の満充電容量が用いられるところ、NiHの生成に起因して満充電容量が低下しているにもかかわらずそれが考慮されないと、SOCの推定精度が低下し得る。その結果、SOCに応じた様々な充放電制御が適切に実行できなくなる可能性がある。
このような事情に鑑み、ニッケル水素電池の充放電を適切に制御する、すなわちニッケル水素電池を適切に保護しつつ、ニッケル水素電池の性能を十分に発揮させるためには、NiHの生成量を高精度に算出することが望ましい。
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、ニッケル水素電池を含む電池システムにおいて、ニッケル水素電池の正極内におけるNiHの生成量を高精度に算出することである。
本発明のある局面に従う電池システムは、ニッケル水素電池と、ニッケル水素電池の充放電を制御する制御装置とを備える。制御装置はメモリを含む。メモリは、ニッケル水素電池のSOCと、ニッケル水素電池の正極内におけるNiHの生成量との対応関係を示すデータを記憶する。制御装置は、ニッケル水素電池の電圧および電流のうちの少なくとも一方を用いてニッケル水素電池のSOCを推定し、推定されたSOCから上記データを参照することによってNiHの生成量を算出する。
本発明者は、ニッケル水素電池の正極内におけるNiHの生成量とニッケル水素電池のSOCとの間に相関関係が存在することを見出した。したがって、上記構成によれば、上記相関関係を予めデータとしてメモリに記憶させることよってSOCからNiHの生成量を高精度に算出することができる。よって、その算出結果を用いることでニッケル水素電池の充放電を適切に制御することが可能になる。たとえば、NiHのさらなる生成を抑制するための制御を実行することができる。
本発明によれば、ニッケル水素電池を含む電池システムにおいて、ニッケル水素電池の正極内におけるNiHの生成量を高精度に算出することができる。
本実施の形態に係る電池システムが搭載された電動車両の全体構成を概略的に示すブロック図である。 セルの構成を示す図である。 正極内におけるNiHの存在比率と満充電容量との関係に関する実験結果の一例を示す図である。 ニッケル水素電池のSOCに応じた正極内のニッケル化合物の変化を説明するための図である。 バッテリの正極に含まれるニッケル化合物についてのX線回折法による分析結果の一例を示す図である。 第1の実験の処理手順を示すフローチャートである。 第1の実験を通じて求められた、試料内のNiHの割合とX線回折法におけるピーク面積比との関係の一例を示す図である。 第2の実験の処理手順を示すフローチャートである。 本実施の形態において作成されるマップの一例を概念的に示す図である。 バッテリのNiH生成抑制制御を示すフローチャートである。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
以下では、本発明の実施の形態に係る電池システムが電動車両に搭載される構成を例に説明する。電動車両とは、ハイブリッド車(プラグインハイブリッド車を含む)であってもよいし、電気自動車であってもよいし、燃料自動車であってもよい。また、電池システムの用途は車両用に限定されるものではなく、定置用であってもよい。
[実施の形態]
<電池システムの構成>
図1は、本実施の形態に係る電池システムが搭載された電動車両の全体構成を概略的に示すブロック図である。車両1は、モータジェネレータ(MG:Motor Generator)10と、動力伝達ギア20と、駆動輪30と、電力制御ユニット(PCU:Power Control Unit)40と、システムメインリレー(SMR:System Main Relay)50と、電池システム2とを備える。電池システム2は、組電池100と、電圧センサ210と、電流センサ220と、温度センサ230と、電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)300とを備える。
モータジェネレータ10は、たとえば三相交流回転電機である。モータジェネレータ10の出力トルクは、減速機および動力分割機構を含んで構成された動力伝達ギア20を介して駆動輪30に伝達される。モータジェネレータ10は、車両1の回生制動動作時には、駆動輪30の回転力によって発電することも可能である。モータジェネレータ10に加えてエンジン(図示せず)が搭載されたハイブリッド自動車では、エンジンおよびモータジェネレータ10を協調的に動作させることによって必要な車両駆動力を発生させる。なお、図1ではモータジェネレータが1つだけ設けられる構成が示されるが、モータジェネレータの数はこれに限定されず、モータジェネレータを複数(たとえば2つ)設ける構成としてもよい。
PCU40は、いずれも図示しないが、インバータとコンバータとを含む。組電池100の放電時には、コンバータは、組電池100から供給された電圧を昇圧してインバータに供給する。インバータは、コンバータから供給された直流電力を交流電力に変換してモータジェネレータ10を駆動する。一方、組電池100の充電時には、インバータは、モータジェネレータ10によって発電された交流電力を直流電力に変換してコンバータに供給する。コンバータは、インバータから供給された電圧を降圧して組電池100に供給する。
SMR50は、組電池100とPCU40とを結ぶ電力線に電気的に接続されている。SMR50がECU300からの制御信号に応じて閉成されている場合、組電池100とPCU40との間で電力の授受が行なわれ得る。
組電池100は、再充電が可能な直流電源であり、本実施の形態では複数のニッケル水素電池セル(単セル)110を含んで構成される。組電池100に含まれる各セル110の詳細な構成については図2にて説明する。
電圧センサ210は、各セル110の端子間電圧(以下「セル電圧」とも称する)Vbを検出する。電流センサ220は、組電池100に入出力される電流Ibを検出する。温度センサ230は、各セル110の温度(以下「セル温度」とも称する)Tbを検出する。各センサは、その検出結果をECU300に出力する。
ECU300は、CPU(Central Processing Unit)301と、メモリ(ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory))302と、入出力バッファ(図示せず)と等を含んで構成される。ECU300は、各センサから受ける信号、ならびにメモリ302に記憶されたマップおよびプログラムに基づいて、車両1および電池システム2が所望の状態となるように各機器を制御する。ECU300により実行される主要な処理として、セル110(あるいは組電池100)のSOC(State Of Charge)の推定処理が挙げられる。ECU300は、組電池100の電流積算値および満充電容量を用いる、いわゆる電流積算方式に従ってセル110(あるいは組電池100)のSOCを推定する。この処理については後述する。
図2は、セル110の構成を示す図である。組電池100に含まれる各セル110の構成は共通であるため、図2では1つのセル110のみを代表的に示す。セル110は、たとえば角形密閉式のセルであり、ケース120と、ケース120に設けられた安全弁130と、ケース120内に収容された電極体140および電解液(図示せず)とを含む。なお、図2ではケース120の一部を透視して電極体140を示している。
ケース120は、いずれも金属からなるケース本体121および蓋体122を含み、蓋体122がケース本体121の開口部上で全周溶接されることにより密閉されている。安全弁130は、ケース120内部の圧力が所定値を超えると、ケース120内部のガス(水素ガス等)の一部を外部に排出する。
電極体140は、正極と、負極と、セパレータとを含む。正極は、たとえば袋状のセパレータ内に挿入されており、セパレータ内に挿入された正極と、負極とが交互に積層されている。正極および負極は、図示しない正極端子および負極端子にそれぞれ電気的に接続されている。
電極体140および電解液の材料としては従来公知の各種材料を用いることができる。本実施の形態においては、一例として、正極は、水酸化ニッケル(Ni(OH)またはNiOOH)を含む正極活物質層と、発泡ニッケルなどの活物質支持体とを含む。負極は、水素吸蔵合金を含む。セパレータには、親水化処理された合成繊維からなる不織布が用いられる。電解液には、水酸化カリウム(KOH)または水酸化ナトリウム(NaOH)等を含むアルカリ水溶液が用いられる。
<NiHの生成>
ニッケル水素電池の正極内にNiHが生成すると、ニッケル水素電池の満充電容量が低下することが知られている。
図3は、正極内におけるNiHの存在比率と満充電容量との関係に関する実験結果の一例を示す図である。図3において、横軸は正極内におけるNiHの存在比率を示し、縦軸はニッケル水素電池の満充電容量を示す。この実験結果から、NiHの存在比率が高くなるに従って満充電容量が低下することが分かる。
NiHの生成に起因する満充電容量の低下が考慮されないと、組電池100の各種充放電制御に弊害が生じ得る。一例として、NiHの生成に起因して満充電容量がある程度低下していた場合には、それ以上の満充電量容量の低下を抑制することが求められる。そうしないと、NiHが生成量(または存在比率)が過度に大きくなり、その結果として満充電容量が必要量を下回る可能性があるためである。
あるいは他の一例として、上述のように電池システム2においては、組電池100(あるいはセル110)の満充電容量を用いて組電池100(あるいはセル110)のSOCが推定される。したがって、NiHの生成に起因して満充電容量が低下しているにもかかわらずそれが考慮されないと、SOCの推定精度が低下し得る。その結果、SOCに応じた様々な充放電制御が適切に実行できなくなる可能性がある。
このような事情に鑑み、組電池100の充放電を適切に制御する、すなわちNiHの過度の生成を抑制して組電池100を保護しつつ、組電池100の性能を十分に発揮させるためには、NiHの生成量を高精度に算出することが望ましい。
本発明者は、以下の図4および図5にて詳細に説明するように、組電池100(あるいはセル110)のSOCに応じて正極内におけるNiHの生成量が変化することを見出した。そこで、本実施の形態に係る電池システム2においては以下の構成が採用される。すなわち、セル110(あるいは組電池100)のSOCと、セル110(あるいは組電池100)の正極内におけるNiHの生成量との対応関係を示すマップMP(図9参照)を後述する実験結果に基づいて予め作成し、メモリ302に記憶させる。そして、セル110(あるいは組電池100)のSOCを推定し、推定されたSOCからマップMPを参照することによってNiHの生成量を算出し、算出されたNiHの生成量を用いて組電池100の充放電を制御する。
<ニッケル化合物の変化>
図4は、ニッケル水素電池のSOCに応じた正極内のニッケル化合物の変化を説明するための図である。図4にはニッケル水素電池の放電曲線が示されている。横軸はニッケル水素電池のSOCを示し、縦軸はニッケル水素電池の電圧を示す。
図4に示すように、一般にSOCが0%の場合には、正極内のニッケル化合物は水酸化ニッケル(II)(Ni(OH))であり、ニッケルの価数は2価である。一方、SOCが100%の場合には、正極内のニッケル化合物はオキシ水酸化ニッケル(NiOOH)であり、ニッケルの価数は3価である。
このように、ニッケル水素電池の正極内に存在するニッケル化合物は、ニッケル水素電池のSOCに応じて変化する。SOCが低い領域(低SOC領域)ではNi(OH)がの存在比率の方がNiOOHの存在比率よりも高く、SOCが中程度の領域(中SOC領域)ではNi(OH)とNiOOHとがほぼ等量存在し、SOCが高い領域(高SOC領域)ではNiOOHの存在比率の方がNi(OH)の存在比率よりも高い。
<耐久試験>
本発明者は、以下のようなセル110(単セル)の耐久試験を数年かけて実施した。すなわち、セル110を解く知恵の温度範囲(たとえば0℃〜45℃の範囲内の温度)に維持し、かつ、セル110のSOCが所定領域内(たとえば40%〜60%の中SOC領域内)に維持されるように充電と放電とを繰り返し行なった。そして、耐久試験実施後のセル110から電極体140を取り出して正極をX線回折法(XRD:X−ray diffraction)により分析した。
図5は、セル110の正極に含まれるニッケル化合物についてのXRDによる分析結果(回折パターン)の一例を示す図である。図5において、横軸は回折角度(2θ)を示し、縦軸は回折強度を示す。
図5には上から順に、セル110が新品の場合の回折パターン、および、セル110のSOCを中SOC領域(たとえばSOC=40%〜60%の領域)に維持した耐久試験実施後の回折パターンが示されている。図中「▽」を付して示す回折角度D1〜D4における回折ピークは、NiHによる回折の影響を含む。図5より、組電池100が新品の場合、正極内にはNiHが存在しないことが分かる。
また、低SOC領域におけるNiHの生成の有無を検証するため、セル110を完全放電(SOCがほぼ0%になるまで放電)した後に数カ月以上(たとえば半年間)放置した。この放置は、検証期間を短縮するため、NiHが生成されやすい高温(たとえば65℃)環境下での加速試験により行なった。放置後のセル110を解体して分析した結果、新品時のXRD分析結果とほぼ同様であったため図示しないが、NiHはほとんど生成されないことが確認された。つまり、SOCが低SOC領域内(たとえばほぼ0%)に維持された場合には、NiHはほとんど生成されない。これに対し、図5の下部に示すように、セル110のSOCが中SOC領域内に維持された場合には、NiHの生成が進行し得ることが分かる。
このように、NiHの生成量にはSOC依存性が存在する。図4にて説明したようにSOCに応じてニッケルの価数が変化するため、NiHの生成量にニッケルの価数依存性が存在すると言い換えることもできる。
<マップの作成>
本実施の形態においては、以上で説明したような組電池100(あるいはセル110)のSOCとNiHの生成量との対応関係を複数の実験を通じて求めることによってマップMPが予め作成される。以下に、マップMPの作成方法についてまず説明し、その後、組電池100の充放電制御の具体例について説明する。なお、マップMPは本発明に係る「データ」に相当するが、マップに代えて関数を規定してもよい。
マップMPを作成するための実験は、たとえば次のように行なうことができる。まず、正極内のNiHの混入割合と、XRDを用いて正極を分析することによって得られたNiHに対応する回折ピークで囲まれる面積(以下「ピーク面積」とも称する)比との関係を調べるための実験が行なわれる。この実験を以下では「第1の実験」と称する。その後、耐久試験を経たセル110および第1の実験の結果を用いて、セル110のSOCと、正極内におけるNiHの生成量との関係を調べるための実験が行なわれる。この実験を以下では「第2の実験」と称する。そして、第2の実験結果を用いて、セル110(あるいは組電池100)のSOCとNiHの生成量との対応関係を示すマップMPが最終的に作成される。以下、各実験について順に説明する。
図6は、第1の実験の処理手順を示すフローチャートである。図6および後述する図8のフローチャートに示される各ステップ(以下、ステップを「S」とも略す)は、実験者により行なわれる。
実験者は、新品の電極(正極)粉末(β−Ni(OH))に所定量(たとえば所定量Q1)のNiH粉末を均一に混ぜ込んだ試料を作製する(S110)。その後、実験者は、XRDにより試料を分析する(S120)。具体的には、実験者は、所定の回折角度におけるX線のピーク面積を算出する。X線の回折角度は以下のように定められる。
図5にて説明したように、たとえば回折角度D1〜D4における回折ピークは、主にNiHによる回折の影響を受け、その他のニッケル化合物(たとえばNi(OH))による回折の影響をほとんど受けない。したがって、D1〜D4のいずれかの回折角度のX線を用いることにより、NiHに起因する回折ピークの面積を測定することができる。本実施の形態においては、特定の回折角度(たとえばD1)がXRDによる分析に用いられる。なお、2以上の回折角度を用いてもよい。
S110においてXRDによる試料の分析が行なわれると、実験者は、XRDの分析結果から回折角度D1におけるピーク面積を記録する(S130)。以上のように、S110〜S130の処理を実施することにより、所定量(たとえば所定量Q1)のNiHが試料に混入している場合の回折角度D1におけるピーク面積が求められる。なお、回折角度D1におけるピーク面積に代えて、たとえばD1〜D4の各回折角度におけるピーク面積の合計値を用いてもよい。
次に、NiHに帰属する回折ピークと同様に、Ni(OH)に帰属する回折ピーク(図示しないD1’)に着目してNiHが所定量(たとえばQ1)混入されたときの回折角度D1’におけるピーク面積が求められる。
第1の実験においては、試料に混入するNiHの量を変更して(たとえば他の所定量Q2,Q3等)、S110〜S130の一連の処理が複数回行なわれる。その結果、試料内のNiHの割合(NiH量/(Ni(OH)量+NiH量))と、回折角度D1におけるピーク面積比(D1/D1+D1’)との関係を求めることができる。
図7は、第1の実験を通じて求められた、試料内のNiHの割合とXRDにおけるピーク面積比との関係の一例を示す図である。図7において、横軸は試料内のNiHの割合(NiH量/(Ni(OH)量+NiH量))を示し、縦軸はピーク面積比(D1/D1+D1’)を示す。
試料内に所定量Q1,Q2,Q3のNiHを混入させた場合には、回折角度D1におけるピーク面積比がそれぞれA1,A2,A3となった。以上の実験結果から、試料内のNiHの割合と回折角度D1におけるピーク面積比との間の関係を求めることができる。なお、ピーク面積(ピーク面積比)に代えてピーク強度を用いて図7に示すような関係を規定してもよい。
図8は、第2の実験の処理手順を示すフローチャートである。実験者は、耐久条件(電圧およびセル温度Tb)を設定した上で、新品のセル110(単セル)の耐久試験を種々のSOC領域にて実施する(S210)。各耐久試験は、セル110のSOCが所定領域内に収まるようにセル110の充電と放電とを繰り返すことにより実施される。その結果、マップMPにSOC依存性を導入することができる。あるいは、実験者は、耐久試験後のセル110の残存容量を測定し、SOCを算出してもよい。
さらに、実験者は、セル110に含まれる正極を取り出してXRDより分析する(S220)。そして、実験者は、第1の実験によって得られた、試料内のNiHの割合とXRDにおけるピーク面積比との間の関係(図7参照)を参照して、S130の分析結果により得られたピーク面積比からNiHの生成量を算出する(S230)。
その後、実験者は、SOC、電圧およびセル温度Tbと、S230にて算出したNiHの生成量との間の対応関係を記録する(S240)。実験者は、このような一連の処理(S210〜S240の処理)を複数の条件(SOC領域、電圧およびセル温度Tb)について実施する。複数の条件の各々について、算出されたNiHの生成量を耐久試験の実施期間(好ましくはNiHが生成されやすい充電期間)で除算することによって、単位時間当たりのNiHの生成量を算出することができる。したがって、マップMPを作成することができる。
図9は、本実施の形態において作成されるマップMPの一例を概念的に示す図である。マップMPにおいては、たとえば、セル110の電圧(より詳細にはセル電圧Vbから電池システム2の金属抵抗由来の電圧変化量が除かれた値)(V0,V1,V2・・・)と、セル110のSOC(X0,X1,X2・・・)と、セル温度Tb(T0,T1,T2・・・)との組合せ毎に、セル110の正極内における単位時間当たりのNiHの生成量(R00,R01,R10・・・)が対応付けられている。SOCが同一である条件下では、電圧が高くなるほど、あるいはセル温度Tbが高くなるほど単位時間当たりのNiHの生成量は大きくなる。このように、本実施の形態においては、第1および第2の実験を通じてマップMPが予め作成され、作成されたマップMPはメモリ302に記憶される。
<NiH生成抑制制御>
以上のようにして作成されたマップMPを用いて組電池100の各種充放電制御が実行される。一例として、NiHの生成量が所定量を上回った場合には、さらなるNiの生成を抑制するための制御が実行される。この制御を「NiH生成抑制制御」と称し、以下に説明する。
図10は、組電池100のNiH生成抑制制御を示すフローチャートである。このフローチャートに示される処理は、所定の制御周期(=単位時間)毎にメインルーチン(図示せず)から呼び出されて実行される。これらのフローチャートに含まれる各ステップは、基本的にはECU300によるソフトウェア処理によって実現されるが、その一部または全部がECU300内に作製されたハードウェア(電気回路)によって実現されてもよい。ECU300のメモリ302には、前回の制御周期にて算出されたNiHの生成量が記憶されているものとする。
S310において、ECU300は、電圧センサ210、電流センサ220および温度センサ230から、セル電圧Vb、電流Ibおよびセル温度Tbをそれぞれ示す信号を取得する。なお、ECU300は、たとえば充電時においては、セル電圧Vbから金属抵抗による電圧変化量を減算した電圧を算出する。電圧変化量は、予め求められた金属抵抗と電流Ibとの積に基づいて算出される。
S320において、ECU300は、セル110のSOCを算出する。SOCの算出には公知の手法を用いることができる。すなわち、予め規定された、SOCとOCVとの間の相関関係を示すデータを用いてSOCを算出してもよいし、電流積算方式により電流Ibの積算値とセル110の満充電容量とからSOCを算出してもよい。
S330において、ECU300は、メモリ302に記憶されたマップMP(図9参照)を参照して、S320にて算出されたSOCと、S310にて取得された電圧およびセル温度Tbに対応する単位時間当たりのNiHの生成量を算出する。
S340において、ECU300は、S330にて算出したNiHの生成量を、前回の制御周期にて算出されたNiHの生成量(メモリ302に記憶された値)に加算することによって現在のNiHの生成量を算出する。算出された値はメモリ302に記憶される。
S350において、ECU300は、S340にて算出したNiHの生成量が予め定められた基準量以上であるか否かを判定する。たとえば、NiHが基準量以上であるセルが1つでも存在する場合(S350においてYES)、ECU300は、処理をS360に進め、NiHが上記基準量以上になったセルについて、セル電圧Vbが所定電圧未満に制限され、かつ、セル温度Tbが所定温度未満に制限されるようにPCU200を制御する。その後、処理はメインルーチンへと戻される。これにより、NiHのさらなる生成を抑制することができる。その結果、組電池100の満充電容量の一層の低下を抑制し、満充電容量が必要量を下回ることを防止することができる。
なお、NiHの生成を抑制する効果は相対的に小さくなるものの、セル電圧Vbおよびセル温度Tbのうちのいずれか一方のみを制限してもよい。あるいは、正極内での反応ムラによりNiHの生成が加速されるため、反応ムラを低減してNiHの生成を抑制するために、セル電圧Vbおよびセル温度Tbに代えてまたは加えて、組電池100の電流Ibを所定値未満に制限してもよい。
一方、S350においてNiHの生成量が所定量未満である場合(S350においてNO)、ECU300は、S360の処理を実行することなく処理をメインルーチンへと戻す。
以上のように、本実施の形態によれば、セル110(あるいは組電池100)のSOCを考慮することによってNiHの生成量を高精度に算出することができる。そして、その算出結果に応じてNiHのさらなる生成を抑制することにより、組電池100の満充電容量の低下を引き起こす組電池100の劣化を防止することができる。したがって、組電池100の性能を十分に発揮させることが可能になる。たとえば、車両1がエンジン(図示せず)を搭載する場合に、組電池100の満充電容量の低下に伴う車両1の燃費低下の低下を抑制することができる。
なお、図10ではNiHの生成を抑制するための制御について説明したが、NiHの生成量に関する情報を他の制御に用いることも可能である。たとえば、電流積算方式によるSOC推定において、NiHの生成量と満充電容量の低下量との間の相関関係を予め求めておくことにより、NiHの生成量を用いて満充電容量を補正することができる。補正後の満充電容量を用いることによってSOCの推定精度を向上させることが可能である。
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 車両、2 電池システム、10 モータジェネレータ、20 動力伝達ギア、30 駆動輪、40 PCU、50 SMR、100 組電池、110 セル、120 ケース、121 ケース本体、122 蓋体、130 安全弁、140 電極体、210 電圧センサ、220 電流センサ、230 温度センサ、300 ECU、301 CPU、302 メモリ。

Claims (1)

  1. ニッケル水素電池と、
    メモリを含み、前記ニッケル水素電池の充放電を制御する制御装置とを備え、
    前記メモリは、前記ニッケル水素電池のSOC(State Of Charge)と、前記ニッケル水素電池の正極内におけるNiHの生成量との対応関係を示すデータを記憶し、
    前記制御装置は、前記ニッケル水素電池の電圧および電流の少なくとも一方を用いて前記ニッケル水素電池のSOCを推定し、推定されたSOCから前記データを参照することによって前記NiHの生成量を算出する、電池システム。
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