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JP2018188752A - 複合繊維およびそれからなる布帛 - Google Patents

複合繊維およびそれからなる布帛 Download PDF

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JP2018188752A JP2017090823A JP2017090823A JP2018188752A JP 2018188752 A JP2018188752 A JP 2018188752A JP 2017090823 A JP2017090823 A JP 2017090823A JP 2017090823 A JP2017090823 A JP 2017090823A JP 2018188752 A JP2018188752 A JP 2018188752A
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Keita Sumiya
啓太 角谷
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Abstract

【課題】 相転移材料の含有量をより高くすることができ、かつ、染色性と耐熱性に優れた繊維および布帛を提供する。【解決手段】 エチレンに由来する構成単位(A)と式1で示される構成単位(B)とを有する相転移材(C)、および、ポリプロピレン樹脂を含み、相転移材(C)とポリプロピレン樹脂とが少なくとも一部架橋していることを特徴とする蓄熱材を含む複合繊維である。【化1】(式中、側鎖部Rは炭素数14以上、30以下の直鎖アルキル基である。)【選択図】なし

Description

本発明は、優れた温度調節性能を有する複合繊維およびそれからなる布帛に関する。
従来より温度調節機能を有する繊維は種々提案されている。例えば、特許文献1、2では、常温付近に融点を有する物質をマイクロカプセルに封入した蓄熱材を用いることが提案されている。このようなマイクロカプセルは、繊維に付着させたり、繊維中にマイクロカプセルを混入させることにより、温度調節機能を有する繊維として用いることができる。
また、特許文献3、4では、パラフィンワックス組成物を芯成分として用いた温度調節性能に優れる複合繊維が提案されている。
また、特許文献5では、結晶性ポリαオレフィンを含む樹脂組成物を芯成分として用いた温度調節性能に優れる芯鞘型複合繊維が提案されている。
特開昭58−55699号公報 特開平1−85374号公報 特開平8−311716号公報 特開2004−11032号公報 特開2015−34367号公報
しかしながら、マイクロカプセルを繊維に付着させたものは、通常、繊維を布帛とした後、マイクロカプセルを含む液体に浸漬して付着させることとなるが、この場合、マイクロカプセルが点在してしまい、温度調節性能が充分に発揮できない。また後加工によりマイクロカプセルを付着させた場合、使用によって温度調節性能が低下し、洗濯耐久性に乏しいものとなる。一方、マイクロカプセルを繊維に混入する場合は、通常、繊維形成樹脂へマイクロカプセルを練り込んだ後、紡糸して繊維を得るが、練り込み時や紡糸時の溶融により、マイクロカプセルが破壊され、充分な温調性能を得ることができない。
また、特許文献3、4のように、相転移材としてパラフィンワックス組成物を芯成分として用いた複合繊維は、繊維作製時に熱などによりパラフィンワックスが飛散する等、繊維の製造に困難が伴う上、得られた繊維は温度調節性能が充分でない。
そして、特許文献5に記載の繊維は、マイクロカプセルやパラフィンワックスを用いずとも温度調節性能を得ることができるよう、相転移材として、結晶性ポリαオレフィンを用いている。しかし、結晶性ポリαオレフィンは粘度が非常に低いため、複合繊維紡糸時に単独での使用は困難であり、そのため、通常はポリプロピレン樹脂と混練し、樹脂組成物として使用しなければならず、複合繊維中において、相転移材である結晶性ポリαオレフィンの含有率を高めることは難しく、温度調節性能の向上にも限界がある。また、この場合、難染色性で、かつ、耐熱性が低いポリプロピレン樹脂を使用することとなるため、耐熱性や染色性の問題もある。
したがって、本発明は、本発明は上記の課題を解決し、紡糸性、染色性および耐熱性が良好で、相転移材の含有率をより多くすることができる、温度調節性能が優れる繊維を得ることをその目的とする。
本発明者は、特定の相転移材とポリプロピレン樹脂とを架橋した蓄熱材を複合繊維に含むことに着目し、これにより、相転移材の粘度を保ち、複合繊維紡糸時に単独での使用ができるようになり、繊維中の相転移材の含有量を高めて、温度調節性能をより向上できることを見出した。
すなわち、本発明は、エチレンに由来する構成単位(A)と式1で示される構成単位(B)とを有する相転移材(C)、および、ポリプロピレン樹脂を含み、相転移材(C)とポリプロピレン樹脂とが少なくとも一部架橋していることを特徴とする蓄熱材を含む複合繊維である。
Figure 2018188752
(式中、側鎖部Rは炭素数14以上、30以下の直鎖アルキル基である。)
また、蓄熱材の融点が、20℃以上、50℃以下、凝固点が、15℃以上、45℃以下、蓄熱材の融解熱量(ΔHm)が、40J/g以上、110J/g以下、凝固熱量(ΔHc)が、40J/g以上、110J/g以下であることが好ましい。
さらに、本発明は上記複合繊維を含む布帛でもある。
本発明は、蓄熱材が、上記相転移材(C)とポリプロピレン樹脂とが少なくとも一部架橋していることから、200℃以上の温度環境下でも高い粘度を有しているため、複合繊維紡糸時に単独での使用が可能である。このため、複合繊維中の相転移材含有率を高くすることができ、より優れた温度調節性能を付与することができる。
そして、本発明によれば、衣料の着用を想定した際、夏場および冬場で、屋内から屋外への移動時等に生じる環境温度変化に対して、優れた温度調節性能を有し、紡糸性・染色性・耐熱性が良好な繊維およびその布帛を提供できる。
本発明は、エチレンに由来する構成単位(A)と式1で示される構成単位(B)とを有する相転移材(C)、および、ポリプロピレン樹脂を含み、相転移材(C)とポリプロピレン樹脂とが少なくとも一部架橋していることを特徴とする蓄熱材を含む複合繊維である。
Figure 2018188752
(式中、側鎖部Rは炭素数14以上、30以下の直鎖アルキル基である。)
また、相転移材(C)は、式2で示される構成単位(D)を含んでいてもよい。
Figure 2018188752
本発明に用いる蓄熱材において、前記構成単位(B)の式1に示されるRは直鎖アルキル基であり、直鎖アルキル基の炭素数によって蓄熱材の融点と凝固点が決定される。好ましくは炭素数14以上、30以下の直鎖アルキル基であり、より好ましくは炭素数14以上、24以下の直鎖アルキル基であり、さらに好ましくは炭素数16以上、22以下の直鎖アルキル基である。
本発明に用いる蓄熱材において、相転移材(C)の形状保持性を良好とする点から、前記構成単位(A)と前記構成単位(B)と前記構成単位(D)の合計構成単位数を100%として、前記構成単位(A)の数が70%以上、99%以下であることが好ましく、前記構成単位(B)と前記構成単位(D)の合計数が1%以上、30%以下であることが好ましい。より好ましくは、(A)の数が80%以上、97.5%以下、(B)と(D)の合計数が2.5%以上、20%以下である。さらに好ましくは、(A)の数が85%以上、92.5%以下、(B)と(D)の合計数が7.5%以上、15%以下である。
本発明に用いる蓄熱材において、前記構成単位(B)と前記構成単位(D)との合計構成単位数を100%として、前記構成単位(B)の数が80%以上、100%以下、前記構成単位(D)の数が0%以上、20%以下であることが好ましい。
相転移材(C)の含有量は、相転移材(C)とポリプロピレン樹脂との合計質量を100質量%として、30質量%以上、99質量%以下であることが好ましい。
相転移材(C)の好適な製造方法としては、例えば、エチレンに由来する構成単位(A)と前記構成単位(D)とを有する共重合体(E)と、炭素数14以上、30以下のアルキル基を有するアルコール(以下、化合物(α)と称することがある)とのエステル交換法により製造することが挙げられる。
共重合体(E)の製造方法としては、例えば、エチレンと、前記構成単位(D)を形成するモノマーを用いて、高圧下でのラジカル重合法により製造することが好適に挙げられる。
共重合体(E)と化合物(α)とのエステル交換法により、相転移材(C)を製造する際の反応温度としては、通常40℃以上、250℃以下である。この反応は、溶媒存在下で行ってもよい。溶媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、トルエン、およびキシレンが好適に挙げられる。この反応は、共重合体(E)と化合物(α)とを溶融混練しながら行ってもよい。この場合、溶融混練時の温度は、100℃以上、250℃以下であることが好ましい。尚、エステル交換を促進させるために、副生成物を減圧留去しながら行ってもよいし、エステル交換を促進する触媒を添加してもよい。
前記化合物(α)としては、例えば、n−テトラデシルアルコール、n−ペンタデシルアルコール、n−ヘキサデシルアルコール、n−ヘプタデシルアルコール、n−オクタデシルアルコール、n−ナノデシルアルコール、n−エイコシルアルコール、n−ヘンエイコシルアルコール、n−ドコシルアルコール、n−トリコシルアルコール、n−テトラコシルアルコール、n−ペンタコシルアルコール、n−ヘキサコシルアルコール、n−ヘプタコシルアルコール、n−オクタコシルアルコール、n−ナノコシルアルコール、およびn−トリアコンチルアルコールが挙げられる。相転移材(C)を製造する時は、これらの化合物のうち、複数の化合物を同時に用いてもよい。
本発明に用いる蓄熱材において、相転移材(C)とポリプロピレン樹脂の少なくとも一部が共有結合により架橋されている。架橋する方法としては、電離性放射線を照射して架橋する方法や、有機過酸化物を用いて架橋する方法が好適に挙げられる。
電離性放射線としては、例えば、α線、β線、γ線、電子線、中性子線、およびX線が挙げられ、中でも、コバルト−60のγ線、または中性子線が好ましい。電離性放射線の照射は、公知の電離性放射線照射装置を用いて行われ、照射量は、通常5〜300kGyであり、好ましくは、30〜60kGyである。
有機過酸化物を用いて架橋する場合には、ポリプロピレン樹脂の流動開始温度以上の分解温度を有する過酸化物が好適に用いられる。好ましい有機過酸化物としては、例えば、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−tert−ブチルパーオキシヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−tert−ブチルパーオキシヘキシン、α,α−ジ−tert−ブチルパーオキシイソプロピルベンゼン、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネートなどを挙げることができる。また、反応を促進させるために、架橋助剤を添加してもよい。
本発明の複合繊維において、繊維断面としては、芯鞘構造、海島構造、サイドバイサイド構造、区分パイ構造、ストライプ構造等が好適に挙げられる。蓄熱材が露出している繊維は、蓄熱材の融点より高温の環境下では、蓄熱材が軟化し繊維同士が融着する恐れがあることから、蓄熱材が繊維表面に露出しない断面構造が好ましい。特に好ましい繊維断面としては、蓄熱材が芯部を構成している芯鞘構造、または、蓄熱材が複数の島部を構成している海島構造が挙げられる。複合繊維を構成する、蓄熱材以外の樹脂材料(以下、樹脂材料(1)と称することがある)と蓄熱材の界面剥離が生じないようにする点から、さらに好ましい繊維断面としては、蓄熱材が構成している島の数が7以上の海島構造が挙げられる。
本発明の複合繊維において、蓄熱材は、特定の融点と凝固点を有することが好ましい。
蓄熱材の融点は、良好な温度調節性能を備える点から、20℃以上、50℃以下であることが好ましい。より好ましくは、25℃以上、45℃以下である。
また、蓄熱材の凝固点は、良好な温度調節性能を備える点から、15℃以上、45℃以下であることが好ましい。より好ましくは、17℃以上、40℃以下である。
尚、蓄熱材において、融点は、凝固点より、1℃以上高いものであることが好ましい。
蓄熱材の融解熱量(ΔHm)は、40J/g以上、110J/g以下、凝固熱量(ΔHc)は、40J/g以上、110J/g以下であることが好ましい。この範囲とすることによって、繊維化した時に優れた温度調節性能が得られ易い。
複合繊維中の蓄熱材の含有量は、15質量%以上、80質量%以下であることが好ましい。蓄熱材の含有量が80質量%以下であれば、紡糸性が良好であり、15質量%以上であれば優れた温度調節性能が発揮し易い。より好ましくは、15質量%以上、60質量%以下である。さらに好ましくは、20質量%以上、50質量%以下である。
複合繊維中の相転移材(C)の含有量は、10質量%以上、60質量%以下であることが好ましい。従前から用いられていた結晶性ポリαオレフィン等の相転移材は、通常、そのまま単独で紡糸ができるものではなく、複合繊維紡糸時に単独で使用できるものではないため、繊維中に相転移材を多く含むことはできず、繊維中の相転移材含有量としては、多くとも10質量%を超えない範囲であったが、本発明においては、10質量%を超える相転移材を含有して紡糸することができる。本発明では、従前よりも、相転移材を多く繊維に含有させることができるため、所望により、多くの相転移材を含み、温度調節性能をさらに向上させることができる。より好ましくは、14質量%以上、40質量%以下である。
複合繊維を構成する、蓄熱材以外の樹脂材料(1)としては、ポリアミド6(以下、PA6と称することがある)、ポリアミド12、ポリアミド66等の重合体又はこれらの共重合体であるポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと称することがある)、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、全芳香族ポリエステル等の重合体又はこれらの共重合体である芳香族ポリエステル樹脂、ポリ乳酸やポリブチレンサクシネート等の重合体又はこれらの共重合体である脂肪族ポリエステル樹脂等が、特に、衣料用途に用いる場合は、好適に挙げられる。
本発明の複合繊維は、蓄熱材および樹脂材料(1)を複合紡糸することにより製造することができる。
蓄熱材と樹脂材料(1)との複合紡糸方法としては、蓄熱材と樹脂材料(1)を、押出機でそれぞれ溶融し、ギヤポンプを用いてそれぞれの樹脂を定量しながら口金から吐出し、冷却後巻き取る、溶融紡糸法が好適に挙げられる。紡糸温度としては、160℃以上、300℃以下が好ましい。巻き取り方法としては、例えば、400〜1,200m/分程度の低速で未延伸糸を一度巻取り、延撚機を用いて熱延伸し延伸糸を得る方法(コンベンショナル法)や、3,000〜5,000m/分の高速で巻き取り、半延伸糸を得る方法(POY法)や、800〜1,200m/分の第一ローラ(GR1)と3,000〜3,800m/分程度の第二ローラー(GR2)を用いてGR1とGR2の間で熱延伸を行い、直接延伸糸を得る方法(直接延伸法)等が好適に挙げられる。延伸倍率としては、特に限定されるものではないが、通常、2〜4倍が好ましい。
本発明の複合繊維の繊度および構成本数に関しては、特に限定されるものではないが、衣料用途では総繊度33〜150dtexで、構成本数は12〜96f程度が好ましく、より好ましくは総繊度が33〜84dtexで、構成本数は12〜48fである。
本発明の複合繊維は、そのまま生糸として、または、仮撚機を用いて仮撚加工糸として、織編物などの布帛に用いることもできる。織編物などの布帛は、一般衣料およびスポーツウェア等の衣料用、寝具、車両内装材用等に好適に用いることができる。
本発明の複合繊維は、織編物に用いる場合、一部に用いても、全部に用いてもよい。一部に用いる場合の具体的な使用比率は、本発明の複合繊維が、混率20質量%以上とすることが好ましく、より好ましくは、混率35質量%以上である。
以下、実施例および具体例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれに限られるものではない。
(1)DSC評価(融点、凝固点、融解熱量、凝固熱量測定)
以下に示す、融点、凝固点、融解熱量(ΔHm)、凝固熱量(ΔHc)は、示差走査熱量計(DSC8500:パーキンエルマージャパン社製)を用いて測定した。本発明において示差走査熱量計の測定は以下の条件で行った。
サンプルパン:Al
パージガス:N
温度範囲:−50℃〜60℃
加熱冷却速度:10℃/分
(2)紡糸性評価
エクストルーダ型複合紡糸機を用いて、蓄熱材および樹脂材料(1)の複合紡糸を行った。以下の基準により紡糸性評価を行った。
○:24時間連続紡糸時、糸切れが発生せず、得られた繊維について毛羽等の不良は発生しない。
△:24時間連続紡糸時、糸切れが2回以下で発生し、得られた繊維について毛羽等の不良が発生しないか、あるいは僅かに発生する。
×:24時間連続紡糸時、糸切れが3回以上で発生し、紡糸性が不良である。
(3)温度調節性能評価
1)温度調節性能評価用の筒編布部材の作製
得られた繊維を、筒編試験機(英光産業株式会社製CR−B、24ゲージ)にて幅8cmの筒編地を作製した。その筒編地を長さ10cmにカットした部材を2枚作製し、得られた2枚の部材を重ねて、筒編布部材とした。対照糸についても同様に筒編布部材を得た。
2)温度調節性能評価方法
まず、得られた繊維からなる筒編布部材と、対照糸からなる筒編布部材にそれぞれ温湿度センサを包んだ。2つの筒編布部材を同時に25℃、30%RHに設定された恒温恒湿機で30分静置後、36℃、70%RHに設定された恒温恒湿機に筒編布部材を移動させ30分間静置した。(以下、昇温時と称することがある)
さらに、2つの筒編布部材を同時に36℃、70%RHに設定された恒温恒湿機から、25℃、30%RHに設定された恒温恒湿機に筒編布部材を移動させ30分間静置した。(以下、降温時と称することがある)
その間、温湿度センサは10秒に1回、温湿度を測定、記録しており、同一の時間での、2つの筒編布部材の温度差の絶対値を「性能温度差」とし、「性能温度差」が最大となる値を「最大性能温度差」、環境変化後から「性能温度差」が0℃になるまでの時間を「継続時間」とした。「最大性能温度差」は大きいほど温度調節性能が高く、「継続時間」は長いほど温度調節性能が高い。
(4)染色性評価
得られた繊維と対照糸を準備し、それぞれ、筒編試験機(英光産業株式会社製CR−B、24ゲージ)にて幅8cmの筒編地を作製した。得られた筒編地を、炭酸水素ナトリウム(和光純薬製)2g/L、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(花王製)2g/Lの水溶液を用いて、70℃で20分間の条件で精練を行った後、180℃で1分間の熱セットを実施した。
樹脂材料(1)としてポリアミド6を用いている筒編地は、黒色酸性染料6%owfで染色した。樹脂材料(1)としてポリエチレンテレフタレートを用いている筒編地は、黒色分散染料6%owfで染色した。染色後の筒編地は、カラーメーター(日本電色工業株式会社製測色色差計、ZE−2000)を用いて、染色後の色目(L,a,b)を確認した。
値から以下の式で示される染色率を求め、求めた染色率から染色性を評価した。
〔数1〕
染色率(%)={(樹脂材料(1)単独糸の黒色染色後筒編地のL*値)/(得られた繊維の黒色染色後筒編地のL*値)}×100
染色率が大きいほど、繊維の黒色染料の染色性が良いことから、以下の基準により染色性を評価した。
○:染色率が70%以上100%以下である。
△:染色率が50%以上70%未満である。
×:染色率が50%未満である。
(5)耐熱性評価
得られた複合繊維を、筒編試験機(英光産業株式会社製CR−B、24ゲージ)にて幅8cmの筒編地を作製した。得られた筒編地を180℃で1分間の熱セットを実施し、筒編地から抜糸した糸の強度を測定した。対照糸についても同様に筒編地を作製し、強度を測定した。
以下の式で示される強度保持率を求め、求めた強度保持率から耐熱性評価を評価した。
〔数2〕
強度保持率(%)={熱セット後の糸強度(cN/dtex)/熱セット未処理の糸強度(cN/dtex)}×100
強度保持率が高いほど、熱セット後の強度低下が小さく、耐熱性が良いことから、以下の基準により耐熱性を評価した。
◎:強度保持率が80%以上100%以下である。
○:強度保持率が70%以上80%未満である。
△:強度保持率が60%以上70%未満である。
×:強度保持率が60%未満である。
<構成単位(A)と構成単位(D)との共重合体(E)の製造例>
オートクレーブ式反応器にて、反応温度195℃、反応圧力160MPaで、ラジカル重合開始剤としてtert−ブチルパーオキシピバレートを用いて、エチレンとメチルアクリレートを共重合して、エチレン−メチルアクリレート共重合体(E−1)を得た。エチレンに由来する構成単位の数:87.1%、メチルアクリレートに由来する構成単位の数:12.9%であった。
<蓄熱材の製造例1>
3Lセパラブルフラスコ中にて、原料として、エチレン−メチルアクリレート共重合体(E−1):150g、および、n−エイコシルアルコール(炭素数20):170g、触媒として、オルトチタン酸テトラ(n−ブチル):50mLを、880mLのヘプタンに溶解し、窒素雰囲気下、100℃、3時間撹拌を行った後、5Lのエタノールに再沈殿させ、相転移材(C−1)を得た。
相転移材(C−1):70質量部と、ポリプロピレン:30質量部と、有機過酸化物のジクミルパーオキサイド:1質量部とを二軸押出機を用いて、混練温度220℃、滞留時間2分、スクリュー回転数500rpmの条件で混練し、C−1とポリプロピレンが架橋されている蓄熱材を得た。
得られた蓄熱材を、示差走査熱量計を用いて測定したところ、融解熱量(ΔHm)が 56.6J/g、凝固熱量(ΔHc)が53.2J/gであり、蓄熱材の融点が38.2℃、凝固点が34.5℃であった。得られた蓄熱材をTm38−C70と称する。
<蓄熱材の製造例2>
原料として、エチレン−メチルアクリレート共重合体(E−1):80g、および、n−ナノデシルアルコール(炭素数19):78g、触媒として、オルトチタン酸テトラ(n−オクタデシル):2gを用いて、130℃で12時間、1kPa減圧下にて加熱撹拌を行い、相転移材(C−2)を得た。
相転移材(C−2):70質量部と、ポリプロピレン:30質量部と、有機過酸化物の2,5−ジメチル−2,5−ジ−tert−ブチルパーオキシヘキサン:1質量部と、架橋助剤のトリメチロールプロパントリメタクリレート:1質量部とを二軸押出機を用いて、混練温度220℃、滞留時間2分、スクリュー回転速度500rpmの条件で混練し、C−2とポリプロピレンが架橋されている蓄熱材を得た。
得られた蓄熱材を、示差走査熱量計を用いて測定したところ、融解熱量(ΔHm)が50.8J/g、凝固熱量(ΔHc)が49.3J/gであり、融点が33.1℃、凝固点が29.6℃であった。得られた蓄熱材をTm33−C70と称する。
〔実施例1〕
蓄熱材Tm33−C70、および、ポリアミド6を紡糸原料としてエクストルーダ型複合紡糸機を用いて温度250℃で複合紡糸を行った。
蓄熱材を芯部、ポリアミド6が鞘部となるように別々に溶融してから250℃の温度で芯鞘型紡糸用口金より紡出し、冷却、オイリングしつつ紡速800m/分で捲取った。その後、延伸機を用いて80℃で3.3倍に熱延伸し、プレートヒーターにて150℃で熱セットし、78dtex/24fの延伸糸である芯鞘型複合繊維を得た。この芯鞘型複合繊維の芯鞘比率は、15:85(質量比)である。得られた複合繊維を、示差走査熱量計を用いて測定したところ、融解熱量(ΔHm)が 5.8J/g、凝固熱量(ΔHc)が5.2J/gであった。
〔実施例2〕
芯鞘型複合繊維の芯鞘比率を、30:70(質量比)とする以外は、実施例1と同様の紡糸原料と紡糸条件で紡糸して芯鞘型複合繊維を得た。
〔実施例3〕
芯鞘型複合繊維の芯鞘比率を、50:50(質量比)とする以外は、実施例1と同様の紡糸原料と紡糸条件で紡糸して芯鞘型複合繊維を得た。
〔実施例4〕
蓄熱材Tm33−C70を島部、ポリエチレンテレフタレートを海部となるように別々に溶融してから、270℃の温度で海島型紡糸用口金(島数:19)より紡出し、冷却、オイリングしつつ紡速800m/分で捲取った。その後、延伸機を用いて80℃で3.3倍に熱延伸し、プレートヒーターにて150℃で熱セットし、84dtex/24fの延伸糸である海島型複合繊維を得た。この海島型複合繊維の海島比率は、85:15(質量比)である。
〔実施例5〕
海島型複合繊維の海島比率を、70:30(質量比)とする以外は、実施例4と同様の紡糸原料と紡糸条件で紡糸して海島型複合繊維を得た。
〔実施例6〕
海島型複合繊維の海島比率を、50:50(質量比)とする以外は、実施例4と同様の紡糸原料と紡糸条件で紡糸して海島型複合繊維を得た。
〔比較例1〕
ポリアミド6を溶融してから250℃の温度で単独型紡糸用口金より紡出し、冷却、オイリングしつつ紡速800m/分で捲取った。その後、延伸機を用いて80℃で3.0倍に熱延伸し、プレートヒーターにて150℃で熱セットし、78dtex/24fの延伸糸であるポリアミド単独繊維を得た。得られた繊維を、示差走査熱量計を用いて測定したところ、20℃〜40℃の範囲にピークは観測されなかった。
〔比較例2〕
ポリエチレンテレフタレートを溶融してから280℃の温度で単独型紡糸用口金より紡出し、冷却、オイリングしつつ紡速800m/分で捲取った。その後、延伸機を用いて80℃で3.0倍に熱延伸し、プレートヒーターにて150℃で熱セットし、84dtex/24fの延伸糸であるポリエチレンテレフタレート単独繊維を得た。得られた繊維を、示差走査熱量計を用いて測定したところ、20℃〜40℃の範囲にピークは観測されなかった。
〔比較例3〕
融点33.2℃、凝固点23.7℃、融解熱量(ΔHm)が77.1 J/g、凝固熱量(ΔHc)が78.5J/gの結晶性ポリαオレフィン20質量%とポリプロピレン樹脂80質量%を二軸押出混練機で240℃にて溶融混練を実施し、ペレタイザーを用いてペレット状のポリオレフィン系樹脂組成物を得た。
得られたポリオレフィン系樹脂組成物を芯部、ポリアミド6が鞘部となるように別々に溶融してから250℃の温度で芯鞘型紡糸用口金より紡出し、冷却、オイリングしつつ紡速800m/分で捲取った。その後、延伸機を用いて80℃で3.0倍に熱延伸し、プレートヒーターにて150℃で熱セットし、78dtex/24fの延伸糸である芯鞘型複合繊維を得た。この芯鞘型複合繊維の芯鞘比率は、50:50(質量比)である。示差走査熱量計を用いて測定したところ、融解熱量(ΔHm)が 4.1J/g、凝固熱量(ΔHc)が3.1J/gであった。
〔比較例4〕
比較例3と同様のポリオレフィン系樹脂組成物を島部、ポリエチレンテレフタレートが海部となるように別々に溶融してから280℃の温度で海島型紡糸用口金(島数:19)より紡出し、冷却、オイリングしつつ紡速800m/分で捲取った。その後、延伸機を用いて80℃で3.0倍に熱延伸し、プレートヒーターにて150℃で熱セットし、84dtex/24fの延伸糸である海島型複合繊維を得た。この海島型複合繊維の芯鞘比率は、50:50(質量比)である。示差走査熱量計を用いて測定したところ、融解熱量(ΔHm)が 3.6J/g、凝固熱量(ΔHc)が3.2J/gであった。
〔比較例5〕
比較例3で用いた結晶性ポリαオレフィンとポリプロピレン樹脂の質量比率を30:70として、比較例3と同様に溶融混練を実施したが、結晶性ポリαオレフィンとポリプロピレン樹脂が分離し、樹脂組成物を得ることができなかった。
〔比較例6〕
芯鞘比率を、80:20(質量比)とする以外は、比較例3と同様に紡出し、捲取を試みたが、糸切れが多発したため、捲取れず、複合繊維を得ることができなかった。
実施例1〜6、比較例1〜4から得られた繊維の紡糸条件、糸物性、紡糸性評価、温度調節性能評価、染色性評価、耐熱性評価の結果を下記表1、表2に示す。尚、相転移材の含有率(質量%)は、繊維質量に対する相転移材の含有量を示す。また、各評価で筒編地を作製する際、比較例1から得られた繊維を、実施例1〜3および比較例3の対照糸とし、比較例2から得られた繊維を、実施例4〜6および比較例4の対照糸とした。
Figure 2018188752
Figure 2018188752
上述の結果から、実施例1〜6から得られた繊維は、比較例3および4よりも相転移材含有率が高い繊維であり、温度調節性能、染色性、耐熱性ともに良好であった。
本発明の複合繊維およびそれからなる布帛は、一般衣料およびスポーツウェア等の衣料品、寝具、ならびに車両内装材等の使用に好適なものである。
従来より温度調節機能を有する繊維は種々提案されている。例えば、特許文献1は、常温付近に融点を有する物質をマイクロカプセルに封入した蓄熱材を用いることが提案されている。このようなマイクロカプセルは、繊維に付着させたり、繊維中にマイクロカプセルを混入させることにより、温度調節機能を有する繊維として用いることができる。
また、特許文献では、パラフィンワックス組成物を芯成分として用いた温度調節性能に優れる複合繊維が提案されている。
また、特許文献では、結晶性ポリαオレフィンを含む樹脂組成物を芯成分として用いた温度調節性能に優れる芯鞘型複合繊維が提案されている。
特開昭64−85374号公報 特開平8−311716号公報 特開2004−11032号公報 特開2015−34367号公報
しかしながら、特許文献1のように、マイクロカプセルを繊維に付着させたものは、通常、繊維を布帛とした後、マイクロカプセルを含む液体に浸漬して付着させることとなるが、この場合、マイクロカプセルが点在してしまい、温度調節性能が充分に発揮できない。また後加工によりマイクロカプセルを付着させた場合、使用によって温度調節性能が低下し、洗濯耐久性に乏しいものとなる。一方、マイクロカプセルを繊維に混入する場合は、通常、繊維形成樹脂へマイクロカプセルを練り込んだ後、紡糸して繊維を得るが、練り込み時や紡糸時の溶融により、マイクロカプセルが破壊され、充分な温調性能を得ることができない。
また、特許文献のように、相転移材としてパラフィンワックス組成物を芯成分として用いた複合繊維は、繊維作製時に熱などによりパラフィンワックスが飛散する等、繊維の製造に困難が伴う上、得られた繊維は温度調節性能が充分でない。
そして、特許文献に記載の繊維は、マイクロカプセルやパラフィンワックスを用いずとも温度調節性能を得ることができるよう、相転移材として、結晶性ポリαオレフィンを用いている。しかし、結晶性ポリαオレフィンは粘度が非常に低いため、複合繊維紡糸時に単独での使用は困難であり、そのため、通常はポリプロピレン樹脂と混練し、樹脂組成物として使用しなければならず、複合繊維中において、相転移材である結晶性ポリαオレフィンの含有率を高めることは難しく、温度調節性能の向上にも限界がある。また、この場合、難染色性で、かつ、耐熱性が低いポリプロピレン樹脂を使用することとなるため、耐熱性や染色性の問題もある。

Claims (3)

  1. エチレンに由来する構成単位(A)と式1で示される構成単位(B)とを有する相転移材(C)、および、ポリプロピレン樹脂を含み、相転移材(C)とポリプロピレン樹脂とが少なくとも一部架橋していることを特徴とする蓄熱材を含む複合繊維。
    Figure 2018188752
    (式中、側鎖部Rは炭素数14以上、30以下の直鎖アルキル基である。)
  2. 蓄熱材の融点が、20℃以上、50℃以下、凝固点が、15℃以上、45℃以下、蓄熱材の融解熱量(ΔHm)が、40J/g以上、110J/g以下、凝固熱量(ΔHc)が、40J/g以上、110J/g以下である請求項1に記載の複合繊維。
  3. 請求項1または2記載の複合繊維を含む布帛。
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