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JP2018094775A - 立体物の造形方法 - Google Patents

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JP2018094775A JP2016240254A JP2016240254A JP2018094775A JP 2018094775 A JP2018094775 A JP 2018094775A JP 2016240254 A JP2016240254 A JP 2016240254A JP 2016240254 A JP2016240254 A JP 2016240254A JP 2018094775 A JP2018094775 A JP 2018094775A
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Yasuhiro Horiguchi
康裕 堀口
田中 誠
Makoto Tanaka
田中  誠
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Abstract

【課題】積層時に、造形物に過剰な荷重が加わり造形物の変形が生じるのを抑制する。【解決手段】三次元モデルの形状データから生成されるスライスデータに基づいて、前記三次元モデルを構成する構造材料と、前記構造体の造形をサポートするためのサポート体を構成するサポート材料と、を配置した材料層を、ステージの上で順次積層して造形物を製造する造形方法であって、前記ステージの上に製造された造形物に変形が生じる荷重より小さい荷重を加えながら前記材料層を前記ステージの上に製造された造形物の上に積層する。【選択図】図3

Description

本発明は、立体物の造形方法に関するものである。
近年、新しい造形法として、3次元モデルの形状データを複数の層にスライスしてスライスデータを生成し、スライスデータに基づいて造形材料を順次積層することにより3次元モデルを実体化する積層造形法が注目されている。
特許文献1には、電子写真方式を用いて3次元モデルのスライスデータに応じて、造形材料からなる1断面分の層を形成し、層単位、すなわち、面単位で積層する造形装置が提案されている。この方法は誘電体表面に形成した静電潜像を帯電性粉体で現像し、ヒートロールで加熱定着する。その後、定着した帯電性粉体層を再加熱溶融しステージ上に加圧転写し、積層して立体物を造形している。
特開平10−207194号公報
特許文献1の造形装置では、帯電性粉体層を加熱及び圧着により積層しているが、この際に加える圧力は、3次元モデルの形状や用いる造形材料の特性等により好適な範囲が異なる。従って、積層の際に適切な圧力を加えないと、造形物の変形が懸念される。
上記課題を解決するため、本発明にかかる造形方法は、三次元モデルの形状データから生成されるスライスデータに基づいて、前記三次元モデルを構成する構造材料と、前記構造体の造形をサポートするためのサポート体を構成するサポート材料と、を配置した材料層を、ステージの上で順次積層して造形物を製造する造形方法であって、
前記ステージの上に製造された造形物に変形が生じる荷重より小さい荷重を加えながら前記材料層を前記ステージの上に製造された造形物の上に積層することを特徴とする。
本発明によれば、積層時に、造形物に過剰な荷重が加わり造形物の変形が生じるのを抑制し、安定的に立体物を製造することが可能となる。
積層工程の説明に用いる造形システム概略図。 造形装置の機能ブロック図を示す図。 第1の実施形態にかかる荷重F(h)を算出するためのフローチャート。 第2の実施形態にかかる荷重F(h)を算出するためのフローチャート。 第3の実施形態にかかる荷重F(h)を算出するためのフローチャート。 第3の実施形態にかかる造形を説明する図。 第4の実施形態にかかる造形を説明する図。
以下に図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。各図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状それらの相対配置などは、発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものであり、特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲はそれらのみに限定されるものではない。
本発明に係る造形システムの一実施形態を図1および2を用いて説明する。造形システムは、3次元モデルを積層方向に対して垂直な面となるよう、所定のピッチで切断して得られる断面データに基づいて、造形材料を配置し順次接合することで、3次元モデルに対応する立体物を製造する。
(造形システムの全体構成)
本発明にかかる造形システムは、造形部100と、ユーザーインターフェース200と、パラメータ設定部300と、造形部の動作を制御する制御部400を備えている。
造形部100は、感光体ローラ3を備える造形材料供給ユニット1A〜1D、第1担持体4、第2担持体(中間転写体)8、加熱ヒータ9、温度制御部材13、造形ステージ14、第3搬送体15、圧力(荷重)センサー19を備えている。圧力(荷重)センサー19は、積層時に温度制御部材13が受ける圧力(荷重)を検知する。
パラメータ設定部300は、ユーザーインターフェース200からの入力を受け、3次元モデルの形状データに基づく断面データの生成や、積層時に加える圧力等のパラメータの算出および設定を行う。制御部400はパラメータ設定部300で設定されたパラメータに基づいて造形部100の各部を制御して積層動作を行わせる。
なお、本実施形態においては、図1の紙面に向かって、上下方向(積層方向)をZ軸方向、左右方向をY軸方向とし、Z軸とY軸とに垂直な方向をX方向として説明する。
図2は、図1の造形装置の機能ブロック図の一例であり、パラメータ設定部300、制御部400との相関や、それぞれが有する機能を図示したものである。
パラメータ設定部300は、データ格納部301、断面データ生成部302、荷重計算部303、サポート形状計算部304を有する。そして、制御部400は、材料層形成制御部401、中間転写制御部402、加熱シート化制御部403、積層工程制御部404を有する。
(造形フロー)
図1、2を参照して、造形フローについて説明する。
まずユーザーインターフェース200またはデータ格納部301から、断面データ生成部302に3次元モデルの形状データが読み込まれる。3次元モデルの形状データは断面データ生成部302で、積層方向に垂直な面に一定間隔でスライスされ、各スライス断面における断面データが生成される。また、3次元モデルを複数種類の造形材料で造形する場合は、形状データと材料種類および位置の情報とを断面データ生成部302に読み込めば、材料の配置情報を備える断面データを生成することができる。
荷重計算部303は、断面データ生成部302で生成された断面形状データを取得して、積層時に印加すべき荷重を算出する。
積層時に材料層に印加される圧力が大きすぎると、得られる立体物が、目標とする形状に対して変形してしまい、小さすぎると圧力不足により材料層間の接合ができない部分が生じてしまう。そこで、本発明では、積層時の荷重を、材料層の安定的な積層を考慮した条件式にしたがって算出する。安定的な積層を実現するための荷重を算出するための条件式については後で詳細に説明する。
積層時に加える荷重を算出した後、サポート形状計算部304においてサポート体の形状が算出される。サポート体は、造形時に構造体を支持するもので、一般的には、構造体の庇状に張り出す部分(オーバーハング部)の下に設けるものである。サポート体を設けることにより、オーバーハング部の積層を安定化させたり、造形途中の立体物の強度を確保したりすることができる。ただし、サポート体はオーバーハング部の下部に必ず配置しなければならないものではなく、構造材料の材質や、立体物の形状、造形方法によっては、サポート体を設けなくても造形が可能な場合もある。サポート体は、造形が完了すると不要となり除去される。
本発明では、オーバーハング部以外の、変形しやすい部分にもサポート体を設けられる。積層する材料層の面積や積層時に印加する荷重値との兼ね合いによって必要となるサポート体の構造や配置は異なるため、荷重計算部303とサポート形状計算部304との間でデータをやり取りして、造形に適した荷重とサポート体の形状とが算出される。
本発明では、サポート体を構成する材料をサポート材料、三次元モデルを構成する材料を構造材料と呼び、両者を区別する必要のない場合は、サポート材料と構造材料を合わせて造形材料と呼ぶ。サポート材料は、造形完了後の除去を容易にするため、構造材料が溶解しない溶媒に対する溶解度の高い材料を用いることが好ましい。
サポート体が必要となる造形の場合、断面データ生成部302で生成された3次元モデルの断面形状データにサポート体の断面形状データを付加して得られるスライスデータに従って積層が行われる。パラメータ設定部300で生成されたスライスデータおよび決定された荷重は、制御部400へ送られる。
制御部400の材料層形成制御部401が、取得したスライスデータに基づいて材料層形成部20を制御し、電子写真プロセスにて材料層を形成する。材料層形成部20に配置された造形材料供給ユニット1A〜1Dそれぞれの感光体ローラ3には、スライスデータの材料種ごとの潜像が描かれる。例えば、スライスデータが造形材料供給ユニット1A、1Bそれぞれに収容された造形材料のデータを含んでいる場合、造形材料供給ユニット1A、1Bの各感光体ローラ3にそれぞれの材料種のデータに従って潜像が描かれる。
感光体ローラ3には、造形材料供給ユニットに収容された造形材料が供給され、それぞれの造形材料からなる画像が形成される。各造形材料供給ユニットの感光体ローラ3上に形成された造形材料からなる画像は、第1担持体4に転写され、材料層5となる。材料層5は、立体物を形成するために積層される1層分の材料に相当する。
第1担持体4によって2次転写部に送られた材料層6は、第2担持体8と第1担持体4との間に印加される電界により、第1担持体4から第2担持体8上へ転写される。
第2搬送体8の回転によって3次転写部に搬送された材料層7は2次転写部と同様に印加電界によって第3担持体15に転写される。図1では、第1担持体4や第3担持体15にベルト状の部材を用いているが、これに限るものではなく、円筒ドラムなど他の形態を用いてもよい。また、第2担持体および第3担持体を省略して、第1担持体から直接積層する構成を用いてもよい。
材料層は、第3担持体によって積層位置へと搬送される途中に設けられた加熱ヒータ9により加熱され、融解してシート状となる。ただし、途中加熱や材料層のシート化は必要に応じて行えばよく、必須の工程ではない。シート状の材料層は、積層位置へと搬送され、ステージ14の上、または、ステージ14上の立体物の上に積層される。ステージ14と温度制御部材13とは、第3担持体15を挟んで互いに平行に対向して設けられており、それぞれ上下方向に移動可能となっている。このような構造により、互いの相対距離を変化させ、両者に挟まれる立体物および材料層に任意の荷重を加えることが可能となっている。ここでいう積層位置とは、ステージ14と温度制御部材13とに挟まれた領域である。
温度制御部材13には荷重センサーまたは圧力センサーが取り付けられており、立体物11および材料層12への荷重を計測することができるようになっている。加圧の際に荷重(圧力)センサー19がパラメータ設定部300で算出した荷重値を超えた場合、加圧を停止する様に制御され、立体物の変形を抑制することができる。
加圧されたシート状の材料層12は、造形中の立体物11の上面に密着した状態で、第3搬送体15を介して温度制御部材13によって加熱溶融された後に冷却固化され、第3搬送体15から造形中の立体物11へと接合される。このように、材料層が造形中の立体物11に積層される工程が繰り返され、立体物が造形される。
以下、実施形態として、安定的な積層を実現する荷重を算出するための具体的なフローを説明する。
(第1の実施形態)
本実施例は積層する際に加える荷重を、荷重計算部303で算出して得られる最大荷重よりも小さくすることによって、立体物に過大な荷重がかかるのを防ぎ、良好な積層を実現するものである。
図3に、高さhを積層する際に加える荷重F(h)を算出するための、パラメータ設定部300での具体的なフローチャートを示す。S501で計算を開始してから、まずS502で三次元モデルの形状データおよび造形材料の配置情報(造形物形状)、および、造形材料それぞれの物性値を取得する。ここで物性値とは構造材料で構成される構造体とサポート材料で構成されるサポート体の圧縮降伏強度およびヤング率をさしている。以下、構造体の圧縮降伏強度とヤング率をそれぞれσstr、Estr、サポート体の圧縮降伏強度とヤング率をそれぞれσsup、Esupと表す。ここで、hは造形途中での立体物の高さを表しており、造形が完了したときの立体物の高さをHとして0<h<Hである。また、高さhまで積層が完了し、次の1層を積層する際に印加する荷重をF(h)と定義する。
続いて、S503で初期サポート体形状を決定する。ここでいう初期サポート体形状は、オーバーハング部等、三次元モデルの形状データから算出されるサポート体の形状に対応している。そしてS504においてユーザーが任意の荷重値F(h)を設定する。
S505では、S503で決定したサポート体形状の情報と造形物の情報に基づいて、積層を続けたときに塑性変形を起こさない最大荷重Fmax(h)を計算する。最大荷重Fmax(h)の導出の詳細は後述するが、高さhにおける構造体とサポート体の断面積をそれぞれSstr(h)、Ssup(h)として、最大荷重Fmaxは(1)式によって算出される。
max(h)=min{Sstr(z)・Estr+Ssup(z)・Esup|0<z<h}
・min(σstr/Estr,σsup/Esup)・・・(1)
S506では0<h<Hの範囲内の各hに対して、F(h)<Fmax(h)が満たされているかどうかのチェックを行う。条件が満たされていない場合、S507でF(h)をF(h)<Fmax(h)を満たす値に変更してからS508へ進む。F(h)<Fmax(h)が満たされている場合は、F(h)を変更せずにS508へと処理がうつる。S508でF(h)を最終的な荷重F(h)として設定する。S509ではS508で決定した荷重値F(h)にて積層を開始する。
次に、最大荷重Fmax(h)導出の考え方について説明する。
(造形物が単一材料で構成される場合)
[A.三次元モデルのZ方向のスライス断面の面積と形状が一様な立体物]
まず、三次元モデルのZ方向のスライス断面の面積と形状が一様な、単一の構造材料から成る立体物を加圧する場合を考える。これはサポート材料を用いない積層造形に対応するものである。
立体物を構成する材料のヤング率をE、Z方向の長さ(高さ)をl、高さlにおける立体物の断面積をSとする。一般に材料は加圧されると圧縮を生じるため、積層時に荷重FをZ軸に沿って加圧すると、立体物は長さがlから(l−Δl)とΔlだけ短くなる。このとき生じるひずみεは、ε=(Δl/l)と表される。材料力学によると、このとき立体物の断面には圧力σ=ε・Eがかかる。よって力F=σ・S=ε・E・Sと表せる。
圧力σと変形量Δlはほぼ比例関係にあり、負荷を除くと立体物はもとの大きさにもどる。これを弾性変形と呼ぶ。しかし、σが大きすぎると負荷を取り除いても変形が残存し塑性変形を生じる。この弾性変形から塑性変形する際のσは材料固有の値をとることが知られている。このσをここでは圧縮降伏強度と呼び、構造材料のそれをσstrと表記する。ここで構造材料にσstr以上の圧力がかかることになると立体物に塑性変形が生じ、積層面が傾いたり、積層断面の形状が変化したりすることになる。以上より立体物に印加できる力(荷重)の最大値は
F=σstr・S=ε・E・S=(σstr/E)・E・S
となる。
[B.三次元モデルのスライス断面の面積と形状がZ方向で一定でない立体物]
次に、三次元モデルをZ方向にスライスして得られる断面の面積が一定でない場合を考える。積層ステージからの高さhの関数として、スライス断面の面積がS(h)で表されるとする。Z方向に荷重Fを印加するとすべての積層断面には同じ荷重F(h)=σ(h)S(h)の力がかかる。ここでσ(h)は高さhの断面での圧力とする。高さ0<z<hの範囲で断面積S(z)が最も小さい層には、最も大きい圧力σ(z)がかかることになる。しかし、積層断面1層1層については、スライス断面の面積と形状がZ方向で一様な立体物と同様に考えることができる。よってA.と同じ議論を適用することができ、積層物に塑性変形を起こさないためには積層圧力σがσ<σstrを満たせばよい。従って、ステージからの高さhの積層断面のみを考えた場合、その断面に印加可能な荷重F(h)の上限値は
max(h)=σstr・S(h)=(σstr/E)・E・S(h)
となる。
以上より立体物全体を考えたとき、印加可能な荷重Fの上限値はFmax(z)(0<z<h)の最小値であるから
min{F(z)|0<z<h}=(σstr/E)・min{E・S(z)|0<z<h}
となる。
(造形物が複数の材料で構成される場合)
次に構造材料とサポート材料の2種類の造形材料からなる立体物を造形する場合を考える。A.と同様に、立体物は、Z方向のスライス断面の面積と形状が一様であるとする。
荷重Fを加えると、構造体とサポート体は共に圧縮される。このとき、Z方向の積層高さをlとし、圧縮距離はどちらの材料もΔlで等しいと仮定する。また、構造体のヤング率をEstr、圧縮降伏強度をσstr、断面積をSstrとする。同様にサポート体のヤング率をEsup、圧縮降伏強度をσsup、断面積をSsupとする。構造体でのひずみεstrとサポート体でのひずみεsupは、変形量Δlが等しいためそれぞれεで等しくなる。
すると、前述と同様の議論により構造体の断面には圧力σstr=εstr・Estrが、サポート体の断面には圧力σsup=εsup・Esupがかかる。よって荷重Fは
F=σstr・Sstr+σsup・Ssup=ε・(Estr・Sstr+Esup・Ssup
と表すことができる。
Fの上限値は、その力を受けた時に、構造体とサポート体が共に塑性変形が起こらないことが必要である。ひずみはε=σ/Eで表せるから、εはσstr/Estr及びσsup/Esupのどちらか小さい方を上限とすればよいことになる。以上より、荷重Fの最大値Fmax
max=min(σstr/Estr,σsup/Esup)・(Estr・Sstr+Esup・Ssup
と表すことができる。
次に、構造材料とサポート材料の2種類の材料からなり、且つ、Z方向でおのおの積層断面面積と断面形状が変化する場合を考える。この場合も加圧時の構造体とサポート体のひずみ量εに違いはないものと考えると構造材料のみを用いた場合でZ方向に断面形状が変化するときの議論が応用できるから、積層板からの高さhの積層面にかかる荷重F(h)は以下のように表せる。
F(h)=ε・{Estr・Sstr(h)+Esup・Ssup(h)}
εの上限値は構造材料、サポート材料での圧縮強さの上限のどちらか小さい方を取るべきであるから、次式で表される。
max(ε)=min(εstr,εsup)=min(σstr/Estr,σsup/Esup
塑性変形を起こさずに印加可能な積層荷重Fの上限値はF(z)(0<z<h)の最小値である。従って、F(h)のとりうる上限値Fmax(h)は、
max(h)=min{F(z)|0<z<h}
=min{ε・(Estr・Sstr(h)+Esup・Ssup(h))|0<z<h}
=min{Sstr(z)・Estr+Ssup(z)・Esup|0<z<h}
・min(σstr/Estr,σsup/Esup
となり、(1)式が導き出される。
以上説明したとおり、(1)式に従って、F(h)<Fmax(h)となるようにF(h)を定めれば、積層時に過荷重により立体物に変形が生ずることなく、積層を行うことができる。
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、変形が生ずることなく積層を行うための荷重の上限について説明した。本実施形態では、構造材料とサポート材料それぞれの最適積層圧力(層間を十分に接合するのに必要な圧力)が既知である場合の、荷重の下限について説明する。本実施例によれば、構造材料とサポート材料の複合積層物に対しても最適な荷重を印加することができ、強度の高い造形物を実現するものである。
図4に、高さhを積層する際に加える荷重F(h)を算出するための、積層パラメータ設定部300、特に荷重計算部303内での具体的なフローチャートを示す。S601で開始した後、S602でデータ格納部301から造形物形状および物性値を取得する。ここで物性値とは構造材料またはサポート材料のヤング率Estr、Esup及び、それぞれの単材料からなる層の接合に必要な最小圧力Pstr、Psupを表す。次にS603で初期サポート材形状を決定する。これはすでに第1の実施形態と同様に、オーバーハング部等、三次元モデルの形状データから算出されるサポート体の形状に対応している。続くS604において、ユーザーが任意の初期荷重のF(h)(0<h<H)を決定する。
S605では、S603で取得したサポート材形状の情報と造形物の情報を基に、構造材料とサポート材料の複合積層物に対する最小積層荷重Fmin(h)を計算する。具体的には、積層時に加える荷重を(2)式で表されるFmin(h)以上の値に定めるとよい。(2)式の導出についての詳細は後述する。
min(h)={Sstr(h)・Estr+Ssup(h)・Esup
・max(Pstr/Estr,Psup/Esup)・・・(2)
ここで、構造体の断面積、ヤング率、最小積層圧をそれぞれSstr(h)、Estr、Pstr、サポート体の断面積、ヤング率、最小積層圧をそれぞれSsup(h)、Esup、Psupである。
S606では、各hについてFmin(h)≦F(h)が満たされているかチェックを行う。式(2)が満たされていない場合、S607において式(2)を満たす値にF(h)を変更してS608へ進み、満たされている場合はF(h)を変更せずにS608へと進む。S608では修正されたF(h)が最終的な荷重F(h)の値として決定され、S609ではS608で決定された荷重に従って積層を開始する。
次に、式(2)の導出について詳細に説明する。
予め構造材料及びサポート材料をそれぞれについて、層間を十分に接着するのに必要な圧力を取得する。ある一定の温度のもとで荷重を加えて積層する場合、荷重が小さすぎると加熱された積層される側の面の最表層と積層する層側の表面の高分子同士が相溶せず、十分な積層強度を維持することができない。そのため、一般に構造材料、サポート材料ともに接合に必要な最低限度な積層圧力(最小荷重)が存在し、それぞれをPstr,Psupと表記する。
第1の実施形態と同様の議論により、構造体とサポート体が同じひずみ量εをもつと考えると、印加する積層荷重F(h)は以下のように表すことができる。
F(h)=ε{Estr・Sstr(h)+Esup・Ssup(h)}
積層圧力σがPstr,Psupのどちらかよりも低いと、積層材料とサポート材料のどちらかの接合に必要な圧力に満たないことになり、構造体強度またはサポート体の強度が低くなり、安定した積層動作を実施することができない。よって、積層圧力σは、構造材料とサポート材料の両方を接合可能とするため、PstrおよびPsup以上であることが必要である。
ここでPstr/Estr=εstr、Psup/Esup=εsupと表記する。加圧によってεstrとεsupのうち大きい方の値以上のひずみを生じると、構造体、サポート体いずれにおいても積層圧力σの値はPstr、Psup以上となり、両部分でともに良好な接合を行うことができる。よって良好な積層を実現できる範囲でひずみεが取りうる最小値はε=max(Pstr/Estr,Psup/Esup)となり、荷重F(h)の好ましい範囲は、式(2)Fmin(h)以上の範囲にある。
以上のように本実施例によれば最小荷重として定めた値以上の力を印加することで構造材料、サポート材料から成る複合積層物を十分な強度を持って積層することができる。ただし、第1の実施形態の上限を超えると造形物の変形が生じてしまうため、F(h)は(1)式で表されるFmax(h)よりも小さい値である必要がある。すなわち、
min(h)≦F(h)<Fmax(h)・・・(3)
を満たす範囲の荷重F(h)を負荷して積層を行うことにより、強度が高く変形の抑制された造形物を得ることが可能となる。
(第3の実施形態)
三次元モデルの形状次第では、初期サポート体形状を付加した造形では、(3)式を同時に満たすF(h)を設定できない場合がある。そこで、本実施形態では、初期サポート体の形状(積層断面積)を変化させることによって(3)関係式を満たすF(h)を設定し、良好な積層を実現するものである。
図5に、F(h)を算出するための荷重計算部303内での具体的なフローチャートを示す。S701で開始した後、S702でデータ格納部301から造形物形状および物性値を取得する。ここで物性値とは構造体とサポート体の圧縮降伏強度、最適積層圧およびヤング率をさす。構造体の圧縮降伏強度、最適積層圧およびヤング率を、それぞれσstr、Pstr、Estr、サポート体の圧縮降伏強度、最適積層圧およびヤング率を、それぞれσsup、Psup、Esupと表す。次にS703で初期サポート体形状を決定する。これはすでに第1の実施形態と同様に、オーバーハング部等、三次元モデルの形状データから算出されるサポート体の形状に対応している。そしてS704においてユーザーが任意の初期荷重F(h)を設定する。S705では、S703で取得した初期サポート体形状の情報と三次元モデルの情報とを基に、F(h)の初期設定値に対して、その値が、式(2)で算出される最小荷重以上であるという条件を満たすかどうかをチェックする。条件を満たしていない場合、S706で条件を満たすようにF(h)の値を変更し、条件を満たしている場合はF(h)を変更せずにS707にすすむ。S707では、S704またはS706で決定した荷重値が、式(1)で算出される最大荷重よりも小さい条件を満たすかどうかがチェックされる。最大荷重よりも小さい条件を満たしている場合、S710では、S705でチェックされた荷重F(h)がそのまま積層時に加える荷重として設定される。もし、最大荷重よりも小さい条件を満たす値が存在しない場合は、S708でサポート体の形状が変更され、S709へとすすむ。S709では、変更後のサポート体形状を用いて最大荷重Fmax(h)及び最小荷重Fmin(h)が計算され、再びS705の処理へとすすむ。式(1)で算出される最大荷重よりも小さい条件を満たす荷重が設定できるまでサポート体形状が変更され、最終的な荷重F(h)とサポート体形状(即ち、Ssup(h))が決定され、S711にて積層が開始される。S712で積層動作が完了すれば、S713で処理を終了する。
本実施例が特に有効な三次元モデルの形状の例として、図6(a)に示すように、積層方向において上部より下部に断面積の小さい部分を有する形状があげられる。図6(a)は、三次元モデル800をX方向からみた形状を示している。
図6(a)の三次元モデル800の造形において、断面cの層を積層する際に式(2)から算出される最小荷重以上の荷重で積層を行うと、その圧力はそのまま断面cの下部にある断面dに集中負荷されるので、式(1)を満たすことがでいない。つまり、図6(a)の三次元モデルの場合、式(3)を満たす荷重を設定することができない。そのため、造形物のどこかの部位で変形が発生してしまう。
そこで、本実施形態では、図6(a)に示す三次元モデル800の断面積の小さい部分dの近傍に、S703に基づくサポート体811に加えて、S708に基づくサポート体812を付加する。このような処理により、サポート体部811の断面積Ssupに付加したサポート体部812分の断面積ΔSsupが、三次元モデルの造形時のサポート体となり、その面積を(Ssup+ΔSsup)に増加させることができる。
断面dでの断面部をZ方向から見た図を図6(b)に示す。高さz(0<z<h)の部分でのサポート材の断面積をSsup(z)からSsup(z)+ΔSsup(z)に変更すると、Fmax(h)が増大する。そして、サポート体形状が変更されるため、Fmin(h)の値も変化するから、S709にてFmin(h)の値を再計算する。このようにして、式(3)を満たす荷重F(h)を設定することが可能となる。
本実施形態にかかる造形方法を用いると荷重の不足や、過荷重による造形物の変形を抑制して、安定した造形を行うことができる。
(第4の実施形態)
第3の実施形態では、初期サポート体形状を付加した造形では(3)式を同時に満たすF(h)を設定できない場合に、変形が生じる部分にのみ、補強用のサポート体を付加する方法を説明した。本実施形態では、全体に補強用のサポート体を付加する場合について説明する。
本実施形態を、図7を用いて説明する。図7(a)は、三次元形状データで表される三次元モデル901の形状(球体)を、XYZ軸と共に表す図である。本実施形態では、三次元モデルのXY面に平行な断面データに基づいて生成したスライスデータに応じて形成する複数の層をZ軸方向に積層するものとする。
図7(b)には、スライスデータに従って造形される構造体902と、ユーザーによる設定に従って決定される初期サポート体903を示している。初期サポート体903は、第3の実施形態と同様に図5のフローに従って行われ、S703にて算出される。続いて、S704においてユーザーが任意の初期荷重F(h)を設定する。S705では、S703で取得した初期サポート体形状の情報と三次元モデルの情報とを基に、F(h)の初期設定値に対して、その値が、式(2)で算出される最小荷重よりも大きい条件を満たすかどうかをチェックする。条件を満たしていない場合、S706で条件を満たすようにF(h)の値を変更し、条件を満たしている場合はF(h)=F(h)としてS707にすすむ。S707では、S704またはS706で決定した荷重値が式(1)で算出される最大荷重よりも小さい条件を満たすかどうかがチェックされる。最大荷重よりも小さい条件を満たしている場合、S710にすすみ、S705に送られたF(h)がそのまま積層時の印加荷重として設定される。もし、最大荷重よりも小さい条件を満たす値が存在しない場合はS708へとすすみ、条件を満たす様にサポート体の形状が変更され、S709へとすすむ。このとき、本実施例では、図7(c)に示すように、構造体902とサポート体904とから構成される造形物の断面積が一定値になるようにサポート体904の形状を変更する。
サポート体904は、造形物を積層方向の任意の位置でスライスした断面をステージに投影した形状が、常に一致し、かつ、構造体902の積層方向の任意の位置でスライスした断面をステージに投影した形状を含むよう設けるとよい。具体的には、図6(c)に示すような、造形物の断面が構造体902の最大断面と一致する円柱でもよい。あるいは、構造体902全体を覆う立方体や多角柱などの多面体としてもよい。
S708でサポート体904の形状が変更されるとS709へとすすみ、変更後のサポート体形状を用いて最大荷重Fmax(h)及び最小荷重Fmin(h)が計算され、再びS705の処理へとすすむ。S708で変更されたサポート体を用いると、式(1)で算出される最大荷重よりも小さい条件を満たす荷重を確実に設定することができるため、S705のあとはS710まで進むことができる。S710では、変更されたサポート体形状とS710で設定された最終的な荷重F(h)とを用いて積層が開始される。S711で積層動作が完了すれば、S712で処理を終了する。
本実施形態によれば、スライスの面積が一定の値になるようにサポート材を配置することで、積層時に印加される荷重を高さによらず一定にすることができるため、簡単に造形品質を維持することができる。
13 温度制御部材
14 ステージ
19 圧力センサー
20 材料層形成部
100 造形部
200 ユーザーインターフェース
300 パラメータ設定部
301 データ格納部
302 断面データ生成部
303 荷重計算部、
304 サポート形状計算部
400 制御部

Claims (7)

  1. 三次元モデルの形状データから生成されるスライスデータに基づいて、前記三次元モデルを構成する構造材料と、前記構造体の造形をサポートするためのサポート体を構成するサポート材料と、を配置した材料層を、ステージの上で順次積層して造形物を製造する造形方法であって、
    前記ステージの上に製造された造形物に変形が生じる荷重より小さい荷重を加えながら前記材料層を前記ステージの上に製造された造形物の上に積層することを特徴とする造形方法。
  2. 造形が完了したときの造形物の高さをH、前記構造材料のヤング率と圧縮降伏強度をそれぞれEstr、σstr、前記サポート材料のヤング率と圧縮降伏強度をそれぞれEsup、σsupとし、
    前記ステージからの高さzで積層する材料層の前記構造材料と前記サポート材料のそれぞれが占める面積をSstr(z)、Ssup(z)とすると、
    前記ステージからの高さh(0<z<h<H)の位置において造形物に変形が生じる荷重を、
    max(h)=min{Sstr(z)・Estr+Ssup(z)・Esup|0<z<h}・・・(1)
    ・min(σstr/Estr,σsup/Esup
    に設定することを特徴とする請求項1に記載の造形方法。
  3. 前記材料層の積層時に加える荷重の値を、前記構造材料および前記サポート材料がいずれも接合可能な荷重以上に設定することを特徴とする請求項1または2に記載の造形方法。
  4. 前記構造材料またはサポート材料それぞれの単材料からなる層の接合に必要な最小圧力をPstr、Psupとして、前記構造材料および前記サポート材料がいずれも接合可能な荷重を、
    min(h)={Sstr(h)・Estr+Ssup(h)・Esup
    ・max(Pstr/Estr,Psup/Esup)・・・(2)
    に設定することを特徴とする請求項3に造形方法。
  5. 前記ステージからの高さh(0<h<H)における荷重をF(h)として、
    min(h)≦F(h)<Fmax(h)
    を満たすF(h)を設定できるまで、前記サポート体の形状を変更することを特徴とする請求項4に記載の造形方法。
  6. 変更された前記サポート体の形状は、前記造形物の断面形状および断面積を一定とする形状であることを特徴とする請求項5に記載の造形方法。
  7. 前記材料層を積層する際、荷重を加えると同時に熱を加えることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の造形方法。
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