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JP2017531696A - プロセス - Google Patents

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Abstract

塩素化アルケンを調製する方法であって、塩素化アルカンと塩素化アルケンとを含む液体反応混合物を製造するために、脱塩化水素ゾーン内で塩素化アルカンと触媒とを接触させ、そして反応混合物から塩素化アルケンを抽出することを含み、脱塩化水素ゾーン内に存在する反応混合物中の塩素化アルケンの濃度は、塩素化アルケン:塩素化アルカンのモル比が1:99〜50:50であるように制御される、塩素化アルケンを調製する方法、が開示される。

Description

本発明は、高純度塩素化アルケン化合物、例えば1,1,3−トリクロロプロペン(1240za)、3,3,3−トリクロロプロペン(1240zf)、1,1,3,3−テトラクロロプロペン(1230za)、1,1,2,3−テトラクロロプロペン(1230xa)、1,1,1,2−テトラクロロプロペン(1230xf)、1,1,2−トリクロロプロペン、1,1,2,3,3−ペンタクロロプロペン、1,1,3,3,3−ペンタクロロプロペン、及び1,1,2,3,3,3−ヘキサクロロプロペンを製造する方法に関し、そしてこのような化合物を含む組成物にも関する。
ハロアルカンは種々の用途に利用されている。例えば、ハロカーボンは冷却剤、ブローイング剤、及び発泡剤として幅広く使用されている。20世紀後半を通して、その環境影響に関する、具体的にはオゾン層減少に関する懸念が提起された1980年代まで、クロロフルオロアルカンの使用が急激に増大した。
その後、フッ素化炭化水素、例えばペルフルオロカーボン及びヒドロフルオロカーボンがクロロフルオロアルカンの代わりに使用されているものの、最近では、このクラスの化合物の使用に関する環境上の懸念が提起されており、これらの使用を低減するためにEU及びその他の地域で法律が制定されている。
環境に優しい新しいクラスのハロカーボンが出現しつつあり、研究されている。そしていくつかの事例ではこのようなハロカーボンは数多くの用途に、特に自動車分野及び家庭用分野における冷却剤として採用されている。このような化合物の例は、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(R−134a)、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HFO−1233xf)、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234ze)、3,3,3−トリフルオロプロペン(HFO−1243zf)、及び2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)、1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン(HFO−1225ye)、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HFO−1233zd)、3,3,4,4,4−ペンタフルオロブテン(HFO−1345zf)、2,4,4,4−テトラフルオロブト−1−エン(HFO1354mfy)、1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロブテン(HFO−1336mzz)、3,3,4,4,5,5,5−ヘプタフルオロペンテン(HFO−1447fz)、及び1,1,1,4,4,5,5,5−オクタフルオロペンテン(HFO−1438mzz)を含む。
これらの化合物は相対的に言えば化学的に複雑ではないものの、これらを所要の純度レベルまで工業規模で合成することは難しい。このような化合物のために提案される数多くの合成経路は、中間体の出発材料として、塩素化アルカン又はアルケンを使用することがますます増えている。塩素化アルカン又はアルケン出発材料は通常、フッ化水素及び遷移金属触媒、例えばクロム系触媒を使用して、フッ素化目標化合物へ転化される。
塩素化原材料が多工程プロセスから得られるとき、特に工業的に許容し得る生成物量を得るために連続的にこのような工程が連関され実施される場合、累積する副反応がそれぞれのプロセス工程で許容し得ない不純物を発生させるのを防止することが極めて重要であることが判っている。
塩素化出発材料の純度は、望ましいフッ素化生成物を調製するためのプロセス(特に連続プロセス)の成功及び実行可能性に対して著しい効果をもたらす。ある特定の不純物の存在は、副反応を生じさせ、目標化合物の収率を最小化する。加えて、ある特定の不純物の存在は触媒の寿命を犠牲にする。
塩素化アルケンは、上記ハロゲン化アルカンを製造するプロセスにおける出発材料又は中間体として採用することができる。このような塩素化アルケンの調製及び使用の方法は国際公開第2009/085862号明細書、欧州特許出願公開第2447238号明細書、欧州特許出願公開第2646402号明細書、及び米国特許出願公開第2014/0275658号明細書において提供されている。
塩素化アルケンを製造する1つの充分に確立された方法は、塩素化アルカンが塩素化アルケンに転化される脱塩化水素工程を介して行われるものである。
今日実施される数多くの脱塩化水素プロセスの1つの欠点は、これらのプロセスがアルカリ性水酸化物の使用に依存することである。このことは、脱塩化水素反応に際してこのような材料を使用することに関して環境上の懸念があるため好ましくない。さらに、このようなプロセスは典型的には採算が合わないことが判っている。
欧州特許出願公開第2687504号明細書の場合、脱塩化水素反応に際して水酸化ナトリウムを使用することを回避しようとする方法が開示されている。その反応では、1,1,1,3−テトラクロロプロパンを脱塩化水素することによって、1,1,3−トリクロロプロペンを製造する。次いで、1,1,3−トリクロロプロペンは、好ましくは水酸化ナトリウムの不存在において、現場で1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンに転化される。
しかしながら、そのようにして製造された1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンの不純物プロフィールは好ましいものではなく、これは少なくとも部分的には、脱塩化水素工程中の不純物の生成に由来する。換言すれば、現場で製造された1,1,3−トリクロロプロペン中間体は、許容し得ない不純物プロフィールを有しており、その結果、下流側の生成物(1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン)の不純物プロフィールも許容し得ないものになる。
上記文献の例7〜9から判るように、得られた1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンは5.8%〜8.1%のテトラクロロプロペンを含んだ。テトラクロロプロペンは上記文献で論じられるプロセスにおける目標塩素化アルケン中間体ではない。すなわちこのテトラクロロプロペンは、脱塩化水素時の塩素化アルケン選択性が低いことの結果として生じる。さらに、それらの例における「重質(heavies)」含有率(3.3%〜6.3%)を考慮に入れると、これは不純物10%超の損失になる。このことは工業的に許容し得ない。さらに、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンからの不純物1,1,2,3−テトラクロロプロペンの抽出は面倒である。
米国特許出願公開第2014/0275658号明細書に開示されたプロセスは、「重質(heavies)」不純物を必然的に含有するクロロアルカン出発材料を採用する。この不純物は明らかにより高度に選択的なプロセスをもたらす。前記出願に開示されたプロセスにおいて採用されたクロロアルカン出発材料の最高純度は98.%である。米国特許出願公開第2014/0275658号明細書に開示されたプロセスにおけるクロロアルカンのクロロアルケンへの好ましい転化度は少なくとも60%である。
塩素化アルケン、例えば1,1,3−トリクロロプロペンを調製するための効率的で信頼性高く、そして高度に選択的なプロセスであって、望まれない不純物、特に目的の塩素化アルケンからの分離が難しい不純物、及び/又は、例えば、これらのプロセス中に採用される触媒を失活することによって及び/又はハロアルケン生成物の分解又は重合を招くことによって下流側のプロセスにおいて問題をはらむようになるおそれのある不純物の形成を付加的にもたらすことがないプロセスが技術分野において依然として必要である。
したがって、本発明の第1の態様によれば、塩素化アルケンを調製する方法であって、脱塩化水素ゾーン内で塩素化アルカンと触媒とを接触させて塩素化アルカンと塩素化アルケンとを含む反応混合物を製造し、そして反応混合物から塩素化アルケンを抽出することを含み、脱塩化水素ゾーン内に存在する反応混合物中の塩素化アルケンの濃度は、塩素化アルケン:塩素化アルカンのモル比が1:99〜50:50であるように制御される、塩素化アルケンを調製する方法が提供される。
意外なことに、塩素化アルケンのレベルを、その生成物と塩素化アルカン出発材料とのモル比が50:50を超えないように制御することにより、望ましくない、問題をはらむ不純物、例えば触媒の性能に不都合な影響を及ぼすおそれのある塩素化オリゴマーの形成が有利に防止されることが見出された。このようにすればまた、収率及び触媒活性が改善される。本発明の方法はまた高度に選択的である。
反応混合物中の塩素化アルケン:塩素化アルカンのモル比が、数値的に定義された限界内で制御される。当業者には明らかなように、このような実施形態では、プロセスの制御は、塩素化アルカン出発材料と塩素化アルケン生成物とのモル比という意味でここでは特徴付けされる一方、これは出発材料の生成物への転化の制御とも見なすことができ、ひいては生成物:出発材料のモル比20:80は転化率20%に等しい。発明者が見いだしたところによれば、出発材料の転化率を上記のように制限することにより、望ましくない不純物の形成が最小化され、より良好な触媒寿命が可能になる。加えて、生成物:出発材料のモル比が所与の値よりも高いことに言及する場合、このことは、出発材料の生成物への転化度がより高いこと、すなわち、生成物の比率が増大するのに対して出発材料の比率が減少するようになることを意味する。さらに、発明者は驚くべきことに、出発アルカンの転化を著しく制限することによってだけではなく、有利にはこのような反応混合物から生成済アルケンを効率的に即座に抽出することによっても、塩素化アルケン生成物と塩素化アルカン出発材料との所要モル比を、制御し得ることを見いだした。
本発明のいくつかの実施形態では、このプロセスは連続的である。
本発明の方法は、塩素化アルケンの形成をもたらす。当業者には認識されるように、このような化合物は典型的には高反応性を有し、そしてこのタイプの脱塩化水素反応においては酸素化有機化合物、例えば塩素化アルカノール、又は塩素化アルカノイル化合物の形成が生じ得る。本発明のプロセスの生成物中のこのような化合物を最小化することの重要性が、本方法の発明者によって認識された。装置から空気を排除することによって、酸素化化合物の形成を低減することができるものの、このようにすると、特に減圧環境が使用される場合、特に技術的且つ経済的な要求が高くなるのが一般的である。
このような副生成物の現場形成は、本発明のプロセスを用いることによって防止することができ、そしてこのことは連続プロセスにおいて特に有利である。本明細書中に記載された反応条件によれば、目的の塩素化アルケンが選択的に製造され、そして反応混合物から抽出されることが可能となり、望まれない酸素化化合物が生成されるリスクが最小化される。
これに加えて、又はこれの代わりに、酸素化化合物、例えばアルカノール又はカルボニル化合物が本発明のプロセスにおいて形成される場合には、これらの化合物は、下に詳述する水性処理工程を利用することによって除去することができる。
反応混合物中の塩素化アルケン生成物:塩素化アルカン出発材料のモル比が40:60、30:70、25:75、20:80、又は15:85を超えないように、反応混合物の塩素化アルケン含有率が制御されても、有利な結果が達成された。これに加えて、又はこれの代わりに、本発明の実施形態では、塩素化アルケン生成物:塩素化アルカン出発材料のモル比が2:98、5:95、又は10:90に等しいか又はこれよりも大きくてもよい。
反応混合物の組成を判定するためには、当業者によっていかなる技術又は設備が用いられてもよい。例えば、組成物の直接的な判定は、例えば、反応混合物の試料を分析のためにそれを通して抽出できるポートを反応ゾーンに設け、及び/又は、例えば反応ゾーンの出口又は出口の近くに配置されたポートを介して、脱塩化水素ゾーンからその反応混合物を抽出する時に、反応混合物の試料を採取することによって行うことができる。これに加えて、又はこれの代わりに、例えば温度制御によって、組成を間接的に判定することもできる。それというのも温度は一定の圧力における組成の関数だからである。
反応混合物中の塩素化アルケンのレベルは、次の方法、すなわちi)脱塩化水素ゾーンから塩素化アルケンを除去すること(直接的に行うか、又は先ず脱塩化水素ゾーンから反応混合物を抽出し、次いでそこから塩素化アルケンを抽出することによって行う)、ii)脱塩化水素ゾーン内において、より高いレベルの塩素化アルケン形成に有利に作用しない操作条件を制御すること(例えば温度、圧力、攪拌速度など)、及び/又は、iii)脱塩化水素ゾーン内に存在する塩素化アルカン出発材料及び/又は触媒の量を制御すること、のうちの1つ又は2つ以上で制御されてよい。
塩素化アルケンは、連続ベース又はバッチ式ベースで反応混合物から抽出されてよい。
塩素化アルケンは、当業者に知られた任意の技術を用いて反応混合物から抽出されてよい。実施形態では、塩素化アルケンは、蒸留を介して反応混合物から抽出される。塩素化アルケンを反応混合物からどのように抽出するかとは無関係に、塩素化アルケンは塩素化アルケンリッチ流れとして得られてよい。
本明細書全体を通して使用される、特定化合物についての「リッチ流れ」(a stream rich in a specific compound)」という用語(又はこれに相応する言語)は、この流れが少なくとも約90%、約95%、約97%、約98%、又は約99%の特定化合物を含むことを意味するために用いられる。さらに、「流れ(stream)」という用語は狭義に解釈されるべきではなく、任意の手段を介して混合物から抽出された組成物(留分を含む)を含む。
誤解を避けるために述べるならば、脱塩化水素ゾーン内の反応混合物の「連続抽出」、または脱塩化水素ゾーンからの反応混合物に言及する場合、厳密な文字通りの解釈が意図されているのではない。当業者には明らかなように、この用語は、ひとたび脱塩化水素ゾーンが目標操作条件に達し、反応混合物が定常状態に達したら、抽出がほぼ連続ベースで行われることを意味するために用いられる。
塩素化アルケンは、脱塩化水素ゾーン内の反応混合物から(直接蒸留を介して)直接に抽出することができ、又は反応混合物の一部を(連続ベース又はバッチ式ベースで)脱塩化水素ゾーンから先ず抽出し、そして脱塩化水素ゾーンから離れた場所でその混合物から塩素化アルケンを抽出することができる。
本発明の実施形態では、反応混合物は付加的な処理工程、例えば1つ又は2つ以上の蒸留工程及び/又は水性処理工程(下に詳述する)を施されてよい。このような付加的な処理工程は、反応混合物からの塩素化アルケンの抽出前及び/又は後で実施されてよい。当業者には認識されるように、このような処理工程が塩素化アルケンの抽出後に行われると、混合物の塩素化アルケン含有率は、脱塩化水素ゾーン内に形成された反応混合物中の含有率よりも低くなる。
本発明の実施形態では、塩素化アルケンは蒸留によって反応混合物から除去することができる。このように反応混合物から塩素化アルケンを抽出するためには、当業者に知られた任意の技術及び装置も採用することができる。本発明の実施形態では、蒸留塔、例えば精留塔を使用することもできる。反応混合物は塔底部内に移るか又は供給されてよく、目的の塩素化アルケンは液体蒸溜物として塔頂部から取り出される。
例えば、反応混合物が全体的又は部分的に気体状である実施形態の場合、例えば脱塩化水素ゾーン内の運転温度に基づき、装置は、脱塩化水素ゾーンが蒸溜を行う装置と流体連通するように構成されていてよい。このような実施形態では、蒸留装置は、脱塩化水素ゾーンに結合されていてよい。このことは、気体状塩素化アルケン含有混合物が脱塩化水素ゾーンから蒸留装置内へ直接に移る(又は移される)のを可能にするので好都合である。あるいは、蒸留装置は脱塩化水素ゾーンから離して配置されていてもよい。これは、気体状混合物を脱塩化水素ゾーンから抽出し、そしてこれを蒸留装置へ移さなければならないことを意味する。
これに加えて、又はこれの代わりに、反応混合物が脱塩化水素ゾーン内に部分的又は全体的に液状に存在する場合、液体反応混合物の一部を脱塩化水素ゾーンから抽出し、そしてこれを蒸留装置へ移すことができる。このような実施形態では、反応混合物は、蒸留に先立って、及び/又は、蒸留に続いて、1つ又は2つ以上の処理工程(例えば下述の水性処理工程)の対象とすることができる。
反応混合物からの塩素化アルケンの抽出が脱塩化水素ゾーンから離した装置内で行われる実施形態の場合、結果として生じる混合物、つまり未反応塩素化アルカン出発材料と(もしあるならば)減損レベルの塩素化アルケンとを含む混合物を、脱塩化水素ゾーン内へ戻すことができる。
塩素化アルケンが反応混合物から抽出される実施形態の場合、反応混合物中に存在する塩素化アルケンの少なくとも約30重量%、少なくとも約40重量%、少なくとも約50重量%、少なくとも約60重量%、少なくとも約70重量%、少なくとも約80重量%、又は少なくとも約90重量%がその混合物から抽出される。
反応混合物からの塩素化アルケンの蒸留は連続的、半連続的、又はバッチ式により行うことができる。
本発明の1つの利点は、脱塩化水素反応が、常用の技術を用いて、例えば蒸留装置オーバーヘッド蒸気の凝縮によって回収され得る塩素化アルケン混合物から、高純度の気体状塩化水素を製造することである。
このように、脱塩化水素反応中に塩化水素が製造される本発明の実施形態において、塩化水素を抽出することができる。このことは、当業者に知られているそのための設備及び/又は技術の任意のものを用いて達成することができる。例えば、反応混合物が蒸留を施される場合、蒸留装置に凝縮器(例えばパーシャルコンデンサ)を設け、あるいは、蒸留装置の下流側に凝縮器(例えばパーシャルコンデンサ)を設けることにより、塩化水素ガスの除去を可能にすることができる。
冷却装置(例えば第2凝縮器)を付加的に、例えば第1凝縮器の下流側に採用してもよい。装置をこのように配置することは、塩素化アルケンの大部分を凝縮するために第1凝縮器を使用できるので有利である。この場合第2凝縮器は塩素化アルケンの痕跡を凝縮することによりガスを精製するために使用される。回収された塩素化アルケンは、塩化水素と同様に高純度である。
これに加えて、又はこれの代わりに、塩化水素ガスを吸収して塩酸溶液を製造するために、吸収塔が採用されてもよい。
脱塩化水素ゾーンから、又はこのゾーンから抽出された反応混合物から塩化水素ガスが抽出される本発明の実施形態では、このことは、深冷処理を用いることによって、すなわちガスを反応混合物から抽出し、次いでこれを約0℃以下、約10℃以下、又は約−20℃以下の温度に冷却することによって達成することができる。結果として生じる凝縮物は再循環して脱塩化水素ゾーンへ戻されてよく、又は任意に関連する反応ゾーン、例えばグリセロールの塩化水素処理において使用されてもよい。
有利なことに、このように抽出された塩化水素は高純度であり、したがって同じ工業プラント内の上流側又は下流側の反応において反応物質として使用することができる。下流側での使用の一例は、グリセロールを塩化水素処理してモノクロロヒドリン又はジクロロヒドリンを形成し、続いてエピクロロヒドリン、グリシドール及びエポキシをもたらすことを目的とするものである。
上述のように、反応速度(ひいては塩素化アルカン:塩素化アルケンのモル比)は脱塩化水素ゾーン内の運転温度を変更することによって制御することができる。本発明のいくつかの実施形態では、脱塩化水素反応は液相で行われる。すなわち反応混合物は液体形態を成す。このような実施形態では、脱塩化水素ゾーンは、約50℃、約60℃、約70℃、約80℃、約100℃、約120℃、又は約130℃〜約160℃、約170℃、約200℃、約250℃、又は約300℃であってよい。
反応混合物は、反応(塩素化アルカンの塩素化アルケンへの転化)が所要の完成度まで進むのを可能にするのに充分な時間にわたって、脱塩化水素ゾーン内に維持される。脱塩化水素が液相で行われる本発明の実施形態では、脱塩化水素ゾーン内の反応混合物の滞留時間は、約0.1時間、約0.2時間、約0.5時間、約1時間、約1.5時間、約2時間、約2.5時間、約3時間から、約5時間、約7時間、約9時間、又は約10時間であってよい。
脱塩化水素ゾーンは減圧、大気圧、又は加圧下で操作されてよい。本発明のいくつかの実施形態では、脱塩化水素ゾーンは大気圧、又は約10kPa〜約400kPa、約40kPa〜約200kPa、又は約70kPa〜約150kPaの圧力で操作される。
脱塩化水素反応の速度を増大させる任意の触媒が、本発明の方法において採用されてよい。いくつかの実施形態において、触媒は金属を含む。このような実施形態では、金属は固体形態(例えば触媒が鉄である場合、これは粒子状鉄(例えば鉄の削り屑、又は鉄粉)、鉄網、鉄線、パッキング(構造化又はランダム)、固定床、流動床、液中分散体などとして存在してよく、あるいは、このように形成された鉄を含有する合金、例えば炭素鋼中に存在してよい。)、及び/又は塩(例えば触媒が鉄の場合、これは塩化第一鉄、塩化第二鉄などとして存在してよい。)として存在してもよい。これに加えて、又はこれの代わりに、本発明の方法が行われる装置は、部分的又は全体的に触媒材料から形成された構成部分、例えば塔内部を備えていてもよい。
金属が塩として反応混合物中に存在する本発明の実施形態においては、金属は塩形態で反応混合物に添加されてよく、及び/又は固形金属が反応混合物に添加され、次いで金属が反応混合物中に溶解し、現場で塩を形成してもよい。塩の形態で存在する場合、触媒は非晶質形態、結晶形態、無水形態、及び/又は水和形態(例えば塩化第二鉄六水和物)で添加されてよい。液体形態の触媒が採用されてもよい。
別の実施形態では、脱塩化水素反応は蒸気相で行われる。すなわち、塩素化アルカン及び塩素化アルケンの両方が気体形態である。このような実施形態では、脱塩化水素ゾーンは約300℃〜約500℃、約325℃〜約425℃、又は約350℃〜約400℃の温度で操作されてよい。
脱塩化水素反応が蒸気相で行われる本発明の実施形態では、脱塩化水素ゾーン内の反応混合物の滞留時間は、約0.5〜約10秒であってよい。
脱塩化水素反応が蒸気相で行われる本発明の実施形態では、高い収率及び選択性を達成するために、反応は適切に触媒されなければならないことが、驚くべきことに見出された。したがって、本発明の方法において、金属触媒、例えば50重量%以上の鉄を含有する触媒が使用されてよい。
したがって、本発明のさらなる態様によれば、塩素化アルケンを調製する方法であって、塩素化アルカンと塩素化アルケンとを含む蒸気相反応混合物を製造するために、蒸気相の塩素化アルカンを、脱塩化水素ゾーン中で鉄含有率50%以上の触媒と接触させることを含む。
本発明の方法に採用し得る触媒の例は、ステンレス鋼、例えばフェライト鋼及び/又はオーステナイト鋼を含む。本発明の方法において採用された触媒の鉄含有率は、少なくとも約50重量%、少なくとも約60重量%、少なくとも約70重量%、少なくとも約80重量%、少なくとも約90重量%、又は少なくとも約95重量%である。純粋な鉄が触媒として採用されてよい。
触媒は任意の形態、例えば流動床配置及び/又は固定床配置の形態で採用されてよい。これに加えて、又はこれの代わりに、触媒を含む脱塩化水素ゾーンの構成部材を用いてもよい。例えば、脱塩化水素ゾーンが管反応器内にある実施形態では、反応器管(又は少なくとも塩素化アルカンと接触するこれらの管の表面)は触媒から(部分的又は完全に)形成することができ、あるいは触媒から形成された触媒ゾーンを備えることができる。
本発明の蒸気相の脱塩化水素反応の操作中、触媒は失活されるようになってよい。したがって、このような実施形態では、本発明の方法は触媒回復工程を含む。この工程は、当業者に知られた任意の技術及び/又は設備を用いて、例えば酸化体、例えば酸素を豊富に含む空気及び/又は酸素を脱塩化水素ゾーン内に注入することによって達成することができる。このような工程の前に、脱塩化水素ゾーンを通る反応物質流が停止され、及び/又は脱塩化水素ゾーンがパージ(例えば窒素ガスで)されてよい。実施される場合には、触媒回復工程がひとたび完了したら、脱塩化水素ゾーンが再びパージ(例えば窒素ガスで)されてよく、及び/又は脱塩化水素ゾーン内への反応物質の流入を再開することができる。
脱塩化水素工程が蒸気相で行われる実施形態では、脱塩化水素ゾーンから抽出された反応混合物は典型的には蒸気相である。これらの高温生成ガスは、塩素化有機化合物を液体形態で得るために、当業者に知られた任意の技術及び/又は設備を用いて凝縮されてよい。例えば高温反応混合物は間接冷却法、急冷(例えばスプレーノズルを使用する)、直接冷却法、又はこれに類するものによって冷却することができる。
反応混合物から塩素化有機化合物を凝縮するためにガスを冷却したら、塩化水素ガスを抽出することができ、これは上流側又は下流側のプロセスにおいて任意に使用することができる。下流側での使用の一例は、グリセロールを塩化水素処理してモノクロロヒドリン又はジクロロヒドリンを形成し、続いてエピクロロヒドリン、及びエポキシをもたらすことを目的とするものである。
脱塩化水素工程が気相で行われるか液相で行われるかとは無関係に、目的の塩素化アルケンと未反応塩素化アルカンとを含む塩素化有機物の混合物、並びに不純物は、本明細書中で論じられる1つ又は2つ以上の脱塩化水素後の処理工程(1つ又は2つ以上の蒸留及び/又は水性処理工程を含む)を施して、純粋な塩素化アルケン、例えば1,1,3−トリクロロプロペン、を得るようにしてもよい。
本発明の方法において、当業者に知られているいかなるタイプの反応器も採用されてよい。脱塩化水素ゾーンを提供するために使用することができる反応器の具体例は塔反応器、管状反応器、気泡塔反応器、プラグフロー反応器、及び連続攪拌型タンク反応器である。
本発明の方法は、単一の脱塩化水素ゾーン又は複数の脱塩化水素ゾーン内で実施されてよい。複数の脱塩化水素ゾーンが採用される場合、これらは順番に(すなわち反応混合物が多数の脱塩化水素ゾーンに沿って移されるように)、及び/又は並行して、操作されてよい。
複数の脱塩化水素ゾーンが任意にカスケード様式で採用される本発明の実施形態では、これらのゾーンは同じ又は異なる反応器内にあってよい。例えば複数の(例えば1,2,3,4,5又は6つ以上)の脱塩化水素ゾーンが採用される場合、これらは複数の(例えば1,2,3,4,5又は6つ以上)の反応器(例えば連続攪拌型タンク反応器)内に設けられてよい。これらの反応器はそれぞれ、最適化された操作条件、例えば温度、滞留時間、を有するように最適化されてよい。
一つの実施形態では、複数の脱塩化水素ゾーンは、本発明の方法において採用することができる蒸留塔内に存在してよい。このような実施形態において、脱塩化水素は、例えば脱塩化水素が蒸留塔内のトレイ上又は塔内に設けられたパッキング上で行われる場合には、反応蒸留によって達成されてよい。反応蒸留が実施される実施形態では、蒸留塔は、アルケンがアルカンから分離されるストリッピングゾーンを含む。ストリッピングゾーンは液体供給部の下方に配置されてよい。
本発明の方法において実施される脱塩化水素反応から得ることができる反応混合物の成分(例えば塩素化アルケン、塩化水素、及び/又は出発材料)は、ある特定の材料と不都合に相互作用し得ることが見出された。したがって、本発明の実施形態の場合、反応混合物と接触する脱塩化水素ゾーン部分は、鉄含有率が約20%以下、約10%以下、又は約5%以下であってよく、及び/又は非金属材料、例えばエナメル、ガラス、(例えばフェノール樹脂で含浸された)含浸グラファイト、炭化ケイ素、及び/又はプラスチック材料、例えばポリテトラフルオロエチレン、ペルフルオロアルコキシ及び/又はポリビニリデンフルオリドから形成されてよい。
本発明のいくつかの実施形態では、本発明の方法に採用された全ての設備の表面であって塩素化アルケンが接触する表面は、上記のような適宜の材料から形成される。1つの考えられ得る例外は、本発明の方法に採用された装置の表面の1つ又は2つ以上の領域が、触媒として機能するように選択された金属材料から形成されることである。
発明者はまた、ある特定の動作条件下で、本発明の方法において使用された反応物質、並びにこれらの方法において形成された化合物を、空気、水蒸気及び/又は水を含む酸素及び/又は湿分の源に暴露することにより、望まれない不純物が形成されるおそれがあることを見出した。したがって、本発明の実施形態において、脱塩化水素及び/又は蒸留は不活性雰囲気中で、例えば酸素の不存在において行われてよい。
本発明の方法において採用される塩素化アルカンは、当業者に知られている任意の技術を用いて脱塩化水素ゾーン内へ供給されてよい。塩素化アルカンはC2−6アルカン、例えばクロロエタン、クロロプロパン、又はクロロブタンであってよい。本発明の方法において採用されてよい塩素化アルカンの一例は、1,1,1,3−テトラクロロプロパン、1,1,2,2−テトラクロロプロパン、1,1,2,3−テトラクロロプロパン、1,2,2,3−テトラクロロプロパン、1,1,1,2−テトラクロロプロパン、1,1,2−トリクロロプロパン、1,2,2−トリクロロプロパン、1,2,3−トリクロロプロパン、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン、1,1,2,3,3−ペンタクロロプロパン、1,1,1,2,2−ペンタクロロプロパン、1,1,2,2,3−ペンタクロロプロパン、1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン、又は式CX−R又はCX−R{a=0〜3、b=0〜3、X及びYは同じ又は異なるハロゲン(例えば塩素、フッ素、臭素、ヨウ素)であり、そしてRは置換型又は無置換型C2−5アルキルである}を有する任意の塩素化アルカンであってよい。
本発明の方法における出発材料として使用される塩素化アルカンは高い純度を有することが好ましい。
本発明の実施形態において、塩素化アルカンの純度レベルは、少なくとも約95%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約98.5%、少なくとも約99%、又は少なくとも約99.5%である。
複数の実施形態において、塩素化アルカンは約1000ppm以下、約500ppm以下、約250ppm以下、約100ppm以下の塩素化アルカン不純物を含有する。アルカン不純物は例えば、塩素化アルカン出発材料及び/又は目的の塩素化アルケンの沸点に等しいか又はそれよりも高い沸点を有するアルカン、及び/又は反応条件において脱塩化水素されることにより塩素化アルケン不純物を生成するアルカンであり、前記塩素化アルケン不純物は、例えば、目的のアルケンから10℃以内の沸点を有するアルケン、塩素化アルカン出発材料に等しいか又はそれよりも高い沸点を有するアルケン、及び/又は目的の塩素化アルケンの異性体であるアルケンである。
さらなる又は別の実施形態では、塩素化アルカンは約1000ppm以下、約500ppm以下、約250ppm以下、約100ppm以下の塩素化アルケン不純物を含有する。塩素化アルケン不純物は、例えば、目的のアルケンから10℃以内の沸点を有するアルケン、塩素化アルカン出発材料に等しいか又はそれよりも高い沸点を有するアルケン、及び/又は目的の塩素化アルケンの異性体であるアルケンである。
これに加えて、又はこれの代わりに、塩素化アルカンは約1000ppm以下、約500ppm以下、約200ppm以下、約100ppm以下、約50ppm以下、約20ppm以下、約10ppm以下のテトラクロロエテン、テトラクロロプロパン、及び/又はテトラクロロペンタンを含む。
高純度塩素化アルカンの製造方法は英国特許出願第1418346.1号明細書、及びチェコ国特許出願第PV2014−705号明細書に開示されている。上記明細書の内容は参照することにより本明細書中に援用される。これらの方法の生成物は有利には、
約2000ppm未満、約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満、又は約100ppm未満の塩素化アルカン不純物(すなわち塩素化アルケン出発材料以外の塩素化アルカン化合物)、
約2000ppm未満、約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満、又は約100ppm未満の塩素化アルケン不純物(すなわち塩素化アルケン目的化合物以外の塩素化アルケン化合物)、
約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満、約100ppm未満、約50ppm未満、又は約20ppm未満の水、
約2000ppm未満、約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満、又は約100ppm未満の酸素化有機化合物、
約2000ppm未満、約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満、又は約100ppm未満の臭素化化合物、及び/又は
約500ppm未満、約200ppm未満、約100ppm未満、約50ppm未満、又は約20ppm未満の金属、
を含む。
本発明の方法における出発材料として使用される塩素化アルカン材料は、上記不純物プロフィールを有する組成で提供されてよい。
本明細書中に開示された方法の発明者は、本発明の実施形態において、一定の不純物、例えばヘキサクロロエタン及び/又はより高級なアルカン、例えば1,3,3,5−テトラクロロペンタン(これは(塩素化アルカン出発材料が1,1,1,3−テトラクロロプロパンである場合)工業規模の供給量の塩素化アルカン(例えば1,1,1,3−テトラクロロプロパン)中に存在し得る)のようなテトラクロロペンタンなどのクロロペンタン類等が、脱塩化水素反応プロセスを深刻に遅らせるおそれがあることを見いだした。
したがって、このような実施形態では、所望のハロアルケンへの効率的な転化がより低い温度で達成されるように、このような高級ハロアルカン不純物の量が低減された、より純度の高い出発ハロアルカンが好ましい場合がある。
塩素化アルケンはC2−6アルケン、例えばクロロエテン、クロロプロペン、又はクロロブテンであってよい。本発明の方法において製造することができる塩素化アルケンの一例は、1,1,3−トリクロロプロペン(1240za)、1,1,3,3−テトラクロロプロペン(1230za)、1,1,2,3−テトラクロロプロペン(1230xa)、2,2,2,3−テトラクロロプロペン(1230xf)、3,3,3−トリクロロプロペン、2,3,3,3−トリクロロプロペン、及び式CX−R{X及びYは同じ又は異なるハロゲン(例えばフッ素又は塩素)であり、c=0〜2、dは0〜2、そしてRは置換型又は無置換型C2−5アルキルである}を有する塩素化アルケンである。
本発明の方法の利点の1つは、これらが、目標とする塩素化アルケンの製造を高い異性体選択性とともに可能にすることである。本発明の実施形態では、塩素化アルケン生成物は、少なくとも約95%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、少なくとも約99.5%、少なくとも約99.7%、少なくとも約99.8%、少なくとも約99.9%で製造される。
塩素化アルカン及び/又は触媒の脱塩化水素ゾーン内への供給は、反応混合物の抽出と同様に連続的又は間欠的であってよい。
本発明の方法の利点の一つは、脱塩化水素ゾーンが連続プロセスで操作されるかバッチプロセスで操作されるかとは無関係に所望の結果が得られることである。「連続プロセス」及び「バッチプロセス」という用語は、当業者には明らかである。
本発明のさらなる利点は、高純度塩素化アルケン化合物がアルカリ性水酸化物を使用することなしに製造されるのを可能にすることである。したがって、本発明の実施形態では、脱塩化水素ゾーンにアルカリ性水酸化物は添加されず、及び/又は、脱塩化水素ゾーン内に存在する反応媒体はアルカリ性水酸化物を含まない。
上記のように、本発明の実施形態では、塩素化アルカン、塩素化アルケン、及び触媒を含む反応混合物は、脱塩化水素ゾーンから抽出されてよい。反応混合物はさらなる処理工程を施されてよい。
このような実施形態では、このような処理工程は水性洗浄工程であってよい。この工程では、抽出済混合物は任意に濾過され、次いで水性処理ゾーン内に供給される。この工程は、混合物からの塩素化アルケンの抽出の前又は後で行われてよい。
混合物は、水性処理ゾーン内で水性媒体と接触させられる。水性媒体は触媒を失活するのに役立つ。混合物は、水性処理ゾーン内で酸と、例えば、硫酸、リン酸、及び/又は塩酸などの無機酸と接触させられてよい。酸は純粋であってよく、あるいは希酸であってもよい。希酸が使用される場合、これは水性媒体を提供することができる。水性媒体のpH値は二相混合物の効果的な分離を可能にするのに充分に低くあるべきである。
水性処理工程は、除去しなければ問題をはらむある特定のクラスの不純物、特に酸素化不純物を、混合物から除去する有利な効果を有する。
このような実施形態では、触媒失活は短い接触時間だけで、例えば約5分間、約10分間、約20分間、又は約30分間だけで達成することができ、この場合、低温の水が必要とされる。塩素化、酸素化不純物の加水分解及び抽出のために、水との接触時間はより長くてよく、例えば最大約1時間、約2時間、約5時間、若しくは約10時間であってよく、及び/又は、約50℃以下、約40℃以下、若しくは約30℃以下の温度であってよい。
したがって、さらなる態様によれば、塩素化アルケン、酸素化有機不純物、及び任意に触媒、及び/又は塩素化アルカンを含む混合物から、酸素化不純物を除去する方法であって、混合物を水性媒体と接触させて二相混合物を形成し、そしてその二相混合物から有機相を抽出することを含む、方法が提供される。本発明の実施形態では、本発明のこの態様の混合物は、脱塩化水素ゾーンから抽出された混合物であるか、又は当該混合物を含むものである。
希酸が採用される場合、これはさらに、混合物が接触させられる水性媒体を追加的に提供することができる。これに加えて、又はこれの代わりに、水性媒体は水(蒸気を含む任意の形態を成す)を含んでもよい。この水は水性処理ゾーン内に別個に添加されてよい。
酸が水性処理ゾーン内へ添加される実施形態においては、これはゾーン内に存在する混合物のpHを約6以下、約5以下、約4以下、約2以下、又は約1以下まで低減することが好ましい。
当業者に知られた任意の技術又は設備を用いて、水性処理ゾーン内に形成された混合物から、所定の比率(少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、又は少なくとも約80%)の未反応アルカン及び/又は塩素化アルケンを抽出することができる。
例えば、混合物が部分的又は全体的に気体形態を成す実施形態の場合、例えば水性処理ゾーン内の運転温度に基づき、及び/又は水性媒体として蒸気を添加することによって、気体状混合物に蒸留を施すことができる。このような実施形態では、蒸留装置は、水性処理ゾーンと流体連通して(任意にこのゾーンと結合されて)よく、あるいは水性処理ゾーンから離されていてよい。
これに加えて、又はこれの代わりに、混合物が部分的又は全体的に気体形態を成す場合、その混合物は水性処理ゾーンから抽出し、そして蒸留を施すことができる。
このような蒸留工程が行われる実施形態の場合、塩素化アルカン出発材料及び/又は塩素化アルケン生成物を含む(そして任意に塩素化アルカン出発材料及び/又は塩素化アルケン生成物リッチである)流を得ることができる。
水性処理ゾーン内へ供給された混合物から抽出された塩素化アルカン及び/又は塩素化アルケンを再循環して、出発材料として使用するために脱塩化水素ゾーンへ戻すことができる。
水相と有機相とを含む二相混合物を、水性媒体及び大部分が有機の混合物の両方の存在の結果として、水性処理ゾーン内に(又はある特定の実施形態ではこのゾーンから離して)形成することができる。
二相混合物が形成されるこのような実施形態では、有機相は、当業者に知られた相分離技術及び/又は設備を用いて二相混合物から抽出されてよい。二相混合物が水性処理ゾーン内に形成される場合、有機相は、水性処理ゾーンから当該相を連続して抽出することによって水相から分離することができる。混合物から除去された不純物を含有する水相をさらに処理することができる。
相分離効率を最大化し、ひいては二相混合物からのその相の抽出を容易にするために、当業者に知られた技術及び/又は設備を用いて、間欠的又は連続的に、ハロアルカン抽出剤及び/又は相分離増強剤(例えば塩素化アルカン出発材料及び/又は種々のアルコール及び/又はケトン)を水性処理ゾーンに添加することができる。塩素化アルカン出発材料の使用は、この化合物がプロセスの一部であり、ひいては特定の分離工程を用いて除去を必要としないので、好ましい。
任意に、例えば、反応混合物中に存在する塩素化アルケン及び塩素化アルカンとは充分に異なる沸点を有する極性アルコール及び/又はケトンなどの相分離増強剤を採用することができる。沸点の差は少なくとも約20℃、少なくとも約30℃、少なくとも約40℃、少なくとも約50℃、又は少なくとも約60℃であるべきである。採用することができる相分離増強剤の例は、例えばアセトンなどの脂肪族ケトン、及び脂肪族アルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、を含む。
本発明の実施形態では、抽出された有機相は、次いで蒸留工程を施されてよい。蒸留工程において、目的の塩素化アルケン及び/又は未反応塩素化アルカンの流れ(及び任意にはこれらのリッチ流れ)が蒸留により取り除かれる。このような工程は、反応混合物からの塩素化アルケンの抽出が水性処理の前に行われるか否かとは無関係に実施されてよい。未反応塩素化アルカン流れは再循環されて脱塩化水素ゾーンに戻されてよい。蒸留装置から重質最終残留物が蒸留装置から抽出され、任意に濾過され、そして焼却され、及び/又は高温塩素化分解を施されてよい。
塩素化アルカン及び/又は塩素化アルケン、並びにハロアルカン抽出剤、及び/又は相分離増強剤を含む有機相は、脱塩化水素ゾーンへ戻されてよい。このような実施形態において、(使用するならば)相分離増強剤又は有機相の他の成分を除去する蒸留工程が行われてよい。
このようなアルケンを下流側の用途、例えば塩素化処理において使用するためには、このような塩素化アルケンの水含有率を低減することが見い出された。したがって、本発明の実施形態では、得られた塩素化アルケン生成物が約500ppm未満、約250ppm以下、約100ppm以下、又は約50ppm以下の水を含むように、プロセス条件が制御される。
本明細書中に提供された開示内容から判るように、本発明の発明的な方法は、任意に他のプロセスと組み合わせて、完全連続モードで統合プロセスとして実施することができる。本発明のプロセス工程は、高純度中間体に転化される出発化合物を採用することができる。これらの中間体はそれ自体さらに処理されて所要の目標化合物になる。これらの化合物は、種々の下流側プロセス、例えばフッ化水素転化における原材料として採用されるのに必要な純度を有する。
本発明の方法は、高純度の目標化合物を得るように生成物純度レベルを制御するのを可能にする。本方法は、高収率、高選択性、及び高効率のバランスをとるので有利である。このようなバランスをとることは、特に連続プロセスにおいて大変難しいことである。本発明の方法は、高純度塩素化アルケン化合物が工業規模で経済的に製造されるのを可能にする。これらの化合物の種々の不純物のレベルは極めて低い。
本発明の方法は、当業者によく知られたシンプル且つ容易な技術及び設備を用いて高純度塩素化アルケンが製造されるのを可能にするので、特に有利である。
本発明の実施形態では、本発明の方法を用いて、
約95%以上、約97%以上、約99%以上、約99.2%以上、約99.5%以上、又は約99.7%以上の塩素化アルケン、
約50000ppm未満、約20000ppm未満、約10000ppm未満、約5000ppm未満、約2000ppm未満、約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満、又は約100ppm未満の塩素化アルカン出発材料、
約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満、又は約100ppm未満の塩素化C5−6アルカン不純物、
約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満、又は約100ppm未満の塩素化アルケン不純物(すなわち目的の化合物以外の塩素化アルケン)、
約500ppm未満、約200ppm未満、約100ppm未満、約50ppm未満、又は約20ppm未満、約10ppm未満、又は約5ppm未満の金属、
約1000ppm未満、約500ppm未満、約250ppm未満、又は約100ppm未満の酸素化有機化合物、及び/又は
約500ppm未満、約250ppm以下、約100ppm以下、又は約50ppm以下の水、
を含む高純度塩素化アルケンを製造することができる。
本発明の実施形態において、本発明の組成物に安定剤を添加することができる。採用し得る安定剤の例は、ヒドロキシル化芳香族化合物、アミン、チアジンなどを含む。安定剤は採用される場合、典型的には約1〜約100ppm又は約2〜約50ppmの量で採用される。このような安定剤の使用は、本発明の塩素化アルケン組成物が酸素含有環境において保存されるのを可能にするので有利である。
加えて、上記組成物が有する不純物プロフィールは、これらの組成物を、フルオロアルカン又はフルオロアルケン、及び/又はクロロフッ素化アルケン、又は塩素化アルケンの合成における出発材料として使用するのに特によく適したものにする。したがって、本発明のさらなる態様によれば、上記フルオロアルカン/フルオロアルケン及び/又はクロロフルオロアルケン、又はクロロアルケンの合成における原材料として、上記1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン組成物が使用される。
前述のように、従来技術は、このような高い純度又は高い異性体選択性を有する塩素化アルケンを製造する方法を開示又は教示していない。したがって、本発明のさらなる態様によれば、上記の高純度塩素化アルケン組成物が提供される。
本発明の塩素化アルケンを含む組成物の不純物プロフィールは、高性能毛管カラムを使用したガスクロマトグラフィを含むコンベンショナルな分析法を用いて判定することができる。
誤解を避けるために述べるならば、圧力単位(kPa)に言及する場合、これは識別された絶対値である。値がパーセンテージとして表される場合、これらは特に明記しない限り重量パーセンテージである。
脱塩化水素工程(1,1,1,3−テトラクロロプロパンの1,1,3−トリクロロプロペンへの転化)の図である。 水性処理工程の図である。 蒸留工程の図である。
1 1,1,1,3−テトラクロロプロパン供給流れ
2 塩化第二鉄供給流れ
3 連続攪拌型タンク反応器
4 反応残留物
5 フィルタ
6 濾過ケーキ
7 濾液
8 蒸留塔
9 1,1,3−トリクロロプロペンリッチ流れ
10 パーシャルコンデンサ
11 気体状塩化水素流れ
12 1,1,3−トリクロロプロペンリッチ流れ
13 還流ディバイダ
14 還流流れ
15 精製済1,1,3−トリクロロプロペン生成物流れ
101 水性塩酸供給流れ
102 残留物供給流れ (図1の反応器から、流れ4)
103 ハロアルカン抽出剤供給流れ
104
105 洗浄タンク
106 洗浄タンク出口
107 フィルタ
108 濾過ケーキ
109 有機相流れ
110 水相流れ
111 蒸留塔
112 塩素化アルカン流れ
113 凝縮器
114 中間ライン
115 還流液−液分離器
116 水相(還流)流れ
117 有機相 (1,1,1,3−テトラクロロプロパン)流れ
201 有機相供給流れ
202 蒸留ボイラ
203 重質最終残留物流れ
204 フィルタ
205 濾過ケーキ
206 液体残留物
207 蒸留塔
208 蒸留物流れ
209 凝縮器
210 中間ライン
211 還流ディバイダ
212 還流流れ
213.1 1,1,3−トリクロロプロペン留分
213.2 1,1,1,3−テトラクロロプロパン留分

使用される略語
TeCPa=1,1,1,3−テトラクロロプロパン
TCPe=トリクロロプロペン
例1 1,1,1,3−テトラクロロプロパンからの1,1,3−トリクロロプロペンの製造
図1は、本発明の方法を実施するために使用することができるシステムを示す概略図である。1,1,1,3−テトラクロロプロパン及び塩化第二鉄を、ライン1及び2を介して連続攪拌型タンク反応器3内に添加する。塩化第二鉄の添加は、制御された供給を用いて行われる。連続攪拌型タンク反応器は140〜145℃の温度及び大気圧で操作される。
1,1,1,3−テトラクロロプロパンを連続攪拌型タンク反応器3内で1,1,3−トリクロロプロペンへ転化する。連続攪拌型タンク反応器は脱塩化水素ゾーンの役割を果たす。反応器3内の反応混合物の滞留時間を制限することにより、1,1,1,3−テトラクロロプロパンの1,1,3−トリクロロプロペンへの過剰な転化を防止し、したがって1,1,3−トリクロロプロペン:1,1,1,3−テトラクロロプロパンのモル比は50:50を超えない。
蒸留塔8の使用を介して、反応混合物から所定の比率の1,1,3−トリクロロプロペンを抽出する。蒸留塔8の底部内へ反応混合物を供給し、そしてライン9を介して、1,1,3−トリクロロプロペンリッチ流れをオーバーヘッド蒸気として引き出す。ライン11を介して1,1,3−トリクロロプロペンリッチ流れから気体状塩化水素を抽出するために、パーシャルコンデンサ10が機能する。1,1,3−トリクロロプロペンリッチ流れは次いでライン12を介して還流ディバイダ13へ供給され、精製済1,1,3−トリクロロプロペンの流れがライン15を介して取り去られる。所定の比率の1,1,3−トリクロロプロペンリッチ流れがライン14を介して蒸留塔8へ還流として戻される。
触媒と、未反応1,1,1,3−テトラクロロプロパンと、制限された量の1,1,3−トリクロロプロペンとを含む混合物を、反応器3からライン4を介してフィルタ5へ抽出する。得られた濾過ケーキをライン6を介して抽出し、そして図2に示されているような水性処理のためにライン7を介して濾液を移す。
図2の場合、図1の反応器から来た混合物を、ライン102を介して、ストリッピングボイラを含む洗浄タンク105内へ供給する。より良好な液相分離効率のために、1,1,1,3−テトラクロロプロパン又は別のハロアルカン抽出剤を、ライン103を介して洗浄タンク内へ供給する。洗浄タンク105内へライン101を介して水性塩酸を供給する。
タンク105内で二相混合物を形成し、そして有機相をタンク105からライン106を介して抽出し、フィルター107を通し、そして図3に示されているようなさらなる処理のためにライン109を介して取り出す。残りの水相を、さらなる処理のためにライン110を介して抽出する。濾過ケーキを抽出する(108)。
洗浄タンク105内に存在する水層内に溶解された1,1,1,3−テトラクロロプロパン及び1,1,3−トリクロロプロペンを、蒸気蒸発塔111によってそこから抽出する。ストリッピング済の塩素化アルカンを蒸留塔111から凝縮器113へライン112を介して移し、次いでライン114を介して還流液−液分離器115へ移す。そこで2つの層が形成される。次いでストリッピング済の1,1,1,3−テトラクロロプロパンをライン117を介して有機相として取り去り、そして水相を、ライン116を介して還流して蒸留塔へ戻す。
図3を参照すると、有機相はライン201を介して蒸留ボイラ202内へ供給される。蒸留塔207、凝縮器209、及び還流ディバイダ211を使用して、形成済混合物から1,1,1,3−テトラクロロプロパン及び1,1,3−トリクロロプロペンを抽出することにより、1,1,3−トリクロロプロペン213.1及び1,1,1,3−テトラクロロプロパン213.2の留分を製造する。1,1,1,3−テトラクロロプロパン留分は再循環されて脱塩化水素ゾーンへ戻されるのに対して、1,1,3−トリクロロプロペン留分は、塩素化アルケンを出発材料として採用する下流側の反応において使用するために貯蔵又は搬送される。
ボイラ202からライン203を介して重質最終残留物を抽出し、そして濾過する(204)。得られた濾過ケーキ及び液体残留物をそれぞれライン205及び206を介して抽出し、そして再循環又は処理する。
上記の装置・プロセス条件を用いて、平均毎時ローディング量63.1kg/hで、3563kgの1,1,1,3−テトラクロロプロパン(1113TeCPa、99.925%純度)を連続的に処理することにより、1,1,3−トリクロロプロペン(113TCPe)を製造した。例1に基づいて実施された、開示されたプロセスの基本パラメータは次の通りである。
Figure 2017531696
上記実施形態の精製済生成物の全不純物プロフィールが以下の表において示される。数字は、図1のライン15及び図3のライン213.1で得られた生成物に対応するプロフィールの加重平均として示されている。
Figure 2017531696
これから判るように、本発明の方法は、高純度塩素化アルケン材料を製造するように実施することができる。
例2−1,1,1,3−テトラクロロプロパンからの1,1,3−トリクロロプロパンの製造
この例は、特に明記される場合を除けば、上記例1において採用された装置及び技術を用いて実施された。連続攪拌型タンク反応器は約149℃の温度及び大気圧で操作された。反応器内の1,1,3−トリクロロプロペン:1,1,1,3−テトラクロロプロパンのモル比は30:70を超えないように制御された。上記の装置・プロセス条件を用いて、平均毎時ローディング量47.5kg/hで、1543.8kgの1,1,1,3−テトラクロロプロパン(1113TeCPa、99.901%純度)を連続的に処理することにより、1,1,3−トリクロロプロペン(113TCPe)を製造した。触媒をFeCl水溶液の形態で添加することにより、1113TeCPaに基づいて触媒含有率66ppmを提供した。例1に基づいて実施された、開示されたプロセスの基本パラメータは次の通りである。
Figure 2017531696
上記実施形態の精製済生成物の全不純物プロフィールが以下の表に示される。数字は、図1のライン15及び図3のライン213.1で得られた生成物に対応するプロフィールの加重平均として示されている。
Figure 2017531696
これから判るように、1,1,3−トリクロロプロペン:1,1,1,3−テトラクロロプロパンのモル比が30:70を超えないように、脱塩化水素反応が制御されると、本発明の方法は、極めて高い選択性及び高収率で、高純度塩素化アルケンを製造するように実施することができる。注目すべきなのは、3,3,3−トリクロロプロペンが微量しか形成されないことである。このことは、3,3,3−トリクロロプロペンが遊離した誘導(活性化)二重結合を有する、反応性の極めて高いオレフィン汚染物質であり、大きな問題をはらむ酸素化不純物の前駆体であり得るため、特に有利である。
例3 反応混合物中のアルケン:アルカン比
これらの例は、特に明記される場合を除けば、上記例1において採用された装置及び技術を用いて実施された。これらの試験のそれぞれにおいて、反応器(設備3)反応混合物(流れ7)内に存在する反応混合物中の1,1,3−トリクロロプロペン:1,1,1,3−テトラクロロプロパンの比がそれぞれの試験で異なるように、反応進行は制御された。調量される触媒FeCl3の量は、反応転化速度を約90%で維持するように制御された。反応混合物中の113TCPeの異なるレベルが、重質オリゴマー形成及び触媒失活に及ぼす影響は下記表に示されている。
Figure 2017531696
Figure 2017531696
Figure 2017531696
Figure 2017531696
この例から判るように、特定の装置及び技術が採用されると、出発材料に対する生成物のモル比を増大させる(反応混合物中の生成物の量を増大させる)ことは、重質オリゴマーの形成の増大に相応する。さらに、1,1,3−トリクロロプロペン濃度が高い場合には、触媒失活も観察される。
例4 生成物流体と種々の材料との適合性
三角ガラスフラスコに、純度>99%の純粋な蒸留済1,1,3−トリクロロプロペンを満たした。テスト構成材料試料を液中に浸し、そして系をプラスチック栓で閉じた。
トリクロロプロペンの試料をフラスコから定期的に取り出した。構成材料試料を追跡前後に秤量した。液体の温度は周囲実験室条件、約25℃であった。
トリクロロプロペンの品質の主要な変化が純度変化率%として下記表に示されている。
Figure 2017531696
第2の一連の試験において、温度が制御されたバッククーラー・油加熱浴を備えた三角ガラスフラスコに、純度>99%の純粋な蒸留済1,1,3−トリクロロプロペンを満たした。テスト構成材料試料を液中に浸し、そしてプラスチック栓を使用して系を部分的に閉じた。トリクロロプロペンの試料をフラスコから定期的に取り出した。構成材料試料を追跡前後に秤量した。液体の温度は100℃に制御された。液体トリクロロプロペンの品質の主要な変化が下記表に示されている。
Figure 2017531696
Figure 2017531696
この例から判るように、炭素鋼は1,1,3−トリクロロプロペンから成るプロセス流体と適合性がないので、炭素鋼の使用は困難であると考えられる。ステンレス鋼及びチタンも性能が低く、結果として多量のオリゴマーが形成される。テストされた金属材料からは、Ni合金ハステロイC−276は優れた結果をもたらす。また、ガラス(又はエナメル)、及び他の非金属材料、例えばフェノール樹脂含浸グラファイトもより適していることが判る。
例5 問題をはらむ塩素化アルケン不純物
塩素化アルケンが出発材料として使用される多くの下流側反応において、酸素化有機不純物の存在が問題をはらむ。この例は、ある特定の不純物がこのような化合物を形成する驚くべき傾向を有することを実証する。
攪拌器、温度計、バッククーラー、供給・排出ネック、及び冷却浴を備えた4首ガラスフラスコに水を満たし、そして塩素ガスを水中に発泡させることにより次亜塩素酸の希釈液を製造した。適量の塩素を水中に導入したら、純度98.9%の1,1,3−トリクロロプロペンを含む例1のプロセスから得られた原材料を、90分間にわたって調製済の次亜塩素酸溶液中にゆっくりと滴下し、そして冷却した。圧力は大気圧であり、そして温度は20℃に近かった。同じ手順を純度68.1%の3,3,3−トリクロロプロペンで繰り返した。反応の完了後、系は二相混合物を形成した。有機相(生成物)を抽出し、次いでGCによって分析した。その結果を下記表に示す。
Figure 2017531696
この例から判るように、1,1,3−トリクロロプロペンは水中の塩素と反応することにより、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンを生成するのに対して、3,3,3−トリクロロプロペンは著しく反応して、対応するテトラクロロヒドリン、特に1,1,1,3−テトラクロロプロパン−2−オールを生成する。
換言すれば、1,1,3−トリクロロプロペンは、商業的利益を有する生成物を生成するように反応するのに対して、3,3,3−トリクロロプロペンは、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンから容易に除去することができない酸素化不純物を生成するように反応する。上記例1及び2から明らかなように、本発明の方法は、微量の3,3,3−トリクロロプロペンしか形成しない1,1,3−トリクロロプロペンを製造するように有利に採用することができる。

Claims (31)

  1. 脱塩化水素ゾーン内で塩素化アルカンと触媒とを接触させて、塩素化アルカンと塩素化アルケンとを含む液体反応混合物を製造すること、及び、前記反応混合物から塩素化アルケンを抽出することを含む、塩素化アルケンを調製する方法であって、前記脱塩化水素ゾーン内に存在する反応混合物中の塩素化アルケンの濃度が、塩素化アルケン:塩素化アルカンのモル比が1:99〜50:50であるように制御される、塩素化アルケンを調製する方法。
  2. 前記反応混合物中の塩素化アルケン:塩素化アルカンのモル比が5:95〜50:50である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記反応混合物中の塩素化アルケン:塩素化アルカンのモル比が5:95〜30:70である、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記脱塩化水素ゾーン内の触媒と接触させる前記塩素化アルカンの純度が約98.5%以上である、請求項1から4までのいずれか一項に記載の方法。
  5. 前記塩素化アルケンが、前記反応混合物から連続的に抽出される、請求項1から4までのいずれか一項に記載の方法。
  6. 前記反応混合物からの前記塩素化アルケンの抽出が蒸留によって達成される、請求項1から5までのいずれか一項に記載の方法。
  7. 前記塩素化アルケンが、前記脱塩化水素ゾーン内で生成された塩素化アルケンを含む気体状混合物から凝縮される、請求項1から6までのいずれか一項に記載の方法。
  8. 前記蒸留が、脱塩化水素ゾーンと流体連通する蒸留装置内で実施される、請求項7に記載の方法。
  9. 前記蒸留装置が前記脱塩化水素ゾーンに結合している、請求項8に記載の方法。
  10. 前記液体反応混合物が前記脱塩化水素ゾーンから抽出され、そして該脱塩化水素ゾーンから離れた装置を使用して蒸留を施される、請求項1から9までのいずれか一項に記載の方法。
  11. 前記蒸留物が、該蒸留物から抽出される不純物として、気体状塩酸を含む、請求項6から10までのいずれか一項に記載の方法。
  12. 前記脱塩化水素ゾーン内の運転温度が約70℃〜約250℃である、請求項1から11までのいずれか一項に記載の方法。
  13. 前記脱塩化水素ゾーン内の運転温度が約120℃〜約170℃である、請求項1から12までのいずれか一項に記載の方法。
  14. さらに、塩素化アルケン、触媒、及び塩素化アルカン出発材料を含む混合物を、水性処理ゾーン内で水性媒体と接触させることを含む、請求項1から13までのいずれか一項に記載の方法。
  15. 塩素化アルケン、酸素化不純物、及び任意に触媒、及び/又は塩素化アルカンを含む混合物から酸素化不純物を除去する方法であって、前記混合物を水性媒体と接触させて二相混合物を形成すること、及び、前記二相混合物から有機相を抽出すること、を含む方法。
  16. 前記混合物が、請求項15に記載の方法で脱塩化水素ゾーンから抽出された混合物を含む、請求項15に記載の方法。
  17. 水性処理ゾーン内の混合物のpHが、酸の添加後には約4以下である、請求項13から16までのいずれか一項に記載の方法。
  18. 前記混合物がハロアルカン抽出剤と接触させられる、請求項13から17までのいずれか一項に記載の方法。
  19. 水性処理ゾーン内で二相混合物が形成され、そして、塩素化アルカンと塩素化アルケンとを含む有機相が前記二相混合物から抽出される、請求項13から18までのいずれか一項に記載の方法。
  20. 前記有機相から塩素化アルケンが抽出される、請求項19に記載の方法。
  21. 触媒が金属鉄、塩化第一鉄、及び/又は塩化第二鉄を含む、請求項1から20までのいずれか一項に記載の方法。
  22. 塩素化アルケンが1,1,3−トリクロロプロペンである、請求項1から21までのいずれか一項に記載の方法。
  23. 前記塩素化アルカンが1,1,1,3−テトラクロロプロパンである、請求項1から22までのいずれか一項に記載の方法。
  24. 請求項1から23までのいずれか一項に記載の方法であって、前記方法が実施される装置における、当該装置の使用中に任意の塩素化アルケン含有混合物が接触する表面のすべてが、約20%以下、約10%以下、又は約5%以下の鉄含有量を有し、及び/又は、非金属材料、例えばエナメル、ガラス、(例えばフェノール樹脂で含浸された)含浸グラファイト、炭化ケイ素、及び/又はプラスチック材料、例えばポリテトラフルオロエチレン、ペルフルオロアルコキシ及び/又はポリビニリデンフルオリド、から形成される、方法。
  25. 請求項1から24までのいずれか一項に記載の方法から得ることができる塩素化アルケン組成物。
  26. 約95%以上、約97%以上、約99%以上、約99.2%以上、約99.5%以上、又は約99.7%以上の塩素化アルケン、
    約50000ppm未満、約20000ppm未満、約10000ppm未満、約5000ppm未満、約2000ppm未満、約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満、又は約100ppm未満の塩素化アルカン出発材料、
    約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満、又は約100ppm未満の塩素化C5−6アルカン不純物、
    約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満、又は約100ppm未満の塩素化アルケン不純物(すなわち目的の化合物以外の塩素化アルケン)、
    約1000ppm未満、約500ppm未満、約250ppm未満、又は約100ppm未満の酸素化有機化合物、
    約500ppm未満、約250ppm以下、約100ppm以下、又は約50ppm以下の水、及び/又は
    約500ppm未満、約200ppm未満、約100ppm未満、約50ppm未満、約20ppm未満、約10ppm未満、又は約5ppm未満の金属、
    を含む、請求項25に記載の組成物。
  27. 約95%以上、約97%以上、約99%以上、約99.2%以上、約99.5%以上、又は約99.7%以上の塩素化アルケン、
    約50000ppm未満、約20000ppm未満、約10000ppm未満、約5000ppm未満、約2000ppm未満、約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満、又は約100ppm未満の塩素化アルカン出発材料、
    約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満、又は約100ppm未満の塩素化C5−6アルカン不純物、
    約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満、又は約100ppm未満の塩素化アルケン不純物(すなわち目的の化合物以外の塩素化アルケン)、
    約1000ppm未満、約500ppm未満、約250ppm未満、又は約100ppm未満の酸素化有機化合物、
    約500ppm未満、約250ppm未満、約100ppm未満、又は約50ppm未満の水、及び/又は
    約500ppm未満、約200ppm未満、約100ppm未満、約50ppm未満、約20ppm未満、約10ppm未満、又は約5ppm未満の金属、
    を含む、塩素化アルケン組成物。
  28. 前記塩素化アルケンが1,1,3−トリクロロプロペンである、請求項25から27までのいずれか一項に記載の組成物。
  29. 約1000ppm未満、約500ppm未満、約200ppm未満、又は約100ppm未満の3,3,3−トリクロロプロペンを含む、請求項28に記載の組成物。
  30. ハロゲン化アルケン又はハロゲン化アルカンの合成時の供給原料としての、請求項25から29までのいずれか一項に記載の組成物の使用。
  31. ハロゲン化アルケン又はハロゲン化アルカンが、フッ素化若しくは塩素化アルケンであるか、又は、フッ素化若しくは塩素化アルカンである、請求項30に記載の使用。
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