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JP2017138462A - トナー - Google Patents

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JP2017138462A JP2016018906A JP2016018906A JP2017138462A JP 2017138462 A JP2017138462 A JP 2017138462A JP 2016018906 A JP2016018906 A JP 2016018906A JP 2016018906 A JP2016018906 A JP 2016018906A JP 2017138462 A JP2017138462 A JP 2017138462A
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施老 黒木
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Koji Abe
浩次 阿部
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Toshihiko Katakura
俊彦 片倉
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Akane Masumoto
茜 桝本
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Abstract

【課題】従来以上に転写性を改善するトナーを提供する。【解決手段】有機ケイ素重合体を含有する表面層を有するトナー粒子を含むトナーであって、有機ケイ素重合体は、特定の部分構造を有し、X線光電子分光分析において、トナー粒子表面のケイ素原子の濃度dSiが1.0原子%以上22.2原子%以下であり、トナー粒子の走査型プローブ顕微鏡で測定される粗さ曲線において、算術平均粗さRa(nm)が10nm以上300nm以下であり、Raの標準偏差をσRa(nm)としたとき、σRa/Raが0.60以下であり、粗さ曲線において、トナー粒子の粗さ曲線要素の平均長さRSm(nm)が20nm以上500nm以下であり、RSmの標準偏差をσRSm(nm)としたとき、σRSm/RSmが0.60以下であることを特徴とするトナー。【選択図】なし

Description

本発明は、電子写真及び静電印刷等の画像形成方法に用いられる静電荷像を現像するためのトナーに関する。
トナーを使用する電子写真方式の代表機器として、レーザープリンターや複写機が挙げられる。近年は急激にカラー化が進み、一層の高画質化が求められている。トナーを使用する電子写真の課題として、転写性の改善が挙げられる。静電荷像担持体である感光体上に形成されたトナー像が転写工程で転写材に転写される際、感光体上にトナーが残る転写残トナーが生じる場合がある。その場合、転写残トナーは、クリーニング工程でクリーニングされ、廃トナー容器に蓄えられる。しかし、クリーニング工程を行うクリーニング装置を具備するため、装置が必然的に大きくなり、装置の小型化を目指すにあたりネックとなっている。また、クリーニング工程を有さず、現像と同時に転写残トナーを回収するシステムにおいては、十分なクリーニング性と十分な転写性を、長期的に満足する必要もあり、トナー粒子の表面形状を極めて高く制御する必要があるといえる。
また、転写残トナーの量は、転写電流に対して変化し、一般的に転写残トナー量が最少となる最適な転写電流の範囲が存在する。転写電流が最適電流範囲よりも低い場合には、トナーと感光体との引力に対して転写電界が小さいため、トナーが移動せず転写残トナー量は多くなる。一方、転写電流が最適電流範囲よりも大きい場合には、トナー層の中で放電が発生し、転写電界が却って弱くなるために、転写残トナーは増加する。したがって、転写電流は、最適電流範囲の中で最も低いところに設定することが望ましい。
しかしながら、最適電流範囲はトナーの帯電量によっても変化する。特に、高湿度下において、長時間プリントしない場合、帯電量の減少やトナーと感光体との引力変化が起こり易いため、転写電流の最適範囲が変化しやすい。この変化に対応するために、温湿度センサー等の環境検知手段から転写電流を決定する方法があるが、各種制御装置の複雑化や大型化が懸念される。そのため、高温高湿下においても帯電量が変化せず、広い転写電流範囲で転写性の良好なトナーが求められている。
トナーの転写性を向上させるためには、静電荷像担持体に対するトナーの付着力を下げることが有効であると一般的に知られている。トナーの付着力を下げる手段として、外添剤をトナー粒子表面に付着させることが挙げられる。外添剤の代表例はシリカ微粒子である。シリカ微粒子は、二酸化ケイ素によって構成され、化学構造はSiOである。そこで、トナー粒子表面をケイ素化合物で均一に覆うことができれば、これまで以上にトナーの付着力を下げることができるのではないかと考えた。さらに、トナー粒子表面を覆うケイ素化合物が、耐久後も劣化することなくトナーを被覆していれば、付着力を下げる効果を持続するトナーが得られるものと考え、検討を続けてきた。
トナー粒子表面をケイ素化合物で覆う技術思想の例として、反応系にシランカップリング剤を添加することを特徴とする重合トナーの製造方法が開示されている(特許文献1参照)。しかし、この方法では、トナー表面へのシラン化合物の析出量が不十分であるため、大きな転写性向上効果を得ることはできなかった。あるいは、表面部に連続した薄膜の形で施されたケイ素化合物を含む重合トナーが開示されている(特許文献2参照)。しかしながら、特に低温低湿下においては、トナーがチャージアップすることで、静電荷像担持体上に留まり続けてしまい、その結果トナーの劣化が促進され、耐久中に付着力が上昇し転写性が低下する場合がある。また、劣化したトナーは、帯電量が不十分な粒や、設計思想と逆極性に帯電した粒(帯電量反転成分)が生じやすく、転写ラチチュードが狭くなってしまう場合がある。
トナーの転写効率を上げる別の手法として、大粒径の球状外添剤を添加することが提案されている(特許文献3参照)。本提案は、大粒径外添剤を添加し、トナーと静電荷像担持体との物理的な付着力を引き下げ、転写効率を向上させようとしたものである。転写効率を向上する方法として有効な技術ではあるが、長期にわたる画像出力によって、球状大粒径外添剤はトナー表面の凹部に移動していくことがある。大粒径外添剤の粒径と凹部の深さによっては、凹部に移動した大粒径外添剤が、もはやスペーサーとして機能できなくなる。そのため、期待された転写効率向上の効果が得られなくなることがあった。逆に、表面が平滑なトナーの場合には、外添剤とトナー粒子との付着力が不足し、大粒径外添剤がトナーから遊離することがある。そのため、長期にわたる画像出力によって流動性や現像性が大きく変動し、さらに、遊離した大粒径外添剤が飛散することがあった。本提案では、積極的にトナー粒子の表面凹凸を制御しようとしていない。大粒経外添剤を有効に機能させるためには、外添剤にあわせてトナー表面形状を制御することが重要となる。
一方、トナーの表面形状を規定した提案として、トナー表面の凹凸周期を走査型プローブ顕微鏡(SPM)により測定して、トナーの表面形状を規定した提案がある(特許文献4参照)。
特開平03−089361号公報 特開平09−179341号公報 特開2002−108001号公報 特開2004−85850号公報
特許文献4に開示された提案は、トナー上の大きな凹凸周期と小さな凹凸が所定の範囲となるとき、トナーの流動性が向上し、均一なトナーブラシを実現でき、ドット再現性に優れた高画質を得ることができるというものである。しかしながら、本提案では、大きい凹凸周期、小さい凹凸周期の詳細な定義が曖昧である上、ジェットミルで粉砕したトナー粒子にシリカ(30nm)を外添して得たトナーを用いるものであり、トナー粒子の表面性を積極的に制御したとはいえない。また、大粒経外添剤を、均一に、安定的にトナー粒子表面に存在させるための最適な表面形状や、長期にわたる画像出力によってトナーにストレスがかかり、外添剤がトナー粒子上を移動しても添加効果があらわれるような表面形状を提案しているものでもない。さらに、長期にわたる画像出力による外添剤の埋め込みや、大粒径外添剤を使用した場合のトナー粒子上の外添剤の移動による外添剤の局在化は考慮されていない。
本発明の目的は、従来以上に転写性を改善するトナーを提供することである。具体的には、本発明は、高温高湿環境や低温低湿環境などの厳しい環境下においても、耐久全体を通して幅広い転写電流条件で転写残トナーが少なく、高い転写効率の得られるトナーを提供することを目的とする。
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、以下のトナーを見出した。すなわち、本発明は、有機ケイ素重合体を含有する表面層を有するトナー粒子を含むトナーであって、
前記有機ケイ素重合体は、下記式(1)又は(2)で表される部分構造を有し、
前記トナー粒子の表面のX線光電子分光分析において、トナー粒子表面の、炭素原子の濃度dC、酸素原子の濃度dO、及びケイ素原子の濃度dSiの合計を100.0原子%としたときに、前記ケイ素原子の濃度dSiが1.0原子%以上22.2原子%以下であり、
前記トナー粒子の走査型プローブ顕微鏡で測定される粗さ曲線において、JIS B0601:2001に基づいて測定される算術平均粗さRa(nm)が10nm以上300nm以下であり、
前記Raの標準偏差をσRa(nm)としたとき、σRa/Raが0.60以下であり、
前記粗さ曲線において、前記トナー粒子のJIS B0601:2001に基づいて測定される粗さ曲線要素の平均長さRSm(nm)が20nm以上500nm以下であり、
前記RSmの標準偏差をσRSm(nm)としたとき、σRSm/RSmが0.60以下であることを特徴とするトナーである。
Figure 2017138462
(式(2)において、Lは、メチレン基、エチレン基又はフェニレン基を示す。)
本発明によれば、従来以上に転写性を改善するトナーを提供するができる。具体的には、低温低湿環境から高温高湿環境のいずれにおいても、耐久全体を通して幅広い転写電流領域で転写残トナーを抑制できるトナーを提供することができる。
本発明に係るトナー粒子の算術平均粗さRa、及びRaの標準偏差σRaを算出する方法を示す図である。 本発明に係るトナー粒子の粗さ曲線要素の平均長さRSm、及びRSmの標準偏差σRSmを算出する方法を示す図である。 本発明のトナーを用いた画像形成装置の一例である。 本発明の実施例1におけるバックコントラストとカブリとの関係を示す図である。
以下、本発明を詳細に説明する。本発明のトナーは、有機ケイ素重合体を含有する表面層を有するトナー粒子を含むトナーであって、前記有機ケイ素重合体は、下記式(1)又は(2)で表される部分構造を有し、前記トナー粒子の表面のX線光電子分光分析において、トナー粒子表面の、炭素原子の濃度dC、酸素原子の濃度dO、及びケイ素原子の濃度dSiの合計を100.0原子%としたときに、前記ケイ素原子の濃度dSiが1.0原子%以上22.2原子%以下であり、前記トナー粒子の走査型プローブ顕微鏡で測定される粗さ曲線において、JIS B0601:2001に基づいて測定される算術平均粗さRa(nm)が10nm以上300nm以下であり、前記Raの標準偏差をσRa(nm)としたとき、σRa/Raが0.60以下であり、前記粗さ曲線において、前記トナー粒子のJIS B0601:2001に基づいて測定される粗さ曲線要素の平均長さRSm(nm)が20nm以上500nm以下であり、前記RSmの標準偏差をσRSm(nm)としたとき、σRSm/RSmが0.60以下であることを特徴とする。
Figure 2017138462
(式(2)において、Lは、メチレン基、エチレン基又はフェニレン基を示す。)
以下、上記各要件について、詳細に説明する。
本発明に係るトナー粒子は、表面層に、上記式(1)又は(2)で表される部分構造を有する有機ケイ素重合体を含有する。該有機ケイ素重合体は、ケイ素原子の4個の原子価について、1個は下記式(iii)又は(iv)で表される部分構造と、残り3個は酸素原子と結合している。
Figure 2017138462
(式(iii)および(iv)において、※は、ケイ素原子との結合部を示す。式(iv)において、Lは、メチレン基、エチレン基又はフェニレン基を示す。)
酸素原子は、原子価2個がいずれもケイ素原子と結合している状態、つまり、シロキサン結合(Si−O−Si)を構成する。有機ケイ素重合体としてのケイ素原子と酸素原子を考えると、ケイ素原子2個に対して酸素原子3個を有することになるため、−SiO3/2と表現される。この有機ケイ素重合体における−SiO3/2構造は、多数のシロキサン結合によって構成されるシリカ(SiO)と類似の性質を有することが考えられる。したがって、本発明のトナーは、シリカを表面に添加した場合と似た状況を作り出していると考えられ、その結果、トナー粒子の表面を強固にすることができると考えられる。一方で、前記式(iii)又は(iv)で表される部分構造を含むことにより、ビニル系重合性単量体をはじめとする各種重合性単量体と反応し、架橋構造が形成された有機ケイ素重合体が得られる。したがって、本発明のトナーは、トナー粒子の内部と表面層との接着性が向上して、耐久での摺擦や圧力によるトナー劣化が起こり難くなる。そのため、耐久を通して本発明の効果を維持することができると考えられる。
前記有機ケイ素重合体をトナー粒子の表面層に含有させやすくする観点から、前記ケイ素重合体の炭素数は少ないことが好ましい。具体的には、前記式(2)で表される部分構造において、Lはメチレン基であることが好ましい。また、有機ケイ素重合体が、前記式(1)で表される部分構造を有することがより好ましい。前記式(2)において、Lが炭素数3以上のアルキレン鎖である場合、有機ケイ素重合体の表面析出性の低下が起こり、それに伴いトナー粒子の被覆性が低下する。前記ケイ素重合体の炭素数が多くなるほど表面析出性の低下が顕著になり、被覆性が十分でなくなるため、本発明の効果を十分に発揮させることが難しくなる。また、式(2)で表される部分構造においては、Lが炭化水素基であることが重要であり、例えばエステル基を含む場合には、エステル結合の結合力が弱いため、耐久性が低下し易い傾向にある。
本発明に係るトナー粒子は、トナー粒子の表面のX線光電子分光分析において、トナー粒子の表面の、炭素原子の濃度dC、酸素原子の濃度dO、及びケイ素原子の濃度dSiの合計を100.0原子%としたときに、前記ケイ素原子の濃度dSiが1.0原子%以上22.2原子%以下である。
通常、想定されるトナー粒子の主要原子は、炭素原子(C)及び酸素原子(O)である。本発明においては、トナー粒子表面にケイ素原子(Si)、すなわち、前記式(1)又は(2)で表される部分構造に由来する−SiO3/2構造が存在する。X線光電子分光分析は、数nmの最表面において元素分析を行うものであり、前記ケイ素原子の濃度dSiが高いほど、トナー粒子表面に本発明の有機ケイ素重合体が多く存在することになる。dSiが1.0原子%未満であると、トナー粒子表面に十分な量の前記有機ケイ素重合体が存在しないことになる。そのため、トナーの付着力を下げることができず、前述のような本発明の効果を得ることは困難である。前記ケイ素原子の濃度dSiが1.0原子%以上22.2原子%であることにより、本発明の効果が効果的に発現される。前記dSiは、9.0原子%以上22.2原子%であることが好ましい。前記dSiは、有機ケイ素重合体形成時におけるトナー粒子の製造方法、有機ケイ素重合体形成時の反応温度、反応時間、反応溶媒及びpHによって制御することができる。また、有機ケイ素重合体のモノマー種や量によっても制御することができる。
以上のような構成を有することにより、本発明のトナーは、高温高湿環境や低温低湿環境において転写ラチチュードが広く、その効果が耐久を通して持続されるに至った。
本発明に係るトナー粒子は、走査型プローブ顕微鏡で測定される粗さ曲線において、JIS B0601:2001に基づいて測定される算術平均粗さRa(nm)が10nm以上300nm以下であり、前記Raの標準偏差をσRa(nm)としたとき、σa/Raが0.60以下である。
走査型プローブ顕微鏡(以下、「SPM」ともいう。)は、探針、探針を支持するカンチレバー、及びカンチレバーの曲がりを検出する変位測定系を備え、探針と試料との間の原子間力(引力又は斥力)を検出して、試料表面の形状観察を行うものである。SPMで測定される算術平均粗さRaは、JIS B0601:2001で定義されている中心線平均粗さRaを、測定面に対して適用できるよう三次元に拡張したものである。基準面から指定面までの偏差の絶対値を平均した値であり、次式で表される。算術平均粗さRaは、粒子表面の粗さを表す指標であり、ナノメートルスケールでのトナー粒子表面の凹凸情報を得ることができる。また、一つの傷が測定値に及ぼす影響が非常に小さくなり、安定した結果が得られるという特徴がある。
Figure 2017138462
F(X,Y):全測定データの示す面
:指定面が理想的にフラットであると仮定したときの面積
:指定面内のZデータの平均値
なお、指定面とは、本発明においては1μm四方の測定エリアを意味する。
SPMにより測定されるトナー粒子の算術平均粗さRaが10nm以上300nm以下である場合には、トナー粒子表面に適度な大きさの凸部が形成されており、外添剤等を添加しない状態においても、感光体に対するトナーの物理的付着力を十分に低減することができる。これにより、幅広い転写電流領域において転写効率が良好であり、転写残トナーの少ないトナーを提供することができる。また、前記凸部が前記有機ケイ素重合体中に存在することによって、前記凸部がトナー表面に強固に密着しており、長期にわたる画像出力によっても凸部の剥がれや埋め込まれの生じにくいトナーを提供することができる。その結果、耐久後も、初期の転写性やカブリの実力を維持することができる。
前記Raが10nmより小さい場合には、トナー粒子表面に形成された凸部の高さが小さすぎるため、凸部が十分なスペーサー効果を発揮することができない。そのため、感光体に対するトナーの物理的付着力が低下しづらく、トナーの転写効率が低下しやすい。また、長寿命の耐久により、トナーが劣化しやすくなる傾向がある。一方、前記Raが300nmより大きい場合には、摺擦や圧力といったストレスを受けた際に、トナー粒子表面の凸部がより大きな抵抗を受けるため、トナー粒子から脱離しやすくなる。そのため、長期にわたる画像出力を行った場合に、トナーの帯電性が低下しやすく、帯電不良によるカブリなどが生じやすい。
前記Raは、20nm以上200nm以下であることが好ましく、40nm以上100nmであることがより好ましい。前記凸部の形成は、トナー粒子の製造時に、前記有機ケイ素重合体とともに、シリカ粒子等の比較的大粒径の粒子(以下、「大粒径粒子」ともいう。)を添加することにより制御可能である。また、前記Raは、前記大粒径粒子の粒径等により制御することもできる。
本発明に係るトナー粒子は、SPMにより測定される前記Raの標準偏差をσRaとしたとき、σRa/Raが0.60以下である。σRa/Raは、トナー粒子表面の凸部高さのばらつき度合いを表しており、この値が小さいほど、凸部高さにばらつきが少ないことを示している。前記σRa/Raが0.60以下である場合には、トナー粒子表面に形成された凸部の高さのばらつきを小さくすることができる。そのため、各トナーの有する物理的付着力の分布が小さくなり、感光体に対する各トナーの物理的付着力が均一となる。その結果、幅広い転写電流領域において転写効率がさらに良好となる。σRa/Raが0.60より大きい場合には、トナー粒子表面の凸部の高さのばらつきが大きくなる。そのため、感光体と接触した部分の物理的付着力がトナーごとにばらつきやすくなり、転写効率が低下しやすくなる。前記σRa/Raは、トナー粒子製造時に添加する大粒径粒子の体積粒度分布における変動係数を調整することにより制御可能である。
本発明に係るトナー粒子は、前記粗さ曲線において、前記トナー粒子のJIS B0601:2001に基づいて測定される粗さ曲線要素の平均長さRSm(nm)が20nm以上500nm以下であり、該RSmの標準偏差をσRSm(nm)としたとき、σRSm/RSmが0.60以下である。
SPMで測定される粗さ曲線要素の平均長さRSmは、JIS B0601:2001で定義されている。RSmは、粗さ曲線から、その平均線の方向に基準長さだけ抜き取り、ある基準長さlにおける粗さ曲線に含まれる1周期分の凹凸が生じている長さを平均した値であり、次式で表される。
Figure 2017138462
RSm:粗さ曲線に含まれる1周期分の各凹凸の長さ
n:基準長さlに含まれるすべての凹凸部の数の合計
なお、本発明における基準長さlは1μmである。
トナー粒子のRSmを測定することにより、トナー粒子表面に形成された凸部の間隔の情報を正確に得ることができる。また、その標準偏差σRSmとRSmの比から、凸部の間隔のばらつき度合いの情報を得ることができる。前記粗さ曲線要素の平均長さRSmが20nm以上500nm以下である場合、トナー粒子表面に適度な密度の凸部が形成され、感光体に対する各トナーの物理的付着力が安定化する。また、摺擦や圧力といったストレスを受けた際に前記凸部がスペーサー効果を発現しやすくなり、トナーの劣化が抑制されたトナーを提供することができる。その結果、長寿命の耐久を通して幅広い転写ラチチュードを維持するトナーを提供することができる。また、長期にわたる画像出力によっても凸部の剥がれや埋め込まれの生じにくいトナーを提供することができる。一方で、前記RSmが20nm未満である場合は、凸部の密度が大きすぎるため、トナーの静電的付着力が大きくなりやすい。その結果、トナーの流動性が低下しやすくなり、転写効率が低下する場合がある。また、前記RSmが500nmよりも大きい場合は、前記凸部の密度が小さすぎるため、特に低温低湿環境において感光体に対する各トナーの物理的付着力が大きくなる場合がある。そのため、転写残トナーが多くなるという弊害が生じる場合がある。前記RSmは、トナー粒子の製造時に前記有機ケイ素重合体とともに添加する粒子の添加量を調整することにより、上記範囲に制御することができる。
また、前記σRSm/RSmが0.60以下である場合、トナー粒子表面における凸部の間隔が均等になる。その結果、感光体と接触したトナー面の物理的付着力のばらつきが小さくなり、トナーの転写性がさらに向上する。一方で、σRSm/RSmが0.60よりも大きい場合には、トナー粒子表面に形成された凸部の間隔が不均一であるため、感光体と接触したトナー面の非静電付着力のばらつきが大きくなり、特に低温低湿環境において転写残トナーが多くなる場合がある。また、前記凸部の密度が小さい領域が存在するため、摺擦や圧力といったストレスを受けた際に、前記凸部がスペーサー効果を発現しづらくなり、トナーの劣化が生じやすくなる場合がある。前記σRSm/RSmは、トナー粒子の製造時に前記有機ケイ素重合体とともに添加する粒子の添加タイミング、トナー粒子の製造温度等を調整することにより、上記範囲に制御することができる。
本発明において、前記算術平均粗さRaを10nm以上300nm以下に制御する手段としては、前記有機ケイ素重合体を構成する有機ケイ素化合物とともに、比較的大粒径の粒子(大粒径粒子)をトナー粒子表面に固定化する手法が好適に用いられる。このような手法によれば、トナー粒子表面に適度な大きさの凸部を有する有機ケイ素重合体を含む表面層を効率よく形成することができ、また、該大粒径粒子を、トナー粒子の表面に強固に固着することができる。添加する粒子としては、体積平均粒径がおよそ20nm〜700nmの比較的大粒径のものが好ましい。また、粒子の粒度分布がシャープであることが好ましく、体積粒度分布における変動係数が、30%以下であることが好ましい。
添加する粒子としては、特に限定されないが、以下のような材料が例示される。まず、無機微粒子としては、シリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ベンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素等が挙げられる。前記無機微粒子は、高湿度下におけるトナーの流動特性や帯電特性の低下を防止するために、表面処理剤を用いて疎水性を上げることが好ましい。好ましい表面処理剤としては、シランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤、シリコーンオイル、変性シリコーンオイル等が例示できる。また、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の、ステアリン酸等の脂肪酸の金属塩、ポリメチルメタクリレート微粒子、ポリスチレン微粒子等のソープフリー乳化重合等によって製造された、ポリマー微粒子も好適に用いられる。
前記粒子の中でも、前記有機ケイ素重合体との親和性の観点から、シリカ粒子を用いることが好ましい。シリカ粒子を用いることで、前記有機ケイ素重合体の形成するトナー粒子表層に、より強固に密着した凸部が形成される。シリカ粒子の製造方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。
・シラン化合物を燃焼させてシリカ粒子を得る燃焼法(すなわち、ヒュームドシリカの製造方法)
・金属ケイ素粉を爆発的に燃焼させてシリカ粒子を得る爆燃法
・ケイ酸ナトリウムと鉱酸との中和反応によってシリカ粒子を得る湿式法(このうち、アルカリ条件で合成したものを沈降法、酸性条件で合成したものをゲル法という。)
・ヒドロカルビルオキシシランなどのアルコキシシランの加水分解によってシリカ粒子を得るゾルゲル法(いわゆる、Stoeber法)
これらの中でも、シリカ粒子の粒度分布を比較的シャープにすることができる観点から、ゾルゲル法が好ましい。また、シリカ粒子の粒度分布をシャープにし、より効果的なスペーサー効果を発揮させるために、シリカ粒子を解砕処理することが好ましい。
凸部形成のために添加される前記粒子は、高温高湿環境下における帯電量低下を抑制するために、疎水化処理が施されていることが好ましい。前記粒子を疎水化処理する方法としては、種々の方法を用いることができる。例えば、前記粒子に疎水化処理剤を乾式で処理する方法や、前記粒子に疎水化処理剤を湿式で処理する方法が挙げられる。これらの中でも、前記粒子の凝集を抑制しつつ、トナーに優れた流動性を付与することができる点から、乾式による疎水化処理方法が好ましい。乾式による疎水化処理方法としては、例えば、前記粒子を撹拌しながら、疎水化処理剤を噴霧して処理する方法や、疎水化処理剤の蒸気を流動床上のシリカ粒子や撹拌下の前記粒子へ導入する方法が挙げられる。
前記粒子の疎水化処理剤としては、例えば、以下のものをあげることができる。
メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、t−ブチルジメチルクロロシラン、ビニルトリクロロシラン等のクロロシラン類、
テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、o−メチルフェニルトリメトキシシラン、p−メチルフェニルトリメトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、i−ブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、i−ブチルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアルコキシシラン類、
ヘキサメチルジシラザン、ヘキサエチルジシラザン、へキサプロピルジシラザン、ヘキサブチルジシラザン、ヘキサペンチルジシラザン、ヘキサヘキシルジシラザン、ヘキサシクロヘキシルジシラザン、ヘキサフェニルジシラザン、ジビニルテトラメチルジシラザン、ジメチルテトラビニルジシラザン等のシラザン類、
ジメチルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、クロロアルキル変性シリコーンオイル、クロロフェニル変性シリコーンオイル、脂肪酸変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、アルコキシ変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル、末端反応性シリコーンオイル等のシリコーンオイル、
ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン等のシロキサン類、
ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ドデシル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ペンタデシル酸、ステアリン酸、ヘプタデシル酸、アラキン酸、モンタン酸、オレイン酸、リノール酸、アラキドン酸等の長鎖脂肪酸、
前記脂肪酸と、亜鉛、鉄、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、ナトリウム、リチウム等の金属との塩等。
これらの疎水化処理剤の中でも、アルコキシシラン類、シラザン類、シリコーンオイル(特にはストレートシリコーンオイル)は、前記粒子に対する疎水化処理を実施しやすい点で好ましい。疎水化処理剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
トナー粒子に前記粒子を含有させる方法としては、例えば、懸濁重合法又は溶解懸濁法において、前記粒子を粉体の状態で添加する方法や、液体中に前記粒子を分散させた状態で添加する方法が挙げられる。その中でも、有機ケイ素化合物の溶媒中に前記粒子を分散させた状態で添加する方法が好ましい。また、前記粒子を添加するタイミングは、水系媒体中でトナー組成物(重合性単量体組成物又は樹脂溶解液)の粒子が形成される前でもよく、トナー組成物の重合がある程度進行した後でもよい。トナー表面へ前記粒子由来の凹凸を効率よく形成させるという観点からは、トナー組成物の重合がある程度進行した後に添加する方法が好ましい。
本発明に係るトナー粒子は、JIS B0601:2001に基づいて測定される粗さ曲線要素の平均長さをRSm1とし、前記トナー粒子をスクロース溶液中で遠心分離にかけて、前記トナー粒子の表面への付着力が小さい粒子を分離除去したトナー粒子の、粗さ曲線要素の平均長さをRSm2としたとき、RSm2/RSm1が1.20以下であることが好ましい。
通常、トナー粒子表面へ外添により配置された外添剤等の各種微粒子の中には、一部トナー粒子表面への付着力の小さい粒子が含まれている。このような付着力の小さい粒子は、耐久中にトナー粒子表面から遊離してしまい、トナーの転写性を低下させる原因となる場合がある。そのため、トナー粒子表面に付着した粒子は、なるべく初期の付着状態を維持することが好ましく、その付着状態の変化のしやすさを捉えることのできる指標が前記RSm2/RSm1であることを本発明者らは見出した。すなわち、RSm1は、トナー製造直後の、トナー粒子表面に形成された粗さ曲線要素の平均長さを表す指標であり、RSm2は、トナーに機械的ストレスを与え、トナー粒子表面への付着力が小さい粒子を除去した後の、トナー粒子表面の粗さ曲線要素の平均長さを表す指標である。RSm2は、摺擦や圧力といったストレスを受けた耐久後のトナー粒子表面の状態を模擬的に表す指標である。
ここで、トナー粒子表面への付着力が小さい粒子を分離除去する方法は、具体的には以下のような方法である。
イオン交換水100mLにスクロース(キシダ化学製)160gを加え、湯せんをしながら溶解させ、ショ糖濃厚液を調製する。遠心分離用チューブに前記ショ糖濃厚液を31gと、コンタミノン(登録商標)N(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)を6mL入れて分散液を作製する。この分散液にトナー1.0gを添加し、スパチュラ等でトナーのかたまりをほぐす。
遠心分離用チューブをシェイカーにて350spm(strokes per min)、20minで振とうする。振とう後、溶液をスイングローター用ガラスチューブ(50mL)に入れ替えて、遠心分離機にて3500rpm、30minの条件で分離する。この操作により、トナー粒子と、トナー粒子から外れたトナー粒子表面への付着力が小さい粒子が分離する。トナーと水溶液が十分に分離されていることを目視で確認し、最上層に分離したトナーをスパチュラ等で採取する。採取したトナーを減圧濾過器で濾過した後、乾燥機で1時間以上乾燥し、トナー粒子の表面への付着力が小さい粒子を分離除去したトナー粒子を得る。この操作を複数回実施して、必要量を確保する。
通常、トナー表面の粒子が一部外れた状態であるRSm2の値は、RSm1に比べて大きくなる。RSm2/RSm1が大きいほど、トナー粒子表面の粒子がはがれやすく、トナーの転写性が変化しやすいことを示す。本発明のトナー粒子は、このRSm2/RSm1が1.20以下であることが好ましく、1.10以下であることがより好ましい。RSm2/RSm1が1.20以下であることにより、トナー粒子表面への付着力が小さい粒子の割合が少なく、耐久を通した転写性の変化がさらに小さいトナーを提供することができる。また、RSm2/RSm1が1.10以下であることにより、トナー粒子表面への付着力が小さい粒子の割合を10%以下とさらに少なくすることができ、転写性の変化が小さくなるだけでなく、広範な環境下や厳しい使用条件下においても、優れた耐久性を有するトナーを得ることができる。RSm2/RSm1は、有機ケイ素重合体形成時におけるトナー粒子の製造方法、有機ケイ素重合体形成時の加水分解、重合時の反応温度、反応時間、反応溶媒及びpH等を調整することによって、前記範囲に制御することができる。また、有機ケイ素重合体の含有量によっても制御することができる。さらに、トナー粒子表面に凹凸を形成させる工程における、前記有機ケイ素重合体と凹凸形成用微粒子の添加タイミング等を調整することによっても制御可能である。
本発明に係るトナー粒子のTHF(テトラヒドロフラン)不溶分の29Si−NMR測定で得られるチャートにおいて、前記有機ケイ素重合体の全ピーク面積に対する下記式(4)で表される構造に帰属されるピーク面積の割合が40%以上であることも、さらなる好条件である。
Rf−SiO3/2 (4)
(式(4)において、Rfは、下記式(iii)又は(iv)で表される部分構造を示す。)
Figure 2017138462
(式(iii)および(iv)において、※は、ケイ素原子との結合部を示す。式(iv)において、Lは、メチレン基、エチレン基又はフェニレン基を示す。)
詳細な測定法については後述するが、前記好条件は、トナー粒子に含まれる有機ケイ素重合体が、−SiO3/2で表される部分構造と、上記式(iii)又は(iv)で表される部分構造の両方を、40%以上有していることを近似している。
前述のとおり、−SiO3/2の部分構造は、ケイ素原子の4つの原子価のうち、3つが酸素原子と結合し、さらにそれら酸素原子が別のケイ素原子と結合していることを意味する。もし、そのうち酸素原子1つがシラノール基であれば、その有機ケイ素重合体の部分構造は、Rf−SiO2/2−OHで表現される。さらに、酸素原子2つがシラノール基であれば、その部分構造はRf−SiO1/2(−OH)となる。これらの構造を比較すると、より多くの酸素原子がケイ素原子と架橋構造を形成する方が、SiOで表されるシリカ構造に近くなる。そのため、−SiO3/2骨格が多いほど、より硬い性質を示し、耐久性が向上すると考えられる。一方で、酸素原子がシラノール基のような形で残存し、架橋構造を形成していない場合には、樹脂的な性質が支配的になり、耐久性が低下すると考えられる。
また、上記式(iii)又は(iv)で表される部分構造は、ビニル系重合性単量体をはじめとする各種重合性単量体と反応し、架橋構造を形成していることを意味する。そのため、式(4)で表される構造は、−SiO3/2による無機ネットワークと、上記式(iii)又は(iv)による有機ネットワークの両方を有しているといえる。その結果、本発明に係るトナーは、無機構造と有機構造の結合力が強いトナーとなり、耐久性がさらに向上する。以上から、耐久性と環境安定性をさらに向上させるためには、有機ケイ素重合体の全ピーク面積に対する上記式(4)で表される構造に帰属されるピーク面積の割合が40%以上であることが好ましい。前記ピーク面積の割合は、有機ケイ素重合体形成時におけるトナー粒子の製造方法、有機ケイ素重合体形成時の反応温度、反応時間、反応溶媒及びpHによって制御することができる。
本発明に係るトナー粒子は、着色剤及び重合性単量体を含有する重合性単量体組成物を水系媒体中で造粒し、前記重合性単量体を重合することによって製造されたものであることが好ましい。トナー粒子を水系媒体中で製造する場合、有機ケイ素化合物中のシラノール基等の親水基に起因する親水性によって、有機ケイ素化合物をトナー粒子表面に存在させやすい。そのため、有機ケイ素重合体が表面層を形成するというコアシェル構造の制御が容易となり、本発明の効果がさらに発揮される。また、本発明に係る有機ケイ素重合体を形成する有機ケイ素化合物は、トナー粒子の結着樹脂となる重合性単量体とともに水系媒体中で重合することによって、上記式(iii)又は(iv)で表される架橋構造を形成し易くなる。その結果、トナー粒子の内部と表面層との接着性がより強固なものとなり、本発明における帯電量反転成分抑制効果の耐久持続性がさらに向上する。
トナー粒子の表面層に含まれる前記有機ケイ素重合体は、具体的には、アルコキシシランに代表される有機ケイ素化合物の加水分解重縮合によって生成される。本発明において、前記有機ケイ素重合体は、下記式(3)で表される有機ケイ素化合物を含む重合性単量体組成物を重合して得られる有機ケイ素重合体であることが好ましい。即ち、下記式(3)で表される有機ケイ素化合物に由来するユニットを有する重合体であることが好ましい。このように形成された表面層をトナーの粒子の表面に均一に設けることによって、従来法で行われているような無機微粒子の固着や付着を行わなくても、長期使用時におけるトナーの性能低下が生じにくく、保存安定性に優れたトナーが得られる。
Figure 2017138462
(式(3)において、Rfは、下記式(i)又は(ii)で表される部分構造を示し、R1、R2及びR3は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アセトキシ基又はアルコキシ基を示す。)
Figure 2017138462
(式(i)および式(ii)において、※は、ケイ素原子との結合部を示す。式(ii)において、Lは、メチレン基、エチレン基又はフェニレン基を示す。)
上記式(3)におけるR1〜R3の反応基が、加水分解、付加重合及び縮合重合することにより、シロキサン結合(Si−O−Si)による架橋構造が形成される。重合条件の制御性及びシロキサン構造の形成し易さの観点から、R1〜R3は、アルコキシ基であることが好ましい。アルコキシ基は、室温において、穏やかな加水分解性を有する。また、有機ケイ素重合体のトナー粒子表面への析出性及び被覆性の観点から、R1〜R3は、メトキシ基又はエトキシ基であることがより好ましい。なお、R1〜R3の加水分解、付加重合及び縮合重合は、反応温度、反応時間、反応溶媒及びpHによって制御することができる。
本発明に係る有機ケイ素重合体の代表的な製造例としては、ゾルゲル法と呼ばれる製造方法が挙げられる。ゾルゲル法は、金属アルコキシドM(OR)n(M:金属、O:酸素原子、R:炭化水素、n:金属の酸化数)を出発原料として用いて、溶媒中で加水分解及び縮合重合を行い、ゾル状態を経て、ゲル化する方法である。ゾルゲル法は、ガラス、セラミックス、有機−無機ハイブリット、ナノコンポジットの合成に用いられる。この製造方法によれば、表層、繊維、バルク体、微粒子といった種々の形状の機能性材料を液相から低温で作製することができる。
さらに、ゾルゲル法は、溶液から出発し、その溶液をゲル化することによって材料を形成するため、様々な微細構造及び形状を作製することができる。特に、トナー粒子が水系媒体中で製造される場合には、有機ケイ素化合物中のシラノール基等の親水基に起因する親水性によって、トナー粒子表面に存在させやすい。しかし、有機ケイ素化合物の疎水性が大きすぎる場合(例えば、有機ケイ素化合物が疎水性の高い官能基を有する場合)、トナー粒子の表面層に有機ケイ素化合物を析出させにくくなるため、トナー粒子に有機ケイ素重合体を含有する表面層を形成しにくくなる。一方で、有機ケイ素化合物の疎水性が小さすぎる場合、トナー粒子の表面層に有機ケイ素重合体が含有されていたとしても、トナーの帯電安定性が低下する傾向がある。なお、微細構造及び形状は、反応温度、反応時間、反応溶媒、pHや有機ケイ素化合物の種類及び添加量等によって調整することができる。
前記有機ケイ素重合体を得るには、前記式(3)で表される構造を有する有機ケイ素化合物を1種以上用いることが好ましい。前記式(3)で表される構造を有する有機ケイ素化合物としては、以下のものが挙げられる。ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルジエトキシメトキシシラン、ビニルエトキシジメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルメトキシジクロロシラン、ビニルエトキシジクロロシラン、ビニルジメトキシクロロシラン、ビニルメトキシエトキシクロロシラン、ビニルジエトキシクロロシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルジアセトキシメトキシシラン、ビニルジアセトキシエトキシシラン、ビニルアセトキシジメトキシシラン、ビニルアセトキシメトキシエトキシシラン、ビニルアセトキシジエトキシシラン、ビニルトリヒドロキシシラン、ビニルメトキシジヒドロキシシラン、ビニルエトキシジヒドロキシシラン、ビニルジメトキシヒドロキシシラン、ビニルエトキシメトキシヒドロキシシラン、ビニルジエトキシヒドロキシシラン等の三官能性のビニルシラン;アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルジエトキシメトキシシラン、アリルエトキシジメトキシシラン、アリルトリクロロシラン、アリルメトキシジクロロシラン、アリルエトキシジクロロシラン、アリルジメトキシクロロシラン、アリルメトキシエトキシクロロシラン、アリルジエトキシクロロシラン、アリルトリアセトキシシラン、アリルジアセトキシメトキシシラン、アリルジアセトキシエトキシシラン、アリルアセトキシジメトキシシラン、アリルアセトキシメトキシエトキシシラン、アリルアセトキシジエトキシシラン、アリルトリヒドロキシシラン、アリルメトキシジヒドロキシシラン、アリルエトキシジヒドロキシシラン、アリルジメトキシヒドロキシシラン、アリルエトキシメトキシヒドロキシシラン、アリルジエトキシヒドロキシシラン等の三官能性のアリルシラン;p−スチリルトリメトキシシラン。有機ケイ素化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
有機ケイ素重合体の合成に用いられる有機ケイ素化合物中において、前記式(3)で表される有機ケイ素化合物の割合は、50モル%以上が好ましく、60モル%以上がより好ましい。前記式(3)で表される有機ケイ素化合物の割合を50モル%以上とすることによって、トナーの付着力低減効果の耐久持続性をさらに向上させることができる。
また、前記式(3)で表される有機ケイ素化合物と共に、一分子中に4つの反応基を有する有機ケイ素化合物(四官能性シラン)、一分子中に3つの反応基を有する有機ケイ素化合物(三官能性シラン)、一分子中に2つの反応基を有する有機ケイ素化合物(二官能性シラン)又は一分子中に1つの反応基を有する有機ケイ素化合物(一官能性シラン)を併用して得られた有機ケイ素重合体を用いてもよい。併用してもよい有機ケイ素化合物としては、以下のようなものが挙げられる。メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルジエトキシメトキシシラン、メチルエトキシジメトキシシラン、メチルトリクロロシラン、メチルメトキシジクロロシラン、メチルエトキシジクロロシラン、メチルジメトキシクロロシラン、メチルメトキシエトキシクロロシラン、メチルジエトキシクロロシラン、メチルトリアセトキシシラン、メチルジアセトキシメトキシシラン、メチルジアセトキシエトキシシラン、メチルアセトキシジメトキシシラン、メチルアセトキシメトキシエトキシシラン、メチルアセトキシジエトキシシラン、メチルトリヒドロキシシラン、メチルメトキシジヒドロキシシラン、メチルエトキシジヒドロキシシラン、メチルジメトキシヒドロキシシラン、メチルエトキシメトキシヒドロキシシラン、メチルジエトキシヒドロキシシラン等の三官能性のメチルシラン;エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリクロロシラン、エチルトリアセトキシシラン、エチルトリヒドロキシシラン等の三官能性のエチルシラン;プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、プロピルトリクロロシラン、プロピルトリアセトキシシラン、プロピルトリヒドロキシシラン等の三官能性のプロピルシラン;ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ブチルトリクロロシラン、ブチルトリアセトキシシラン、ブチルトリヒドロキシシラン等の三官能性のブチルシラン;ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、ヘキシルトリクロロシラン、ヘキシルトリアセトキシシラン、ヘキシルトリヒドロキシシラン等の三官能性のヘキシルシラン;フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリクロロシラン、フェニルトリアセトキシシラン、フェニルトリヒドロキシシラン等の三官能性のフェニルシラン;ジメチルジエトキシシラン、テトラエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−アニリノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、トリメチルシリルクロライド、トリエチルシリルクロライド、トリイソプロピルシリルクロライド、t−ブチルジメチルシリルクロライド、N,N’−ビス(トリメチルシリル)ウレア、N,O−ビス(トリメチルシリル)トリフロロアセトアミド、トリメチルシリルトリフロロメタンスルホネート、1,3−ジクロロ−1,1,3,3−テトライソプロピルジシロキサン、トリメチルシリルアセチレン、ヘキサメチルジシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、テトライソシアネートシラン、メチルトリイソシアネートシラン、ビニルトリイソシアネートシラン。
一般的に、ゾルゲル反応では、反応媒体の酸性度によって生成するシロキサン結合の結合状態が異なることが知られている。具体的には、反応媒体が酸性である場合には、水素イオンが一つの反応基(例えばアルコキシ基(−OR基))の酸素原子に親電子的に付加する。次に、水分子中の酸素原子がケイ素原子に配位して、置換反応によってヒドロキシ基となる。水が十分に存在している場合には、H(プロトン)1つが反応基(例えばアルコキシ基−OR基)の酸素原子を1つ攻撃するため、反応の進行に伴い媒体中のHの含有率および反応基が少なくなると、ヒドロキシ基への置換反応が遅くなる。よって、シランが有する反応基の全てが加水分解する前に重縮合反応が起こり、比較的容易に、一次元的な線状高分子や二次元的な高分子が生成する。一方、媒体がアルカリ性の場合には、水酸化物イオンがケイ素原子に付加して5配位中間体を経由する。そのため、全ての反応基(例えばアルコキシ基−OR基)が脱離しやすくなり、容易にシラノール基に置換される。特に、同一シランに3つ以上の反応基を有する有機ケイ素化合物を用いた場合には、加水分解及び重縮合が3次元的に生じて、3次元の架橋結合を多く含む有機ケイ素重合体が形成される。また、反応も短時間で終了する。
したがって、有機ケイ素重合体を形成するには、反応媒体がアルカリ性の状態でゾルゲル反応を進めることが好ましく、水系媒体中で製造する場合には、具体的には、pH8.0以上であることが好ましい。これによって、より強度の高い、耐久性に優れた有機ケイ素重合体を形成することができる。また、ゾルゲル反応は、反応温度85℃以上、かつ、反応時間5時間以上で行うことが好ましい。ゾルゲル反応を上記反応温度及び反応時間で行うことによって、トナー粒子表面の、ゾルやゲルの状態の有機ケイ素化合物同士が結合した合一粒子の形成を抑制することができる。
以下、本発明のトナー粒子の具体的な製造方法について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
第一製法としては、結着樹脂用の重合性単量体、着色剤、及び有機ケイ素化合物を含有する重合性単量体組成物を水系媒体中に懸濁、造粒し、重合性単量体を重合してトナー粒子を得る方法(懸濁重合法)である。トナー粒子には、必要に応じて荷電制御剤、離型剤等の添加剤を添加してもよい。このようにして得られたトナー粒子は、トナー表面近傍に有機ケイ素化合物がトナー表面に析出した状態で重合されるため、トナー粒子表面に有機ケイ素重合体を含む層を形成させることができる。また、有機ケイ素化合物が均一に析出し易い利点が挙げられる。懸濁重合法は、トナー粒子表面の有機ケイ素重合体を含む層の均一性の観点から、最も好ましい製法である。
第二製法としては、トナー母体を得た後に、水系媒体中で有機ケイ素重合体を含有する表面層を形成する方法である。トナー母体は、結着樹脂、及び着色剤を溶融混練し、粉砕して得てもよく、結着樹脂粒子及び着色剤粒子を、水系媒体中で凝集し、会合して得てもよい。あるいは、結着樹脂、有機ケイ素化合物及び着色剤を、有機溶媒に溶解し製造された有機相分散液を、水系媒体中に懸濁、造粒、重合した後に有機溶媒を除去して得てもよい。トナー粒子には、必要に応じて荷電制御剤、離型剤等の添加剤を添加してもよい。
第三製法としては、結着樹脂、有機ケイ素化合物及び着色剤を、有機溶媒に溶解して製造された有機相分散液を、水系媒体中に懸濁、造粒、重合した後に、有機溶媒を除去してトナー粒子を得る方法である。トナー粒子には、必要に応じて荷電制御剤、離型剤等の添加剤を添加してもよい。この方法においても、トナー粒子表面近傍に有機ケイ素化合物がトナー表面に析出した状態で重合される。
本発明において好ましい水系媒体としては、水、メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール類、これらの混合溶媒が挙げられる。
前記懸濁重合法における重合性単量体としては、以下に示すビニル系重合性単量体が好適に例示できる。スチレン;α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチル、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン等のスチレン誘導体;メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、iso−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、iso−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、n−アミルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、n−ノニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、ジメチルフォスフェートエチルアクリレート、ジエチルフォスフェートエチルアクリレート、ジブチルフォスフェートエチルアクリレート、2−ベンゾイルオキシエチルアクリレート等のアクリル系重合性単量体;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、iso−プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、iso−ブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、n−アミルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、n−ノニルメタクリレート、ジエチルフォスフェートエチルメタクリレート、ジブチルフォスフェートエチルメタクリレート等のメタクリル系重合性単量体;メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル、蟻酸ビニル等のビニルエステル;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロピルケトン等のビニルケトン。
また、重合に際して、用いられる重合開始剤としては、以下のものが挙げられる。2,2’−アゾビス−(2,4−ジバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系、又はジアゾ系重合開始剤;ベンゾイルペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド、ジイソプロピルオキシカーボネート、クメンヒドロペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド等の過酸化物系重合開始剤。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの重合開始剤は、重合性単量体に対して0.5〜30.0質量%添加することが好ましい。
前記トナー粒子に結着樹脂として、または機能を発現するためのその他の添加物として、本発明の効果に影響を与えない範囲で、以下の樹脂を用いることができる。ポリスチレン、ポリビニルトルエン等のスチレン及びその置換体の単重合体;スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−アクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−メタクリ酸ジメチルアミノエチル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体等のスチレン系共重合体;ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルブチラール、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリアクリル樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、フェノール樹脂、脂肪族又は脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂。これらの樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、トナー粒子を構成する結着樹脂の分子量を制御するために、重合に際して、連鎖移動剤を添加してもよい。好ましい添加量は、重合性単量体に対して0.001〜15.000質量%である。
一方、トナー粒子を構成する結着樹脂の分子量を制御するために、重合に際して、架橋剤を添加してもよい。架橋性単量体としては、以下のものが挙げられる。ジビニルベンゼン、ビス(4−アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#200、#400、#600の各ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエステル型ジアクリレート(ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、商品名:カヤラッドMANDA、日本化薬(株)製)、及び以上のアクリレートをメタクリレートに変えたもの。
多官能の架橋性単量体としては以下のものが挙げられる。ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート及びそのメタクリレート、2,2−ビス(4−メタクリロキシ・ポリエトキシフェニル)プロパン、ジアクリルフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルトリメリテート、ジアリールクロレンデート。
架橋剤は、重合性単量体に対して0.001〜15.000質量%添加することが好ましい。
前記懸濁重合法において用いられる媒体が水系媒体の場合には、重合性単量体組成物の粒子の分散安定剤として、以下のものを使用することができる。リン酸三カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸亜鉛、リン酸アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、メタ珪酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ベントナイト、シリカ、アルミナ。また、有機系の分散剤としては、以下のものが挙げられる。ポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩、デンプン。また、市販のノニオン、アニオン、カチオン型の界面活性剤の利用も可能である。このような界面活性剤としては、以下のものが挙げられる。ドデシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム。
本発明のトナー粒子に用いられる着色剤としては、特に限定されず、以下に示す公知のものを使用することができる。
黄色顔料としては、黄色酸化鉄、ネーブルスイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキなどの縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アンスラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、アリルアミド化合物が用いられる。具体的には以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー62、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー95、C.I.ピグメントイエロー109、C.I.ピグメントイエロー110、C.I.ピグメントイエロー111、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー129、C.I.ピグメントイエロー147、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー168、C.I.ピグメントイエロー180。
橙色顔料としては以下のものが挙げられる。パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、ベンジジンオレンジG、インダスレンブリリアントオレンジRK、インダスレンブリリアントオレンジGK。
赤色顔料としては、ベンガラ、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウォッチングレッドカルシウム塩、レーキレッドC、レーキッドD、ブリリアントカーミン6B、ブリラントカーミン3B、エオキシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキなどの縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アンスラキノン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物が挙げられる。具体的には以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド23、C.I.ピグメントレッド48:2、C.I.ピグメントレッド48:3、C.I.ピグメントレッド48:4、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド81:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド146、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド169、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド184、C.I.ピグメントレッド185、C.I.ピグメントレッド202、C.I.ピグメントレッド206、C.I.ピグメントレッド220、C.I.ピグメントレッド221、C.I.ピグメントレッド254。
青色顔料としては、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩化物、ファーストスカイブルー、インダスレンブルーBGなどの銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アンスラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物等が挙げられる。具体的には以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントブルー1、C.I.ピグメントブルー7、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:1、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントブルー62、C.I.ピグメントブルー66。
紫色顔料としては、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキが挙げられる。
緑色顔料としては、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンGが挙げられる。
白色顔料としては、亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛が挙げられる。
黒色顔料としては、カーボンブラック、アニリンブラック、非磁性フェライト、マグネタイト、前記黄色系着色剤、赤色系着色剤及び青色系着色剤を用い黒色に調色されたものが挙げられる。
これらの着色剤は、1種を単独で又は2種以上を混合して、さらには固溶体の状態で用いることができる。なお、着色剤の含有量は、結着樹脂又は重合性単量体100質量部に対して3.0〜15.0質量部であることが好ましい。
本発明に係るトナー粒子には、荷電制御剤を添加してもよく、公知のものが使用できる。荷電制御剤の添加量は、結着樹脂又は重合性単量体100質量部に対して、0.01〜10.00質量部であることが好ましい。
本発明に係るトナー粒子には、離型剤を添加してもよく、公知のものが使用できる。離型剤の添加量は、結着樹脂又は重合性単量体100質量部に対して、1〜30質量部であることが好ましい。
本発明のトナーは、必要に応じて、トナー粒子に各種有機又は無機微粉体を外添してもよい。前記有機又は無機微粉体の粒径は、トナー粒子に添加した際の耐久性の観点から、トナー粒子の重量平均粒径の1/10以下であることが好ましい。
有機又は無機微粉体としては、例えば、以下のようなものが用いられる。
(1)流動性付与剤:シリカ、アルミナ、酸化チタン、カーボンブラック及びフッ化カーボン。
(2)研磨剤:金属酸化物(例えばチタン酸ストロンチウム、酸化セリウム、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化クロム)、窒化物(例えば窒化ケイ素)、炭化物(例えば炭化ケイ素)、金属塩(例えば硫酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム)。
(3)滑剤:フッ素系樹脂粉末(例えばフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン)、脂肪酸金属塩(例えばステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム)。
(4)荷電制御性粒子:金属酸化物(例えば酸化錫、酸化チタン、酸化亜鉛、シリカ、アルミナ)、カーボンブラック。
有機又は無機微粉体は、トナーの流動性の改良及びトナー粒子の帯電均一化のために、表面を疎水化処理したものを使用することもできる。有機又は無機微粉体の疎水化処理の処理剤としては、未変性のシリコーンワニス、各種変性シリコーンワニス、未変性のシリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル、シラン化合物、シランカップリング剤、その他有機ケイ素化合物、有機チタン化合物が挙げられる。これらの処理剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
図3は、本発明に係るトナー粒子を用いて画像形成を行うことができる画像形成装置の一例である。画像形成プロセスの概略は、以下の通りである。感光体1上に静電潜像を形成する。現像ローラ2上のトナー4を用いて感光体上に形成された静電潜像を現像し、トナー像を形成する。転写搬送ベルト16にトナー像を転写する。転写手段に印加された転写バイアスの作用により、転写搬送ベルト16上に転写されたトナー像を、紙等の記録媒体18に転写する。そして、記録媒体18上に転写されたトナー像を、定着装置21により定着する。
以下、本発明に関する各種測定方法を述べる。
<トナー粒子表面に存在するケイ素原子の濃度(原子%)>
本発明に係るトナー粒子表面に存在するケイ素原子の濃度(原子%)は、X線光電子分光分析(ESCA)を用いて表面組成分析を行うことにより算出した。
本発明においてESCAの装置および測定条件は、下記のとおりである。
使用装置:ULVAC−PHI社製、Quantum2000
X線光電子分光装置測定条件:X線源 Al Kα
X線:100μm 25W 15kV
ラスター:300μm×200μm
PassEnergy:58.70eV StepSize:0.125eV
中和電子銃:20μA、1V Arイオン銃:7mA、10V
Sweep数:Si 15回、C 10回
本発明では、測定された各原子のピーク強度から、PHI社提供の相対感度因子を用いて表面原子濃度(原子%)を算出した。
<式(4)で表される部分構造の確認方法>
本発明において、前記式(4)で表される部分構造のうち、Rfのユニットの存在は、13C−NMR(固体)測定により確認した。以下に、測定条件及び試料調製方法を示す。
13C−NMR(固体)の測定条件]
装置:BRUKER製、AVANCEIII 500
プローブ:4mm MAS BB/1H
測定温度:室温
試料回転数:6kHz
試料:測定試料(NMR測定用のトナー粒子のTHF不溶分、調製方法は以下のとおり。)150mgを直径4mmのサンプルチューブに入れる。
測定核周波数:125.77MHz
基準物質:Glycine(外部標準:176.03ppm)
観測幅:37.88kHz
測定法:CP/MAS
コンタクト時間:1.75ms
繰り返し時間:4s
積算回数:2048回
LB値:50Hz
[測定試料の調製方法]
トナー粒子10.0gを秤量し、円筒濾紙(東洋濾紙製No.86R)に入れてソックスレー抽出器にかけ、溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)200mlを用いて20時間抽出し、円筒濾紙中の濾物を40℃で数時間真空乾燥して得られたものをNMR測定用のサンプルとする。
なお、本発明において、トナーに前記有機微粉体又は無機微粉体が外添されている場合は、下記方法によって、該有機微粉体又は無機微粉体を除去して、トナー粒子を得る。
イオン交換水100mLにスクロース(キシダ化学製)160gを加え、湯せんをしながら溶解させ、ショ糖濃厚液を調製する。遠心分離用チューブに上記ショ糖濃厚液を31gと、コンタミノン(登録商標)N(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)を6mL入れて分散液を作製する。この分散液にトナー1.0gを添加し、スパチュラ等でトナー粒子のかたまりをほぐす。
遠心分離用チューブをシェイカーにて350spm(strokes per min)、20minで振とうする。振とう後、溶液をスイングローター用ガラスチューブ(50mL)に入れ替えて、遠心分離機にて3500rpm、30minの条件で分離する。この操作により、トナー粒子とトナー粒子から外れた外添剤とが分離する。トナー粒子と水溶液が十分に分離されていることを目視で確認し、最上層に分離したトナー粒子をスパチュラ等で採取する。採取したトナー粒子を減圧濾過器で濾過した後、乾燥機で1時間以上乾燥して、トナー粒子を得る。この操作を複数回実施して、必要量を確保する。
Rfが前記式(iii)で表される場合、ケイ素原子に結合しているメチン基(>CH−Si)に由来するシグナルの有無により、前記式(iii)で表されるユニットの存在を確認する。また、Rfが前記式(iv)で表される場合、ケイ素原子に結合しているメチレン基(Si−CH−)、エチレン基(Si−C−)、又はフェニレン基(Si−C−)に由来するシグナルの有無により、前記式(iv)で表されるユニットの存在を確認する。
<トナー粒子のTHF不溶分の29Si−NMRにおいて測定される、式(4)の構造に帰属されるピーク面積の割合の測定方法>
本発明において、トナー粒子のTHF不溶分の29Si−NMR(固体)測定は、以下の測定条件で行った。
29Si−NMR(固体)の測定条件]
装置:BRUKER製、AVANCEIII 500
プローブ:4mm MAS BB/1H
測定温度:室温
試料回転数:6kHz
試料:測定試料(NMR測定用のトナー粒子のTHF不溶分)150mgを直径4mmのサンプルチューブに入れる。
測定核周波数:99.36MHz
基準物質:DSS(外部標準:1.534ppm)
観測幅:29.76kHz
測定法:DD/MAS、CP/MAS
29Si 90° パルス幅:4.00μs@−1dB
コンタクト時間:1.75ms〜10ms
繰り返し時間:30s(DD/MASS)、10s(CP/MAS)
積算回数:2048回
LB値:50Hz
上記測定後に、トナー粒子の、置換基及び結合基の異なる複数のシラン成分を、カーブフィティングにて、下記X1構造、X2構造、X3構造、及びX4構造にピーク分離して、ピークの面積比から各成分のモル%を算出する。
X1構造:(Ri)(Rj)(Rk)SiO1/2 (6)
X2構造:(Rg)(Rh)Si(O1/2(7)
X3構造:RmSi(O1/2(8)
X4構造:Si(O1/2(9)
Figure 2017138462
(式(6)、(7)及び(8)において、Ri、Rj、Rk、Rg、Rh及びRmは、ケイ素原子に結合している有機基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基又はアルコキシ基を示す。)
なお、本発明では、化学シフト値からシランモノマーを特定して、トナー粒子の29Si−NMRの測定において全ピーク面積から未反応のモノマー成分を取り除いたX1構造の面積とX2構造の面積とX3構造の面積とX4構造の面積の合計を、有機ケイ素重合体の全ピーク面積とした。
SX1+SX2+SX3+SX4=1.00
SX1={X1構造の面積/(X1構造の面積+X2構造の面積+X3構造の面積+X4構造の面積)}
SX2={X2構造の面積/(X1構造の面積+X2構造の面積+X3構造の面積+X4構造の面積)}
SX3={X3構造の面積/(X1構造の面積+X2構造の面積+X3構造の面積+X4構造の面積)}
SX4={X4構造の面積/(X1構造の面積+X2構造の面積+X3構造の面積+X4構造の面積)}
上記のとおり、本発明においては、トナー粒子のTHF不溶分の29Si−NMRの測定で得られるチャートにおいて、前記有機ケイ素重合体の全ピーク面積に対する上記式(4)で表される構造に帰属されるピーク面積の割合が、40%以上であることが好ましい。この測定方法において、−SiO3/2構造を示す値は上記SX3である。すなわち、SX3が、0.40以上であることが本発明の好ましい条件である。なお、式(4)で表される部分構造をさらに詳細に確認する必要がある場合、上記13C−NMR及び29Si−NMRの測定結果と共に、H−NMRの測定結果を用いて同定してもよい。
<SPMによるトナー粒子表面の算術平均粗さ(Ra)、Raの標準偏差(σRa)、粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)、RSmの標準偏差(σRSm)の測定方法>
SPMによるトナー粒子表面の算術平均粗さ(Ra)、Raの標準偏差(σRa)、粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)、RSmの標準偏差(σRSm)は、以下の測定装置及び測定条件により測定した。
走査型プローブ顕微鏡:日立ハイテクサイエンス(株)製
測定ユニット:E−sweep
測定モード:DFM(共振モード)形状像
解像度:Xデータ数 256、Yデータ数 128
測定エリア:1μm四方
なお、本発明において、トナーに前記有機微粉体又は無機微粉体が外添されている場合は、上記13C−NMR(固体)測定における測定試料の調製方法において述べた方法と同様の方法によって、該有機微粉体又は無機微粉体を除去し、トナー粒子を得る。
また、トナー粒子は、後述するコールター・カウンター法で測定された重量平均粒径(D4)と等しい粒径のトナー粒子を選択して、測定対象とした。また、異なるトナー粒子を10個測定した。
[算術平均粗さ(Ra)の算出方法]
測定されたデータを、「3次元傾き補正」モードの「表面粗さ解析」画面により解析し、得られたデータの平均値を算出してトナー粒子の平均面粗さ(Ra)とした。
[Raの標準偏差(σRa)の定義と算出方法]
Raの標準偏差σRaは、以下のように定義した。まず、測定された1μm四方の測定エリアから、10個の断面(断面1〜断面10)を任意に選択した。ここでは、断面1を例に挙げて説明する。図1のように、粗さ曲線の平均線を基準として、各山と各谷により囲まれた各エリアの面積Sと、各山と各谷により囲まれた各エリアの基準線長さlを計測した。そして、次式により、各山および各谷の基準線からの高さ(深さ)Raを算出した。
Figure 2017138462
断面1の基準線方向に存在するすべての山および谷について、上記式からRaを算出した後、次式によりそれらの平均値Ra’を算出した。
Figure 2017138462
n:断面1における山および谷の数の合計
続いて、次式により、断面1におけるRa’の標準偏差σRa’を算出した。
Figure 2017138462
n:断面1における山および谷の数の合計
断面1〜断面10における上記σRa’を全て算出した後、それらの平均値を算出し、トナー粒子のRaの標準偏差σRaとした。
[粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)の算出方法]
粗さ曲線要素の平均長さRSmは、以下のように算出した。まず、測定された1μm四方の測定エリアから10個の断面(断面1〜断面10)を任意に選択した。ここでは、断面1を例に挙げて説明する。図2のように、粗さ曲線の平均線を基準として、1周期分の凹凸が生じている部分の長さRSmを、すべての凹凸周期分について計測した。そして、次式により、断面1における粗さ曲線要素の平均長さRSm’を算出した。
Figure 2017138462
n:断面1における凹凸周期数の合計
断面1〜断面10における上記RSm’を全て算出した後、それらの平均値を算出し、トナー粒子の粗さ曲線要素の平均長さRSmとした。
[RSmの標準偏差(σRSm)の算出方法]
RSmの標準偏差σRSmは以下のように定義した。まず、上記断面1のRSm’の算出方法において、次式により、断面1におけるRSm’の標準偏差σRSm’を算出した。
Figure 2017138462
n:断面1における凹凸周期数の合計
断面1〜断面10における上記σRSm’を全て算出した後、それらの平均値を算出し、トナー粒子のRSmの標準偏差σRSmとした。
<トナー粒子の重量平均粒径(D4)及び個数平均粒径(D1)の測定方法>
トナー粒子の重量平均粒径(D4)及び個数平均粒径(D1)は、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)と、測定条件設定及び測定データ解析をするための付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いて、実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで測定し、測定データの解析を行い、算出する。測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
なお、測定、解析を行う前に、以下のように前記専用ソフトの設定を行う。
前記専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更画面」において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。閾値/ノイズレベルの測定ボタンを押して、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、測定後のアパーチャーチューブのフラッシュにチェックを入れる。
専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定画面」において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μm以上60μm以下に設定する。
具体的な測定法は以下のとおりである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250ml丸底ビーカーに前記電解水溶液約200mlを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行う。そして、解析ソフトの「アパーチャーのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100ml平底ビーカーに前記電解水溶液約30mlを入れ、この中に分散剤として「コンタミノン(登録商標)N」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で3質量倍に希釈した希釈液を約0.3ml加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を、位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispersion System Tetora150」(日科機バイオス社製)の水槽内に所定量のイオン交換水を入れ、この水槽中に前記コンタミノンNを約2ml添加する。
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー粒子約10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。なお、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となるように適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナー粒子を分散した前記(5)の電解水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行う。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行い、重量平均粒径(D4)を算出する。なお、専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、分析/体積統計値(算術平均)画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)であり、専用ソフトでグラフ/個数%と設定したときの、「分析/個数統計値(算術平均)」画面の「平均径」が個数平均粒径(D1)である。
以下、具体的な製造方法、実施例、比較例をもって本発明をさらに詳細に説明するが、これは本発明を何ら限定するものではない。なお、以下の配合における部数は全て質量部である。
<シリカ粒子1の製造例>
撹拌機、滴下ロートおよび温度計を備えた3Lのガラス製反応器に、メタノール589.6g、水42.0g、28質量%アンモニア水47.1gを加えて混合した。得られた溶液を35℃となるように調整し、撹拌しながら、テトラメトキシシラン1100.0g(7.23モル)および5.4質量%アンモニア水395.2gを同時に添加し始めた。テトラメトキシシランは6時間かけて、アンモニア水は5時間かけて、それぞれ滴下した。滴下が終了した後、さらに0.5時間撹拌を継続して加水分解を行うことにより、親水性球状ゾルゲルシリカ微粒子のメタノール−水分散液を得た。次いで、ガラス製の反応器にエステルアダプターと冷却管とを取り付け、前記分散液を80℃、減圧下で十分乾燥させた。得られたシリカ粒子を、恒温槽にて400℃にて10分間加熱した。
前記工程を複数回実施し、得られたシリカ粒子に対して、パルベライザー(ホソカワミクロン社製)にて解砕処理を行った。
その後、表面処理工程として、まず、シリカ粒子500gを内容積1000mLのポリテトラフルオロエチレン内筒式ステンレスオートクレーブに仕込んだ。次いで、オートクレーブ内を窒素ガスで置換した。その後、オートクレーブ付属の撹拌羽を400rpmで回転させながら、3.5gのHMDS(ヘキサメチルジシラザン(表面処理剤))および1.0gの水を、二流体ノズルにて霧状にしてシリカ粒子に均一になるように吹き付けた。30分間撹拌した後、オートクレーブを密閉し、200℃で2時間加熱した。続いて、加熱したまま系中を減圧して脱アンモニア処理を行い、シリカ粒子1を得た。
シリカ粒子1の一次粒子の平均粒径は、以下のようにして測定した。シリカ粒子を透過電子顕微鏡で観察し、3万〜5万倍に拡大した視野中において、長径が1nm以上の一次粒子300個について、その長径の平均値を算出した。なお、5万倍の拡大倍率においても粒径測定ができないほど、サンプリングした粒子が小さい場合には、写真における粒子の一次粒径が5mm以上になるように、写真をさらに拡大して測定を行った。シリカ粒子1の各物性を表1に示す。
<シリカ粒子2、3の製造例>
シリカ粒子1の製造例において、最初に使用するメタノールの量を、589.6gから、それぞれ、835.4g、277.6gに変更した以外は、シリカ粒子1と同様の方法にて、シリカ粒子2、3を作製した。この変更によって、シリカ粒子の体積平均粒径(Dv)および体積粒度分布における変動係数を調整した。シリカ粒子2、3の各物性を表1に示す。
<シリカ粒子4の製造例>
シリカ粒子1の製造例において、テトラメトキシシランの滴下時間を、6時間から3時間に変更し、5.4質量%アンモニア水の滴下時間を、5時間から3時間に変更した以外は、シリカ粒子1と同様の方法にてシリカ粒子4を作製した。この変更によって、シリカ粒子の体積粒度分布における変動係数を調整した。シリカ粒子4の各物性を表1に示す。
<シリカ粒子5の製造例>
シリカ粒子1の製造例において、HMDS処理を行わなかった以外は、シリカ粒子1と同様の方法にて、シリカ粒子5を作製した。シリカ粒子5の各物性を表1に示す。
<シリカ粒子6、7の製造例>
シリカ粒子1の製造例において、最初に使用するメタノールの量を、589.6gから、それぞれ、1004.5g、187.3gに変更した以外は、シリカ粒子1と同様の方法にて、シリカ粒子6、7を作製した。この変更によって、シリカ粒子の体積平均粒径(Dv)および体積粒度分布における変動係数を調整した。シリカ粒子6、7の各物性を表1に示す。
<シリカ粒子8の製造例>
シリカ粒子1の製造例において、テトラメトキシシランの滴下時間を、6時間から1時間に変更し、5.4質量%アンモニア水の滴下時間を、5時間から1時間に変更し、解砕処理を行わなかった以外は、シリカ粒子1と同様の方法にてシリカ粒子8を作製した。この変更によって、シリカ粒子の体積粒度分布における変動係数を調整した。シリカ粒子8の各物性を表1に示す。
<チタニア粒子1の製造例>
TiO相当分を50質量%含有しているイルメナイト鉱石を、150℃で3時間乾燥した後、硫酸を添加して溶解させ、TiOSOの水溶液を得た。得られた水溶液を濃縮した後、ルチル結晶を有するチタニアゾルをシードとして10質量部添加した後、170℃で加水分解を行い、不純物を含有するメタチタン酸(TiO(OH))のスラリーを得た。このスラリーをpH5〜6で繰り返し洗浄して、硫酸、FeSO及び不純物を十分に除去することで、高純度のメタチタン酸のスラリーを得た。このスラリーを濾過した後、炭酸リチウム(LiCO)を0.5質量部添加し、240℃で4時間焼成した後、ジェットミルによる解砕処理を繰り返し行い、ルチル型結晶を有する酸化チタン微粒子を得た。
得られた酸化チタン微粒子をエタノール中に分散させて撹拌しながら、酸化チタン微粒子100質量部に対して、表面処理剤としてイソブチルトリメトキシシランを5質量部滴下混合して反応させた。乾燥した後、170℃で3時間加熱処理し、酸化チタンの凝集体が無くなるまでジェットミルで繰り返し解砕処理を行い、チタニア粒子1を得た。チタニア粒子1の物性を表1に示す。
<PMMA粒子1>
PMMA粒子1としては、ポリメタクリル酸メチル樹脂微粒子(架橋型PMMA粒子、MP1451、綜研化学社製)を使用した。PMMA粒子1の物性を表1に示す。
<ポリエステル系樹脂1の製造例>
減圧装置、水分離装置、窒素ガス導入装置、温度測定装置及び撹拌装置を備えたオートクレーブ中に、以下の単量体を仕込み、窒素雰囲気下、常圧下において、220℃で15時間反応を行い、更に10〜20mmHgの減圧下で1時間反応させ、ポリエステル系樹脂1を得た。ポリエステル系樹脂1のTg(ガラス転移温度)は75.0℃、酸価は8.1であった。
・テレフタル酸 21質量部
・イソフタル酸 21質量部
・ビスフェノールA−プロピレンオキサイド2モル付加物 89.5質量部
・ビスフェノールA−プロピレンオキサイド3モル付加物 23.0質量部
・シュウ酸チタン酸カリウム 0.030質量部
<ポリエステル系樹脂2の製造例>
・テレフタル酸 11.0モル
・ビスフェノールA−プロピレンオキシド2モル付加物(PO−BPA) 10.9モル
上記単量体をエステル化触媒とともにオートクレーブに仕込み、減圧装置、水分離装置、窒素ガス導入装置、温度測定装置及び撹拌装置をオートクレーブに装着した。窒素雰囲気下、減圧しながら、常法に従って210℃でTgが68℃になるまで反応を行い、ポリエステル系樹脂2を得た。ポリエステル系樹脂2の重量平均分子量(Mw)は7,360、数平均分子量(Mn)は2,980であった。
<ポリエステル系樹脂3の製造例>
・ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物 725質量部
・フタル酸 290質量部
・ジブチルチンオキサイド 3.0質量部
上記材料を220℃にて攪拌して7時間反応させ、更に減圧下で5時間反応させた後、80℃まで冷却し、酢酸エチル中にてイソホロンジイソシアネート190質量部と2時間反応させて、イソシアネート基含有プレポリマーを得た。次いで、イソシアネート基含有プレポリマー25質量部とイソホロンジアミン1質量部を50℃で2時間反応させ、ウレア基を含有するポリエステルを主成分とするポリエステル系樹脂3を得た。得られたポリエステル系樹脂3の重量平均分子量(Mw)は21,600、数平均分子量(Mn)は3,040、ピーク分子量は7,100であった。
<トナー粒子1の製造例>
還流管、撹拌機、温度計および窒素導入管を備えた4つ口容器中に、イオン交換水700質量部と、0.1モル/リットルのNaPO水溶液1000質量部と、1.0モル/リットルのHCl水溶液22.0質量部を添加した。高速撹拌装置T.K.ホモミクサー(特殊機化工業株式会社製)を用いて12,000rpmで撹拌しながら、60℃に保持した。ここに1.0モル/リットルのCaCl水溶液85質量部を徐々に添加し、微細な難水溶性分散安定剤Ca(POを含む水系分散媒体を調製した。その後、以下の原料を用いて、重合性単量体組成物を作製した。
・スチレンモノマー 75.0質量部
・n−ブチルアクリレート 25.0質量部
・ジビニルベンゼン 0.1質量部
・有機ケイ素化合物(ビニルトリエトキシシラン) 8.0質量部
・銅フタロシアニン顔料(ピグメントブルー15:3) 6.5質量部
・ポリエステル系樹脂1 5.0質量部
・荷電制御剤(ボントロンE−88、オリエント化学社製) 0.7質量部
・離型剤(パラフィンワックス、HNP−5、日本精鑞製、融点60℃) 9.0質量部
上記原料をアトライタ(日本コークス工業社製)で3時間分散させ、重合性単量体組成物とした。次に、この重合性単量体組成物を別の容器に移し、撹拌しながら60℃で20分保持し、その後、重合開始剤であるt−ブチルパーオキシピバレート16.0質量部(トルエン溶液50%)を添加し、撹拌しながら5分間保持した。次に、前記重合性単量体組成物を、前記水系分散媒体中に投入し、高速撹拌装置で撹拌しながら、10分間造粒した。その後、高速撹拌装置をプロペラ式撹拌器に変えて、内温を70℃に昇温させ、ゆっくり撹拌しながら4時間反応させて、重合体スラリーを得た(反応1工程)。pHは5.5であった。
一方で、窒素ガス導入装置、温度測定装置および撹拌装置を備えたオートクレーブ中にシリカ粒子1を1.5質量部、ビニルトリエトキシシランを3.0部仕込み、窒素雰囲気下、常圧下において、70℃で5時間反応を行い、シリカ粒子分散液を作製した。このシリカ粒子分散液を、反応1工程の終了した前記重合体スラリー中に添加した後、容器内を温度85℃に昇温して3.0時間維持した(反応2工程)。
次に、イオン交換水を300質量部添加して、還流管を取り外し、蒸留装置を取り付けた。容器内の温度が100℃の蒸留を4時間行って残存単量体およびトルエンを取り除き、重合体スラリーを得た(反応3工程)。
次に、容器内を85℃まで冷却した後、温度を維持しながら1.0モル/リットルのNaOHを13.0質量部加えてpHを9.0にした。その後、85℃にてさらに4時間反応を行った(反応4工程)。30℃に冷却後の重合体スラリーを含む容器内に希塩酸を添加して分散安定剤を除去した。さらに、ろ別、洗浄、乾燥を行った後、風力分級によって微粗粉をカットし、トナー粒子1とした。トナー粒子1の処方及び条件を表2及び表3に示し、物性を表4に示す。
<トナー粒子2〜12、14、15の製造例>
表2に示した重合性単量体組成物の組成量及び製造条件、並びに、表3に示した有機ケイ素化合物及び大粒径粒子に変更した以外は、前記トナー粒子1の製造例に従い、トナー粒子2、4〜12、14、15を得た。得られた粒子の物性を表4に示す。なお、反応3工程における減圧蒸留の方法は以下のとおりである。
プロペラ式攪拌装置において、100r/minで攪拌しつつ、80℃で13.3kPa(100Torr)以下の圧力で減圧蒸留を行い、残留単量体を除去して反応を終了した。その後、残存単量体およびトルエンを除去した。
<トナー粒子13の製造例>
トナー粒子1の製造例において、シリカ粒子分散液の添加方法を以下のように変更した。まず、窒素ガス導入装置、温度測定装置および撹拌装置を備えたオートクレーブ中にシリカ粒子1を1.5質量部、ビニルトリエトキシシランを3.0部仕込み、窒素雰囲気下、常圧下において、70℃で5時間反応を行い、シリカ粒子分散液を作製した。このシリカ粒子分散液を2つの容器に等しい分量となるように分けて、シリカ粒子分散液A及びシリカ粒子分散液Bとした。まず、シリカ粒子分散液Aを反応1工程が終了した重合体スラリー中に添加した。その後、シリカ粒子分散液Bを反応3工程が終了した重合体スラリー中に添加し、反応4工程を進行させた。それ以外は、トナー粒子1と同様の方法にてトナー粒子13を得た。得られた粒子の物性を表4に示す。
<トナー粒子16の製造例>
還流管、撹拌機、温度計および窒素導入管を備えた4つ口容器中に、イオン交換水700質量部と、0.1モル/リットルのNaPO水溶液1000質量部と、1.0モル/リットルのHCl水溶液22.0質量部を添加した。高速撹拌装置T.K.ホモミクサー(特殊機化工業株式会社製)を用いて12,000rpmで撹拌しながら、60℃に保持した。ここに1.0モル/リットルのCaCl水溶液85質量部を徐々に添加し、微細な難水溶性分散安定剤Ca(POを含む水系分散媒体を調製した。その後、以下の原料を用いて、重合性単量体組成物を作製した。
・スチレンモノマー 75.0質量部
・n−ブチルアクリレート 25.0質量部
・ジビニルベンゼン 0.1質量部
・有機ケイ素化合物(ビニルトリエトキシシラン) 8.0質量部
・シリカ粒子5 1.5質量部
・銅フタロシアニン顔料(ピグメントブルー15:3) 6.5質量部
・ポリエステル系樹脂1 5.0質量部
・荷電制御剤(ボントロンE−88、オリエント化学社製) 0.7質量部
・離型剤(パラフィンワックス、HNP−5、日本精鑞製、融点60℃) 9.0質量部
上記原料をアトライタ(日本コークス工業社製)で3時間分散させ、重合性単量体組成物とした。次に、この重合性単量体組成物を別の容器に移し、撹拌しながら60℃で20分保持し、その後、重合開始剤であるt−ブチルパーオキシピバレート16.0質量部(トルエン溶液50%)を添加し、撹拌しながら5分間保持した。次に、前記重合性単量体組成物を、前記水系分散媒体中に投入し、高速撹拌装置で撹拌しながら、10分間造粒した。その後、高速撹拌装置をプロペラ式撹拌器に変えて、内温を70℃に昇温させ、ゆっくり撹拌しながら4時間反応させた(反応1工程)。pHは5.5であった。
その後、容器内を温度85℃に昇温して3.0時間維持した(反応2工程)。
次に、イオン交換水を300質量部添加して、還流管を取り外し、蒸留装置を取り付けた。容器内の温度が100℃の蒸留を4時間行って残存単量体およびトルエンを取り除き、重合体スラリーを得た(反応3工程)。
次に、容器内を85℃まで冷却した後、温度を維持しながら1.0モル/リットルのNaOHを13.0質量部加えてpHを9.0にした。その後、85℃にてさらに4時間反応を行った(反応4工程)。30℃に冷却後の重合体スラリーを含む容器内に希塩酸を添加して分散安定剤を除去した。さらに、ろ別、洗浄、乾燥を行った後、風力分級によって微粗粉をカットし、トナー粒子16とした。トナー粒子16の処方及び条件を表2及び表3に示し、物性を表4に示した。
<トナー粒子17の製造例>
・ポリエステル系樹脂2 60.0質量部
・ポリエステル系樹脂3 40.0質量部
・銅フタロシアニン顔料(ピグメントブルー15:3) 6.5質量部
・有機ケイ素化合物(ビニルトリエトキシシラン) 5.0質量部
・荷電制御剤(ボントロンE−88、オリエント化学社製) 0.7質量部
・離型剤(パラフィンワックス、HNP−5、日本精鑞製、融点60℃) 9.0質量部
上記材料を、トルエン400質量部に溶解して、溶解液を得た。
リービッヒ還流管を備え付けた四つ口容器中に、イオン交換水700質量部と、0.1モル/リットルのNaPO水溶液1000質量部と、1.0モル/リットルのHCl水溶液22.0質量部を添加した。高速撹拌装置T.K.ホモミクサー(特殊機化工業株式会社製)を用いて12,000rpmで撹拌しながら、60℃に保持した。ここに1.0モル/リットルのCaCl水溶液85質量部を徐々に添加し、微細な難水溶性分散安定剤Ca(POを含む水系分散媒体を調製した。
次に前記溶解液100質量部をT.K.ホモミクサー(特殊機化工業株式会社製)で12,000rpmに攪拌しながら投入し、5分間攪拌した。次いで、この混合液を70℃にて5時間保持して、重合体スラリーを得た。pHは5.5であった。
一方で、窒素ガス導入装置、温度測定装置、撹拌装置を備えたオートクレーブ中にシリカ粒子1を1.5質量部、ビニルトリエトキシシランを3.0部仕込み、窒素雰囲気下、常圧下において、70℃で5時間反応を行い、シリカ粒子分散液を作製した。作製したシリカ粒子分散液を前記重合体スラリー中に投入し、容器内を85℃まで昇温して3時間保持した。その後、イオン交換水を300質量部添加して、還流管を取り外し、蒸留装置を取り付けた。次に、容器内の温度が100℃の蒸留を4時間行って重合体スラリーを得た。その後、容器内の温度を85℃にし、1.0モル/リットルのNaOH13.0質量部を加え、pHを9.0にした。85℃にてさらに4時間反応を進行させた。重合体スラリーを含む容器内に希塩酸を添加して分散安定剤を除去した。さらに、ろ別、洗浄、乾燥、風力分級による微粗粉カットをして、トナー粒子17を得た。得られたトナー粒子の物性を表4に示す。
<比較トナー粒子1、3〜7の製造例>
表2に示した重合性単量体組成物の組成量及び製造条件、並びに、表3に示した有機ケイ素化合物及び大粒径粒子に変更した以外は、前記トナー粒子1の製造例に従い、比較トナー粒子1、比較トナー粒子3〜7を得た。得られたトナー粒子の物性を表4に示す。
<比較トナー粒子2の製造例>
表2に示した重合性単量体組成物の組成量及び製造条件、並びに、表3に示した有機ケイ素化合物及び大粒径粒子に変更し、また、反応4工程でのNaOH水溶液添加を実施せず、反応4工程終了後の希塩酸添加を実施しなかった以外は、前記トナー粒子1の製造例に従い、比較トナー粒子2を得た。得られたトナー粒子の物性を表4に示す。
<比較トナー粒子8の製造例>
トナー粒子1の製造例において、シリカ粒子分散液の添加方法を以下のように変更した。まず、窒素ガス導入装置、温度測定装置および撹拌装置を備えたオートクレーブ中に、シリカ粒子1を1.5質量部、ビニルトリエトキシシランを3.0部仕込み、窒素雰囲気下、常圧下において、70℃で5時間反応を行い、シリカ粒子分散液を作製した。このシリカ粒子分散液を3つの容器に等しい分量となるように分けて、シリカ粒子分散液C、シリカ粒子分散液D、シリカ粒子分散液Eとした。まず、シリカ粒子分散液Cを反応1工程が終了した重合体スラリー中に添加した。次に、反応3工程が終了した後、容器内の温度を65℃に設定し、重合体スラリー中にシリカ粒子分散液Dを添加して、反応4工程を開始した。さらに、反応4工程を開始して2.0時間後に、シリカ粒子分散液Eを重合体スラリー中に添加した。それ以外は、トナー粒子1の製造例と同様の方法にて比較トナー粒子8を得た。得られたトナー粒子の物性を表4に示す。
[実施例1]
図3に示す構成を有するタンデム方式のキヤノン製レーザービームプリンタLBP9510Cを改造して、シアンステーションのみでプリント可能とした。また、評価機本体のギア及びソフトウエアを変更することにより、プロセススピードが300mm/secとなるようにした。さらに、バックコントラストと転写電流を任意に設定できるように改造した。ここで、バックコントラストとは、トナー担持体電位と非画像部の静電荷像担持体電位に差を設け、トナーが極力非画像部に現像されないように制御するための電位差のことである。
評価に用いるカートリッジとしては、シアンカートリッジを用いた。すなわち、市販のシアンカートリッジから製品トナーを抜き取り、エアーブローにて内部を清掃した後、上記で得られた本発明に係るトナー粒子を充填して、トナーの評価を行った。なお、マゼンタ、イエロー、ブラックの各ステーションには、それぞれ製品トナーを抜き取り、トナー残量検知機構を無効としたマゼンタ、イエロー、及びブラックカートリッジを挿入して評価を行った。
このLBP9510C用トナーカートリッジを用いて、トナー粒子1を200g充填した(トナー1)。そして、そのトナーカートリッジを高温高湿(32.5℃/85%RH)環境(HH環境)下で24時間放置した。高温高湿環境下で24時間放置後にトナーカートリッジをLBP9510Cに取り付け、1.0%の印字比率の画像をA4用紙横方向、間歇モード(すなわち、2枚プリントアウトする毎に10秒間現像器を休止させ、再起動時の現像装置の予備動作でトナーの劣化を促進させるモード)で20,000枚までプリントアウトした。初期及び20,000枚出力時(耐久後)のカブリラチチュード、転写ラチチュード、帯電均一性、トナー劣化の評価を、以下に示す方法により行った。結果を表5に示す。
<カブリラチチュードの評価>
バックコントラストを40Vから400Vまで10V刻みで変化させ、それぞれにおいて全面白地画像(0%の印字比率の画像)をプリントし、「リフレクトメータ」(東京電色社製)にアンバーフィルターを装着して、カブリを測定した。その作業を初期及び20,000枚印刷後において実施した。カブリの測定値は、未使用紙の測定値から全面白地画像の測定値を差し引いた、カブリ濃度(%)である。図4に、実施例1の測定例を示すが、2.0%以内にカブリ濃度が収まっている範囲をカブリラチチュードと定義した。およそ、カブリ濃度が3.5%を越えると画像弊害として認識される傾向にある。したがって、カブリ濃度が2.0%以内に収まるカブリラチチュードが90V以上である場合には、カブリ制御設計の優位性が発現すると判断した。評価基準を以下に示す。
A:カブリラチチュード250V以上
B:カブリラチチュード150V以上250V未満
C:カブリラチチュード90V以上150V未満
D:カブリラチチュード50V以上90V未満
E:カブリラチチュード50V未満
<転写ラチチュードの評価>
初期及び20,000枚印刷後において、転写電流を2〜20μAの間において2μA刻みで変化させ、それぞれにおいてベタ画像を出力し、ベタ画像転写後の感光体上の転写残トナーをマイラーテープでテーピングして剥ぎ取った。その後、前記テープとテーピングしていないテープを、LETTERサイズのXEROX 4200用紙(XEROX社製、75g/m)に貼り付けた。前記テープの反射率Ds(%)から、テーピングせず貼り付けたテープの反射率Dr(%)を差し引いた数値を、転写性を表す数値とした。この転写性の数値が2.0以下となる転写電流範囲を転写ラチチュードとした。なお、反射率の測定は、「REFLECTMETER MODEL TC−6DS」(東京電色社製)を用い、アンバーフィルターを装着して測定した。評価基準を以下に示す。
A:転写ラチチュード13μA以上
B:転写ラチチュード10μA以上13μA未満
C:転写ラチチュード7μA以上10μA未満
D:転写ラチチュード4μA以上7μA未満
E:転写ラチチュード4μA未満
<帯電均一性の評価>
初期及び20,000枚印刷後のカートリッジ内トナーの粒度分布測定を、前述の重量平均粒径(D4)の測定方法に従って行い、得られた各々の重量平均粒径(D4)から、下記式を基に粒度変化指数を算出して、下記基準に基づいて評価を行った。各トナーの帯電分布が均一であるほど、耐久使用により各粒径のトナーが一様に消費されていくため、重量平均粒径(D4)の変化指数は100に近くなる。
粒度変化指数(%)=(初期の重量平均粒径(D4)/20,000枚印刷後の重量平均粒径(D4))×100
A:95≦粒度変化指数(%)≦100
B:85≦粒度変化指数(%)<95
C:75≦粒度変化指数(%)<85
D:粒度変化指数(%)<75
<トナー劣化の評価>
トナー劣化の評価は、初期及び20,000枚印刷後のベタ画像濃度の変化率を算出することにより行った。すなわち、得られた各々の濃度から、下記式を基にその濃度変化率を算出して、下記基準に基づいて評価を行った。
濃度変化率(%)=(20,000枚印刷後のベタ画像濃度/初期のベタ画像濃度)×100
A:95≦濃度変化率(%)≦100
B:85≦濃度変化率(%)<95
C:75≦濃度変化率(%)<85
D:濃度変化率(%)<75
[実施例2〜17、比較例1〜8]
トナー粒子2〜17及び比較トナー粒子1〜8を用いて、実施例1と同様にトナー2〜17及び比較トナー1〜8の評価を行った。結果を表5に示す。
Figure 2017138462
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1:感光体、2:現像ローラ、3:トナー供給ローラ、4:トナー、5:規制ブレード、6:現像装置、7:レーザー光、8:帯電装置、9:クリーニング装置、10:クリーニング用帯電装置、11:撹拌羽根、12:駆動ローラ、13:転写ローラ、14:バイアス電源、15:テンションローラー、16:転写搬送ベルト、17:従動ローラ、18:紙、19:給紙ローラ、20:吸着ローラ、21:定着装置

Claims (4)

  1. 有機ケイ素重合体を含有する表面層を有するトナー粒子を含むトナーであって、
    前記有機ケイ素重合体は、下記式(1)又は(2)で表される部分構造を有し、
    前記トナー粒子の表面のX線光電子分光分析において、トナー粒子表面の、炭素原子の濃度dC、酸素原子の濃度dO、及びケイ素原子の濃度dSiの合計を100.0原子%としたときに、前記ケイ素原子の濃度dSiが1.0原子%以上22.2原子%以下であり、
    前記トナー粒子の走査型プローブ顕微鏡で測定される粗さ曲線において、JIS B0601:2001に基づいて測定される算術平均粗さRa(nm)が10nm以上300nm以下であり、
    前記Raの標準偏差をσRa(nm)としたとき、σRa/Raが0.60以下であり、
    前記粗さ曲線において、前記トナー粒子のJIS B0601:2001に基づいて測定される粗さ曲線要素の平均長さRSm(nm)が20nm以上500nm以下であり、
    前記RSmの標準偏差をσRSm(nm)としたとき、σRSm/RSmが0.60以下であることを特徴とするトナー。
    Figure 2017138462
    (式(2)において、Lは、メチレン基、エチレン基又はフェニレン基を示す。)
  2. 前記トナー粒子のJIS B0601:2001に基づいて測定される粗さ曲線要素の平均長さをRSm1とし、前記トナー粒子をスクロース溶液中で遠心分離にかけて、前記トナー粒子の表面への付着力が小さい粒子を分離除去したトナー粒子の、前記粗さ曲線要素の平均長さをRSm2としたとき、RSm2/RSm1が1.20以下である、請求項1に記載のトナー。
  3. 前記RSm2/RSm1が1.10以下である請求項2に記載のトナー。
  4. 前記有機ケイ素重合体が、下記式(3)で表される有機ケイ素化合物に由来するユニットを含む重合体である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のトナー。
    Figure 2017138462
    (式(3)において、Rfは、下記式(i)又は(ii)で表される部分構造を示し、R1、R2及びR3は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アセトキシ基又はアルコキシ基を示す。)
    Figure 2017138462
    (式(i)および式(ii)において、※は、ケイ素原子との結合部を示す。式(ii)において、Lは、メチレン基、エチレン基又はフェニレン基を示す。)
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