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JP2017190369A - インクジェットインク組成物、及び記録方法 - Google Patents

インクジェットインク組成物、及び記録方法 Download PDF

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JP2017190369A
JP2017190369A JP2016079082A JP2016079082A JP2017190369A JP 2017190369 A JP2017190369 A JP 2017190369A JP 2016079082 A JP2016079082 A JP 2016079082A JP 2016079082 A JP2016079082 A JP 2016079082A JP 2017190369 A JP2017190369 A JP 2017190369A
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紘平 石田
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紘平 石田
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Abstract

【課題】優れた吐出安定性を維持しつつ、吐出ノズルに目詰まりが発生しにくいインクジェットインク組成物を提供する。【解決手段】色材と水と有機溶剤と樹脂粒子とを含み、該樹脂粒子は、側鎖に親水性ブロックを有する樹脂を含有する樹脂粒子を含む、インクジェットインク組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、インクジェットインク組成物、及び記録方法に関する。
インクジェット記録方法は、比較的単純な装置で、高精細な画像の記録が可能であり、各方面で急速な発展を遂げている。その中で、より安定して高品質な記録物を得ることについて種々の検討がなされている。
例えば、特許文献1には、優れた分散安定性を有し、熱エネルギーをインクに加えて吐出させるインクジェット記録方法に用いた場合にも、高い吐出安定性が実現され、光沢紙を用いた場合でも、十分な耐擦過性を実現した画像形成ができるインクジェット用顔料インクの提供を目的として、顔料と水とグラフトコポリマーと水溶性有機溶剤を含み、グラフトコポリマーを構成する疎水性セグメントが、所定の芳香環等を有するモノマーとアニオン性官能基を有するモノマーとを共重合してなり、グラフトコポリマーを構成する親水性セグメントがアニオン性官能基を有するモノマーを重合してなるインクジェット用顔料インクが開示されている。
特開2008−143987号公報
しかしながら、特許文献1に開示されているようなインクジェット用顔料インクを用いると、高い吐出安定性が実現できるものの、該インクを吐出する吐出ノズルのノズル面に対して、該インクに含まれるグラフトコポリマーが固着することに起因して、吐出ノズルに目詰まりが生じる。
そこで、本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、優れた吐出安定性を維持しつつ、吐出ノズルに発生した目詰まりが解消しやすいインクジェットインク組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、色材と水と樹脂粒子とを含み、該樹脂粒子が側鎖に親水性ブロックを有する樹脂を含有する樹脂粒子を含むインクジェットインク組成物を用いることにより、吐出安定性、及び目詰まり回復性に優れることを見出して、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、色材と、水と、樹脂粒子と、を含み、前記樹脂粒子は、側鎖に親水性ブロックを有する樹脂を含有する樹脂粒子を含む、インクジェットインク組成物である。このようなインク組成物が本発明の課題を解決できる要因は下記のように考えている。ただし、要因はこれに限定されない。すなわち、本発明に係るインクジェットインク組成物は、主として、側鎖に親水性ブロックを有する樹脂を含有する樹脂粒子を含むことにより、樹脂粒子の水に対する分散性がより向上すると共に低い粘度を有することに起因して、優れた吐出安定性に加えて、優れた目詰まり回復性を得ることができる。
また、本発明に係るインク組成物において、標準沸点が280℃以上である有機溶剤の含有量が、前記インクジェットインク組成物の総量に対して、3.0質量%以下であると好ましく、布帛を含む被記録媒体上に、前記インクジェットインク組成物を記録する方法に用いられると好ましく、前記樹脂粒子の含有量が、前記インクジェットインク組成物の総量に対して、0.5質量%以上20質量%以下であると好ましく、前記親水性ブロックは、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリエチレングリコール、ポリフェニレンオキシド、ポリビニルプロピレン、及びポリアクリルアミドからなる群より選択される1種又は2種以上であると好ましく、前記樹脂粒子の平均粒子径が、100nm以上1000nm以下であると好ましく、架橋剤をさらに含むと好ましく、前記色材は、顔料及び/又は染料を含有すると好ましい。
さらに、本発明の捺染方法は、被記録媒体上に、本発明に係るインクジェットインク組成物を記録する工程を有する。
本実施形態の記録方法の一例を示すフローチャートである。
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。なお、本明細書において「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸及びそれに対応するメタクリル酸の両方を意味する。
本明細書において、「捺染」とは、布帛を含む被記録媒体上にインクを記録(印刷)することをいう。また、「インクジェット捺染」とは、インクジェット方式を利用して布帛を含む被記録媒体上にインクを記録(印刷)することをいい、インクジェット記録の一種である。「記録物」とは、布帛を含む被記録媒体上にインクが記録されて画像が形成されたものをいう。
〔インクジェットインク組成物〕
本実施形態のインクジェットインク組成物(以下、単に「インク組成物」ともいう。)は、色材と、水と、樹脂粒子とを含む。また、当該樹脂粒子は、側鎖に親水性ブロックを有する樹脂を含有する樹脂粒子を含む。このようなインク組成物を用いることにより、優れた吐出安定性及び目詰まり回復性を得ることができる。要因は下記のように考えている。ただし、要因はこれに限定されない。すなわち、本実施形態のインク組成物は、主として、側鎖に親水性ブロックを有する樹脂を含有する樹脂粒子を含むことにより、樹脂粒子の水に対する分散性がより向上すると共に低い粘度を有することに起因して、優れた吐出安定性に加えて、優れた目詰まり回復性を得ることができる。
<色材>
本実施形態の色材は、顔料及び/又は染料を含有することができる。
顔料としては、特に限定されないが、例えば、以下のものが挙げられる。顔料は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
ブラックインクに使用されるカーボンブラックとしては、特に限定されないが、例えば、No.2300、No.900、MCF88、No.33、No.40、No.45、No.52、MA7、MA8、MA100、No.2200B等(以上、三菱化学社(Mitsubishi Chemical Corporation)製)、Raven 5750、Raven 5250、Raven 5000、Raven 3500、Raven 1255、Raven 700等(以上、コロンビアカーボン(Carbon Columbia)社製)、Rega1 400R、Rega1 330R、Rega1 660R、Mogul L、Monarch 700、Monarch 800、Monarch 880、Monarch 900、Monarch 1000、Monarch 1100、Monarch 1300、Monarch 1400等(キャボット社(CABOT JAPAN K.K.)製)、Color Black FW1、Color Black FW2、Color Black FW2V、Color Black FW18、Color Black FW200、Color B1ack S150、Color Black S160、Color Black S170、Printex 35、Printex U、Printex V、Printex 140U、Special Black 6、Special Black 5、Special Black 4A、Special Black 4(以上、デグッサ(Degussa)社製)が挙げられる。
ホワイトインクに使用される顔料としては、特に限定されないが、例えば、C.I.ピグメントホワイト 6、18、21、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、白色の中空樹脂粒子及び高分子粒子が挙げられる。
イエローインクに使用される顔料としては、特に限定されないが、例えば、C.I.ピグメントイエロー 1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、16、17、24、34、35、37、53、55、65、73、74、75、81、83、93、94、95、97、98、99、108、109、110、113、114、117、120、124、128、129、133、138、139、147、151、153、154、167、172、180が挙げられる。
マゼンタインクに使用される顔料としては、特に限定されないが、例えば、C.I.ピグメントレッド 1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、40、41、42、48:2、48:5、57:1、88、112、114、122、123、144、146、149、150、166、168、170、171、175、176、177、178、179、184、185、187、202、209、219、224、245、又はC.I.ピグメントヴァイオレット 19、23、32、33、36、38、43、50が挙げられる。
シアンインクに使用される顔料としては、特に限定されないが、例えば、C.I.ピグメントブルー 1、2、3、15、15:1、15:2、15:3、15:34、15:4、16、18、22、25、60、65、66、C.I.バットブルー 4、60が挙げられる。
また、上記以外の顔料としては、特に限定されないが、例えば、C.I.ピグメントグリーン 7,10、C.I.ピグメントブラウン 3,5,25,26、C.I.ピグメントオレンジ 1,2,5,7,13,14,15,16,24,34,36,38,40,43,63が挙げられる。
色材は、自己分散型顔料及び樹脂分散型顔料からなる群より選択される1種又は2種以上の顔料を含むことが好ましい。これにより、色材が記録物中に均一に分散されることに起因して、光沢性により優れる傾向にある。
自己分散型顔料とは、その表面に親水基を有する顔料である。親水基としては、−OM、−COOM、−CO−、−SO3M、−SO2M、−SO2NH2、−RSO2M、−PO3HM、−PO32、−SO2NHCOR、−NH3、及び−NR3からなる群より選択される少なくとも1種の親水基であることが好ましい。
なお、これらの化学式中、Mは、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム、置換基を有していてもよいフェニル基、又は有機アンモニウムを表し、Rは、炭素原子数1〜12のアルキル基又は置換基を有していてもよいナフチル基を表す。また、上記のM及びRは、それぞれ互いに独立して選択される。
自己分散型顔料は、具体的には、顔料に物理的処理及び/又は化学的処理を施すことで、上記親水基を顔料の表面に結合(グラフト)させて製造される。当該物理的処理として、具体的には、真空プラズマ処理等が挙げられる。また、当該化学的処理として、具体的には水中で酸化剤により酸化する湿式酸化法、p−アミノ安息香酸を顔料表面に結合させることによりフェニル基を介してカルボキシル基を結合させる方法等が挙げられる。
上記の樹脂分散型顔料とは、樹脂によって液中に分散可能となった顔料である。顔料に対する樹脂の含有量は、顔料を被覆する樹脂の被覆率として表すことができる。樹脂の被覆率は、1.0%以上50%以下が好ましく、1.0%以上10%以下がより好ましく、1.0%以上5.0%以下がさらに好ましい。この被覆率が1.0%以上であることで、分散性が良好なものとなる傾向にある。また、上記被覆率が50%以下であることで、発色性がさらに良好なものとなる傾向にあり、5.0%以下であることで、発色性がなおも一層良好なものとなる傾向にある。
上記樹脂は、その構成成分のうち70質量%以上が(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸の共重合による樹脂であると好ましい。これにより、インクの定着性及び光沢性に一層優れるものとなる傾向にある。また、(メタ)アクリル酸アルキル(炭素数1〜24のアルキル)及び(メタ)アクリル酸環状アルキル(炭素数3〜24の環状アルキル)のうち少なくとも一方が70質量%以上のモノマー成分から重合されたものであることがより好ましい。当該モノマー成分として、具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸t−ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸イソボロニル、(メタ)アクリル酸セチル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸イソステアリル、(メタ)アクリル酸テトラメチルピペリジル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシ、及び(メタ)アクリル酸ベヘニルが挙げられる。また、その他の重合用モノマー成分として、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール等のヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル酸ヒドロキシ、(メタ)アクリル酸ウレタン、(メタ)アクリル酸エポキシ等も挙げられる。
染料としては、特に限定されないが、例えば、以下のものが挙げられる。染料は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。また、染料は、昇華性染料であることが好ましい。ここで「昇華性染料」とは、加熱により昇華する性質を有する染料をいう。
ブラック染料としては、特に限定されないが、例えば、C.I.ディスパースブラック1、3、10、及び24が挙げられる。
イエロー染料としては、特に限定されないが、例えば、C.I.ディスパースイエロー3、4、5、7、9、13、23、24、30、33、34、42、44、49、50、51、54、56、58、60、63、64、66、68、71、74、76、79、82、83、85、86、88、90、91、93、98、99、100、104、108、114、116、118、119、122、124、126、135、140、141、149、160、162、163、164、165、179、180、182、183、184、186、192、198、199、202、204、210、211、215、216、218、224、227、231、及び232が挙げられる。オレンジ染料としては、特に限定されないが、例えば、C.I.ディスパースオレンジ1、3、5、7、11、13、17、20、21、25、29、30、31、32、33、37、38、42、43、44、45、46、47、48、49、50、53、54、55、56、57、58、59、61、66、71、73、76、78、80、89、90、91、93、96、97、119、127、130、139、及び142が挙げられる。
レッド染料としては、特に限定されないが、例えば、C.I.ディスパースレッド1、4、5、7、11、12、13、15、17、27、43、44、50、52、53、54、55、56、58、59、60、65、72、73、74、75、76、78、81、82、86、88、90、91、92、93、96、103、105、106、107、108、110、111、113、117、118、121、122、126、127、128、131、132、134、135、137、143、145、146、151、152、153、154、157、159、164、167、169、177、179、181、183、184、185、188、189、190、191、192、200、201、202、203、205、206、207、210、221、224、225、227、229、239、240、257、258、266、277、278、279、281、288、298、302、303、310、311、312、320、324、及び328が挙げられる。バイオレット染料としては、特に限定されないが、例えば、C.I.ディスパースバイオレット1、4、8、23、26、27、28、31、33、35、36、38、40、43、46、48、50、51、52、56、57、59、61、63、69、及び77が挙げられる。
ブルー染料としては、特に限定されないが、例えば、C.I.ダイレクトブルー199、C.I.ディスパースブルー3、7、9、14、16、19、20、26、27、35、43、44、54、55、56、58、60、62、64、71、72、73、75、79、81、82、83、87、91、93、94、95、96、102、106、108、112、113、115、118、120、122、125、128、130、134、139、141、142、143、146、148、149、153、154、158、165、167、171、173、174、176、181、183、185、186、187、189、197、198、200、201、205、207、211、214、224、225、257、259、266、267、268、270、284、285、287、288、291、293、295、297、301、315、330、333、359、360が挙げられる。
また、上記以外の染料としては、特に限定されないが、例えば、グリーン染料及びブラウン染料が挙げられる。グリーン染料としては、特に限定されないが、例えば、C.I.ディスパースグリーン9が挙げられる。ブラウン染料としては、特に限定されないが、例えば、C.I.ディスパースブラウン1、2、4、9、13、19が挙げられる。
また、このような染料としては、置換基を有してもよいアントラキノン骨格を有する分散染料、置換基を有してもよいアゾ骨格を有する染料が挙げられる。このなかでも、置換基を有してもよいアントラキノン骨格を有する染料が好ましい。染料がアントラキノン骨格を有する染料であることにより、ノズル内壁などの記録装置に対するインク組成物の濡れ性がより向上し、吐出安定性がより向上する傾向にある。置換基としては、特に限定されないが、例えば、ハロゲン基、ヒドロキシルキ基、アミノ基、ニトロ基、及びカルボキシル基が挙げられる。
インク組成物において、色材の含有量は、インク組成物の総量(100質量%)に対し、好ましくは0.2質量%以上10質量%以下であり、より好ましくは1.0質量%以上7.0質量%以下であり、さらに好ましくは2.0質量%以上5.0質量%以下である。色材の含有量が上記範囲内であることにより、発色性、吐出安定性及び目詰まり回復性がより向上する傾向にある。
<水>
本実施形態の水としては、例えば、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、及び蒸留水等の純水、並びに超純水のような、イオン性不純物を極力除去したものが挙げられる。また、紫外線照射又は過酸化水素の添加等によって滅菌した水を用いると、凝集液を長期保存する場合にカビやバクテリアの発生を防止することができる。これにより貯蔵安定性がより向上する傾向にある。
<有機溶剤>
本実施形態のインク組成物は、有機溶剤をさらに含むことができる。有機溶剤は、水と共に用いることができる有機溶剤であれば、特に限定されない。また、標準沸点が280℃以上である有機溶剤の含有量が、上記インク組成物の総量(100質量%)に対して、好ましくは3.0質量%以下であり、より好ましくは1.0質量%以下であり、さらに好ましくは0.5質量%以下であり、さらにより好ましくは0.2質量%以下であり、さらに好ましくは0.1質量%以下である。標準沸点が280℃以上である有機溶剤を、3.0質量%を超えて含有しないことにより、被記録媒体に着弾したインク組成物の乾燥性をより高い水準で得ることができることに起因して、優れた耐擦性が得られる傾向にある。この要因は、次のように推察される(ただし、要因はこれに限定されない。)。一般に、低吸収性の被記録媒体や非吸収性の被記録媒体上にインクジェットインク組成物を塗布する場合には、被記録媒体上でのブリード現象等を抑制するため加熱(例えば、40〜50℃)をしながら該インク組成物を吐出することがあり、このような加熱環境下においても吐出安定性や目詰まり回復性を維持するために、標準沸点が280℃以上である有機溶剤をインク組成物中に含有させることがある。しかしながら、このような標準沸点が280℃以上である有機溶剤は、被記録媒体中に残留しやすい傾向があり、耐擦性の低下を招くことがある。本実施形態のインク組成物によれば、主として側鎖に親水性ブロックを有する樹脂を含有する樹脂粒子を含むことにより、標準沸点が280℃以上である有機溶剤の含有量が3.0質量%以下であっても、吐出安定性及び目詰まり回復性を良好にすることができ、さらには耐擦性を良好にすることもできる。
有機溶剤の種類としては、特に限定されないが、例えば、環状窒素化合物、非プロトン性極性溶剤、モノアルコール、アルキルポリオール、及びグリコールエーテルが挙げられる。本実施形態の有機溶剤は、これらの有機溶剤の中から、各種有機溶剤を適宜選択して用いることができる。また、インク組成物は、標準沸点が280℃以上である有機溶剤を含有しないことが特に好ましい。これは、被記録媒体が低吸収性の被記録媒体や非吸収性の記録媒体である場合に特に好ましい。標準沸点が280℃以上である有機溶剤として、例えば、グリセリンが挙げられる。なお、被記録媒体が布帛の場合には、摩擦堅牢性の向上等を目的として、樹脂粒子量をより多く(例えば20質量%)用いることがあるが、その場合には標準沸点が280℃以上である有機溶剤を含んでいてもよい。
有機溶剤は、環状窒素化合物及び非プロトン性極性溶剤の少なくともいずれかを含有することが好ましい。インク組成物は環状窒素化合物又は非プロトン性極性溶剤を含有することにより、樹脂粒子の見かけのガラス転位温度を低温側に移行させることができ、本来よりもコア樹脂及びシェル樹脂を低い温度で軟化させることができることから、被記録媒体へのインク組成物の定着性を向上させることができる傾向にある。これにより、特に、被記録媒体がポリ塩化ビニルからなる場合に、被記録媒体へのインク組成物の定着性を向上させることができる。
非プロトン性極性溶剤としては、特に限定されないが、例えば、環状ケトン化合物、鎖状ケトン化合物、及び鎖状窒素化合物が挙げられる。また、環状窒素化合物及び非プロトン性極性溶剤としては、ピロリドン系、イミダゾリジノン系、スルホキシド系、ラクトン系、アミドエーテル系の溶剤が代表例として挙げられる。具体的には、これらの中でも2−ピロリドン、N−アルキル−2−ピロリドン、1−アルキル−2−ピロリドン、γ‐ブチロラクトン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、イミダゾール、1−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、及び1,2−ジメチルイミダゾールが好ましい。
モノアルコールとしては、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール、n−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール、iso−ブタノール、n−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、及びtert−ペンタノールが挙げられる。
アルキルポリオールとしては、特に限定されないが、例えば、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール(1,2−プロパンジオール)、ジプロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール(1,3−プロパンジオール)、イソブチレングリコール(2−メチル−1,2−プロパンジオール)、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−ブテン−1,4−ジオール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、及び1,8−オクタンジオールが挙げられる。
グリコールエーテルとしては、特に限定されないが、例えば、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、及びジプロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテルが挙げられる。
有機溶剤の含有量は、インク組成物の総量(100質量%)に対し、好ましくは5.0質量%以上50質量%以下であり、より好ましくは10質量%以上30質量%以下である。有機溶剤の含有量が50質量%以下であることにより、被記録媒体に付着したインク組成物の乾燥性がより向上する傾向にある。また、有機溶剤の含有量が5.0質量%以上であることにより、インク組成物の吐出安定性を確保できる傾向にある。
<樹脂粒子>
本実施形態の樹脂粒子(以下、「エマルジョン」ともいう。)は、側鎖に親水性ブロックを有する樹脂を含有する樹脂粒子であり、樹脂粒子を構成する樹脂において、主鎖に対して親水性樹脂をグラフト化した樹脂粒子である。親水性樹脂を含む水系エマルジョン中、重合性不飽和単量体を重合開始剤の存在下で重合することにより、重合性不飽和単量体が重合した樹脂粒子に対して親水性樹脂がグラフト化した樹脂粒子を製造することができる。重合系内に親水性樹脂を存在させると、該親水性樹脂が重合の乳化剤として有効な機能を持つとともに、得られた重合粒子が含まれるインク組成物を用いたときに、水に対する分散性が向上すると共に低い粘度を有することことに起因して、吐出安定性及び目詰まり回復性に優れる。ここで、「グラフト化した」とは、樹脂粒子の表面に対して共有結合により結合することだけではなく、静電気な結合力やファンデルワールス力等の非共有結合により結合することも含むことである。また、「側鎖」とは、主鎖に対して共有結合により結合することだけでなく、静電気的な結合やファンデルワールス等の非共有結合により結合することも含むことである。なお、ここで、主鎖は、重合性不飽和単量体が重合した重合体であり、側鎖は、親水性樹脂である。
重合性不飽和単量体としては、樹脂粒子を形成できるものであれば特に限定されないが、親水性ブロックを構成する樹脂よりも疎水性であることが好ましく、例えば、(メタ)アクリル酸エステル類、ビニルエステル類、ビニルエーテル類、芳香族ビニル化合物、不飽和カルボン酸アミド類、オレフィン類、ジエン類、及び不飽和ニトリル類が挙げられる。これらの重合性不飽和単量体は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
(メタ)アクリル酸エステル類としては、特に限定されないが、従来公知の(メタ)アクリル酸エステルのいずれをも使用することができる。この代表例として、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル(例えば、アクリル酸n−ブチル)、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルへキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピルなどのアクリル酸ヒドロキシアルキル、アクリル酸メトキシメチル、(メタ)アクリル酸エトキシメチルなどの(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸とポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール等のポリオキシアルキレングリコールとのエステル(ポリオキシアルキレン構造を有するアクリロイル化合物又はメタクリロイル化合物)等の反応性官能基含有(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」は、「メタクリル」及び「アクリル」の両方を含む概念である。
ビニルエステル類としては、特に限定されないが、従来公知のビニルエステル類のいずれも使用することができる。この代表例として、例えば、酢酸ビニル、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、オクチル酸ビニル、ベオバ10(商品名:シェルジャパン社製)等の炭素数3〜18の脂肪族カルボン酸のビニルエステル;安息香酸ビニルなどの芳香族カルボン酸ビニルが挙げられる。
ビニルエーテル類としては、従来公知のビニルエーテル類をいずれも使用することができる。この代表例として、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、iso−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、sec−ブチルビニルエーテル、tert−ブチルビニルエーテル、tert−アミルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテルが挙げられる。
芳香族ビニル化合物としては、特に限定されないが、従来公知の芳香族ビニル化合物のいずれも使用することができる。この代表例として、例えば、スチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、N−ビニルピロリドン、ビニルピリジンなどが挙げられる。不飽和カルボン酸アミド類には、(メタ)アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−メトキシブチルアクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類が挙げられる。
オレフィン類としては、特に限定されないが、従来公知のオレフィン類のいずれも使用することができる。この代表例として、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン、及びペンテンが挙げられる。
ジエン類としては、特に限定されないが、従来公知のジエン類のいずれも使用することができる。この代表例として、例えば、ブタジエン、イソプレン、及びクロロプレンが挙げられる。
不飽和ニトリル類としては、特に限定されないが、従来公知の不飽和ニトリル類のいずれも使用することができる。この代表例として、例えば、(メタ)アクリロニトリルが挙げられる。
これらの重合性不飽和単量体のうち、本発明による作用効果をより有効かつ確実に奏する観点から、(メタ)アクリル酸エステル類、及び芳香族ビニル化合物からなる群より選択される1種又は2種以上を使用するのが好ましい。
重合性不飽和単量体を2種以上組み合わせて用いる場合には、それぞれの重合性不飽和単量体を別々のタイミングで系内に添加してもよく、混合してから系内に添加してもよい。また、重合性不飽和単量体は、親水性樹脂と予め混合、乳化してから系内に添加してもよい。
親水性樹脂(以下、「親水性ブロック」ともいう)としては、特に限定されず、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)等のポリビニルアルコール系樹脂(PVA系樹脂);ポリエチレングリコール、ポリフェニレンオキシド;メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アミノメチルヒドロキシプロピルセルロース、アミノエチルヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース誘導体類;デンプン、トラガント、ペクチン、グルー、アルギン酸又はその塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸又はその塩、ポリメタアクリル酸又はその塩、ポリ(メタ)アクリルアミド、酢酸ビニルとマレイン酸、無水マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、クロトン酸等の不飽和酸との共重合体;スチレンと上記不飽和酸との共重合体、ビニルエーテルと上記不飽和酸との共重合体及び上記共重合体の塩類又はエステル類が挙げられる。これらの親水性樹脂は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
上述した親水性樹脂の中でもPVA系樹脂、ポリエチレングリコール、ポリフェニレンオキシド、ポリビニルピロリドン、及びポリアクリルアミドからなる群より選択される1種又は2種以上が、本発明の作用効果をより確実に奏する観点、及び粘度の調整がより容易である観点から好ましい。
親水性樹脂の含有量は、共重合の際の重合性やインク組成物としたときの吐出安定性等を損なわない範囲で適宜選択できる。ただし、本発明の作用効果をより有効かつ確実に奏する観点から、得られる樹脂粒子中の全樹脂(全固形分)の総量(100質量%)に対して、好ましくは0.01質量%以上40質量%以下であり、より好ましくは0.1質量%以上20質量%以下であり、さらに好ましくは0.5質量%以上10質量%以下である。
上記PVA系樹脂としては、次に示す特定の平均ケン化度及び平均重合度を有するPVA系樹脂がより好ましい。
PVA系樹脂の平均ケン化度は、好ましくは70モル%以上99.9モル%以下であり、より好ましくは80モル5以上99.5モル%以下であり、さらに好ましくは85モル%以上99.0モル%以下である。平均ケン化度が70モル%以上であることにより、安定的に重合が進行し、重合が完結した後に噴霧乾燥後の再乳化性合成樹脂粉末の保存安定性が低下を抑制する傾向にあり、平均ケン化度が99.9モル%以下であることにより、再乳化し易くなる傾向にある。平均ケン化度は、JIS K 6726に記載のケン化度の算出方法にしたがって求めることができる。
また、PVA系樹脂の平均重合度は、好ましくは50以上3000以下であり、より好ましくは200以上2000以下であり、さらに好ましくは300以上1000以下である。平均重合度が50以上であることにより、乳化重合時の保護コロイド能力が十分となり、重合が安定的に進行する傾向にあり、平均重合度が3000以下であることにより、重合時に増粘して反応系が不安定になりにくく、分散安定性が低下することを抑制する傾向にある。平均重合度は、JIS K 6726に記載の平均重合度の算出方法にしたがって求めることができる。
PVA系樹脂とは、PVA自体、又は、例えば、各種変性種によって変性されたものを意味する。その変性度は、好ましくは20モル%以下であり、より好ましくは15モル%以下であり、さらに好ましくは10モル%以下である。
変性PVA系樹脂としては、特に限定されないが、例えば、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基をはじめとするアニオン性基で変性されたアニオン変性PVA系樹脂、四級アンモニウム基等のカチオン性基で変性されたカチオン変性PVA系樹脂;アセトアセチル基、ジアセトンアクリルアミド基、メルカプト基、シラノール基をはじめとする各種官能基等により変性された変性PVA系樹脂;側鎖に1,2−ジオール結合を有するPVA系樹脂が挙げられる。乳化安定性に優れる点で、アニオン変性PVA、特にスルホン酸基で変性された変性PVA系樹脂がより好ましい。
側鎖に1,2−ジオール結合を有するPVA系樹脂としては、例えば、下記式(1)で示される1,2−ジオール構造単位を含有するPVA系樹脂が挙げられる。
Figure 2017190369
このようなPVA系樹脂は、例えば、(I)酢酸ビニルと3,4−ジアセトキシ−1−ブテンとの共重合体をケン化する方法、(II)酢酸ビニルとビニルエチレンカーボネートとの共重合体をケン化及び脱炭酸する方法、(III)酢酸ビニルと2,2−ジアルキル−4−ビニル−1,3−ジオキソランとの共重合体をケン化及び脱ケタール化する方法、あるいは(IV)酢酸ビニルとグリセリンモノアリルエーテルとの共重合体をケン化する方法により得られる。
PVA系樹脂の1,2−ジオール結合量は、好ましくは1.0モル%以上15モル%以下であり、より好ましくは1.0モル%以上12モル%以下であり、さらに好ましくは2.0モル%以上10モル%以下であり、よりさらに好ましくは2.0モル%以上9.0モル%以下である。ここで、1,2−ジオール結合量とは、例えば、1,2−ジオール構造単位が上記式(1)で表される場合、PVA系樹脂中に含まれる上記式(1)で表される1,2−ジオール結合構造単位のモル比率を意味する。かかる1,2−ジオール結合量が1.0モル%以上であると、樹脂粒子の機械安定性や皮膜の耐水性等が高くなる傾向があり、15モル%以下であると、重合時の安定性が増大し、不揮発分の高い安定な樹脂粒子がより得られやすくなる傾向がある。なお、不揮発分とは、エマルションを加熱乾燥して残った残分を意味し、加熱乾燥前後の質量をJIS K 6828−1に記載の算出方法にしたがって求めることができる。
水溶性樹脂として、未変性タイプの部分・完全ケン化PVA系樹脂や各種変性タイプの部分・完全ケン化PVA系樹脂等を併用してもよい。
重合開始剤としては、特に限定されず、慣用の開始剤、例えば、過酸化水素、ベンゾイルパーオキシド等の有機過酸化物、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、アゾビスイソブチロニトリル等を使用できる。これらの開始剤は、酒石酸、ロンガリット、重亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸などの還元剤と組み合わせて、レドックス系開始剤として用いることもできる。重合開始剤の使用量は、重合性不飽和単量体の総量(100質量%)に対して、好ましくは0.05質量%以上2.0質量%以下である。また、レドックス系開始剤を用いる際の還元剤の使用量は、重合開始剤の種類等に応じて適宜設定できる。
また、連鎖移動剤をさらに用いてもよい。連鎖移動剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール;アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、フルフラール、ベンズアルデヒド等のアルデヒド類;および、ドデシルメルカプタン、ラウリルメルカプタン、ノルマルメルカプタン、チオグリコール酸、チオグリコール酸オクチル、チオグリセロール等のメルカプタン類が挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を併せて用いることができる。
重合装置としては、特に限定されず、業界で日常使用されている常圧乳化重合装置等を用いることができる。重合温度は、好ましくは60〜90℃であり、より好ましくは70〜85℃である。
樹脂粒子には、重合性やインク組成物としての性能を損なわない範囲で、他の樹脂類や界面活性剤(非イオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤等)等を添加してもよい。界面活性剤の含有量は、例えば、得られる樹脂粒子の全樹脂(全固形分)中の含有量(固形分換算)として、好ましくは0.1質量%以上10質量%以下であり、より好ましくは0.2質量%以上8.0質量%以下である。
上記界面活性剤としては、乳化重合に用いるものとして当業者に公知のものであれば、いずれのものでも使用可能である。したがって、界面活性剤は、例えば、アニオン性、カチオン性、及びノニオン性の界面活性剤等の公知のものの中から、適宜選択することができる。
上記界面活性剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムのようなアニオン性界面活性剤、および、プルロニック型構造を有するものやポリオキシエチレン型構造を有するもの等のノニオン性界面活性剤が挙げられる。また、界面活性剤として、構造中にラジカル重合性不飽和結合を有する反応性界面活性剤を使用することもできる。これらは単独で、もしくは2種以上併せて用いることができる。
上記界面活性剤の使用は、乳化重合をスムーズに進行させ、コントロールしやすくしたり(乳化剤としての効果)、重合中に発生する粗粒子やブロック状物の発生を抑制する効果がある。ただし、これら界面活性剤を乳化剤として多く使用すると、グラフト率が低下する傾向がある。このため、界面活性剤を使用する場合には、その使用量はPVA系樹脂に対して補助的な量であること、すなわち、できる限り少なくすることが望ましい。
樹脂粒子の平均粒子径は、好ましくは100nm以上1000nm以下であり、より好ましくは200nm以上800nm以下であり、さらに好ましくは350nm以上650nm以下である。このように樹脂粒子の平均粒子径が1000nm以下であることにより、記録物の優れた光沢性が得られやすく、インク組成物の被記録媒体上での成膜性により優れる傾向にある。また、樹脂粒子の平均粒子径が1000nm以下であることにより、凝集しても大きな塊ができにくいことから、ノズルの目詰まりをより抑制することができる傾向にある。一方、樹脂粒子の平均粒子径が100nm以上であることにより、インク組成物の粘度を低く抑えることができ、吐出安定性が良好となり、また、樹脂粒子の調製がより容易になる傾向にある。
本明細書における平均粒子径は、特に明示がない限り体積基準のものである。測定方法としては、例えば、レーザー回折散乱法を測定原理とする粒度分布測定装置により測定することができる。粒度分布測定装置としては、例えば、動的光散乱法を測定原理とする粒度分布計(例えば、日機装社(Nikkiso Co., Ltd.)製のマイクロトラックUPA)が挙げられる。
インク組成物中の樹脂粒子の含有量(固形分換算)は、インク組成物の総量(100質量%)に対し、0.5質量%以上20質量%以下が好ましく、1.0質量%以上10質量%以下がより好ましく、1.5質量%以上5.0質量%以下がさらに好ましい。樹脂粒子の含有量が0.5質量%以上であることにより、耐擦性及び密着性により優れる傾向にある。また、樹脂粒子の含有量が20質量%以下であることにより、吐出安定性により優れる傾向にある。なお、捺染方法に用いる場合には、摩擦堅牢性の向上等を目的として、樹脂粒子量をより多く(例えば20質量%)用いることがあるが、このような場合であっても本実施形態によれば、吐出安定性及び目詰まり回復性を良好とすることができる傾向にある。
<架橋剤>
本実施形態のインク組成物は、架橋剤をさらに含むことが好ましい。架橋剤を含むことにより、樹脂粒子同士を架橋することに起因して、得られる記録物の耐擦性及び摩擦堅牢性により優れる傾向にある。また、保存安定性にも優れる傾向にある。架橋剤としては、樹脂粒子同士を架橋できるものであれば特に限定されないが、例えば、ブロック化イソシアネートタイプのポリイソシアネート系架橋剤が挙げられる。
ブロック化イソシアネートタイプのポリイソシアネート系架橋剤では、活性イソシアネート基はブロック剤で保護されており、通常の状態では安定を保つが、熱処理によってブロック剤が解離し、活性イソシアネート基が再生し、架橋反応をする。そのような架橋剤の具体例として、第一工業製薬社製エラストロンBN−69、11、明成化学工業株式会社製SU−268A、NBP−8730、NBP−211等が挙げられる。これらの架橋剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
その他、重合性不飽和単量体が(メタ)アクリル酸を含む場合、カルボン酸と反応する架橋剤である、カルボジイミドやオキサゾリンを使用することができる。カルボジイミドの例として、日清紡ケミカル株式会社製カルボジライトE−02、E−03Aが、オキサゾリンの例として、株式会社日本触媒製エポクロスK−2010E、K−2020E、K−2030Eが、それぞれ挙げられる。
<界面活性剤>
インク組成物は、光沢性の観点から、界面活性剤をさらに含むことが好ましい。界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、アセチレングリコール系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、及びシリコーン系界面活性剤が挙げられる。
アセチレングリコール系界面活性剤としては、特に限定されないが、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール及び2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールのアルキレンオキサイド付加物、並びに2,4−ジメチル−5−デシン−4−オール及び2,4−ジメチル−5−デシン−4−オールのアルキレンオキサイド付加物から選択される1種以上が好ましい。アセチレングリコール系界面活性剤の市販品としては、特に限定されないが、例えば、オルフィン104シリーズやオルフィンE1010等のEシリーズ(エアプロダクツ社(Air Products Japan, Inc.)製商品名)、サーフィノール104、465、61、DF110D(日信化学工業社(Nissin Chemical Industry CO.,Ltd.)製商品名)が挙げられる。アセチレングリコール系界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
フッ素系界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、パーフルオロアルキルベタイン、及びパーフルオロアルキルアミンオキサイド化合物が挙げられる。フッ素系界面活性剤の市販品としては、特に限定されないが、例えば、S−144、S−145(以上商品名、旭硝子株式会社製);FC−170C、FC−430、フロラード−FC4430(以上商品名、住友スリーエム株式会社製);FSO、FSO−100、FSN、FSN−100、FS−300(以上商品名、Dupont社製);FT−250、251(以上商品名、株式会社ネオス製)が挙げられる。フッ素系界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
シリコーン系界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、ポリシロキサン系化合物、及びポリエーテル変性オルガノシロキサンが挙げられる。シリコーン系界面活性剤の市販品としては、特に限定されないが、具体的には、BYK−306、BYK−307、BYK−333、BYK−341、BYK−345、BYK−346、BYK−347、BYK−348、BYK−349(以上商品名、ビックケミー社製)、KF−351A、KF−352A、KF−353、KF−354L、KF−355A、KF−615A、KF−945、KF−640、KF−642、KF−643、KF−6020、X−22−4515、KF−6011、KF−6012、KF−6015、KF−6017(以上商品名、信越化学社製)等が挙げられる。シリコーン系界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
界面活性剤の含有量は、インク組成物の総量(100質量%)に対し、好ましくは0.05質量%以上2.5質量%以下であり、より好ましくは0.05質量%以上1.5質量%以下である。界面活性剤の含有量が上記範囲内であることにより、被記録媒体に付着したインク組成物の濡れ性がより向上する傾向にある。
インク組成物は、その他の成分として、ワックス、溶解助剤、粘度調整剤、トリイソプロパノールアミン等のpH調整剤、酸化防止剤、防カビ・防腐剤、防黴剤、腐食防止剤、分散に影響を与える金属イオンを捕獲するためのキレート化剤(例えば、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム)等の、種々の添加剤を適宜含有することもできる。
本実施形態のインク組成物は、後述する捺染方法に用いられることが好ましい。
〔記録方法〕
本実施形態の記録方法は、被記録媒体上に上述した本実施形態のインク組成物を記録する工程(記録工程)を有する。また、本実施形態の記録方法は、上記被記録媒体が布帛を含む、捺染方法であってもよい。図1は、本実施形態の記録方法の一例を示すフローチャートである。図1に示すように、本実施形態の記録方法は、下記の加熱工程をさらに有してもよい。また、本実施形態の捺染方法は、下記の加熱工程の他に、下記の洗浄工程をさらに有してもよい。
上記の捺染方法は、インク組成物を、インクジェット装置に装填して使用するインクジェット捺染方法であってもよい。当該インクジェット装置としては、特に限定されないが、例えばドロップオンデマンド型のインクジェット装置が挙げられる。このドロップオンデマンド型のインクジェット装置には、ヘッドに配設された圧電素子を用いたインクジェット捺染方法を採用した装置、及びヘッドに配設された発熱抵抗素子のヒーター等による熱エネルギーを用いたインクジェット捺染方法を採用した装置などがあり、いずれのインクジェット捺染方法を採用したものでもよい。以下、インクジェット捺染方法が有する各工程を例にとって、インクジェット記録方法について詳細に説明する。
[記録工程]
本実施形態の記録工程は、被記録媒体に後述するインク組成物を記録する工程である。インクジェット方式を利用する場合には、被記録媒体である布帛の面(画像形成領域)に向けて、インク組成物をインクジェット方式により吐出し、被記録媒体に付着させて、画像を形成する。なお、吐出条件は、吐出されるインク組成物の物性によって適宜決定すればよい。
[加熱工程]
本実施形態の記録方法は、記録工程後に、インク組成物が付着した被記録媒体を加熱する加熱工程をさらに有してもよい。捺染方法の場合には、加熱工程を有することにより、布帛を構成する繊維に染料をより良好に染着することができる。加熱方法としては、特に限定されないが、例えば、HT法(高温スチーミング法)、HP法(高圧スチーミング法)、サーモゾル法が挙げられる。
また、加熱工程においては、被記録媒体上のインク組成物付着面を加圧処理しても、加圧処理しなくてもよい。被記録媒体上のインク組成物付着面を加圧処理しない加熱方法としては、オーブン乾燥(コンベアオーブン、バッチオーブン等のプレスをしない方法)が挙げられる。このような加熱工程を有することにより、記録物生産性がより向上する。また、被記録媒体上のインク組成物付着面の加圧処理もする加熱方法としては、特に限定されないが、例えば、ヒートプレス、ウェットオンドライが挙げられる。なお、「加圧」とは、被記録媒体に対して、個体を接触させることにより圧をかけることをいう。
加熱処理時の温度は、好ましくは80℃以上150℃以下であり、より好ましくは90℃以上110℃以下である。加熱処理時の温度が上記範囲であることにより、布帛を構成する繊維に染料をより良好に染着することができる傾向にある。
[洗浄工程]
本実施形態の捺染方法は、加熱工程後に、インク組成物が付着した被記録媒体を洗浄する洗浄工程をさらに有してもよい。洗浄工程により、繊維に染着していない顔料を効果的に除去することができる。洗浄工程は、例えば水を用いて行うことができ、必要に応じてソーピング処理を行ってもよい。ソーピング処理方法としては、特に限定されないが、例えば、即ち未固着の顔料を熱石鹸液などで洗い落とす方法が挙げられる。
このようにして、布帛を含む被記録媒体上に、上記のインク組成物に由来する画像が形成された、印捺物等の記録物を得ることができる。
<被記録媒体>
本実施形態の被記録媒体としては、特に限定されないが、例えば、吸収性、低吸収性、又は非吸収性被記録媒体が挙げられる。また、捺染方法に用いる場合には布帛を含むもの(布帛それ自体)である。このなかでも、被記録媒体が、低吸収被記録媒体又は非吸収性被記録媒体であることが好ましい。
ここで、「低吸収性被記録媒体」又は「非吸収性被記録媒体」は、ブリストー(Bristow)法において接触開始から30msecまでの水吸収量が10mL/m2以下である被記録媒体をいう。このブリストー法は、短時間での液体吸収量の測定方法として最も普及している方法であり、日本紙パルプ技術協会(JAPAN TAPPI)でも採用されている。試験方法の詳細は「JAPAN TAPPI紙パルプ試験方法2000年版」の規格No.51「紙及び板紙−液体吸収性試験方法−ブリストー法」に述べられている。
また、非吸収性被記録媒体又は低吸収性被記録媒体は、記録面の水に対する濡れ性によって分類することができる。具体的には、被記録媒体の記録面に0.5μLの水滴を滴下し、接触角の低下率(着弾後0.5ミリ秒における接触角と5秒における接触角の比較)を測定することによって被記録媒体を特徴付けることができる。より具体的には、被記録媒体の性質として、「非吸収性被記録媒体」の非吸収性は上記の低下率が1%未満のことを指し、「低吸収性被記録媒体」の低吸収性は上記の低下率が1%以上5%未満のことを指す。また、吸収性とは上記の低下率が5%以上のことを指す。なお、接触角はポータブル接触角計 PCA−1(協和界面科学株式会社製)等を用いて測定することができる。
吸収性被記録媒体としては、特に限定されないが、例えば、インク組成物の浸透性が高い電子写真用紙などの普通紙、インクジェット用紙(シリカ粒子やアルミナ粒子から構成されたインク吸収層、あるいは、ポリビニルアルコール(PVA)やポリビニルピロリドン(PVP)等の親水性ポリマーから構成されたインク吸収層を備えたインクジェット専用紙)から、インク組成物の浸透性が比較的低い一般のオフセット印刷に用いられるアート紙、コート紙、キャスト紙が挙げられる。
低吸収性被記録媒体としては、特に限定されないが、例えば、表面に油性インクを受容するための塗工層が設けられた塗工紙が挙げられる。塗工紙としては、特に限定されないが、例えば、アート紙、コート紙、マット紙等の印刷本紙が挙げられる。
非吸収性被記録媒体としては、特に限定されないが、例えば、インク吸収層を有していないプラスチックフィルム、紙等の基材上にプラスチックがコーティングされているものやプラスチックフィルムが接着されているもの等が挙げられる。ここでいうプラスチックとしては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレンが挙げられる。
さらに上記の被記録媒体以外にも、鉄、銀、銅、アルミニウム等の金属類のプレート、ガラスなどのインク非吸収性又は低吸収性の被記録媒体を用いることもできる。
布帛としては、以下に限定されないが、例えば、絹、綿、羊毛、ナイロン、ポリエステル、レーヨン等の天然繊維及び合成繊維が挙げられる。布帛としては、1種の繊維からなるものであっても、2種以上の繊維を混紡したものであってもよい。これらのうち、特に浸透性の異なる繊維を混紡したものを用いることによって、本実施形態の効果がより得られやすい傾向にある。布帛としては、上記に挙げた繊維を、織物、編物、不織布等いずれの形態にしたものでもよい。
布帛を含む被記録媒体としては、布帛そのものであってもよいが、布帛が樹脂粒子を含む前処理液で前処理されたものであることが好ましい。布帛が前処理されていることにより、より摩擦堅牢性に優れた記録物が得られる傾向にある。
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
〔平均粒子径〕
以下で得られたエマルジョンの平均粒子径φ(nm)は、「マイクロトラックUPA」(日機装株式会社)により測定した。
[合成例1]エマルジョン1−1、1−2、1−3
攪拌機、還流冷却器、滴下槽及び温度計付きの反応容器に水540質量部を入れ、これに、親水性樹脂としてポリビニルアルコール(PVA)((株)日本合成化学製、製品名「OKS−6026」)23質量部、重曹1質量部を加えて溶解させ、80℃に保った。PVAが完全に溶解した後、この溶液に、触媒(過硫酸カリウム(KPS)2質量部を水25質量部に溶解させた溶液)と、スチレンモノマー40質量部とアクリル酸n−ブチル(BA)モノマー330質量部との混合液とを、別々の滴下槽から2時間かけて連続的に滴下した。滴下終了後、さらに1.5時間攪拌し、重合を完結させて、スチレン−アクリル共重合樹脂系エマルジョン(エマルジョン1−1、平均粒子径:500nm)を得た。また、上記合成条件の中で、滴下終了後の撹拌時間を調整することにより、エマルジョン1−2(平均粒子径:100nm)及びエマルジョン1−3(平均粒子径1000nm)をそれぞれ得た。
[合成例2]エマルジョン2
親水性樹脂として、PVAの代わりにポリビニルピロリドン(PVP)((株)日本触媒製、製品名「K−90」)を用いた他は合成例1と同様の方法により、スチレン−アクリル共重合樹脂系エマルジョン(エマルジョン2、平均粒子径:500nm)を得た。
[合成例3]エマルジョン3
親水性樹脂として、PVAの代わりにポリアクリルアミド(PAAm)(第一工業製薬(株)製、製品名「DKドライカプセルGB−T」)を用いた他は合成例1と同様の方法により、スチレン−アクリル共重合樹脂系エマルジョン(エマルジョン3、平均粒子径:500nm)を得た。
[合成例4]エマルジョン4
攪拌機、還流冷却器、滴下槽及び温度計付きの反応容器に水540質量部を入れ、これに、親水性樹脂としてポリビニルアルコール(PVA)((株)日本合成化学製、製品名「OKS−6026」)23質量部、重曹1質量部を加えて溶解させ、80℃に保った。PVAが完全に溶解した後、この溶液に、触媒(過硫酸カリウム(KPS)2質量部を水25質量部に溶解させた溶液)と、スチレンモノマー40質量部とアクリル酸n−ブチル(BA)モノマー310質量部とアクリル酸20質量部の混合液とを、別々の滴下槽から2時間かけて連続的に滴下した。滴下終了後、さらに1.5時間攪拌し、重合を完結させて、スチレン−アクリル共重合樹脂系エマルジョン(エマルジョン4、平均粒子径:500nm)を得た。
[合成例5]エマルジョン5
攪拌機、還流冷却器、滴下槽及び温度計付きの反応容器に水540質量部を入れ、これに、触媒(過硫酸カリウム(KPS))2質量部を加えて溶解させ、80℃に保った。KPSが完全に溶解した後、この溶液に、スチレンモノマー330質量部とジビニルベンゼン(DVB)モノマー33質量部との混合液を、滴下槽から2時間かけて連続的に滴下した。滴下終了後、別の滴下槽からメタクリル酸グリシジルエステル(GMA)40質量部を2時間かけて連続的に滴下した。滴下終了後、さらに別の滴下槽から水に溶解させたチオール末端ポリエチレングリコール(PEG)10質量部を2時間かけて連続的に滴下した。その後、1.5時間攪拌し、重合を完結させて、エマルジョン5(平均粒子径:500nm)を得た。
[インク組成物用の材料]
下記の記録物の作製において使用したインク組成物用の主な材料は、以下の通りである。
〔色材〕
C.I.ダイレクトブルー199
〔樹脂粒子〕
エマルジョン1−1、1−2、1−3、2〜5
エマルジョン6(スチレンアクリル系樹脂、BASF社製の商品名「ジョンクリル450」)
水溶性樹脂(ポリビニルアクリル酸、クラレ社製)
〔架橋剤〕
エラストロンBN−11(第一工業製薬社製商品名)
カルボジライトE−02(日清紡ケミカル社製商品名)
〔有機溶剤〕
1,2−ヘキサンジオール(標準沸点:223℃)
プロピレングリコール(標準沸点:188℃)
2−ピロリドン(標準沸点:245℃)
グリセリン(標準沸点:290℃)
〔界面活性剤〕
オルフィンE1010(エアプロダクツ社製商品名)
〔pH調整剤〕
トリイソプロパノールアミン
〔防カビ・防腐剤〕
プロキセルXL2(Arch Chemicals社製商品名)
[インク組成物の調製]
各材料を下記の表1及び表2に示す組成で混合し、十分に撹拌し、インク組成物を得た。なお、下記の表1及び表2中、数値の単位は質量%であり、数値は固形分濃度であり、合計は100.0質量%である。
〔粘度〕
調製したインク組成物の20℃における粘度[mPa・s]は、粘度計(Physica社製、商品名「MCR−300」)により、コーン(径75mm、角度1°)を用い、回転速度を100rpmとして測定した。
Figure 2017190369
Figure 2017190369
〔記録物の作製〕
プラテンにヒーターを取り付けたPX−G930(エプソン社製の商品名)の改造機であるインクジェット方式のプリンタを準備した。次に、記録用ヘッドに充填したインク組成物1〜13を、720×720dpiの解像度、12mg/inch2の付着量、プラテンを加熱45℃で塩化ビニルフィルム上にインクジェット塗布し、記録物を得た。その後、被記録媒体をプリンタから排出し、その被記録媒体を80℃の環境に10分間静置して乾燥した(二次加熱)。
〔捺染物の作製〕
布帛に対して、インクジェットプリンター(セイコーエプソン社製、製品名「PX−G930」)を用いたインクジェット法により、上記で調製したインク組成物14〜27を付着させた。記録条件としては、記録解像度を1440dpi×1440dpiとし、記録範囲はA4サイズとし、ベタパターン画像を4層重ね塗りした。このようにしてインクジェット捺染を行った。ここで、「ベタパターン画像」とは、記録解像度で規定される最小記録単位領域である画素の全ての画素に対してドットを記録した画像を意味する。
その後、ヒートプレス機を用いて160℃で1分間加熱処理を行い、当該インク組成物を被記録媒体に定着させた。このようにして、被記録媒体に画像が形成された(インクが印捺された)捺染物を製造した。
〔吐出安定性〕
上記〔記録物の作製〕又は〔捺染物の作製〕の後に、ノズルの目詰まりを確認し、下記評価基準により吐出安定性を評価した。得られた結果を、表3及び表4に示す。
(評価基準)
A:目詰まりがなかった、又は、目詰まりが1回のヘッドクリーニングを行うことによりなくなった。
B:目詰まりが1回のヘッドクリーニングを行ってもなくならなかったが、2又は3回のヘッドクリーニングを行うことによりなくなった。
C:目詰まりが3回のヘッドクリーニングを行ってもなくならなかった。
〔保存安定性〕
インク組成物をインクジェットプリンター(セイコーエプソン社製、製品名「PX−G930」)のインク収容体(ポリエチレンフィルム製容器)に収容し、60℃で7日間の加速試験を行った後に、20℃におけるインク組成物の粘度を測定し、増粘率(加速試験後の20℃におけるインク粘度/加速試験前の20℃におけるインク粘度×100)を求め、下記評価基準により保存安定性を評価した。得られた結果を、表3及び表4に示す。
(評価基準)
A:1%未満
B:1%以上3%未満
C:3%以上
〔目詰まり回復性(耐目詰まり性)〕
インクジェットプリンター(セイコーエプソン社製、製品名「PX−G930」)を準備し、インク組成物をプリンタのカートリッジに充填し、カートリッジのキャップを開放した状態で、1か月間、室温の条件下で放置した。その後、カートリッジの360個のノズルに対して、3回のヘッドクリーニングを行い、下記評価基準により目詰まり回復性を評価した。得られた結果を、表3及び表4に示す。
(評価基準)
A:吐出不良のノズル数及び吐出方向がずれたノズル数が、全体のノズル数に対して0個である。
B:吐出不良のノズル数及び吐出方向がずれたノズル数が、全体のノズル数に対して1〜5個である。
C:吐出不良のノズル数及び吐出方向がずれたノズル数が、全体のノズル数に対して6個以上である。
〔耐擦性〕
上記のようにして得られた記録物を、学振型摩擦堅牢度試験機AB−301(テスター産業社製の商品名)に白綿布(JIS L 0803準拠)を取り付けた摩擦子で、荷重300gをかけて記録物が剥がれるまで、又は、30往復擦った。そして、被記録媒体上の記録物の傷及び剥がれを目視で観察し、下記評価基準により耐擦性を評価した。得られた結果を、表3に示す。
(評価基準)
A:記録物の傷又は剥離が認められなかった。
B:擦った面積(ストローク面積)の20%未満に、記録物の傷又は剥離が認められた。
C:擦った面積(ストローク面積)の20%以上50%未満に、記録物の傷又は剥離が認められた。
D:擦った面積(ストローク面積)の50%以上90%未満に、記録物の傷又は剥離が認められた。
E:擦った面積(ストローク面積)の90%以上に、記録物の傷又は剥離が認められた。
〔摩擦堅牢性〕
各捺染物について、家庭用洗濯機で通常の洗濯(洗濯条件:通常モードでの洗濯、脱水、乾燥の順)を5回実施し、各記録物の洗濯前の画像濃度(初期値、OD値)と洗濯後との画像濃度(OD値)を、マクベス濃度計(マクベス社製、「TD−931」)を用いて測定し、下記評価基準により摩擦堅牢性を評価した。結果を表4に示す。
(評価基準)
A:洗濯後の画像濃度が、洗濯前の90%以上
B:洗濯後の画像濃度が、洗濯前の80%以上90%未満
C:洗濯後の画像濃度が、洗濯前の70%以上80%未満
D:洗濯後の画像濃度が、洗濯前の70%未満
Figure 2017190369
Figure 2017190369

Claims (9)

  1. 色材と、水と、樹脂粒子と、を含み、
    前記樹脂粒子は、側鎖に親水性ブロックを有する樹脂を含有する樹脂粒子を含む、インクジェットインク組成物。
  2. 標準沸点が280℃以上である有機溶剤の含有量が、前記インクジェットインク組成物の総量に対して、3.0質量%以下である、請求項1に記載のインクジェットインク組成物。
  3. 布帛を含む被記録媒体上に前記インクジェットインク組成物を記録する方法に用いられる、請求項1又は2に記載のインクジェットインク組成物。
  4. 前記樹脂粒子の含有量が、前記インクジェットインク組成物の総量に対して、0.5質量%以上20質量%以下である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のインクジェットインク組成物。
  5. 前記親水性ブロックは、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルプロピレン、及びポリアクリルアミドからなる群より選択される1種又は2種以上のブロックである、請求項1〜4のいずれか一項に記載のインクジェットインク組成物。
  6. 前記樹脂粒子の平均粒子径が、100nm以上1000nm以下である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のインクジェットインク組成物。
  7. 架橋剤をさらに含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載のインクジェットインク組成物。
  8. 前記色材は、顔料及び/又は染料を含有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載のインクジェットインク組成物。
  9. 被記録媒体上に、請求項1〜8のいずれか一項に記載のインクジェットインク組成物を記録する工程を有する、記録方法。
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